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特開2022-32282自動車用磁界検出器および自動車用磁界測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032282
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】自動車用磁界検出器および自動車用磁界測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/06 20060101AFI20220217BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20220217BHJP
   H01L 43/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G01R33/06
H01L29/82 Z
H01L43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135904
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一之瀬 健一
(72)【発明者】
【氏名】太田 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡 豊志夫
(72)【発明者】
【氏名】三輪 圭史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美紀子
(72)【発明者】
【氏名】河野 剛健
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AD51
2G017AD69
2G017BA03
2G017BA05
2G017CC02
5F092AA12
5F092AB01
5F092AC01
5F092DA03
5F092EA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、磁界検出器が備える磁気センサを小型化することを目的とする。
【解決手段】磁界検出器12は、直交する3軸方向の磁界成分を検出するx軸磁気センサ16x、y軸磁気センサ16yおよびz軸磁気センサ16zを備えている。各磁気センサ16x,16y,16zは、周辺磁界に応じたインピーダンスを有する磁気インピーダンス素子と、磁気インピーダンス素子のインピーダンスに応じた磁界検出値を出力する出力回路とを備えている。磁界検出器12は、各磁気センサ16x,16y,16zが備える磁気インピーダンス素子に、共通の駆動信号を与える発振器14を備え、各磁気センサ16x,16y,16zは、駆動信号に応じて出力回路から磁界検出値を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車搭載機器の放出磁界を検出する自動車用磁界検出器であって、
異なる方向の磁界を検出する複数の磁気センサを備え、
各前記磁気センサは、
周辺磁界に応じたインピーダンスを有する磁気インピーダンス素子と、
前記磁気インピーダンス素子のインピーダンスに応じた磁界検出値を出力する出力回路と、を備えることを特徴とする自動車用磁界検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用磁界検出器であって、
複数の前記磁気センサのそれぞれが備える前記磁気インピーダンス素子に、共通の駆動信号を与える発振器を備え、
各前記磁気センサは、前記駆動信号に応じて前記出力回路から前記磁界検出値を出力することを特徴とする自動車用磁界検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の自動車用磁界検出器であって、
前記自動車用磁界検出器に接続される信号測定装置の入力インピーダンスと、前記出力回路の出力インピーダンスとを整合させるインターフェイス回路を備えることを特徴とする自動車用磁界検出器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動車用磁界検出器であって、
3つの前記磁気センサを備えており、直交する3軸方向の磁界成分を3つの前記磁気センサが検出することを特徴とする自動車用磁界検出器。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動車用磁界検出器と、
前記自動車搭載機器の周辺で前記自動車用磁界検出器を走査する走査装置と、
