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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029325
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】フレキシブル超音波発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132615
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】521344607
【氏名又は名称】ネクスファイ・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝
(72)【発明者】
【氏名】舟木 剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 清一
(72)【発明者】
【氏名】古久保 雄二
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ12
4C160JJ46
4C160JJ50
4C160MM43
(57)【要約】
【課題】 手術を行う場合の操作性を向上することができるフレキシブル超音波発生装置を提供する。
【解決手段】 フレキシブルフレキシブル超音波発生装置2は、可撓性を有するフレキシブルチューブ10内に挿入されており、第1~第3フレキシブル基板11~13に、駆動回路25を構成するインダクタ15、放電用抵抗21、FET22、SBD23が実装されている。フレキシブル超音波発生装置2の先端部には、アクチュエータ14が接続されている。アクチュエータ14には、アクティブブレード70が取り付けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲可能なフレキシブル超音波発生装置であって、
超音波を発生するアクチュエータと、
フレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板に実装された複数の電子部品を有し、前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、
を備えることを特徴とするフレキシブル超音波発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブル超音波発生装置において、
前記駆動回路は、パルス状に電圧を発生させることを特徴とするフレキシブル超音波発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフレキシブル超音波発生装置において、
前記駆動回路は、
インダクタと、
入力側の電界効果トランジスタと、
出力側の電界効果トランジスタと、
ショットキーバリアダイオードと、
放電用抵抗と、
を備え、
前記インダクタ、前記入力側の電界効果トランジスタ、前記 ショットキーバリアダイオード、前記出力側の電界効果トランジスタ、前記放電用抵抗の順に配置されていることを特徴とするフレキシブル超音波発生装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフレキシブル超音波発生装置において、
前記アクチュエータは、超音波振動することを特徴とするフレキシブル超音波発生装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル超音波発生装置において、
前記アクチュエータと、前記駆動回路とが挿入される可撓性を有するフレキシブルチューブを備え、
前記アクチュエータには、超音波用処置具が取り付けられることを特徴とするフレキシブル超音波発生装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル超音波発生装置において、
前記アクチュエータと、前記駆動回路とが挿入される可撓性を有するフレキシブルチューブを備え、
前記フレキシブルチューブは、内視鏡の鉗子入口から該内視鏡の内部を挿通され、
前記アクチュエータには、内視鏡用処置具が取り付けられることを特徴とするフレキシブル超音波発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル超音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湾曲自在な内視鏡を用いた手術が広く行われるようになっている。内視鏡は、各種鉗子を入口から挿入して、内視鏡の先端面から突出させることで、各種鉗子による処置を行うことができる。
【0003】
また、超音波振動を利用して外科手術を行う超音波メスも知られている(例えば、特許文献1参照)。この超音波メスは、先端部(メス部分の根本)が屈曲可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62‐268549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の超音波メスは、先端部しか屈曲させることができないため、メスを体内の所望の位置に挿入することができず、操作性が悪かった。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、手術を行う場合の操作性を向上することができる超音波発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のフレキシブル超音波発生装置は、屈曲可能なフレキシブル超音波発生装置であって、超音波を発生するアクチュエータと、フレキシブル基板と、前記フレキシブル基板に実装された複数の電子部品を有し、前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のフレキシブル超音波発生装置によれば、駆動回路を構成する複数の電子部品は、フレキシブル基板に実装され、駆動回路は屈曲可能であるので、屈曲可能なフレキシブル超音波発生装置を構成することができる。これにより、フレキシブル超音波発生装置を用いて手術を行う場合の操作性を向上することができる。
