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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030085
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
H03F3/45 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020133841
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
(72)【発明者】
【氏名】境 要典
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC46
5J500AF19
5J500AH02
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK05
5J500AT03
5J500DN01
5J500DN12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】消費電流の増加を招くことなく、電源ラインへの高周波外来ノイズの混入が生じても安定した出力特性を得ることのできる演算増幅器を提供する。
【解決手段】演算増幅器は、差動増幅回路110と、その出力レベルをレベルシフトするレベルシフト回路211と、その出力を増幅する増幅回路212と、その出力を所望の出力レベルとして出力する出力回路116とを具備する。差動増幅回路110の出力と増幅回路212の出力との間に、差動増幅回路110の出力側から位相補償用コンデンサ51とインピーダンス素子50とが直列接続されて設けられて、電源ラインへの高周波外来ノイズの混入が生じても出力電圧の低下が抑圧可能な演算増幅器となっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非反転入力端子と反転入力端子間に印加された入力信号の差動増幅可能に構成されてなる演算増幅器であって、
前記入力信号の差動増幅を行う差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力レベルのシフトを行うレベルシフト回路と、前記レベルシフト回路を介して入力された前記差動増幅回路の出力を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力を所望の出力レベルとして出力する出力回路とを具備してなり、
前記差動増幅回路の出力と前記増幅回路の出力との間に、前記差動増幅回路の出力側から位相補償用コンデンサとインピーダンス素子とが直列接続されて設けられてなることを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
前記インピーダンス素子は抵抗器であって、その抵抗値RX11は、
不等式(1/2πf)×{(1/C1)+(1/Cb1)+(1/Cb2)}<RX11<(1+Cb3/C1)/gmを満たす値に選定され、
前記不等式におけるfは、高周波外来ノイズの周波数、前記不等式におけるC1は、前記位相補償用コンデンサの容量値、前記不等式におけるCb1は、前記出力回路の入力段と正電源電圧との間の寄生容量の容量値、前記不等式におけるCb2は、前記レベルシフト回路の入出力間の寄生容量の容量値、前記不等式におけるCb3は、前記出力回路の入力段と負電源電圧との間の寄生容量の容量値、前記不等式におけるgmは、前記増幅回路のトランスコンダクタンスであることを特徴とする請求項2記載の演算増幅器。
【請求項3】
前記インピーダンス素子の抵抗器の一部として、前記位相補償用コンデンサの寄生抵抗を用いることを特徴とする請求項1または請求項2記載の演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器に係り、特に、高周波外来ノイズに起因する出力特性の劣化防止、動作の安定性確保等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、演算増幅器における高周波外来ノイズに対する方策としては、ノイズが入力端子に混入することに着目して対策を施したものが多い。例えば、特許文献1等には、入力に混入する高周波外来ノイズをコンデンサと抵抗器で構成されるローパスフィルタ(LPF)で軽減するものが提案されている。
【0003】
特許文献1においては、同文献で開示されたローパスフィルタによる高周波外来ノイズ対策は、図9に示された回路を用いて高周波外来ノイズの混入について検証した結果を反映したものである旨が述べられている。
図9に示された検証回路は、演算増幅器OP1を用いた増幅回路であって、その回路構成は従来から良く知られているものであるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0004】
また、図10には、演算増幅器OP1の具体的な回路構成例が示されている。
この図10に示された回路は、特許文献1において演算増幅器OP1の従来回路として開示されているものと基本的に同一構成のものであるが、図10においては、電流分配用のカレントミラー回路の具体回路構成も示されたものとなっている。
この電流分配用のカレントミラー回路は、カレントミラー元であるトランジスタQ109と電流源CS1とを用いて構成されており、トランジスタQ109に電流源CS1が接続されて、この電流源CS1の電流がトランジスタQ110~Q117にミラーされている。
【0005】
図11には、図9に示された検証回路において、AC電圧源RFによりAC電圧を演算増幅器OP1に印加した場合の出力電圧Voutの変化の測定結果が示されている。なお、AC電圧源RFの電圧振幅は0.2Vppである。
同図によれば、出力電圧Voutは、周波数が低い領域では0V付近で安定しているが、周波数が高くなるにつれて変動することが確認できる。この出力電圧Voutの変動は、演算増幅器の後段の集積回路においてて誤動作を招く原因となる。
【0006】
かかる出力電圧Voutの変動対策として、特許文献1においては、図12に示されたように、反転入力端子INMとトランジスタQ1のベースとの間に抵抗器Rin1を、非反転入力端子INPとトランジスタQ2のベースとの間に抵抗器Rin2を、それぞれ挿入した構成が開示されている。
上述の構成において、トランジスタQ1、Q2のベースと負電源端子VEEとの間には、寄生容量Cin1、Cin2が存在する。
