(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032849
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】光電変換素子及び光電変換素子モジュール
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20220217BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220217BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220217BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220217BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01G9/20 303A
C09J133/00
C09J11/04
C09J9/02
C09J11/08
H01G9/20 203B
H01G9/20 117
H01G9/20 203C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137102
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】亀山 涼嗣
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF001
4J040DF041
4J040DF051
4J040GA05
4J040GA07
4J040HA066
4J040KA03
4J040KA26
4J040KA32
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA06
(57)【要約】
【課題】優れた接着性を発揮し得る硬化物を備える光電変換素子及び光電変換素子モジュールを提供する。
【解決手段】アクリル系接着剤と、粘着付与樹脂とを含む硬化性接着剤組成物の硬化物を備える光電変換素子であって、前記粘着付与樹脂は、炭化水素樹脂とロジン系樹脂の少なくとも一方であり、前記粘着付与樹脂は、数平均分子量が200以上2,000以下であり、重量平均分子量が500以上5,000以下であり、Z平均分子量が1,000以上15,000以下であり、前記重量平均分子量に対する前記Z平均分子量の比が1.0以上2.5以下であり、そして前記粘着付与樹脂は、軟化点が70℃以上170℃以下である、光電変換素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系接着剤と、粘着付与樹脂とを含む硬化性接着剤組成物の硬化物を備える光電変換素子であって、
前記粘着付与樹脂は、炭化水素樹脂とロジン系樹脂の少なくとも一方であり、
前記粘着付与樹脂は、数平均分子量が200以上2,000以下であり、重量平均分子量が500以上5,000以下であり、Z平均分子量が1,000以上15,000以下であり、前記重量平均分子量に対する前記Z平均分子量の比が1.0以上2.5以下であり、そして
前記粘着付与樹脂は、軟化点が70℃以上170℃以下である、光電変換素子。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂は、前記数平均分子量が200以上1,000以下であり、前記重量平均分子量が500以上2,000以下であり、そして前記Z平均分子量が1,000以上4,000以下である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂は、酸価が0.01KOHmg/g以上300KOHmg/g以下である、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂の含有量が、前記アクリル系接着剤100質量部当たり1質量部以上40質量部以下である、請求項1~3の何れかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記硬化性接着剤組成物が導電性粒子をさらに含む、請求項1~4の何れかに記載の光電変換素子。
【請求項6】
請求項1~4の何れかに記載の光電変換素子であって、
光電極を備える第1基板と、
前記光電極に対向する対向電極を備える第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に介在し、互いに対向する2つの隔壁と、
前記光電極、前記対向電極、及び前記2つの隔壁とで囲まれる空間に設けられた電解質層と、
を備える光電変換セルからなり、
前記2つの隔壁のうちの少なくとも1つが前記硬化性接着剤組成物の硬化物からなる、光電変換素子。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光電変換素子であって、
光電極を備える第1基板と、
前記光電極に対向する対向電極を備える第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に介在し、互いに対向する2つの隔壁と、
前記光電極、前記対向電極、及び前記2つの隔壁とで囲まれる空間に設けられた電解質層とを備え、
さらに、前記光電極を他の光電変換セルに属する対向電極と電気的に接続し得るセル接続部及び前記対向電極を他の光電変換セルに属する光電極と電気的に接続し得るセル接続部の少なくとも一方、
を備える光電変換セルからなり、
前記光電変換セルが備える前記セル接続部の少なくとも1つが、導電性粒子をさらに含む前記硬化性接着剤組成物の硬化物を含有する、光電変換素子。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の光電変換素子が直列及び/又は並列に接続された構造を有する、光電変換素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及び光電変換素子モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、熱や光により硬化して部材同士を接着させ得る硬化性接着剤組成物が、光電変換素子、及び複数の光電変換素子により構成される光電変換素子モジュールの製造に使用されている。例えば、有機系太陽電池モジュールにおいては、電解液からなる電解質層の封入等の用途に硬化性接着剤組成物の硬化物が使用されている。
具体的に、特許文献1では、所定の光硬化性組成物を用いることで封止性、電解液に対する耐性、高温での接着力などに優れるシーリング層を形成し得るとの報告がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、硬化性接着剤組成物を用いて形成される硬化物の接着性を更に向上させるという点において、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、優れた接着性を発揮し得る硬化物を備える光電変換素子及び光電変換素子モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、アクリル系接着剤と、所定の性状を有し且つ炭化水素樹脂及び/又はロジン系樹脂からなる粘着付与樹脂とを混合して得られる硬化性接着剤組成物を用いれば、優れた接着性を発揮し得る硬化物を形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1]即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の光電変換素子は、アクリル系接着剤と、粘着付与樹脂とを含む硬化性接着剤組成物の硬化物を備える光電変換素子であって、前記粘着付与樹脂は、炭化水素樹脂とロジン系樹脂の少なくとも一方であり、前記粘着付与樹脂は、数平均分子量が200以上2,000以下であり、重量平均分子量が500以上5,000以下であり、Z平均分子量が1,000以上15,000以下であり、前記重量平均分子量に対する前記Z平均分子量の比が1.0以上2.5以下であり、そして前記粘着付与樹脂は、軟化点が70℃以上170℃以下であることを特徴とする。アクリル系接着剤に、上述した所定の性状を有する炭化水素樹脂及び/又はロジン系樹脂を混合してなる硬化性接着剤組成物を硬化させれば、優れた接着性を有する硬化物が得られ、優れた性能を発揮し得る光電変換素子、及び当該光電変換素子を複数接続してなる光電変換素子モジュールを作製することができる。
なお、本発明において、粘着付与樹脂の「数平均分子量」、「重量平均分子量」及び「Z平均分子量」、並びに「軟化点」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0008】
[2]ここで、本発明の光電変換素子において、前記粘着付与樹脂は、前記数平均分子量が200以上1,000以下であり、前記重量平均分子量が500以上2,000以下であり、そして前記Z平均分子量が1,000以上4,000以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の数平均分子量、重量平均分子量、及びZ平均分子量がそれぞれ上述した範囲内であれば、硬化性接着剤組成物から形成される硬化物の接着性を更に向上させることができる。
【0009】
[3]また、本発明の光電変換素子において、酸価が0.01KOHmg/g以上300KOHmg/g以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の酸価が上述した範囲内であれば、硬化性接着剤組成物から形成される硬化物の接着性(特には、無機材料に対する接着性)を更に向上させることができる。
