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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030946
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】粉末食品及び風味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20220210BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135285
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(71)【出願人】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 知哉
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE02
4B016LG08
4B016LG10
4B016LP08
(57)【要約】
【課題】大根葉の乾燥物に対して、他の葉菜類の乾燥物を加えることにより、大根葉に起因するえぐみの影響を抑制できる粉末食品及び風味改善方法を提供する。
【解決手段】本発明の粉末食品は、大根葉の乾燥物Lと、大根葉以外の葉菜類(アブラナ科アブラナ属の葉菜類など)の乾燥物Lと、を含み、乾燥物Lの含有量を1質量部とした場合に、前記乾燥物Lの含有量が、2質量部以上14質量部以下である。本発明の風味改善方法は、大根葉の乾燥物Lと、大根葉以外の葉菜類(アブラナ科アブラナ属の葉菜類など)の乾燥物Lと、を含んだ粉末食品の風味を改善する風味改善方法であって、乾燥物Lを、乾燥物L1質量部に対して、1/14質量部以上1/2質量部以下配合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大根葉の乾燥物(L)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L)と、を含み、
前記乾燥物(L)の含有量を1質量部とした場合に、前記乾燥物(L)の含有量が、2質量部以上14質量部以下であることを特徴とする粉末食品。
【請求項2】
前記乾燥物(L)が、アブラナ科アブラナ属及び/又はヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属の葉菜類の乾燥物である請求項1に記載の粉末食品。
【請求項3】
前記乾燥物(L)は、調味後に乾燥させた乾燥物である請求項1又は2に記載の粉末食品。
【請求項4】
大根葉の乾燥物(L)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L)と、を含んだ粉末食品の風味を改善する風味改善方法であって、
前記乾燥物(L)を、前記乾燥物(L)1質量部に対して、1/14質量部以上1/2質量部以下配合することを特徴とする風味改善方法。
【請求項5】
前記乾燥物(L)が、アブラナ科アブラナ属及び/又はヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属の葉菜類の乾燥物である請求項4に記載の風味改善方法。
【請求項6】
前記風味が、前記乾燥物(L)に由来するえぐみである請求項4又は5に記載の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末食品及び風味改善方法に関する。更に詳しくは、大根葉を用いた粉末食品及び風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大根葉(青菜)を含んだふりかけ等の粉末食品は、従来より広く普及している。そのなかで、より美味しくなる工夫や、次第に変化する味覚の嗜好に合わせた変化が求められる。大根葉を用いた粉末食品に関しては、下記特許文献1の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-208936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大根葉を含んだふりかけ等の粉末食品において、その美味しさを強調する手段として、ふりかけ中の大根葉の含有率を増すことが考えられる。しなしながら、大根葉の含有率を増すと、大根葉の風味及び旨味が増すのと共に、大根葉に由来するえぐみ、青臭さ、渋み等が増すという問題がある。とりわけ、大根葉のえぐみは問題となり、大根葉の含有率を増すと、結果として、食味が低下してしまう場合があるという問題がある。
【0005】
一方、上記特許文献1には、粉末飲料用の植物乾燥粉末の風味改善方法が開示されている。しかしながら、特許文献1は、食感を要さない飲料用粉末に関する技術であり、水分散した飲料が食味の対象となる。このため、食品として大根葉の乾燥粉末物をそのまま食す粉末食品とは、食味の対象が全く異なり、特許文献1の技術を利用できないという問題がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、大根葉の乾燥物に対して、他の葉菜類の乾燥物を加えることにより、大根葉に起因するえぐみを抑制できる粉末食品及び風味改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、以下に示される。
[1]本発明の粉末食品は、大根葉の乾燥物(L1)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L2)と、を含み、
前記乾燥物(L2)の含有量を1質量部とした場合に、前記乾燥物(L1)の含有量が、2質量部以上14質量部以下であることを特徴とする。
[2]本発明の粉末食品では、前記乾燥物(L2)が、アブラナ科アブラナ属及び/又はヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属の葉菜類の乾燥物にすることができる。
[3]本発明の粉末食品では、前記乾燥物(L1)を、調味後に乾燥させた乾燥物にすることができる。
[4]本発明の風味改善方法は、大根葉の乾燥物(L1)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L2)と、を含んだ粉末食品の風味を改善する風味改善方法であって、
前記乾燥物(L2)を、前記乾燥物(L1)1質量部に対して、1/14質量部以上1/2質量部以下配合することを特徴とする。
[5]本発明の風味改善方法では、前記乾燥物(L2)が、アブラナ科アブラナ属及び/又はヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属の葉菜類の乾燥物にすることができる。
[6]本発明の風味改善方法では、前記風味が、前記乾燥物(L1)に由来するえぐみであるものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉末食品によれば、大根葉に起因するえぐみが抑制された粉末食品にすることができる。
本発明の風味改善方法によれば、大根葉に起因するえぐみが抑制された粉末食品にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]粉末食品
本発明の粉末食品は、大根葉の乾燥物(L1)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L2)と、を含み、
前記乾燥物(L2)の含有量を1質量部とした場合に、前記乾燥物(L1)の含有量が、2質量部以上14質量部以下であることを特徴とする。
【0010】
(1)粉末食品
本発明の粉末食品は、添加により、対象食材に対して味付けを行ったり、風味や外観(見た目)の嗜好性を高めたりすることを目的とする食品を総称する概念である。使用態様は限定されないが、(1)対象食材にふりかけること(例えば、器に盛った飯米にふりかけること、飯米を成形したおにぎりにふりかけること等)、(2)対象食材にふりかけた後に粉末食品を対象食材に混ぜ込むこと(例えば、器に盛った飯米にふりかけた後、その飯米に混ぜ込むこと等)、(3)対象食材にふりかけた後に液体に分散させること(例えば、お茶漬け、雑炊、スープ、中華スープ、味噌汁等)、などの使用態様が挙げられる。
また、本発明の粉末食品を構成する粉末(乾燥具材や乾燥粉粒)の大きさは限定されないが、通常、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下を主粉末(粉末食品全体の50質量%以上)として構成される。即ち、咀嚼可能であり、食感を有する粉末から構成される。
【0011】
(2)乾燥物L1
乾燥物L1は、大根葉の乾燥物である。大根葉は、アブラナ科ダイコン属の植物の葉(葉及び茎を含む)である。また、種(分類階級としての種)は限定されず、ダイコン属に帰属される植物であればよいが、具体的には、ダイコンが含まれる。また、その具体的な品種は限定されないが、例えば、青首大根、白首大根、宮重大根、辛味大根、葉大根等が含まれる。更に、食用根を得るために栽培された植物から採取されたものであってもよいし、大根葉を得るために栽培された植物から採取されたものであってもよい。これらの植物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0012】