その結果、抵抗器Rin1、Rin2と寄生容量Cin1、Cin2とでローパスフィルタ(LPF)が構成され、それによる高周波外来ノイズの低減によって出力電圧Voutの変動抑制が可能となっている。
【0007】
本願発明者は、実際に図12の構成における高周波外来ノイズの低減効果の検証を行った。図13には、その検証結果である入力周波数変化に対する出力電圧Voutの変化特性が示されている。すなわち、同図において、実線の特性線は、図12に示された回路構成における入力周波数変化に対する出力電圧Voutの変化特性であり、対策がない場合(点線の特性線)に比して、高周波外来ノイズに対する一定の低減効果が確認できる。
【0008】
ところが、高周波外来ノイズが混入するのは入力端子だけとは限らず、例えば、電源ラインに混入する可能性を否定できない。特に、近年の車載半導体においては、電源ラインにおける高周波外来ノイズに対する高い耐性が求められる場合が増加している。
本願発明者は、かかる観点から、先の図12に示された演算増幅器における電源ラインへの高周波外来ノイズ混入の際の出力電圧Voutの挙動を検証した。
【0009】
図14には、検証に用いた回路例が示されており、同図を参照しつつ検証内容について説明する。
まず、図14に示された回路例において、演算増幅器OP1は、先の図12の回路構成のものである。演算増幅器OP1の端子にはインダクタンスL1~L5が付加されているが、これらは、パッケージングされた演算増幅器OP1に用いられている金線のインダクタンスを等価的に表したものである。
【0010】
図14に示された回路例は、演算増幅器OP1によりボルテージフォロア回路が構成されており、反転入力端子INMは寄生インダクタンスL2、L5を介して出力端子OUTに接続されている。
一方、非反転入力端子INPは、寄生インダクタンスL3を介してDC電圧源V2=6Vに接続されている。
【0011】
また、負電源端子VEEは、寄生インダクタンスL4を介してグランドに接続されている。
正電源端子VCCは、インダクタLA1及び寄生インダクタンスL1を介してDC電圧源V1=12Vに接続されると共に、DCカット用コンデンサCA1を介してAC電圧源RFに接続されている。インダクタLA1はDC電圧源V1への高周波信号を遮断する。
AC電圧源RFは、高周波外来ノイズを模しており、出力はPin(dBm)である。
【0012】
ここで、DC電圧源V1=12Vと、DCカットコンデンサCA1と、寄生インダクタンスL1とが電気的に導通状態とされるノードを、以下、説明の便宜上”電源ライン”と称する。
以下、この電源ラインにおける高周波外来ノイズの混入に対する演算増幅器OP1への影響に関する検証について説明する。
【0013】
かかる検証は、AC電圧源RFからの入力電力を増加した場合の出力電圧VoutのDCレベルを計測することで行う。
例えば、図14の回路において、AC電圧源RFからの入力電圧が無い場合、出力電圧Voutが6Vとなることは自明である。しかし、AC電圧源RFからの入力電力Pinが増加すると、演算増幅器OP1は何等かの影響を受け、出力電圧Voutは変動を来す。
【0014】
図15には、図14の回路における検証結果として、電源ラインへのAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性が点線の特性線により示されている。
この検証結果は、入力電力Pinを変化させた際の、出力電圧Voutの変化を計測した結果である。
なお、AC電圧源RFの周波数は0.5GHzである。
【0015】
演算増幅器OP1は、先に図12に示されたように入力端子に対する高周波外来ノイズに対する対策が施されたものであるが、図15に示された検証結果においては、AC電圧源RFの入力電力Pinが30dBm付近になると、出力電圧Voutは大きく変動し始めていることが確認できる。
これは、高周波外来ノイズが電源ラインに混入すると、出力電圧Voutが変動することを意味するものである。
【0016】
このような出力電圧Voutの変動は、実使用において誤動作を招く原因となる。なお、このようにAC電源などを用いて、特定の端子に高周波外来ノイズを印加する実験は、Direct Power Injectionと称され、DPIと略称されることもある。
本願発明者は、さらに、図12に示された回路構成の演算増幅器において出力電圧Voutが変動するメカニズムの解析を試みた結果、次述するような知見を得るに至った。
【0017】
以下、本願発明者が得た知見について、図16を参照しつつ説明する。
まず、図16は、先に図12に示された回路構成の演算増幅器を、図14に示された検証回路で高周波外来ノイズに対する検証を行った場合において注目すべき主要な電流を図12に示された回路構成例に書き加えた回路図である。
この検証においては、正電源端子VCCに振幅VCAの高周波のAC電圧を重畳し、回路各部に生ずる電流等について解析を行った。
【0018】
すなわち、正電源端子VCCに振幅VCAの高周波のAC電圧を重畳させると、トランジスタQ15のコレクタ・ベース間の寄生容量Cb1を流れるAC電流ICB15が発生する(図16参照)。このAC電流ICB15の一部は、位相補償容量C1に流れるAC電流IXCとなる。AC電流IXCは、トランジスタQ8のベース・エミッタ間の寄生容量Cb2を介して、トランジスタQ8のベースからエミッタに流れる。
【0019】
ここで、トランジスタQ8は、PNP型のトランジスタであるため、遮断周波数が低く、そのため、高周波信号に対してトランジスタ動作しない。その結果、トランジスタQ8のベース・エミッタ容量を介して、AC電流IXCがトランジスタQ8のベースからエミッタに流れることになる。その後、AC電流IXCは、トランジスタQ114のコレクタ電流IC114の一部と共にトランジスタQ9のベース電流となる。結果として、トランジスタQ9のエミッタから流れ出る電流が増加し、トランジスタQ10のベース電流IB10が増加し、それと共に、トランジスタQ10のコレクタ電流IC10も増加する。
【0020】
一方、トランジスタQ10のコレクタに供給される電流は、トランジスタQ117のコレクタ電流IC117の一部である電流IXと、トランジスタQ17のベース電流IB17である。
ここで、電流IXの元となるコレクタ電流IC117は増やすことができない。それは、トランジスタQ117がトランジスタQ109とカレントミラーを構成しており、ミラー元となるトランジスタQ109のコレクタ電流となる電流源CS1の出力電流が一定であるためである。
【0021】