なお、本発明において、粘着付与樹脂の「酸価」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0010】
[4]そして、本発明の光電変換素子において、前記粘着付与樹脂の含有量が、前記アクリル系接着剤100質量部当たり1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の含有量が上述した範囲内であれば、硬化性接着剤組成物から形成される硬化物の接着性を更に向上させることができる。
【0011】
[5]ここで、本発明の光電変換素子において、前記硬化性接着剤組成物が導電性粒子をさらに含んでいてもよい。
【0012】
[6]また、本発明の光電変換素子は、上記[1]~[4]の何れかに記載の光電変換素子であって、光電極を備える第1基板と、前記光電極に対向する対向電極を備える第2基板と、前記第1基板と前記第2基板の間に介在し、互いに対向する2つの隔壁と、前記光電極、前記対向電極、及び前記2つの隔壁とで囲まれる空間に設けられた電解質層と、を備える光電変換セルからなり、前記2つの隔壁のうちの少なくとも1つが前記硬化性接着剤組成物の硬化物からなることが好ましい。このような構成を有する光電変換素子では、硬化性接着剤組成物の硬化物からなる隔壁が優れた接着性を発揮することができる。
【0013】
[7]そして、本発明の光電変換素子は、上記[5]又は[6]に記載の光電変換素子であって、光電極を備える第1基板と、前記光電極に対向する対向電極を備える第2基板と、前記第1基板と前記第2基板の間に介在し、互いに対向する2つの隔壁と、前記光電極、前記対向電極、及び前記2つの隔壁とで囲まれる空間に設けられた電解質層とを備え、さらに、前記光電極を他の光電変換セルに属する対向電極と電気的に接続し得るセル接続部及び前記対向電極を他の光電変換セルに属する光電極と電気的に接続し得るセル接続部の少なくとも一方、を備える光電変換セルからなり、前記光電変換セルが備える前記セル接続部の少なくとも1つが、導電性粒子をさらに含む前記硬化性接着剤組成物の硬化物を含有することが好ましい。このような構成を有する光電変換素子では、硬化物からなるセル接続部が優れた接着性を発揮することができる。
【0014】
[8]また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の光電変換素子モジュールは、上記[1]~[7]の何れかに記載の光電変換素子が直列及び/又は並列に接続された構造を有することを特徴とする。このように、上述した何れかの光電変換素子が、直接及び並列の少なくとも何れかの態様で複数接続されて形成される光電変換素子モジュールは、光電変換特性等の各種性能に優れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた接着性を発揮し得る硬化物を備える光電変換素子及び光電変換素子モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一つの実施の形態にかかる、光電変換素子及び光電変換素子モジュールの一例の概略構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の光電変換素子は、光や熱等により硬化可能な硬化性樹脂組成物から形成される硬化物を備える。
また、本発明の光電変換素子モジュールは、例えば、色素増感型太陽電池モジュール、有機薄膜太陽電池モジュール、又はペロブスカイト太陽電池モジュール等の有機系太陽電池モジュールである。
【0018】
(硬化性接着剤組成物)
本発明の光電変換素子の作製に用いる硬化性接着剤組成物は、アクリル系接着剤と、粘着付与樹脂とを少なくとも含み、用途に応じて、導電性粒子等のその他の成分を任意に含むことができる。
そして、上記硬化性接着剤組成物によれば、アクリル系接着剤と、所定の性状を有する粘着付与樹脂が良好に混和し得るためと推察されるが、優れた接着性を有する硬化物を形成することができる。
【0019】
なお、硬化性接着剤組成物としては、特に限定されることなく、光硬化性接着剤組成物及び熱硬化性接着剤組成物を挙げることができる。中でも、本発明の光電変換素子の作製に用いる硬化性接着剤組成物は光硬化性接着剤組成物であることが好ましい。硬化性接着剤組成物が光硬化性であれば、特に光電変換素子及び光電変換素子モジュールの製造工程における加熱による劣化を予防して、得られる光電変換素子及び光電変換素子モジュールの性能を向上させることができる。
【0020】
<アクリル系接着剤>
アクリル系接着剤は、光又は熱等により重合反応等の硬化が進行することにより、アクリレートモノマー(アクリル酸エステル)に由来する繰り返し単位(アクリレート単位)、メタクリレートモノマー(メタクリル酸エステル)に由来する繰り返し単位(メタクリレート単位)、及び脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位(脂環式単官能(メタ)アクリレート単位)からなる群から選択される少なくとも一つを含む重合体からなる硬化物を供給し得る組成物であれば、特に限定されない。なおアクリル系接着剤及び硬化性接着剤組成物中において、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及び脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー等の単量体成分は、重合されていない状態(単量体の状態)であってもよく、重合された状態(オリゴマー、重合体の状態)であってもよい。
【0021】
なお本発明において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また本発明において、「脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー」とは、1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、且つエステル残基(-C(=O)-O-RにおけるR)が脂環式炭化水素基である(メタ)アクリレートモノマーを意味する。
そして本発明において、「脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー」に該当する単量体は、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーには含まれないものとする。
【0022】
本発明の実施形態の一例においては、アクリル系接着剤は、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及び脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー等の単量体成分と、重合開始剤の混合物である。
【0023】
[単量体成分]
アクリル系接着剤中において、単量体成分としてはアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及び脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも何れかが含まれていれば特に限定されず、これら以外の単量体成分(その他の単量体)が含まれていてもよい。
【0024】
―アクリレートモノマー―
アクリレートモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、ステアリルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノニルアクリレート、ドデシルアクリレート、ベンジルアクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
―メタクリレートモノマー―
メタクリレートモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2-プロピルヘプチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の一態様において、上述したアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの中では、アクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートが更に好ましい。
【0027】
―脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー―
脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーの脂環式炭化水素基は、好ましくは、カルボキシル基、エポキシ基、リン酸エステル基、及びハロゲン基などの極性基を有していない脂環式炭化水素基である。
また脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくはジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものであり、より好ましくはジシクロペンタニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものである。すなわち、当該モノマーに含まれる脂環式炭化水素基が、好ましくはジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、又はイソボルニル基である。脂環式炭化水素基がこれらの構造のいずれかであることで、得られる硬化物の透湿性を低下させつつ、接着性を更に向上させることができる。
