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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030077
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ヒートシール包装用積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220210BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133827
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB77
3E086CA01
3E086CA28
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AB10C
4F100AB33C
4F100AK07A
4F100AK16C
4F100AK41A
4F100AK42E
4F100AK46A
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100AK69C
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100CB03E
4F100EH46
4F100EH66C
4F100EJ38A
4F100EJ38E
4F100EJ86
4F100GB15
4F100JD02C
4F100JL12E
4F100JN01E
(57)【要約】
【課題】内容物に含まれる有効成分が吸着しにくく、100℃以上150℃以下の高温の内容物であっても、内容物が流出することなく充填できるヒートシール包装用積層体及び包装材の提供。
【解決手段】基材層、バリア層及びシーラント層をこの順に備えたヒートシール包装用積層体であって、前記シーラント層は、ポリブチレンテレフタレートを主として含む二軸延伸フィルムであり、前記シーラント層のヘーズ値は10%以下である、ヒートシール包装用積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、バリア層及びシーラント層をこの順に備えたヒートシール包装用積層体であって、
前記シーラント層は、ポリブチレンテレフタレートを主として含む二軸延伸フィルムであり、
前記シーラント層のヘーズ値は10%以下である、ヒートシール包装用積層体。
【請求項2】
前記基材層は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリプロピレン樹脂から選択される材料を含む二軸延伸フィルムである、請求項1に記載のヒートシール包装用積層体。
【請求項3】
前記ヒートシール包装用積層体は、前記基材層、第1接着層、前記バリア層、第2接着層及び前記シーラント層をこの順に備え、
前記第1接着層及び前記第2接着層はポリウレタンを含む、請求項1又は2に記載のヒートシール包装用積層体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のヒートシール包装用積層体からなる包装材。
【請求項5】
食品、医薬品又は工業薬品を内容物とし、前記内容物は、最内層のシーラント層を構成する成分に対して易吸着性を有する成分を含む、請求項4に記載の包装材。
【請求項6】
前記易吸着性を有する成分は脂溶性ビタミンである、請求項5に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール包装用積層体及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱融着により成型や密封がされたヒートシール容器は、食品、医薬品又は工業薬品を内容物とする包装材として使用されている。しかし内容物に含まれる有効成分が、包装材を構成する熱融着層に吸着される現象が従来から問題となっている。
【0003】
このような有効成分としては、例えば脂溶性ビタミンが挙げられる。
例えばビタミンE類は、特に不飽和脂肪酸に対する抗酸化作用を有するため、過酸化脂質の生成を防ぐ重要な脂溶性ビタミンである。このためビタミンE類は、食品、化粧品をはじめとする様々な製品の中に配合されている。
【0004】
しかしながら、ビタミンE類を含む内容物をヒートシール容器に充填すると、ビタミンE類が特に容器の熱融着層に吸着してしまい、内容物の中の有効成分であるビタミンE類の定量値が経時的に低下することが問題となっている。
【0005】
このような問題に対し、例えば特許文献1には、熱融着層の少なくとも1つの層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)層を含む積層包装袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-280403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EVOHは水と親和性があるため、特許文献1に記載のように熱融着層にEVOHを用いると、水や水を含む内容物を充填することができない。特許文献1に記載の積層包装袋は、充填可能な内容物が限定されるという課題があった。このため、内容物の種類に寄らず、内容物に含まれる成分が熱融着層に吸着しにくい材料が求められていた。
