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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033241
(43)【公開日】2022-02-28
(54)【発明の名称】試料作製装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220218BHJP
   G01N 1/06 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
G01N1/00 101B
G01N1/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214481
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2020089165の分割
【原出願日】2015-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2014134977
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】上本 敦
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋
(57)【要約】
【課題】試料にイオンビームを照射する加工によって形成された試料片を、試料から摘出して試料片ホルダに移設させる動作を自動化することが可能な自動試料作製装置を提供することを目的としている。
【解決手段】荷電粒子ビーム装置(10a)は、少なくとも試料片ホルダ(P)、ニードル(18)、および試料片(Q)の予め取得した複数の荷電粒子ビームによる画像を基にして、試料片Qを予め定めた試料片ホルダPの位置に移設するよう複数の荷電粒子ビーム照射光学系とニードル(18)とガス供給部(17)を制御するコンピュータ(21)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から試料片を自動的に作製する自動試料作製装置であって、
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出した前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設された試料片ホルダを保持する試料片ホルダ固定台と、
前記荷電粒子ビームによってデポジション膜を形成するガスを照射するガス供給部と、
少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の予め取得した前記荷電粒子ビームによる画像を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段と前記ガス供給部を制御するコンピュータと、
を備えること、
を特徴とする自動試料作製装置。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記試料片ホルダの前記荷電粒子ビームによる画像からエッジを抽出し、前記試料片ホルダのテンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の自動試料作製装置。
【請求項3】
試料から試料片を自動的に作製する自動試料作製装置であって、
少なくとも、
集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射光学系と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出した前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設された試料片ホルダを保持する試料片ホルダ固定台と、
前記集束イオンビームによってデポジション膜を形成するガスを照射するガス供給部と、
少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の予め取得した前記集束イオンビームによる異なる方向からの画像を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記集束イオンビーム照射光学系と前記試料片移設手段と前記ガス供給部を制御するコンピュータと、
を備えること、
を特徴とする自動試料作製装置。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記試料片ホルダの前記集束イオンビームによる画像からエッジを抽出し、前記試料片ホルダのテンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御すること、
を特徴とする請求項3に記載の自動試料作製装置。
【請求項5】
前記コンピュータは、
前記画像からエッジを抽出することによって、少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片のテンプレートを作成し、前記テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御すること、
を特徴とする請求項1または請求項3に記載の自動試料作製装置。
【請求項6】
前記コンピュータは、
少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の背景に構造物が無い状態で前記画像を取得すること、
を特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の自動試料作製装置。
【請求項7】
前記コンピュータは、
少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の背景に構造物が無い状態となるように前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を指示した際に、実際には背景に構造物が無い状態とならない場合には、少なくとも前記試料片移設手段に接続された前記試料片を初期位置に移動させること、
を特徴とする請求項6に記載の自動試料作製装置。
【請求項8】
前記コンピュータは、
前記試料片が所定姿勢になるように前記試料片移設手段を回転した状態で前記画像を取得すること、
を特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の自動試料作製装置。
【請求項9】
前記コンピュータは、
少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の所定領域に対して前記画像からエッジを抽出することができない場合に、前記画像を再度取得すること、
を特徴とする請求項5に記載の自動試料作製装置。
【請求項10】
前記コンピュータは、
前記画像を基にして、前記試料片移設手段に保持される前記試料片と前記試料片ホルダとの間の距離を取得し、
前記距離を基にして、前記試料片を予め定めた前記試料片ホルダの位置に移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御すること、
を特徴とする請求項1から請求項9の何れか1つに記載の自動試料作製装置。
【請求項11】
前記コンピュータは、
最終的に前記試料ステージに平行な平面内での移動のみによって前記試料片を予め定めた前記試料片ホルダの位置に移設すること、
を特徴とする請求項1から請求項10の何れか1つに記載の自動試料作製装置。
【請求項12】
前記コンピュータは、
前記テンプレートの作成前に前記試料片移設手段に保持される前記試料片を整形加工すること、
を特徴とする請求項5に記載の自動試料作製装置。
【請求項13】
前記コンピュータは、
前記整形加工の位置を前記試料片移設手段からの距離に応じて設定すること、
を特徴とする請求項12に記載の自動試料作製装置。
【請求項14】
前記コンピュータは、
前記試料片を保持する前記試料片移設手段が所定姿勢になるように回転させる際に、偏心補正を行なうこと、
を特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の自動試料作製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動試料作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料から摘出した試料片の形状を、走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡などによる電子ビームを利用する観察、分析、および計測などの各種工程に適した形状に加工する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、試料に電子またはイオンから成る荷電粒子ビームを照射することによって試料片を作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-108810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術に係る装置においては、試料片の微小化に伴い、複数の試料片を精度良く均一形状に加工するために必要とされる位置精度を向上させる技術、および試料片のサンプリング動作を適正に自動化する技術が実現できていない。
なお、本明細書で用いる「サンプリング」とは、試料に荷電粒子ビームを照射することによって作製した試料片を摘出して、その試料片を観察、分析、および計測などの各種工程に適した形状に加工することを指す。さらに具体的には、「サンプリング」とは、試料に集束イオンビームを照射する加工によって形成された試料片を試料片ホルダに移設することを言う。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、試料にイオンビームを照射する加工によって形成された試料片を、試料から摘出して試料片ホルダに移設させる動作を自動化することが可能な自動試料作製装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る自動試料作製装置は、試料から試料片を自動的に作製する自動試料作製装置であって、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、前記試料を載置して移動する試料ステージと、前記試料から分離および摘出した前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、前記試料片が移設された試料片ホルダを保持する試料片ホルダ固定台と、前記荷電粒子ビームによってデポジション膜を形成するガスを照射するガス供給部と、少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の予め取得した前記荷電粒子ビームによる画像を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段と前記ガス供給部を制御するコンピュータと、を備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記試料片ホルダの前記荷電粒子ビームによる画像からエッジを抽出し、前記試料片ホルダのテンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御する。
【0008】
(3)本発明の一態様に係る自動試料作製装置は、試料から試料片を自動的に作製する自動試料作製装置であって、少なくとも、集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射光学系と、前記試料を載置して移動する試料ステージと、前記試料から分離および摘出した前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、前記試料片が移設された試料片ホルダを保持する試料片ホルダ固定台と、前記集束イオンビームによってデポジション膜を形成するガスを照射するガス供給部と、少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の予め取得した前記集束イオンビームによる異なる方向からの画像を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記集束イオンビーム照射光学系と前記試料片移設手段と前記ガス供給部を制御するコンピュータと、を備える。
【0009】
(4)上記(3)に記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記試料片ホルダの前記集束イオンビームによる画像からエッジを抽出し、前記試料片ホルダのテンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御する。
【0010】
(5)上記(1)または(3)に記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記画像からエッジを抽出することによって、少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片のテンプレートを作成し、前記テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして、前記試料片を前記試料片ホルダに移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御する。
【0011】