前記自動車用磁界検出器が走査される各位置に対し、複数の前記磁気センサによる複数の前記磁界検出値に基づいて、前記放出磁界の強度を求めるコンピュータと、を備えることを特徴とする自動車用磁界測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用磁界検出器および自動車用磁界測定システムに関し、特に、自動車搭載機器が放出する磁界を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車等の電動自動車が広く用いられている。電動自動車には、走行用のモータジェネレータや、モータジェネレータを制御する電気回路が搭載されている。近年では、車室における磁界が人体に及ぼす影響等について研究が行われており、自動車に搭載されるモータジェネレータや電気回路が放出する磁界の上限値(磁界曝露量の上限値)が標準規格で定められている。標準規格としては、「電磁環境規制制限値」(法規番号GB8702-2014)、「車両電磁界の人体曝露に関わる測定方法」(法規番号GB/T 37130-2018)等がある。
【0003】
以下の特許文献1には、電気機器の磁界曝露量を測定する磁界測定装置が記載されている。この磁界測定装置では、磁界を検出する磁気センサとしてループ状コイルが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-17425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の標準規格(GB/T 37130-2018)には、10Hz以上、400kHz以下の低周波帯域で磁界強度の上限値が定められているものがある。一般に、ループ状コイルを磁気センサとして用いた場合、磁界の周波数が低いほど検出値が小さくなり、ループ状コイルが大きいほど検出値が大きくなる。したがって、低周波帯域の磁界に対して十分な大きさの検出値を得るためには、ループ状コイルを大きくする必要がある。そのため、磁気センサとしてループ状コイルを用いた場合には、磁界を検出する位置間隔を小さくすることが困難な場合がある。
【0006】
本発明は、磁界検出器が備える磁気センサを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自動車搭載機器の放出磁界を検出する自動車用磁界検出器であって、異なる方向の磁界を検出する複数の磁気センサを備え、各前記磁気センサは、周辺磁界に応じたインピーダンスを有する磁気インピーダンス素子と、前記磁気インピーダンス素子のインピーダンスに応じた磁界検出値を出力する出力回路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
望ましくは、複数の前記磁気センサのそれぞれが備える前記磁気インピーダンス素子に、共通の駆動信号を与える発振器を備え、各前記磁気センサは、前記駆動信号に応じて前記出力回路から前記磁界検出値を出力する。
【0009】
望ましくは、前記自動車用磁界検出器に接続される信号測定装置の入力インピーダンスと、前記出力回路の出力インピーダンスとを整合させるインターフェイス回路を備える。
【0010】
望ましくは、3つの前記磁気センサを備えており、直交する3軸方向の磁界成分を3つの前記磁気センサが検出する。
【0011】
別の態様として、前記自動車用磁界検出器と、前記自動車搭載機器の周辺で前記自動車用磁界検出器を走査する走査装置と、前記自動車用磁界検出器が走査される各位置に対し、複数の前記磁気センサによる複数の前記磁界検出値に基づいて、前記放出磁界の強度を求めるコンピュータと、を備える自動車用磁界測定システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁界検出器が備える磁気センサを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る自動車用磁界測定装置の構成を示す図である。
図2】磁気センサの構成を示す図である。
図3】磁界検出器の実装例を示す図である。
図4】第2実施形態に係る自動車用磁界測定システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0015】
図1には、本発明の第1実施形態に係る自動車用磁界測定装置1の構成が示されている。自動車用磁界測定装置1は、直交するx軸、y軸およびz軸の各方向の磁界成分を測定し、各方向ごとに測定された磁界成分の測定値を合成することで磁界の強度を測定する装置である。自動車用磁界測定装置1は、自動車搭載機器が放出する磁界(以下、放出磁界という)を測定対象とする。自動車搭載機器には、インバータ、DC/DCコンバータ等の電気回路、モータジェネレータ、バッテリ、電力ケーブル等がある。