したがって、トランジスタQ10のコレクタ電流IC10の増加分は、トランジスタQ17のベース電流IB17を増加させることで対応することとなる。したがって、トランジスタQ17は、ON状態となる。
ここで、出力電圧Voutに注目すると、出力電圧Voutは、トランジスタQ10のコレクタ電位にトランジスタQ17のベース・エミッタ間電圧Vbeを加えた大きさとなる。
【0022】
トランジスタQ10のベース電流IB10が増加することで、コレクタ電流IC10が増加する場合、トランジスタQ10は飽和領域に近づいてゆくのでコレクタ電位は低下する。したがって、演算増幅器の出力電圧Voutも低下する方向に変動することとなる。その結果、図15に示されたように、電源ラインへのAC入力電力が増加し、ある大きさを越えると、この検証回路ではそれまで6V付近で一定を保っていた出力電圧Voutが低下する方向に変動することが確認された。
【0023】
上述のように、電源ラインに高周波外来ノイズが混入し、正電源端子VCCに高周波のAC電圧が重畳されると、AC電流IXCが発生し、この電流IXCが回路後段に伝わることで出力電圧Voutの変動が生じる。
かかる検証結果に基づいて、本願発明者は、AC電流IXCを減らすことができれば、出力電圧Voutの変動を抑制することができるという結論を得るに至った。
【0024】
ここで、AC電流IXCは、下記の式1に示された相関式で表すことができる。
【0025】
IXC∝VCA/{(1/2πf)×(1/C1+1/Cb1+1/Cb2)}・・・式1
【0026】
ここで、VCAは、正電源端子VCCノードにおける高周波AC電圧の振幅、fは、高周波AC電圧の周波数、C1は、位相補償容量C1の容量値、Cb1は、トランジスタQ15のコレクタ・ベース間の寄生容量値、Cb2は、トランジスタQ8のベース・エミッタ間の寄生容量値である。
【0027】
式1の分子VCAは、正電源端子VCCにおける高周波AC電圧の振幅であり、例えば、図14図16において模式的に示された如くのものである。
この電圧VCAを、AC電流IXCが通るトランジスタQ15の寄生容量Cb1、位相補償容量C1、トランジスタQ8の寄生容量Cb2のインピーダンスで除した値がAC電流IXCと相関を有するものとなる。
先に述べたように、AC電流IXCを減らせば出力電圧Voutの変動を抑制することが可能となるが、そのためには、正電源端子VCCの高周波AC電圧の振幅VCAを減少させる必要がある。
【0028】
この高周波AC電圧の振幅VCAを減少させる方策として、例えば、正電源端子VCCと負電源端子VEEとの間にコンデンサを挿入する方法が一般的に良く知られている。
これは、いわゆる電源間のパスコンと称されるもので、具体的には、図17に示されたように、演算増幅器の正電源端子VCCと負電源端子VEEとの間に、コンデンサCX1を挿入する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特許第3886090号公報
【0030】
【非特許文献1】P.R.グレイ著、「アナログ集積回路設計技術下巻」、培風館
【非特許文献2】吉澤浩和著、「CMOS OPアンプ回路 実務設計の基礎」、CQ出版社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
しかしながら、図17に示されたように電源間にコンデンサCX1を半導体プロセスで形成すると、ESD(Electro Static Discharge)のサージに対して脆弱になるという問題がある。すなわち、電源端子間に数千V程度のサージが入った場合、コンデンサCX1の両端にはこのサージが直接印加されるため、薄い絶縁膜で形成されたコンデンサCX1はサージに耐え得ずに破損する可能性がある。
【0032】
このようなコンデンサCX1のサージによる破損を防ぐ方策としては、例えば、薄い絶縁膜でコンデンサCX1を形成することに代えて、PN接合容量で代用する比較的良く知られた方法がある。
具体的には、図18に示されたように、ダイオード構造を有する素子DX1を、そのカソードが演算増幅器の正電源端子VCCに、また、アノードが負電源端子VEEに、それぞれ接続して設け、この素子DX1の寄生容量CbX1を先のコンデンサCX1の代替として用いるものである。
【0033】
但し、この方法は、寄生容量CbX1の容量値を大きくしようとした場合、大きな面積のPN接合を必要とする。さらに、大きな面積のPN接合は、カソードからアノードへのリーク電流の増加を招くという問題がある。したがって、低消費電流を特徴とする演算増幅器にあっては、図18に示された構成を採ることは低消費電流特性を損なうという問題を招くこととなる。
【0034】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、消費電流の増加を招くことなく電源ラインに高周波外来ノイズが混入しても安定した出力特性を得ることのできる演算増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る演算増幅器は、
非反転入力端子と反転入力端子間に印加された入力信号の差動増幅可能に構成されてなる演算増幅器であって、
前記入力信号の差動増幅を行う差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力レベルのシフトを行うレベルシフト回路と、前記レベルシフト回路を介して入力された前記差動増幅回路の出力を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力を所望の出力レベルとして出力する出力回路とを具備してなり、
前記差動増幅回路の出力と前記増幅回路の出力との間に、前記差動増幅回路の出力側から位相補償用コンデンサとインピーダンス素子とが直列接続されて設けられてなるものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、位相補償用コンデンサと直列にインピーダンス素子を設けることで高周波外来ノイズにより演算増幅器内部において発生し位相補償用コンデンサに流入してくるAC電流が低減されるので、消費電流の増加を招くことなく演算増幅器の出力電圧の変動が抑制され、高周波外来ノイズが混入しても安定した出力特性を得ることのできる演算増幅器を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施の形態における演算増幅器の回路構成例を示す回路図である。
図2図1に示された演算増幅器のブロック化した構成を示す構成図である。
図3図2に示された構成において減衰抵抗器の挿入位置を変えた例における構成図である。