大根葉の産地は限定されず、更に、栽培時期も限定されない。即ち、春だいこん、夏だいこん及び秋冬だいこんのいずれであってもよい。また、大根葉の収穫時期も限定されない。即ち、栽培過程の間引きによって得られる間引き菜、幼根から得られる大根菜、根の収穫期に得られる大根葉、これらを干した干葉などが含まれる。従って、例えば、播種からの生育日数35~45日程の大根葉や、播種からの生育日数60~100日程の大根葉を利用できる。更に、乾燥物L1は、裁断した大根葉の乾燥物であってもよいし、大根葉の乾燥物を裁断したものであってもよい。
【0013】
乾燥物L1は、どのような乾燥方法により得られた乾燥物であってもよい。即ち、乾燥方法は限定されず、例えば、熱風乾燥、凍結乾燥(フリーズドライ)、真空フライ乾燥、遠赤外線照射乾燥、天日乾燥、低温通風乾燥等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。従って、乾燥物L1としては、熱風乾燥物、凍結乾燥物、真空フライ乾燥物、遠赤乾燥物等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0014】
このうち、熱風乾燥物や真空フライ乾燥物は、素材を焦がすことなく、素材の風味を活かした乾燥物にすることができる。また、凍結乾燥品物は、低温で乾燥できるため、素材の風味を活かしつつ、他の乾燥物に比べて多孔度を高くできる。このため、水分吸収速度の高い乾燥物(必要な際に速やかに水分吸収させることができる)にできる。
【0015】
尚、上述の熱風乾燥物を用いる場合、熱風温度は限定されず、例えば、50℃以上80℃以下とすることができ、60℃以上70℃以下の熱風が好ましい。また、乾燥時間は限定されず、例えば、100分以上200分以下にすることができる。熱風乾燥は、低温で乾燥させることができるため、利用熱量を削減でき、低コストに乾燥させることができる。
また、凍結乾燥物を得る場合、凍結温度は限定されず、例えば、-40℃以上-20℃以下とすることが好ましい。また、乾燥時間は限定されず、例えば、20時間以上30時間以下にすることができる。
更に、真空フライ乾燥物を得る場合、油温は限定されず、例えば、減圧下、90℃以上120℃以下とすることが好ましい。
【0016】
乾燥物L1の水分率は限定されないが、例えば、9質量%以下であることが好ましい。9質量%以下であることで、優れた保存性を得ることができる。また、高い乾燥状態に起因する歯ごたえを得ることができる。例えば、本粉末食品を、飯米へふりかけて喫食する場合についていえば、高い乾燥状態である場合、飯米へ粉末食品をふりかけた後、暫くの間は、ぱりぱりとした食感を楽しむことができる。その一方で、経時により水分が付与されると、次第に、大根葉本来の食感を生じるようになる。このように高い乾燥状態で提供することで、複雑且つ変化を伴った食感を与えることができる。この水分率は、更に、8質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。一方、乾燥物L1の水分率は、通常、0.1質量%以上であるが、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。
【0017】
乾燥物L1は、収穫した大根葉をそのまま乾燥させたものであってもよいが、各種の前処理が施された乾燥物であってもよい。前処理としては、選別、洗浄、裁断、脱水、調味、殺菌及び加熱(ブランチングなど)等が挙げられる。これらの前処理は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、乾燥前に調味(調味処理)を行うことが好ましい。即ち、乾燥物L1は、調味後に乾燥された乾燥物であることが好ましい。調味としては、例えば、調味液へ原料を含浸する処理、原料に対して調味料(液状調味料、粉末状調味料等)を散布する処理、調味料(液状の調味料、粉末状の調味料等)の存在下で煮る、炊く、蒸す等の加熱を行う処理、燻す、焼く等の加熱により調味を行う処理等が挙げられる。尚、前処理に供する原料は、乾燥前の原料であってもよいし、例えば、液状物の含浸に適するように適度に乾燥させた乾燥物でもよい。更に、当然ながら、上述の通り、調味においては、含浸、散布、煮る、炊く、蒸す際には、加えた調味料の存在下で原料を撹拌し、調味料を加工物全体に行きわたらせる作業を行うことができる。
【0018】
これらのなかでも、特に、乾燥物L1は、調味液への含浸後に乾燥させた乾燥物、及び/又は、粉末状の調味料を混合した後に乾燥させた乾燥物、が好ましい。これらの乾燥物では、調味のばらつきを抑制して、消費時まで安定して風味を保つことができる。尚、調味処理と殺菌処理との両方を施す場合には、殺菌処理後に調味処理を行うことが好ましい。
また、上述の調味処理の詳細は限定されないが、例えば、食塩及び砂糖を含んだ調味(調味液、調味粉末等)が挙げられる。即ち、乾燥物L1は、食塩及び砂糖を水溶した調味液へ含浸した後に乾燥させた乾燥物や、粉末状の食塩及び砂糖を含んだ粉末調味料を原料に混合した後に乾燥させた乾燥物とすることができる。この場合、乾燥物L1は、食塩及び砂糖を含有した乾燥物L1となる。
【0019】
また、乾燥物L1は、原料である大根葉を細分化した後に乾燥したものであってもよいし、原料である大根葉を乾燥後に細分化したものであってもよい。これらのうちでは、原料である大根葉を細分化した後に乾燥したものであることが好ましい。乾燥前に細分化することで、乾燥後に細分化する場合に比べて、過度に小さな粉末状になることを抑制できる。即ち、乾燥物L1は、咀嚼可能であり、食感を有する粉末であることが好ましい。より具体的には、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下の乾燥物であることが好ましい。このように、乾燥物全体(原料乾燥物)から、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下の乾燥物を選択することで、凡そ10~20質量%の過度に細かい乾燥物や過度に大きな乾燥物を除去することができる。尚、当然ながら、目開き5.66mm篩上となった過度に大きな乾燥物は、裁断することにより、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下の範囲に収めて、利用に供することができる。
【0020】
乾燥物L1の大きさは限定されず、上述の通り、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下の乾燥物であることが好ましいが、より具体的には、乾燥物L1として、最大長が0.7mm以上、更には、最大長が1.0mm以上のものが含まれることが好ましい。最大長0.7mm以上の乾燥物L1が含まれることで、優れた食感を得ることができる。とりわけ、歯ごたえを与え、咀嚼を誘発することができため、唾液の分泌を促し、美味しさをより感じ易くすることができると考えられる。また、乾燥物L1の最大長は20mm以下であることが好ましく、18mm以下であることがより好ましい。乾燥物L1の最大長を20mm以下に抑えることにより、優れた食感を維持しながら、咀嚼後の繊維残りを抑制できる。このため、食べ易く、美味しさをより感じ易くすることができると考えられる。更に、乾燥物L1以外の成分とも混ざり易い形態を維持できる。
【0021】
更に詳しくは、乾燥物L1は、その最大長により、最大長1mm未満の第1成分、最大長1mm以上4mm未満の第2成分、最大長4mm以上8mm未満の第3成分、最大長8mm以上12mm未満の第4成分、最大長12mm以上16mm未満の第5成分、最大長16mm以上の第6成分という6種類に分類することができる。
そして、このように6種類に分類した場合、第1成分は、含まれないか、又は、含まれたとしても、乾燥物L1全体100質量%に対して5質量%未満であることが好ましい。即ち、本粉末食品は、最大長4mm以上の第2成分~第6成分を合計で95質量%以上含むことが好ましい。これにより、上述の通り優れた食感を得ることができる。
【0022】
更に、本発明の粉末食品は、上述の乾燥物L1に関する6成分のなかでも、第2成分及び第3成分を最も多く含むものであることが好ましい。具体的には、乾燥物L1全体100質量%に対して、第2成分と第3成分とを合計で50質量%以上含むことが好ましく、更には、55質量%以上95質量%以下含むことがより好ましく、65質量%以上90質量%以下含むことが特に好ましい。このような構成を有することも優れた食感を得ることに寄与する。
加えて、本発明の粉末食品は、上述の6成分のなかでも、第4成分及び第5成分をその合計により、上述した第2成分及び第3成分の合計についで多く含むものであることが好ましい。具体的には、乾燥物L1全体100質量%に対して、第4成分と第5成分とを合計で5質量%以上含むことが好ましく、更には、6質量%以上20質量%以下含むことがより好ましく、7質量%以上15質量%以下含むことが特に好ましい。このような構成を有することも優れた食感を得ることに寄与する。
