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特開2022-31672光学フィルム及び光学フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031672
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】光学フィルム及び光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20220215BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220215BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220215BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20220215BHJP
【FI】
G02B1/14
B32B7/023
B32B27/34
C08J7/046 Z CFG
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179067
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2018557566の分割
【原出願日】2017-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2016250146
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017022603
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017101153
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩子
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 千裕
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつガラス様の反射特性を有する光学フィルム、及び光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】基材とハードコート層とを有し、鉛筆硬度が2H以上であり、MIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における拡散光の強度が出射光ピーク強度の1%以下であり、基材が、芳香族ポリアミド又はポリイミドである、光学フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、ハードコート層とを有する光学フィルムであって、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下であり、
前記基材が、芳香族ポリアミド又はポリイミドである、光学フィルム。
【請求項2】
基材と、無機粒子を含まないハードコート層とを有する光学フィルムであって、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が積層されている側の最表面における表面粗さが5nm以下である請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層が積層されている側の最表面における表面粗さが2nm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層が無機粒子を含み、前記無機粒子の粒子径が単一分布を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層中の前記無機粒子の充填率が55体積%以下である請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層の前記基材とは反対側に、さらに耐擦傷層を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が10000回以上である請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が4H以上である請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
前記基材が、芳香族ポリアミド又はポリイミドであり、
(i-1)前記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(iii-1)前記塗膜を、平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化する工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
基材と、無機粒子を含まないハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-1)前記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(iii-1)前記塗膜を、平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化する工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記工程(iii-1)の直前の前記塗膜の硬化率が20%以下である、請求項10又は11に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記工程(i-1)と工程(iii-1)の間に、
(ii-1)前記塗膜の表層を硬化させ、前記塗膜の表層の硬化率を50%以上にする工程を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記工程(iii-1)の前記金属ロールの表面粗さが40nm以下である請求項10~13のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
前記基材が、芳香族ポリアミド又はポリイミドであり、
(i-2)前記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(ii-2)前記塗膜を硬化させる工程と、
(iii-2)カレンダー処理を行う工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
【請求項16】
基材と、無機粒子を含まないハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-2)前記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(ii-2)前記塗膜を硬化させる工程と、
(iii-2)カレンダー処理を行う工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記工程(ii-2)は、前記塗膜の硬化率を10~80%とする工程である、請求項15又は16に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記工程(iii-2)のカレンダー処理は、2つのロールを用いて行われ、ライン速度が20m/分以上であり、少なくとも1つのロールの温度が80℃以上であり、ニップ圧が100kg/cm以上であり、ニップ回数が1回以上である、請求項15~17のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記工程(iii-2)の前記カレンダー処理が2つのロールを用いて行われ、前記2つのロールのうち前記塗膜側のロールが金属ロールであり、前記金属ロールの表面粗さが40nm以下である請求項15~18のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管(CRT)を利用した表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、及び液晶ディスプレイ(LCD)のような画像表示装置では、表示面への傷付きを防止するために、基材上にハードコート層を有する光学フィルム(ハードコートフィルム)を設けることが好適である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、樹脂基材上に、平均粒径が異なる少なくとも2種の無機粒子を含有するハードコート層と、金属酸化物層とをこの順で積層したハードコート層付積層体が記載されている。また、特許文献1には、樹脂基材上に、ハードコート層を形成した後、金属酸化物層を形成する前に、カレンダー処理を施すことで、無機粒子の充填率を高めることが好ましいという記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、たとえばスマートフォンなどにおいて、フレキシブルなディスプレイの需要が高まり、これに伴って、繰り返し折り曲げても破断しにくい(繰り返し折り曲げ耐性に優れる)光学フィルムが強く求められている。この場合、可撓性の観点から光学フィルムの基材としては、ガラス基材ではなく樹脂基材を用いることが考えられるが、樹脂基材を用いると、ガラス基材を用いた場合に比べて、特に反射特性に関して、高級感が低下してしまう(ガラス様の反射特性が得られない)という問題があった。特許文献1に記載された樹脂基材とハードコート層とを有する光学フィルムについても、繰り返し折り曲げ耐性とガラス様の反射特性のいずれもが不十分であることが分かった。