図4図2に示された構成において2つの減衰抵抗器を設けた場合の構成図である。
図5図2に示された構成をさらに概略化した構成を示す構成図である。
図6】本発明の実施の形態における演算増幅器の高周波外来ノイズの入力電力変化に対する出力電圧の変化特性例を示した特性線図である。
図7】本発明の実施の形態における演算増幅器の入力信号の周波数に対する電圧利得の変化特性を示す特性線図であって、図7(A)は減衰抵抗器の抵抗値RX11がRX11=0Ωの場合の入力信号の周波数に対する電圧利得の変化特性を示す特性線図、図7(B)は減衰抵抗器の抵抗値RX11がRX11=(1+Cb3/C1)/gmQ9Q10Ωの場合の入力信号の周波数に対する電圧利得の変化特性を示す特性線図、図7(C)は減衰抵抗器の抵抗値RX11がRX11>(1+Cb3/C1)/gmQ9Q10Ωの場合の入力信号の周波数に対する電圧利得の変化特性を示す特性線図である。
図8】本発明の実施の形態における演算増幅器の位相補償用コンデンサの寄生抵抗を模式的に示した模式図である。
図9】演算増幅器の入力端子に混入する高周波外来ノイズの出力電圧の影響を検証するための検証回路の回路構成例を示す回路図である。
図10図9に示された検証回路に用いられた従来の演算増幅器の具体的な回路構成例を示す回路図である。
図11図9に示された回路におけるAC電圧源RFの周波数変化に対する演算増幅器OP1の出力電圧Voutの変化特性例を示す特性線図である。
図12】高周波外来ノイズに対する出力電圧の変動対策を施した従来の演算増幅器の回路構成例を示す回路図である。
図13図12に示された従来回路における高周波外来ノイズの周波数変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線図である。
図14図12に示された演算増幅器における電源ラインへの高周波外来ノイズ混入の際の出力電圧の変化を検証するために用いた検証回路の構成を示す構成図である。
図15図14に示された検証回路を用いた検証結果である電源ラインへのAC入力電力の変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線図である。
図16図12に示された演算増幅器に高周波外来ノイズが混入した場合における主要部の電流の流れを示した回路図である。
図17図12に示された従来の演算増幅器において高周波AC電圧の振幅を減らす方策を施した場合の回路構成を示す回路図である。
図18図17に示された演算回路にダイオード構造を有する素子をコンデンサとして正電源端子と負電源端子間に設けた場合の回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図8を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における演算増幅器の回路構成について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における演算増幅器は、差動増幅回路110と、第1及び第2のレベルシフト回路111,112と、第3及び第4のレベルシフト回路113,114と、高利得増幅回路115と、出力回路116と、電流制限回路117と、電流源回路118とに大別されて構成されたものとなっている。
【0039】
本発明の実施の形態における演算増幅器は、従来の演算増幅器の回路構成と基本的に同様の回路構成を有するものであるが、後述するように、AC電流IXCを低減するための構成を有する点が従来と異なるものである。
以下、本発明の実施の形態における演算増幅器の具体的な回路構成について説明する。
まず、差動増幅回路110は、差動対を構成する第3及び第4のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q3」、「Q4」と表記)3,4と、アクティブ負荷を構成する第5及び第6のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q5」、「Q6」と表記)5,6を主たる構成要素として構成されている。
なお、本発明の実施の形態においては、第3及び第4のトランジスタ3,4にPNP型バイポーラトランジスタが、第5及び第6のトランジスタ5,6には、NPN型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0040】
第3及び第4のトランジスタ3,4は、エミッタが相互に接続されると共に、PNP型バイポーラトランジスタを用いた第112のトランジスタ(図1においては「Q112」と表記)32のコレクタに接続されている。そして、この第112のトランジスタ32のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
【0041】
一方、第5及び第6のトランジスタ5,6は、カレントミラー接続されて設けられている。
すなわち、第5及び第6のトランジスタ5,6は、ベースが相互に接続されると共に、第5のトランジスタ5のコレクタと接続されて、第5のトランジスタ5は、いわゆるダイオード接続されて設けられている。
第5のトランジスタ5のコレクタには、第3のトランジスタ3のコレクタが、第6のトランジスタ6のコレクタには、第4のトランジスタ4のコレクタが、それぞれ接続されている。また、第5及び第6のトランジスタ5,6のエミッタには、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
【0042】
次に、第1及び第2のレベルシフト回路111,112は、反転入力端子(図1においては「INM」と表記)61と非反転入力端子(図1においては「INP」と表記)62に入力される入力信号のダイナミックレンジの下限レベルを負電源端子の電位以下に拡大する機能を果たすものである。
第1のレベルシフト回路111は、第1のトランジスタ(図1においては「Q1」と表記)1と、第111のトランジスタ(図1においては「Q111」と表記)31と、第1の入力抵抗器(図1においては「Rin1」と表記)41とを有して構成されている。
【0043】
また、第2のレベルシフト回路112は、第2のトランジスタ(図1においては「Q2と表記)2と、第113のトランジスタ(図1においては「Q113」と表記)33と、第2の入力抵抗器(図1においては「Rin2」と表記)42とを有して構成されている。いずれのレベルシフト回路111,112も基本的構成は同一である。
【0044】
