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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034820
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220225BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20220225BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02M3/155 H
H02M3/28 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138698
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514007047
【氏名又は名称】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】井本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃則
(72)【発明者】
【氏名】上田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】大沼 喜也
(72)【発明者】
【氏名】米田 昇平
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA07
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006DA02
5H730AA15
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB27
5H730CC01
5H730CC04
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE13
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供する。
【解決手段】充電器が、交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、整流器のカソード端子に接続する第1の端子と、整流器のアノード端子に接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、DC/DCコンバータのスイッチと第1のスイッチと第2のスイッチを制御する制御部と、を備え、制御部は、交流電源から出力される電力とコンデンサから出力される電力との和が一定になるように、DC/DCコンバータと第1のスイッチと第2のスイッチとを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、
前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、
第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部と、を有し、
前記第1のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、
前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、
前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記インダクタとの間に接続され、
前記第2のスイッチは、前記インダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、
前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、充電器。
【請求項2】
前記制御部は、前記コンデンサにかかる電圧が前記整流器の出力電圧よりも大きくなるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも高い期間である充電期間において、前記交流電源から出力される電力の一部を前記コンデンサに充電するように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記コンデンサに充電された電力を放電するように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1または2に記載の充電器。
【請求項4】
前記制御部は、前記放電期間において、前記第2のスイッチをオフの状態に保つ、請求項3に記載の充電器。
【請求項5】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータの変圧器の漏れインダクタの高周波電流の波形が非対称になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチを制御する、請求項4に記載の充電器。
【請求項6】
前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである、請求項1から5のいずれか一項に記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスであると考えられている二酸化炭素の排出量を削減するために、電気自動車(Electric Vehicle(EV))やプラグインハイブリッドカー(Plug-in Hybrid Electric Vehicle(PHEV))の普及が進んでいる。これらの自動車は、家庭用交流電源によるバッテリの充電を可能とするための充電器を備えている。
【0003】
例えば、非特許文献1、2には、整流器と絶縁型DC/DCコンバータを有する充電器が開示されている。非特許文献1に開示された充電器では、交流電源による電力の脈動を吸収するために、整流器とDC/DCコンバータの間に、大容量コンデンサを有する力率改善回路(Power factor Correction(PFC))が設けられている。一方、非特許文献2に開示された充電器では、整流器とDC/DCコンバータの間には、小容量のコンデンサが設けられているのみであるため、このコンデンサでは、交流電源による電力の脈動を吸収することができず、脈動した電力がバッテリに送られる。
【0004】
また、非特許文献3には、整流器を持たない、絶縁型AC/DCコンバータのみを有する充電器が開示されている。非特許文献3に開示された充電器でも、脈動した電力がバッテリに送られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Yilmaz, P.T. Krein, “Review of Battery Charger Topologies, Charging Power Levels, and Infrastructure for Plug-In Electric and Hybrid Vehicles", IEEE Trans. on PELS, Vol. 28, No.5(2013)
【非特許文献2】J. Lu, Q. Tian, K. Bai, A. Brown and M. McAmmond, “An indirect matrix converter based 97%-efficiency on-board level 2 battery charger using E-mode GaN HEMTs," 2015 IEEE 3rd Workshop on Wide Bandgap Power Devices and Applications (WiPDA), Blacksburg, VA, 2015, pp. 351-358.
