(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032650
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20220217BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G01N35/04 G
B65G54/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136653
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 武司
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【テーマコード(参考)】
2G058
3F021
【Fターム(参考)】
2G058CB09
2G058CB16
2G058CF16
3F021AA01
3F021BA02
3F021CA02
3F021DA04
(57)【要約】
【課題】検体の停止時の位置精度が高く、停止時の微小な位置を調整可能とした検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置を提供する。
【解決手段】
本発明の検体搬送装置(1a)は、永久磁石(10)が設けられた検体と、永久磁石(10)を介して検体を搬送する搬送路と、搬送路の検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、駆動回路は、永久磁石(10)を停止させる位置の直下にある第1のコイル(30B)に流す電流によって、永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、第1のコイルに隣接する第2のコイル(30C)に流す電流によって永久磁石(10)の水平方向にかかる力を調整し、永久磁石(10)の停止位置を調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が設けられた検体と、
前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、
前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、
前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、
前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする検体搬送装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより、前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項3】
前記第1のコイルと前記第2のコイルによって生じる磁束は、前記永久磁石と対向する面側に生じる磁束の極性が異なることを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項4】
前記永久磁石の中心と、前記第1のコイルの中心との間の距離x1、
前記永久磁石の中心から前記永久磁石の端部までの距離D/2、および
前記第1のコイルの中心から前記永久磁石の端部までの距離d/2としたときに、
x1≦(D/2+d/2)となる区間において、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項5】
前記永久磁石の中心と、前記第1のコイルの中心までの距離d/2としたときに、
前記永久磁石の中心が、±d/2の区間にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項6】
前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、
前記永久磁石の径Dが、前記第1のコイルのコアの径dより大きく、
前記永久磁石の中心が、±(D-d)/2の範囲にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項7】
前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、
前記永久磁石の径Dが、前記第1のコイルのコアの径dより小さく、
前記永久磁石の中心が、±(d-D)/2の範囲にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項8】
前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、
前記永久磁石の搬送面に投影した面積が、前記コアの搬送面に投影した面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項9】
前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、
前記コアの搬送面に投影した面積が、前記永久磁石の搬送面に投影した面積に含まれることを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項10】
前記第1のコイルのコアの形状がT字形状であり、前記永久磁石に対向する面側の断面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項11】
前記第1のコイルの巻線を挟み込むように配置した前記第2のコイルの巻線と第3のコイルの巻線を有し、前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を前記第1のコイルの巻線に流し、前記永久磁石の極性と吸引する磁束を生じさせる電流を前記第2のコイルの巻線と前記第3のコイルの巻線に流すことを特徴とする請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項12】
前記永久磁石の位置を検出する手段を有することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の検体搬送装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の検体搬送装置を備えたことを特徴とする検体分析システム。
