IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図1
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図2
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図3
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図4
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図5
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図6
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図7
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図8
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図9
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図10
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図11
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図12
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図13
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図14
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図15
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図16
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図17
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図18
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図19
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図20
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図21
  • 特開-投写用光学系および投写型表示装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022036667
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】投写用光学系および投写型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/16 20060101AFI20220301BHJP
   G02B 13/04 20060101ALI20220301BHJP
   G02B 15/177 20060101ALI20220301BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20220301BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G02B13/16
G02B13/04 D
G02B15/177
G02B13/18
G03B21/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140987
(22)【出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永利 由紀子
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087LA03
2H087LA27
2H087NA02
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB20
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA05
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA37
2H087SA24
2H087SA26
2H087SA30
2H087SA32
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SB03
2H087SB15
2H087SB26
2H087SB31
2K203FB09
2K203GC03
2K203GC14
2K203HA02
2K203HA62
2K203MA01
(57)【要約】
【課題】小型で、レンズシフト機能を備え、良好な投写像を形成可能な投写用光学系、およびこの投写用光学系を備えた投写型表示装置を提供する。
【解決手段】投写用光学系は、画像表示面に表示される画像の中間像を形成し、中間像を投写して拡大像を形成する。投写用光学系は、縮小側から拡大側へ順に、第1光学系と、第2光学系とからなる。第1光学系は、拡大側にテレセントリックであり、共通の第1光軸を有する共軸系であり、縮小側に非テレセントリックである。第2光学系は、共通の第2光軸を有する共軸系であり、縮小側にテレセントリックである。第1光軸と第2光軸とは平行である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面に表示される画像の中間像を形成し、前記中間像を投写して拡大像を形成する投写用光学系であって、
縮小側から拡大側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、
前記第1光学系は拡大側にテレセントリックであり、かつ、前記投写用光学系内の最も縮小側の光学素子を含み拡大側にテレセントリックな複数の光学系が存在する場合は、前記複数の光学系のうち、含まれる光学素子の数が最小となる光学系が第1光学系であり、
前記第1光学系は、共通の第1光軸を有する共軸系であり、縮小側に非テレセントリックであり、
前記第2光学系は、共通の第2光軸を有する共軸系であり、縮小側にテレセントリックであり、
前記第1光軸と前記第2光軸とは平行である投写用光学系。
【請求項2】
前記投写用光学系の縮小側焦点位置を基点とした前記投写用光学系の縮小側瞳位置までの前記第1光軸上の距離をExp、
前記投写用光学系の縮小側の最大像高をYmaxとし、
Expについて、前記基点より拡大側の距離の符号を負、前記基点より縮小側の距離の符号を正とした場合、
-5<Exp/Ymax<-0.5 (1)
で表される条件式(1)を満足する請求項1に記載の投写用光学系。
【請求項3】
前記第1光学系の最も縮小側の面を基点とした前記第1光学系の縮小側焦点位置までの前記第1光軸上の空気換算距離をBf1、
前記投写用光学系の最も縮小側の面を基点とした前記投写用光学系の縮小側焦点位置までの前記第1光軸上の空気換算距離をBf、
前記投写用光学系の縮小側焦点位置を基点とした前記投写用光学系の縮小側瞳位置までの前記第1光軸上の距離をExpとし、
Bf1、BfおよびExpについて、各々の前記基点より拡大側の距離の符号を負、各々の前記基点より縮小側の距離の符号を正とした場合、
-1.5<(Bf1-Bf-Exp)/Ymax<1.5 (2)
で表される条件式(2)を満足する請求項1又は2に記載の投写用光学系。
【請求項4】
前記投写用光学系の縮小側の最大像高をYmax、
前記第2光学系の焦点距離をf2、
前記投写用光学系の焦点距離をf、
前記拡大像が無限遠に位置する状態での、前記第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした前記第2光学系の縮小側のYmax×|f2/f|×0.8の像高でのサジタル像面までの前記第2光軸の方向の距離をSr、
前記拡大像が無限遠に位置する状態での、前記第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした前記第2光学系の縮小側のYmax×|f2/f|×0.8の像高でのタンジェンシャル像面までの前記第2光軸の方向の距離をTrとし、
SrおよびTrについて、各々の前記基点より拡大側の距離の符号を負、各々の前記基点より縮小側の距離の符号を正とし、
f2およびfについて各光学系が変倍光学系の場合は広角端での各値とした場合、
0.47<Ymax/|f| (3)
0<|(Sr+Tr)/2|/Ymax<0.1 (4)
で表される条件式(3)および(4)を満足する請求項1から3のいずれか1項に記載の投写用光学系。
【請求項5】
前記第2光学系の焦点距離をf2、
前記投写用光学系の焦点距離をfとし、
f2およびfについて各光学系が変倍光学系の場合は広角端での各値とした場合、
0.6<|f2/f|<4 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項1から4のいずれか1項に記載の投写用光学系。
【請求項6】
前記第2光学系の最も縮小側の面を基点とした前記第2光学系の縮小側焦点位置までの前記第2光軸上の空気換算距離をBf2、
前記投写用光学系の焦点距離をfとし、
Bf2について、前記基点より拡大側の距離の符号を負、前記基点より縮小側の距離の符号を正とし、
fについて前記投写用光学系が変倍光学系の場合は広角端での値とした場合、
-5<Bf2/|f|<5 (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項1から5のいずれか1項に記載の投写用光学系。
【請求項7】
前記投写用光学系の最も縮小側の面を基点とした前記投写用光学系の縮小側焦点位置までの前記第1光軸上の空気換算距離をBf、
前記投写用光学系の焦点距離をfとし、
Bfについて、前記基点より拡大側の距離の符号を負、前記基点より縮小側の距離の符号を正とし、
fについて前記投写用光学系が変倍光学系の場合は広角端での値とした場合、
0.5<Bf/|f|<10 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項1から6のいずれか1項に記載の投写用光学系。
【請求項8】
前記第1光学系と前記第2光学系との間に前記中間像が形成されている請求項1から7のいずれか1項に記載の投写用光学系。
【請求項9】
-4<Exp/Ymax<-1 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する請求項2に記載の投写用光学系。
【請求項10】
0<(Bf1-Bf-Exp)/Ymax<1 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する請求項3に記載の投写用光学系。