なお、本発明の実施の形態においては、第1及び第2のトランジスタ1,2、並びに、第111及び第113のトランジスタ31,33には、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
【0045】
第1のトランジスタ1のエミッタは、第3のトランジスタ3のベースに接続されると共に、第111のトランジスタ31のコレクタに接続されている。そして、第111のトランジスタ31のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第1のトランジスタ1のコレクタは、負電源電圧VEEが印加される一方、ベースは、第1の入力抵抗器41を介して反転入力端子61に接続されている。
【0046】
第2のトランジスタ2のエミッタは、第4のトランジスタ4のベースに接続されると共に、第113のトランジスタ33のコレクタに接続されている。そして、第113のトランジスタ33のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第2のトランジスタ2のコレクタは、負電源電圧VEEが印加される一方、ベースは、第2の入力抵抗器42を介して非反転入力端子62に接続されている。
【0047】
第3のレベルシフト回路113は、第7のトランジスタ(図1においては「Q7」と表記)7と第110のトランジスタ(図1においては「Q110」と表記)30とを有して構成されている。この第3のレベルシフト回路113は、第5及び第6のトランジスタ5,6により構成されたアクティブ負荷に流れる電流の誤差をなくすために設けられたダミー回路である。
なお、本発明の実施の形態においては、第7のトランジスタ7及び第110のトランジスタ30に、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
【0048】
第7のトランジスタ7のエミッタは、第110のトランジスタ110のコレクタに接続され、第110のトランジスタ30のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第7のトランジスタ7のコレクタには、負電源電圧VEEが印加される一方、ベースは第5のトランジスタ5のコレクタに接続されている。
【0049】
第4のレベルシフト回路114は、第8のトランジスタ(図1においては「Q8」と表記)8と第114のトランジスタ34とを有して構成されている。
なお、本発明の実施の形態において、第8のトランジスタ8及び第114のトランジスタ34には、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
第8のトランジスタ8のエミッタは、第114のトランジスタ34のコレクタに接続され、第114のトランジスタ34のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
【0050】
この第4のレベルシフト回路114は、アクティブ負荷となる第6のトランジスタ6のコレクタ・エミッタ電圧を、第5のトランジスタ5のコレクタ・エミッタ間電圧Vce(=Vbe:ベース・エミッタ間電圧)と同一電位にバイアスする機能を果たす。
【0051】
高利得増幅回路115は、ダーリントン接続された第9及び第10のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q9」、「Q10」と表記)9,10と、第115及び第117のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q115」、「Q117」と表記)35,37とを有して構成されている。
本発明に実施の形態において、第9及び第10のトランジスタ9,10には、NPN型バイポーラトランジスタが、第115及び第117のトランジスタ35,37には、PNP型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0052】
第9のトランジスタ9のベースは、第8のトランジスタ8のエミッタに接続される一方、エミッタは、第10のトランジスタ10のベースに接続されている。 また、第9のトランジスタ9のコレクタは、第115のトランジスタ35のコレクタに接続されており、この第115のトランジスタ35のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
【0053】
一方、第10のトランジスタ10のコレクタは、第117のトランジスタ37のコレクタに接続されており、この第117のトランジスタ37のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第10のトランジスタ10のエミッタは、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
そして、第10のトランジスタ10のコレクタは、次述する出力回路116の入力段に接続されている。
【0054】
出力回路116は、第15乃至第17のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q15」、「Q16」、「Q17」と表記)15~17と、第1及び第2の抵抗器(図1においては、それぞれ「R1」、「R2」と表記)43,44とを有して構成されている。
本発明の実施の形態において、第15及び第16のトランジスタ15,16には、NPN型バイポーラトランジスタが、第17のトランジスタ17には、PNP型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0055】
正電源電圧VCCと負電源電圧VEEとの間に、正電源電圧VCC側から、第16のトランジスタ16、第2の抵抗器44、及び、第17のトランジスタ17が直列接続されて設けられている。
第16のトランジスタ16のベースには、この第16のトランジスタ16とダーリントン回路を構成する第15のトランジスタ15のエミッタが接続されると共に、第1の抵抗器43を介して第16のトランジスタ16のエミッタが接続されている。
【0056】
第15のトランジスタ15のコレクタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている一方、ベースは、高利得増幅回路115の第10のトランジスタ10のコレクタに接続されている。
なお、第15のトランジスタ15のベースと第8のトランジスタ8のベースとの間には、第15のトランジスタ15のベース側から、減衰抵抗器(図1においては「RX11」と表記)49、位相補償用コンデンサ(図1においては「C1」と表記)51の順で直列接続されて設けられている。