【0008】
また、最近では包装材に充填する内容物の種類は多岐に渡り、例えば100℃以上150℃以下の高温の内容物であっても、内容物が流出することなく充填できることが求められる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、内容物に含まれる有効成分が熱融着層に吸着しにくく、100℃以上150℃以下の高温の内容物であっても、内容物が流出することなく充填できるヒートシール包装用積層体及び包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0011】
[1]基材層、バリア層及びシーラント層をこの順に備えたヒートシール包装用積層体であって、前記シーラント層は、ポリブチレンテレフタレートを主として含む二軸延伸フィルムであり、前記シーラント層のヘーズ値は10%以下である、ヒートシール包装用積層体。
[2]前記基材層は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリプロピレン樹脂から選択される材料を含む二軸延伸フィルムである、[1]に記載のヒートシール包装用積層体。
[3]前記ヒートシール包装用積層体は、前記基材層、第1接着層、前記バリア層、第2接着層及び前記シーラント層をこの順に備え、前記第1接着層及び前記第2接着層はポリウレタンを含む、[1]又は[2]に記載のヒートシール包装用積層体。
[4][1]~[3]のいずれか1つに記載のヒートシール包装用積層体からなる包装材。
[5]食品、医薬品又は工業薬品を内容物とし、前記内容物は、最内層のシーラント層を構成する成分に対して易吸着性を有する成分を含む、[4]に記載の包装材。
[6]前記易吸着性を有する成分は脂溶性ビタミンである、[5]に記載の包装材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内容物に含まれる有効成分が熱融着層に吸着しにくく、100℃以上150℃以下の高温の内容物であっても、内容物が流出することなく充填できるヒートシール包装用積層体及び包装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のヒートシール包装用積層体を示す概略断面図である。
図2】内容物を収容した包装袋の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ヒートシール包装用積層体>
図1は、実施形態のヒートシール包装用積層体を示す概略断面図である。
図1に示すように、ヒートシール包装用積層体1は、基材層3と、バリア層4と、シーラント層2とを備える。シーラント層2の表面1aは、包装材とした場合に内容物に接する面となる。基材層3の表面1bは、包装材とした場合の一つの態様において、包装材の最外層になる。
【0015】
例えば、シーラント層2の一方の面1aが内側となる態様で製袋し、シーラント層2の一方の面1a同士を重ねてヒートシールすることにより、シーラント層2を内側とした包装袋が得られる。
【0016】
本実施形態の他の態様において、ヒートシール包装用積層体1は、基材層3、不図示の第1接着層、バリア層4、不図示の第2接着層及びシーラント層2をこの順に備えていてもよい。
【0017】
以下、本実施形態のヒートシール包装用積層体1を構成する各材料について説明する。
【0018】
[シーラント層]
本実施形態において、シーラント層2は、ポリブチレンテレフタレートを主として含む二軸延伸フィルムである。シーラント層2が「ポリブチレンテレフタレートを主として含む」とは、シーラント層2を構成する樹脂のなかで、ポリブチレンテレフタレートの含有率が最も高いことを意味する。
【0019】
シーラント層2は、シーラント層2の全量に対してポリブチレンテレフタレートを50質量%以上含むことが好ましく、ポリブチレンテレフタレートを50質量%を越えて含むことがより好ましい。シーラント層2は、シーラント層2の全量に対しポリブチレンテレフタレートを80質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0020】
また、シーラント層2はポリブチレンテレフタレートからなる二軸延伸フィルムであってもよい。
【0021】
シーラント層2がポリブチレンテレフタレート以外の樹脂を含む場合、例えば、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、が挙げられる。
【0022】
本実施形態において、シーラント層2は、シーラント層フィルムを積層することにより製造される。シーラント層フィルムについて、下記の計算式により算出される値を伸び率(%)が150%以下であると、二軸延伸フィルムであると判断する。
【0023】
シーラント層フィルムについて、JISK7127に準拠して引張試験を実施し、下記の計算式のより算出される値を伸び率(%)とする。
l=(L/L0)×100
(lは伸び率であり、Lは破断時の試験片の長さ(単位:mm)であり、L0は引張試験前のつかみ具間距離(引張試験前の試験片の長さ)(単位:mm)である。)
【0024】
また、ヒートシール包装用積層体に備えられているシーラント層の伸び率は下記の方法により算出できる。