本発明の課題は、硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつガラス様の反射特性を有する光学フィルム、及び上記光学フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、下記手段により上記課題が解消できることを見出した。
[1]
基材と、ハードコート層とを有する光学フィルムであって、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下であり、
上記基材が、芳香族ポリアミド又はポリイミドである、光学フィルム。
[2]
基材と、無機粒子を含まないハードコート層とを有する光学フィルムであって、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルム。
[3]
上記ハードコート層が積層されている側の最表面における表面粗さが5nm以下である[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4]
上記ハードコート層が積層されている側の最表面における表面粗さが2nm以下である[1]~[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[5]
上記ハードコート層が無機粒子を含み、上記無機粒子の粒子径が単一分布を有する[1]~[4]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[6]
上記ハードコート層中の上記無機粒子の充填率が55体積%以下である[5]に記載の光学フィルム。
[7]
上記ハードコート層の上記基材とは反対側に、さらに耐擦傷層を有する[1]~[6]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[8]
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が10000回以上である[1]~[7]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[9]
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が4H以上である[1]~[8]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[10]
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
上記基材が、芳香族ポリアミド又はポリイミドであり、
(i-1)上記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(iii-1)上記塗膜を、平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化する工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
[11]
基材と、無機粒子を含まないハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-1)上記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(iii-1)上記塗膜を、平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化する工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
[12]
上記工程(iii-1)の直前の上記塗膜の硬化率が20%以下である、[10]又は[11]に記載の光学フィルムの製造方法。
[13]
上記工程(i-1)と工程(iii-1)の間に、
(ii-1)上記塗膜の表層を硬化させ、上記塗膜の表層の硬化率を50%以上にする工程を含む、[10]~[12]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
[14]
上記工程(iii-1)の上記金属ロールの表面粗さが40nm以下である[10]~[13]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
[15]
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
上記基材が、芳香族ポリアミド又はポリイミドであり、
(i-2)上記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(ii-2)上記塗膜を硬化させる工程と、
(iii-2)カレンダー処理を行う工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
[16]
基材と、無機粒子を含まないハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-2)上記基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(ii-2)上記塗膜を硬化させる工程と、
(iii-2)カレンダー処理を行う工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
[17]
上記工程(ii-2)は、上記塗膜の硬化率を10~80%とする工程である、[15]又は[16]に記載の光学フィルムの製造方法。
[18]
上記工程(iii-2)のカレンダー処理は、2つのロールを用いて行われ、ライン速度が20m/分以上であり、少なくとも1つのロールの温度が80℃以上であり、ニップ圧が100kg/cm以上であり、ニップ回数が1回以上である、[15]~[17]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
[19]
上記工程(iii-2)の上記カレンダー処理が2つのロールを用いて行われ、上記2つのロールのうち上記塗膜側のロールが金属ロールであり、上記金属ロールの表面粗さが40nm以下である[15]~[18]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
なお、本発明は上記[1]~[19]に関するものであるが、参考のためその他の事項(下記<1>~<16>など)についても記載した。
【0007】
<1>
基材と、ハードコート層とを有する光学フィルムであって、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルム。
<2>
上記ハードコート層が積層されている側の最表面における表面粗さが5nm以下である<1>に記載の光学フィルム。
<3>
上記ハードコート層が積層されている側の最表面における表面粗さが2nm以下である<1>又は<2>に記載の光学フィルム。
<4>
上記ハードコート層が無機粒子を含み、上記無機粒子の粒子径が単一分布を有する<1>~<3>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
<5>
上記ハードコート層中の上記無機粒子の充填率が55体積%以下である<4>に記載の光学フィルム。
<6>
上記ハードコート層の上記基材とは反対側に、さらに耐擦傷層を有する<1>~<5>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
<7>
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が10000回以上である<1>~<6>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
<8>
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が4H以上である<1>~<7>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
<9>