【非特許文献3】F. Jauch and J. Biela, “Single-phase single-stage bidirectional isolated ZVS AC-DC converter with PFC," 2012 15th International Power Electron. and Motion Control Conf. (EPE/PEMC), Novi Sad, 2012, pp. LS5d.1-1-LS5d.1-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車に搭載する充電器には、小型化の要求が存在する。充電器を小型化するためには、コンデンサやインダクタ、変圧器などの受動素子を小型化する必要がある。
【0007】
しかしながら、非特許文献1に開示された充電器は、交流電源による電力の脈動を吸収するために、大容量コンデンサ付きのPFCを有している。PFCのインダクタや、DC/DCコンバータの変圧器は、高周波動作を行うことで、小型化することが可能であるが、PFCのコンデンサは、交流電源による電力の脈動を吸収するだけの容量が必要であり、小型化が困難である。
【0008】
また、非特許文献2に開示された充電器では、DC/DCコンバータには、脈動を有した電力が入力される。このため、DC/DCコンバータの変圧器は、この脈動も考慮する必要があり、小型化が困難である。
【0009】
また、非特許文献3に開示された充電器では、AC/DCコンバータには、脈動を有した電力が入力される。このため、AC/DCコンバータの変圧器は、この脈動も考慮する必要があり、小型化が困難である。
【0010】
そこで、本発明は、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の充電器は、交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記インダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記インダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する。
【0012】
前記制御部は、前記コンデンサにかかる電圧が前記整流器の出力電圧よりも大きくなるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御するようにしても良い。
【0013】
前記制御部は、前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも高い期間である充電期間において、前記交流電源から出力される電力の一部を前記コンデンサに充電するように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記コンデンサに充電された電力を放電するように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御するようにしても良い。
【0014】
前記制御部は、前記放電期間において、前記第2のスイッチをオフの状態に保つようにしても良い。
【0015】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータの変圧器の漏れインダクタの高周波電流の波形が非対称になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチを制御するようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。
図2】交流電源から出力される瞬時電力pとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pとの関係を示す図である。
図3】モード1での電流の流れを示す図である。
図4】モード2での電流の流れを示す図である。
図5】モード3での電流の流れを示す図である。
図6】モード4での電流の流れを示す図である。
図7】モード5での電流の流れを示す図である。
図8】モード6での電流の流れを示す図である。
図9】モード7での電流の流れを示す図である。
図10】放電期間における動作波形の一例を示す図である。
図11図10の動作波形に等価な方形波の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<充電器100>
図1は、本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。充電器100は、整流器110と、DC/DCコンバータ120と、電力脈動吸収回路130と、制御部140と、を有する。DC/DCコンバータ120は、例えば、図1に示すように、DAB(Dual Active Bridge)コンバータ120である。
【0019】
整流器110は、DC/DCコンバータ120に接続されたカソード端子111、アノード端子112と、交流電源200に接続するための2つの入力端子113と、を有する。整流器110は、例えば、図1に示すように、4つのダイオードから成るブリッジダイオード整流器であり、交流電源に接続した2つの入力端子111間から入力された交流電流を、直流電流に変換し、カソード端子111から出力する。整流器110は、図1に示すように、インダクタとコンデンサを有するフィルタFを介して、交流電源200と接続されるようにしても良い。
【0020】
DC/DCコンバータ120は、整流器110のカソード端子111に接続した第1の端子121と、整流器110のアノード端子112に接続した第2の端子122と、バッテリ300の正極に接続するための第3の端子123と、バッテリ300の負極に接続するための第4の端子124と、を有する。DC/DCコンバータ120は、変圧器Trと、変圧器Trを挟んで、入力端側(1次側)に4つのスイッチ、第1のスイッチS21、第2のスイッチS22、第3のスイッチS23、第4のスイッチS24を有し、出力側端側(2次側)に4つのスイッチ、第5のスイッチS25、第6のスイッチS26、第7のスイッチS27、第8のスイッチS28を有する。8つのスイッチS21~S28の各々は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETは、図1に示すように、スナバコンデンサを有するようにしても良い。