【請求項14】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の検体搬送装置を備えたことを特徴とする検体前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査のための検体分析システムでは、血液、血漿、血清、尿、その他の体液等の検体(サンプル)に対し、指示された分析項目の検査を実行する。この検体分析システムでは、複数の機能の装置をつなげ、自動的に各工程を処理することができる。つまり、検査室の業務合理化のために、生化学や免疫など複数の分析分野の分析部や分析に必要な前処理を行う前処理部を搬送ラインで接続して、1つのシステムとして運用している。
【0003】
従来の検体分析システムで用いられている搬送ラインは、主にベルト駆動方式がメインである。このようなベルト駆動方式では、搬送途中でなんらかの異常により搬送が停止してしまうと、それより下流側の装置に検体を供給できなくなる、との問題がある。このため、ベルトの摩耗について十分に注意を払う必要があった。
【0004】
近年、医療の高度化及び高齢化社会の進展により、検体処理の重要性が高まってきている。そこで、検体分析システムの分析処理の能力の向上のために、検体の高速搬送や大量同時搬送、および複数方向への搬送が望まれている。そのような搬送を実現する技術の一例として、特許文献1に記載の技術がある。
【0005】
特許文献1には、各々が少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備え、試料を含む試料容器を運ぶように適合されたいくつかの容器キャリア(1)と、複数の容器キャリアを運ぶように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置されたいくつかの電磁アクチュエータであって、容器キャリアに磁力を印加することによって搬送平面の上で容器キャリアを移動させるように適合された電磁アクチュエータと、搬送平面と、研究室ステーション、好ましくは分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションとの間で試料品を移送するように配置された少なくとも1つの移送デバイスであって、試料品が、容器キャリア、試料容器、試料の一部、および/または試料一式である、移送デバイスとを備える研究室試料配送システムが記載されている。特許文献2には、試料容器を搭載した容器キャリアを磁気的な力によって搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載の技術では、容器キャリアの位置に応じて、ステップ状に電磁アクチュエータを起動することが記載されている。しかしながら、特許文献2のシステムでは、容器キャリアの位置に応じて起動する電磁アクチュエータを切り替えるのみである。すなわち、容器キャリアの永久磁石を運びたい位置にある電磁アクチュエータに電流を印加し、永久磁石と電磁アクチュエータの吸引力によって目標の位置に停止させているが、電磁アクチュエータの吸引力は永久磁石を運びたい方向の力(推力)と永久磁石を搬送面に押し付ける力(垂直力)を発生させる。が、永久磁石が電磁アクチュエータの真上に来た場合は、推力はほぼゼロになるのに対し、垂直力は小さくならない。つまり、永久磁石が目的とする位置に近づくほど、永久磁石を横方向に移動させようとする力である推力が小さく、垂直力により永久磁石と搬送面間の摩擦力が相対的に大きくなり、永久磁石の停止位置精度が低下するといった課題があった。
【0008】
さらに、永久磁石が静止した状態から微小な位置を変えようとした場合、推力に対して大きな摩擦力があり、摩擦力が静摩擦から動摩擦に状態が変化し、微小な永久磁石の位置精度を得ることが困難であるといった課題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、検体の停止時の位置精度が高く、停止時の微小な位置を調整可能とした検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決する本発明の第1の態様は、永久磁石が設けられた検体と、永久磁石を介して検体を搬送する搬送路と、搬送路の検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、駆動回路は、永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする検体搬送装置である。
【0011】
本発明の第2の態様は、上述した本発明の検体搬送装置を有する検体分析システムである。
【0012】
本発明の第3の態様は、上述した本発明の検体搬送装置を有する検体前処理装置である。
【0013】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検体の停止時の位置精度が高く、停止時の微小な位置を調整可能とした検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置を提供することができる。
【0015】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】永久磁石をA位置からB位置に移動させた場合の各位置における推力(X方向に働く力)を示すグラフ
【
図10】実施例5の永久磁石10およびコア20の形状を示す模式図である。
【
図11】実施例6の搬送装置の概略構成を示す断面図
【
図13】実施例8の検体分析システムの概略構成を示す模式図
【
図14】実施例9の検体前処理システムの概略構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例0018】
図1は実施例1の搬送装置の概略構成を示す斜視図であり、
図2および
図3は実施例1の搬送装置の概略構成を示す断面図である。
図1~3に示すように、本実施例の検体搬送装置1aは、永久磁石10が設けられた検体(図示せず)と、永久磁石10を介して検体を搬送する搬送路15(
図2)と、搬送路15の検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、コイルに電流を流す駆動回路と(図示せず)とを備える。永久磁石10は被搬送体である検体の容器等に設けられ、永久磁石10とともに検体が搬送路15を移動する。コイルは、磁性体からなるコア20と、コア20の外周に巻かれた巻線30とを有する。
【0019】