まず、ヒートシール包装用積層体からシーラント層を剥離する。
次に、剥離したシーラント層について、上記の方法により伸び率を算出する。
【0025】
シーラント層フィルムは、例えばポリブチレンテレフタレートフィルムを2軸延伸によって、MD方向は2倍~5倍に延伸し、TD方向は2倍~5倍に延伸して、膜厚が20μm以上30μm以下とすることが好ましい。
【0026】
本実施形態において、シーラント層フィルムのヘーズ値は10%以下である。
シーラント層フィルムのヘーズ値(%)は、JISK7361、JISK7136に準拠して測定したヘーズ値とする。
本明細書において、ヘーズ値が10%以下であるフィルムは、フィルム表面の結晶化が進行しておらず、ヒートシールが可能であると判断する。
【0027】
一般にフィルムに延伸を施すとフィルムの表面の結晶化が進みやすい。表面が結晶化したフィルムは、ヒートシールが困難になる傾向にある。フィルム表面の結晶化が進行すると、フィルムの表面に散乱が生じ、ヘーズ値が高くなる傾向にある。本実施形態においては、シーラント層フィルムのヘーズ値は10%以下であるため、フィルム表面の結晶化が進んでおらず、ヒートシールが可能であると判断できる。
【0028】
本発明者らの検討により、シーラント層2としてポリブチレンテレフタレートを主として含むフィルムを用いることにより、内容物に含まれる有効成分が熱融着層に吸着しにくいことが見いだされた。なかでも、内容物に含まれる有効成分として揮発性成分が熱融着層に吸着しにくいことが見いだされた。
【0029】
さらに、ポリブチレンテレフタレートを主として含む二軸延伸フィルムとしたことにより、ヒートシール包装用積層体の耐熱性が向上し、100℃以上150℃以下の高温の内容物であっても、内容物が流出することなく充填可能な包装材を提供できる。
【0030】
[基材層]
本実施形態において、基材層3は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレンから選択される材料のフィルムであることが好ましい。
【0031】
ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。
【0032】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、アラミド等の芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0033】
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。ポリプロピレン樹脂に共重合させる他のオレフィンとしては、エチレン又は炭素原子数4~18のα-オレフィンから選択される1種以上が挙げられる。炭素原子数4~18のα-オレフィンとしては、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-オクタデセンなどが挙げられる。
【0034】
本実施形態において、基材層3は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレンから選択される材料の二軸延伸フィルムであることが好ましい。
基材層3が上記の材料の二軸延伸フィルムであることにより、ヒートシール包装用積層体の耐熱性が向上し、100℃以上150℃以下の高温の内容物であっても、内容物が流出することなく充填可能な包装材を提供できる。
【0035】
基材層3の膜厚は、例えば10μm以上30μm以下の範囲で適宜調整すればよい。
【0036】
[バリア層]
シーラント層2と基材層3との間にバリア層4を配置することにより、ヒートシール包装用積層体1に水蒸気、酸素ガス等に対するバリア性を付与できる。
【0037】
バリア層4は、水蒸気バリア性、酸素ガスバリア性等のバリア性を有する層である。バリア層4の具体例としては、アルミニウム等の金属蒸着層、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機化合物蒸着層、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)や塩化ビニリデン樹脂(PVDC)等のガスバリア性樹脂層、アルミニウム箔等の金属箔が挙げられる。
【0038】
バリア層4は、金属蒸着層又は金属箔が好ましい。バリア層4の厚みが大きいほどバリア性が高くなるが、包装用積層体としての適性を兼ね備えることが好ましい。
【0039】
バリア層4の膜厚は、例えば5μm以上30μm以下の範囲で適宜調整すればよい。バリア層4は、膜厚が5μm以上30μm以下の金属箔とすることが好ましい。
【0040】
[第1接着層及び第2接着層]
第1接着層及び第2接着層を構成する接着剤としては、ポリウレタン系接着剤が好ましい。接着剤としてのポリウレタン樹脂に用いられるポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール類、低分子ポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、グリコール類、アクリルポリオールなどが挙げられる。
ポリウレタン樹脂に用いられるジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
