(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032321
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】測定装置、測定システム、判定方法および判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/87 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
G01N21/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135969
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(71)【出願人】
【識別番号】520303829
【氏名又は名称】株式会社ウィズアクア
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田原 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幹大
(72)【発明者】
【氏名】荻村 亨
(72)【発明者】
【氏名】延東 真
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA81
2G051AB20
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB11
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】真珠のテリを客観的に評価することができる測定装置、測定システム、判定方法および判定プログラムを提供する。
【解決手段】測定装置1は、真珠を設置する設置部21と、設置部に設置された真珠を覆い、設置部側に明度が異なる2色を含む模様を有する被覆部と、真珠に、模様を投影する光源30を備える。測定システムは、上記測定装置と、模様が投影された真珠を撮影した画像データPを取得する取得部と、画像データの明度のヒストグラムを生成する生成部と、ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力する出力部を備える判定装置2を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真珠を設置する設置部と、
前記設置部に設置された真珠を覆い、前記設置部側に明度が異なる2色を含む模様を有する
被覆部と、
前記真珠に、前記模様を投影する光源
を備える測定装置。
【請求項2】
前記被覆部は、半球形状を有し、前記設置部が設けられる台に接触して設置される
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記被覆部は、後記凹部に接する係止タブを有し、
前記台は、前記被覆部および前記係止タブと接触する部分を収容する凹部を有する
をさらに備える請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の測定装置と、
前記模様が投影された真珠を撮影した画像データを取得する取得部と、
前記画像データの明度のヒストグラムを生成する生成部と、
前記ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力する出力部を備える判定装置
を備える測定システム。
【請求項5】
真珠を設置する設置部と、前記設置部に設置された真珠を覆い、前記設置部側に明度が異なる2色を含む模様を有する被覆部と、前記真珠に、前記模様を投影する光源を備える測定装置を用いて、真珠の評価値を出力する判定方法であって、
前記設置部に設置された真珠に、前記模様を投影するステップと、
前記模様が投影された真珠を撮影した画像データを取得するステップと、
前記画像データの明度のヒストグラムを生成するステップと、
前記ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力するステップ
を備える判定方法。
【請求項6】
コンピュータを、
真珠を設置する設置部と、前記設置部に設置された真珠を覆い、前記設置部側に明度が異なる2色を含む模様を有する被覆部と、前記真珠に、前記模様を投影する光源を備える測定装置の、前記設置部に設置された真珠に、前記模様が投影された画像データを取得する取得部と、
前記画像データの明度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力する出力部
として機能させる判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、測定システム、判定方法および判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、真珠は工業製品ではないため、その品質にばらつきが大きい。真珠の品質の基準は、形、マキ、キズ、テリ、色、大きさ等である。真珠は、一般的に人の目で分類される。