【0057】
電流制限回路117は、第11乃至第14のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q11」、「Q12」、「Q13」、「Q14」と表記)11~14と、第116のトランジスタ(図1においては「Q116」と表記)36とを有して構成されている。かかる電流制限回路117は、出力回路116の第16のトランジスタ16に流れる電流の抑圧と、第9のトランジスタ9のコレクタ電流の制限を行うものである。
本発明の実施の形態において、第11及び第116のトランジスタ11,36には、PNP型バイポーラトランジスタが、第12乃至第14のトランジスタ12~14には、NPN型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0058】
第12及び第13のトランジスタ12,13は、カレントミラー回路を構成している。
すなわち、第12及び第13のトランジスタ12,13のベースは相互に接続されると共に、第12のトランジスタ12のコレクタに接続されている一方、各々のエミッタには、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
【0059】
また、第12のトランジスタ12のコレクタは、第116のトランジスタ36のコレクタに接続され、第116のトランジスタ36のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。さらに、第12のトランジスタ12のコレクタには、第11のトランジスタ11のベースが接続されている。
第11のトランジスタ11のエミッタは、第9のトランジスタ9のコレクタに接続される一方、第11のトランジスタ11のコレクタには、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
【0060】
また、第13のトランジスタ13のコレクタは、第14のトランジスタ14のベースと共に第16のトランジスタ16のエミッタに接続されている。
そして、第14のトランジスタ14のコレクタは、第15のトランジスタ15のベースに接続される一方、第14のトランジスタ14のエミッタは、第17のトランジスタ17のエミッタと共に出力端子63に接続されている。
【0061】
電流源回路118は、第109乃至第117のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q109」、「Q110」、「Q111」、「Q112」、「Q113」、「Q114」、「Q115」、「Q116」、「Q117」と表記)29~37と、定電流源(図1においては「CS1」と表記)120とを有して構成されている。
本発明の実施の形態において、第109乃至第117のトランジスタ29~37には、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
【0062】
第109のトランジスタ29と、第110乃至第117のトランジスタ30~37は、カレントミラー回路を構成しており、入力段を構成する第109のトランジスタ29側から出力段となる第110乃至第117のトランジスタ30~37の各トランジスタに電流出力が得られるようになっている。
すなわち、第109のトランジスタ29のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている一方、ベースとコレクタとは相互に接続されて、その接続点と負電源電圧VEEとの間に定電流源120が設けられている。
そして、第109のトランジスタ29のベースは、第110乃至第117のトランジスタ30~37の各ベースと相互に接続されている。
【0063】
上述した回路構成は、図2に示された構成に集約される。
以下、図2を参照しつつ、この構成について説明する。
図2に示された演算増幅器は、差動増幅回路(図2においては「DF1」と表記)110と、第1及び第2の定電流源(図2においては、それぞれ「CS11」、「CS12」と表記)38,39と、第8乃至第10のトランジスタ8~10と、出力回路(図2においては「OS1」と表記)116と、位相補償用コンデンサ51と、減衰抵抗器49とを備える構成となっている。
【0064】
図1に示された回路構成との対応は、次述する通りである。
まず、差動増幅回路110は、図1における第1及び第2の入力抵抗器41,42、第1乃至第7のトランジスタ1~7、定電流源120、及び、第109乃至第113のトランジスタ29~33で構成される部分に対応する。
また、第1の定電流源38は、図1における第114のトランジスタ34に、第2の定電流源39は、図1における第115のトランジスタ35に、それぞれ対応している。
【0065】
出力回路116は、図1における第11乃至第17のトランジスタ11~17、第116及び第117のトランジスタ36,37、第1及び第2の抵抗器43,44で構成される部分に対応する。
次に、具体的な回路接続について説明する。
差動増幅回路110の反転入力端子D1は、演算増幅器の反転入力端子61に、差動増幅回路110の非反転入力端子D2は、演算増幅器の非反転入力端子62に、それぞれ接続されている。
【0066】
また、差動増幅回路110の正電源端子D3は、演算増幅器の正電源端子64、差動増幅回路110の負電源端子D4は、演算増幅器の負電源端子65に、それぞれ接続されている。
この差動増幅回路110の出力端子D5は、位相補償用コンデンサ51の一端と、寄生容量Cb2の一端、及び、第8のトランジスタ8のベースに接続されている。
【0067】
第8のトランジスタ8のコレクタは、負電源端子65に、エミッタは、寄生容量Cb2の他端、第1の定電流源38、及び、第9のトランジスタ9のベースに接続されている。
第9のトランジスタ9のコレクタは、第2の定電流源39に接続される一方、エミッタは、第10のトランジスタ10のベースに接続されている。
【0068】
第10のトランジスタ10のエミッタは、負電源端子65に接続される一方、コレクタは、寄生容量Cb1の一端、減衰抵抗器49の一端、寄生容量Cb3の一端、及び、出力回路116の入力端子O1に接続されている。
出力回路116の出力端子O2は、演算増幅器の出力端子63に接続されている。
また、寄生容量Cb1の他端は、演算増幅器の正電源端子64に、寄生容量Cb3の他端は、演算増幅器の負電源端子65に、それぞれ接続されている。
減衰抵抗器49の他端は、位相補償用コンデンサ51の他端に接続されている。
【0069】