(6)上記(1)から(5)の何れか1つに記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の背景に構造物が無い状態で前記画像を取得する。
【0012】
(7)上記(6)に記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の背景に構造物が無い状態となるように前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を指示した際に、実際には背景に構造物が無い状態とならない場合には、少なくとも前記試料片移設手段に接続された前記試料片を初期位置に移動させる。
【0013】
(8)上記(1)から(5)の何れか1つに記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記試料片が所定姿勢になるように前記試料片移設手段を回転した状態で前記画像を取得する。
【0014】
(9)上記(5)に記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、少なくとも前記試料片移設手段に保持された前記試料片の所定領域に対して前記画像からエッジを抽出することができない場合に、前記画像を再度取得する。
【0015】
(10)上記(1)から(9)の何れか1つに記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記画像を基にして、前記試料片移設手段に保持される前記試料と前記試料片ホルダとの間の距離を取得し、前記距離を基にして、前記試料片を予め定めた前記試料片ホルダの位置に移設するよう前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動を制御する。
【0016】
(11)上記(1)から(10)の何れか1つに記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、最終的に前記試料ステージに平行な平面内での移動のみによって前記試料片を予め定めた前記試料片ホルダの位置に移設する。
【0017】
(12)上記(5)に記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記テンプレートの作成前に前記試料片移設手段に保持される前記試料を整形加工する。
【0018】
(13)上記(12)に記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記整形加工の位置を前記試料片移設手段からの距離に応じて設定する。
【0019】
(14)上記(1)から(5)の何れか1つに記載の自動試料作製装置では、前記コンピュータは、前記試料片を保持する前記試料片移設手段が所定姿勢になるように回転させる際に、偏心補正を行なう。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動試料作製装置によれば、イオンビームによる試料の加工によって形成された試料片を摘出して試料片ホルダに移設させる動作を自動化することができる。少なくとも試料片ホルダ、試料片移設手段、および試料片の予め取得した画像を基にして、試料片を予め定めた試料片ホルダの位置に精度良く移設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の試料に形成された試料片を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の試料片ホルダを示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の試料片ホルダを示す側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られるニードルの先端のテンプレートを示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られるニードルの先端のテンプレートを示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードルの先端を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおけるニードルの先端を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードルの先端および試料片を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおけるニードルの先端および試料片を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードルおよび試料片の接続加工位置を含む加工照射枠を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料および試料片の支持部の切断加工位置T1を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルを退避させた状態を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルに対してステージを退避させた状態を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルの回転角度0°でのアプローチモードの状態を示す図である。
図17】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルの回転角度0°でのアプローチモードの状態を示す図である。
図18】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルの回転角度90°でのアプローチモードの状態を示す図である。
図19】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルの回転角度90°でのアプローチモードの状態を示す図である。
図20】本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルの回転角度180°でのアプローチモードの状態を示す図である。
図21】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片が接続されたニードルの回転角度180°でのアプローチモードの状態を示す図である。
図22】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおける柱状部の試料片の取り付け位置を示す図である。
図23】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおける柱状部の試料片の取り付け位置を示す図である。
図24】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料台の試料片の取り付け位置周辺で移動停止したニードルを示す図である。
図25】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおける試料台の試料片の取り付け位置周辺で移動停止したニードルを示す図である。
図26】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードルに接続された試料片を試料台に接続するための加工照射枠を示す図である。
図27】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードルと試料片とを接続するデポジション膜を切断するための切断加工位置を示す図である。
図28】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードルを退避させた状態を示す図である。
図29】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおけるニードルを退避させた状態を示す図である。
図30】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードルの先端形状を示す図である。
図31】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置の電子ビームにより得られる画像データにおけるニードルの先端形状を示す図である。
図32】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置において、集束イオンビーム照射によって得られる画像を基にした柱状部と試料片の位置関係を示す説明図である。
図33】本発明の実施形態に係る自動試料作製装置において、電子ビーム照射によって得られる画像を基にした柱状部と試料片の位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る自動で試料を作製可能な自動試料作製装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10aを備える自動試料作製装置10の構成図である。本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10は、荷電粒子ビーム装置10aを備えている。荷電粒子ビーム装置10aは、図1に示すように、内部を真空状態に維持可能な試料室11と、試料室11の内部において試料Sおよび試料片ホルダPを固定可能なステージ12と、ステージ12を駆動する駆動機構13と、を備えている。荷電粒子ビーム装置10aは、試料室11の内部における所定の照射領域(つまり走査範囲)内の照射対象に集束イオンビーム(FIB)を照射する集束イオンビーム照射光学系14を備えている。荷電粒子ビーム装置10aは、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に電子ビーム(EB)を照射する電子ビーム照射光学系15を備えている。荷電粒子ビーム装置10aは、荷電粒子ビーム(つまり、集束イオンビームまたは電子ビーム)の照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(二次電子および二次イオンなど)Rを検出する検出器16を備えている。荷電粒子ビーム装置10aは、照射対象の表面にガスGを供給するガス供給部17を備えている。荷電粒子ビーム装置10aは、ステージ12に固定された試料Sから試料片Qを取り出し、試料片Qを保持して試料片ホルダPに設置するニードル18と、ニードル18を駆動して試料片Qを搬送するニードル駆動機構19と、を備えている。このニードル18とニードル駆動機構19を合わせて試料片移設手段と呼ぶこともある。荷電粒子ビーム装置10aは、検出器16によって検出された二次荷電粒子Rに基づく画像データなどを表示する表示装置20と、コンピュータ21と、入力デバイス22と、を備えている。
なお、集束イオンビーム照射光学系14および電子ビーム照射光学系15の照射対象は、ステージ12に固定された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などである。
【0024】
この実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10aは、照射対象の表面に集束イオンビームを走査しながら照射することによって、スパッタリングによる各種の加工(エッチング加工など)と、デポジション膜の形成とを実行可能である。荷電粒子ビーム装置10aは、試料Sから透過型電子顕微鏡による透過観察用の試料片Q(例えば、薄片試料、針状試料など)を形成する加工を実行可能である。荷電粒子ビーム装置10aは、試料片ホルダPに設置された試料片Qを、透過型電子顕微鏡による透過観察に適した所望の厚さ(例えば、10~20nmなど)の薄膜とする加工を実行可能である。荷電粒子ビーム装置10aは、試料片Qおよびニードル18などの照射対象の表面に集束イオンビームまたは電子ビームを走査しながら照射することによって、照射対象の表面の観察を実行可能である。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10aの試料Sに形成された試料片Qを示す平面図である。試料Sにおいて試料片Qは、試料Sに接続される支持部Qaを残して側部側および底部側の周辺部が削り込まれて除去されるようにエッチング加工されている。試料片Qは、支持部Qaによって試料Sに片持ち支持されている。
【0026】
試料室11は、排気装置(図示略)によって内部を所望の真空状態になるまで排気可能であるとともに、所望の真空状態を維持可能に構成されている。
ステージ12は、試料Sを保持する。ステージ12は、試料片ホルダPを保持するホルダ固定台12aを備えている。図3は試料片ホルダPの平面図であり、図4は側面図である。試料片ホルダPは、切欠き部31を有する半円形板状の基部32と、切欠き部31に固定される試料台33とを備えている。基部32は、例えば金属によって直径3mmおよび厚さ50μmなどの円形板状に形成されている。試料台33は、例えばシリコンウェハからMEMSプロセスによって形成され、導電性の接着剤によって切欠き部31に貼着されている。試料台33は櫛歯形状であり、離間配置されて突出する複数(例えば、5本など)で、幅が異なる柱状部(ピラー)34を備えている。各柱状部34の幅を違えておくことに加え、各柱状部34に移設した試料片Qと対応付けてコンピュータ21に記憶させておくことにより、複数の柱状部34に保持された試料片Qを間違わずに認識することができる。各柱状部34は、例えば先端部の厚さが10μm以下などに形成され、先端面に取り付けられる試料片Qを保持する。
【0027】