【0028】
また、脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーの全炭素数は、得られる硬化物の透湿性を低下させつつ、接着性を更に向上させる観点から、好ましくは13以上であり、より好ましくは13以上16以下、さらに好ましくは13以上15以下、特に好ましくは13又は14である。
【0029】
脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、2-メチルアダマンチルアクリレート、2-メチルアダマンチルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。そしてこれらの中でも、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレートが好ましく、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートがより好ましい。
【0030】
なお、アクリル系接着剤に含まれる上記アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及び/又は脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーの量は、単量体成分全体を100質量%として、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
―その他の単量体―
その他の単量体としては、上述したアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及び/又は脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能であれば特に限定されない。その他の単量体としては、例えば、アクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、ネオデカン酸、ネオノナン酸、ネオペンタン酸、2-エチルヘキサン酸又はプロピオン酸のビニルエステル、ビニリデンクロリド、スチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0032】
またその他の単量体としては、多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用することもできる。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、
トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びウレタンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;
が挙げられる。
なお本発明において、「多官能(メタ)アクリレートモノマー」に該当する単量体は、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーには含まれないものとする。
【0033】
上述したその他の単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、アクリル系接着剤に含まれる上記その他の単量体の量は、単量体成分全体を100質量%として、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上20質量%以下であることが更に好ましく、0質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、上述した単量体成分を重合可能であれば特に限定されず、既知の光開始剤、熱反応開始剤を使用することができるが、光開始剤が好ましい。
【0035】
―光開始剤―
光開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の置換アセトフェノン、2-メチル2-ヒドロキシプロピオフェノン等の置換α-ケトール、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、芳香族スルホニルクロリド、光活性オキシム、並びにアゾ型開始剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アクリル系接着剤に含まれる光開始剤の量は、上述した単量体成分100質量部当たり、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることが更に好ましく、5質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以下であることが更に好ましい。
【0036】
―熱反応開始剤―
熱反応開始剤としては、例えば、アゾ、過酸化物、過硫酸塩、及びレドックス反応開始剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アクリル系接着剤に含まれる熱反応開始剤の量は、上述した単量体成分100質量部当たり、0.01質量部以上であることが好ましく、0.025質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。
【0037】
[アクリル系接着剤の例]
なおアクリル系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、特表2016-501290号公報、特開2020-007449号公報、特許第6319549号、又は特許第6361862号に記載された組成物も使用することができる。
【0038】
<粘着付与樹脂>
粘着付与樹脂としては、炭化水素樹脂、ロジン系樹脂が挙げられる。なお炭化水素樹脂とロジン系樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0039】
[炭化水素樹脂]
炭化水素樹脂としては、炭化水素を主骨格とする重合体からなる樹脂であれば特に限定されない。なお炭化水素樹脂は、酸等により変性されていたり、水素添加されていたりするものであってもよい。
炭化水素樹脂としては、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂(C5/C9樹脂)、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、アルキルフェノール-アセチレン樹脂、インデン系樹脂、インデンを含有するC9系樹脂、α-メチルスチレン・インデン共重合体樹脂、クマロン-インデン樹脂、ファルネセン系樹脂、ポリリモネン樹脂などが挙げられる。また炭化水素樹脂としては、例えば、特開2018-2861号公報、国際公開第2018/180462号、又は特許第6102436号に開示された単量体等を用いて調製される炭化水素樹脂を使用することもできる。
なお炭化水素樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
[ロジン系樹脂]
ロジン系樹脂としては、天然ロジン及びその誘導体(変性ロジン)を用いることができる。そしてロジン系樹脂の具体例としては、部分不均化ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン酸変性ロジン、重合ロジン、ガムロジン、ウッドロジン、トールオイルロジン、蒸留ロジン、二量体ロジン、ロジンエステルが挙げられる。
なお、ロジンエステルとしては、ペールウッドロジンのグリセロールエステル、水添ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水添ロジンのペンタエリトリトールエステル、及び天然ロジンのフェノール変性ペンタエリトリトールエステル等に例示される、天然ロジン及び/又は変性ロジンのグリセロール及び/又はペンタエリトリトールエステルが挙げられる。
ロジン系樹脂は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
そして上述した粘着付与樹脂の中でも、得られる硬化物の接着性を更に向上させる観点から、C5/C9系石油樹脂、酸変性C5/C9系石油樹脂、ガムロジン、ロジンエステルがより好ましい。
【0042】
[粘着付与樹脂の性状]
ここで、粘着付与樹脂は、数平均分子量(Mn)が200以上2,000以下であることが必要であり,1,500以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましい。粘着付与樹脂の数平均分子量が上述した範囲内であれば、粘着付与樹脂がアクリル系接着剤と良好に混和し、また得られる硬化物の接着性が向上する。
【0043】
加えて、粘着付与樹脂は、重量平均分子量(Mw)が500以上5,000以下であることが必要であり、3,500以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましい。粘着付与樹脂の重量平均分子量が上述した範囲内であれば、粘着付与樹脂がアクリル系接着剤と良好に混和し、また得られる硬化物の接着性が向上する。
【0044】
更に、粘着付与樹脂は、Z平均分子量(Mz)が1,000以上15,000以下であることが必要であり、9,500以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましい。粘着付与樹脂のZ平均分子量が上述した範囲内であれば、粘着付与樹脂がアクリル系接着剤と良好に混和し、また得られる硬化物の接着性が向上する。