【0021】
DC/DCコンバータ120は、変圧器Trの1次側にインダクタLを有する。このインダクタLは、例えば、変圧器Trの漏れインダクタである。
【0022】
また、DC/DCコンバータ120の第3の端子123と第4の端子124との間には、直流コンデンサCdcが接続されている。本実施形態に係る充電器100では、直流コンデンサCdcにかかる電圧Vdcが、バッテリ300に出力される。
【0023】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第1のスイッチS31と、第2のスイッチS32と、を有する。
【0024】
電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の一方との間に接続され、電力脈動吸収回路130の第2のダイオードD32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の他方との間に接続されている。このとき、電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31、第2のダイオードD32の各々は、整流器110の入力端子113からインダクタLbへの方向が順方向となるように、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の入力端子113の間に接続されている。このため、整流器110の入力端子113に交流電源200が接続されたとしても、電力脈動吸収回路130のインダクタLbには、直流電流が入力される。
【0025】
電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31は、整流器110のカソード端子111とDC/DCコンバータ120の第1の端子121とを接続する第1のラインLHと、整流器110のアノード端子112とDC/DCコンバータ120の第2の端子122とを接続する第2のラインLLと、の間に、直列に接続されている。バッファコンデンサCbufは、第2のラインLL側に配置され、第1のスイッチ31は、第1のラインLH側に配置されている。第1のスイッチS31は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが、第1のラインLHに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインがバッファコンデンサに接続するようにすると良い。
【0026】
電力脈動吸収回路130の第3のダイオードD33は、電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31とを接続するラインと電力脈動吸収回路130のインダクタLbとの間に、インダクタLbからこのラインへの方向が順方向になるように接続されている。
【0027】
電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインと、第2のラインLLと、の間に接続されている。第2のスイッチS32は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインが電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが第2のラインLLに接続するようにすると良い。
【0028】
制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、32のスイッチングを制御する。
【0029】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第2のスイッチS32と、を有しているため、力率改善回路(PFC)として機能することが可能である。このため、本実施形態では、下記のような正弦波電圧v、正弦波電流iが、交流電源200から充電器100に、入力されるように制御することが可能である。
【数1】
このとき、交流電源200から出力される瞬時電力pは、下記のように、平均電力P(=V)と脈動部分prip(t)(=-Vcos2ωt)の和となり、図2の実線に示すように、平均電力P(図2の破線)を挟んで、交流の角周波数の2倍の角周波数で脈動する。
【数2】
ここで、Vは、電源電圧の実効値であり、Iは、電源電流の実効値である。
【0030】
そこで、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31~32のスイッチングを制御することで、電力脈動吸収回路130で交流電源による電力の脈動を吸収し、DC/DCコンバータ120に入力される電力を一定にする。
【0031】
このとき、本実施形態に係る充電器100では、交流電源200から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも高いとき(p>P)と、交流電源200から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも低いとき(p<P)と、で制御を変える。
【0032】
交流電源から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも高いとき(p>P)は、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~28と電力脈動吸収回路130の2つのスイッチS31、32のスイッチングを制御することにより、交流電源200から出力される瞬時電力pのうちの脈動部分pripを電力脈動吸収回路130のインダクタLbを介してバッファコンデンサCbufに充電することで、交流電源から出力された電力のうちの平均電力PのみがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも高い期間は、バッファコンデンサCbufが充電される期間(充電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pは、図2の一点鎖線に示すように、マイナスになる。