【0016】
自動車用磁界測定装置1は、磁界検出器12、信号測定装置20およびコンピュータ24を備えている。磁界検出器12は、自動車搭載機器の近傍に配置される。磁界検出器12は、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の各方向の磁界成分を検出するx軸磁気センサ16x、y軸磁気センサ16yおよびz軸磁気センサ16z(以下、磁気センサ16x,16y,16zということがある。)を備えている。また、磁界検出器12は発振器14を備えている。発振器14は、各磁気センサ16x,16y,16zを動作させるための駆動信号を各磁気センサ16x,16y,16zに出力する。
【0017】
磁界検出器12は、さらに、x成分インターフェイス回路18x、y成分インターフェイス回路18yおよびz成分インターフェイス回路18z(以下、インターフェイス回路18x,18y,18zということがある。)を備えている。各インターフェイス回路18x,18y,18zは、各磁気センサ16x,16y,16zの出力インピーダンスと、磁界検出器12に接続される信号測定装置20の入力インピーダンスとを整合させる。
【0018】
信号測定装置20は、x成分周波数解析器22x、y成分周波数解析器22yおよびz成分周波数解析器22z(以下、周波数解析器22x,22y,22zということがある。)を備えている。各周波数解析器22x,22y,22zは、各磁気センサ16x,16y,16zから各インターフェイス回路18x,18y,18zを介して出力された磁界検出信号に対してフーリエ変換処理を施し、標準規格で定められた周波数帯域内の各周波数について、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の各磁界成分の測定値を求める。
【0019】
コンピュータ24は、x成分周波数解析器22x、y成分周波数解析器22yおよびz成分周波数解析器22zのそれぞれから出力された測定値を各周波数ごとに合成し、各周波数ごとに、自動車搭載機器の放出磁界の強度を求める。
【0020】
自動車用磁界測定装置1について具体的に説明する。図2には磁気センサ16の構成が示されている。磁気センサ16は、x軸磁気センサ16x、y軸磁気センサ16yおよびz軸磁気センサ16zとして用いられる。磁気センサ16は、磁気インピーダンス素子42、出力コイル44および検出回路46を備えている。磁気インピーダンス素子42は、表皮効果が生じるような高周波電流やパルス電流に対し、特定方向の周辺磁界Hの変化に応じてインピーダンスが変化する素子である。本実施形態では、磁気インピーダンス素子42として、アモルファス合金ワイヤ等の線状の磁性体によって形成されたものが用いられる。このような磁気インピーダンス素子は、長手方向の周辺磁界Hに応じたインピーダンスを有する。
【0021】
磁気センサ16がx軸磁気センサ16xとして用いられる場合、磁気センサ16は、磁気インピーダンス素子42の長手方向がx軸方向に一致する姿勢で配置される。同様に、磁気センサ16がy軸磁気センサ16yまたはz軸磁気センサ16zとして用いられる場合、磁気センサ16は磁気インピーダンス素子42の長手方向がy軸方向またはz軸方向に一致する姿勢で配置される。
【0022】
磁気インピーダンス素子42の周囲には、導線を巻き回して形成した出力コイル44が設けられている。出力コイル44の両端は検出回路46に接続されている。出力コイル44および検出回路46は、周辺磁界Hに応じた磁界検出値を出力する出力回路48を構成する。
【0023】
磁気インピーダンス素子42の両端は、発振器14から引き出された一対の信号供給線40に接続されている。発振器14は、パルス波形が周期的に繰り返されるパルス電圧を駆動信号として磁気インピーダンス素子42に印加する。磁気インピーダンス素子42のインピーダンスは、周辺磁界Hの変化に応じて変化する。したがって、磁気インピーダンス素子42には周辺磁界Hに応じた電流が流れ、出力コイル44には周辺磁界Hに応じた大きさの誘導起電力が発生する。これによって、出力コイル44から検出回路46には、周辺磁界Hによる振幅変調成分を含む検出信号が出力される。検出回路46は検出信号から振幅変調成分を抽出し、その振幅変調成分である磁界検出信号(磁界検出値)を磁気センサ16から出力する。
【0024】