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-1)基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(iii-1)上記塗膜を、平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化する工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
<10>
上記工程(iii-1)の直前の上記塗膜の硬化率が20%以下である、<9>に記載の光学フィルムの製造方法。
<11>
上記工程(i-1)と工程(iii-1)の間に、
(ii-1)上記塗膜の表層を硬化させ、上記塗膜の表層の硬化率を50%以上にする工程を含む、<9>又は<10>に記載の光学フィルムの製造方法。
<12>
上記工程(iii-1)の上記金属ロールの表面粗さが40nm以下である<9>~<11>のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
<13>
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-2)基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(ii-2)上記塗膜を硬化させる工程と、
(iii-2)カレンダー処理を行う工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
<14>
上記工程(ii-2)は、上記塗膜の硬化率を10~80%とする工程である、<13>に記載の光学フィルムの製造方法。
<15>
上記工程(iii-2)のカレンダー処理は、2つのロールを用いて行われ、ライン速度が20m/分以上であり、少なくとも1つのロールの温度が80℃以上であり、ニップ圧が100kg/cm以上であり、ニップ回数が1回以上である、<13>又は<14>に記載の光学フィルムの製造方法。
<16>
上記工程(iii-2)の上記カレンダー処理が2つのロールを用いて行われ、上記2つのロールのうち上記塗膜側のロールが金属ロールであり、上記金属ロールの表面粗さが40nm以下である<13>~<15>のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつガラス様の反射特性を有する光学フィルム、及び上記光学フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)~(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一種を表し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一種を表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの少なくとも一種を表す。
【0010】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、
基材と、ハードコート層とを有する光学フィルムであって、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムである。
である。
【0011】
<光学フィルムの物性>
まず、本発明の光学フィルムの物性について説明する。
【0012】
(鉛筆硬度)
本発明の光学フィルムは、膜強度の観点から、JIS(日本工業規格) K 5600-5-4:1999に従って測定した500g荷重の鉛筆硬度が2H以上であり、3H以上であることが好ましく、4H以上であることがより好ましく、5H以上であることが更に好ましい。
【0013】
(耐折回数)
本発明の光学フィルムは、JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、5000回以上であることが好ましく、10000回以上であることがより好ましい。
【0014】
(反射特性)
本発明の光学フィルムは、光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である。
本発明者らは、樹脂基材を用いた光学フィルムの反射特性について検討し、上記の特性を満たす場合に、ガラス様の反射特性が得られることを見出した。
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が4°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の0.7%以下であることが好ましく、光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が3°以内で、且つ、法線方向から50°における出射光の強度が出射光ピーク強度の0.5%以下であることがより好ましい。
反射特性は、三次元変角分光測色システムGCMS-3B((株)村上色彩技術研究所)を用いて測定した。具体的には、光学フィルムの法線方向(0°とする)に対して-60°から入射光を入射し、0°から80°の範囲で反射光を測定した。出射光ピーク強度の10%となる角度の幅をθとし、50°における出射光の強度を出射光ピーク強度で割った値に100をかけたものをI(%)とした。
【0015】
(表面粗さ)
本発明の光学フィルムは、ハードコート層が積層されている側(ハードコート層の基材側とは反対側)の最表面における表面粗さ(Ra)が、5nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。Raを5nm以下とすることで、反射特性を好ましい範囲にすることができる。
Raは、一般的な光干渉計で測定でき、本発明では、Vertscan2.0(株式会社菱化システム社製)を用いて測定した。
【0016】
<ハードコート層>
本発明の光学フィルムのハードコート層について説明する。
ハードコート層は樹脂を含有することが好ましい。
【0017】
(樹脂)
ハードコート層に含有される樹脂は、硬化性化合物を電離放射線の照射又は加熱により重合した重合体(硬化物)であることが好ましい。
【0018】
-硬化性化合物-
硬化性化合物としては、重合性官能基を有する化合物(好ましくは電離放射線硬化性化合物)が好ましい。重合性官能基を有する化合物としては、各種モノマー、オリゴマーやポリマーを用いる事ができ、重合性官能基(重合性基)としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性不飽和基(炭素-炭素不飽和二重結合性基)等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0019】
重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2-ビス{4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2-2-ビス{4-(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
【0020】
更にはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性モノマーとして、好ましく用いられる。
【0021】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。更に好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーを少なくとも1種含有することが好ましい。
例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同DPHA-2C、同PET-30、同TMPTA、同TPA-320、同TPA-330、同RP-1040、同T-1420、同D-310、同DPCA-20、同DPCA-30、同DPCA-60、同GPO-303、大阪有機化学工業(株)製V#3PA、V#400、V#36095D、V#1000、V#1080等のポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化物を挙げることができる。また紫光UV-1400B、同UV-1700B、同UV-6300B、同UV-7550B、同UV-7600B、同UV-7605B、同UV-7610B、同UV-7620EA、同UV-7630B、同UV-7640B、同UV-6630B、同UV-7000B、同UV-7510B、同UV-7461TE、同UV-3000B、同UV-3200B、同UV-3210EA、同UV-3310EA、同UV-3310B、同UV-3500BA、同UV-3520TL、同UV-3700B、同UV-6100B、同UV-6640B、同UV-2000B、同UV-2010B、同UV-2250EA、同UV-2750B(日本合成化学(株)製)、UL-503LN(共栄社化学(株)製)、ユニディック17-806、同17-813、同V-4030、同V-4000BA(大日本インキ化学工業(株)製)、EB-1290K、EB-220、EB-5129、EB-1830,EB-4858(ダイセルUCB(株)製)、ハイコープAU-2010、同AU-2020((株)トクシキ製)、アロニックスM-1960(東亞合成(株)製)、アートレジンUN-3320HA,UN-3320HC,UN-3320HS、UN-904,HDP-4T、U15HA(新中村化学工業(株))などの3官能以上のウレタンアクリレート化合物、アロニックスM-8100,M-8030,M-9050(東亞合成(株)製、KRM-8307(ダイセルサイテック(株)製)などの3官能以上のポリエステル化合物なども好適に使用することができる。特にDPHAやPET-30が好ましく用いられる。