【請求項11】
0.84<Ymax/|f| (3-1)
で表される条件式(3-1)を満足する請求項4に記載の投写用光学系。
【請求項12】
0<|(Sr+Tr)/2|/Ymax<0.05 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する請求項4に記載の投写用光学系。
【請求項13】
1<|f2/f|<3 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する請求項5に記載の投写用光学系。
【請求項14】
-3<Bf2/|f|<3 (6-1)
で表される条件式(6-1)を満足する請求項6に記載の投写用光学系。
【請求項15】
0.8<Bf/|f|<5 (7-1)
で表される条件式(7-1)を満足する請求項7に記載の投写用光学系。
【請求項16】
前記画像を出力する画像表示素子と、
請求項1から15のいずれか1項に記載の投写用光学系とを備えた投写型表示装置。
【請求項17】
画像を出力する画像表示素子と、
前記画像の中間像を形成し、前記中間像を投写して拡大像を形成する投写用光学系とを備え、
前記投写用光学系は、縮小側から拡大側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、
前記第1光学系は拡大側にテレセントリックであり、かつ、前記投写用光学系内の最も縮小側の光学素子を含み拡大側にテレセントリックな複数の光学系が存在する場合は、前記複数の光学系のうち、含まれる光学素子の数が最小となる光学系が第1光学系であり、
前記第1光学系は、共通の第1光軸を有する共軸系であり、縮小側に非テレセントリックであり、
前記第2光学系は、共通の第2光軸を有する共軸系であり、縮小側にテレセントリックであり、
前記第1光軸と前記第2光軸との相対位置が可変である投写用光学系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、投写用光学系、および投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投写用光学系として、中間像を形成する光学系が用いられることがある。従来知られている中間像を形成する光学系としては、例えば下記特許文献1に記載のレンズシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-179270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、小型に構成されながらも有用性の高い投写型表示装置が求められている。例えば、投写型表示装置においては、画像表示素子に対して投写用光学系を光軸に垂直な方向にシフトさせることによりスクリーン上での投写像の位置を調整可能にした機能、いわゆるレンズシフト機能を備えることが望ましい。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みなされたものであり、小型で、レンズシフト機能を備え、良好な投写像を形成可能な投写用光学系、およびこの投写用光学系を備えた投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術の一態様に係る投写用光学系は、画像表示面に表示される画像の中間像を形成し、中間像を投写して拡大像を形成する投写用光学系であって、縮小側から拡大側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、第1光学系は拡大側にテレセントリックであり、かつ、投写用光学系内の最も縮小側の光学素子を含み拡大側にテレセントリックな複数の光学系が存在する場合は、複数の光学系のうち、含まれる光学素子の数が最小となる光学系が第1光学系であり、第1光学系は、共通の第1光軸を有する共軸系であり、縮小側に非テレセントリックであり、第2光学系は、共通の第2光軸を有する共軸系であり、縮小側にテレセントリックであり、第1光軸と第2光軸とは平行である。
【0007】
投写用光学系の縮小側焦点位置を基点とした投写用光学系の縮小側瞳位置までの第1光軸上の距離をExp、投写用光学系の縮小側の最大像高をYmaxとし、Expについて、基点より拡大側の距離の符号を負、基点より縮小側の距離の符号を正とした場合、上記態様の投写用光学系は、下記条件式(1)を満足することが好ましく、下記条件式(1-1)を満足することがより好ましい。
-5<Exp/Ymax<-0.5 (1)
-4<Exp/Ymax<-1 (1-1)
【0008】
第1光学系の最も縮小側の面を基点とした第1光学系の縮小側焦点位置までの第1光軸上の空気換算距離をBf1、投写用光学系の最も縮小側の面を基点とした投写用光学系の縮小側焦点位置までの第1光軸上の空気換算距離をBf、投写用光学系の縮小側焦点位置を基点とした投写用光学系の縮小側瞳位置までの第1光軸上の距離をExpとし、Bf1、BfおよびExpについて、各々の基点より拡大側の距離の符号を負、各々の基点より縮小側の距離の符号を正とした場合、上記態様の投写用光学系は、下記条件式(2)を満足することが好ましく、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。
-1.5<(Bf1-Bf-Exp)/Ymax<1.5 (2)
0<(Bf1-Bf-Exp)/Ymax<1 (2-1)
【0009】