更に、本発明の粉末食品は、乾燥物L1全体100質量%に対して、第6成分を含む(即ち、0質量%を超える)ことが好ましく、1質量%以上含むことが好ましく、更には、2質量%以上15質量%以下含むことがより好ましく、3質量%以上10質量%以下含むことが特に好ましい。このような構成を有することも優れた食感を得ることに寄与する。
【0023】
また、本発明の粉末食品に含まれる乾燥物L1の概形は限定されないが、柱形状(略円柱形状、略角柱形状等)、薄片形状(スライス状、板状、鱗片状等、全体として主面に対して厚さが小さい形状)などのものを含むことができる。この場合、その厚さ(柱形状における長手方向に垂直な断面の最大長、薄片形状における厚さ)は、5mm以下であることが好ましく、更には、1mm以上4mm以下であることが好ましい。乾燥物L1が薄片形状である場合に、薄片形状の乾燥物L1の厚さが5mm以下であることにより、食感として柔らかさを与え、食べ易くすることができる。
【0024】
尚、上述した乾燥物L1の各最大長や厚さは、ノギス及び/又は定規を利用して測定される実測値である。また、乾燥物L1を構成する第1成分~第6成分の各成分の含有割合は、下記方法により算出する。即ち、粉末食品(乾燥物L1及び乾燥物L2以外に他成分を含んでもよい)100gから、乾燥物L1以外の成分を排除した成分を「乾燥物L1全体」とし、その質量を「乾燥物L1全体の質量」とする。更に、「乾燥物L1全体」を上述した最大長の範囲に基づいて第1成分~第6成分へと分類する。そして、「乾燥物L1全体の質量」に対する、分類された各成分の質量割合を、上述した第1成分~第6成分の各含有割合とする。
【0025】
このような乾燥物L1は、どのようにして得てもよいが、例えば、第1選別、粗洗い、裁断、ブランチング、殺菌、脱水、調味、乾燥、篩分け、第2選別を経て得ることができる。即ち、第1選別として、収穫した大根葉から選別を行って必要な材料を取り出す(色の悪いものなどを除去して、必要な材料を残す等)ことができる。また、粗洗いとして、流水中で砂や石などを洗い流すことができる。更に、裁断として、スライサー等を用いて必要なサイズに裁断(例えば、設定値8mm)することができる。また、ブランチングとして熱水(例えば、95℃以上)で加熱(例えば、90秒程)したのち、冷水(例えば、4℃程)にて冷却することができる。更に、殺菌(例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を利用)を行うことができる。また、脱水(例えば、遠心分離機で2分程)を行うことができる。更に、前述の通りに調味を行うことができる。また、前述の通りに乾燥させることができる。更に、篩分けを行うことができる。また、第2選別として、形状の選別(形の悪い乾燥物を除去等)、異物除去(金属探知、風力選別機等)などを行うことができる。
【0026】
(3)乾燥物L2
乾燥物L2は、大根葉以外の葉菜類の乾燥物である。葉菜類とは、主に葉の部分を食用とする野菜であり、葉菜、葉物(はもの)、葉物類、葉物野菜、葉野菜、菜っ葉(なっぱ)、菜(な)などともいう。これらの葉菜類は、結球性の葉菜類であってもよいし、非結球性の葉菜類であってもよい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
具体的には、アブラナ科の葉菜類、キク科の葉菜類、ヒユ科の葉菜類、ツバキ科の葉菜類等が挙げられる。
より具体的には、アブラナ科の葉菜類としては、コマツナ、ハクサイ、チンゲンサイ、カブ、ミズナ、アブラナ、ノザワナ、ミズナ、ミブナ、タアサイ等のアブラナ科アブラナ属ラパ種に属する葉菜類、キャベツ、ケール、ブロッコリー、カリフラワー等のアブラナ科アブラナ属ヤセイカンラン種に属する葉菜類、ナズナ等のアブラナ科ナズナ属ナズナ種に属する葉菜類、ルッコラ等のアブラナ科キバナスズシロ属キバナスズシロ種に属する葉菜類、クレソン等のアブラナ科オランダガラシ属オランダガラシ種に属する葉菜類等が挙げられる。また、これらの葉菜類の植物の交雑種も含まれる。また、本発明では、例えば、アブラナ科アブラナ属ヤセイカンラン種に属する花蕾類のうち、その葉を葉菜として利用でき得る植物についても葉菜類に含む。
【0027】
更に、上記のうち、キク科の葉菜類としては、レタス等のキク科アキノノゲシ属チシャ種に属する葉菜類等が挙げられる。また、上記のうち、ヒユ科の葉菜類としては、ホウレンソウ等のヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属ホウレンソウ種に属する葉菜類等が挙げられる。更に、上記のうち、ツバキ科の葉菜類としては、チャノキ等のツバキ科ツバキ属チャノキ種に属する葉菜類等が挙げられる。
一方で、本発明の葉菜類には、ヒガンバナ科ネギ属の植物、果菜類(ウリ科の植物、ナス科の植物)、茎菜類(セロリー、アスパラガス、ワサビ)は含まないものとする。
【0028】
本発明の粉末食品において乾燥物L2をなす葉菜類としては、上述のなかでも、アブラナ科の葉菜類、及び、ヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属ホウレンソウ種に属する葉菜類が好ましく、更には、アブラナ科アブラナ属ラパ種に属する葉菜類が好ましい。これらの葉菜類は、それ以外の葉菜類と比較した場合に、乾燥物L1に起因するえぐみをより効果的に軽減する作用を発揮する。また、この作用は、アブラナ科アブラナ属ラパ種の葉菜類がより強く、そのなかでも、コマツナ、ハクサイ、チンゲンサイ及びカブにおいてより効果的に認められ、更には、コマツナ、チンゲンサイ及びカブが更に好ましく、コマツナ及びカブが特に好ましい。
【0029】
とりわけ、乾燥物L1と、コマツナ、チンゲンサイ及びカブのうちの少なくとも1種の葉菜類を用いた乾燥物L2と、の組合せは、乾燥物L1に起因するえぐみを非常に効果的に軽減できるとともに、風味改善に寄与する。風味改善としては、特に、乾燥物L1の風味を強化する作用、乾燥物L1及びL2に由来する旨味を付与する作用、塩味のエンハンス作用が顕著に得られる。また、これらの作用は、特におむすびの調製に本粉末食品を用いた場合に顕著に得られる。即ち、粉末食品を混ぜ込んだ飯米を丸めた食品の調製に本粉末食品を用いた場合に特に顕著に上述の作用を得ることができる。
【0030】
これらの葉菜類の産地は限定されず、更に、栽培時期も限定されない。また、これらの葉菜類の収穫時期も限定されない。即ち、栽培過程の間引きによって得られる間引き葉茎、幼体から得られる葉茎、成長体から得られる葉茎などが含まれる。従って、更に、乾燥物L2は、裁断した葉菜類の乾燥物であってもよいし、葉菜類の乾燥物を裁断したものであってもよい。
【0031】
また、乾燥物L2は、乾燥物L1と同様に、どのような乾燥方法により得られた乾燥物であってもよい。即ち、乾燥方法は限定されず、例えば、熱風乾燥、凍結乾燥(フリーズドライ)、真空フライ乾燥、遠赤外線照射乾燥、天日乾燥、低温通風乾燥等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。従って、乾燥物L2としては、熱風乾燥物、凍結乾燥物、真空フライ乾燥物、遠赤乾燥物等を用いることができる。これらの詳細及び効果については乾燥物L1と同様であり、これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0032】
乾燥物L2の水分率は限定されないが、例えば、9質量%以下であることが好ましい。9質量%以下であることで、優れた保存性を得ることができる。また、高い乾燥状態に起因する歯ごたえを得ることができる。例えば、本粉末食品を、飯米へふりかけて喫食する場合についていえば、高い乾燥状態である場合、飯米へ粉末食品をふりかけた後、暫くの間は、ぱりぱりとした食感を楽しむことができる。その一方で、経時により水分が付与されると、次第に、原料である葉菜類本来の食感を生じるようになる。このように高い乾燥状態で提供することで、複雑且つ変化を伴った食感を与えることができる。この水分率は、更に、8質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。一方、乾燥物L2の水分率は、通常、0.1質量%以上であるが、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。
【0033】
乾燥物L2は、収穫した葉菜類をそのまま乾燥させたものであってもよいが、各種の前処理が施された乾燥物であってもよい。前処理の種類については、乾燥物L1と同様であり、これらのなかでも、特に、調味した後に乾燥させた乾燥物であることが好ましいことについても乾燥物L1と同様である。更に、乾燥物L2を、食塩及び砂糖を含有した乾燥物L2とすることについて乾燥物L1と同様である。
【0034】