図2において、太実線矢印で示された電流の経路は、高周波外来ノイズにより生ずるAC電流IXCを示している。
次に、かかる構成における高周波外来ノイズによるAC電流IXCの低減と出力電圧Voutの変動の抑圧について説明する。
まず、位相補償用コンデンサ51を流れるAC電流IXCは、従来技術で説明した通りであるが、再掲すれば下記する式2の相関式で表される。
【0070】
IXC∝VCA/〔(RX11)+{(1/2πf)×(1/C1+1/Cb1+1/Cb2)}1/2・・・式2
【0071】
ここで、VCAは、正電源端子64における高周波AC電圧の振幅、RX11は、減衰抵抗器49の抵抗値、fは、高周波AC電圧の周波数、C1は、位相補償用コンデンサ51の容量値、Cb1は、第15のトランジスタ15のコレクタ・べース間の寄生容量値、Cb2は、第8のトランジスタ8のベース・エミッタ間の寄生容量値である。
【0072】
この構成例にあっては、位相補償用コンデンサ51と直列接続した減衰抵抗器49の抵抗値が、式2で示されたAC電流IXCと高周波AC電圧の相関を表す式の分母となるため、その抵抗値の調整によりAC電流IXCを減少させることが可能となる。
AC電流IXCが減少すると、第9のトランジスタ9のベース電流の増加が抑制され、第10のトランジスタ10のベース電流の増加も抑えられる。その結果、第10のトランジスタ10のコレクタ電位は下がり難くなり、演算増幅器の出力電圧Voutは低下し難くなる。
【0073】
図6には、本発明の実施の形態における演算増幅器の電源ラインへのAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性例が示されており、以下、同図について説明する。
図6において、横軸はAC入力電力Pinを、縦軸は、出力電圧Voutを、それぞれ示している。
同図において、実線の特性線は、減衰抵抗器49の抵抗値RX11を1000Ωとした場合の特性例である。
なお、同図において、点線の特性線は、図12に示された従来回路の同様な特性例である。
【0074】
図6によれば、従来回路の場合、入力電力Pin=30dBmで出力電圧Voutは、正常値の6Vから大きく低下している。
これに対して、本発明の実施の形態における演算増幅器の場合、入力電力Pin=30dBmを越えても出力電圧Voutは、正常値の6Vに保たれる良好な結果を示している。
【0075】
ここで、減衰抵抗器49の抵抗値RX11の選定について説明する。
抵抗値RX11が小さい場合、AC電流IXCの低減効果が小さくなる一方、大きすぎると演算増幅器のAC特性に大きな影響を及ぼす。
したがって、抵抗値RX11の大きさは、AC電流IXCの低減効果とAC特性の悪化とのバランスの下、適切な範囲で選定する必要がある。
【0076】
そこで、まず、抵抗値RX11の下限値について検討する。
先の式2を参照すると、分数式の分母は、減衰抵抗器49とコンデンサの合成インピーダンスの和である。したがって、コンデンサの合成インピーダンスよりも抵抗値RX11が低い場合は、AC電流IXCの低減効果を得ることは難しい。それ故、抵抗値RX11の下限値は、下記する式3に示されるようにコンデンサのインピーダンスより大きな値に選定することが好適である。
【0077】
(1/2πf)×{(1/C1)+(1/Cb1)+(1/Cb2)}<RX11・・・式3
【0078】
次に、抵抗値RX11の上限値について検討する。
先に述べたように抵抗値RX11が大きいほど演算増幅器のAC特性への影響が増大する。一般的に、位相補償用コンデンサ51と直接接続された抵抗器は、例えば、非特許文献1、2等で良く知られているようにゼロ点を作る役割を果たす。このゼロ点を作る減衰抵抗器49の抵抗値RX11は、下記する式4の不等式を満たす上限値にすることが望ましい。
【0079】
RX11<(1+Cb3/C1)/gmQ9Q10・・・式4
【0080】
ここで、Cb3は、出力回路116の入力端子01のノードに接続される寄生容量(図2参照)であり、より具体的には、第17のトランジスタ17のベースと負電源電圧との間に生ずる寄生容量である(図1参照)。
また、gmQ9Q11は、ダーリントン接続されている第9及び第10のトランジスタ9,10のトランスコンダクタンスである。
【0081】
図7には、抵抗値RX11を3つの代表的な値に選定した場合の演算増幅器の周波数変化に対する電圧利得のシミュレーション結果が示されており、以下、同図について説明する。
なお、図7において、横軸は入力信号の周波数を、縦軸は電圧利得を、それぞれ示している。また、p2はセカンドポールの周波数を、p3はサードポールの周波数を、それぞれ意味している。
図7(A)は、抵抗値RX11=0Ωの場合の電圧利得の周波数特性を示している。この場合、ゼロ点が存在せず、周波数特性に特段の異常は無い。
【0082】
図7(B)は、抵抗値RX11=(1+Cb3/C1)/gmQ9Q10Ωの場合の電圧利得の周波数特性を示している。この場合、セカンドポールとゼロ点が一致し、周波数特性に特段の異常は無い。
図7(C)は、先の式4を満たさない場合、すなわち、抵抗値RX11>(1+Cb3/C1)/gmQ9Q10Ωの場合の電圧利得の周波数特性を示している。
【0083】
この場合、ゼロ点の周波数がセカンドポールの周波数よりも低いため、ゼロ点までは-20dB/decで低下していた電圧利得が、ゼロ点以降セカンドポールまでの間、一旦、平坦となり、一般的ではない周波数特性となっている。
このような周波数特性を有する回路は動作が不安定となるため、結局のところ抵抗値RX11は、先の式4を満たす条件で選定されることが必要となる。
【0084】
結論として、式3と式4とから、抵抗値RX11は、下記する式5の範囲で選定することが望ましい。
【0085】
(1/2πf)×{(1/C1)+(1/Cb1)+(1/Cb2)}<RX11<(1+Cb3/C1)/gmQ9Q10・・・式5
【0086】
例えば、周波数f=0.5GHz、C1=10pF、Cb1=1pF、Cb2=5pF、Cb3=10pF、gmQ9Q10=1mA/Vとした場合、選定されるべき抵抗値RX11は、414Ω~2000Ωの範囲となる。
先の図6に示されたAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性は、式5の条件を満たすように抵抗値RX11=1000Ωとした場合のものであり、改善効果が確かに確認できるものとなっている。
【0087】