【0023】
更に、3個以上の重合性官能基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。
【0024】
また、特開2005-76005号、同2005-36105号公報に記載された化合物、SIRIUS-501、SUBARU-501(大阪有機化学工業(株)製)のようなデンドリマーや、特開2005-60425号公報に記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。
【0025】
重合性官能基を有する化合物は、二種類以上を併用してもよい。これら重合性官能基を有する化合物の重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0026】
-無機粒子-
本発明の光学フィルムのハードコート層は、無機粒子を含有することも好ましい。
ハードコート層に無機粒子を添加することで硬度をより高くすることができる。無機粒子としては例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。
【0027】
無機粒子の表面を有機セグメントを含む表面修飾剤で処理してもよい。表面修飾剤は、無機粒子と結合を形成するか無機粒子に吸着しうる官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基を同一分子内に有するものが好ましい。無機粒子に結合もしくは吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が好ましい。さらに有機成分との親和性の高い官能基としては単に有機成分と親疎水性を合わせただけのものでもよいが、有機成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、特にエチレン性不飽和二重結合基、もしくは開環重合性基が好ましい。本発明において好ましい無機粒子表面修飾剤は金属アルコキシドもしくはアニオン性基とエチレン性不飽和二重結合基もしくは開環重合性基を同一分子内に有する硬化性樹脂である。
【0028】
これら表面修飾剤の代表例として以下の不飽和二重結合含有のカップリング剤や、リン酸基含有有機硬化性樹脂、硫酸基含有有機硬化性樹脂、カルボン酸基含有有機硬化性樹脂等が挙げられる。
S-1 HC=C(X)COOCSi(OCH
S-2 HC=C(X)COOCOTi(OC
S-3 HC=C(X)COOCOCOC10OPO(OH)
S-4 (HC=C(X)COOCOCOC10O)POOH
S-5 HC=C(X)COOCOSO
S-6 HC=C(X)COO(CH10COO)
S-7 HC=C(X)COOC10COOH
S-8 CHCH(O)CHOCSi(OCH
(Xは、水素原子、又はCHを表す)
【0029】
これらの無機粒子の表面修飾は、溶液中でなされることが好ましい。無機粒子を機械的に微細分散する時に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、または無機粒子を微細分散したあとに表面修飾剤を添加して攪拌するか、さらには無機粒子を微細分散する前に表面修飾を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH変更を行う)、そのあとで微細分散を行う方法でも良い。表面修飾剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0030】
無機粒子の平均一次粒子径は、1~100nmであることが好ましく、2~20nmであることがより好ましく、3~15nmであることが更に好ましい。
無機粒子の平均一次粒子径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0031】
50°における出射光の強度低減の観点から、無機粒子は、粒子径が単一分布を有するものであることが好ましい。ここで、単一分布であるとは、無機粒子の粒子径分布において、ピークが1つであることを示す。
【0032】
上記無機粒子は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよいが、50°における出射光の強度低減の観点から、1種のみであることが好ましい。
【0033】
光学フィルムの反射特性及び平滑性の観点から、ハードコート層中の無機粒子の充填率は、55体積%以下であることが好ましく、40体積%以下であることがより好ましく、35体積%以下であることが更に好ましく、30体積%以下であることが特に好ましい。
サンプル表面をスクレーパーでそぎ取り、ハードコート層を10g以上回収して質量を測定した。回収したハードコート層を窒素雰囲気下で600℃で1時間加熱して、樹脂を蒸発させて無機粒子を回収し、質量を測定した。樹脂の比重を1.2とし、無機粒子の比重は適切な値を用いて、ハードコート層中の無機粒子の体積充填率を求めた。
【0034】
-その他添加剤-
ハードコート層は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、分散剤、レベリング剤、防汚剤等を含有していてもよい。
【0035】
(膜厚)
ハードコート層の膜厚は特に限定されないが、1~10μmであることが好ましく、1.5~8μmであることがより好ましく、2~5μmであることが更に好ましい。
【0036】
<基材>
本発明の光学フィルムの基材について説明する。
基材は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
基材はポリマー樹脂を含むことが好ましい。
【0037】
(ポリマー樹脂)
ポリマー樹脂としては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
【0038】
例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース系ポリマー、又は上記ポリマー同士の共重合体や上記ポリマー同士を混合したポリマーも例として挙げられる。
【0039】
特に、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー及びイミド系ポリマーは、JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した破断折り曲げ回数が大きく、硬度も比較的高いことから、基材として好ましく用いることができる。例えば、特許第5699454号公報の実施例1にあるような芳香族ポリアミド、特表2015-508345号公報及び特表2016-521216号公報に記載のポリイミドを基材として好ましく用いることができる。
【0040】
また、基材は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0041】
(柔軟化素材)
基材は、上記のポリマー樹脂を更に柔軟化する素材を含有しても良い。柔軟化素材とは、破断折り曲げ回数を向上させる化合物を指し、柔軟化素材としては、ゴム質弾性体、脆性改良剤、可塑剤、スライドリングポリマー等を用いることが出来る。
柔軟化素材として具体的には、特開2016-167043号公報における段落番号<0051>~<0114>に記載の柔軟化素材を好適に用いることができる。
【0042】
柔軟化素材は、ポリマー樹脂に単独で混合しても良いし、複数を適宜併用して混合しても良いし、また、樹脂と混合せずに、柔軟化素材のみを単独又は複数併用で用いて基材としても良い。
【0043】
これらの柔軟化素材を混合する量は、例えば、ポリマー樹脂100質量部に対して10質量部とすることができるが、とくに制限はない。すなわち、基材は、十分な破断折り曲げ回数を有していれば良く、ポリマー樹脂単独で構成されても良いし、柔軟化素材を混合しても良いし、すべてを柔軟化素材(100%)として十分な破断折り曲げ回数を持たせても良い。
【0044】
(その他の添加剤)
基材には、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、など)を添加できる。それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点又は沸点において特に限定されるものではない。また添加剤を添加する時期は基材を作製する工程において何れの時点で添加しても良く、素材調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