【0045】
そして、粘着付与樹脂は、重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)が1.0以上2.5以下であることが必要であり、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。粘着付与樹脂のMz/Mwが上述した範囲内であれば、粘着付与樹脂がアクリル系接着剤と良好に混和し、また得られる硬化物の接着性が向上する。
【0046】
ここで、粘着付与樹脂は、軟化点が70℃以上170℃以下であることが必要であり、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。軟化点が70℃以上であれば、得られる硬化物の耐熱性を確保することができる。一方、軟化点が170℃以下であれば、粘着付与樹脂がアクリル系接着剤と良好に混和し、また得られる硬化物の接着性が向上する。さらには硬化性接着剤組成物を塗布した場合に、被塗布面上に硬化性接着剤組成物を良好に広げることができる。
【0047】
加えて、粘着付与樹脂は、酸価が0.01KOHmg/g以上であることが好ましく、0.1KOHmg/g以上であることがより好ましく、0.5KOHmg/g以上であることが更に好ましく、300KOHmg/g以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の酸化が上述した範囲内であれば、硬化物の接着性(特には、無機材料に対する接着性)を更に向上させることができる。
【0048】
[含有量]
硬化性接着剤組成物における粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、アクリル系接着剤100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましく、5質量部以上であることが特に好ましく、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であること更に好ましく、15質量部以下であることがより一層好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。粘着付与樹脂の含有量が上述した範囲内であれば、硬化物の接着性を更に向上させることができる。
【0049】
<導電性粒子>
硬化性接着剤組成物は、任意に、導電性粒子を含むことができる。導電性粒子を含む硬化性接着剤組成物(「導電性樹脂組成物」とも言う。)を用いれば、導電性を有する硬化物を形成することができる。そして導電性樹脂組成物からなる硬化物は、光電変換素子のセル接続部として良好に使用することができる。
【0050】
ここで、導電性粒子としては、導電性材料からなる粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の具体例としては、Ag、Au、Cu、Al、In、Sn、Bi、Pb等の金属及び、これを含む合金からなる粒子及びこれらの酸化物、導電性炭素粒子、並びに、樹脂粒子等の有機化合物粒子や無機化合物粒子の表面を、Ag、Au、Cu等の金属やこれらの金属の酸化物等の導電性物質、例えばAu/Ni合金で被覆した粒子などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
そして、導電性粒子の平均粒子径は、0.5μm以上30μm以下であることが好ましい。更に、硬化性接着剤組成物中に導電性粒子の含有割合は、0.1体積%以上90体積%以下であることが好ましい。
【0052】
<硬化性接着剤組成物の調製方法>
硬化性接着剤組成物の調製方法は特に限定されない。硬化性接着剤組成物は、例えば、上述した成分を既知の方法で混合することにより調製することができる。
【0053】
(光電変換素子及び光電変換素子モジュール)
本発明の光電変換素子は、何れかの部位に上述した硬化性接着剤組成物よりなる硬化物を備える。
【0054】
本発明の光電変換素子の一例は、光電極を備える第1基板と、光電極に対向する対向電極を備える第2基板と、第1基板と第2基板の間に介在し、互いに対向する2つの隔壁と、光電極、対向電極、及び2つの隔壁とで囲まれる空間に設けられた電解質層と、を備える光電変換セルからなる。そして当該光電変換素子は、2つの隔壁のうち少なくとも1つとして、(通常、導電性粒子を含まない)上述した硬化性接着剤組成物の硬化物を備えることができる。
【0055】
本発明の光電変換素子の他の例は、光電極を備える第1基板と、光電極に対向する対向電極を備える第2基板と、第1基板と第2基板の間に介在し、互いに対向する2つの隔壁と、光電極、対向電極、及び2つの隔壁とで囲まれる空間に設けられた電解質層とを備え、さらに、光電極を他の光電変換セルに属する対向電極と電気的に接続し得るセル接続部及び対向電極を他の光電変換セルに属する光電極と電気的に接続し得るセル接続部の少なくとも一方を備える光電変換セルからなる。そして当該光電変換素子は、セル接続部のうち少なくとも1つとして、上述した導電性粒子を含む硬化性接着剤組成物よりなる硬化物を備えることができる。また当該光電変換素子は、2つの隔壁のうち少なくとも1つとして、(通常導電性粒子を含まない)硬化性接着剤組成物の硬化物を備えることができる。
【0056】
なお、上述した本発明の光電変換素子における各種部材は、例えば後述の「太陽電池モジュール100」の説明において例示するものと同様のものを用いることができる。
【0057】
そして、上述した本発明の光電変換素子を複数個、直列及び/又は並列に接続することで、本発明の光電変換素子モジュールを作製することができる。本発明の光電変換素子モジュールは、例えば、上述した硬化性接着剤組成物よりなる硬化物を、モジュールを構成する複数の光電変換セル(光電変換素子。以下、単に「セル」とも称する)を区画する隔壁や、光電極の導電層と対向電極の導電層とを電気的に接続するセル接続部として備える。
【0058】
そして、本発明の光電変換素子モジュールは、接着性に優れる硬化物により上述した隔壁やセル接続部等が形成されているため、電解液の漏れを十分に抑制する等して優れた光電変換特性を発揮することができる。
特に、本発明者らの検討によれば、従来の硬化性接着剤組成物は、光電変換素子モジュールの作製に用いる場合に、樹脂フィルム、導電層などの被着体の材質や、被着体表面の残留色素量(増感色素が残留する量)によっては、硬化物に十分な接着性を発現させることが出来ない場合があった。しかしながら、上述した硬化性接着剤組成物から形成される硬化物は、被着体の性状等に大きく影響受けず、良好な接着性を発揮することができる。
【0059】
ここで、本発明の光電変換素子モジュールは、複数の光電変換セルを直列接続してなる太陽電池モジュール、例えば、Z型の集積構造を有する太陽電池モジュールでありうる。なお、太陽電池モジュールの集積構造としては、Z型モジュール以外に、W型モジュール、モノリシック型モジュールなどの直列接続構造、あるいは並列接続構造などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
そして、本発明の光電変換素子モジュールの一例としての、Z型の集積構造を有する色素増感型太陽電池モジュールとしては、特に限定されることなく、
図1に厚み方向の断面図を示すような太陽電池モジュール100が挙げられる。
【0061】
太陽電池モジュール100は、隔壁8により区画された複数の(図示例では4つの)セルを直列接続してなる太陽電池モジュールであり、所謂Z型の集積構造を有している。ここで、太陽電池モジュール100は、第1基材1及び第1基材1上に互いに離隔させて設けられた複数の(図示例では4つの)光電極2を備える第1基板3と、第2基材5及び第2基材5上に互いに離隔させて設けられた複数の(図示例では4つの)対向電極6を備える第2基板7とが、第1基板3及び第2基板7の間に隔壁8を介在させた状態で、各セルを形成する光電極2と対向電極6とが、電解質層4を介して互いに対向するように(即ち、セルを形成するように)、且つ、隣接するセル間で一方のセルの光電極2と他方のセルの対向電極6とがセル接続部9を介して電気的に接続されるように貼り合わされた構造を有している。そして、太陽電池モジュール100の各セルは、光電極2と、光電極2に対向する対向電極6と、光電極2と対向電極6との間に設けられた電解質層4とを備えている。
【0062】
そして、太陽電池モジュール100は、光電極2を構成する光電極用導電層21と第1電気的接続部12Aを介して接続する第1取り出し電極11Aと、対向電極6を構成する対向電極用導電層61と第2電気的接続部12Bを介して接続する第2取り出し電極11Bとを備える。
【0063】
<第1基板>
ここで、
図1に示す太陽電池モジュール100の第1基板3は、第1基材1と、第1基材1上に互いに離隔させて設けられた複数の光電極2とを備えている。また、光電極2は、第1基材1上に設けられた光電極用導電層21と、光電極用導電層21上の一部に設けられた多孔質半導体微粒子層22とを備えている。なお、光電極用導電層21は、隙間をあけて設けられている。そして、互いに隣接する光電極2同士は、互いに電気的に絶縁されるように設けられている。この絶縁は、特に限定されることなく、例えば互いに隣接する光電極用導電層21間の隙間に存在する隔壁8によって達成することができる。
【0064】