また、乾燥物L2は、原料である葉菜類を細分化した後に乾燥したものであってもよいし、原料である葉菜類を乾燥後に細分化したものであってもよい。これらのうちでは、原料である葉菜類を細分化した後に乾燥したものであることが好ましい。乾燥前に細分化することで、乾燥後に細分化する場合に比べて、過度に小さな粉末状になることを抑制できる。即ち、乾燥物L2は、咀嚼可能であり、食感を有する粉末であることが好ましい。より具体的には、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下の乾燥物であることが好ましい。
【0035】
乾燥物L2の大きさは限定されず、上述の通り、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下の乾燥物であることが好ましいが、より具体的には、乾燥物L2として、最大長が0.7mm以上、更には、最大長が1.0mm以上のものが含まれることが好ましい。最大長0.7mm以上の乾燥物L2が含まれることで、優れた食感を得ることができる。とりわけ、歯ごたえを与え、咀嚼を誘発することができため、唾液の分泌を促し、美味しさをより感じ易くすることができると考えられる。また、乾燥物L2の最大長は20mm以下であることが好ましく、18mm以下であることがより好ましい。乾燥物L2の最大長を20mm以下に抑えることにより、優れた食感を維持しながら、咀嚼後の繊維残りを抑制できる。このため、食べ易く、美味しさをより感じ易くすることができると考えられる。更に、乾燥物L2以外の成分とも混ざり易い形態を維持できる。
【0036】
更に詳しくは、乾燥物L2は、乾燥物L1と同様に、その最大長により、最大長1mm未満の第1成分、最大長1mm以上4mm未満の第2成分、最大長4mm以上8mm未満の第3成分、最大長8mm以上12mm未満の第4成分、最大長12mm以上16mm未満の第5成分、最大長16mm以上の第6成分という6種類に分類することができる。
そして、このように6種類に分類した場合、第1成分は、含まれないか、又は、含まれたとしても、乾燥物L2全体100質量%に対して10質量%未満であることが好ましい。即ち、本粉末食品は、最大長4mm以上の第2成分~第6成分を合計で90質量%以上含むことが好ましい。これにより、上述の通り優れた食感を得ることができる。
【0037】
更に、本発明の粉末食品は、上述の乾燥物L2に関する6成分のなかでも、第2成分及び第3成分を最も多く含むものであることが好ましい。具体的には、乾燥物L2全体100質量%に対して、第2成分と第3成分とを合計で50質量%以上含むことが好ましく、更には、55質量%以上90質量%以下含むことがより好ましく、65質量%以上85質量%以下含むことが特に好ましい。このような構成を有することも優れた食感を得ることに寄与する。
加えて、本発明の粉末食品は、上述の6成分のなかでも、第4成分及び第5成分をその合計により、上述した第2成分及び第3成分の合計についで多く含むものであることが好ましい。具体的には、乾燥物L2全体100質量%に対して、第4成分と第5成分とを合計で5質量%以上含むことが好ましく、更には、10質量%以上30質量%以下含むことがより好ましく、15質量%以上25質量%以下含むことが特に好ましい。このような構成を有することも優れた食感を得ることに寄与する。
更に、本発明の粉末食品は、乾燥物L2全体100質量%に対して、第6成分を含む(即ち、0質量%を超える)ことが好ましく、1質量%以上含むことが好ましく、更には、2質量%以上15質量%以下含むことがより好ましく、3質量%以上10質量%以下含むことが特に好ましい。このような構成を有することも優れた食感を得ることに寄与する。
【0038】
また、本発明の粉末食品に含まれる乾燥物L2の概形は限定されないが、柱形状(略円柱形状、略角柱形状等)、薄片形状(スライス状、板状、鱗片状等、全体として主面に対して厚さが小さい形状)などのものを含むことができる。この場合、その厚さ(柱形状における長手方向に垂直な断面の最大長、薄片形状における厚さ)は、5mm以下であることが好ましく、更には、3mm以下であることが好ましい。乾燥物L2が薄片形状である場合に、薄片形状の乾燥物L2の厚さが5mm以下であることにより、食感として柔らかさを与え、食べ易くすることができる。
【0039】
尚、上述した乾燥物L2の各最大長や厚さは、ノギス及び/又は定規を利用して測定される実測値である。また、乾燥物L2を構成する第1成分~第6成分の各成分の含有割合は、下記方法により算出する。即ち、粉末食品(乾燥物L1及び乾燥物L2以外に他成分を含んでもよい)100gから、乾燥物L2以外の成分を排除した成分を「乾燥物L2全体」とし、その質量を「乾燥物L2全体の質量」とする。更に、「乾燥物L2全体」を上述した最大長の範囲に基づいて第1成分~第6成分へと分類する。そして、「乾燥物L2全体の質量」に対する、分類された各成分の質量割合を、上述した第1成分~第6成分の各含有割合とする。
更に、上述した乾燥物L2の調製方法については乾燥物L1と同様である。
【0040】
(4)乾燥物L1と乾燥物L2との配合
本発明の粉末食品は、乾燥物L2の含有量を1質量部とした場合に、乾燥物L1を2質量部以上14質量部以下の範囲で含む。上記配合では、乾燥物L1に起因するえぐみの影響を抑制できる。とりわけ、乾燥物L2が、コマツナ、チンゲンサイ及びカブのうちの少なくとも1種の葉菜類を用いた乾燥物である場合には、風味改善に寄与する。風味改善としては、特に、乾燥物L1の風味を強化する作用、乾燥物L1及びL2に由来する旨味を付与する作用、塩味をエンハンスする作用を顕著に得ることができる。
【0041】
更に、本粉末食品は、乾燥物L2の含有量を1質量部とした場合に、乾燥物L1を3質量部以上12質量部以下の範囲で含むものであることが好ましく、乾燥物L1を4質量部以上11質量部以下の範囲で含むものであることがより好ましく、乾燥物L1を5質量部以上10質量部以下の範囲で含むものであることが更に好ましく、乾燥物L1を6質量部以上9質量部以下の範囲で含むものであることがとりわけ好ましい。上述の好ましい範囲では、嗜好としての美味しさをより増強することができる。
【0042】
また、本発明の粉末食品において、乾燥物L1と乾燥物L2との合計含有量は限定されないが、通常、粉末食品全体を100質量%とした場合に、乾燥物L1と乾燥物L2とを合計で50質量%以上含む(100質量%であってもよい)。この割合は、更に、60質量%以上99質量%以下とすることができ、70質量%以上98質量%以下とすることができ、80質量%以上97質量%以下とすることができ、85質量%以上96質量%以下とすることができる。
【0043】
尚、上述した乾燥物L2の含有量を1質量部とした場合の乾燥物L1の含有量「X質量部」は、下記方法により算出する。即ち、粉末食品(乾燥物L1及び乾燥物L2以外に他成分を含んでもよい)100gから、乾燥物L1以外の成分を排除した成分の質量(乾燥物L1の質量)をWL1(g)とし、乾燥物L2以外の成分を排除した成分の質量(乾燥物L2の質量)をWL2(g)とした場合に、X=WL1/WL2として算出する。
また、上述した乾燥物L1と乾燥物L2との合計含有量「Y質量%」は、下記方法により算出する。即ち、粉末食品(乾燥物L1及び乾燥物L2以外に他成分を含んでもよい)100gから、乾燥物L1及び乾燥物L2以外の成分を排除した成分の質量(乾燥物L1及び乾燥物L2の合計質量)をWL1+L2(g)とした場合に、Y=WL1+L2/100×100として算出する。
【0044】
(5)その他の成分
本発明の粉末食品は、上記以外の他の成分を含有することができる。他の成分としては、調味成分、着香成分、食品添加物等が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。その他の成分が配合される場合、その配合量は限定されないが、例えば、本発明の粉末食品全体を100質量%とした場合に、通常、50質量%未満であり、1質量%以上40質量%以下とすることができ、2質量%以上30質量%以下とすることができ、3質量%以上20質量%以下とすることができ、4質量%以上15質量%以下とすることができる。
【0045】
(5-1)調味成分
粉末食品に使用される調味成分としては、調味料(食塩、みそ、醤油、ソース、食酢など)、糖類(砂糖、グルコース、果糖など)、旨味調味料(グルタミン酸等のアミノ酸及びその塩など)、海苔、鰹節、鶏がらエキス、香味油(ごま油等)、香辛料などが例示される。
【0046】
(5-2)着香成分
粉末食品に使用される着香成分としては、粉末状及び片状等の乾燥形態とされた香り付けのための各種食材が例示される。具体的には、梅、ごま(全粒ごま、いりごま、すりごま等)梅干、ゆず、酢橘、かぼす又はだいだい等など果実類や、胡椒、山椒、山葵、生姜、ニンニク、唐辛子又はマスタードなどの香辛料などが例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
(5-3)食品添加物