図1は、磁性体からなるコア20の周りに巻線30を配置したコイルを5つ配置した搬送装置の例である。巻線30に流した電流により生じる磁極によって、検体に設けられた永久磁石10を搬送する。つまり、移動したい方向(進行方向)のコア20に磁極を生じさせ、その磁極によって永久磁石10を引っ張ることで被搬送体を進行方向に搬送する。本実施例では、5つのコア20において、被搬送体の永久磁石10の検体10を搭載する側と反対側(―Z軸方向側)で磁性体のヨーク40で磁気的に結合されている。このようにすることで、複数のコア20を保持することができ、また、コア20の位置の精度も得られると同時に、永久磁石10に作用する磁束も大きくできる利点がある。本実施例では、5つのコア20を十字状に配列しており、永久磁石10をX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。なお、本実施例のコア20の数は5つであるが、この数に限定されるわけではない。コア20を被搬送したい領域に敷き詰めることで、広範囲の搬送を可能にするものである。
【0020】
図1において、永久磁石10はコア20のZ軸方向に、コア20と対向するように配置され、搬送路上を移動する。永久磁石10は、進行したい方向の巻線30に電流を流し、進行したい方向のコア20に、永久磁石10の磁極を吸引する磁極を生じさせ、その位置に移動させるものである。本実施例においては、コア20の永久磁石側に平板状の搬送路15が配置される。被搬送体に設けられた永久磁石10は、搬送面の上をすべるように移動する。
【0021】
図3を用いて、永久磁石10をX軸方向にA位置からB位置に移動し、B位置に停止させる場合の永久磁石10の停止方法について説明する。本図では搬送路は図示しない。例えば、Bの位置で試薬の滴下や、分注作業のためにロボットなどが検体を保持しようとする場合や、搬送面上で分注や試薬の滴下を行う場合、被搬送体となる検体等の位置がばらつくと検体や試液がこぼれてしまったり、場合によっては、開栓している検体が倒れてしまい、検体が搬送面上にこぼれてしまう場合がある。つまり、搬送面上の位置精度のばらつきによって作業ミスが生じていた。
【0022】
本発明は、コア20の狙った位置に精度よく検体停止させることを目的としている。B位置に永久磁石10を停止させようとした場合、X方向のB位置近傍では、永久磁石10と、永久磁石10の直下のコア20Bと吸引力が働く。つまり、永久磁石10に-Z方向に力が生じる。この-Z方向に生じる力は、永久磁石10を搬送面に押し付ける力となり、永久磁石10が移動する際の摩擦力になる。そこで、永久磁石10の直下のコア20Bに巻かれた巻線30Bに永久磁石10の磁極に反発する磁極を発生させる電流を流すことで、この-Z方向の力を軽減できる。
【0023】
図4はB位置付近のZ軸方向に働く力を示すグラフである。
図4は、巻線30Bに永久磁石10の磁極に反発する磁極を発生させる電流と永久磁石10に働くZ方向の力を示している。反発させる磁極を発生させる電流の増加に伴い、Z方向の力は減少し、おおむね0.3A~0.35A程度の電流でZ方向の力を0近くにできる(
図4の位置0がB位置に永久磁石10がある場合のZ方向に働く力)。ここで、巻線30Bに反発する磁極を発生させる電流を流さない場合は、-Z方向に1.7N以上の力が発生し、これが、永久磁石10を搬送面に押し付ける摩擦力が発生する。
【0024】
図5は永久磁石をA位置からB位置に移動させた場合の各位置における推力(X方向に働く力)を示すグラフである。
図5は、巻線30Bに永久磁石10を吸引させる電流を流した場合の、永久磁石10のX方向の位置がA(位置-1.0)からB(位置0.0)に移った場合の永久磁石10に作用するX方向の力(推力)を示す。従来の方法は、この目的とする場所に移動停止させようとする場合、永久磁石10がAの位置にあれば、コア20Bに吸引する磁極を生じるように、B位置の巻線30Bに電流を流すことで、B位置に引き込んで停止させていた。しかし、その場合の推力と位置の特性は、永久磁石10がA位置からB位置に行くにしたがって一度は徐々に大きくなっていくが、中間を超えた付近から減少していき、B位置ではほぼ推力がゼロになる。つまり、永久磁石10が目標とするB位置の近傍に近づくと、X方向に移動させることのできる推力がほぼ0になってしまう。このため、目標のB位置近傍での位置決め精度が悪化する。
【0025】
さらに、
図4に示したように、永久磁石10に働く-Z方向の力は、大きく変化しないため推力に対し、相対的に摩擦力が大きくなり、摩擦力に打ち勝つ推力を発生できなくなるため、B位置に正確に止めるのが困難であった。また、目標のB位置からずれた場所で一度止まってしまうと、静摩擦力が生じ、再度動かすのに十分な推力が発生できないことや、隣接するコアで引き込んだ場合も静摩擦から動摩擦に変化するタイミングで急峻に被搬送体が動くため微小な位置決めが困難であった。
【0026】
そこで、少なくとも2つ以上の、コイルを有し、永久磁石を停止させる位置の永久磁石に対向する位置にある第1のコイル(コア20Bにまかれた第1の巻線30B)と、コア20Bにまかれた第1のコイルの巻線30Bと隣り合う第2のコイル(コア20Cに巻かれた巻線30C)に電流を流すことにより、第1のコイル(第1の巻線30B)により主にZ方向の力(摩擦力)を調整し、第2のコイル(第2の巻線)30Cにより主にX方向の力(推力)を調整することにより、摩擦力の影響を軽減し、位置決めの精度を向上できる。巻線に電流を流すことにより、X方向およびZ方向の両方の力が生じるが、永久磁石10の直下の第1の巻線30Bを励磁した場合、推力<吸引力であり、第1の巻線30Bに隣り合う第2の巻線30Cを励磁した場合、推力>吸引力となるため、少なくとも2つの巻線に同時に電流を流すことにより、推力と吸引力を調整することが可能になり、目標の位置で停止させる精度が向上する。
永久磁石10の目標停止位置となるコア20BのX軸方向の中心に対し、永久磁石10までの距離をx1とする。ここで、永久磁石10の径をD、コア20Bの径をdとする。仮に、停止させようとする位置のコア中心と、永久磁石10までの距離x1が、永久磁石10の半径D/2、コア20Bの半径d/2より短い場合、永久磁石10とコア20Bが搬送路15を介して対向する。この対向する面積が大きくなると、-Z方向の力が大きくなる。つまり、永久磁石10とコア20Bの間の摩擦力が大きくなる。したがって、この範囲で、第1のコイル(コア20Bに巻かれた巻線30B)に、永久磁石10と反発する磁極を発生させることで、摩擦力を低減できる。このとき、永久磁石10搬送方向の先にある第2のコイルの20には、永久磁石10を吸引させる磁極を発生させる、あるいは、永久磁石10の慣性力によってX方向に移送させる。つまり、x1≦(D/2+d/2)の区間において、永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を前第1の巻線20Bに流すことにより、摩擦力を軽減でき、位置決めの精度を向上できる。
また、永久磁石10がある速度で移動している際は、X方向の移動は被搬送体の慣性力で行い、x1≦(D/2+d/2)の区間のみで直下の巻線20Bで反発力を発生させ、摩擦力を軽減することも可能である。