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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032656
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】薄片化黒鉛及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20220217BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20220217BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220217BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220217BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C01B32/205
C01B32/21
C08L63/00 C
C08K3/04
C08K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136667
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】谷内 亮
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 厚輝
(72)【発明者】
【氏名】斉木 智秋
(72)【発明者】
【氏名】横田 英之
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亨
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AD22
4G146AD23
4G146AD24
4G146BA11
4G146BC02
4G146BC32B
4G146CB10
4G146CB35
4J002CD051
4J002DA026
4J002EU117
4J002FA016
4J002FB016
4J002FB066
4J002FD147
4J002GH01
(57)【要約】
【課題】樹脂、塗料等に配合した場合に分散性が良好であり且つ靱性、伸縮性、耐衝撃性等の物性の改良効果が大きい薄片化黒鉛を提供すること。
【解決手段】平均厚さが10nm~200nm、比表面積が10m/g~40m/g、かさ密度が0.05g/cm~0.3g/cmである薄片化黒鉛である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均厚さが10nm~200nm、比表面積が10m/g~40m/g、かさ密度が0.05g/cm~0.3g/cmである薄片化黒鉛。
【請求項2】
請求項1に記載の薄片化黒鉛と、合成樹脂とを含有する樹脂組成物。
【請求項3】
前記合成樹脂がエポキシ樹脂である請求項2に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定形状の薄片化黒鉛及びそれを含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
積層物質である黒鉛を剥離して得られるグラフェン等の薄片化黒鉛は、二次電池の電極の導電助剤(例えば、特許文献1を参照)、導電性インク(例えば、特許文献2を参照)、樹脂やエラストマーのフィラー(例えば、特許文献3及び4を参照)、ガスバリア材(例えば、特許文献5及び6を参照)等として使用されている。薄片化黒鉛は、薄片化されて薄くなり、層数が少ないほど凝集を起こしやすくなるため、マトリックスに分散しにくくなり充分な物性が得られない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-060887号公報
【特許文献2】国際公開第2016/002254号
【特許文献3】特表2013-517200号公報
【特許文献4】特表2015-517583号公報
【特許文献5】国際公開第2013/062246号
【特許文献6】特表2018-503541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、樹脂、塗料等に配合した場合に分散性が良好であり且つ物性の改良効果が大きい薄片化黒鉛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行なった結果、平均厚さ、比表面積及びかさ密度が特定の範囲にある薄片化黒鉛が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、平均厚さが10nm~200nm、比表面積が10m/g~40m/g、かさ密度が0.05g/cm~0.3g/cmである薄片化黒鉛である。
【0006】