駆動機構13は、ステージ12に接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ21から出力される制御信号に応じてステージ12を所定軸に対して変位させる。駆動機構13は、水平面に平行かつ互いに直交するX軸およびY軸と、X軸およびY軸に直交する鉛直方向のZ軸とに沿って平行にステージ12を移動させる移動機構13aを備えている。駆動機構13は、ステージ12をX軸またはY軸周りに回転させるチルト機構13bと、ステージ12をZ軸周りに回転させる回転機構13cと、を備えている。
【0028】
集束イオンビーム照射光学系14は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向上方の位置でステージ12に臨ませるとともに、光軸を鉛直方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に固定された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に鉛直方向上方から下方に向かい集束イオンビームを照射可能である。
集束イオンビーム照射光学系14は、イオンを発生させるイオン源14aと、イオン源14aから引き出されたイオンを集束および偏向させるイオン光学系14bと、を備えている。イオン源14aおよびイオン光学系14bは、コンピュータ21から出力される制御信号に応じて制御され、集束イオンビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ21によって制御される。イオン源14aは、例えば、液体ガリウムなどを用いた液体金属イオン源、プラズマ型イオン源、ガス電界電離型イオン源などである。イオン光学系14bは、例えば、コンデンサレンズなどの第1静電レンズと、静電偏向器と、対物レンズなどの第2静電レンズと、などを備えている。
【0029】
電子ビーム照射光学系15は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向に所定角度傾斜した傾斜方向でステージ12に臨ませるとともに、光軸を傾斜方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に固定された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に傾斜方向の上方から下方に向かい電子ビームを照射可能である。
電子ビーム照射光学系15は、電子を発生させる電子源15aと、電子源15aから射出された電子を集束および偏向させる電子光学系15bと、を備えている。電子源15aおよび電子光学系15bは、コンピュータ21から出力される制御信号に応じて制御され、電子ビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ21によって制御される。電子光学系15bは、例えば、電磁レンズと偏向器となどを備えている。
【0030】
なお、電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14の配置を入れ替え、電子ビーム照射光学系15を鉛直方向に、集束イオンビーム照射光学系14を鉛直方向に所定角度傾斜した傾斜方向に配置してもよい。
【0031】
検出器16は、試料Sおよびニードル18などの照射対象に集束イオンビームまたは電子ビームが照射されたときに照射対象から放射される二次荷電粒子(二次電子および二次イオンなど)Rの強度(つまり、二次荷電粒子の量)を検出し、二次荷電粒子Rの検出量の情報を出力する。検出器16は、試料室11の内部において二次荷電粒子Rの量を検出可能な位置、例えば照射領域内の試料Sなどの照射対象に対して斜め上方の位置などに配置され、試料室11に固定されている。
【0032】
ガス供給部17は、試料室11の内部においてガス噴射部(図示略)をステージ12に臨ませて、試料室11に固定されている。ガス供給部17は、集束イオンビームによる試料Sのエッチングを試料Sの材質に応じて選択的に促進するためのエッチング用ガスと、試料Sの表面に金属または絶縁体などの堆積物によるデポジション膜を形成するためのデポジション用ガスと、などを試料Sに供給可能である。ガス供給部17は、例えば、Si系の試料Sに対するフッ化キセノンと、有機系の試料Sに対する水と、などのエッチング用ガスを、集束イオンビームの照射と共に試料Sに供給することによって、エッチングを選択的に促進させる。また、ガス供給部17は、例えば、フェナントレン、プラチナ、カーボン、またはタングステンなどを含有した化合物ガスのデポジション用ガスを、集束イオンビームの照射と共に試料Sに供給することによって、デポジション用ガスから分解された固体成分を試料Sの表面に堆積させる。
【0033】
ニードル駆動機構19は、ニードル18が接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ21から出力される制御信号に応じてニードル18を変位させる。ニードル駆動機構19は、ステージ12と一体に設けられており、例えばステージ12がチルト機構13bによってチルト軸(つまり、X軸またはY軸)周りに回転すると、ステージ12と一体に移動する。ニードル駆動機構19は、3次元座標軸の各々に沿って平行にニードル18を移動させる移動機構(図示略)と、ニードル18の中心軸周りにニードル18を回転させる回転機構(図示略)と、を備えている。なお、この3次元座標軸は、試料Sのステージ12の直交3軸座標系とは独立している。ステージ12の表面に平行な2次元座標軸を含むステージ12の直交3軸座標系で、ステージ12の表面が傾斜状態または回転状態にある場合、このニードル18の座標系は傾斜または回転する。
【0034】
コンピュータ21は、試料室11の外部に配置され、表示装置20と、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウスおよびキーボードなどの入力デバイス22とが接続されている。
コンピュータ21は、入力デバイス22から出力される信号または予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号などによって、荷電粒子ビーム装置10aの動作を統合的に制御する。
【0035】
コンピュータ21は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながら検出器16によって検出される二次荷電粒子Rの検出量を、照射位置に対応付けた輝度信号に変換する。コンピュータ21は、二次荷電粒子Rの検出量の2次元位置分布によって照射対象の形状を示す画像データを生成する。吸収電流画像モードでは、コンピュータ21は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながらニードル18に流れる吸収電流を検出することによって、吸収電流の2次元位置分布によってニードル18の形状を示す吸収電流画像データを生成する。コンピュータ21は、生成した各画像データとともに、各画像データの拡大、縮小、移動、および回転などの操作を実行するための画面を、表示装置20に表示させる。コンピュータ21は、自動的なシーケンス制御におけるモード選択および加工設定などの各種の設定を行なうための画面を、表示装置20に表示させる。
【0036】
本発明の実施形態による荷電粒子ビーム装置10aは上記構成を備えており、次に、この荷電粒子ビーム装置10aの動作について説明する。
【0037】
以下、コンピュータ21が実行する自動試料サンプリングの動作、つまり予め荷電粒子ビーム(集束イオンビーム)による試料Sの加工によって形成された試料片Qを自動的に試料片ホルダPに移動させる動作について説明する。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10aの動作を示すフローチャートである。先ず、コンピュータ21は、自動シーケンスの開始時に操作者の入力に応じて後述する姿勢制御モードの有無等のモード選択および加工設定(加工位置、寸法等の設定)などを行なう(ステップS01)。
【0039】
(ピラーのテンプレート作成工程)
次に、コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34のテンプレート作成工程を実行する。コンピュータ21は、サンプリングプロセスの最初に柱状部(ピラー)34のテンプレートを作成する。コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34毎にテンプレートを作成する。コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34の座標取得とテンプレート作成をセットで行うとともに、テンプレートマッチングで柱状部(ピラー)34の形状を判定することによって検査を行なう。コンピュータ21は、テンプレートマッチングに用いる柱状部(ピラー)34のテンプレートとして、例えばエッジ情報またはCAD情報などを予め記憶している。コンピュータ21は、テンプレートマッチングのスコアによって柱状部(ピラー)34の形状を判定し、例えば柱状部(ピラー)34が所定の形状でない場合には、次の柱状部(ピラー)34を用いるように設定する。
【0040】
このテンプレート作成工程において、先ず、コンピュータ21は、操作者によってステージ12のホルダ固定台12aに設置される試料片ホルダPの位置登録処理を行なう(ステップS02)。
この位置登録処理において、先ず、コンピュータ21は、粗調整の動作として、駆動機構13によってステージ12を駆動し、試料片ホルダPにおいて試料台33が取り付けられた位置に照射領域を位置合わせする。次に、コンピュータ21は、微調整の動作として、荷電粒子ビーム(集束イオンビームおよび電子ビームの各々)の照射により生成する各画像データから、事前に試料台33の設計形状から作成したテンプレートを用いて試料台33を構成する複数の柱状部34の位置を抽出する。そして、コンピュータ21は、抽出した各柱状部34の位置座標を、試料片Qの取り付け位置として記憶(登録処理)する。
コンピュータ21は、この位置登録処理を、自動試料サンプリングを実施する試料片Qの数の分だけ、順次、実施する。コンピュータ21は、試料片ホルダPの位置登録処理を、後述する試料片Qの移動に先立って行なうことによって、実際に適正な試料台33が存在することを予め確認する。
【0041】
また、コンピュータ21は、ホルダ固定台12aに複数個の試料片ホルダPが設置されている場合、各試料片ホルダPの位置座標、該当試料片ホルダPの画像データを各試料片ホルダPに対するコード番号と共に記録する。さらに、コンピュータ21は、各試料片ホルダPの各柱状部34の位置座標と対応するコード番号と画像データを記憶(登録処理)する。これにより、コンピュータ21は、数10個の試料片Qを作製する場合、それぞれの試料片Qを取り付けるべき特定の試料片ホルダPの、特定の柱状部34を荷電粒子ビームの視野内に呼び出すことができる。
なお、この位置登録処理において、万一、試料片ホルダP自体、もしくは、柱状部34が変形や破損していて、試料片Qが取り付けられる状態に無い場合には、コンピュータ21は、上記の位置座標、画像データ、およびコード番号と共に、対応させて「使用不可」(試料片Qが取り付けられない)とも登録しておく。これによって、コンピュータ21は、後述する試料片Qの移動の際に、「使用不可」の試料片ホルダP、もしくは柱状部34はスキップされ、正常な試料片ホルダP、もしくは柱状部34に取り付けることができる。
【0042】
次に、コンピュータ21は、試料Sに対する荷電粒子ビームの照射により生成する画像データを用いて、予め試料Sに試料片Qを形成する自動加工の実行時に試料Sに形成されたレファレンスマークRefを認識する。コンピュータ21は、集束イオンビームの照射によって試料Sに試料片Qを形成する際の加工照射枠FとレファレンスマークRefとの相対的な位置関係の情報を、予め記憶している。コンピュータ21は、認識したレファレンスマークRefを用いて、既知であるレファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置関係から試料片Qの位置を認識して、試料片Qの位置合わせを行なう(ステップS03)。
次に、コンピュータ21は、駆動機構13によってステージ12を駆動し、試料片Qの姿勢が所定姿勢(例えば、ニードル18による取出しに適した姿勢など)になるように、姿勢制御モードに対応した角度分だけステージ12をZ軸周りに回転させる(ステップS04)。
【0043】
次に、コンピュータ21は、試料Sに対する荷電粒子ビームの照射により生成する画像データを用いてレファレンスマークRefを認識する。コンピュータ21は、既知であるレファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置関係から試料片Qの位置を認識して、試料片Qの位置合わせを行なう(ステップS05)。
次に、コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を初期設定位置に移動させる。初期設定位置は、例えば、予め設定されている視野領域内の所定位置などであって、視野領域内で位置合わせが完了した試料片Qの周辺の所定位置などである。コンピュータ21は、ニードル18を初期設定位置に移動させた後に、ガス供給部17先端のノズル17aをステージ12の鉛直方向上方の待機位置から試料片Qの周辺の所定位置に下降させる(ステップS06)。