【0033】
一方、交流電源から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも低いとき(p<P)は、電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、オフの状態に保ちつつ、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御することにより、バッファコンデンサCbufを第1のスイッチS31を介して積極的に放電し、交流電源200から出力される瞬時電力pと平均電力Pの差である脈動部分pripを補償することで、平均電力PがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも低い期間は、バッファコンデンサCbufが放電する期間(放電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pは、図2の一点鎖線に示すように、プラスになる。
【0034】
つまり、本実施形態では、制御部140は、交流電源200から出力される瞬時電力pとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pとの和が一定になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31~32のスイッチングを制御する。
【0035】
このように、本実施形態では、放電期間において、積極的に、バッファコンデンサCbufを放電している。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに蓄えられる電力量(つまり、バッファコンデンサCbufの容量)を抑えることが可能であり、バッファコンデンサCbufの小型化が可能である。特に、本実施形態に係るバッファコンデンサCbufは、非特許文献1のPFCのコンデンサに比べ、小容量で良く、小型化が可能である。
【0036】
また、本実施形態では、第2のスイッチS32は、充電期間だけ作動する。このため、本実施形態では、インダクタLbに蓄えられる電力量(つまり、インダクタLbのインダクタンス)を抑えることが可能であり、インダクタLbの小型化が可能である。特に、本実施形態に係るインダクタLbは、非特許文献1のPFCのインダクタに比べ、小さなインダクタンスで良く、小型化が可能である。
【0037】
また、本実施形態では、DC/DCコンバータ120に入力される電力には脈動がない。このため、本実施形態では、DC/DCコンバータ120の変圧器Tr、直流コンデンサCdcの小型化が可能である。特に、本実施形態に係る変圧器Tr、直流コンデンサCdcは、非特許文献2、3の変圧器、直流コンデンサに比べ、小型化が可能である。
【0038】
以上のように、本実施形態では、コンデンサやインダクタ、変圧器などの受動素子を小型化することが可能である。このため、本実施形態では、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することが可能である。
【0039】
<スイッチングモードと動作波形>
図3~9は、スイッチングモードの一例を示す図であり、図10は、放電期間における動作波形の一例を示す図である。図3~9に示したスイッチングモードは、7つのモード(モード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード6、モード7)を含み、図10に示した動作波形は、モード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングすることで得られる動作波形である。本実施形態では、放電期間中に、電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は動作しないため、インダクタLbを介した電力伝送を考慮する必要がない。加えて、充電回路のダイオードD31およびD32により、充電回路の動作は放電回路およびDC/DCコンバータに影響を与えることなく実現される。そこで、図3~9では、インダクタLbを含む回路部分が省略されている。
【0040】
本実施形態では、DC/DCコンバータ120のインダクタLの電流i図10に示すような波形になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御する。本実施形態において、DC/DCコンバータ120の入力電流iinは、整流器110の出力電流irecとバッファコンデンサCbufの出力電流iの和である(iin=irec+i)。整流器110の出力電流irecは負になることはない。さらに、本実施形態では、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンであるときに、バッファコンデンサCbufをより積極的に放電するために、バッファコンデンサCbufに係る電圧vが整流器110から出力される瞬時電圧vrecよりも常に大きくなるように制御する。このため、本実施形態では、iin<0のとき、irec=0であり、iin=iとなる。
【0041】
モード1では、スイッチS21、S24、S26、S27、S31がオンであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオフであり、i>0であれば、図3(A)に示すように電流が流れ、i<0であれば、図3(B)に示すように電流が流れる。モード1での電流iの時間変化は、時間tc1にモード1に切り替えられたとすると、次式のようになる。
【数3】