また、本発明は、上記薄片化黒鉛と合成樹脂とを含有する樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂、塗料等に配合した場合に分散性が良好であり且つ靱性、伸縮性、耐衝撃性等の物性の改良効果が大きい薄片化黒鉛を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔薄片化黒鉛〕
薄片化黒鉛は、黒鉛類が薄片化された物質であり、黒鉛の単位層が1層~数千層積層した層状構造を有する物質をいう。黒鉛類は、炭素からなる単位層を有する層状化合物である。黒鉛類としては、黒鉛の他に、黒鉛の層間を膨張させた膨張化黒鉛や、黒鉛を酸化剤で酸化した酸化黒鉛が含まれる。
【0009】
本発明の薄片化黒鉛の平均厚さは、10nm~200nmである。平均厚さが10nmよりも薄い場合及び200nmよりも厚い場合は、樹脂等への分散性が低下する場合がある。薄片化黒鉛の平均厚さは20nm~100nmであることが好ましく、25nm~50nmであることが更に好ましく、30nm~40nmであることが最も好ましい。
【0010】
本発明において、薄片化黒鉛の厚さとは、薄片化黒鉛の積層面に対して垂直方向の厚さであり、薄片化黒鉛の平均厚さとは、任意の30個以上の薄片化黒鉛の厚さの平均値である。薄片化黒鉛の厚さは、例えば、薄片化黒鉛を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したSEM画像を用いて測定できる。なお、単位層1層からなる薄片化黒鉛はグラフェンと呼ばれ、厚さは理論上、約0.335nmである。
【0011】
本発明の薄片化黒鉛の比表面積は、10m/g~40m/gである。本発明において、薄片化黒鉛の比表面積はBET法による測定値であり、JIS Z8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準拠して測定される。薄片化黒鉛の比表面積が10m/gよりも小さい場合及び40m/gよりも大きい場合は、樹脂等への分散性が低下する場合がある。薄片化黒鉛の比表面積は12m/g~30m/gであることが好ましく、15m/g~20m/gであることが更に好ましい。
【0012】
本発明の薄片化黒鉛のかさ密度は、0.05g/cm~0.3g/cmである。本発明において、薄片化黒鉛のかさ密度はJIS K1469(電池用アセチレンブラック)に準拠して測定される。薄片化黒鉛のかさ密度が0.05g/cmよりも小さい場合及び0.3g/cmよりも大きい場合は、樹脂等への分散性が低下する場合がある。薄片化黒鉛のかさ密度は0.055g/cm~0.2g/cmであることが好ましく、0.06g/cm~0.1g/cmであることが更に好ましい。
【0013】
本発明の薄片化黒鉛の製造方法は、特に限定されず、公知の装置により黒鉛類に対して、剪断力、超音波振動、キャビテーション、マイクロ波等を加えて薄片化し、平均厚さ、比表面積及びかさ密度が上記した範囲となるまで薄片化すればよい。黒鉛類の薄片化に用いられる装置としては、サンドミル、アトライター、ビーズミル等の媒体撹拌ミル;回転ミル、振動ミル、遊星ミル等のボールやロッドを媒体とする容器駆動型ミル;ジェットミル、ロールミル、ハンマーミル、ピンミル、高圧乳化機、超音波乳化機、マイクロ波オーブン等が挙げられる。高圧乳化機としては、例えば、貫通型高圧乳化機及び衝突型高圧乳化機が挙げられる。貫通型高圧乳化機の貫通形式としては、シングルノズル形式、スリットノズル形式等が挙げられる。衝突型高圧乳化機の衝突形式としては、原料を含む液を、バルブ等の平面やボール等の球面に衝突させる形式、原料を含む液同士を衝突させる形式等が挙げられる。
【0014】
黒鉛類の薄片化は、溶媒を用いる湿式薄片化方法、溶媒使用しない乾式薄片化方法のいずれの方法であってもよく、それぞれの装置の薄片化方法に合わせて、選択すればよい。
【0015】
湿式薄片化方法に使用する溶媒としては、静電気が帯電しにくいことから、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メトキシエタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ピリジン、ピペリジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の複素環式溶媒;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート等のイオン液体、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が好ましい。
【0016】
湿式薄片化方法により黒鉛類を薄片化する場合は、界面活性剤を併用してもよい。界面活性剤は、黒鉛類を溶剤中に分散させ、薄片化を促進するとともに、黒鉛類の層間に溶剤を侵入しやすくして薄片化を促進する。界面活性剤は、薄片化後、必要に応じて溶剤により洗浄して除去すればよい。好ましい界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0017】