そして、第1基材1としては、特に限定されることなく、公知の光透過性の基材から適宜選択して用いることができる。例えば、第1基材1としては、透明樹脂やガラス等の可視領域で透明性を有する既知の透明基材が挙げられる。中でも、第1基材1としては、フィルム状に成形された透明樹脂、即ち、樹脂フィルムを用いることが好ましい。樹脂フィルム基材はガラス等の基材と比較し、基材自体のバリア性に劣るが、本発明の構造をとることで、バリア性を大きく向上させることができる。また、第1基材1として樹脂フィルムを採用することで、太陽電池モジュールに軽量性や可撓性を付与できることから、様々な用途に応用することができるからである。
【0065】
樹脂フィルムを形成しうる透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの合成樹脂が挙げられる。
【0066】
さらに、光電極用導電層21は、特に限定されることなく、Au、Ag、Cuなどにより構成される金属メッシュからなる導電層や、Agナノ粒子等の金属ナノ粒子や微小なAgワイヤ等を塗布して形成された導電層、インジウム-スズ酸化物(ITO)やインジウム-亜鉛酸化物(IZO)、フッ素ドープスズ(FTO)などの複合金属酸化物からなる導電層、カーボンナノチューブやグラフェンなどを含んでなるカーボン系導電層、PEDOT/PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)などの導電性高分子よりなる導電層が形成されてなる。これらの材料は、他の材料との相性などにより適宜選択することができる。また、これらの導電層は複数種が第1基材1上に積層されていても良く、或いは、これらの導電層の形成に用いられうる上述したような各種導電性材料が混合されて1つの導電層を形成していても良い。
なお、第1基材1上に光電極用導電層21を形成する方法としては、スパッタリングとエッチングとを組み合わせた方法や、スクリーン印刷など、既知の形成方法を用いることができる。
【0067】
任意で、光電極用導電層21上に下塗り層(図示しない)を設けることができる。ここで、後述する電解質層4が液体で構成される場合には、多孔質半導体微粒子層22を経て光電極用導電層21に電解液が到達し、光電極用導電層21から電解質層4へと電子が漏れ出す逆電子移動と呼ばれる内部短絡現象が発生しうる。そのため、光の照射と無関係な逆電流が発生して光電変換効率が低下する虞がある。そこで、光電極用導電層21上に下塗り層を設けて、このような内部短絡現象を防ぐことができる。更に、光電極用導電層21上に下塗り層を設けることで、多孔質半導体微粒子層22と光電極用導電層21と間の密着性を向上させることができる。
下塗り層は、内部短絡現象を防ぐことのできる(界面反応が起こりにくい)物質であれば、特に限定はされない。例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン等の材料を含んでなる層でありうる。また、下塗り層を形成する方法としては、上記材料を光電極用導電層21に直接スパッタする方法、あるいは上記材料を溶媒に溶解した溶液、金属酸化物の前駆体である金属水酸化物を溶解した溶液、又は有機金属化合物を水を含む混合溶媒に溶解して得た金属水酸化物を含む溶液を、光電極用導電層21上に塗布、乾燥し、必要に応じて焼結する方法がある。
【0068】
更に、増感色素を担持(吸着)させた多孔質半導体微粒子層22としては、特に限定されることなく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどの酸化物半導体の粒子を含む多孔質半導体微粒子層に対して有機色素や金属錯体色素などの増感色素を吸着させてなる多孔質半導体微粒子層を用いることができる。有機色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素等が挙げられる。また、金属錯体色素としては、鉄、銅、ルテニウムなどの金属のフタロシアニン錯体やポルフィリン錯体等が挙げられる。例えば、N3、N719、N749、D102、D131、D150、N205、HRS-1、及びHRS-2などが代表的な増感色素として挙げられる。増感色素を溶解させる有機溶媒は、溶媒に存在している水分及び気体を除去するために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどアルコール類、アセトニトリルなどニトリル類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、アミド類、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、芳香族、ニトロメタンなどの溶媒が好ましい。
【0069】
なお、光電極用導電層21上に多孔質半導体微粒子層22を形成する方法としては、スクリーン印刷やコーティングなどの既知の形成方法を用いることができる。また、多孔質半導体微粒子層に増感色素を吸着させる方法としては、増感色素を含む溶液中への多孔質半導体微粒子層の浸漬などの既知の方法を用いることができる。
【0070】
<第2基板>
また、太陽電池モジュール100の第2基板7は、第2基材5と、第2基材5上に互いに離隔させて設けられた複数の対向電極6とを備えている。また、対向電極6は、第2基材5上に設けられた対向電極用導電層61と、対向電極用導電層61上の一部に設けられた触媒層62とを備えている。そして、触媒層62は、光電極2の多孔質半導体微粒子層22に対向している。
なお、互いに隣接する対向電極6同士は、互いに電気的に絶縁されるように設けられている。この絶縁は、特に限定されることなく、例えば互いに隣接する対向電極6間の隙間に隔壁8を介在させることにより、達成することができる。
【0071】
そして、第2基材5としては、第1基材1と同様の基材、或いは、チタン、SUS、及びアルミ等の箔や板のような透明性を有さない基材で、その他の太陽電池部材による腐食などがない基材を用いることができる。なかでも、第1基材1と同様の理由により、第2基材5を、樹脂フィルムを用いて形成することが好ましい。
【0072】
また、対向電極用導電層61としては、光電極用導電層21と同様の導電層を用いることができる。
【0073】
更に、触媒層62としては、特に限定されることなく、導電性高分子、炭素ナノ構造体、貴金属粒子、及び炭素ナノ構造体と貴金属粒子との混合物などの触媒として機能し得る成分を含む任意の触媒層を用いることができる。
ここで、導電性高分子としては、例えば、ポリ(チオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ブチルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b]-1,4-ジオキシン)(PEDOT)等のポリチオフェン;ポリアセチレン及びその誘導体;ポリアニリン及びその誘導体;ポリピロール及びその誘導体;ポリ(p-キシレンテトラヒドロチオフェニウムクロライド)、ポリ[(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシロキシ))-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチロキシ)-1,4-フェニレンビニレン)]、ポリ[2-2’,5’-ビス(2’’-エチルヘキシロキシ)フェニル]-1,4-フェニレンビニレン]等のポリフェニレンビニレン類;などを挙げることができる。
炭素ナノ構造体としては、例えば、天然黒鉛、活性炭、人造黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノバッドなどを挙げることができる。
貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されず、金属白金、金属パラジウム、及び金属ルテニウムなどの公知の貴金属粒子を適宜選択して用いることができる。
【0074】
触媒層の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、導電性高分子、炭素ナノ構造体、貴金属粒子、又は炭素ナノ構造体と貴金属粒子の両方を適当な溶媒に溶解又は分散させて得られる混合液を、導電膜上に塗布又は噴霧し、該混合液の溶媒を乾燥させることにより行うことができる。炭素ナノ構造体や貴金属粒子を用いる場合、混合液にさらにバインダーを含有させてもよく、バインダーとしては炭素ナノ構造体の分散性や基材との密着性の点から、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基など官能基、及びこれら官能基のナトリウム塩などをもつ高分子を用いるのが好ましい。
【0075】
<隔壁>
また、太陽電池モジュール100の隔壁8は、第1基板3と第2基板7との間に設けられており、電解質層4及びセル接続部9のそれぞれを囲繞している。換言すれば、電解質層4を設ける空間と、セル接続部9を設ける空間とは、第1基板3と、第2基板7と、隔壁8とによって区画形成されている。
【0076】
具体的には、
図1では、隔壁8は、各セルの幅方向一方側(
図1では左側)において、第1基板3の光電極2の光電極用導電層21と、第2基板7の第2基材5との間に設けられており、各セルの幅方向他方側(
図1では右側)において、第1基板3の光電極2の光電極用導電層21と、第2基板7の対向電極6の対向電極用導電層61(触媒層62が形成されている部分よりも幅方向他方側に位置する部分)との間に設けられている。そして、隔壁8の間には、電解質層4とセル接続部9とが交互に設けられている。
【0077】