コンピュータ21は、ニードル18を移動させる際に、試料片Qを形成する自動加工の実行時に試料Sに形成されたレファレンスマークRefを用いて、試料片Qの位置を精度良く把握することができ、3次元的な移動であっても適正に移動させることができる。レファレンスマークRefは、加工の位置基準を示すマーク(例えば、ドリフト補正マーク)なので、試料片Qの形状が加工によって変化する場合であっても、レファレンスマークRefの位置は不変である。コンピュータ21は、レファレンスマークRefを基準にして形成された試料片Qに対して、レファレンスマークRefを用いてニードル18を精度良く移動させることができる。
【0044】
次に、コンピュータ21は、ニードル18を試料片Qに接触させる処理として、以下のステップS07~ステップS11の処理を行なう。
先ず、コンピュータ21は、吸収電流画像モードに切り替え、ニードル18の位置を認識する(ステップS07)。コンピュータ21は、照射位置を走査しながらニードル18に荷電粒子ビームを照射することによってニードル18に流れる吸収電流を検出し、複数の異なる平面に対する吸収電流の2次元位置分布を示す吸収電流画像データを生成する。コンピュータ21は、集束イオンビームの照射によってXY平面(集束イオンビームの光軸に垂直な平面)の吸収電流画像データを取得し、電子ビームの照射によってXYZ平面(電子ビームの光軸に垂直な平面)の画像データを取得する。コンピュータ21は、2つの異なる方向から取得した各吸収電流画像データを用いて3次元空間でのニードル18の先端位置を検出する。
なお、コンピュータ21は、検出したニードル18の先端位置を用いて、駆動機構13によってステージ12を駆動して、ニードル18の先端位置を予め設定されている視野領域の中心位置(視野中心)に設定してもよい。
【0045】
(ニードルのテンプレート作成工程)
次に、コンピュータ21は、検出したニードル18の先端位置を用いて、ニードル18の先端形状に対するテンプレートマッチング用のテンプレート(レファレンス画像データ)を取得する(ステップS08)。図6は集束イオンビームにより得られるニードル18の先端のテンプレートを示す図であり、図7は電子ビームにより得られるニードル18の先端のテンプレートを示す図である。コンピュータ21は、駆動機構13によってステージ12を駆動し、試料片Qを視野領域から退避させた状態で照射位置を走査しながらニードル18に荷電粒子ビーム(集束イオンビームおよび電子ビームの各々)を照射する。コンピュータ21は、荷電粒子ビームの照射によってニードル18から放出される二次荷電粒子Rの複数の異なる平面内での位置分布を示す各画像データを取得する。コンピュータ21は、集束イオンビームの照射によってXY平面の画像データを取得し、電子ビームの照射によってXYZ平面(電子ビームの光軸に垂直な平面)の画像データを取得する。コンピュータ21は、集束イオンビームおよび電子ビームによる画像データを取得し、テンプレート(レファレンス画像データ)として記憶する。
コンピュータ21は、粗調整および微調整によりニードル18を移動させる直前に実際に取得する画像データをレファレンス画像データとするので、ニードル18の形状によらずに、精度の高いパターンマッチングを行うことができる。さらに、コンピュータ21は、ステージ12を退避させ、背景に複雑な構造物が無い状態で各画像データを取得するので、バックグラウンドの影響を排除したニードル18の形状が明確に把握できるテンプレート(レファレンス画像データ)を取得することができる。
【0046】
なお、コンピュータ21は、各画像データを取得する際に、対象物の認識精度を増大させるために予め記憶した好適な倍率、輝度、コントラスト等の画像取得条件を用いる。
また、コンピュータ21は、二次荷電粒子Rの画像データをレファレンス画像とする代わりに、吸収電流画像データをレファレンス画像としてもよい。この場合、コンピュータ21は、ステージ12を駆動して試料片Qを視野領域から退避させることなしに、2つの異なる平面に対して各吸収電流画像データを取得してもよい。
【0047】
(試料片ピックアップ工程)
次に、コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(粗調整)を実行する(ステップS09)。コンピュータ21は、試料Sに対する集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射によって生成する各画像データを用いて、試料片Qの形成時に予め集束イオンビームの照射によって試料Sに形成したレファレンスマークRef(上述した図2参照)を認識する。コンピュータ21は、認識したレファレンスマークRefを用いてニードル18の移動目標位置APを設定する。コンピュータ21は、移動目標位置APを、ニードル18と試料片Qとをデポジション膜によって接続する加工を行なうために必要とされる位置とし、試料片Qの形成時の加工照射枠Fに対して所定の位置関係を対応付けている。コンピュータ21は、集束イオンビームの照射によって試料Sに試料片Qを形成する際の加工照射枠FとレファレンスマークRefとの相対的な位置関係の情報を記憶している。なお、コンピュータ21は、相互に相関するレファレンスマークRefと加工照射枠Fと移動目標位置APとを、予め試料片Qの形成時などに一括して設定してもよいし、適宜の組み合わせで異なるタイミングに設定してもよい。コンピュータ21は、レファレンスマークRefと加工照射枠Fと移動目標位置APとを設定して、相互に対応付けて記憶している。
コンピュータ21は、認識したレファレンスマークRefを用いて、レファレンスマークRefと加工照射枠Fと移動目標位置(試料片Q上の所定位置)APとの相対的な位置関係を用いて、ニードル18の先端位置を移動目標位置APに向かい3次元空間内で移動させる。コンピュータ21は、ニードル18を3次元的に移動させる際に、例えば、先ずX方向およびY方向で移動させ、次にZ方向に移動させる。
コンピュータ21は、ニードル18を移動させる際に、レファレンスマークRefを用いて試料片Qの位置を精度良く把握することができ、移動目標位置APに対する3次元的な移動であっても、ニードル18を適正に移動させることができる。レファレンスマークRefの位置は、試料片Qの形状が加工によって変化する場合であっても不変なので、コンピュータ21は、レファレンスマークRefに対応付けられた移動目標位置APを用いて、ニードル18を試料片Qに対して精度良く移動させることができる。
【0048】
図8及び図9は、この様子を示しており、特に、図8は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードル18の先端を示す図であり、図9は、電子ビームにより得られる画像データにおけるニードル18の先端を示す図である。ここで、図8図9で、ニードル18の向きが異なるのは、集束イオンビーム照射光学系14と電子ビーム照射光学系15と検出器16の位置関係と、二次電子による画像の表示向きの違いに拠るもので、同一のニードル18を、観察方向を違えて見ている状況を示している。
また、図9においては、2本のニードル18a、18bが表示されているが、ニードル移動の状況を示すために、同じ視野について移動前後のニードル先端位置の画像データを重ねて表示したもので、同一のニードル18である。
【0049】
なお、上述の処理では、コンピュータ21は、レファレンスマークRefを用いて、レファレンスマークRefと加工照射枠Fと移動目標位置APとの相対的な位置関係を用いて、ニードル18の先端位置を移動目標位置APに向かい3次元空間内で移動させるとしたが、これに限定されない。コンピュータ21は、加工照射枠Fを用いること無しに、レファレンスマークRefと移動目標位置APとの相対的な位置関係を用いて、ニードル18の先端位置を移動目標位置APに向かい3次元空間内で移動させてもよい。
【0050】
次に、コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(微調整)を実行する(ステップS10)。コンピュータ21は、レファレンス画像データを用いたパターンマッチングを繰り返して、ニードル18の先端位置を把握しながら、ニードル18を移動させる。コンピュータ21は、ニードル18に荷電粒子ビーム(集束イオンビームおよび電子ビームの各々)を照射して、荷電粒子ビームによる各画像データを繰り返し取得する。コンピュータ21は、取得した画像データに対して、レファレンス画像データを用いたパターンマッチングを行なうことによってニードル18の先端位置を取得する。コンピュータ21は、取得したニードル18の先端位置と移動目標位置とに応じてニードル18を3次元空間内で移動させる。
【0051】
次に、コンピュータ21は、ニードル18の移動を停止させる処理を行なう(ステップS11)。コンピュータ21は、移動目標位置を含む照射領域に荷電粒子ビームを照射した状態でニードル18を移動させて、ニードル18に流れる吸収電流が所定電流を超える場合に、ニードル駆動機構19によるニードル18の駆動を停止する。これによりコンピュータ21は、ニードル18の先端位置を、試料片Qの側部のうち支持部Qaの反対側の側部に近接した移動目標位置に配置する。図10および図11は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードル18の先端および試料片Qを示す図(図10)、および、電子ビームにより得られる画像データにおけるニードル18の先端および試料片Qを示す図(図11)である。なお、図10および図11は、図8および図9同様、集束イオンビームと電子ビームで観察方向が異なることに加え、観察倍率が異なっているが、観察対象とニードル18は同一である。
【0052】
次に、コンピュータ21は、ニードル18を試料片Qに接続する処理を行なう(ステップS12)。コンピュータ21は、試料Sに形成されているレファレンスマークRefを用いて、予め設定されている接続加工位置を指定する。コンピュータ21は、接続加工位置を試料片Qから所定間隔だけ離れた位置とする。コンピュータ21は、所定間隔の上限を1μmとし、好ましくは、所定間隔を100nm以上かつ200nm以下とする。コンピュータ21は、所定時間に亘って、接続加工位置に設定した加工照射枠R1を含む照射領域に集束イオンビームを照射しつつ、試料片Qおよびニードル18の先端表面にガス供給部17によってガスを供給する。これによりコンピュータ21は、試料片Qおよびニードル18をデポジション膜により接続する。
このステップS12では、コンピュータ21は、ニードル18を試料片Qに接触させずにデポジション膜により接続するので、接触に起因する損傷などの不具合が発生することを防止できる利点を有している。さらに、後の工程でニードル18と試料片Qとが切断により分離される際にニードル18が切断されてしまうことを防止することができる。さらに、ニードル18の振動が発生する場合であっても、この振動が試料片Qに伝達されることを抑制することができる。さらに、試料Sのクリープ現象による試料片Qの移動が発生する場合であっても、ニードル18と試料片Qとの間に過剰なひずみが生じることを抑制することができる。図12は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける、ニードル18および試料片Qの接続加工位置を含む加工照射枠R1を示す図である。
【0053】
コンピュータ21は、ニードル18を試料片Qに接続する際には、後にニードル18に接続された試料片Qを試料片ホルダPに移設するときに選択される各アプローチモードに適した接続姿勢を設定する。コンピュータ21は、後述する複数(例えば、3つ)の異なるアプローチモードの各々に対応して、ニードル18と試料片Qとの相対的な接続姿勢を設定する。
【0054】
なお、コンピュータ21は、ニードル18の吸収電流の変化を検出することによって、デポジション膜による接続状態を判定してもよい。コンピュータ21は、ニードル18の吸収電流の変化に応じて試料片Qおよびニードル18がデポジション膜により接続されたと判定した場合に、所定時間の経過有無にかかわらずに、デポジション膜の形成を停止してもよい。
【0055】
次に、コンピュータ21は、試料片Qと試料Sとの間の支持部Qaを切断する処理を行なう(ステップS13)。コンピュータ21は、試料Sに形成されているレファレンスマークを用いて、予め設定されている支持部Qaの切断加工位置T1を指定する。コンピュータ21は、所定時間に亘って、切断加工位置T1に集束イオンビームを照射することによって、試料片Qを試料Sから分離する。図13は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料Sおよび試料片Qの支持部Qaの切断加工位置T1を示す図である。
コンピュータ21は、試料Sとニードル18との導通を検出することによって、試料片Qが試料Sから切り離されたか否かを判定する。コンピュータ21は、切断加工の終了後、つまり切断加工位置T1での試料片Qと試料Sとの間の支持部Qaの切断が完了した後に、試料Sとニードル18との導通を検出した場合には、試料片Qが試料Sから切り離されていないと判定する。コンピュータ21は、試料片Qが試料Sから切り離されていないと判定した場合には、この試料片Qと試料Sとの分離が完了していないことを表示または音により報知して、これ以降の処理の実行を停止する。一方、コンピュータ21は、試料Sとニードル18との導通を検出しない場合には、試料片Qが試料Sから切り離されたと判定し、これ以降の処理の実行を継続する。
【0056】
次に、コンピュータ21は、ニードル退避の処理を行なう(ステップS14)。コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を所定距離(例えば、5μmなど)だけ鉛直方向上方(つまりZ方向の正方向)に上昇させる。図14は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を退避させた状態を示す図である。