本発明の実施の形態における演算増幅器は、ESDのサージ電圧が届きにくい内部回路における減衰抵抗器49の追加を特徴とするものであるので、減衰抵抗器49を設けることでESD耐性の劣化を招くことは無い。また、減衰抵抗器49を設けることに起因して何らかのリーク電流の増加を招くことも無いため、低消費電流を特徴とする演算増幅器にも悪影響を及ぼすことなく適用できる。
【0088】
また、減衰抵抗器49を設けるだけで済むので、ローパスフィルタなどのコンデンサを必要とする構成と比較して、抵抗素子は占有面積が小さい場合が多いので、本発明の実施の形態の演算増幅器を用いることでチップ面積の縮小化を図ることが可能となる。
【0089】
なお、上述の実施の形態においては、減衰抵抗器49を位相補償用コンデンサ51と出力回路116との間に設けるようにしたが、減衰抵抗器49は、必ずしもこの位置に限定されるものではない。例えば、図3に示されたように、差動増幅回路110と位相補償用コンデンサ51との間に、減衰抵抗器49を設けても良い。
【0090】
さらに、図4に示されたように、第1及び第2の減衰抵抗器49a,49b(図4においては、それぞれ「RX11」、「RX12」と表記)を設け、この第1及び第2の減衰抵抗器49a,49bの間に位相補償用コンデンサ51が位置するように差動増幅回路110と出力回路116との間に直列接続した構成としても良い。
いずれの場合にあっても、位相補償用コンデンサ51と直列に接続された抵抗器を設ける構成を採ることが基本である。
【0091】
なお、図1図4において、減衰抵抗器49を位相補償用コンデンサ51に直列に接続された抵抗器で構成した実施の形態について説明したが、位相補償用コンデンサ51の寄生抵抗も減衰抵抗器49の一部として用いることが可能である。
図8には、位相補償用コンデンサの等価回路を示す模式図が示されており、以下、同図を参照しつつ、位相補償用コンデンサ51の寄生抵抗について説明する。
位相補償用コンデンサの正極端子51+と負極端子51-には、図8において「R51a」、「R51b」、「R51c」、「R51d」として示すように、寄生抵抗が存在する。ここで、位相補償用コンデンサの容量値C1はC1=C1a+C1bである。
【0092】
したがって、図8に示したR51aおよびR51bは、図4の第2の減衰抵抗器49bの一部として用いることも可能である。同様に、図8に示したR51cおよびR51dは、図4の第1の減衰抵抗器49aの一部として用いるこをも可能である。
すなわち、位相補償用コンデンサ51は、正方形にレイアウトするより、長方形にレイアウトして積極的に寄生抵抗をつけることが好適である。
【0093】
また、上述した本発明の実施の形態において、レベルシフトのために設けられた第8のトランジスタ8に、PNP型バイポーラトランジスタを用いたが、NPN型バイポーラトランジスタを用いても良い。基本的には、図5に示されたようにレベルシフト回路(図5においては「LS1」と表記)211が設けられれば良い。
【0094】
またさらに、図2において、第9及び第10のトランジスタ9,10、並びに、第2の定電流源39で構成されたダーリントン接続の増幅回路は、図1において高利得増幅回路115に相当し、この増幅回路のトランスコンダクタンスをgmQ9Q11としたが、この部分は、ダーリントン接続構成やトランジスタの種類(PNP、NPN)が限定される必要はなく、図5に示されたように、増幅回路(図5においては「GM1」と表記)212が設けられる構成であれば良い。
したがって、先に図2に示された構成は、図5のように概略化可能となる。
【0095】
以下、図5を参照しつつ、その構成について説明する。
なお、図2に示された構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
差動増幅回路110の反転入力端子D1は、演算増幅器の反転入力端子61に、差動増幅回路110の非反転入力端子D2は、演算増幅器の非反転入力端子62に、それぞれ接続されている。
【0096】
また、差動増幅回路110の正電源端子D3は、演算増幅器の正電源端子64に、差動増幅回路110の正電源端子D4は、演算増幅器の負電源端子65に、それぞれ接続されている。
さらに、差動増幅回路110の出力端子D5は、位相補償用コンデンサ51とレベルシフト回路211の入力端子S3と寄生容量Cb2の一端に接続され、寄生容量Cb2の他端は、レベルシフト回路211の出力端子S4と増幅回路212の入力端子S5に接続されている。
【0097】
増幅回路212の出力端子S6は、インピーダンス素子(図5においては「ZX1」と表記)50の一端と、出力回路116の入力端子O1と、寄生容量Cb1及び寄生容量Cb3の一端に接続されている。
寄生容量Cb1の他端は、正電源端子64に、寄生容量Cb3の他端は、負電源端子65に、それぞれ接続されている。
インピーダンス素子50の他端は、位相補償用コンデンサ51の他端に接続されている。
出力回路116の出力端子O2は、演算増幅器の出力端子63に接続されている。
なお、インピーダンス素子50は、具体的には、先に、図1乃至図4で例示したように抵抗器が好適である。
【0098】
図5に示された回路構成において、位相補償用コンデンサ51の容量値をC1、増幅回路212のトランスコンダクタンスをgmとしたとき、インピーダンス素子50のインピーダンスの大きさZ1は、下記する式6を満足する範囲で選定すると好適である。
【0099】
(1/2πf)×{(1/C1)+(1/Cb1)+(1/Cb2)}<Z1<(1+Cb3/C1)/gm・・・式6
【0100】
図5に示された構成においては、式6に基づいて選定されたインピーダンスを有するインピーダンス素子50が設けられることで、AC電流IXC(図5参照)が低減し、増幅回路212の出力電流の増加が抑制される。増幅回路212の出力電流の増加が抑制されることは、増幅回路212の出力電圧の変動が抑制されることを意味する。
すなわち、演算増幅器の出力電圧Voutの変動が抑制されることとなる。
結局、先に図6に示された特性例のように、演算増幅器の電源ラインへの高周波外来ノイズに対する耐性が向上することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、消費電流の増加を招くことなく電源ラインへの高周波外来ノイズの混入に対して安定した出力特性が所望される演算増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0102】
49…減衰抵抗器
50…インピーダンス素子
51…位相補償用コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18