投写用光学系の縮小側の最大像高をYmax、第2光学系の焦点距離をf2、投写用光学系の焦点距離をf、拡大像が無限遠に位置する状態での、第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系の縮小側のYmax×|f2/f|×0.8の像高でのサジタル像面までの第2光軸の方向の距離をSr、拡大像が無限遠に位置する状態での、第2光学系の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系の縮小側のYmax×|f2/f|×0.8の像高でのタンジェンシャル像面までの第2光軸の方向の距離をTrとし、SrおよびTrについて、各々の基点より拡大側の距離の符号を負、各々の基点より縮小側の距離の符号を正とし、f2およびfについて各光学系が変倍光学系の場合は広角端での各値とした場合、上記態様の投写用光学系は、下記条件式(3)および(4)を満足することが好ましい。また、条件式(3)および(4)を満足した上で、下記条件式(3-1)および(4-1)の少なくとも一方を満足することがより好ましい。
0.47<Ymax/|f| (3)
0<|(Sr+Tr)/2|/Ymax<0.1 (4)
0.84<Ymax/|f| (3-1)
0<|(Sr+Tr)/2|/Ymax<0.05 (4-1)
【0010】
第2光学系の焦点距離をf2、投写用光学系の焦点距離をfとし、f2およびfについて各光学系が変倍光学系の場合は広角端での各値とした場合、上記態様の投写用光学系は、下記条件式(5)を満足することが好ましく、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。
0.6<|f2/f|<4 (5)
1<|f2/f|<3 (5-1)
【0011】
第2光学系の最も縮小側の面を基点とした第2光学系の縮小側焦点位置までの第2光軸上の空気換算距離をBf2、投写用光学系の焦点距離をfとし、Bf2について、基点より拡大側の距離の符号を負、基点より縮小側の距離の符号を正とし、fについて投写用光学系が変倍光学系の場合は広角端での値とした場合、上記態様の投写用光学系は、下記条件式(6)を満足することが好ましく、下記条件式(6-1)を満足することがより好ましい。
-5<Bf2/|f|<5 (6)
-3<Bf2/|f|<3 (6-1)
【0012】
投写用光学系の最も縮小側の面を基点とした投写用光学系の縮小側焦点位置までの第1光軸上の空気換算距離をBf、投写用光学系の焦点距離をfとし、Bfについて、基点より拡大側の距離の符号を負、基点より縮小側の距離の符号を正とし、fについて投写用光学系が変倍光学系の場合は広角端での値とした場合、上記態様の投写用光学系は、下記条件式(7)を満足することが好ましく、下記条件式(7-1)を満足することがより好ましい。
0.5<Bf/|f|<10 (7)
0.8<Bf/|f|<5 (7-1)
【0013】
上記態様の投写用光学系においては、第1光学系と第2光学系との間に中間像が形成されていることが好ましい。
【0014】
本開示の技術の別の態様に係る投写型表示装置は、画像を出力する画像表示素子と、上記態様の投写用光学系とを備える。
【0015】
本開示の技術のさらに別の態様に係る投写型表示装置は、画像を出力する画像表示素子と、画像の中間像を形成し、中間像を投写して拡大像を形成する投写用光学系とを備え、投写用光学系は、縮小側から拡大側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、第1光学系は拡大側にテレセントリックであり、かつ、投写用光学系内の最も縮小側の光学素子を含み拡大側にテレセントリックな複数の光学系が存在する場合は、複数の光学系のうち、含まれる光学素子の数が最小となる光学系が第1光学系であり、第1光学系は、共通の第1光軸を有する共軸系であり、縮小側に非テレセントリックであり、第2光学系は、共通の第2光軸を有する共軸系であり、縮小側にテレセントリックであり、第1光軸と第2光軸との相対位置が可変である。
【0016】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的にパワーを有さないレンズ、並びに、絞り、フィルタ、およびカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0017】
非球面を含むレンズに関するパワーの符号および面形状は、特に断りが無い限り近軸領域で考えることにする。条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、特に断りが無い限り、無限遠物体に合焦した状態においてd線を基準とした場合の値であり、投写用光学系が変倍光学系の場合は広角端における値である。本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「F線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)である。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、小型で、レンズシフト機能を備え、良好な投写像を形成可能な投写用光学系、およびこの投写用光学系を備えた投写型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る投写用光学系の構成を説明するための概念図である。
図2】別の実施形態に係る投写用光学系の構成を説明するための概念図である。
図3】さらに別の実施形態に係る投写用光学系の構成を説明するための概念図である。