その他の添加剤としては、特開2016-167043号公報における段落番号<0117>~<0122>に記載の添加剤を好適に用いることができる。
【0045】
以上の添加剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾオキサジン化合物を挙げることができる。ここでベンゾトリアゾール化合物とは、ベンゾトリアゾール環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。トリアジン化合物とは、トリアジン環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種トリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。ベンゾオキサジン化合物としては、例えば特開2014-209162号公報段落0031に記載されているものを用いることができる。基材中の紫外線吸収剤の含有量は、例えば基材に含まれる樹脂100質量部に対して0.1~10質量部程度であるが、特に限定されるものではない。また、紫外線吸収剤については、特開2013-111835号公報段落0032も参照できる。なお、本発明においては、耐熱性が高く揮散性の低い紫外線吸収剤が好ましい。かかる紫外線吸収剤としては、例えば、UVSORB101(富士フイルムファインケミカルズ株式会社製)、TINUVIN360、TINUVIN 460、TINUVIN 1577(BASF社製)、LA-F70、LA-31、LA-46(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0047】
基材は、透明性の観点から、基材に用いる柔軟性素材及び各種添加剤と、ポリマー樹脂との屈折率の差が小さいことが好ましい。
【0048】
(基材の厚み)
基材の厚みは、100μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることが更に好ましく、50μm以下が最も好ましい。基材の厚みが薄くなれば、折れ曲げ時の表面と裏面の曲率差が小さくなり、クラック等が発生し難くなり、複数回の折れ曲げでも、基材の破断が生じなくなる。一方、基材取り扱いの容易さの観点から基材の厚みは10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。光学フィルムが組み込まれる画像表示装置の薄型化の観点からは、光学フィルムの総厚は、70μm以下であることが好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
【0049】
(基材の作製方法)
基材は、熱可塑性のポリマー樹脂を熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は、上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を、熱溶融時に加えることができる。一方、基材を溶液製膜法で作製する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープともいう)には、各調製工程において上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0050】
<その他の層>
本発明の光学フィルムは、ハードコート層以外の層を有してもよい。
例えば、光学フィルムのハードコート層の基材とは反対側の最表面に、更に耐擦傷層を設けることも好ましく、これにより耐擦傷性を向上することができる。
【0051】
(耐擦傷層)
耐擦傷層としては、1分子中の架橋基数が3つ以上の架橋性化合物の硬化物を耐擦傷層の全質量に対して80質量%以上含有する層であることが好ましい。
1分子中の架橋基数が3つ以上の架橋性化合物は、架橋性モノマーであっても、架橋性オリゴマーであっても、架橋性ポリマーであってもよい。架橋性化合物の1分子中の架橋基数が3つ以上であると、緻密な三次元架橋構造が形成しやすく、架橋基当量(架橋基として(メタ)アクリロイル基を持つ場合は一般的にアクリル当量と呼ばれる)の小さな架橋性化合物を用いても、耐擦傷層の押し込み硬度を高くすることができる。耐擦傷層の押し込み硬度は300MPa以上であることが好ましい。
1分子中の架橋基数が3つ以上の、架橋性化合物の硬化物の含有率は、耐擦傷層の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
架橋基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
1分子中の架橋基数が3つ以上の架橋性モノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、高架橋という点ではペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、又はこれらの混合物が好ましい。
耐擦傷層の膜厚は、350nm以下であることが好ましい。
【0052】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
本発明の光学フィルムの製造方法としては、下記態様(A)及び態様(B)が好ましく挙げられる。
【0053】
態様(A):
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における拡散光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-1)基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(iii-1)上記塗膜を、平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化する工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
【0054】
態様(B):
基材と、ハードコート層とを有し、
JIS K 5600-5-4:1999に従って測定した鉛筆硬度が2H以上であり、
JIS P 8115:2001に従いMIT試験機によって測定した耐折回数が1000回以上であり、
光学フィルムの法線方向に対して-60°から入射光を入射し、出射光ピーク強度の10%となる角度の幅が6°以内で、且つ、法線方向から50°における拡散光の強度が出射光ピーク強度の1%以下である、光学フィルムの製造方法であって、
(i-2)基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程と、
(ii-2)上記塗膜を硬化させる工程と、
(iii-2)カレンダー処理を行う工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
【0055】
<<態様(A)>>
本発明の光学フィルムの製造方法の態様(A)について説明する。
【0056】
<工程(i-1)>
工程(i-1)は、基材上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗膜を設ける工程である。
基材については前述したとおりである。
ハードコート層形成用組成物は、前述のハードコート層を形成するための組成物である。
ハードコート層形成用組成物は、通常、液の形態をとり、好ましくは前述のハードコート層に含まれる樹脂を形成するための硬化性化合物を含有する。また、ハードコート層形成用組成物は、硬化性化合物と、必要に応じて各種添加剤および重合開始剤を適当な溶剤に溶解又は分散して調製されることが好ましい。この際固形分の濃度は、一般的には10~90質量%程度であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%程度である。
【0057】
-重合開始剤-
ハードコート層形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
硬化性化合物が光重合性化合物である場合は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009-098658号公報の段落<0133>~<0151>に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65~148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
ハードコート層形成用組成物中の重合開始剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分な量であり、かつ開始点が増えすぎないように設定するという理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5~8質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0058】