そして、隔壁8は、基板間の接着性、電解質に対する耐性(耐薬品性)、高温高湿耐久性(耐湿熱性)に優れていることが好ましい。そのような隔壁8として、本発明の光電変換素子モジュールでは、上述した硬化性接着剤組成物の硬化物を好ましく用いることができる。
なお、上述した所定の硬化性接着剤組成物以外に、隔壁8を形成し得る隔壁材料としては、第1基板3と第2基板7とを接着し、電解質層4を封止することができるものであれば特に限定されるものではないが、非導電性の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性放射線(光、電子線)硬化性樹脂が挙げられ、より具体的には、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0078】
上述した隔壁8は、特に限定されることなく、例えば、隔壁8を形成する位置に未硬化の硬化性接着剤組成物を塗布し、塗布した未硬化の硬化性接着剤組成物を硬化させることにより形成することができる。
【0079】
<電解質層>
また、太陽電池モジュール100の電解質層4は、光電極2の多孔質半導体微粒子層22と、対向電極6の触媒層62と、隔壁8とで囲まれる空間に設けられている。そして、電解質層4は、特に限定されることなく、色素増感型太陽電池において使用し得る任意の電解液、ゲル状電解質又は固体電解質を用いて形成することができる。
【0080】
<セル接続部>
更に、太陽電池モジュール100のセル接続部9は、互いに隣接するセルを電気的に直列接続している。具体的には、セル接続部9は、
図1では右側に位置するセルの光電極2の光電極用導電層21と、
図1では左側に位置するセルの対向電極6の対向電極用導電層61とを電気的に接続している。
【0081】
そして、太陽電池モジュール100のセル接続部9は、光電極2の光電極用導電層21上に多孔質半導体微粒子層22と離隔させて形成された配線91と、第1基板3、第2基板7及び隔壁8で囲まれた空間内に充填された導電性樹脂部92とで構成されている。なお、
図1に示す太陽電池モジュール100では配線91と導電性樹脂部92とを用いてセル接続部9を形成しているが、本発明の光電変換素子モジュールでは、セル接続部は導電性樹脂部のみを用いて形成してもよい。また、配線は、対向電極6の対向電極用導電層61上に形成してもよい。
【0082】
ここで、配線91としては、特に限定されることなく、金属及び金属酸化物などの導電性を有する材料からなる配線を用いることができる。中でも、セル接続部9の抵抗を低減して光電変換素子モジュールの光電変換効率を高める観点からは、配線91としては、銅配線、金配線、銀配線、アルミニウム配線などの金属配線を用いることが好ましい。なお、光電極用導電層21上に配線91を形成する方法としては、スパッタリングやスクリーン印刷などの既知の形成方法を用いることができる。
【0083】
また、導電性樹脂部92として、本発明の光電変換素子モジュールでは、上述したアクリル系接着剤、所定の粘着付与樹脂及び導電性粒子を含有する硬化性接着剤組成物(導電性樹脂組成物)の硬化物を好ましく用いることができる。
なお、上記所定の硬化性接着剤組成物以外に、導電性樹脂部を形成し得る組成物としては、樹脂と導電性粒子とを含有する組成物であれば特に限定されない。このような導電性樹脂組成物の樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;シリコーン樹脂;などが挙げられる。当該樹脂には、ラジカル開始剤、カチオン硬化剤、アニオン硬化剤などの任意の硬化剤を用いることができ、重合形式も、付加重合、開環重合など、特に限定されない。
【0084】
なお、上述した導電性樹脂部92を用いたセル接続部9は、特に限定されることなく、例えば、セル接続部9を形成する位置に未硬化の導電性樹脂組成物を充填し、充填した未硬化の導電性樹脂組成物を硬化させることにより形成することができる。
【0085】
<取り出し電極>
そして、光電極2と対向電極6に対して、それぞれ接続された、第1取り出し電極11A及び第2取り出し電極11Bは、特に限定されることなく、一般的な導電性材料により形成された導体を有する。そのような導体としては、銅、アルミニウム、ニッケル、及び鉄等からなる群から選ばれる金属材料、及びこれらの金属材料を含む合金材料により形成された導体が挙げられる。中でも、銅を導体とする電極或いは、ステンレスを基材とするものが好ましい。また導体の厚みは、0.001mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
なお、取り出し電極として、任意で、上述した導体の一部が第1及び第2の電気的接続部12A及び12Bの形成材料となりうる導電性材料によりコーティングされたものを用いることができる。
【0086】
さらに、光電極2を構成する光電極用導電層21と第1取り出し電極11Aとを接続する第1電気的接続部12A、及び対向電極6を構成する対向電極用導電層61と第2取り出し電極11Bとを接続する第2電気的接続部12Bは、特に限定されることなく、一般的な電気的接続材料により形成することができる。好ましくは、抵抗低減により光電変換効率を高める観点から、第1及び第2電気的接続部12A及び12Bは、上述したアクリル系接着剤、所定の粘着付与樹脂及び導電性粒子を含有する硬化性接着剤組成物(導電性樹脂組成物)の硬化物、導体と導電性粘着剤が一体となった導電性テープ製品、又ははんだで形成することができる。
なお、はんだとしては、錫、銀、銅、ビスマス、鉛、フラックス成分などを含有したものを使用することができる。はんだは素子や基材に影響を与えない温度で形成可能なものであることが好ましい。
【0087】
なお、
図1では図示しないが、第1電気的接続部12A及び第2電気的接続部12Bは、それぞれ、配線91と同様にして形成された集電線を介して光電極2あるいは対向電極6と接続されていてもよい。
【0088】
<その他の構成>
本発明の光電変換素子モジュールは、上述した構成以外の構成を備えていてもよい。その他の構成としては、特に限定されないが、1つ又は複数の光電変換セルを包含するガスバリアフィルム等が挙げられる。
【0089】
<光電変換素子及び光電変換素子モジュールの製造方法>
本発明の光電変換素子及び光電変換素子モジュールは、上述した硬化性接着剤組成物を硬化することが可能であれば特に限定されず、真空貼り合わせ法(ODF法)やエンドシール法など、既知の方法で製造することができる。このような既知の方法としては、例えば、国際公開第2018/025821号、国際公開第2017/169986号、国際公開第2007/046499号、特開2006-004827号公報に記載の方法を採用することができる。
【実施例0090】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお実施例及び比較例において、各種測定・評価には以下の手法を使用した。
【0091】
<Mn、Mw、Mz、及びMz/Mw>
粘着付与樹脂について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析を行い、標準ポリスチレン換算値の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びZ平均分子量(Mz)を求め、また重量平均分子量に対する前記Z平均分子量の比(Mz/Mw)を算出した。なお、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析は、測定装置として、東ソー社製「HLC-8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃、1.0mL/minの流量で測定した。
<軟化点>
粘着付与樹脂について、JIS K 2207に従い軟化点を測定した。
<酸価>
粘着付与樹脂について、JIS K 0070に従い酸価を測定した。
<塗布厚み>
組成物A及び組成物Bの塗布厚みを以下のように測定した。
色素増感型太陽電池モジュールの作製に際し、第1基板と第2基板を組成物AおよびBを介して貼り合わせた際の全体の厚みから、第1基板と第2基板の厚みの合計を差し引き、これを塗布厚み(μm)とした。
なお厚みの測定には、厚さ測定器(テクロック社製、製品名「JISK6250準拠 定圧厚さ測定器」)を用いた。
<残留色素量>
残留色素量は、基板上の残留Ru元素比率として、X線光電子分光(XPS)を用いて以下のように測定した。
得られた第1基板の透明導電性基板(ITOがコートされたPENフィルム等)からサンプルフィルムを切り出した。得られたサンプルフィルムの表面をX線光電子分光(XPS)法により分析することで得られるRu3dナロースペクトルの強度を測定し、基板上の残留色素量(%)を求めた。
<T形剥離接着力>
組成物Aおよび組成物Bを介して接着した第1基板と第2基板のT形剥離接着力を、JIS K6854に従って以下のように測定した。
各実施例と同様にして、第1基板と第2基板を貼り合わせてなる光照射後の基板を作製した。この貼り合わせ後の基板についてテンシロン(登録商標)試験機により両側を挟み込み300mm/分の速度で引っ張った際の接着力(N/10mm)を測定した。
<剥離モード>
上記T形剥離接着力測定後、第1基板と第2基板(何れもフィルム)の双方を目視観察し、以下のように評価した。
凝集破壊:両方のフィルムに硬化物が残存している。
界面剥離:一方のフィルムにのみ硬化物が残存し、他方のフィルムには硬化物が残存していない。