【0003】
真珠に超音波を入射し、その反射波から真珠の品質評価値を求める方法がある(特許文献1参照)。特許文献1は、超音波を送波するとともに真珠からの反射波を受信して、真珠表面での表面反射波と、真珠の核と巻との界面反射波との時間差から、真珠の巻の厚さを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人の目で真珠を分類する場合、相対評価となる場合が多い。周囲の景色が真珠に投影されるなど、真珠を分類する環境によって、正しく評価できない場合がある。また特許文献1に記載の方法は、巻の厚さを計測することができるものの、真珠のテリを評価するものではない。
【0006】
そこで、真珠のテリを客観的に評価する技術の開発が期待されている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、真珠のテリを評価可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の測定装置は、真珠を設置する設置部と、設置部に設置された真珠を覆い、設置部側に明度が異なる2色を含む模様を有する被覆部と、真珠に、模様を投影する光源を備える。
【0009】
本発明の一態様の測定システムは、上記測定装置と、模様が投影された真珠を撮影した画像データを取得する取得部と、画像データの明度のヒストグラムを生成する生成部と、ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力する出力部を備える判定装置を備える。
【0010】
本発明の一態様の判定方法は、真珠を設置する設置部と、設置部に設置された真珠を覆い、設置部側に明度が異なる2色を含む模様を有する被覆部と、真珠に、模様を投影する光源を備える測定装置を用いて、真珠の評価値を出力する判定方法であって、設置部に設置された真珠に、模様を投影するステップと、模様が投影された真珠を撮影した画像データを取得するステップと、画像データの明度のヒストグラムを生成するステップと、ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力するステップを備える。
【0011】
本発明の一態様の判定プログラムは、コンピュータを、真珠を設置する設置部と、設置部に設置された真珠を覆い、設置部側に明度が異なる2色を含む模様を有する被覆部と、真珠に、模様を投影する光源を備える測定装置の、設置部に設置された真珠に、模様が投影された画像データを取得する取得部と、画像データの明度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力する出力部として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真珠のテリを評価可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る測定システムのシステム構成を説明する図である。
【
図3】
図3は、ドームの底面図(設置部側)を説明する図である。
【
図4】
図4は、ドームの設置部側に設けられる模様の例を説明する図である。
【
図5】
図5(a)は、テリの良い真珠を撮影した画像の一例であって、
図5(b)は、テリの悪い真珠を撮影した画像の一例である。
【
図6】
図6は、判定装置のハードウエア構成と機能ブロックを説明する図である。
【
図7】
図7(a)は、テリの良い真珠を撮影した画像から生成されたヒストグラムの一例であって、
図7(b)は、テリの悪い真珠を撮影した画像から生成されたヒストグラムの一例である。
【
図8】
図8は、判定装置による判定方法を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、真珠を目視で評価した結果と、測定システムによって評価した結果を比較する図である。
【
図10】
図10は、測定システムによって真珠の分散値から評価する際の閾値の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0015】
(測定システム)
図1に示す本発明の実施の形態に係る測定装置1が用いられる測定システム5は、真珠のテリを指標化して評価する。テリの良い真珠は反射しやすく、テリの悪い真珠は反射しにくい特性に着目して、測定システム5は、真珠に投影された像から、真珠のテリを評価する。テリの良い真珠は反射しやすいので、真珠に投影された模様の明暗の差が明瞭に見える。一方テリの悪い真珠は反射しにくいので、真珠に投影された模様の明暗の差が不明瞭に見える。
【0016】