黒鉛類を薄片化する場合は、水溶性塩を併用してもよい。水溶性塩は、薄片化工程において、固体状の水溶性塩は薄片化を促進する媒体として機能し、溶媒に溶解した水溶性塩は黒鉛類の層間に作用して薄片化を促進する。水溶性塩は、薄片化後、水洗により容易に除去できる。好ましい水溶性塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
上記した平均厚さ、比表面積及びかさ密度を有する薄片化黒鉛は、基材中で凝集が起こりにくく分散性が大幅に改善される。これにより、薄片化黒鉛による物性の改善効果、例えば、導電性、放熱性、機械物性(耐衝撃性、曲げ強度、圧縮強度等)等を向上することができる。本発明の薄片化黒鉛は、合成樹脂等の樹脂、エラストマー、塗料、インク等への添加剤;電池用電極の導電性添加剤等の用途に好適に使用できる。
【0019】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の薄片化黒鉛と合成樹脂とを含有する。本発明の樹脂組成物に好ましく使用できる合成樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、シリコーン等が挙げられる。これらの合成樹脂のなかでも、本発明の薄片化黒鉛を多量に配合しても、凝集が起こりにくく物性を大きく改善できることから、エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物に含有される合成樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、他の添加剤と同様に、合成樹脂と添加剤とを混練する工程で本発明の薄片化黒鉛を配合すればよい。本発明の樹脂組成物に含有される合成樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、未硬化の熱硬化性樹脂に本発明の薄片化黒鉛を配合し、必要に応じて樹脂組成物を硬化させればよい。
【0021】
本発明の樹脂組成物における薄片化黒鉛の配合量は、使用する合成樹脂の種類や求められる物性に応じて異なるが、合成樹脂100質量部に対して、本発明の薄片化黒鉛1~150質量部であることが好ましく、2~100質量部であることがより好ましい。
【実施例0022】
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、以下の実施例等により本発明は何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「部」や「%」は、特にことわらない限り質量によるものである。
【0023】
〔製造例1〕
国際公開第2016/148252号パンフレットの実験例1に準じて、天然黒鉛から薄片化黒鉛A1を調製した。即ち、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート74部と、ポリエチレングリコール(富士フイルム和光純薬製、製品名:ポリエチレングリコール20000)26部とを混合し加熱溶解し、天然黒鉛(富士フイルム和光純薬製)10部を分散させた。この分散液0.6gを0.5cmのバイアル瓶に採取し、蓋をした後、マイクロウェーブ合成装置(バイオタージ・ジャパン製Initiator+)を用いて、分散液に2450MHzのマイクロ波を、170℃で30分間照射した。この後、分散液をアセトンで洗浄し、濾過後、オーブンで加熱乾燥することで、薄片化黒鉛A1を得た。
【0024】
〔製造例2〕
マイクロ波の照射条件を、170℃で30分間照射から、175℃で30分間照射に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、薄片化黒鉛A2を得た。
【0025】
〔製造例3〕
マイクロ波の照射条件を、170℃で30分間照射から、180℃で60分間照射に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、薄片化黒鉛A3を得た。
【0026】
〔製造例4〕
蒸留水100質量部に、薄片化黒鉛A3を15質量部添加し、ビーズミル(寿工業製、商品名:UAM-015)を用いて液温25℃にて、3回循環させた。なお、ビーズは、直径0.1mmのジルコニアビーズを450質量部使用した。得られた分散液からビーズを除去し、濾過後、オーブンで加熱乾燥することで、薄片化黒鉛A4を得た。
【0027】
〔製造例5〕
天然黒鉛の代わりに、膨張化黒鉛(株式会社伊藤黒鉛工業製、製品名:EC1500)を使用したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、膨張化黒鉛由来の薄片化黒鉛A5を得た。
【0028】
〔製造例6〕
マイクロ波の照射条件を、170℃で30分間照射から、175℃で30分間照射に変更したこと以外は、製造例5と同様の操作を行い、薄片化黒鉛A6を得た。
【0029】
〔製造例7〕