粉末食品に使用される食品添加物としては、粉末状及び片状等の乾燥形態とされた着色や酸化防止、保存等のための各種食材が例示される。具体的には、酸化防止剤として例えばトコフェノール、ローズマリー抽出物又はアスコルビン酸など、保存料として、ε-ポリリジン、ピロ亜硫酸カリウム又は亜硫酸ナトリウムなど、増粘剤として例えば、加工澱粉、タラガム、キサンタンガムなど、着色料として例えば、カラメル、クチナシ、ターメリック、パプリカ、アントシアニン色素、紅花色素、紅麹色素、ウコン色素、カロチン色素などが例示される。調味成分や着香成分の保持向上剤として利用されるデキストリン等が例示される。その他、大豆多糖類等が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。その他、上記以外に、粉末食品の風味付与、風味改質、外観改質、変質抑制、栄養強化、その他の作用を得ることを目的として各種成分を配合できる。例えば、チャーシューチップ、植物性タンパク質(大豆タンパク質)、乾燥野菜等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の粉末食品は、どのように製造してもよい。例えば、即ち、乾燥物L1と乾燥物L2とが上述した配合の範囲で含まれればよく、必要に応じて他の成分を含むことができる。これらは、どのような順序で混合してもよいし、どのような装置を用いてもよい。例えば、容器回転型混合機(例えば、ドラム型混合機、スクリュー型混合機など)や容器固定型混合機(例えば、リボン型混合機、ドラム型混合機、スクリュー型混合機など)などの一般的な乾燥粉粒体混合用機械を用いることができる。
【0049】
本発明の粉末食品は、例えば、飯米、うどんやスパゲッティなどの麺類などの食材や調理食品に、ふりかけたり、混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させて用いることができる。これにより、優れた見た目や風味を与えて、各食材や各調理食品の嗜好性を高めた味付けをすることができる。
より具体的には、ふりかけ、おむすびの素、スープの素、麺類のつゆの素、雑炊の素、おかゆの素、リゾットの素、ドリアの素、お茶漬けの素、混ぜご飯の素、炊き込みご飯の素、和えサラダの素、すしの素、チャーハンの素、卵焼きの素、野菜炒めの素、トッピング等が例示される。これらの中でも、特に、ふりかけ、おむすびの素、混ぜご飯の素、チャーハンの素であることが好ましく、本発明の粉末食品として有用である。
【0050】
[2]風味改善方法
本発明の風味改善方法は、大根葉の乾燥物(L1)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L2)と、を含んだ粉末食品の風味を改善する風味改善方法であって、
乾燥物(L2)を、乾燥物(L1)1質量部に対して、1/14質量部以上1/2質量部以下配合することを特徴とする。
【0051】
乾燥物L1及び乾燥物L2については、本発明の粉末食品において説明した通りである。また、その配合についても同様である。このようは構成にすることで、風味改善を行うことができる点についても前述の通りであり、特に、乾燥物L1に由来するえぐみである場合の風味改善作用に優れることも前述の通りである。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
[1]粉末食品の調製
〈1〉乾燥物L1
以下に示す手順により、大根葉の乾燥物を得た。即ち、収穫された大根葉を選別(色の悪いもの等を除去する等)した後、砂や石などを洗い流した後、裁断を行った。次いで、95℃以上の温水内で90秒程おいてブランチング処理を施した後、冷水で冷却し、次いで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて殺菌処理を行った後、脱水した。得られた脱水物94重量部に対し、塩6重量部を混合した後、1次熱風乾燥(約80℃/約1時間)及び2次熱風乾燥(約75℃/約1時間)を行った(尚、熱風乾燥は2段階乾燥でもよいし、温度を変えて複数回乾燥処理しても良い)。その後、得られた2次乾燥物を、目開き0.42mm篩上且つ目開き5.66mm篩下として篩分け(分級)した。また、目開き5.66mm篩上となった乾燥物は壊砕により、再度、同様に篩分けを行った。更に、その後、形状選別(形の悪い葉等を除去)、金属探知機及び風力選別機を利用して異物除去を行うことにより、乾燥物L1を得た。
【0054】
得られた乾燥物L1を、最大長1mm未満の第1成分、最大長1mm以上4mm未満の第2成分、最大長4mm以上8mm未満の第3成分、最大長8mm以上12mm未満の第4成分、最大長12mm以上16mm未満の第5成分、最大長16mm以上の第6成分という6種類に分類した結果、以下の結果となった。
第1成分: 1.5質量%
第2成分:42.9質量%
第3成分:38.3質量%
第4成分: 5.8質量%
第5成分: 5.8質量%
第6成分: 5.7質量%
【0055】
〈2〉乾燥物L2
上記〈1〉に示す乾燥物L1を得る手順と同様にして、大根葉以外の各葉菜類(コマツナ、ホウレンソウ、ハクサイ、チンゲンサイ、カブ、ケール、キャベツ、レタス、キャノキの9種)の乾燥物L2を得た。
得られた乾燥物L2のうち、コマツナを用いた乾燥物L2について、最大長1mm未満の第1成分、最大長1mm以上4mm未満の第2成分、最大長4mm以上8mm未満の第3成分、最大長8mm以上12mm未満の第4成分、最大長12mm以上16mm未満の第5成分、最大長16mm以上の第6成分という6種類に分類した結果、以下の結果となった。
第1成分: 2.3質量%
第2成分:27.2質量%
第3成分:45.2質量%
第4成分:10.6質量%
第5成分:10.3質量%
第6成分: 4.4質量%
【0056】
〈3〉粉末食品(1)の調製
上記〈1〉で得られた乾燥物L1、上記〈2〉で得られた乾燥物L2を混合して、表1に示す実験例1~19の粉末食品を得た。各実験例1~19の粉末食品における乾燥物L2の割合を1質量部とした場合の乾燥物L1の割合を、表1に示した。
【0057】
〈4〉粉末食品(1)の官能評価
試験前に、検査員全員で標準サンプル評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、4名によって客観性のある官能検査を行った。
評価は、飯米320g(一合)あたり実験例1~19の粉末食品各9gをふりかけた後、よく掻き混ぜて得られた試料から、約80gずつ分取・成形したおにぎりに対して行った。また、この評価用試料について、「美味しさ(嗜好)」、「風味の好ましさ(嗜好)」、「えぐみの軽減レベル」、「食感の良さ」、「総合評価」の5つの評価に関して、各々下記(1-1)~(1-5)に示す各1~10点に示す基準に従って評価を行った。この評価は10段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い点数をどれか1つ選択する方式で行った。評価結果の集計は、4名のスコアの算術平均値として算出し、小数点以下第二位を四捨五入した。この結果を表1に示した。
尚、下記(1-1)~(1-5)の各〈5点〉の評価は、乾燥物L1のみからなる粉末食品に関して上記と同様に行った評価である。即ち、飯米320g(一合)あたり乾燥物L1のみからなる粉末食品9gをふりかけた後、よく掻き混ぜて得られた試料から、約80gずつ分取・成形したおにぎりに対して行った結果である。
【0058】
(1-1)美味しさ(嗜好)に関する評価基準
〈10点〉:大根葉(乾燥物L1)の長所と乾燥物L2の長所が最も良く調和し、美味しい。
〈9点〉:8点と10点の中間評価
〈8点〉:大根葉(乾燥物L1)の長所と乾燥物L2の長所がかなり良く調和し、美味しい。
〈7点〉:6点と8点の中間評価
〈6点〉:大根葉(乾燥物L1)の長所と乾燥物L2の長所が調和し、美味しい。
〈5点〉:大根葉(乾燥物L1)のみの試験区の評点(即ち、乾燥物L1のみからなる粉末食品の美味しさ)
〈4点〉:大根葉(乾燥物L1)と乾燥物L2の組み合わせに僅かに一体感に乏しく、大根葉のみよりも劣る。
〈3点〉:大根葉(乾燥物L1)と乾燥物L2の組み合わせに一体感に乏しく、美味しくない。
〈2点〉:1点と3点の中間評価
〈1点〉:大根葉(乾燥物L1)と乾燥物L2の組み合わせに非常に一体感が無く、美味しくない。
【0059】
尚、上記「大根葉(乾燥物L1)の長所」は、(A)「植物特有の風味の好ましさ(香りのイメージ)」、(B)「えぐみ(苦みに近い化学成分の味覚感覚)」、(C)「食感(テクスチャー)」のような定性的な特徴、(D)基本味(甘味、苦み、酸味、塩味、旨味)のうちの甘味、苦み、旨味、のこれら(A)~(D)の好ましいバランスを意味する。以下、その他の評価においても同様である。
また、上記「乾燥物L2の長所」は、大根葉の青臭さを効果的にマスキングできることを意味する。以下、その他の評価においても同様である。
【0060】
(1-2)風味の好ましさ(嗜好)の評価
〈10点〉:大根葉(乾燥物L1)の豊かな風味が強化され、最も好ましい。
〈9点〉:8点と10点の中間評価
〈8点〉:大根葉(乾燥物L1)の十分な風味が強化され、かなり好ましい。
〈7点〉:6点と8点の中間評価
〈6点〉:大根葉(乾燥物L1)の風味が強化され、好ましい。
〈5点〉:大根葉(乾燥物L1)のみの試験区の評点(即ち、乾燥物L1のみからなる粉末食品の風味の好ましさ)
〈4点〉:大根葉(乾燥物L1)の風味が僅かに阻害され、大根葉のみよりも劣る。
〈3点〉:大根葉(乾燥物L1)の風味が阻害され、好ましくない。
〈2点〉:1点と3点の中間評価