本発明の実施の形態係る測定システム5は、測定対象の真珠Tに、明度の異なる2色を含む模様を投影して、カメラ40で撮影し、その画像データPにおける明暗を分析する。明度の異なる2色の模様の画像データについて明度のヒストグラムを生成すると、2つの明度にピークを持つヒストグラムが形成される。その模様を真珠Tに投影して撮影した画像データPについて明度のヒストグラムを生成すると、真珠Tのテリの性質によって異なるヒストグラムが生成される。テリの良い真珠Tを撮影した画像データPにおいて、明度の異なる2色それぞれが明確に表現され、テリの悪い真珠Tを撮影した画像データと比べて、2つの明度のピークは遠くなり、明度のヒストグラムの分散値は、大きくなる。一方テリの悪い真珠Tの画像データPにおいて、明度の異なる2色それぞれがぼやけて表現され、テリの良い真珠Tを撮影した画像データと比べて、2つの明度のピークは近くなり、明度のヒストグラムの分散値は、小さくなる。
【0017】
本発明の実施の形態に係る測定システム5は、真珠Tに、明度の異なる2色の模様を投影した状態を撮影した画像データPから、明度のヒストグラムの分散値を算出し、算出された分散値に基づいて、真珠Tのテリを評価する。
【0018】
図1に示すように、測定システム5は、測定装置1と判定装置2を備える。測定装置1は、真珠Tに、明度の異なる2色の模様を投影した状態を撮影して、画像データPを生成する。判定装置2は、測定装置1において撮影された画像データPから、判定装置2は、明度のヒストグラムの分散値を算出し、真珠Tのテリを評価する。判定装置2は、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの記憶媒体、または通信ネットワーク等を介して、測定装置1から画像データPを取得する。
【0019】
(測定装置)
測定装置1は、ドーム10、台20、光源30およびカメラ40を備える。
【0020】
ドーム(被覆部)10は、設置部21に設置された真珠Tを覆う。ドーム10は、中空に形成される。本発明の実施の形態においてドーム10は、半球形状を有し、球体を、仮想平面で二分した形状を有する。本発明の実施の形態において、仮想平面で二分された際の仮想平面と接する部分を、ドーム10の底面と称する。
【0021】
ドーム10の底面は、台20に接触して設置される。台20は、ドーム10と接触する部分を収容する凹部22を有する。凹部22は、
図2に示すように、ドーム10の底面と同じ大きさを有する。凹部22は、ドーム10が台20の上を滑ることないように、ドーム10の底面をちょうど収容するように形成される。
図2に示す例において、凹部22は、台20の表面のうち、ドーム10に覆われる部分が凹状に形成される。凹部22は、台20の表面のうち、ドーム10と接する部分が溝となるように形成されても良い。
【0022】
図1に示す例において、ドーム10の底面は、係止タブ12を有する。係止タブ12は、ドーム10の底面を含む平面に形成され、ドーム10の外側に形成される。
図2に示すように、台20の凹部22は、係止タブ12をちょうど収容する係止部23を有する。これによりドーム10による台20の上での回転が規制される。係止タブ12は、ドーム10による台20の上での回転が規制すればよく、ドーム10の内側に形成されても良い。
【0023】
図2に示される台20に、真珠Tを設置する設置部21が設けられる。設置部21は、ドーム10の中心軸上に設けられる。
図1に示す例において設置部21は、台20に形成された穴である。穴は、真珠Tの最大直径よりも小さい直径を有する。真珠Tが設置部21に嵌合するように形成されことで、球状の真珠Tが転がることなく一時的に固定することができる。真珠Tが転がらないように、ドーム10の中心軸上に一時的に固定して、カメラ40で真珠Tの表面を撮影することができれば、設置部21はどのように形成されても良い。また設置部21は、台20上に設置される中空の円筒などであって、台20と別部材で形成されても良い。
【0024】
本発明の実施の形態において台20は、アクリル板などの、透過性を有する部材で形成される。台20の下方に光源30が設けられる。光源30によって、ドーム10内が明るく照射される。
【0025】
本発明の実施の形態において光源30は、台20の下方に設けられる場合を説明したが、これに限らない。例えば、ドーム10の底辺近傍に、LEDを設けるなどでも良い。光源30は、ドーム10の内側の模様が真珠Tに投影され、真珠Tの近辺が均一に照射されるように、ドーム10の内部を照射できればよい。
【0026】
(ドーム)
図3に示すように、ドーム10の設置部21側(内側)に明度が異なる2色を含む模様を有する。光源30は、ドーム10内を明るく照らすことにより、真珠Tに、ドーム10の内側の模様を投影する。
【0027】
ドーム10が有する模様は、明度が異なる2色を含むように成されれば、どのようなものでも良い。本発明の実施の形態において、ドーム10の内側に、