図4】実施例1-1の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図5】実施例1-2の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図6】変形例1-1の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図7】変形例1-2の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図8】実施例1の投写用光学系の各収差図である。
図9】実施例2-1の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図10】実施例2-2の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図11】変形例2-1の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図12】変形例2-2の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図13】実施例2の投写用光学系の各収差図である。
図14】実施例3-1の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図15】実施例3-2の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図16】実施例3の投写用光学系の各収差図である。
図17】実施例4-1の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図18】実施例4-2の投写用光学系の構成と光束を示す断面図である。
図19】実施例4の投写用光学系の各収差図である。
図20】一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図21】参考例としての従来の投写型表示装置の概略構成図である。
図22】参考例としての従来の別の投写型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本開示の一実施形態に係る投写用光学系は、例えば、投写型表示装置に搭載されて、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス:登録商標)等の画像表示素子が出力する画像をスクリーン等の投写面に投写する光学系である。
【0021】
図1に、本開示の一実施形態に係る投写用光学系10の構成を説明するための概念図を示す。図1の投写用光学系10は、画像表示素子の画像表示面Simに表示される画像2の中間像4を形成し、中間像4をスクリーンScrに投写して投写像6を形成する。すなわち、画像2、中間像4、および投写像6は全て光学的に共役の関係にある。投写像6は本開示の技術における拡大像に対応する。図1に関する説明において、「拡大側」はスクリーンScr側を意味し、「縮小側」は画像表示面Sim側を意味する。図1では、左側を拡大側、右側を縮小側としている。
【0022】
投写用光学系10は、縮小側から拡大側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。実際には、第1光学系G1は複数の光学素子からなることが多く、後述の実施例では第1光学系G1は複数のレンズを含んで構成されるが、図1では理解を容易にするため第1光学系G1を概念的に図示している。この点は第2光学系G2についても同様である。
【0023】
第1光学系G1は、共通の第1光軸AX1を有する共軸系である。すなわち、第1光学系G1内の全ての光学素子が第1光軸AX1を共通の光軸として有する。第2光学系G2は、共通の第2光軸AX2を有する共軸系である。すなわち、第2光学系G2内の全ての光学素子が第2光軸AX2を共通の光軸として有する。以下では、第1光軸AX1と第2光軸AX2とを総括して光軸ということがある。
【0024】
図1に示すように、第1光軸AX1と第2光軸AX2とは平行であり、同一直線上には無い。いわば、第1光軸AX1と第2光軸AX2とは平行にずれた関係にある。なお、本明細書における「平行」は、完全な平行の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差が含まれる略平行も含む。許容される誤差とは例えば、第1光軸AX1と第2光軸AX2とのなす角度が-1度以上かつ+1度以下の範囲内である。
【0025】
第1光学系G1は、縮小側に非テレセントリックである。第1光学系G1は投写用光学系10内で最も縮小側に位置する光学系であるから、投写用光学系10は、縮小側に非テレセントリックである。投写用光学系10を縮小側に非テレセントリックな光学系とすることによって、投写用光学系10内のレンズ等の光学素子の径を小さくすることが容易となり、小型化に有利となる。
【0026】
第1光学系G1は、拡大側にテレセントリックである。さらに第1光学系G1は、投写用光学系10内の最も縮小側に配置されて拡大側にテレセントリックな光学系のうち、含まれる光学素子の数が最小となる光学系として定義される。すなわち、投写用光学系10内の最も縮小側の光学素子を含み拡大側にテレセントリックな複数の光学系が存在する場合は、これら複数の光学系のうち、含まれる光学素子の数が最小となる光学系が第1光学系G1となる。これによって、第1光学系G1と第2光学系G2の境界が定まる。