-溶剤-
溶剤としては、特に限定されないが、有機溶剤であることが好ましく、例えば、常圧での沸点が200℃以下の溶剤を挙げることができる。具体的には、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類が用いられ、これらは、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類が好ましい。
ここで、アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n―ブタノール、tert―ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等を挙げることができる。炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン等を挙げることができる。中でも、イソプロピルアルコール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、乳酸エチル等が好ましい。
【0059】
ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0060】
<工程(iii-1)>
工程(iii-1)は、工程(i-1)で得られた塗膜を、平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化する工程である。
このように、塗膜を平滑な1つの金属ロールに接触させながら硬化することで、平滑な表面を有するハードコート層を形成することができる。
【0061】
平滑な金属ロールとしては、クロムモリブデン鋼にハードクロムメッキを施し研磨により鏡面仕上げしたもの等を好適に用いることができる。
【0062】
平滑な金属ロールの表面粗さ(Ra)としては40nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。金属ロールの表面粗さを40nm以下とすることで、得られるハードコート層の表面の平滑性が向上し、所望の反射特性が得られるため好ましい。本明細書において、金属ロールの表面粗さ(Ra)は、カタログ値がある場合はカタログ値から、カタログ値がない場合は、表面粗さ測定機サーフテスト((株)ミツトヨ製)を用いて求めることができる。
【0063】
塗膜を金属ロールに接触させる際の金属ロールの表面温度は、特に限定されないが、ハードコート層の硬化を促す観点から常温(25℃)より高くしておくのが好ましい場合もある。
【0064】
塗膜の硬化は、塗膜に含まれる硬化性化合物が、電離放射線硬化型の硬化性化合物である場合は、電離放射線を基材側から照射して硬化させることが好ましい。
【0065】
電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm~1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して硬化性化合物を硬化するのが好ましい。50mJ/cm~1000mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm~500mJ/cmであることが更に好ましい。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
【0066】
硬化時の酸素濃度は0~1.0体積%であることが好ましく、0~0.1体積%であることが更に好ましく、0~0.05体積%であることが最も好ましい。硬化時の酸素濃度を1.0体積%よりも小さくすることで、酸素による硬化阻害の影響を受けにくくなり、強固な膜となる。
【0067】
工程(iii-1)での処理速度としては、2~40m/分であることが好ましく、2~30m/分であることがより好ましい。2m/分以上とすることで、高生産性を実現でき、40m/分以下とすることで、電離放射線により塗膜の硬化を十分に進行させることができる。
【0068】
工程(iii-1)の直前の塗膜の硬化率は、20%以下であることが好ましい。すなわち、工程(iii-1)は、硬化率が20%以下の塗膜を硬化する工程であることが好ましい。これにより、工程(iii-1)によって金属ロールの平滑な表面形状が塗膜に転写されやすく、平滑なハードコート層が得られやすい。工程(iii-1)の直前の塗膜の硬化率は、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
なお、硬化率は以下のように求める。
硬化率:
(1-硬化後の残存重合性官能基数/硬化前の重合性官能基数)×100%であり、以下の方法で測定される。
具体的には、Thermo electron corporationのNICOLET6700 FT-IRを使用して透過のIR測定から重合性の炭素-炭素不飽和二重結合のピーク高さ(808cm-1)を求める。また、光照射後も同様にピーク高さを求め、光照射前後でのピーク高さの変化率を求めることにより硬化率を算出する。
【0069】
工程(i-1)と工程(iii-1)の間に、下記工程(ii-1)を有することも好ましい。
(ii-1)塗膜の表層を硬化させ、塗膜の表層の硬化率を50%以上にする工程。
塗膜の表層とは、塗膜の基材とは反対側の表面から0.8μmの領域である。表層の硬化率は、この領域について一回反射のIR測定から求めた以外は前述と同様の方法で測定される。
工程(i-1)と工程(iii-1)の間に塗膜の表層を硬化する工程を有して、塗膜の表層の硬化率を50%以上にすることで、塗膜であるハードコート層形成用組成物の一部が金属ロールに付着しにくくなるため、生産性が向上する。工程(ii-1)において、塗膜の表層の硬化率を60%以上にすることがより好ましく、70%以上にすることが更に好ましい。
なお、この場合であっても、工程(iii-1)の直前の塗膜全体の硬化率は前述のとおり20%以下であることが好ましい。
【0070】
工程(i-1)後、工程(iii-1)の前に、ハードコート層形成用組成物を塗布した塗布面を乾燥させる工程を有することも好ましい。この場合、乾燥は、上記塗布面を50~130℃、好ましくは60~125℃にて、5秒~5分、好ましくは30秒~5分間、加熱することにより行うことが好ましい。
【0071】
塗膜の表層の硬化は、電離放射線の照射により行うことができる。
電離放射線の照射により硬化を行う場合は、上述の電離放射線種を好ましく用いることができる。電離放射線は塗膜側から照射することが好ましい。塗膜の表層を硬化させるためには、窒素や二酸化炭素でパージさせることが好ましい。
【0072】
<<態様(B)>>
本発明の光学フィルムの製造方法の態様(B)について説明する。
工程(i-2)は、上述の態様(A)における工程(i-1)と同様である。
【0073】
<工程(ii-2)>
工程(ii-2)は、工程(i-2)で得られた塗膜を硬化させる工程である。
硬化は、電離放射線の照射により行うことができる。
電離放射線の照射により硬化を行う場合は、上記工程(iii-1)に記載の電離放射線種を好ましく用いることができる。
工程(ii-2)では、塗膜の硬化率を10~80%とすることが好ましく、20~70%とすることがより好ましく、30~60%とすることが更に好ましい。
工程(ii-2)で塗膜の硬化率を10%以上とすることにより、工程(iii-2)において用いるカレンダーロールへのハードコート層形成用組成物の付着が起こりにくくなるため、生産性を向上することができる。
また、工程(ii-2)で塗膜の硬化率を80%以下とすることにより、カレンダー処理による平滑化という観点で好ましい。
硬化率は前述と同様に測定される。
【0074】
<工程(iii-2)>
工程(iii-2)は、基材と硬化された塗膜とを有する積層体にカレンダー処理を行う工程である。
【0075】
カレンダー処理は、カレンダー装置により行うことが好ましい。カレンダー装置としては、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、マシンカレンダー、ソフトカレンダー等が使用される。カレンダー処理は2つのロール(カレンダーロール、基材側のロールと塗膜側のロールとを有するロール)を用いて行われることが好ましい。
2つのロールのうち塗膜側のロールは金属製のロール(金属ロール)であることが好ましい。金属ロールとしては、鋼鉄等のロール表面にニッケル、クロム、セラミック等を溶射して保護層としたものが挙げられ、表面は鏡面光沢を有するように研磨されることが好ましい。
以下、塗膜側のロールが金属ロールである場合を例として説明する。
工程(i-2)及び(ii-2)を経た積層体を金属ロールともう一方のロール(基材側のロールであり、金属製のロールであってもよい)の間のニップ(間隙)を通すことにより圧力、せん断力、及び熱によりハードコート層表面の平滑性を向上させることができる。
【0076】
金属ロールを加熱しないで処理しても良いが、加熱することで更に平滑性が向上し好ましい。金属ロールの表面温度は80℃以上が好ましく、90~120℃がより好ましい。