図4(a)に示すように、白と黒の市松模様が形成される。他の模様の例として、
図4(b)に示すような、白地に黒の水玉模様、白と黒のストライプ模様などがある。また
図4では模式的な模様の例を挙げるが、明度の異なる2色で形成されていれば、流線の入った模様などでも良い。なお、明度のヒストグラムの分散値でテリを評価するため、模様における2色の面積の割合は、問わない。
【0028】
また模様は、左半分が黒で右半分が白というように、2色の色領域がそれぞれ1つずつ設けられる模様でも構わない。真珠Tの表面において、局所的にテリの良い部分とテリの悪い部分がある場合、2色の色領域がそれぞれ1つずつ設けられる模様よりも、
図4の各図に示すように、各色の色領域がそれぞれ複数設けられ、それぞれが離散的に設けられる方が好ましい。各色の色領域がそれぞれ複数設けられ、それぞれが離散的に設けられる模様により、真珠Tの表面全体を評価することができる。
【0029】
ここで「明度の異なる2色」は、測定システム5の環境、性能および真珠Tの評価の粒度等によって適宜設定される。真珠Tのテリの評価基準により、明度の分散値に差異が出るように、「明度の異なる2色」が選択される。例えば、明度が異なる2色であっても、明度の差分が小さく、テリの良い真珠Tを撮影した際の明度の分散値と、テリの悪い真珠Tを撮影した際の明度の分散値を区別できない場合は、好ましくない。例えば測定システム5がテリの善し悪しを区別する基準となる、テリの異なる2つの真珠Tについて、各真珠Tを撮影した画像データPの明度の分散値を区別できるように、「明度の異なる2色」が、選択されれば良い。また、真珠Tのテリを複数のグレードに区分する際、各グレードに区分できる精度で明度の分散値が算出されるように、「明度の異なる2色」が選択される。「明度の異なる2色」を白と黒とした場合、明度の差分は最大値となるので、画像データPの明度の分散値を評価しやすい。
【0030】
本発明の実施の形態において、「明度の異なる2色」は、白と黒である場合を説明するが、これに限らない。例えば色味の入った色であってもよく、明度が異なる2色であれば、薄い水色と濃い赤など色相の異なる2色でも良い。
【0031】
本発明の実施の形態に係る測定システム5において、ドーム10が半球形状を有する。測定システム5は、撮影環境に依存せず、同じ条件で、ドーム10の内側の模様を真珠Tに投影することができる。
【0032】
図1および
図3に示すように、ドーム10の天頂部分に、貫通穴11が形成される。この貫通穴11は、真珠Tを撮影するカメラ40の光軸が通過できるように形成される。貫通穴11からドーム10内に、ドーム10の外側の光が漏れて、真珠Tの表面に外側の景色が映り込む可能性も考えられるが、ドーム10の内側が、光源30により明るく照射されることにより、ドーム10の外側の影響を抑制することができる。なお、
図3に示す例において、ドーム10の内側の模様の黒部分に貫通穴11を設ける場合を説明するが、貫通穴11は任意の場所に設けられれば良い。貫通穴11の位置と模様が同じであれば、真珠Tの評価に与える影響は少ない。
【0033】
ドーム10は、遮光性を有する部材で形成されることが好ましい。ドーム10の外側が黒色で塗布されることにより、ドーム10の遮光性を実現しても良い。ドーム10が遮光性を有することにより、設置部21に設置された真珠Tに、ドーム10外の景色が映り込まないので、測定装置1は、周辺環境の影響を受けることなく真珠Tのテリを撮影することができる。なお、ドーム10が遮光性を有さない場合でも、ドーム10が設置される室内を暗くする、ドーム10の内部を明るくするなどにより、周辺環境の影響を受けないように、測定装置1が形成されても良い。
【0034】
またカメラの40の撮影領域における真珠Tの近くに、LED(Light Emitting Diode)ライト等が含まれるように、ドーム10内に、LEDライトを設けても良い。LEDライトは、例えば、ドーム10の内側の模様部分に設けられ、真珠Tに投影され、カメラ40の撮影領域に、投影されたLEDライトが含まれても良い。あるいは、LEDライトは、設置部21の近くに設けられ、カメラ40の撮影領域に、LEDライトが含まれても良い。撮影者は、カメラ40で真珠Tを撮影する際、LEDをピントの基準として、カメラ40のフォーカスを合わせることにより、真珠Tの鮮明な画像を撮影することができる。また、カメラ40のフォーカスを合わせた後に、LEDを消灯することにより、LEDの影響がない真珠Tの画像データPを取得することができる。
【0035】
図1等に示すドーム10は一例であってこれに限るものではない。ドーム10の代わりに、設置部21に設置された真珠Tを覆い、設置部21側に明度が異なる2色を含む模様を有する被覆部を用いても良い。例えば、被覆部と台20の間に空間があり、その空間に、外部の光が漏れても、被覆部と台20の間が、光源30により明るく照射されていれば、画像データPは外部の光の影響を受けない。