ここで、Lは、インダクタLのインダクタンスである。また、簡単化のために、変圧器Trの巻き数は1:1としている。i>0であれば(図3(A))、バッファコンデンサCbufと直流コンデンサCdcの両方が放電され、電力は、インダクタLに蓄積される。一方、i<0であれば(図3(B))、インダクタLに蓄積された電力が、バッファコンデンサCbufと直流コンデンサCdcの両方に充電される。つまり、モード1では、充電器100内を電力が循環し、充電器100からバッテリ300に電力が伝送されない。i<0のときは、スイッチS31がオフであっても、整流器110のダイオードの極性、スイッチS31のダイオードの極性を考えると、図3(B)のように電流が流れる。例えば、図10のt~tの期間は、モード1であるが、i(t)=0であるので、上記の式は、下記のようになる。
【数4】
【0042】
モード2では、スイッチS21、S24、S25、S28、S31がオンであり、スイッチS22、S23、S26、S27がオフであり、図4に示すように電流が流れる。モード1からモード2に切り替えられると、DC/DCコンバータ120の2次側の電圧極性が反転する。このため、モード2での電流iの時間変化は、時間tC2にモード2に切り替えられたとすると、次式のようになる。
【数5】
>0であれば、バッファコンデンサCbufから放電された電力により、直流コンデンサCdc、第3の端子123と第4の端子124の間に接続されたバッテリ300が充電される。つまり、モード2では、充電器100からバッテリ300に電力が伝送される。
【0043】
モード3では、スイッチS21、S24、S25、S28がオンであり、スイッチS22、S23、S26、S27、S31がオフであり、図5に示すように電流が流れる。モード2からモード3に切り替えられると、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオフになる。このため、モード3での電流iの時間変化は、時間tC3にモード3に切り替えられたとすると、次式のようになる。
【数6】
>0であれば、交流電源200から供給された電力により、直流コンデンサCdc、第3の端子123と第4の端子124の間に接続されたバッテリ300が充電される。つまり、モード3では、充電器100からバッテリ300に電力が伝送される。
【0044】
モード4では、スイッチS22、S23、S25、S28、S31がオンであり、スイッチS21、S24、S26、S27がオフであり、i>0であれば、図6(A)に示すように電流が流れ、i<0であれば、図6(B)に示すように電流が流れる。モード3からモード4に切り替えられると、2次側の電圧極性が反転するとともに、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンになる。このため、モード4での電流iの時間変化は、時間tC4にモード4に切り替えられたとすると、
【数7】
となる。i>0であれば、インダクタLに蓄積された電力が、バッファコンデンサCbufと直流コンデンサCdcの両方に充電され(図6(A))、一方、i<0であれば、バッファコンデンサCbufと直流コンデンサCdcの両方が放電され、電力は、インダクタLに蓄積される(図6(B))。つまり、モード4では、充電器100内を電力が循環し、充電器100からバッテリ300に電力が伝送されない。i>0のときは、スイッチS31がオフであっても、整流器110のダイオードの極性、スイッチS31のダイオードの極性を考えると、図6(A)のように電流が流れる。
【0045】
モード5では、すべてのスイッチS21~S28、S31がオフであり、図7に示すように電流が流れる。このため、モード5での電流iの時間変化は、図10に示した例のように、時間tC5にモード5に切り替えられたとときに電流がゼロ(i(tc5)=0)であるとすると、変圧器Trには電流が流れず、i(t)=0である。
【0046】
モード6では、スイッチS22、S23、S26、S27がオンであり、スイッチS21、S24、S25、S28、S31がオフであり、図8に示すように電流が流れる。モード6での電流iの時間変化は、時間tC6にモード6に切り替えられたとすると、次式のようになる。
【数8】
ここで、i<0であれば、交流電源200から供給された電力により、直流コンデンサCdcや、第3の端子123と第4の端子124の間に接続されたバッテリ300が充電される。つまり、モード6では、充電器100からバッテリ300に電力が伝送される。
【0047】
モード7では、スイッチS22、S23、S26、S27、S31がオンであり、スイッチS21、S24、S25、S28がオフであり、図9に示すように電流が流れる。モード6からモード7に切り替えられると、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンになる。このため、モード7での電流iの時間変化は、時間tC7にモード7に切り替えられたとすると、次式のようになる。
【数9】
<0であれば、バッファコンデンサCbufから放電された電力により、直流コンデンサCdcや、第3の端子123と第4の端子124の間に接続されたバッテリ300が充電される。つまり、モード7では、充電器100からバッテリ300に電力が伝送される。
【0048】
図10の動作波形の各期間の長さ、つまり、図10の動作波形を得るためのスイッチングの制御則は、バッファコンデンサCbufにかかる瞬時電圧vが整流器110から出力される瞬時電圧vrecよりも常に大きくなり、交流電源200から出力される瞬時電力pとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pとの和が一定になるように、各期間の電流式を連立して解くことにより得られる。
【0049】