界面剥離の場合は界面からの水分の侵入のおそれがあり、光電変換素子モジュールの信頼性が損なわれる場合がある。そのため、T形剥離接着力が高くかつ剥離モードが凝集破壊のものが最も好ましく、T形剥離接着力が低くかつ剥離モードが界面剥離のものが最も好ましくないといえる。
なお後述の表1及び表2中、凝集破壊を「凝集」と、界面剥離を「界面」と表記する。
<セル接続部と第1基材の剥がれ>
作製した色素増感型太陽電池モジュールを目視観察し、セル接続部と第1基材の剥がれの有無を確認した。具体的には、セル接続部と第1基材が剥がれている箇所は気泡(または気泡が連続してなる線)として確認されるため、その有無を確認した。なお「少量あり」の評価は、色素増感型太陽電池モジュールが良好に動作するレベルであり致命的な欠陥ではない。
<電解液漏洩の有無>
作製した色素増感型太陽電池モジュールを目視観察し、電解液漏洩の有無を確認した。
【0092】
(粘着付与樹脂の準備)
粘着付与樹脂として、下記の樹脂を準備した。
<ロジンエステルA>
荒川化学社製、製品名「エステルガムAA-G」、軟化点:82℃、酸価:7KOHmg/g、Mn:732、Mw:898、Mz:1087 Mz/Mw:1.21
<酸変性C5/C9樹脂B>
日本ゼオン社製、製品名「Quintone(登録商標) D295」、軟化点:94℃、酸価:8KOHmg/g、Mn:1300、Mw:2720、Mz:6420、Mz/Mw:2.36
<C5/C9樹脂C>
日本ゼオン社製、製品名「Quintone DX390N」、軟化点:93℃、酸価:0KOHmg/g、Mn:1260、Mw:2490、Mz:5910、Mz/Mw:2.37
<ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂D>
日本ゼオン社製、製品名「Quintone 1500」、軟化点:100℃、酸価:0KOHmg/g、Mn:380、Mw:670、Mz:1300 Mz/Mw:1.94
<C5/C9樹脂E>
日本ゼオン社製、製品名「Quintone G115」、軟化点:99℃、酸価:0KOHmg/g、Mn:1500、Mw:4190、Mz:13190、Mz/Mw:3.15)
<酸変性C5/C9樹脂F>
日本ゼオン社製、製品名「Quintone E200SN」、軟化点:102℃、酸価:1.5KOHmg/g、Mn:1495、Mw:5106、Mz:16567、Mz/Mw:3.24)
<酸変性C5/C9樹脂G>
日本ゼオン社製、製品名「Quintone E200SN」 軟化点:102℃ 酸価:1.5KOHmg/g Mn:1420 Mw:4314 Mz:13015 Mz/Mw:3.04
なお酸変性C5/C9樹脂Gは、酸変性C5/C9樹脂Fの品番違いである。
【0093】
(実施例1)
<電解液の調製>
γ-ブチロラクトンに、下記物質を下記の濃度となるように加え、超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち24時間以上暗所に静置して、電解液を調製した。
ヨウ素:0.04mol/L
ヨウ化リチウム:0.10mol/L
テトラブチルアンモニウムヨージド:0.40mol/L
<色素溶液の調製>
ルテニウム錯体色素(N719)72mgを200mLのメスフラスコに入れた。脱水エタノール190mLを混合し、撹拌した。メスフラスコに栓をしたのち超音波洗浄器による振動により、60分間撹拌した。溶液を常温に保った後、脱水エタノールを加え、全量を200mLとすることで、色素溶液を調製した。
<組成物Aの調製>
100質量部のアクリル系接着剤(スリーボンド製、製品名「TB3035B」)と、1質量部のロジンエステルAとを自動公転ミキサーにより混合して、導電性粒子を含有しない硬化性接着剤組成物(組成物A)を調製した
<組成物Bの調製>
100質量部のアクリル系接着剤((スリーボンド製、製品名「TB3035B」))と、1質量部のロジンエステルAと、導電性粒子(積水樹脂社製、製品名「ミクロパールAU」、平均粒子径(メディアン径):8μm)とを混合して、導電性粒子を含有する硬化性接着剤組成物(導電性樹脂組成物、組成物B)を調製した。なお、導電性粒子の量は5体積%となるよう調整した。
<第1基板の作製>
第1基材である透明基材(ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、厚み:200μm)上に、光電極用導電層である透明導電層(非晶性のインジウム-スズ酸化物(ITO))をコートして透明導電性基板(シート抵抗:13ohm/sq.)を得た。
この透明導電性基板の透明導電層側の表面に、スクリーン印刷法により配線(集電線)としての導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を光電極セル幅に応じた間隔で印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して配線を作製した。得られた配線を有する透明導電性基板を、配線形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC-600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布した。得られた塗膜を、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して、透明導電性基板上に下塗り層を作製した。
透明導電性基板の下塗り層形成面に対して、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。
高圧水銀ランプ(定格ランプ電力:400W)光源をマスク貼合面から10cmの距離に置き、電磁波を1分間照射した後直ちに、酸化チタンペースト(PECC-C01-06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)をベーカー式アプリケータにより塗布した。ペーストを常温で10分間乾燥させた後、マスクフィルムの上側の保護フィルム(NBO-0424 藤森工業製)を剥離除去し、150度の熱風循環式オーブン中でさらに5分間加熱乾燥し、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅:5mm)を形成した。
その後、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅:5mm)を形成した透明導電性基板を、調製した色素溶液(40℃)に浸し、軽く撹拌しながら、色素を吸着させた。90分(吸着時間)後、色素吸着済み酸化チタン膜を色素吸着容器から取り出し、エタノールにて洗浄して乾燥させ、残りのマスクフィルムを剥離除去して、光電極を備える第1基板を作製した
<第2基板の作製>
第2基材である透明基材(PENフィルム、厚み:200μm)上に対向電極用導電層である透明導電層(非晶性のITO)をコートして得た透明導電性基板(シート抵抗:13ohm/sq.)を得た。
この透明導電性基板の透明導電層側の表面に、白金膜パターン幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。次いで、開口部(長さ:60mm、幅:5mm)を打ち抜き加工した金属製マスクを重ね合わせ、スパッタ法により白金膜パターン(触媒層)を形成し、触媒層形成部分が72%程度の光透過率を有する第2基板を得た。このとき、上記第1基板と第2基板とを、お互いの導電面を向かい合わせて重ね合せた時、多孔質半導体微粒子層と触媒層とが一致する構造とした。
<色素増感型太陽電池モジュールの作製>
第2基板の触媒層形成面を表面として、アルミ製吸着板上に真空ポンプを使って固定した。次いで触媒層間の、第1基板と対向させたときに光電極セル間の配線と重なる位置に線状に組成物B(導電性樹脂組成物)を、その線を挟み触媒層の外周部分に隔壁材料である組成物Aを、ディスペンサー装置により塗布した。その後、触媒層部分に電解液を所定量塗布し、自動貼り合せ装置を用いて長方形の触媒層と同型の多孔質半導体微粒子層が向かい合う構造となるように、減圧環境中で重ね合せ、第1基板側からメタルハライドランプにより光照射を行ない、続いて第2基板側から光照射を行った。その後、貼り合せ後の基板から、複数個のセルを含む接続体を各々切出し、接続体の両端部(取り出し電極部)に配置された配線に対して、取出し電極を形成する導電性銅箔テープ(CU7636D、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製、導体である銅箔の厚み:35μm)を取り付け、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。
【0094】
(実施例2)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAの量を1質量部から5質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様にして電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例3)
第1基板を下記のように作製した。それ以外は実施例1と同様にして電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<第1基板の作製>
第1基材である透明基材(ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、厚み:200μm)上に、光電極用導電層である透明導電層(非晶性のインジウム-スズ酸化物(ITO))をコートして透明導電性基板(シート抵抗:13ohm/sq.)を得た。