【0036】
また本発明の実施の形態において、ドーム10が半球形状を有することにより、同じ条件で、ドーム10の内側の模様を真珠Tに投影することができる場合を説明したが、これに限らない。被覆部の内側の模様を真珠Tに投影することができれば、被覆部はどのような形状であっても良い。例え被覆部は、半球形状に限らず、台20に接触する任意の立体形状、台20に接触しない板、幕など、任意の形状であっても良い。被覆部が立体形状の場合、面の接続部に白領域と黒領域の境界を設けることにより、面の接続に伴う明度の変化を抑えることができる。撮影環境を変えたとしても、被覆部の形状と、設置部21に設置された真珠Tと被覆部との位置関係が同じであれば、被覆部の内側の模様は、同様に真珠Tに投影される。被覆部の形状と、設置部21に設置された真珠Tと被覆部との位置関係が所定の位置関係になるように、被覆部と設置部21が形成されれば良い。
【0037】
本発明の実施の形態において、被覆部(ドーム10)と光源が別部材である場合を説明したが、これに限らない。例えば、液晶ディスプレイまたは有機EL等の発光素子を有するディスプレイを用いるなど、被覆部および光源を一体形成しても良い。この場合、コンピュータ等が明度の異なる2色で形成される模様をディスプレイに表示すると、ディスプレイに表示された模様が、設置部21に設置される真珠Tに投影される。
【0038】
ドーム10に、カメラ40の光源が通る貫通穴11を設ける場合を説明したが、これに限らない。例えば、ドーム10の内側に設けた小型カメラで、真珠Tを撮影する場合など、貫通穴11がなくても良い場合がある。また、ドーム10の貫通穴11は、透明部材で塞がれても良い。
【0039】
このようにドーム10の実装例は、
図1等に示すものに限らず、様々な態様が考えられる。
【0040】
図5を参照して、測定装置1において撮影された画像データPの一例を説明する。
図5(a)および
図5(b)はそれぞれ、テリの良い真珠Tおよびテリの悪い真珠Tに、ドーム10の内側の模様を投影した状態を撮影した画像データである。
図5(a)に現れる市松模様は、白黒のエッジが明確で、白領域部分と黒領域部分を明確に区別できてクリアである。
図5(b)に現れる市松模様は、白黒のエッジが不明確で、白領域部分と黒領域部分の区別がしづらく、全体的に暗く、くすんでいる。
【0041】
(判定装置)
判定装置2は、
図5に示すような画像データPを解析して、真珠Tのテリを評価する。
【0042】
判定装置2は、
図6に示すように、記憶装置50、処理装置60および入出力インタフェ-ス70を備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが、所定の機能を実現するための判定プログラムを実行することにより、
図6に示す各機能が実現される。
【0043】
記憶装置50は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等であって、処理装置60が処理を実行するための入力データ、出力データおよび中間データなどの各種データを記憶する。処理装置60は、CPU(Central Processing Unit)であって、記憶装置50に記憶されたデータを読み書きしたり、入出力インタフェ-ス70とデータを入出力したりして、判定装置2における処理を実行する。入出力インタフェ-ス70は、判定装置2が、USBポートまたは通信インタフェ-スであって、画像データPを取得するためのインタフェ-スである。
【0044】
記憶装置50は、判定プログラムを記憶するとともに、画像データPを記憶する。画像データPは、測定装置1において撮影されたデータである。
【0045】
処理装置60は、取得部61、明度算出部62、生成部63および出力部64を備える。
【0046】
取得部61は、画像データPを取得する。画像データPは、ドーム10の設置部21側の模様が投影された真珠Tを撮影したデータである。取得部61は、入出力インタフェ-ス70を介して、測定装置1において測定された画像データPを取得する。取得部61は、取得した画像データPを記憶装置50に記憶する。取得部61は、画像データPのうち、ドーム10の内側の模様部分を、パターンマッチングで切り出した画像データを、記憶装置50に記憶しても良い。
【0047】
明度算出部62は、画像データPの各画素の明度を算出する。明度算出部62は、一般的な方法で各画素の明度を算出する。明度算出部62は、例えば、フルカラーの画像データPをグレースケール画像に変換して、グレースケール画像における各画素の明度を取得する。なお本発明の実施の形態において、各画素に明度を算出する場合を説明するが、明度算出部62は、2つの画素など、複数の画素毎に明度を算出しても良い。
【0048】