【0009】
[2]前記駆動回路は、パルス状に電圧を発生させることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、確実に安定して超音波を発生させることができる。
【0011】
[3]前記駆動回路は、インダクタと、入力側の電界効果トランジスタと、出力側の電界効果トランジスタと、ショットキーバリアダイオードと、放電用抵抗と、を備え、前記インダクタ、前記入力側の電界効果トランジスタ、前記 ショットキーバリアダイオード、前記出力側の電界効果トランジスタ、前記放電用抵抗の順に配置されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、駆動回路を小型で湾曲可能に構成しながらも、確実に超音波を発生させることができる。
【0013】
[4]前記アクチュエータは、超音波振動することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、フレキシブル超音波発生装置を用いて超音波振動により手術を行う場合の操作性を向上することができる。
【0015】
[5]前記アクチュエータと、前記駆動回路とが挿入される可撓性を有するフレキシブルチューブを備え、前記アクチュエータには、処置具が取り付けられることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、超音波発生装置は屈曲可能であるので、超音波発生装置を体内に挿入した場合でも、体内の湾曲に沿って超音波発生装置を湾曲させることができ、処置具を用いて手術を行うことができる。
【0017】
[6]前記アクチュエータと、前記駆動回路とが挿入される可撓性を有するフレキシブルチューブを備え、前記フレキシブルチューブは、内視鏡の鉗子入口から該内視鏡の内部を挿通され、前記アクチュエータには、内視鏡用処置具が取り付けられることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、超音波発生装置は屈曲可能であるので、超音波発生装置を内視鏡に挿入した場合でも、内視鏡の湾曲に追従して超音波発生装置を湾曲させることができ、内視鏡に挿入された超音波発生装置を用いて手術を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】フレキシブル超音波発生装置を示す斜視図。
図2】フレキシブル超音波発生装置を回路図。
図3】フレキシブル超音波発生装置にアクティブブレードを取り付けた状態を示す斜視図。
図4】内視鏡システムを示す概略図。
図5】内視鏡の先端部を示す図。
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
先ず、本発明を実施したフレキシブル超音波発生装置2の一例について説明する。
【0022】
フレキシブル超音波発生装置2は、小径(例えば、直径3mm)の可撓性を有する例えば透明なフレキシブルチューブ10内に挿入されており、第1~第3フレキシブル基板11~13に各種電子部品が実装されている。フレキシブル超音波発生装置2の先端部(第3フレキシブル基板13の先端部)には、アクチュエータ14が接続されている。本実施形態では、アクチュエータ14は、例えば、PZT等のセラミック製の圧電素子から構成されている。
【0023】
本実施形態では、第1,第2フレキシブル基板11,12には、インダクタ15が複数実装され、第1フレキシブル基板11と、第2フレキシブル基板12とは、ワイヤ接続されている。
【0024】
第3フレキシブル基板13には、放電用抵抗21と、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)22と、SBD(Schottky diode)23とが実装されている。
【0025】
SBD23よりもインダクタ15側のFET22が入力側のFET22であり、SBD23よりも放電用抵抗21側のFET22が出力側のFET22である。駆動回路25(図2及び図3参照)を構成する各電子部品15,21~23は、第1~第3フレキシブル基板11~13に実装されている。
【0026】
SBD23は、金属と半導体を接触させるショットキー接合により整流特性を得るユニポーラデバイスであり、外部より順方向電圧を印加すると、半導体側から見たエネルギー障壁が小さくなり、低くなった障壁を超えてn 型半導体から金属のほうへ電子が流れる特性を有する。
【0027】
図2は、フレキシブル超音波発生装置2を示す回路図であり、インダクタ15がrとL、T1が入力側のFET22、T2が出力側のFET22、DがSBD23、Rが放電用抵抗21、DEがコンデンサと見立てたアクチュエータ14である。
【0028】
次に上記構成のフレキシブル超音波発生装置2の作用について説明する。詳しくは、腹腔鏡(図示せず)を用いた検査後に、処置が必要な患部に対して、フレキシブル超音波発生装置2を用いて処置(手術)を行う場合について説明する。
【0029】
先ず、腹腔鏡による検査について説明する。腹腔鏡による検査は、周知のものであり、その詳細な説明は簡略化するが、例えば、患者のお腹に、小さい穴(例えば、5mm~12mm)開けて、その穴からポートと称される筒状の器具を挿入したあと、ポートより二酸化炭素を送り込みお腹を膨らませてお腹の中を観察しやすくする。そして、ポートから腹腔鏡をお腹の中に挿入して胃、大腸、胆嚢などの臓器をモニターに映し出し、検査を行う。この検査で処置が必要な患部を発見した場合、腹腔鏡を抜き取る。
【0030】
そして、図3に示すように、患部の処置に適した処置具、例えば、アクティブブレード30(処置具)を、フレキシブル超音波発生装置2のアクチュエータ14に取り付け、ポートを介して体内の患部の近傍まで挿入する。この際、アクティブブレード30をフレキシブルチューブ10内に収納した状態で挿入するようにしてもよい。
【0031】
次に、フレキシブル超音波発生装置2に電圧を加え、駆動回路25によりアクチュエータ14を振動させる。アクチュエータ14の振動により、アクティブブレード30が振動されて、超音波振動により患部を処置することができる。本実施形態では、例えば20kHz以上の超音波で振動させるように構成されている。そして、患部の処置を行った後、フレキシブル超音波発生装置2を体内から抜き取る。