≪ヒートシール包装用積層体の製造方法≫
本実施形態のヒートシール包装用積層体は、例えば、各層を構成するフィルムを接着剤を用いて接着することにより製造できる。
具体的には、基材層フィルム、第1接着層用接着剤、バリア層フィルム、第2接着層用接着剤及びシーラント層フィルムがこの順に積層し、各層を接着剤を用いて接着する。
【0042】
第1接着層用接着剤と、第2接着層用接着剤は上述したポリウレタン系接着剤を用いることが好ましい。
第1接着層用接着剤と、第2接着層用接着剤の塗布量は、例えば乾燥後において3g/m~4g/mとなる量が挙げられる。
【0043】
<包装材>
本実施形態は、前記本実施形態のヒートシール包装用積層体からなる包装材である。
【0044】
図2に、食品、医薬品又は工業薬品の内容物を包装した包装材の一例として、包装袋を示す。
図2に示す包装袋20は、2枚のヒートシール包装用積層体21を重ね合わせて、又は、1枚のヒートシール包装用積層体21を2つ折りにして対向させ、内容物24の周囲にシール部22を形成した構成である。
【0045】
ヒートシール包装用積層体21が内容物24とシール部22の間に易開封線23を有すると、易開封線23に沿ってヒートシール包装用積層体21を引き裂いたときに、内容物24の近くに取り出し口を形成することができるので好ましい。内容物24の両側のそれぞれの包装用フィルム21で重なり合う位置に易開封線23を形成することが好ましい。
【0046】
内容物24としては、食品、医薬品又は工業薬品が挙げられる。また、内容物24は有効成分として最内層のシーラント層を構成する成分に対して易吸着性を有する成分を含むことが好ましい。以下において、「最内層のシーラント層を構成する成分に対して易吸着性を有する成分」を「易吸着性成分」と記載する。
本実施形態において易吸着性成分とは、常温常圧条件下において、シーラント層を構成する成分に対して吸着しやすい成分を意味する。
包装袋20は、有効成分として易吸着性成分を含む内容物24に好適に用いることができる。
【0047】
本実施形態において、内容物が含む易吸着性成分は脂溶性ビタミンであることが好ましい。
脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられる。本実施形態の包装材は、特にビタミンE類を含む内容物に好適に用いることができる。
以下、脂溶性ビタミン等の成分を「有効成分」と記載する場合がある。
【0048】
ビタミンE類には、α型、β型、γ型のトコフェロールの他、酢酸トコフェロールが挙げられる。
【0049】
例えば、内容物に含まれる有効成分が包装材に吸着すると、有効成分の含有量が減少する。そうすると、内容物が使用された時の効果に影響を与える。また、包装・保管時に減少する量を見込んで、有効成分をあらかじめ多く入れておく必要が生じる。包装・保管時に減少する有効成分は、効果的に使用されることなく、包装材に吸収されて減少するだけであるため、資源を余計に使用するという観点でも好ましくない。
【0050】
本実施形態の包装材は、内容物に含まれる有効成分のうち、易吸着性成分が最内層のシーラント層を構成する成分に吸着しにくいため、内容物に吸着を見込んだ過剰な有効成分を付与する必要がなくなる。このため、内容物に含まれる有効成分を効果的に利用することができる。
【0051】
さらに、本実施形態の包装材は、本実施形態のヒートシール包装用積層体からなるため耐熱性が高く、例えば100℃以上150℃以下の高温の内容物であっても、内容物が流出することなく充填できる。
【実施例0052】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0053】
<ヒートシール包装用積層体の製造>
基材層フィルム、第1接着層用接着剤、バリア層フィルム、第2接着層用接着剤及びシーラント層フィルムがこの順に積層し、ヒートシール包装用積層体を作製した。第1接着層用接着剤及び第2接着層用接着剤の塗布量は、それぞれ乾燥後において3g/m~4g/mとなる量とした。
実施例1~2、比較例1~4のヒートシール包装用積層体を製造する際に用いた各層の材料フィルムと、各層の膜厚を表1に記載する。
【0054】
【表1】
【0055】
表1中、各記号は以下の材料を意味する。
A1:二軸延伸ポリエステル、東洋紡株式会社製、エスペットT4102
A2:二軸延伸ポリプロピレン、三井化学東セロ株式会社製、U-1
M1:ポリウレタン系接着剤、三井化学株式会社製、A520、A50
B1:アルミニウム箔、株式会社UACJ製、1N30
B2:アルミニウム蒸着フィルム、東レフィルム加工株式会社製、VM-PET1310
C1:二軸延伸ポリブチレンテレフタレート、株式会社興人製、ST
C2:ポリエチレン、タマポリ株式会社製、SE620A
C3:未延伸ポリエステル、タマポリ株式会社製、ハイトロンPG
C4:未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、関西化学工業株式会社製
C5:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡株式会社製、E5100
【0056】
表1中、シーラント層フィルムのヘーズ値(%)は、シーラント層フィルムについて、JISK7361、JISK7136に準拠して測定したヘーズ値である。