図1に戻って、自動車用磁界測定装置1について引き続き説明する。x成分インターフェイス回路18xは、x軸磁気センサ16xの出力回路48の出力インピーダンスと、x成分周波数解析器22xの入力インピーダンスとを整合させる。例えば、x成分インターフェイス回路18xは、x成分周波数解析器22xからx成分インターフェイス回路18x側を見たインピーダンスを、x成分周波数解析器22xの入力インピーダンスの複素共役に近似させ、または一致させる。同様に、インターフェイス回路18yおよび18zは、磁気センサ16yおよび16zの出力回路48の出力インピーダンスと、周波数解析器22yおよび22zの入力インピーダンスとをそれぞれ整合させる。これによって、各磁気センサ16x,16y,16zから各周波数解析器22x,22y,22zに十分な大きさの磁界検出信号が伝送される。各インターフェイス回路18x,18y,18zは、直流成分や不要な周波数成分を抑制または除去するフィルタ回路を含んでもよい。また、各インターフェイス回路18x,18y,18zは、磁界検出信号を増幅する増幅回路を含んでもよい。
【0025】
x成分周波数解析器22x、y成分周波数解析器22yおよびz成分周波数解析器22zは、スペクトラムアナライザであってよい。x軸磁気センサ16xは、x成分インターフェイス回路18xを介して、x成分周波数解析器22xに磁界検出信号を出力する。x成分周波数解析器22xは、磁界検出信号に対してフーリエ変換処理を施すことで、標準規格で定められた周波数帯域(以下、標準帯域という)内の各周波数についてx軸方向磁界成分の測定値を求め、コンピュータ24に出力する。同様の動作によって、y成分周波数解析器22yおよびz成分周波数解析器22zは、標準帯域内の各周波数についてy軸方向磁界成分およびz軸方向磁界成分の測定値を求め、コンピュータ24に出力する。
【0026】
コンピュータ24は、標準帯域内の各周波数について、x軸方向磁界成分の測定値、y軸方向磁界成分の測定値、およびz軸方向磁界成分の測定値を合成する。すなわち、コンピュータ24は、x軸方向磁界成分の測定値の自乗、y軸方向磁界成分の測定値の自乗、およびz軸方向磁界成分の測定値の自乗を加算合計し、加算合計値の平方根に基づいて磁界の強度を求める。コンピュータ24は、標準帯域内の各周波数について、自らが備えるディスプレイ26に磁界の強度を表示してもよい。例えば、コンピュータ24は、横軸に周波数をとり、縦軸に放出磁界の強度をとった放出磁界の周波数スペクトラムをディスプレイ26に表示してもよい。ユーザは、ディスプレイ26を参照し、放出磁界の強度が磁界曝露量についての標準規格を満たしているか否かを判定してもよい。
【0027】
また、コンピュータ24は、標準帯域内の各周波数について求められたx軸方向、y軸方向およびz軸方向の各磁界成分の測定値を記憶してもよいし、これらの測定値をディスプレイ26に表示してもよい。各軸方向の磁界成分の測定値をディスプレイ26に表示することで、どの向きに磁界が放射されているかをユーザが把握することが容易となる。
【0028】
磁気インピーダンス素子42を用いた磁気センサでは、同一強度の磁界に対する検出値が磁界の周波数によって異なることにより、磁界検出信号の値に周波数偏差が生じることがある。この場合、コンピュータ24は、次のような周波数補償処理を実行してもよい。コンピュータ24は、周波数補償処理のための校正情報を予め記憶する。校正情報は、標準帯域内の各周波数について、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の各磁界成分の測定値に対して校正係数を対応付けたものである。校正係数は、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の各磁界成分の測定値に乗じることで、周波数偏差が補償された値が得られる係数である。校正係数は、実験やシミュレーションによって求められてよい。
【0029】
コンピュータ24は校正情報を参照し、標準帯域内の各周波数について、x軸方向磁界成分に対応付けられた校正係数を取得し、x成分周波数解析器22xから出力された測定値に校正係数を乗じる。これによって、コンピュータ24は、周波数偏差が補償されたx軸方向磁界成分の測定値を求める。コンピュータ24は、同様の処理によって、周波数偏差が補償がされたy軸方向磁界成分の測定値およびz軸方向磁界成分の測定値を求める。
【0030】