【0077】
本発明に係るカレンダー処理時の金属ロールともう一方のロール間のニップの線圧(ニップ圧)は100kg/cm以上であることが好ましく、200~400kg/cmであることがより好ましい。
【0078】
カレンダー処理の処理速度(ライン速度)としては、20m/分以上が好ましく、40~80m/分であることがより好ましい。
【0079】
ニップ回数は1回以上であることが好ましく、7回以下がより好ましい。
【0080】
金属ロールの表面粗さが40nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。5nm以下が更に好ましい。
【0081】
工程(iii―2)の後に、ハードコート層(塗膜)を更に硬化させることが好ましい。
【0082】
上記態様(A)及び(B)においては、ハードコート層形成後に耐擦傷層を設ける工程を含むことも好ましい。
この場合、平滑化したハードコート層に耐擦傷層を設けることが好ましい。たとえば、前述の工程(iii-2)の後に、ハードコート層上に、耐擦傷層形成用組成物を塗布し、硬化させて、耐擦傷層を形成することが好ましい。
【実施例0083】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0084】
(基材S-1の作製)
[芳香族ポリアミドの合成]
攪拌機を備えた重合槽にN-メチル-2-ピロリドン674.7kg、無水臭化リチウム10.6g(シグマアルドリッチジャパン社製)、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(東レファインケミカル社製「TFMB」)33.3g、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化株式会社製「44DDS」)2.9gを入れ窒素雰囲気下、15℃に冷却、攪拌しながら300分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)18.5g、4,4’-ビフェニルジカルボニルクロライド(東レファインケミカル社製「4BPAC」)6.4gを4回に分けて添加した。60分間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。
上記で得られたポリマー溶液の一部を最終のフィルム厚みが40μmになるようにTダイを用いて120℃のエンドレスベルト上に流延し、ポリマー濃度が40質量%になる様に乾燥してエンドレスベルトから剥離した。次に溶媒を含んだフィルムを40℃の大気中でMD(Machine Direction)方向に1.1倍延伸し、50℃の水で水洗して溶媒を除去した。さらに340℃の乾燥炉でTD(Transverse Direction)方向に1.2倍延伸し、芳香族ポリアミドからなる、厚み40μmの基材S-1を得た。
【0085】
〔光学フィルムの作製〕
下記に示す通りに、ハードコート層形成用組成物(塗布液)を調製し、それぞれのハードコート層形成用組成物を用いてハードコート層を形成して、光学フィルム試料を作製した。
【0086】
(ハードコート層形成用組成物の調製)
下記表1に記載の組成(質量部)で各成分をミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して塗布液A~Dを調製した。
【0087】
【表1】
【0088】
DPCA-20:日本化薬(株)製KAYARAD DPCA-20
SIRIUS-501:大阪有機化学工業(株)製SIRIUS-501
シリカ1:平均一次粒子径30nmのシリカ粒子
シリカ2:平均一次粒子径7nmのシリカ粒子
ジルコニア:平均一次粒子径20nmのジルコニア粒子(CIKナノテック(株)製)
溶剤:トルエン
重合開始剤:イルガキュア184(BASF製)
【0089】
(実施例1:光学フィルムaの作製)
基材S-1の上に、塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布して塗膜を得た。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.5体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら20mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量20mJ/cmの紫外線を塗膜側から照射して塗膜を硬化した。この際の塗膜の硬化率は、54%であった。
その後、基材と硬化された塗膜との積層体に対して、カレンダー処理を行った。カレンダー処理の条件を以下に示す。
ロールの種類:ハードクロムメッキクロムモリブデン鋼
ライン速度:50m/分
ロール温度:90℃
ニップ圧:300kg/cm
ニップ回数:1回
ロールの表面粗さ:3nm
カレンダー処理の後に、再度紫外線を照射した。紫外線照射の条件は、酸素濃度100ppm以下、照度160mW/cm、照射量300mJ/cmとした。塗膜の硬化率は、84%であった。
このようにして光学フィルムaを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0090】
(実施例2:光学フィルムbの作製)
塗布液Aの代わりに塗布液Cを用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムbを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0091】
(実施例3:光学フィルムcの作製)
実施例1で作製した、カレンダー処理後のフィルムに、耐擦傷層形成用組成物(塗布液E)をグラビアコーターを用いて、乾膜の厚みが0.1μmになるように塗布し、100℃で乾燥した。その後、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるよう窒素パージしながら160mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量300mJ/cmの紫外線を塗膜側から照射して硬化させて、光学フィルムcを作成した。なお塗布液Eの組成は下記表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
KAYARAD DPHA:日本化薬(株)製
イルガキュア127:重合開始剤(BASF製)
【0094】
(実施例4:光学フィルムdの作製)
塗布液Aの代わりに塗布液Bを用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムdを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0095】
(実施例5:光学フィルムeの作製)
基材S-1の上に、塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布して塗膜を得た。100℃で乾燥した後、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら10mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量5mJ/cmの紫外線を塗膜側から照射して塗膜を硬化した。この際の塗膜の硬化率は、8%であり、塗膜の表層の硬化率は60%であった。
その後、塗膜を平滑な1つの金属ロール(25℃)と接触させながら硬化した。硬化は、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、160mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量1,000mJ/cmの紫外線を基材側から照射することにより行った。
塗膜を平滑な1つの金属ロールに接触させる際の条件を以下に示す。
平滑な金属ロールの種類:ハードクロムメッキクロムモリブデン鋼
平滑な金属ロールの表面粗さ(Ra):8nm
このようにして光学フィルムeを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0096】
(実施例6:光学フィルムfの作製)
基材S-1の代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)基材を用いたこと以外は実施例5の光学フィルムeと同様にして光学フィルムfを作製した。PET基材は特開2014-209162号公報の<0148>~<0160>に記載されている方法で厚み40μmのポリエチレンテレフタレート基材を作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0097】
(基材S-3の作製)
[ポリイミド粉末の製造]
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解し、溶液を得た。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gの固形分粉末のポリイミドを得た。