〈1点〉:大根葉(乾燥物L1)の風味が打ち消され、非常に好ましくない。
【0061】
(1-3)えぐみの軽減レベル
〈10点〉:えぐみが最も軽減され、最も好ましい。
〈9点〉:8点と10点の中間評価
〈8点〉:えぐみがかなり軽減され、かなり好ましい。
〈7点〉:6点と8点の中間評価
〈6点〉:えぐみが軽減され、好ましい。
〈5点〉:大根葉(乾燥物L1)のみの試験区の評点(即ち、乾燥物L1のみからなる粉末食品のえぐみの軽減レベル)
〈4点〉:えぐみが軽減されず、大根葉のみよりも劣る。
〈3点〉:えぐみが僅かに強調され、好ましくない。
〈2点〉:1点と3点の中間評価
〈1点〉:えぐみが強調され、非常に好ましくない。
【0062】
(1-4)食感の良さ
〈10点〉:大根葉(乾燥物L1)の食感と乾燥物L2の食感が最も調和し、最も良い。
〈9点〉:8点と10点の中間評価
〈8点〉:大根葉(乾燥物L1)の食感と乾燥物L2の食感がかなり調和し、とても良い。
〈7点〉:6点と8点の中間評価
〈6点〉:大根葉(乾燥物L1)の食感と乾燥物L2の食感が調和し、良い。
〈5点〉:大根葉(乾燥物L1)のみの試験区の評点(即ち、乾燥物L1のみからなる粉末食品の食感の良さ)
〈4点〉:大根葉(乾燥物L1)の食感と乾燥物L2の食感がやや乏しく、大根葉のみよりも劣る。
〈3点〉:大根葉(乾燥物L1)の食感と乾燥物L2の食感が乏しく、良くない。
〈2点〉:1点と3点の中間評価
〈1点〉:大根葉(乾燥物L1)の食感と乾燥物L2の食感が悪く、非常に良くない。
【0063】
(1-5)総合評価
〈10点〉:大根葉(乾燥物L1)の長所と乾燥物L2の長所が、その他食品素材も含めて最も良く調和し、全体的に非常に良い。
〈9点〉:8点と10点の中間評価
〈8点〉:大根葉(乾燥物L1)の長所と乾燥物L2の長所が、その他食品素材も含めてかなり良く調和し、全体的に良い。
〈7点〉:6点と8点の中間評価
〈6点〉:大根葉(乾燥物L1)の長所と乾燥物L2の長所が、その他食品素材も含めて調和し、全体的に良い。
〈5点〉:大根葉(乾燥物L1)のみの試験区の評点(即ち、乾燥物L1のみからなる粉末食品の総合評価)
〈4点〉:大根葉(乾燥物L1)と乾燥物L2とその他食品素材も含めて組み合わせに僅かに一体感に乏しく、大根葉のみよりも劣る。
〈3点〉:大根葉(乾燥物L1)と乾燥物L2とその他食品素材も含めての組み合わせに一体感に乏しく、全体的に良くない。
〈2点〉:1点と3点の中間評価
〈1点〉:大根葉(乾燥物L1)と乾燥物L2とその他食品素材も含めての組み合わせに非常に一体感が無く、全体的に悪い。
【0064】
【表1】
【0065】
〈5〉粉末食品(2)の調製
上記〈1〉で得られた乾燥物L1、上記〈2〉で得られた乾燥物L2を混合して、表2に示す実験例20~27の粉末食品を得た。また、各乾燥物の大きさが官能評価に及ぼす影響を観察するため、以下の配合としている。即ち、
実験例20では、乾燥物L1の第2成分(1-4mm)と乾燥物L2(コマツナ)の第2成分(1-4mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
実験例21では、乾燥物L1の第3成分(4-8mm)と乾燥物L2(コマツナ)の第3成分(4-8mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
実験例22では、乾燥物L1の第4成分(8-12mm)と乾燥物L2(コマツナ)の第4成分(8-12mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
実験例23では、乾燥物L1の第5成分(12-16mm)と乾燥物L2(コマツナ)の第5成分(12-16mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
実験例24では、乾燥物L1の第2成分(1-4mm)と乾燥物L2(ホウレンソウ)の第2成分(1-4mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
実験例25では、乾燥物L1の第3成分(4-8mm)と乾燥物L2(ホウレンソウ)の第3成分(4-8mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
実験例26では、乾燥物L1の第4成分(8-12mm)と乾燥物L2(ホウレンソウ)の第4成分(8-12mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
実験例27では、乾燥物L1の第5成分(12-16mm)と乾燥物L2(ホウレンソウ)の第5成分(12-16mm)とを7:1の質量比となるように混合している。
【0066】
〈6〉粉末食品(2)の官能評価
試験前に、検査員全員で標準サンプル評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、4名によって客観性のある官能検査を行った。
評価は、「美味しさ(嗜好)」、「風味の好ましさ(嗜好)」、「えぐみの軽減レベル」、「食感の良さ」、「総合評価」の5つの評価に関し、各々前述した「〈4〉粉末食品(1)の官能評価」(1-1)~(1-5)に示す各1~10点に示す基準に従った。この評価は10段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い点数をどれか1つ選択する方式で行った。評価結果の集計は、4名のスコアの算術平均値として算出し、小数点以下第二位を四捨五入した。この結果を表2に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
尚、官能評価の検査員には、事前に下記の下記A)及びB)の識別訓練を実施した。
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀であり、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜して行った。
【0069】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に記載されたものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
また、これまでに示した上記本発明(以下、「第1の解決手段」という)によって、大根葉に起因するえぐみを抑制できることが分かるが、上述した〈6〉粉末食品(2)の結果からは、更に、この課題を下記の第2の手段によっても解決できることが分かる。
【0070】
[1]大根葉の乾燥物(L1)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L2)と、を含み、
前記乾燥物(L1)を、最大長1mm未満である第1成分(L11)、最大長1mm以上4mm未満である第2成分(L12)、最大長4mm以上8mm未満である第3成分(L13)、最大長8mm以上12mm未満である第4成分(L14)、最大長12mm以上16mm未満である第5成分(L15)、及び、最大長16mm以上である第6成分(L16)に分類した場合に、前記乾燥物(L1)全体に対して、前記第2成分(L12)及び前記第3成分(L13)の合計が50質量%以上であることを特徴とする粉末食品。
[2]前記乾燥物(L1)全体に対して、前記第4成分(L14)、前記第5成分(L15)及び前記第6成分(L16)の合計が10質量%以上である上記[1]に記載の粉末食品。
[3]前記第6成分(L16)が、前記第1成分(L11)より多い上記[1]又は[2]に記載の粉末食品。
[4]前記乾燥物(L2)が、アブラナ科アブラナ属の葉菜類の乾燥物である上記[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の粉末食品。
[5]前記乾燥物(L2)を、最大長1mm未満である第1成分(L21)、最大長1mm以上4mm未満である第2成分(L22)、最大長4mm以上8mm未満である第3成分(L23)、最大長8mm以上12mm未満である第4成分(L24)、最大長12mm以上16mm未満である第5成分(L25)、及び、最大長16mm以上である第6成分(L26)に分類した場合に、前記乾燥物(L2)全体に対して、前記第2成分(L22)及び前記第3成分(L23)の合計が50質量%以上である上記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の粉末食品。
[6]前記乾燥物(L1)全体に対する、前記第4成分(L14)、前記第5成分(L15)及び前記第6成分(L16)の各々の質量割合をM14質量%、M15質量%及びM16質量%とし、且つ、
前記乾燥物(L2)全体に対する、前記第4成分(L24)、前記第5成分(L25)及び前記第6成分(L26)の各々の質量割合をM24質量%、M25質量%及びM26質量%とした場合に、
(M14+M15+M16)<(M24+M25+M26)を満たす上記[1]乃至[5]のうちのいずれかに記載の粉末食品。
[7]大根葉の乾燥物(L1)と、大根葉以外の葉菜類の乾燥物(L2)と、を含んだ粉末食品の風味を改善する風味改善方法であって、