本実施形態に係る自動車用磁界測定装置1では、磁界検出器12に磁気インピーダンス素子42が用いられている。同一周波数の磁界に対し同一レベルの測定値を得る場合には、磁気インピーダンス素子42は、ループ状コイル等のセンサ用コイルよりも小型となる。そのため、本実施形態に係る磁界検出器12によれば、センサ用コイルを用いた場合に比べて、放出磁界を測定する位置間隔を小さくすることができる。さらに、磁界検出器12が小型となり、狭い空間での放出磁界の測定が容易となる。
【0031】
また、本実施形態に係る磁界検出器12では、x軸磁気センサ16x、y軸磁気センサ16yおよびz軸磁気センサ16zに共通の駆動信号が与えられる。仮に、各磁気センサ16x,16y,16zに個別に発振器が設けられ、各発振器の動作が同期していない場合には次のような問題が生じることがある。すなわち、各磁気センサ16x,16y,16zから出力される磁界検出信号に、ビート周波数成分が誤差成分として含まれてしまうことがある。ビート周波数は、各磁気センサ16x,16y,16zに対する駆動信号の相互の周波数差異に基づく周波数である。ビート周波数成分は、各磁気センサ16x,16y,16zから発せられるノイズ電磁波の相互干渉によって生じる。本実施形態では、各磁気センサ16x,16y,16zに共通の駆動信号が与えられているため、各磁気センサ16x,16y,16zから出力される磁界検出信号に含まれるビート周波数成分が抑制される。
【0032】
図3には、磁界検出器12の実装例が模式的に示されている。磁界検出器12は、長方形の第1xy基板60、yz基板62および第2xy基板64に、磁界検出器12を構成する電子部品が固定された構造を有している。yz基板62は、短辺方向がz軸方向に一致し、長辺方向がy軸方向に一致する姿勢で配置されている。第1xy基板60および第2xy基板64のそれぞれは、短辺方向がx軸方向に一致し、長辺方向がy軸方向に一致する姿勢で配置されている。第1xy基板60および第2xy基板64は、それぞれの上辺の間にyz基板62が挟まれるように対向している。
【0033】
第1xy基板60には、x軸磁気センサ16xおよびx成分インターフェイス回路18xが固定されている。第2xy基板64には、y軸磁気センサ16yおよびy成分インターフェイス回路18yが固定され、yz基板62には、z軸磁気センサ16zおよびz成分インターフェイス回路18zが固定されている。磁気センサ16x,16yおよび16zは、磁気インピーダンス素子の長手方向が、それぞれx軸方向、y軸方向およびz軸方向に一致する姿勢で各基板に固定されている。
【0034】
なお、第1xy基板60に、x軸磁気センサ16xおよびx成分インターフェイス回路18xに加えて、y軸磁気センサ16yおよびy成分インターフェイス回路18yが固定されてもよい。この場合、第2xy基板64は用いられなくてもよい。同様に、第2xy基板64に、y軸磁気センサ16yおよびy成分インターフェイス回路18yに加えて、x軸磁気センサ16xおよびx成分インターフェイス回路18xが固定されてもよい。この場合、第1xy基板60は用いられなくてもよい。また、yz基板62に、z軸磁気センサ16zおよびz成分インターフェイス回路18zに加えて、y軸磁気センサ16yおよびy成分インターフェイス回路18yが固定されてもよい。この場合、第2xy基板64は用いられなくてもよい。
【0035】
上記では、信号測定装置20として、フーリエ変換処理を行う周波数解析器22x、22yおよび22zを用いる実施形態が示された。このようなフーリエ変換処理を行う周波数解析器に併せて、または、フーリエ変換処理を行う周波数解析器に代えて、各軸方向の磁界成分の時間波形を表示するオシロスコープ等の時間解析器が用いられてもよい。時間解析器を用いることで、各軸方向の磁界成分の位相の測定が行われてもよい。
【0036】
また、上記では、直交する3軸の各方向について磁界成分を測定する実施形態が示された。平面内の磁界成分を測定する場合には、直交する2軸の各方向について磁界成分を測定する構成が採用されてもよい。この場合、2軸方向の磁界成分を検出する2つの磁界センサが用いられ、2つの磁気センサに対するインターフェイス回路および周波数解析器が用いられる。
【0037】
第1実施形態に係る磁界測定装置1は自動車に搭載されてもよい。この場合、自動車のコントロールユニットがコンピュータ24として動作する。自動車に搭載された磁界測定装置1は、放出磁界の制御に用いられてもよい。磁界検出器12は、例えば、アクセルペダルの周辺、シート、フロア等に配置される。コントロールユニットには、信号測定装置20から各周波数における測定値が出力される。コントロールユニットは、信号測定装置20から出力された測定値に基づいて放出磁界の強度を求める。コントロールユニットは、放出磁界の強度が予め定められた基準値を超えた場合には、自動車に搭載されたインバータ、DC/DCコンバータ等の電気回路を制御して、放出磁界を抑制する。