【0032】
本実施形態では、フレキシブル超音波発生装置2は、フレキシブルチューブ10内に挿入されており、駆動回路25を構成する各電子部品15,21~23は、第1~第3フレキシブル基板11~13に実装されている。これにより、フレキシブル超音波発生装置2を湾曲可能に構成することができ、体内の湾曲形状に合わせてフレキシブル超音波発生装置2を湾曲させることができる。
【0033】
また、駆動回路25を、インダクタ15、放電用抵抗21、FET22、SBD23から構成しているので、湾曲可能でありながらも、アクチュエータ14を超音波振動させるための駆動力を得ることができる。さらに、駆動回路25がパルス状に電圧を発生させるので、確実にアクチュエータ14を超音波振動させることができる。
【0034】
さらに、フレキシブルチューブ10内の駆動回路25(各電子部品15,21~23)により昇圧するため、駆動回路25よりも手前のフレキシブルチューブ10は低電圧となり安全性が高い
【0035】
また、高価なTi合金を用いていないので、Ti合金を用いるものに比べてコストダウンを図ることができる。
【0036】
なお、フレキシブル超音波発生装置2を、内視鏡51に挿入して使用することもできる。
【0037】
図4及び図5に示すように、内視鏡システム50は、内視鏡51と、この内視鏡51に挿入されるフレキシブル超音波発生装置2と、内視鏡51に接続されて、内視鏡51に光を送る光源装置53と、制御装置54とを備えている。光源装置53には、内視鏡51に気体(空気やガス等)及び液体(洗浄水等)を送る周知の送気送液装置(図示せず)が内蔵されている。
【0038】
内視鏡51は、周知のものであり、その詳細な説明を簡略化するが、体内に挿入される挿入部56と、挿入部56の根元部分に連設された操作部57とを備えている。
【0039】
挿入部56は、先端部56aと、湾曲可能に構成された湾曲部56bとを備えており、先端部56aには、体内を撮影するカメラが内蔵されている。先端部56aの先端面には、カメラ撮影用の対物レンズ61と、ノズル62と、鉗子出口63と、光源装置53からの光を照射して術野を照らすライトガイド64とが設けられている。
【0040】
光源装置53には、内視鏡システム50の動作を統括的に制御する制御装置54が接続されている。この制御装置54は、内視鏡51の内部を通された接続ケーブル(図示せず)を介してカメラの駆動を制御する。カメラで撮影された撮影画像データは、接続ケーブルを介して制御装置54に送られ、ディスプレイ(図示せず)に表示される。
【0041】
操作部57には、鉗子入口71と、送気及び送液を行う場合に操作される操作ボタン72と、湾曲操作ノブ73とが設けられている。湾曲操作ノブ73が操作されると、挿入部56内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、挿入部56の湾曲部56bが上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部56aが体内の所望の方向に向けられる。
【0042】
操作ボタン72を操作すると、内視鏡51の内部に設けられた送管路(図示せず)を介して、挿入部56の先端面に設けられたノズル62に気体及び液体が送られる。ノズル62は、気体及び液体を内視鏡51の先端面に向けて出射する。
【0043】
鉗子入口71は、内視鏡51の内部に設けられた鉗子管路(図示せず)を介して、挿入部56の先端面に設けられた鉗子出口63に連通されている。これにより、鉗子入口71から挿入された鉗子(例えば、フレキシブル超音波発生装置2)を、鉗子管路を通して鉗子出口63から突出させることができる。
【0044】
次に上記構成の内視鏡51の作用について説明する。挿入部56を、体内、例えば腸管内に向けて肛門から挿入する。光源装置53からの光は、ケーブル等を通って、内視鏡51の挿入部56の前方に照射される。挿入部56の先端部56aに設けられたカメラで撮影された撮影画像データは、接続ケーブルを介して制御装置54に送られ、ディスプレイに表示される。
【0045】
腸管の観察中に患部を発見した場合には、この患部の処置に適した処置具、例えば、アクチュエータ14にアクティブブレード30(内視鏡用処置具)が取り付けられたフレキシブルフレキシブル超音波発生装置2を、内視鏡51の鉗子入口71に挿入して鉗子出口63からアクティブブレード30を突出させる。
【0046】
次に、フレキシブル超音波発生装置2に電圧を加え、駆動回路25によりアクチュエータ14を振動させる。アクチュエータ14の振動により、アクティブブレー300が振動されて、超音波振動により患部を処置することができる。本実施形態では、例えば20kHz以上の超音波で振動させるように構成されている。そして、患部の処置を行った後、挿入部56を体内から抜き取る。
【0047】
本実施形態では、フレキシブル超音波発生装置2は、フレキシブルチューブ10内に挿入されており、各電子部品55,61~63は、第1~第3フレキシブル基板11~13に実装されている。これにより、フレキシブル超音波発生装置2を湾曲可能に構成することができ、挿入部56の湾曲部56bを湾曲させた場合に、それに追従してフレキシブル超音波発生装置2を湾曲させることができる。
【0048】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0049】
例えば、アクチュエータ14にアクティブブレード30を取り付けているが、各種処置具を取り付け可能である。
【0050】
アクチュエータ14は、セラミック製の圧電素子に限らず、例えば、シリコン樹脂を含む誘電エラストマー等から構成してもよく、超音波振動しないものでもよい。
【符号の説明】
【0051】
2…フレキシブル超音波発生装置、10…フレキシブルチューブ、11~13…第1~第3フレキシブル基板、14…アクチュエータ、15…インダクタ、21…放電用抵抗、22…FET、23…SBD、25…駆動回路、30…アクティブブレード(処置具、内視鏡用処置具)、50…内視鏡システム、51…内視鏡。
図1
図2
図3
図4
図5