本明細書において、ヘーズ値が10%以下であると、結晶化度が低いため、ヒートシールが可能であると判断する。
【0057】
表1中、シーラント層フィルムのヘーズ値(%)欄の[ ]内の値は、下記の方法により測定したヒートシール強さである。
【0058】
実施例1~2、比較例1~4においてそれぞれ製造したヒートシール包装用積層体を、100mm角にそれぞれ2枚切り出した。100mm角のヒートシール包装用積層体2枚をシーラント層同士を重ねて、260℃、0.2MPa、1秒間の条件でヒートシールした。ヒートシールには、テスター産業株式会社製のヒートシールテスターを使用した。
【0059】
ヒートシール後、JIS Z 0238に準拠し、15mm巾でサンプリングし、300mm/secの速度で引っ張り試験を行い、ヒートシール強さを測定した。
【0060】
表1中、シーラント層フィルムの伸び率(%)は以下の方法により測定した。
まず、実施例1~2、比較例1~4においてそれぞれ製造したヒートシール包装用積層体からシーラント層を剥離した。剥離したシーラント層の寸法は、長さ120mm、縦25mmであった。
【0061】
その後、JISK7127に準拠して引張試験を実施し、下記の計算式のより算出される値を伸び率(%)とした。本明細書において。下記の方法により算出される伸び率lの値が150%以下であると、延伸フィルムであると判断する。
l=(L/L0)×100
(lは伸び率であり、Lは破断時の試験片の長さ(単位:mm)であり、L0は引張試験前のつかみ具間距離(引張試験前の試験片の長さ)(単位:mm)である。)
【0062】
<内容物の吸着評価>
実施例1~2、比較例1~4のヒートシール包装用積層体を用いて、内容物の吸着評価を実施した。
まず、実施例1~2、比較例1~4のヒートシール包装用積層体を用いて、シーラント層が内容物に接する内側となる平袋(三方袋)を90mm×90mm、シール巾10mmで製袋した。
【0063】
次に、酢酸トコフェロールを含む化粧水(酢酸トコフェロール濃度:567ppm)を10ml量りとり、平袋の開口部から袋に充填し、開口部をヒートシールした。内容物を充填した袋を40℃で4週間保管した。その後、袋を開封し、内容物に含まれる酢酸トコフェロール量を液体クロマトグラフィーで定量した。
【0064】
保存後の内容物に含まれる酢酸トコフェロール量(ppm)を下記表2に記載する。
また、下記の式により算出したる酢酸トコフェロールの残存率を下記表2に記載する。
残存率(%)=(保存後の酢酸トコフェロール濃度/初期トコフェロール濃度)×100
【0065】
<高温の内容物の充填試験>
実施例1~2、比較例1~4のヒートシール包装用積層体を用いて、高温の内容物の充填試験を実施した。
まず、実施例1~2、比較例1~4のヒートシール包装用積層体を用いて、シーラント層が内容物に接する内側となる平袋(三方袋)を90mm×90mm、シール巾10mmで製袋した。
【0066】
次に、内容物として130℃のシリコーンオイル(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアルシリコーンオイルSRX310)を、平袋に50ml程度充填し、ヒートシールして封をした。その袋を23℃50%の状態に静置し、シール後退の有無と、内容物の容器外部への流出の有無を検証した。
【0067】
ここで、「シール後退」とは、ヒートシール部分の剥がれが肉眼で確認できた場合には、「シール後退有る」とする。また、ヒートシール部分の剥がれが肉眼で確認できなかった場合には、「シール後退無し」とする。その結果を表2に記載する。
【0068】
また、内容物の容器外部への流出が肉眼で確認できた場合には、「内容物の流出有り」とする。また、内容物の容器外部への流出が肉眼で確認できなかった場合には、「内容物の流出無し」とする。その結果を表2に記載する。
【0069】
【表2】
【0070】
実施例1~2、比較例1~4を比較すると、酢酸トコフェロール残存率は、実施例1~2はともに95%以上であり、高い残存率を奏することが確認できた。
これに対して、比較用1の残存率は20%未満であり、比較用2~4は90%未満となった。
比較用4はヒートシールができず、内容物が外部へ漏れていたため、酢酸トコフェロール濃度が低下したと考えられる。
【0071】
一般的に、結晶性の高分子フィルムは延伸すると、結晶が配向することによりバリア性が向上する。したがって、延伸フィルムは、未延伸フィルムと比較すると、内容物の吸着を抑制しやすいと考えられる。このため、延伸フィルムを用いた実施例2と、未延伸フィルムを用いた比較例3とを比べると、実施例2の方が内容物の残存率が比較例3よりも約10%以上高い結果になったと考えられる。
【0072】
比較例1~4はシリコーンオイルを充填した時点からシール後退が始まり、すぐに内容物が外に漏れ出てきた。
これに対し、実施例1~2は内容物が外に漏れ出て来ることはなく、シール後退もなかった。したがって、実施例1~2では高温の内容物を充填しても問題なく、これまで軟包装が使用できなかった高温の内容物に対しても有効に使用できることが確認できた。
【符号の説明】
【0073】
1…ヒートシール包装用積層体、3…基材層、4…バリア層、2…シーラント層、20…包装袋、21…ヒートシール包装用積層体、22…シール部、23…易開封線、24…内容物。
図1
図2