【0038】
また、磁界検出器12は電流センサとして用いられてもよい。例えば、磁界検出器12は、電気回路に含まれる導線や、複数の電気回路間を接続する導線の近傍に配置される。自動車には、磁界検出器12が出力する磁界検出信号に基づいて、導線に流れる電流を測定する測定器が搭載される。磁界検出器12および測定器によって、自動車搭載用の電流測定装置が構成される。
【0039】
測定器は、電流測定値と、磁界検出信号の大きさとを対応付けた測定情報を予め記憶する。測定器は、x軸方向の磁界成分、y軸方向の磁界成分およびz軸方向の磁界成分のそれぞれについての磁界検出信号の自乗を加算合計し、その加算合計値の平方根に基づいて磁界検出信号の大きさを求めてよい。測定器は、測定情報を参照し、磁界検出信号の大きさに対応する電流測定値を取得する。
【0040】
自動車のコントロールユニットは、測定器によって測定された電流に基づいて電気回路を制御してもよい。磁界検出器12を電流センサとして用いた場合、導線に非接触な状態で電流が検出され得る。そのため、導線が絶縁体で被覆されている場合であっても絶縁体を剥離する必要がなく、測定が容易となる。
【0041】
図4には、第2実施形態に係る自動車用磁界測定システム2の構成が示されている。このシステムは、自動車搭載機器72の周辺で磁界検出器12を走査しながら磁界を測定し、自動車搭載機器72の放出磁界の空間分布を測定するものである。自動車搭載機器72は、自動車に搭載された状態であってもよいし、自動車から取り外された状態であってもよい。いずれの状態においても自動車搭載機器72には電源電力が供給され、自動車搭載機器72からは、自動車の走行時と同様の磁界が放出される。
【0042】
自動車用磁界測定システム2は、磁界検出器12、走査装置70、信号測定装置20、コンピュータ24およびカメラ74を備えている。走査装置70には、例えば、ロボットアームが用いられる。走査装置70は、コンピュータ24の制御によって、自動車搭載機器72の周辺で磁界検出器12を走査すると共に、磁界検出器12の位置情報をコンピュータ24に出力する。磁界検出器12は、自動車搭載機器72の周辺の各位置において、x軸方向、y軸方向およびz軸方向のそれぞれについての磁界検出信号を信号測定装置20に出力する。信号測定装置20は、各磁界検出信号に基づいて、測定対象の周波数におけるx軸方向磁界成分、y軸方向磁界成分、およびz軸方向磁界成分のそれぞれの測定値を求めコンピュータ24に出力する。カメラ74は、自動車搭載機器72の画像を撮影し、画像データをコンピュータ24に出力する。
【0043】
コンピュータ24は、走査装置70から出力された位置情報と、信号測定装置20から出力された各測定値に基づいて、磁界検出器12が走査される各位置における放出磁界の強度(以下、放出磁界分布という)を求める。コンピュータ24は、放出磁界分布を示す情報を自らが備えるメモリや、外部のメモリに保存してもよい。また、コンピュータ24は、放出磁界分布と画像データに基づいて放出磁界画像データを生成し、放出磁界画像データに基づく画像をディスプレイ26に表示してもよい。放出磁界画像データは、自動車搭載機器72を表す画像上の各位置に、放出磁界の強度を色彩や数値等によって表す画像データである。
【0044】
自動車用磁界測定システム2では、磁界検出器12に磁気インピーダンス素子が用いられている。同一周波数の磁界に対し同一レベルの測定値を得る場合、磁気インピーダンス素子は、センサ用コイルよりも小型となる。したがって、センサ用コイルを用いた場合に比べて、小さい位置間隔で放出磁界分布を求めることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 自動車用磁界測定装置、2 自動車用磁界測定システム、12 磁界検出器(自動車用磁界検出器)、14 発振器、16 磁気センサ、16x x軸磁気センサ、16y y軸磁気センサ、16z z軸磁気センサ、18x x成分インターフェイス回路、18y y成分インターフェイス回路、18z z成分インターフェイス回路、20 信号測定装置、22x x成分周波数解析器、22y y成分周波数解析器、22z z成分周波数解析器、24 コンピュータ、26 ディスプレイ、40 信号供給線、42 磁気インピーダンス素子、44 出力コイル、46 検出回路、48 出力回路、60 第1xy基板、62 yz基板、64 第2xy基板、70 走査装置、72 自動車搭載機器、74 カメラ。
図1
図2
図3
図4