上述したように、モード1、モード4では、変圧器Trを電流が流れているにも関わらず、電力が充電器100からバッテリ300に伝送されてない。つまり、図10に示した動作波形において、t~t、t~t、t~t、t~t11の期間は、電力が交流電源200からバッテリ300に伝送されてない無効電流期間である。しかしながら、本実施形態では、v>vrecなるように制御されるため、無効電流期間の波形の傾きがバッファコンデンサCbufに係る電圧vにより決定される。このため、本実施形態では、無効電流期間における波形の傾きが整流器110のvrecにより決まる従来の充電器と比べて、無効電流期間を短くすることが可能である。よって、本実施形態では、従来の充電器に比べ、効率の良い電力伝送が可能である。
【0050】
また、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに係る電圧vが整流器110の瞬時電圧vrecが異なる値を持つ。このため、本実施形態では、モード2とモード3での波形の傾きが異なる。同様に、モード6とモード7での波形の傾きが異なる。このため、本実施形態では、図10に示したように、正での波形と負での波形がi=0に対して非対称である動作波形を生成することが可能になる。このため、本実施形態では、下記で詳述するように、動作波形を等価方形波形により近似する方法(大沼喜也・宮脇慧:「マトリックスコンバータとPWM整流器で構成する高周波絶縁 AC-DC 変換器の制御法」,平成30年電気学会産業応用部門大会講演論文集,Vol. 1,No. 53,pp. 197-200(2018))の着眼点を用いることが可能になり、スイッチングの制御則をより容易に得ることが可能になる。この方法の着眼点は、漏れインダクタに印加する電圧の順番を、漏れインダクタ電流の正負で入れ替え、その動作波形を正負で非対称にするものである。ただし、この方法は、マトリックスコンバータに向けに提案されたものであり、漏れインダクタに印加する電圧を三相交流の中から任意に選択可能である。一方、本実施形態では、図3(B)および図6(A)のように、漏れインダクタの電流の極性により、漏れインダクタの印加電圧が一意に決定されるため、この点を踏まえた方法を適用する必要がある。
【0051】
<動作波形を等価方形波形による近似>
図10の動作波形に対する制御則を求めるには、10個の期間に対する電流式を連立して解く必要がある。しかしながら、図10に示したような非対称な動作波形は、等価方形波形に近似することが可能であり、スイッチングの制御則を求めることが容易になる。
【0052】
図10に示した動作波形では、t~tの期間では、モード1であり、t~tの期間では、モード2であり、t~tの期間では、モード3であり、t~tの期間では、モード4であり、t~tの期間では、モード5であり、t~tの期間では、モード4であり、t~tの期間では、モード6であり、t~tの期間では、モード7であり、t~t11の期間では、モード1であり、t11~t12の期間では、モード5である。例えば、図10の動作波形において、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t11|となるようにt~t、t~t、t11、t12を設定し、|t-t|=|t-t|=|t10-t11|となるように、tとtの間にtを、tとt11の間にt10を設定すると、図10の動作波形は、図11に示したように、等価方形波形i′により近似することができる。
【数10】
【0053】
図11の等価方形波形i′のt~t、t~t、t~t、t10~t11の期間を無効電流期間Tと定義し、t~t、t~tの期間をバッファコンデンサ放電電流期間Tと定義し、t~t、t~tの期間を電源電流期間Trecと定義し、t~t、t~t10の期間を電流バランス期間Tと定義し、t~t、t11~t12の期間を零電流期間Tと定義すると、スイッチング周期TSWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数11】
指令値として、irec、i、v、Vdc、Isqを与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、図10の動作波形に対する制御則を求めることができる。
【0054】
指令値のうち、irecおよびiを放電期間と充電期間で切り替えることで、電力脈動吸収回路はその動作を実現する。
【0055】
放電期間では電力脈動吸収回路130のうちの充電回路(第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、インダクタLb、第2のスイッチS32と、を含む回路部分)は動作しないため、この充電回路が交流電源200から引き込む電力は零である。その結果、交流電源200から出力される電力は、整流器110の出力電力と一致する。このとき、irecの指令値irec *を以下のように与えることで電源電流が正弦波状となる。
【数12】
したがって、本実施形態では、PFCと同等の機能を有する。このとき、交流電源200から出力される瞬時電力pは平均電力Pより小さいため、その差分を補うように、iの指令値i *を以下のように与えることで、バッファコンデンサCbufを放電させる。
【数13】
【0056】
充電期間では、irecの指令値irec *を以下のように与えることで、整流器110から出力される瞬時電力pを平均電力Pに一致させる。
【数14】
交流電源200から出力される瞬時電力pは平均電力Pより大きいため、その余剰電力は充電回路を介してバッファコンデンサCbufに蓄積することで、バッファコンデンサCbufの充電と電源電流の正弦波化(PFC動作)を実現する。このとき、整流器110は一定の電力をDC/DCコンバータへ伝送するため、バッファコンデンサCbufは放電する必要がなく、iの指令値i *を以下のように与える。
【数15】
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 充電器
110 整流器
120 DC/DCコンバータ
S21~S28 DC/DCコンバータのスイッチ
130 電力脈動吸収回路
D31 第1のダイオード
D32 第2のダイオード
D33 第3のダイオード
Lb インダクタ
Cbuf バッファコンデンサ
S31 第1のスイッチ
S32 第2のスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11