【0027】
上記定義について、投写用光学系10が、縮小側から拡大側へ光路に沿って順に、レンズL1、レンズL2、レンズL3、レンズL4、レンズL5、レンズL6、レンズL7、レンズL8、レンズL9、レンズL10の10個のレンズからなる例を挙げて説明する。この例において、最も縮小側の光学素子はレンズL1である。最も縮小側の光学素子を含み拡大側にテレセントリックな光学系として、レンズL1とレンズL2との2枚のレンズからなる光学系A、レンズL1とレンズL2とレンズL3とレンズL4との4枚のレンズからなる光学系B、レンズL1とレンズL2とレンズL3とレンズL4とレンズL5とレンズL6とレンズL7との7枚のレンズからなる光学系Cの3つの光学系がある場合を考える。この場合では、最も縮小側の光学素子を含み拡大側にテレセントリックな3つの光学系が存在することになり、これら3つの光学系のうち、含まれる光学素子の数が最小となる光学系は、2枚のレンズからなる光学系Aである。従って、この場合は、光学系Aが第1光学系G1となり、レンズL2とレンズL3との間が第1光学系G1と第2光学系G2の境界となる。
【0028】
なお、「第1光学系G1が拡大側にテレセントリック」とは、図1に示すように、第1光学系G1から拡大側へ出射する主光線8が光軸と平行な状態を指す。本明細書における「平行」は上述したように、完全な平行の他に、許容される誤差が含まれる略平行も含む。許容される誤差とは、光軸に対する主光線8の傾きが-3度以上かつ+3度以下の範囲内である。「非テレセントリック」は、光軸に対する主光線8の傾きが-3度以上かつ+3度以下の範囲外にある状態を指す。なお、主光線が定まらない光学系においては、光束の上側の最大光線と下側の最大光線との2等分角線を主光線の代用としてもよい。
【0029】
第1光学系G1が拡大側にテレセントリックであることから、第2光学系G2は、縮小側にテレセントリックである。ここで、「第2光学系G2は縮小側にテレセントリック」は、上記の「第1光学系G1が拡大側にテレセントリック」と同様であり、縮小側から第2光学系G2へ入射する主光線8の光軸に対する傾きが-3度以上かつ+3度以下の範囲内にある状態を指す。
【0030】
上記のテレセントリックの構成は、画像表示素子に対して投写用光学系10を光軸に垂直な方向にシフトさせる場合に非常に有効である。以下、画像表示素子に対して投写用光学系10を光軸に垂直な方向にシフトさせることを便宜的に「レンズシフト」という。第1光学系G1の拡大側および第2光学系G2の縮小側が非テレセントリックな構成では、レンズシフトをすると、結像用の光束の一部が遮光される、いわゆるケラレが生じてしまうことがある。ケラレが生じた状態では、投写像6の一部が欠落してしまい良好な投写像6が得られないため、実質、レンズシフト機能を備えているとは言えない。これに対して、投写用光学系10では第1光学系G1の拡大側および第2光学系G2の縮小側をテレセントリックにしているため、レンズシフトをしてもケラレが生じることがなく、画像の欠落が無い良好な投写像6を得ることができる。
【0031】
また、投写用光学系10では、第1光軸AX1と第2光軸AX2とを平行にずれた関係にしているため、第2光軸AX2を含む領域に投写像6を形成することが可能である。この点について図2および図3を参照しながら説明する。図2の例は、図1の例と比べて投写用光学系10の構成は同一に保ったまま、画像22のみ異なる。図2の画像22は、図1の画像2の上半分のみを残し下半分を削除したものである。縮小側が非テレセントリックな投写用光学系10では、光源と画像表示素子との間に配置される照明系の構成のために、縮小側のイメージサークル内の光軸近傍に画像を配置できないことが多いという事情がある。図2では、この事情を考慮し、第1光軸AX1から離れた領域に画像22を位置させている。
【0032】
投写用光学系10とは異なり、縮小側が非テレセントリックに構成され、かつ第1光軸AX1と第2光軸AX2とが同一直線上にある従来の投写用光学系において、光軸から離れた位置にある画像の投写像を形成すると、その投写像もまた光軸から離れた位置にしか形成できない。すなわち、上記のような従来の投写用光学系では光軸を含む領域に投写像を得ることができない。
【0033】
これに対して、図2に示す投写用光学系10では、第1光軸AX1と第2光軸AX2とを平行にずれた関係にしているため、第2光軸AX2上に投写像26の下端が位置するように投写することが可能である。
【0034】
図3の例は、図2の例と比べて、画像22の大きさと第1光軸AX1に対する位置は同一に保ったまま、第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を大きくしている。図3の例では、投写像26の中心が第2光軸AX2上に位置する。
【0035】
図2および図3からわかるように、投写用光学系10では、第2光軸AX2を含む領域に投写像26を形成することが可能である。また、投写用光学系10では、画像表示素子と第1光学系G1との相対位置を固定したまま、第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を変化させることにより、スクリーンScr上での投写像26の位置を調整することが可能である。画像表示素子に対して投写用光学系全体をシフトさせて投写像26の位置を調整する構成に比べて、投写用光学系10では一部の光学系のみシフトさせればよいため装置の小型化を図ることができる。
【0036】