[基材S-3の作製]
100gの固形分粉末のポリイミドを670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドからなる、厚み30μmの基材S-3(未延伸)を得た。
【0098】
(基材S-4の作製)
100gの固形分粉末のポリイミドを670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離し、200℃の熱をかけながら、長手方向に1.2倍、幅方向に1.2倍延伸した。その後フィルムをフレームにピンで固定して真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理し、ポリイミドからなる、厚み30μmの基材S-4を得た。
【0099】
(基材S-5の作製)
ポリイミドの溶液をステンレス板に流延する量を調整した以外は基材S-4の形成方法と同様にして、ポリイミドからなる、厚み50μmの基材S-5を得た。
【0100】
(基材S-6の作製)
94gの固形分粉末のポリイミドと6gのLA-F70(ADEKA社製)を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドからなる、厚み30μmの基材S-6(未延伸)を得た。
【0101】
(実施例7:光学フィルムgの作製)
基材S-1の代わりに基材S-3を用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムgを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0102】
(実施例8:光学フィルムhの作製)
基材S-1の代わりに基材S-4を用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムhを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0103】
(実施例9:光学フィルムiの作製)
基材S-1の代わりに基材S-4を用いたこと以外は実施例2の光学フィルムbと同様にして光学フィルムiを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0104】
(実施例10:光学フィルムjの作製)
基材S-1の代わりに基材S-4を用いたこと以外は実施例3の光学フィルムcと同様にして光学フィルムjを作製した。
【0105】
(実施例11:光学フィルムkの作製)
基材S-1の代わりに基材S-4を用いたこと以外は実施例4の光学フィルムdと同様にして光学フィルムkを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0106】
(実施例12:光学フィルムlの作製)
基材S-1の代わりに基材S-4を用いたこと以外は実施例5の光学フィルムeと同様にして光学フィルムlを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0107】
(実施例13:光学フィルムmの作製)
基材S-1の代わりに基材S-5を用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムmを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0108】
(実施例14:光学フィルムnの作製)
基材S-1の代わりに基材S-5を用いたこと以外は実施例5の光学フィルムeと同様にして光学フィルムnを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0109】
(実施例15:光学フィルムoの作製)
基材S-1の代わりに基材S-6を用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムoを作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0110】
(比較例1:光学フィルムr1の作製)
基材S-1の上に、塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布して塗膜を得た。100℃で乾燥した後、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量300mJ/cmの紫外線を塗膜側から照射して塗膜を硬化した。このようにして光学フィルムr1を作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0111】
(比較例2:光学フィルムr2の作製)
塗布液Aの代わりに塗布液Dを用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムr2を作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
【0112】
(比較例3:光学フィルムr3の作製)
基材S-1の代わりに平滑化処理されたアラミド基材S-2を用いたこと以外は比較例1の光学フィルムr1と同様にして光学フィルムr3を作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
平滑化処理されたアラミド基材S-2は、以下のようにして作製した。
ホットプレートを用いて120℃に加熱した、フロート法で作製したRaが1nmのガラス板に、基材S-1の作製で得られたポリマー溶液の一部を、最終のフィルム厚みが40μmになるようにTダイを用いて流延した。次いで、ポリマー濃度が60質量%になる様に乾燥してガラス板から剥離した。次に溶媒を含んだフィルムを40℃の大気中でMD(Machine Direction)方向に1.1倍延伸し、50℃の水で水洗して溶媒を除去した。さらに340℃の乾燥炉でTD(Transverse Direction)方向に1.2倍延伸し、芳香族ポリアミドからなる、厚み40μmの基材S-2を得た。
【0113】
(比較例4:光学フィルムr4の作製)
基材S-1の代わりにポリメチルメタクリレート(PMMA)基材を用いたこと以外は実施例1の光学フィルムaと同様にして光学フィルムr4を作製した。ハードコート層の膜厚は5μmであった。
なお、PMMA基材としては、厚み40μmの、特開2016-71264号公報に記載の光学フィルムNo.1を用いた。
【0114】
[光学フィルムの評価]
(繰り返し折り曲げ耐性)
25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させた、幅15mm、長さ80mmの試料フィルムを準備し、耐折度試験機(テスター産業(株)製、MIT、BE-201型、折り曲げ半径0.4mm)を用いて、荷重500gの条件で、JIS P 8115:2001に準拠した測定を行った。破断するまでの回数により繰り返し折り曲げ耐性を評価した。
A:10000回以上
B:1000回以上、10000回未満
C:1000回未満
【0115】
(反射特性)
反射特性は、三次元変角分光測色システムGCMS-3B((株)村上色彩技術研究所)を用いて測定した。具体的には、光学フィルムの法線方向(0°とする)に対して-60°から入射光を入射し、0°から80°の範囲で反射光を測定した。出射光ピーク強度の10%となる角度の幅をθとし、50°における出射光の強度を出射光ピーク強度で割った値に100をかけたものをI(%)とした。
【0116】
(鉛筆硬度)
JIS K 5600-5-4:1999に準拠して測定した。
【0117】
(平滑性)
光学フィルム表面について、Vertscan2.0(株式会社菱化システム社製)を用い、レンズ倍率×2.5、鏡筒倍率×0.5、Waveモードにて、視野サイズ3724μm×4965μmでの表面粗さRaを測定した。
【0118】
(耐擦傷性)
光学フィルムの表面をラビングテスターを用いて、以下の条件で擦りテストを行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:1000g/cm
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:1000往復
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を評価した。
A :非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B :注意深く見ると弱い傷が見えるが、問題にならない
C :一目見ただけで分かる傷があり、非常に目立つ
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
表3及び表4に示した結果から、本発明の実施例の光学フィルムは、鉛筆硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ反射特性に優れている(ガラス様の反射特性を有する)ことが分かった。