前記乾燥物(L1)を、最大長1mm未満である第1成分(L11)、最大長1mm以上4mm未満である第2成分(L12)、最大長4mm以上8mm未満である第3成分(L13)、最大長8mm以上12mm未満である第4成分(L14)、最大長12mm以上16mm未満である第5成分(L15)、及び、最大長16mm以上である第6成分(L16)に分類した場合に、前記乾燥物(L1)全体に対して、前記第2成分(L12)及び前記第3成分(L13)の合計を50質量%以上にすることを特徴とする風味改善方法。
【0071】
上述の第2の解決手段による粉末食品によれば、葉菜類の乾燥物を含んだより美味しい粉末食品にすることができる。また、上述の第2の解決手段による風味改善方法によれば、葉菜類の乾燥物を含んだより美味しい粉末食品を得ることができる。
【0072】
(1)粉末食品
第2の解決手段において粉末食品は、第1の解決手段における粉末食品と同様に、添加により、対象食材に対して味付けを行ったり、風味や外観(見た目)の嗜好性を高めたりすることを目的とする食品を総称する概念である。使用態様は限定されないが、(1)対象食材にふりかけること(例えば、器に盛った飯米にふりかけること、飯米を成形したおにぎりにふりかけること等)、(2)対象食材にふりかけた後に粉末食品を対象食材に混ぜ込むこと(例えば、器に盛った飯米にふりかけた後、その飯米に混ぜ込むこと等)、(3)対象食材にふりかけた後に液体に分散させること(例えば、お茶漬け、雑炊、スープ、中華スープ、味噌汁等)などの使用態様が挙げられる。
【0073】
(2)乾燥物L1
第2の解決手段において乾燥物L1は、所定の大きさを有すること以外、第1の解決手段における乾燥物L1と同様である。所定の大きさとは、具体的には、乾燥物L1を下記6成分(第1成分L11~第6成分L16)に分類した場合に、乾燥物L1全体(100質量%)に対して、第2成分L12と第3成分L13との合計が50質量%以上である。粉末食品がこの構成を備えることにより、大根葉の乾燥物L1を含んだより美味しい粉末食品を得ることができる。これは、粉末食品に乾燥物L1に起因する歯ごたえを与え、咀嚼を誘発できるためと考えられる。即ち、咀嚼による唾液分泌の促進をもたらし、美味しさをより感じ易くすることができるためと考えられる。更に、この構成を備えることにより、特に乾燥物L1の含有割合が大きい粉末食品、具体的には、乾燥物L1と乾燥物L2との合計(100質量%)に対して乾燥物L1の割合が50質量%以上である粉末食品において、乾燥物L1に起因するえぐみを効果的に抑制して、風味改善に寄与する。風味改善としては、特に、乾燥物L1の風味を強化する作用、乾燥物L1及びL2に由来する旨味を付与する作用、塩味のエンハンス作用が顕著に得られる。また、これらの作用は、特におむすびの調製に本粉末食品を用いた場合に顕著に得られる。即ち、粉末食品を混ぜ込んだ飯米を丸めた食品の調製に本粉末食品を用いた場合に特に顕著に上述の作用を得ることができる。
【0074】
第1成分L11:乾燥物L1のうち最大長1mm未満である成分。
第2成分L12:乾燥物L1のうち最大長1mm以上4mm未満である成分。
第3成分L13:乾燥物L1のうち最大長4mm以上8mm未満である成分。
第4成分L14:乾燥物L1のうち最大長8mm以上12mm未満である成分。
第5成分L15:乾燥物L1のうち最大長12mm以上16mm未満である成分。
第6成分L16:乾燥物L1のうち最大長16mm以上である成分。
尚、この乾燥物L1の各成分の最大長は、ノギス及び/又は定規を利用して測定される実測値である。
【0075】
上述した割合、即ち、乾燥物L1全体に対する第2成分L12と第3成分L13との合計の質量割合は、50質量%以上95質量%以下が好ましく、55質量%以上95質量%以下がより好ましく、65質量%以上90質量%以下が特に好ましい。この構成により、より優れた食感、風味及びえぐみのマスキング効果を得ることができる。
【0076】
乾燥物L1において、第2成分L12と第3成分L13とは、どちらが多く含まれてもよく、同じ割合で含まれてもよい。具体的には、乾燥物L1全体に対する第2成分L12の質量割合をM12質量%とし、乾燥物L1全体に対する第3成分L13の質量割合をM13質量%とした場合に、0.5≦M12/M13≦1.5であることが好ましく、0.6≦M12/M13≦1.4がより好ましく、0.7≦M12/M13≦1.3が更に好ましい。
【0077】
更に、乾燥物L1は、その全体(100質量%)に対して、第4成分L14、第5成分L15及び第6成分L16の合計の質量割合は10質量%以上であることが好ましい。本粉末食品がこの構成を備えることで、更に美味しい粉末食品を得ることができる。即ち、粉末食品に乾燥物L1に起因する歯ごたえを更に与え、咀嚼を誘発できるためと考えられる。
この乾燥物L1全体に対する第4成分L14、第5成分L15及び第6成分L16の合計の質量割合は、10質量%以上50質量%未満が好ましく、11質量%以上40質量%以下がより好ましく、12質量%以上30質量%以下が特に好ましい。この構成により、より優れた食感及び風味を得ることができる。
【0078】
乾燥物L1において、第4成分L14と第5成分L15と第6成分L16とは、どの成分が多く含まれてもよく、3成分が同じ割合で含まれてもよい。具体的には、乾燥物L1全体に対する第4成分L14の質量割合をM14質量%とし、第5成分L15の質量割合をM15質量%とした場合に、1.0≦M14≦8.0であることが好ましく、2.0≦M14≦7.5がより好ましく、2.5≦M14≦7.0が更に好ましい。同様に、1.0≦M15≦8.0であることが好ましく、2.0≦M15≦7.5がより好ましく、2.5≦M15≦7.0が更に好ましい。
【0079】
また、乾燥物L1では、第6成分L16が第1成分L11より多く含まれることが好ましい。粉末食品がこの構成を備えることで、とりわけ美味しい粉末食品を得ることができる。即ち、粉末食品に乾燥物L1に起因する歯ごたえを強く与え、咀嚼を誘発できるためと考えられる。
粉末食品において、第1成分L11は含まれても含まれなくてもよい。含まれる場合には、例えば、乾燥物L1全体に対して、3質量%未満(更には、0質量%を超えて2質量%以下が好ましい)にすることができる。従って、この場合、乾燥物L1全体に対する第6成分L16の質量割合をM16質量%とすると、M16≧3質量%にすることができる。第6成分L16は、更に、4質量%≦M16≦8質量%が好ましく、4.5質量%≦M16≦7.0質量%がより好ましい。
【0080】
尚、乾燥物L1を構成する第1成分~第6成分の各成分の割合(質量割合)は、下記方法により算出する。即ち、粉末食品(乾燥物L1及び乾燥物L2以外に他成分を含んでもよい)100gから、乾燥物L1以外の成分を排除した成分を「乾燥物L1全体」とし、その質量を「乾燥物L1全体の質量」とする。更に、「乾燥物L1全体」を上述した最大長の範囲に基づいて第1成分~第6成分へと分類する。そして、「乾燥物L1全体の質量」に対する、分類された各成分の質量割合を、上述した第1成分~第6成分の各含有割合とする。
【0081】
また、第2の解決手段における粉末食品に含まれる乾燥物L1の概形が限定されないこと、乾燥物L1は、どのような乾燥方法により得られた乾燥物であってもよいこと、更に、乾燥物L1の水分率が限定されないこと、更に、乾燥物L1は、収穫した大根葉をそのまま乾燥させたものであってもよいが、各種の前処理が施された乾燥物であってもよいこと、は第1の解決手段における乾燥物L1と同様である。
【0082】
(3)乾燥物L2
第2の解決手段において乾燥物L2は、大根葉以外の葉菜類の乾燥物である。これらの葉菜類は、結球性の葉菜類であってもよいし、非結球性の葉菜類であってもよいこと、具体的には、アブラナ科の葉菜類、キク科の葉菜類、ヒユ科の葉菜類、ツバキ科の葉菜類等が挙げられること、その好ましい種類については、第1の解決手段における乾燥物L2と同様である。更に、乾燥物L2を構成する葉菜類の産地、栽培時期、収穫時期等が限定されないことも第1の解決手段における粉末食品と同様である。更に、乾燥物L2がどのような乾燥方法により得られた乾燥物であってもよいこと、乾燥物L2の水分率は限定されないこと、乾燥物L2は、収穫した葉菜類をそのまま乾燥させたものであってもよいが、各種の前処理が施された乾燥物であってもよいこと、乾燥物L2は、原料である葉菜類を細分化した後に乾燥したものであってもよいし、原料である葉菜類を乾燥後に細分化したものであってもよいことについては、第1の解決手段における乾燥物L2と同様である。更に、乾燥物L2を構成する葉菜類は、大根葉以外であればよく、その種類は第1の解決手段における乾燥物L2と同様である。
【0083】