参考例として図21および図22に従来の投写用光学系を含む投写型表示装置の概略構成図を示す。図21および図22に示す投写型表示装置はともに単板DMDを用いたタイプである。図21に示す投写型表示装置500は、光源51と、カラーホイール52と、導光光学系53と、DMD54と、投写用レンズ55とを備える。投写用レンズ55は、DMD54で表示された画像の拡大像をスクリーン56に投写する。投写用レンズ55は縮小側が非テレセントリックな光学系であり、縮小側のレンズ径の小型化には有利である。しかしながら、投写型表示装置500は、レンズシフトをするとケラレが生じてしまう。また、投写型表示装置500は、投写用レンズ55の光軸を含む領域に投写像を形成することができない。
【0037】
図22に示す投写型表示装置600は、光源61と、カラーホイール62と、導光光学系63と、TIR(Total Internal Reflection)プリズム64と、DMD65と、投写用レンズ66とを備える。投写用レンズ66は、DMD65で表示された画像の拡大像をスクリーン67に投写する。投写用レンズ66は、レンズシフトをしてもケラレが生じることがなく、かつ、光軸を含む領域に投写像を形成するように構成することが可能である。しかしながら、TIRプリズム64と併用される投写用レンズ66は、縮小側のレンズ径が大きくなるため小型化に不利である。また、投写型表示装置600は、TIRプリズム64を含む分、装置が大型化してしまう。
【0038】
図21および図22の従来例に比べて、本開示の一実施形態に係る投写用光学系10は、TIRプリズムを含まないため小型化に有利である。また、投写用光学系10は、レンズシフトさせてもケラレが生じることがなく、かつ、光軸を含む領域に投写像を形成することができる。
【0039】
次に、本開示の一実施形態に係る投写用光学系の具体的な構成例について説明する。図4に、本開示の一実施形態に係る投写用光学系の具体的な構成例の断面図を示す。図4に示す例は後述の実施例1-1に対応する。図4では、左側を拡大側、右側を縮小側とし、光束と画像表示素子の画像表示面Simも合わせて示している。図4では光束として、最小像高の光束、中間像高の光束、および最大像高の光束を示す。
【0040】
図4の投写用光学系は、縮小側から拡大側へ順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL1a~L1fと、開口絞りStと、レンズL1g~L1lとからなる。第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL2a~L2sからなる。
【0041】
図4では投写用光学系が投写型表示装置に搭載されることを想定して、投写用光学系の縮小側に光学部材PPを配置した例を示している。光学部材PPは、各種フィルタ、および/又はカバーガラス等を想定した部材である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0042】
図4の投写用光学系は、その内部に2つの中間像を形成する。レンズL2aとレンズL2bとの間に第1中間像MI1が形成され、レンズL2gとレンズL2hとの間に第2中間像MI2が形成される。なお、図4では、第1中間像MI1および第2中間像MI2は光軸近傍のみ図示している。第1光学系G1は共軸系であり、第1光学系G1の全てのレンズは第1光軸AX1を共通に有する。第2光学系G2は共軸系であり、第2光学系G2の全てのレンズは第2光軸AX2を共通に有する。第1光軸AX1と第2光軸AX2とは平行である。なお、図4の第1光学系G1と第2光学系G2の境界に、第1光軸AX1と第2光軸AX2を連結する線が描かれているが、この連決する線は仮想的なものであり正確な構成を示すものではない。
【0043】
図4の画像表示面Simの上方に描かれた円は第1光学系G1の縮小側のイメージサークルC1を示す。イメージサークルC1の中心は第1光軸AX1上にある。図4のイメージサークルC1内の長方形の斜線部はイメージサークルC1に対する使用範囲EA1を示す。使用範囲EA1は、画像表示面Simに表示される画像の領域である。使用範囲EA1はイメージサークルC1の中心より下方で中心から離れた位置にある。すなわち、使用範囲EA1は第1光軸AX1より下方に位置する。
【0044】
図4のレンズL2aの上方に描かれた円は第2光学系G2の縮小側のイメージサークルC2を示す。イメージサークルC2の中心は第2光軸AX2上にある。図4のイメージサークルC2内の長方形の斜線部はイメージサークルC2に対する使用範囲EA2を示す。使用範囲EA2は、投写像の形成に用いられる有効光束の領域である。使用範囲EA2はイメージサークルC2の上半分に位置し、使用範囲EA2の下端は第2光軸AX2上に位置する。つまり、図2の概念図と同様に、図4に示す例では、画像2が第1光軸AX1上に位置していないが、投写像は第2光軸AX2上に位置する。
【0045】
図5に、図4の例から第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を大きくした構成例を示す。図5に示す例は後述の実施例1-2に対応する。図5の基本的な図示方法は図4と同様である。
【0046】
図5の例のイメージサークルC1内における使用範囲EA1の位置は図4の例と同様である。しかし、図5の例の使用範囲EA2はその中心がイメージサークルC2の中心と一致している。つまり、図3の概念図と同様に、図5に示す例では、画像が第1光軸AX1上に位置していないが、投写像の中心は第2光軸AX2上に位置する。
【0047】