次に、コンピュータ21は、ステージ退避の処理を行なう(ステップS15)。コンピュータ21は、図15に示すように、駆動機構13によってステージ12を所定距離(例えば、5mmなど)だけ鉛直方向下方(つまりZ方向の負方向)に下降させる。コンピュータ21は、ステージ12を所定距離だけ下降させた後に、ガス供給部17のノズルをステージ12の鉛直方向上方の待機位置に上昇させる。図15は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18に対してステージ12を退避させた状態を示す図である。
【0057】
(姿勢制御工程)
次に、コンピュータ21は、必要に応じて姿勢制御工程を実行する。コンピュータ21は、試料Sから取り出した試料片Qを回転させ、試料片ホルダPに試料片Qの上下または左右を変更した状態の試料片Qを固定する。コンピュータ21は、試料片Qにおける元の試料Sの表面が柱状部34の端面に垂直関係にあるか平行関係になるよう試料片Qを固定する。これによりコンピュータ21は、例えば後に実行する仕上げ加工に適した試料片Qの姿勢を確保するとともに、仕上げ加工時に生じるカーテン効果の影響などを低減することができる。コンピュータ21は、ニードル18を回転させる際には偏心補正を行なうことによって、試料片Qが実視野から外れないように回転を補正する。
さらに、コンピュータ21は、必要に応じて集束イオンビームの照射によって試料片Qの整形加工を行なう。特に、整形後の試料片Qは、柱状部34に接する端面が、柱状部34の端面とほぼ平行になるように整形されることが望ましい。コンピュータ21は、後述するテンプレート作成前に試料片Qの一部を切断するなどの整形加工を行なう。コンピュータ21は、この整形加工の加工位置をニードル18からの距離を基準として設定する。これによりコンピュータ21は、後述するテンプレートからのエッジ抽出を容易にするとともに、後に実行する仕上げ加工に適した試料片Qの形状を確保する。
【0058】
この姿勢制御工程において、先ず、コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を駆動し、試料片Qの姿勢が所定姿勢になるように、姿勢制御モードに対応した角度分だけニードル18を回転させる(ステップS16)。ここで姿勢制御モードとは、試料片Qを所定の姿勢に制御するモードであり、試料片Qに対し所定の角度でニードル18をアプローチし、試料片Qが接続されたニードル18を所定の角度に回転することにより試料片Qの姿勢を制御する。コンピュータ21は、ニードル18を回転させる際には偏心補正を行なう。図16図21は、この様子を示しており、複数(例えば、3つ)の異なるアプローチモードの各々において、試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。
図16および図17は、ニードル18の回転角度0°でのアプローチモードにおいて、試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。図16は、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。図17は、自動試料作製装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。コンピュータ21は、ニードル18の回転角度0°でのアプローチモードにおいては、ニードル18を回転させずに試料片Qを試料片ホルダPに移設するために適した姿勢状態を設定している。
図18および図19は、ニードル18の回転角度90°でのアプローチモードにおいて、試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。図18は、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を90°回転させた状態を示す図である。図19は、自動試料作製装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を90°回転させた状態を示す図である。コンピュータ21は、ニードル18の回転角度90°でのアプローチモードにおいては、ニードル18を90°だけ回転させた状態で試料片Qを試料片ホルダPに移設するために適した姿勢状態を設定している。
図20および図21は、ニードル18の回転角度180°でのアプローチモードにおいて、試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。図20は、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を180°回転させた状態を示す図である。図21は、自動試料作製装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を90°回転させた状態を示す図である。コンピュータ21は、ニードル18の回転角度180°でのアプローチモードにおいては、ニードル18を180°だけ回転させた状態で試料片Qを試料片ホルダPに移設するために適した姿勢状態を設定している。
なお、ニードル18と試料片Qとの相対的な接続姿勢は、予め上述した試料片ピックアップ工程においてニードル18を試料片Qに接続する際に、各アプローチモードに適した接続姿勢に設定されている。
【0059】
このステップS16において、コンピュータ21は、ニードル駆動機構19の回転機構(図示略)によってニードル18を中心軸周りに回転させたときの少なくとも3点以上の異なる角度でのニードル18の位置を用いて、ニードル18の偏芯軌跡を楕円近似する。例えば、コンピュータ21は、3点以上の異なる角度の各々でのニードル18の位置の変化を正弦波で演算することによって、ニードル18の偏芯軌跡を楕円または円に近似する。そして、コンピュータ21は、ニードル18の偏芯軌跡を用いて、所定角度ごとにニードル18の位置ずれを補正する。
【0060】
(ニードルおよび試料片のテンプレート作成工程)
次に、コンピュータ21は、ニードルおよび試料片のテンプレート作成工程を実行する。コンピュータ21は、相互に接続されたニードル18および試料片Qの背景に構造物がない場所にニードル18を移動させてからテンプレートを取得する。これによりコンピュータ21は、集束イオンビームおよび電子ビームの各々により得られる画像データからニードル18および試料片Qのエッジ(輪郭)を自動認識する際に、ニードル18および試料片Qの背景の構造物によってエッジを誤認することを防止する。コンピュータ21は、試料片Qが固定されたニードル18を必要に応じて回転させた姿勢状態(つまり、試料台33の柱状部(ピラー)34に試料片Qを接続する姿勢)のニードル18および試料片Qのテンプレートを作成する。これによりコンピュータ21は、ニードル18の回転に応じて、集束イオンビームおよび電子ビームの各々により得られる画像データから3次元的にニードル18および試料片Qのエッジ(輪郭)を認識する。なお、コンピュータ21は、ニードル18の回転角度0°でのアプローチモードにおいては、電子ビームを必要とせずに、集束イオンビームにより得られる画像データからニードル18および試料片Qのエッジ(輪郭)を認識してもよい。
コンピュータ21は、ニードル18および試料片Qの背景に構造物がない場所にニードル18を移動させることを駆動機構13またはニードル駆動機構19に指示した際に、実際に指示した場所にニードル18が来ていない場合には、観察倍率を低倍率にしてニードル18を探す。コンピュータ21は、見つからない場合にはニードル18の位置座標を初期化して、ニードル18を初期位置に移動させる。
【0061】
このテンプレート作成工程において、先ず、コンピュータ21は、試料片Qおよび試料片Qが接続されたニードル18の先端形状に対するテンプレートマッチング用のテンプレート(レファレンス画像データ)を取得する(ステップS17)。コンピュータ21は、照射位置を走査しながらニードル18に荷電粒子ビーム(集束イオンビームおよび電子ビームの各々)を照射する。コンピュータ21は、荷電粒子ビームの照射によってニードル18から放出される二次荷電粒子Rの複数の異なる平面内での位置分布を示す各画像データを取得する。コンピュータ21は、集束イオンビームの照射によってXY平面の画像データを取得し、電子ビームの照射によってXYZ平面(電子ビームの光軸に垂直な平面)の画像データを取得する。コンピュータ21は、2つの異なる方向から取得した各画像データをテンプレート(レファレンス画像データ)として記憶する。
コンピュータ21は、集束イオンビーム加工により実際に形成された形状の試料片Qおよび試料片Qが接続されたニードル18に対して実際に取得する画像データをレファレンス画像データとするので、試料片Qおよびニードル18の形状によらずに、精度の高いパターンマッチングを行うことができる。
なお、コンピュータ21は、各画像データを取得する際に、試料片Qおよび試料片Qが接続されたニードル18の形状の認識精度を増大させるために予め記憶した好適な倍率、輝度、コントラスト等の画像取得条件を用いる。
【0062】
次に、コンピュータ21は、ニードル退避の処理を行なう(ステップS18)。コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を所定距離だけ鉛直方向上方(つまりZ方向の正方向)に上昇させる。
【0063】
次に、コンピュータ21は、上述したステップS02において登録した試料片ホルダPの位置を視野領域内に含むように駆動機構13によってステージ12を移動させる(ステップS19)。図22および図23は、この様子を示している。図22は、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける柱状部34の試料片Qの取り付け位置Uを示す図である。図23は、自動試料作製装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける柱状部34の試料片Qの取り付け位置Uを示す図である。
次に、コンピュータ21は、駆動機構13によってステージ12を移動させて試料片ホルダPの水平位置を調整するとともに、試料片ホルダPの姿勢が所定姿勢になるように、姿勢制御モードに対応した角度分だけステージ12を回転させる(ステップS20)。そしてコンピュータ21は、ガス供給部17のノズル17aをステージ12の鉛直方向上方の待機位置から加工位置に向かい下降させる。
【0064】
(ピラーのテンプレートマッチング工程)
次に、コンピュータ21は、ピラーのテンプレートマッチング工程を実行する。コンピュータ21は、櫛歯形状の試料台33の複数の柱状部(ピラー)34の位置を正確に認識するために、テンプレートマッチングを実施する。コンピュータ21は、予めピラーのテンプレート作成工程において作成した柱状部(ピラー)34毎のテンプレートを用いて、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいてテンプレートマッチングを実施する。
なお、コンピュータ21は、ステージ12を移動させることを駆動機構13に指示した際に、実際にはステージ12が所定位置に移動しない場合には、ステージ12の位置座標を初期化して、ステージ12を初期位置に移動させる。
また、コンピュータ21は、ステージ12を移動した後に実施する柱状部(ピラー)34毎のテンプレートマッチングにおいて、問題が認められる柱状部(ピラー)34が存在する場合には、試料片Qの取付対象を、問題が認められる柱状部(ピラー)34から隣の柱状部(ピラー)34に変更する。
また、コンピュータ21は、テンプレートマッチングにおいて画像データの所定領域(少なくとも柱状部(ピラー)34を含む領域)からエッジ(輪郭)を抽出する際には、抽出したエッジを表示装置20に表示する。柱状部(ピラー)34は、図22および図23に示すようにシャープなエッジ(輪郭)を有するので、マッチング精度の高いテンプレートマッチングを行なうことができる。また、コンピュータ21は、テンプレートマッチングにおいて画像データの所定領域(少なくとも柱状部(ピラー)34を含む領域)からエッジ(輪郭)を抽出することができない場合には、画像データを再度取得する。
【0065】
このテンプレートマッチング工程において、コンピュータ21は、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により生成する各画像データを用いて、上述したステップS02において記憶した試料片Qの取り付け位置を認識する(ステップS21)。コンピュータ21は、電子ビームの照射により認識した取り付け位置と集束イオンビームの照射により認識した取り付け位置とが一致するように、駆動機構13によってステージ12を駆動する。コンピュータ21は、試料片Qの取り付け位置Uが視野領域の視野中心(加工位置)に一致するように、駆動機構13によってステージ12を駆動する。
【0066】
次に、コンピュータ21は、ニードル18に接続された試料片Qを試料片ホルダPに接触させる処理として、以下のステップS22~ステップS25の処理を行なう。
先ず、コンピュータ21は、ニードル18の位置を認識する(ステップS22)。コンピュータ21は、照射位置を走査しながらニードル18に荷電粒子ビームを照射することによってニードル18に流れる吸収電流を検出し、複数の異なる平面に対する吸収電流の2次元位置分布を示す吸収電流画像データを生成する。コンピュータ21は、集束イオンビームの照射によってXY平面の吸収電流画像データを取得し、電子ビームの照射によってXYZ平面(電子ビームの光軸に垂直な平面)の画像データを取得する。コンピュータ21は、2つの異なる平面に対して取得した各吸収電流画像データを用いて3次元空間でのニードル18の先端位置を検出する。