また、第2の解決手段において乾燥物L2は、所定の大きさを有することが好ましい。具体的には、乾燥物L2を下記6成分(第1成分L21~第6成分L26)に分類した場合に、乾燥物L2全体(100質量%)に対して、第2成分L22と第3成分L23との合計が50質量%以上である。粉末食品がこの構成を備えることにより、大根葉の乾燥物L1を含んだより美味しい粉末食品を得ることができる。これは、粉末食品に乾燥物L2に起因する歯ごたえを与え、咀嚼を誘発できるためと考えられる。即ち、咀嚼による唾液分泌の促進をもたらし、美味しさをより感じ易くすることができるためと考えられる。更に、この構成を備えることにより、特に乾燥物L1の含有割合が大きい粉末食品、具体的には、乾燥物L1と乾燥物L2との合計(100質量%)に対して乾燥物L1の割合が50質量%以上である粉末食品において、乾燥物L1に起因するえぐみを効果的に抑制して、風味改善に寄与する。風味改善としては、特に、乾燥物L1の風味を強化する作用、乾燥物L1及びL2に由来する旨味を付与する作用、塩味のエンハンス作用が顕著に得られる。また、これらの作用は、特におむすびの調製に本粉末食品を用いた場合に顕著に得られる。即ち、粉末食品を混ぜ込んだ飯米を丸めた食品の調製に本粉末食品を用いた場合に特に顕著に上述の作用を得ることができる。
【0084】
第1成分L21:乾燥物L2のうち最大長1mm未満である成分。
第2成分L22:乾燥物L2のうち最大長1mm以上4mm未満である成分。
第3成分L23:乾燥物L2のうち最大長4mm以上8mm未満である成分。
第4成分L24:乾燥物L2のうち最大長8mm以上12mm未満である成分。
第5成分L25:乾燥物L2のうち最大長12mm以上16mm未満である成分。
第6成分L26:乾燥物L2のうち最大長16mm以上である成分。
尚、乾燥物L2の各成分の最大長の測定方法は、乾燥物L1と同様である。
【0085】
上述した割合、即ち、乾燥物L2全体に対する第2成分L22と第3成分L23との合計の質量割合は、50質量%以上95質量%以下が好ましく、55質量%以上90質量%以下がより好ましく、65質量%以上85質量%以下が特に好ましい。この構成により、より優れた食感、風味及びえぐみのマスキング効果を得ることができる。
【0086】
乾燥物L2において、第2成分L22と第3成分L23とは、どちらが多く含まれてもよく、同じ割合で含まれてもよい。具体的には、乾燥物L2全体に対する第2成分L22の質量割合をM22質量%とし、乾燥物L2全体に対する第3成分L23の質量割合をM23質量%とした場合に、0.3≦M22/M23≦1.5であることが好ましく、0.4≦M22/M23≦1.3がより好ましく、0.5≦M22/M23≦1.0が更に好ましい。
【0087】
更に、乾燥物L2は、その全体(100質量%)に対して、第4成分L24、第5成分L25及び第6成分L26の合計の質量割合は10質量%以上であることが好ましい。粉末食品がこの構成を備えることで、更に美味しい粉末食品を得ることができる。即ち、粉末食品に乾燥物L2に起因する歯ごたえを更に与え、咀嚼を誘発できるためと考えられる。
この乾燥物L2全体に対する第4成分L24、第5成分L25及び第6成分L26の合計の質量割合は、10質量%以上50質量%未満が好ましく、13質量%以上45質量%以下がより好ましく、16質量%以上40質量%以下が特に好ましい。この構成により、より優れた食感及び風味を得ることができる。
【0088】
乾燥物L2において、第4成分L24と第5成分L25と第6成分L26とは、どの成分が多く含まれてもよく、3成分が同じ割合で含まれてもよい。具体的には、乾燥物L2全体に対する第4成分L24の質量割合をM24質量%とし、第5成分L25の質量割合をM25質量%とした場合に、3≦M24≦20であることが好ましく、4≦M24≦18がより好ましく、5≦M24≦16が更に好ましい。同様に、3≦M25≦20であることが好ましく、4≦M25≦18がより好ましく、5≦M25≦16が更に好ましい。
【0089】
また、第2の解決手段における乾燥物L2では、第6成分L26が第1成分L21より多く含まれることが好ましい。粉末食品がこの構成を備えることで、とりわけ美味しい粉末食品を得ることができる。即ち、粉末食品に乾燥物L2に起因する歯ごたえを強く与え、咀嚼を誘発できるためと考えられる。
粉末食品において、第1成分L21は含まれても含まれなくてもよい。含まれる場合には、例えば、乾燥物L2全体に対して、5質量%未満(更には、0質量%を超えて4質量%以下が好ましい)にすることができる。従って、この場合、乾燥物L2全体に対する第6成分L26の質量割合をM26質量%とすると、M26≧2質量%にすることができる。第6成分L26は、更に、2質量%≦M26≦8質量%が好ましく、2.5質量%≦M26≦6.5質量%がより好ましい。
【0090】
尚、乾燥物L2を構成する第1成分~第6成分の各成分の割合(質量割合)は、下記方法により算出する。即ち、粉末食品(乾燥物L1及び乾燥物L2以外に他成分を含んでもよい)100gから、乾燥物L2以外の成分を排除した成分を「乾燥物L2全体」とし、その質量を「乾燥物L2全体の質量」とする。更に、「乾燥物L2全体」を上述した最大長の範囲に基づいて第1成分~第6成分へと分類する。そして、「乾燥物L2全体の質量」に対する、分類された各成分の質量割合を、上述した第1成分~第6成分の各含有割合とする。
【0091】
また、第2の解決手段における粉末食品に含まれる乾燥物L2の概形が限定されないこと、乾燥物L2は、どのような乾燥方法により得られた乾燥物であってもよいこと、更に、乾燥物L2の水分率が限定されないこと、更に、乾燥物L2は、収穫した葉菜類をそのまま乾燥させたものであってもよいが、各種の前処理が施された乾燥物であってもよいこと、は第1の解決手段における乾燥物L2と同様である。
【0092】
更に、乾燥物L1全体(100質量%)に対する、第4成分L14、第5成分L15及び第6成分L16の各々の質量割合をM14質量%、M15質量%及びM16質量%とし、且つ、乾燥物L2全体(100質量%)に対する、第4成分L24、第5成分L25及び第6成分L26の各々の質量割合をM24質量%、M25質量%及びM26質量%とした場合に、(M14+M15+M16)<(M24+M25+M26)を満たすことが好ましい。即ち、乾燥物L1と乾燥物L2とを比較した場合に、第4成分、第5成分及び第6成分の合計割合は、乾燥物L1よりも乾燥物L2の方が大きいことが好ましい。より具体的には、例えば、1<(M24+M25+M26)/(M14+M15+M16)≦2とすることができ、1.1≦(M24+M25+M26)/(M14+M15+M16)≦1.8が好ましく、1.2≦(M24+M25+M26)/(M14+M15+M16)≦1.6がより好ましい。
【0093】
(4)乾燥物L1と乾燥物L2との配合
第2の解決手段における粉末食品では、乾燥物L1と乾燥物L2との配合比は限定されないが、例えば、乾燥物L2の含有量を1質量部とした場合に、乾燥物L1を2質量部以上14質量部以下の範囲にすることができる。この範囲の配合比では、乾燥物L1に起因するえぐみの影響を抑制できる。とりわけ、乾燥物L2が、コマツナ、チンゲンサイ及びカブのうちの少なくとも1種の葉菜類を用いた乾燥物である場合には、風味改善に寄与する。風味改善としては、特に、乾燥物L1の風味を強化する作用、乾燥物L1及びL2に由来する旨味を付与する作用、塩味をエンハンスする作用を顕著に得ることができる。
【0094】
更に、粉末食品は、乾燥物L2の含有量を1質量部とした場合に、乾燥物L1を3質量部以上12質量部以下の範囲で含むものであることが好ましく、乾燥物L1を4質量部以上11質量部以下の範囲で含むものであることがより好ましく、乾燥物L1を5質量部以上10質量部以下の範囲で含むものであることが更に好ましく、乾燥物L1を6質量部以上9質量部以下の範囲で含むものであることがとりわけ好ましい。上述の好ましい範囲では、嗜好としての美味しさをより増強することができる。
【0095】
また、第2の解決手段における粉末食品において、乾燥物L1と乾燥物L2との合計含有量は限定されないが、通常、粉末食品全体を100質量%とした場合に、乾燥物L1と乾燥物L2とを合計で50質量%以上含む(100質量%であってもよい)。この割合は、更に、60質量%以上99質量%以下とすることができ、70質量%以上98質量%以下とすることができ、80質量%以上97質量%以下とすることができ、85質量%以上96質量%以下とすることができる。
【0096】
尚、上述した乾燥物L2の含有量を1質量部とした場合の乾燥物L1の含有量「X質量部」の算出方法、上述した乾燥物L1と乾燥物L2との合計含有量「Y質量%」の算出方法、は第1の解決手段における算出方法と同様である。
【0097】
その他、その他の成分、調味成分、着香成分、及び、食品添加物については、は第1の解決手段における各々と同様である。また、第2の解決手段の粉末食品は、どのように製造してもよいことも第1の解決手段における場合と同様である。更に、粉末食品は、例えば、飯米、うどんやスパゲッティなどの麺類などの食材や調理食品に、ふりかけたり、混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させて用いることができることも同様である。
【0098】
第2の解決手段における風味改善方法において、乾燥物L1及び乾燥物L2については、前述した通りである。また、各乾燥物の大きさ、配合等についても同様である。このようは構成にすることで、風味改善を行うことができる点についても前述の通りであり、特に乾燥物L1に由来するえぐみである場合の風味改善作用に優れることも前述の通りである。