この透明導電性基板の透明導電層側の表面に、スクリーン印刷法により配線(集電線)としての導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を光電極セル幅に応じた間隔で印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して配線を作製した。得られた配線を有する透明導電性基板を、配線形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC-600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布した。得られた塗膜を、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して、透明導電性基板上に下塗り層を作製した。
透明導電性基板の下塗り層形成面に対して、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。
高圧水銀ランプ(定格ランプ電力:400W)光源を基板から10cmの距離に置き、電磁波を1分間照射した後直ちに、酸化チタンペースト(PECC-C01-06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)をベーカー式アプリケータにより塗布した。ペーストを常温で10分間乾燥させた後、150度の熱風循環式オーブン中でさらに5分間加熱乾燥し、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅:5mm)を形成した。
その後、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅:5mm)を形成した透明導電性基板を、調製した色素溶液(40℃)に浸し、軽く撹拌しながら、色素を吸着させた。90分(吸着時間)後、色素吸着済み酸化チタン膜を色素吸着容器から取り出し、エタノールにて洗浄して乾燥させ、光電極を備える第1基板を作製した。
【0096】
(実施例4)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAの量を1質量部から10質量部に変更した。それ以外は、実施例3と同様にして電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例5)
第1基板及び第2基板の作製時に、それぞれ透明基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚み:200μm)を透明導電層(結晶性の酸化インジウムスズ(ITO))でコートして得られた透明導電性基板を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例6)
第1基板及び第2基板の作製時に、それぞれ透明基材(PETフィルム、厚み:200μm)を透明導電層(結晶性のITO)でコートして得られた透明導電性基板を用いた。それ以外は、実施例2と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例7)
第1基板を下記のように作製した。それ以外は実施例6と同様にして電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
<第1基板の作製>
第1基材である透明基材(PETフィルム、厚み:200μm)上に、光電極用導電層である透明導電層(結晶性のITO)をコートして透明導電性基板(シート抵抗:13ohm/sq.)を得た。
この透明導電性基板を用いた以外は、実施例3と同様にして光電極を備える第1基板を作製した。
【0100】
(実施例8)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAに代えて酸変性C5/C9樹脂Bを用いた。それ以外は実施例2と同様にして電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例9)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAに代えて酸変性C5/C9樹脂Bを用いた。それ以外は実施例6と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例10)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAに代えてC5/C9樹脂Cを用いた。それ以外は実施例2と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(実施例11)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAに代えてDCPD系樹脂Dを用いた。それ以外は実施例4と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(実施例12)
第1基板及び第2基板の作製時に、それぞれ透明基材(PETフィルム、厚み:200μm)を透明導電層(結晶性のITO)でコートして得られた透明導電性基板を用いた。それ以外は、実施例11と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例1)
組成物Aとしてアクリル系接着剤(スリーボンド製、製品名「TB3035B」)をそのまま使用し、組成物Bの調製時にロジンエステルAを使用しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0106】
(比較例2)
組成物Aとしてアクリル系接着剤(スリーボンド製、製品名「TB3035B」)をそのまま使用し、組成物Bの調製時にロジンエステルAを使用しなかった。それ以外は実施例3と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0107】
(比較例3)
組成物A及び組成物Bの調製時に、1質量部のロジンエステルAに代えて5質量部のC5/C9樹脂Eを用いた。それ以外は実施例3と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0108】
(比較例4)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAに代えて酸変性C5/C9樹脂Fを用いた。それ以外は実施例2と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0109】
(比較例5)
組成物A及び組成物Bの調製時に、ロジンエステルAに代えて酸変性C5/C9樹脂Gを用いた。それ以外は実施例2と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0110】
(比較例6)
第1基板及び第2基板の作製時に、それぞれ透明基材(PETフィルム、厚み:200μm)を透明導電層(結晶性のITO)でコートして得られた透明導電性基板を用いた。それ以外は比較例1と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
(比較例7)
第1基板及び第2基板の作製時に、それぞれ透明基材(PETフィルム、厚み:200μm)を透明導電層(結晶性のITO)でコートして得られた透明導電性基板を用いた。それ以外は比較例4と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
(比較例8)
第1基板及び第2基板の作製時に、それぞれ透明基材(PETフィルム、厚み:200μm)を透明導電層(結晶性のITO)でコートして得られた透明導電性基板を用いた。それ以外は比較例2と同様にして、電解液、色素溶液、組成物A、組成物B、第1基板、第2基板、及び色素増感型太陽電池モジュールを作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
表1及び2より、以下のことが分かる。
実施例1、2、8及び10と、比較例1、4及び5は、何れもPENフィルムと非晶性のITOからなる透明導電性基板を使用して第1基板を作製し、また当該第1基板の残留色素量が0%である。そしてこれらを比較すると、所定の粘着付与樹脂を含む硬化性接着剤組成物を用いた実施例1、2、8及び10が、比較例1、4及び5に比して硬化物の接着性に優れることが分かる。
実施例3、4及び11と、比較例2、3は、何れもPENフィルムと非晶性のITOからなる透明導電性基板を使用して第1基板を作製し、また当該第1基板の残留色素量が0.2%である。そしてこれらを比較すると、所定の粘着付与樹脂を含む硬化性接着剤組成物を用いた実施例3、4及び11が、比較例2、3に比して硬化物の接着性に優れることが分かる。
実施例5、6及び9と、比較例6及び7は、何れもPETフィルムと結晶性のITOからなる透明導電性基板を使用して第1基板を作製し、また当該第1基板の残留色素量が0%である。そしてこれらを比較すると、所定の粘着付与樹脂を含む硬化性接着剤組成物を用いた実施例5、6及び9が、比較例6及び7に比して硬化物の接着性に優れることが分かる。
実施例7及び12と、比較例8は、何れもPETフィルムと結晶性のITOからなる透明導電性基板を使用して第1基板を作製し、また当該第1基板の残留色素量が0.2%である。そして、これらを比較すると、所定の粘着付与樹脂を含む硬化性接着剤組成物を用いた実施例7及び12が、比較例8に比して硬化物の接着性に優れることが分かる。