なお、コンピュータ21は、検出したニードル18の先端位置を用いて、駆動機構13によってステージ12を駆動して、ニードル18の先端位置を予め設定されている視野領域の中心位置(視野中心)に設定してもよい。
【0067】
(試料片マウント工程)
次に、コンピュータ21は、試料片マウント工程を実行する。先ず、コンピュータ21は、ニードル18に接続された試料片Qの位置を正確に認識するために、テンプレートマッチングを実施する。コンピュータ21は、予めニードルおよび試料片のテンプレート作成工程において作成した相互に接続されたニードル18および試料片Qのテンプレートを用いて、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいてテンプレートマッチングを実施する。
なお、コンピュータ21は、このテンプレートマッチングにおいて画像データの所定の領域(少なくともニードル18および試料片Qを含む領域)からエッジ(輪郭)を抽出する際には、抽出したエッジを表示装置20に表示する。また、コンピュータ21は、テンプレートマッチングにおいて画像データの所定の領域(少なくともニードル18および試料片Qを含む領域)からエッジ(輪郭)を抽出することができない場合には、画像データを再度取得する。
そして、コンピュータ21は、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいて、相互に接続されたニードル18および試料片Qのテンプレートと、試料片Qの取付対象である柱状部(ピラー)34のテンプレートとを用いたテンプレートマッチングに基づき、試料片Qと柱状部(ピラー)34との距離を計測する。
そして、コンピュータ21は、最終的にステージ12に平行な平面内での移動のみによって試料片Qを、試料片Qの取付対象である柱状部(ピラー)34に移設する。
【0068】
この試料片マウント工程において、先ず、コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動を実行する(ステップS23)。コンピュータ21は、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいて、ニードル18および試料片Qのテンプレートと、柱状部(ピラー)34のテンプレートとを用いたテンプレートマッチングに基づき、試料片Qと柱状部(ピラー)34との距離を計測する。コンピュータ21は、計測した相対距離に応じてニードル18を取り付け位置に向かい3次元空間内で移動させる。
【0069】
(試料片マウント検知工程)
次に、コンピュータ21は、試料片マウント工程を実行する。コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34に試料片Qをデポジションにより固定する工程において、柱状部(ピラー)34とニードル18と間の導通を検知した場合にデポジションを終了する。コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34と試料片Qとの間に隙間を空けてニードル18を停止する。コンピュータ21は、この隙間を1μm以下とし、好ましくは、隙間を100nm以上かつ200nm以下とする。この隙間が500nm以上の場合には、デポジション膜による柱状部(ピラー)34と試料片Qとの接続に要する時間が所定値以上に長くなる。この隙間が小さくなるほど、デポジション膜による柱状部(ピラー)34と試料片Qとの接続に要する時間が短くなる。
なお、コンピュータ21は、この隙間を設ける際に、一度、柱状部(ピラー)34に試料片Qを接触させてから、隙間を空けてもよい。また、コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34とニードル18と間の導通を検知する代わりに、柱状部(ピラー)34およびニードル18の吸収電流像を検知することによって隙間を設けてもよい。
コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34とニードル18との間の導通、または柱状部(ピラー)34およびニードル18の吸収電流像を検知することによって、柱状部(ピラー)34に試料片Qを移設した後において、試料片Qとニードル18との切り離しの有無を検知する。
なお、コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34とニードル18との間の導通を検知することができない場合には、柱状部(ピラー)34およびニードル18の吸収電流像を検知するように処理を切り替える。
また、コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34とニードル18との間の導通を検知することができない場合には、この試料片Qの移設を停止し、この試料片Qをニードル18から切り離し、後述するニードルトリミング工程を実行してもよい。
【0070】
この試料片マウント検知工程において、先ず、コンピュータ21は、ニードル18の移動を停止させる処理を行なう(ステップS24)。図24および図25は、この様子を示している。図24は、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける柱状部34の試料片Qの取り付け位置U周辺で移動停止したニードル18を示している。図25は、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける柱状部34の試料片Qの取り付け位置U周辺で移動停止したニードル18を示している。ここで、試料片Qの見かけ上の上端部は柱状部(ピラー)34の上端部に揃うように位置付けることで、後の工程で試料片Qを追加加工する場合に好都合である。図24に示すニードル18は、柱状部(ピラー)34の側面から試料片Qまでの距離L1を設けるように移動停止している。
【0071】
次に、コンピュータ21は、ニードル18に接続された試料片Qを柱状部(ピラー)34に接続する処理を行なう(ステップS25)。コンピュータ21は、試料片Qの取り付け位置が設定された柱状部(ピラー)34のエッジを含むように加工照射枠R2を設定する。コンピュータ21は、試料片Qおよび柱状部(ピラー)34の表面にガス供給部17によってガスを供給しつつ、所定時間に亘って、加工照射枠R2を含む照射領域に集束イオンビームを照射する。図26は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードル18に接続された試料片Qを柱状部(ピラー)34に接続するための加工照射枠R2を示す図である。
【0072】
なお、コンピュータ21は、ニードル18の吸収電流の変化を検出することによって、デポジション膜DM1による接続状態を判定してもよい。コンピュータ21は、ニードル18の吸収電流の変化に応じて試料片Qおよび柱状部(ピラー)34がデポジション膜DM1により接続されたと判定した場合に、所定時間の経過有無にかかわらずに、デポジション膜DM1の形成を停止してもよい。
【0073】
次に、コンピュータ21は、ニードル18と試料片Qとを接続するデポジション膜DM2を切断する処理を行なう(ステップS26)。上記図26は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードル18と試料片Qとを接続するデポジション膜DM2を切断するための切断加工位置T2を示す図である。コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34の側面から所定距離(つまり、柱状部(ピラー)34の側面から試料片Qまでの距離L1と、試料片Qの大きさL2との和)Lだけ離れた位置を切断加工位置T2に設定する。
コンピュータ21は、所定時間に亘って、切断加工位置T2に集束イオンビームを照射することによって、ニードル18を試料片Qから分離する。図27は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードル18が試料片Qから切り離された状態を示す図である。
なお、コンピュータ21は、ニードル18を試料片Qから分離する際に、ニードル18と試料片Qとを接続するデポジション膜DM2を切断する代わりに、試料片Qの一部を切断してもよい。コンピュータ21は、試料片Qの一部とともにデポジション膜DM2およびニードル18を試料片Q(つまり切断した一部以外の部位)から分離してもよい。
【0074】
コンピュータ21は、試料片ホルダPとニードル18との導通を検出することによって、ニードル18が試料片Qから切り離されたか否かを判定する。コンピュータ21は、切断加工の終了後、つまり切断加工位置T2でのニードル18と試料片Qとの間のデポジション膜の切断が完了した後に、試料片ホルダPとニードル18との導通を検出した場合には、ニードル18が試料台33から切り離されていないと判定する。コンピュータ21は、ニードル18が試料片ホルダPから切り離されていないと判定した場合には、このニードル18と試料片Qとの分離が完了していないことを表示または音により報知して、これ以降の処理の実行を停止する。一方、コンピュータ21は、試料片ホルダPとニードル18との導通を検出しない場合には、ニードル18が試料片Qから切り離されたと判定し、これ以降の処理の実行を継続する。
【0075】
次に、コンピュータ21は、ニードル退避の処理を行なう(ステップS27)。コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を所定距離(例えば、5μmなど)だけ鉛直方向上方(つまりZ方向の正方向)に上昇させる。図28および図29は、この様子を示しており、それぞれ、ニードル18を試料片Qから上方に退避させた状態を、本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得た画像(図28)であり、電子ビームにより得た画像(図29)である。
次に、コンピュータ21は、ステージ退避の処理を行なう(ステップS28)。コンピュータ21は、駆動機構13によってステージ12を所定距離(例えば、5mmなど)だけ鉛直方向下方(つまりZ方向の負方向)に下降させる。コンピュータ21は、ステージ12を所定距離だけ下降させた後に、ガス供給部17の先端のノズル17aを現状の位置から遠ざける。
【0076】
(ニードルトリミング工程)
次に、コンピュータ21は、ニードルトリミング工程を実行する。コンピュータ21は、自動試料サンプリングにおいてサンプリング後、つまりニードル18によって試料Sから分離および摘出した試料片Qをニードル18から切り離した後に、ニードル18のトリミングを実施する。これによりコンピュータ21は、試料Sから試料片Qを分離および摘出する際にニードル18を繰り返し使用する。コンピュータ21は、ニードル18に付着しているデポジション膜DM2を、集束イオンビームを用いたエッチング加工により除去する。コンピュータ21は、予めニードルのテンプレート作成工程において作成したニードル18のテンプレートを用いて、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいてテンプレートマッチングを実施する。コンピュータ21は、ニードル18の背景に構造物がない場所にニードル18を移動させてから、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射によって各画像データを取得する。
なお、コンピュータ21は、このテンプレートマッチングにおいて画像データの所定の領域(少なくともニードル18の先端を含む領域)からエッジ(輪郭)を抽出する際には、抽出したエッジを表示装置20に表示する。
また、コンピュータ21は、テンプレートマッチングの処理に異常が生じる場合には、ニードル18の位置座標を初期化して、ニードル18を初期位置に移動させた後に、ニードル18の背景に構造物がない場所にニードル18を移動させる。さらに、コンピュータ21は、ニードル18の位置座標を初期化した後であっても、テンプレートマッチングの処理に異常が生じる場合には、ニードル18の形状に変形などの異常が生じていると判断して、自動試料サンプリングを終了する。
コンピュータ21は、ニードルトリミング工程を自動試料サンプリングの毎回の実行毎に実施してもよく、ニードルトリミング工程を定期的に実施することによって、自動試料サンプリングの処理を安定化させることができる。ニードルトリミング工程を備えることにより、ニードル18を交換することなく繰り返し試料サンプリングすることができるため、同一のニードル18を用いて複数の試料片Qを連続してサンプリングすることができる。
【0077】
このニードルトリミング工程において、コンピュータ21は、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射によって生成する各画像データを用いて、ニードル18の先端位置を画像認識した後、ニードル18の先端を先鋭化加工する(ステップS29)。コンピュータ21は、ニードル駆動機構19の回転機構によってニードル18を中心軸周りに回転させて、複数の異なる特定の回転位置でエッチング加工を行なう。コンピュータ21は、ニードル18の先端形状の画像認識を、上述したステップS08で取得されたレファレンス画像によるパターンマッチング、またはエッジ検出などによって行なう。コンピュータ21は、ニードル18の先端形状の画像認識に応じて、ニードル18の先端形状が予め設定された理想的な所定形状になるように加工枠40を設定し、この加工枠40に応じてエッチング加工を行なう。加工枠40は、例えばニードル18の先端から基端側の部位などを直線的に近似することによって理想的な先端位置Cを設定する。図30および図31は、この様子を示しており、それぞれ本発明の実施形態に係る自動試料作製装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードル18の先端形状を示し(図30)、電子ビームにより得られる画像データにおけるニードル18の先端形状を示す(図31)。