マイクロ波の照射条件を、170℃で30分間照射から、180℃で60分間照射に変更したこと以外は、製造例5と同様の操作を行い、薄片化黒鉛A7を得た。
【0030】
〔製造例8〕
蒸留水100質量部に、天然黒鉛(富士フイルム和光純薬製)を15質量部添加し、ビーズミル(寿工業製、商品名:UAM-015)を用いて液温25℃にて、3回循環させた。なお、ビーズは、直径0.1mmのジルコニアビーズを450質量部使用した。得られた分散液からビーズを除去し、濾過後、オーブンで加熱乾燥することで、粗粉砕黒鉛を得た。天然黒鉛の代わりに、この粗粉砕黒鉛を使用したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、膨張化黒鉛由来の薄片化黒鉛A8を得た。
【0031】
〔製造例9〕
マイクロ波の照射条件を、170℃で30分間照射から、175℃で30分間照射に変更したこと以外は、製造例8と同様の操作を行い、薄片化黒鉛A9を得た。
【0032】
〔製造例10〕
マイクロ波の照射条件を、170℃で30分間照射から、180℃で60分間照射に変更したこと以外は、製造例8と同様の操作を行い、薄片化黒鉛A10を得た。
【0033】
薄片化黒鉛A1~A10について、平均厚さ、比表面積及びかさ密度を測定した。なお、薄片化黒鉛A2、A3、A5、A8、A9及びA10が本発明の平均厚さ、比表面積及びかさ密度を満たすことから実施例1~6とし、薄片化黒鉛A1、A4、A6及びA7を比較例1~4とした。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
〔樹脂シートの作製〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、製品名:アデカレジンEP4100E)100質量部、薄片化黒鉛35質量部、及びイミダゾール系触媒(1-ベンジル-2-メチルイミダゾール)0.5質量部を、遊星式撹拌脱泡装置を用いて混合した。この混合物を温度160℃、圧力5MPaで1時間加熱し、熱プレス硬化させて厚さ3mmの樹脂シートを作製した。この樹脂シートを用いて、分散性、機械的物性(曲げ特性)、電気特性及び熱特性を評価した。結果を表2に示す。
【0036】
〔分散性の評価〕
作製した樹脂シートをミクロトームを用いて切断し、マイクロスコープを用いて断面の中央部を撮影し、画像解析ソフトにより、100μmあたりの粒子数と、凝集物比を測定した。なお、凝集物比は、面積40μm以上の粒子を凝集物とした場合の、粒子の面積の合計に対する凝集物の面積の合計の比(%)である。粒子数が多いほど分散性が良好であり、凝集物比が大きいほど凝集物の割合が多いことを示す。
【0037】
〔機械的物性の評価〕
樹脂シートを幅25mmの短冊状に加工し、JIS K7171(プラスチック-曲げ特性の求め方)のA法に準じ、曲げ応力、曲げひずみ及び曲げ弾性率を測定した。曲げ応力、曲げひずみ及び曲げ弾性率が高いほど、曲げに関する機械的物性に優れることを示す。
【0038】
〔電気特性の評価〕
JIS K7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準じ、4探針法により表面抵抗率を測定した。表面抵抗率が低いほど導電性が向上し、電気特性に優れることを示す。
【0039】
〔熱特性の評価〕
ASTM D7984-16に準じ、熱線法にて熱伝導率を測定した。熱伝導率が高いほど放熱性が向上し、熱特性に優れることを示す。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例の薄片化黒鉛を配合した樹脂シートは、比較例の薄片化黒鉛を配合した樹脂シートよりも粒子数が多く、凝集物比が小さいことから、実施例の薄片化黒鉛が比較例の薄片化黒鉛よりもエポキシ樹脂への分散性に優れていることがわかる。また、実施例の薄片化黒鉛を配合した樹脂シートは、比較例の薄片化黒鉛を配合した樹脂シートよりも、曲げ特性(曲げ応力、曲げひずみ及び曲げ弾性率)が向上し、表面抵抗率及び熱伝導率が低下している。これはエポキシ樹脂シート中の薄片化黒鉛の分散性が向上したためと考えられる。
【0042】
〔樹脂ストランドの作製〕
ポリプロピレン樹脂(ホモポリマー、メルトフローレート:8)100質量部、及び薄片化黒鉛2質量部を二軸混錬機を用いて230℃で混錬して押出し、太さ4mmの樹脂ストランドを作製した。
【0043】
〔分散性の評価〕
得られた樹脂ストランドをミクロトームを用いて切断し、マイクロスコープを用いて断面の中央部を撮影し、樹脂シートの分散性の評価と同様の手法により、100μmあたりの粒子数と、凝集物比を測定した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
実施例の薄片化黒鉛を配合した樹脂ストランドは、比較例の薄片化黒鉛を配合した樹脂ストランドよりも粒子数が多く、凝集物比が小さいことから、実施例の薄片化黒鉛が比較例の薄片化黒鉛よりもポリプロピレン樹脂への分散性に優れていることがわかる。