生成部63は、画像データPの明度のヒストグラムを生成する。生成部63は、明度算出部62で算出された各画素の明度について、ヒストグラムを生成する。本発明の実施の形態において、明度を0-255の256階調で表現し、ヒストグラムの横軸において、1階調が1明度である場合を説明する。ヒストグラムの階調は、明度の粒度等によって適宜設定されても良い。
【0049】
出力部64は、ヒストグラムの分散値と正の相関を持つ評価値を出力する。出力部64は、生成部63が生成した画像データPの明度のヒストグラムの分散値を算出する。出力部64は、この分散値そのものを、真珠Tのテリの評価値としても良いし、この分散値と正の相関を持つ関数により算出された値を、真珠Tのテリの評価値としても良い。真珠Tの評価値は、例えば分散値の平方根から算出された標準偏差であっても良い。
【0050】
図7を参照して、判定装置2が生成したヒストグラムの一例を説明する。
図7(a)は、
図5(a)に示す画像データから生成されたヒストグラムである。
図7(b)は、
図5(b)に示す画像データから生成されたヒストグラムである。
【0051】
図7(a)に示すヒストグラムは、
図7(b)に比べて明度の2つのピークが離れて形成され、分散値が256である。
図7(b)に示すヒストグラムは、
図7(a)に比べて明度の2つのピークが近く形成され、分散値が36である。
図7に示すように、テリの良い真珠Tについての分散値は、テリの悪い真珠Tについての分散値よりも高い。真珠Tに、明度の異なる2色の模様を投影した状態を撮影した画像データPから算出された、明度のヒストグラムの分散値は、テリの評価と正の相関を有することがわかる。本発明の実施の形態に係る測定システム5は、真珠Tに、明度の異なる2色の模様を投影した状態を撮影した画像データPから算出された、明度のヒストグラムの分散値と正の相関を持つ値を、テリの評価値とすることができる。
【0052】
図8を参照して、本発明の実施の形態に係る判定装置2による判定方法を説明する。
【0053】
ステップS1において判定装置2は、画像データPから投影された模様部分を切り出して、各画素の明度を算出する。ステップS2において判定装置2は、ステップS1で算出した各画素の明度からヒストグラムを生成する。ステップS3において判定装置2は、ステップS2で生成したヒストグラムの分散値を、評価値として算出する。
【0054】
図9を参照して、真珠を目視で評価した結果と、測定システムによって評価した結果を説明する。
図9の横軸のグループAないしJは、100個の真珠を目視で10グループに分けたもので、Aグループの真珠のテリが最も良く、Jグループの真珠のテリが最も悪い。
図9の縦軸は、本発明の実施の形態に係る測定システム5が、模様が投影された各真珠Tの画像データPから算出した分散値である。
【0055】
Dグループを除いて、AからJグループの順で、分散値は、下がっているので、目視でのテリの評価と、測定システム5における評価とは、概ね相関があると考えられる。しかしながら、Dグループについては、目視での評価と測定システム5での評価が分かれている。これは、目視での評価において、周囲の背景が映り込むなどにより、実際の評価より低く評価されたと推測される。
【0056】
図10を参照して、分散値による評価の閾値の一例を説明する。
図10は、測定システム5による分散値による評価に従って、横軸においてグループを並べかえたものである。具体的には、
図9において、横軸をA、B、C、D…と並べていたところ、
図10において、A、D、B、C・・・と並べ替えている。
図10に示す例は、閾値200、150および100を設定して、(1)分散値200以上、(2)分散値200未満150以上、(3)分散値150未満100以上、(4)分散値100未満と、真珠Tのテリを4つグレードに分ける例を示す。なお
図10に示す閾値は一例であって、これに限るものではない。
【0057】
本発明の実施の形態に係る測定システム5は、明度の異なる2色を含む模様を真珠Tに投影した画像データにおいて、明度のヒストグラムの分散値から評価値を算出する。真珠Tのテリを指標化することができるので、真珠Tのテリのグレードを標準化することができる。
【0058】
測定装置1において、真珠Tの周辺を明るく照らし、ドーム10外の景色が真珠Tに映り込まないようにすることで、真珠Tのテリそのものが発する反射を、分散値として表現することができるので、真珠Tのテリを正確に測定することが可能となる。
【0059】
このように本発明の実施の形態にかかる測定システム5は、真珠Tのテリを適切に評価することができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 測定装置
2 判定装置
5 測定システム
10 ドーム
11 貫通穴
12 係止タブ
20 台
21 設置部
22 凹部
23 係止部
30 光源
40 カメラ
50 記憶装置
60 処理装置
61 取得部
62 明度算出部
63 生成部
64 出力部
70 入出力インタフェ-ス
P 画像データ