コンピュータ21は、ニードル18の先端形状を予め設定された理想的な所定形状に一致させることにより、ニードル18を3次元空間内で駆動する際などにおいて、パターンマッチングによってニードル18を容易に認識することができ、ニードル18の3次元空間内の位置を精度良く検出することができる。
【0078】
次に、コンピュータ21は、ニードル駆動機構19によってニードル18を初期設定位置に移動する(ステップS30)。
以上により、自動試料サンプリングの動作が終了する。
コンピュータ21は、上述したステップ01からステップ30までを連続動作させることで、無人でサンプリング動作させることができる。従来のように、操作者の手動操作を施すことなく試料片Qを作製できる。
【0079】
上述したように、本発明の実施形態による自動試料作製装置10によれば、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの予め取得したテンプレートを基にして、各ビーム照射光学系14,15、各駆動機構13,19、およびガス供給部17を制御するので、試料片Qを試料片ホルダPに移設する動作を適正に自動化することができる。
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの背景に構造物が無い状態で荷電粒子ビームの照射によって取得した画像からテンプレートを作成するので、テンプレートの信頼性を向上させることができる。これにより、テンプレートを用いたテンプレートマッチングの精度を向上させることができ、テンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして試料片Qを精度良く試料片ホルダPに移設することができる。
さらに、MEMSプロセスにより形成される試料台33の柱状部(ピラー)34はシャープなエッジ(輪郭)を有するので、マッチング精度の高いテンプレートマッチングを行なうことができる。
【0080】
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの背景に構造物が無い状態となるように指示した際に、実際には指示通りになっていない場合には、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの位置を初期化するので、各駆動機構13,19を正常状態に復帰させることができる。
さらに、試料片Qを試料片ホルダPに移設する際の姿勢に応じたテンプレートを作成するので、移設時の位置精度を向上させることができる。
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qのテンプレートを用いたテンプレートマッチングに基づき相互間の距離を計測するので、移設時の位置精度を、より一層、向上させることができる。
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの各々の画像データにおける所定領域に対してエッジを抽出することができない場合に、画像データを再度取得するので、テンプレートを的確に作成することができる。
さらに、最終的にステージ12に平行な平面内での移動のみによって試料片Qを予め定めた試料片ホルダPの位置に移設するので、試料片Qの移設を適正に実施することができる。
さらに、テンプレートの作成前にニードル18に保持される試料片Qを整形加工するので、テンプレート作成時のエッジ抽出の精度を向上させることができるとともに、後に実行する仕上げ加工に適した試料片Qの形状を確保することができる。さらに、整形加工の位置をニードル18からの距離に応じて設定するので、精度良く整形加工を実施することができる。
さらに、試料片Qを保持するニードル18が所定姿勢になるように回転させる際に、偏芯補正によってニードル18の位置ずれを補正することができる。
【0081】
また、本発明の実施形態による自動試料作製装置10によれば、コンピュータ21は、試料片Qが形成される際のレファレンスマークRefに対するニードル18の相対位置を検出することによって、試料片Qに対するニードル18の相対位置関係を把握することができる。コンピュータ21は、試料片Qの位置に対するニードル18の相対位置を逐次検出することによって、ニードル18を3次元空間内で適切に(つまり、他の部材や機器などに接触することなしに)駆動することができる。
さらに、コンピュータ21は、少なくとも2つの異なる方向から取得した画像データを用いることによって、ニードル18の3次元空間内の位置を精度良く把握することができる。これによりコンピュータ21は、ニードル18を3次元的に適切に駆動することができる。
【0082】
さらに、コンピュータ21は、予めニードル18を移動させる直前に実際に生成される画像データをテンプレート(レファレンス画像データ)とするので、ニードル18の形状によらずにマッチング精度の高いテンプレートマッチングを行なうことができる。これによりコンピュータ21は、ニードル18の3次元空間内の位置を精度良く把握することができ、ニードル18を3次元空間内で適切に駆動することができる。さらに、コンピュータ21は、ステージ12を退避させ、ニードル18の背景に複雑な構造物がない状態で各画像データを取得するので、バックグラウンドの影響を排除してニードル18の形状が明確に把握できるテンプレート(レファレンス画像データ)を取得することができる。
【0083】
さらに、コンピュータ21は、ニードル18と試料片Qとを接触させずにデポジション膜により接続するので、後の工程でニードル18と試料片Qとが分離される際にニードル18が切断されてしまうことを防止することができる。さらに、ニードル18の振動が発生する場合であっても、この振動が試料片Qに伝達されることを抑制することができる。さらに、試料Sのクリープ現象による試料片Qの移動が発生する場合であっても、ニードル18と試料片Qとの間に過剰なひずみが生じることを抑制することができる。
【0084】
さらに、ガス供給部17は、プラチナまたはタングステンなどを含有したデポジション用ガスを供給するので、膜厚が薄い緻密なデポジション膜を形成することができる。これによりガス供給部17は、後の工程でニードル18と試料片Qとがエッチング加工によって切断される場合であっても、膜厚が薄いデポジション膜によりプロセス効率を向上させることができる。
【0085】
さらに、コンピュータ21は、集束イオンビームの照射によるエッチング加工によって試料Sと試料片Qとの接続を切断した場合に、実際に切断が完了しているか否かを、試料Sとニードル18との間の導通有無を検出することによって確認することができる。
さらに、コンピュータ21は、試料Sと試料片Qとの実際の分離が完了していないことを報知するので、この工程に続いて自動的に実行される一連の工程の実行が中断される場合であっても、この中断の原因を操作者に容易に認識させることができる。
さらに、コンピュータ21は、試料Sとニードル18との間の導通が検出された場合には、試料Sと試料片Qとの接続切断が実際には完了していないと判断して、この工程に続くニードル18の退避などの駆動に備えて、試料片Qとニードル18との接続を切断する。これによりコンピュータ21は、ニードル18の駆動に伴う試料Sの位置ずれまたはニードル18の破損などの不具合の発生を防止することができる。
さらに、コンピュータ21は、試料Sとニードル18との間の導通有無を検出して、試料Sと試料片Qとの接続切断が実際に完了していることを確認してからニードル18を駆動することができる。これによりコンピュータ21は、ニードル18の駆動に伴う試料Sの位置ずれまたはニードル18の破損などの不具合の発生を防止することができる。
【0086】
さらに、コンピュータ21は、試料片Qが接続されたニードル18に対して、実際の画像データをテンプレート(レファレンス画像データ)とするので、試料片Qと接続されたニードル18の形状によらずにマッチング精度の高いテンプレートマッチングを行なうことができる。これによりコンピュータ21は、試料片Qと接続されたニードル18の3次元空間内の位置を精度良く把握することができ、ニードル18および試料片Qを3次元空間内で適切に駆動することができる。
【0087】
さらに、コンピュータ21は、既知である試料台33のテンプレートを用いて試料台33を構成する複数の柱状部34の位置を抽出するので、適正な状態の試料台33が存在するか否かを、ニードル18の駆動に先立って確認することができる。
さらに、コンピュータ21は、試料片Qが接続されたニードル18が照射領域内に到達する前後における吸収電流の変化に応じて、ニードル18および試料片Qが移動目標位置の近傍に到達したことを間接的に精度良く把握することができる。これによりコンピュータ21は、ニードル18および試料片Qを移動目標位置に存在する試料台33などの他の部材に接触させること無しに停止させることができ、接触に起因する損傷などの不具合が発生することを防止することができる。
【0088】
さらに、コンピュータ21は、試料片Qおよび試料台33をデポジション膜により接続する場合に試料台33とニードル18との間の導通有無を検出するので、実際に試料片Qおよび試料台33の接続が完了したか否かを精度良く確認することができる。
さらに、コンピュータ21は、試料台33とニードル18との間の導通有無を検出して、試料台33と試料片Qとの接続が実際に完了していることを確認してから試料片Qとニードル18との接続を切断することができる。
【0089】
さらに、コンピュータ21は、実際のニードル18の形状を理想的なレファレンス形状に一致させることにより、ニードル18を3次元空間内で駆動する際などにおいて、パターンマッチングによってニードル18を容易に認識することができ、ニードル18の3次元空間内の位置を精度良く検出することができる。
【0090】
以下、上述した実施形態の第1の変形例について説明する。
上述した実施形態において、ニードル駆動機構19はステージ12と一体に設けられるとしたが、これに限定されない。ニードル駆動機構19は、ステージ12と独立に設けられてもよい。ニードル駆動機構19は、例えば試料室11などに固定されることによって、ステージ12のチルト駆動などから独立して設けられてもよい。
【0091】
以下、上述した実施形態の第2の変形例について説明する。
上述した実施形態において、集束イオンビーム照射光学系14は光軸を鉛直方向とし、電子ビーム照射光学系15は光軸を鉛直に対して傾斜した方向としたが、これに限定されない。例えば、集束イオンビーム照射光学系14は光軸を鉛直に対して傾斜した方向とし、電子ビーム照射光学系15は光軸を鉛直方向としてもよい。
【0092】
以下、上述した実施形態の第3の変形例について説明する。
上述した実施形態において、荷電粒子ビーム照射光学系として集束イオンビーム照射光学系14と電子ビーム照射光学系15の2種のビームが照射できる構成としたが、これに限定されない。例えば、電子ビーム照射光学系15が無く、鉛直方向に設置した集束イオンビーム照射光学系14のみの構成としてもよい。
上述した実施形態では、上述のいくつかのステップにおいて、試料片ホルダP、ニードル18、試料片Q等に電子ビームと集束イオンビームを異なる方向から照射して、電子ビームによる画像と集束イオンビームによる画像を取得していた。上述した実施形態では、電子ビームおよび集束イオンビームの画像に基づき、試料片ホルダP、ニードル18、試料片Q等の位置および位置関係を把握していたが、集束イオンビームの画像のみで行なう。
例えば、ステップS22において、試料片ホルダPと試料片Qとの位置関係を把握する場合には、ステージ12の傾斜が水平の場合と、或る特定の傾斜角で水平から傾斜する場合とにおいて、試料片ホルダPと試料片Qの両者が同一視野に入るように集束イオンビームによる画像を取得する。ステージ12の傾斜が水平の場合と、或る特定の傾斜角で水平から傾斜する場合との両画像から、試料片ホルダPと試料片Qの三次元的な位置関係が把握できる。上述したように、ニードル駆動機構19はステージ12と一体で水平垂直移動、傾斜ができるため、ステージ12が水平、傾斜に関わらず、試料片ホルダPと試料片Qの相対位置関係は保持される。そのため、荷電粒子ビーム照射光学系が集束イオンビーム照射光学系14の1本だけであっても、試料片Qを異なる2方向から観察、加工することができる。
同様に、ステップS02における試料片ホルダPの画像データの登録、ステップS07におけるニードル位置の認識、ステップS08におけるニードルのテンプレート(レファレンス画像)の取得、ステップS17における試料片Qが接続したニードル18のレファレンス画像の取得、ステップS21における試料片Qの取り付け位置の認識、およびステップS25におけるニードル移動停止においても同様に行なえばよい。
また、ステップS25における試料片Qと試料片ホルダPとの接続おいても、ステージ12が水平状態において試料片ホルダPと試料片Qの上端面からデポジション膜を形成して接続し、さらに、ステージ12を傾斜させて異なる方向からデポジション膜が形成でき、確実な接続ができる。
【0093】
以下、上述した実施形態の第4の変形例について説明する。
上述した実施形態において、コンピュータ21は、自動試料サンプリングの動作として、ステップS01からステップS30の一連の処理を自動的に実行するとしたが、これに限定されない。コンピュータ21は、ステップS01からステップS30のうちの少なくとも何れか1つの処理を、操作者の手動操作によって実行するように切り替えてもよい。
また、コンピュータ21は、複数の試料片Qに対して自動試料サンプリングの動作を実行する場合に、試料Sに複数の試料片Qの何れか1つが形成される毎に、この1つの試料片Qに対して自動試料サンプリングの動作を実行してもよい。また、コンピュータ21は、試料Sに複数の試料片Qの全てが形成された後に、複数の試料片Qの各々に対して自動試料サンプリングの動作を実行してもよい。
1つの試料片Qが形成される毎に自動試料サンプリングを実行する場合には、レファレンスマークRefに基づいて、試料片Qの形成およびニードル18の移動を、ステージ12の移動(例えば、ステージ12の傾斜など)無しに行うことができる。ステージ12を移動させずに試料片Qの形成およびニードル18の移動を行うので、位置ずれ及びレファレンスマークRefの認識ミスの発生を防ぐことができる。さらに、自動試料サンプリングが異常などによって中断される場合であっても、サンプリングされない試料片Qが生じることを防止することができる。
【0094】
以下、上述した実施形態の第5の変形例について説明する。
上述した実施形態において、コンピュータ21は、既知である柱状部(ピラー)34のテンプレートを用いて柱状部(ピラー)34の位置を抽出するとしたが、このテンプレートとして、予め実際の柱状部(ピラー)34の画像データから作成するレファレンスパターンを用いてもよい。また、コンピュータ21は、試料台33を形成する自動加工の実行時に作成したパターンを、テンプレートとしてもよい。
また、上述した実施形態において、コンピュータ21は、柱状部(ピラー)34の作成時に荷電粒子ビームの照射によって形成されるレファレンスマークRefを用いて、試料台33の位置に対するニードル18の位置の相対関係を把握してもよい。コンピュータ21は、試料台33の位置に対するニードル18の相対位置を逐次検出することによって、ニードル18を3次元空間内で適切に(つまり、他の部材や機器などに接触することなしに)駆動することができる。
【0095】
以下、上述した実施形態の第6の変形例について説明する。
上述した実施形態において、コンピュータ21は、ニードル18に接続された試料片Qを取り付け位置に向かい移動させた後に、試料片Qおよび試料台33の表面にガス供給部17によってガスを供給するとしたが、これに限定されない。
コンピュータ21は、ニードル18に接続された試料片Qが取り付け位置周辺の目標位置に到達するのに先立って、照射領域にガス供給部17によってガスを供給してもよい。
コンピュータ21は、ニードル18に接続された試料片Qが取り付け位置に向かい移動している状態で試料片Qにデポジション膜を形成することができ、試料片Qが集束イオンビームによってエッチング加工されてしまうことを防止することができる。さらに、コンピュータ21は、試料片Qが取り付け位置周辺の目標位置に到達した時点で直ちに試料片Qおよび試料台33をデポジション膜により接続することができる。
【0096】
以下、上述した実施形態の第7の変形例について説明する。
上述した実施形態において、コンピュータ21は、ニードル18を中心軸周りに回転させつつ、特定の回転位置においてエッチング加工を行なうとしたが、これに限定されない。
コンピュータ21は、駆動機構13のチルト機構13bによるステージ12のチルト(X軸またはY軸周りの回転)に応じて、複数の異なる方向からの集束イオンビームの照射によってエッチング加工を行なってもよい。
【0097】
以下、上述した実施形態の第8の変形例について説明する。
上述した実施形態において、コンピュータ21は、自動試料サンプリングの動作において、毎回、ニードル18の先端を先鋭化加工するとしたが、これに限定されない。
コンピュータ21は、自動試料サンプリングの動作が繰り返し実行される場合の適宜のタイミング、例えば繰り返し実行の回数が所定回数毎などにおいて、ニードル18の先鋭化加工を実行してもよい。
また、上述した実施形態において、コンピュータ21は、ステージ退避の処理(ステップS28)の実行後にニードルトリミング工程を実行するとしたが、これに限定されない。
コンピュータ21は、ニードル18によって最初に試料片Qを移設するよりも前のタイミング、例えばニードル18のテンプレート作成工程(ステップS08)よりも前などにおいて、ニードル18の先端形状を画像認識して、先端の先鋭化が必要な場合にニードル18の先端を先鋭化加工してもよい。
【0098】
以下、上述した実施形態の第9の変形例について説明する。
上述した実施形態において、試料片Qを試料片ホルダPに接続させるステップS22からステップS25までの処理を次のように行なってもよい。つまり、試料片ホルダPの柱状部34と試料片Qと画像から、それらの位置関係(互いの距離)を求め、それらの距離が目的の値となるようにニードル駆動機構19を動作させる処理である。
ステップ22おいて、コンピュータ21は、電子ビーム及び集束イオンビームによるニードル18、試料片Q、柱状部34の二次粒子画像データまたは吸収電流画像データをからそれらの位置関係を認識する。図32および図33は、柱状部34と試料片Qの位置関係を模式的に示した図であり、図32は集束イオンビーム照射によって、図33は電子ビーム照射によって得た画像を基にしている。これらの図から柱状部34と試料片Qの相対位置関係を計測する。図32のように柱状部34の一角を原点34aとして直交3軸座標(ステージ12の3軸座標とは異なる座標)を定め、柱状部34の原点34aと試料片Qの基準点Qcの距離として、図32から距離DX、DYが求まる。
一方、図33からは距離DZが求まる。但し、電子ビーム光学軸と集束イオンビーム軸(鉛直)に対して角度θだけ傾斜しているので、柱状部34と試料片QのZ軸方向の実際の距離はDZ/sinθとなる。
次に、柱状部34に対する試料片Qの移動停止位置関係を図32図33で説明する。
柱状部34の上端面34bと試料片Qの上端面Qbを同一面とし、かつ、柱状部34の側面と試料片Qの断面が同一面となり、しかも、柱状部34と試料片Qとの間には約0.5μmの空隙がある位置関係とする。つまり、DX=0、DY=0.5μm、DZ=0となるように、ニードル駆動機構19を動作させることで、目標とする停止位置に試料片Qを到達させることができる。
【0099】
以下、上述した実施形態の第10の変形例について説明する。
上述した実施形態におけるステップ23では、ニードル18を画像から計測した柱状部34と試料片Qの間隔が目標の値となるようにニードル駆動機構19を動作させた。
上述した実施形態において、試料片Qを試料片ホルダPに接続させるステップS22からステップS25までの処理を次のように行なってもよい。つまり、試料片ホルダPの柱状部34への試料片Qの取り付け位置をテンプレートとして予め定めておき、その位置に試料片Qの画像をパターンマッチングさせて、ニードル駆動機構19を動作させる処理である。
柱状部34に対する試料片Qの移動停止位置関係を示すテンプレートを説明する。柱状部34の上端面34bと試料片Qの上端面Qbを同一面とし、かつ、柱状部34の側面と試料片Qの断面が同一面となり、しかも、柱状部34と試料片Qとの間には約0.5μmの空隙がある位置関係である。このようなテンプレートは、実際の試料片ホルダPや試料片Qを固着したニードル18の二次粒子画像や吸収電流画像データから輪郭(エッジ)部を抽出して線画を作成してもよいし、設計図面から線画として作成してもよい。
作成したテンプレートのうち柱状部34をリアルタイムでの電子ビーム及び集束イオンビームによる柱状部34の画像に重ねて表示し、ニードル駆動機構19に動作の指示を出すことで、試料片Qはテンプレート上の試料片Qの停止位置に向かって移動する(ステップ23,24)。リアルタイムでの電子ビーム及び集束イオンビームによる画像が、予め定めたテンプレート上の試料片Qの停止位置に重なったことを確認して、ニードル駆動機構19の停止処理を行なう(ステップ25)。このようにして、試料片Qを予め定めた柱状部34に対する停止位置関係に正確に移動させることができる。
【0100】
次に、上述のステップ22から25における、別の形態例について説明する。
上述した実施形態におけるステップ23ではニードル18を移動させた。もし、ステップ23を終えた試料片Qが、目的位置から大きくずれた位置関係にある場合、次の動作を行なってもよい。
ステップ22において、移動前の試料片Qの位置は、各柱状部34の原点とした直交3軸座標系において、Y>0、Z>0の領域に在ることが望ましい。これは、ニードル18の移動中に試料片Qが柱状部34への衝突の危険性が極めて少ないためで、ニードル駆動機構19のX、Y、Z駆動部を同時に動作させて、安全に迅速に目的位置に到達できる。一方、移動前の試料片Qの位置がY<0の領域にある場合、試料片Qを停止位置に向けてニードル駆動機構19のX、Y、Z駆動部を同時に動作させると、柱状部34に衝突する危険性が大きい。このため、ステップ22で試料片QがY<0の領域にある場合、ニードル18は柱状部34を避けた経路で目標位置に到達させる。具体的には、まず、試料片Qをニードル駆動機構19のY軸のみを駆動させ、Y>0の領域まで移動させて所定の位置に到達させ、次に、X、Y、Z駆動部の同時動作によって最終的な停止位置に向けて移動する。このようなステップによって、試料片Qを柱状部34に衝突することなく、安全に迅速に移動させることができる。
【0101】
なお、上述した実施形態では、コンピュータ21は、ソフトウェア機能部、またはLSIなどのハードウェア機能部であってもよい。
【0102】
なお、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、コンピュータ21は、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの予め取得したテンプレートを基にして、各ビーム照射光学系14,15、各駆動機構13,19、およびガス供給部17を制御するので、試料片Qを試料片ホルダPに移設する動作を適正に自動化する、ことが可能な自動試料作製装置10を提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…荷電粒子ビーム装置、11…試料室、12…ステージ(試料ステージ)、13…駆動機構、14…集束イオンビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、15…電子ビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、16…検出器(二次粒子検出器)、17…ガス供給部、18…ニードル、19…ニードル駆動機構、20…表示装置、21…コンピュータ、22…入力デバイス、33…試料台、34…柱状部、P…試料片ホルダ、Q…試料片、R…二次荷電粒子、S…試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
【手続補正書】
【提出日】2022-01-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射光学系と、
前記集束イオンビームと異なる方向から電子ビームを照射する電子ビーム照射光学系と、
料を載置し、互いに直交するX軸およびY軸と、前記X軸およびY軸に直交する鉛直方向のZ軸と、に沿って平行に移動可能な試料ステージと、
前記試料から分離および摘出した試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設された試料片ホルダを保持する試料片ホルダ固定台と
前記集束イオンビームまたは/および前記電子ビームを照射対象に照射することにより前記照射対象から発生する二次荷電粒子を検出する検出器と、
前記集束イオンビームおよび前記電子ビームの前記試料片移設手段への照射により生成される前記集束イオンビームおよび前記電子ビームの画像データを用いた画像認識により前記試料片移設手段の位置を認識し、前記試料片移設手段を駆動するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、前記試料片移設手段を駆動し、鉛直方向を含む移動の後に、XY平面内での移動のみにより前記試料片を前記試料片ホルダに移設すること、
を特徴とする試料作製装置。
【請求項2】
前記画像データは、XY平面の画像データを含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の試料作製装置。
【請求項3】
デポジション膜を形成するガスを供給するガス供給部を備え、
前記コンピュータは、前記試料片移設手段に保持された前記試料片を、前記試料片と前記試料片ホルダとの間に空隙を設けて接近させた後、前記試料片と前記試料片ホルダとを前記デポジション膜で接続すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の試料作製装置。
【請求項4】
前記集束イオンビーム照射光学系は、光軸が鉛直方向に平行に配置されること、
を特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の試料作製装置。
【請求項5】
前記電子ビーム照射光学系は、光軸が鉛直方向に平行に配置されること、
を特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の試料作製装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、試料作製装置に関する。