図4および図5の例に示すように、本開示の一実施形態に係る投写用光学系では、画像表示面Simに表示される画像が第1光軸AX1を含まない領域に配置されていても、第2光軸AX2を含む領域に投写像を形成することが可能である。
【0048】
なお、本開示の一実施形態に係る投写用光学系では、第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量も含め、種々の変形が可能である。例えば、図4および図5の例では第1中間像MI1および第2中間像MI2は第2光学系G2の内部に形成されているが、中間像の1つは、第1光学系G1と第2光学系G2との間に形成されていてもよい。第1光学系G1と第2光学系G2との間に中間像が形成される場合は、第1光学系G1のみ、および第2光学系G2のみで性能の確認ができるため、製造上有利である。また、第1光学系G1と第2光学系G2との間であり、かつレンズから離れた空気間隔に中間像を形成できる場合は、レンズ面の傷および/又はレンズ内部の不純物が存在する場合にこれらが投写像に映り込んで画質が低下するのを抑制することができる。
【0049】
また、図4および図5の投写用光学系は直線状の光路を有するが、屈曲光路を有する構成にしてもよい。屈曲光路を有することによって小型化に有利な構成にすることができる。図6および図7にそれぞれ変形例1-1および変形例1-2として、屈曲光路を有する投写用光学系の例を示す。図6の例は、図4の例に対して、レンズL1jとレンズL1kとの間にミラーR1を追加し、レンズL2gとレンズL2hとの間にミラーR2を追加して、光路を2回折り曲げた屈曲光路を構成したものである。図7の例は、図5の例に対して、レンズL1jとレンズL1kとの間にミラーR1を追加し、レンズL2gとレンズL2hとの間にミラーR2を追加して、光路を2回折り曲げた屈曲光路を構成したものである。
【0050】
図6および図7の例のミラーR1およびミラーR2は、光路を90度折り曲げているが、光路を折り曲げる角度はこれに限定されない。光路を折り曲げる角度は厳密な90度に限らず、例えば-3度以上かつ+3度以下の範囲の誤差を含む角度としてもよい。折り曲げる角度を90度とすることが組み立て、製造上簡単な構成となるため好ましいが、必ずしも90度である必要はない。
【0051】
また、光路を折り曲げる回数および方向も図6および図7の例に限定されない。光路の折り曲げに適した箇所があれば、その箇所の数に応じて光路を折り曲げる回数は任意に設定可能である。光路を折り曲げる回数が2回ある場合は、2回とも同じ方向に光路を折り曲げるように構成してもよいし、1回目と2回目は互いに反対の方向に光路を折り曲げるようにしてもよい。また、図6および図7に示す例と異なり、紙面に垂直な方向に光路を折り曲げてもよい。折り曲げる方向は任意に設定可能であるが、イメージサークルの使用可能領域を考慮して適宜設定することが好ましい。
【0052】
なお、本開示の技術に係る「拡大側」および「縮小側」は、光路に沿って決められるものであり、これは屈曲光路を有する投写用光学系についても同様である。例えば屈曲光路を有する投写用光学系における「レンズLAはレンズLBより拡大側にある」は「レンズLAはレンズLBより拡大側の光路にある」と同じ意味である。よって、屈曲光路を有する投写用光学系における「最も拡大側の~」は、光路上における並び順として最も拡大側という意味であり、距離的にスクリーンScrに最も近いということを意味するものではない。
【0053】
次に、本開示の一実施形態に係る投写用光学系の好ましい構成について説明する。投写用光学系は、投写用光学系の縮小側焦点位置を基点とした投写用光学系の縮小側瞳位置までの第1光軸AX1上の距離をExp、投写用光学系の縮小側の最大像高をYmaxとした場合、下記条件式(1)を満足することが好ましい。ただし、Expについては、基点より拡大側の距離の符号を負、基点より縮小側の距離の符号を正とする。縮小側瞳位置は、投写用光学系の拡大側および縮小側をそれぞれ物体側および像側に見立て、物体側から光が投写用光学系に入射した場合の射出瞳位置に相当する。Ymaxは投写用光学系の縮小側のイメージサークル(いわゆる最大有効像円)の半径に対応する。また、本明細書においてはYmaxは正の値をとるものとする。条件式(1)の下限以下とならないようにすることによって、第1光学系G1内の縮小側の光学素子の小型に有利となる。条件式(1)の上限以上とならないようにすることによって、像面湾曲および非点収差等の諸収差の補正が容易になる。より良好な特性を得るためには投写用光学系は、下記条件式(1-1)を満足することがより好ましい。
-5<Exp/Ymax<-0.5 (1)
-4<Exp/Ymax<-1 (1-1)
【0054】
第1光学系G1の最も縮小側の面を基点とした第1光学系G1の縮小側焦点位置までの第1光軸AX1上の空気換算距離をBf1、投写用光学系の最も縮小側の面を基点とした投写用光学系の縮小側焦点位置までの第1光軸AX1上の空気換算距離をBf、投写用光学系の縮小側焦点位置を基点とした投写用光学系の縮小側瞳位置までの第1光軸AX1上の距離をExpとした場合、投写用光学系は下記条件式(2)を満足することが好ましい。ただし、Bf1、BfおよびExpについて、各々の基点より拡大側の距離の符号を負、各々の基点より縮小側の距離の符号を正とする。条件式(2)を満足することによって、第2光学系G2を画像表示素子に対して第2光軸AX2に垂直な方向にシフトさせた場合でもケラレが生じないように構成することができる。より良好な特性を得るためには投写用光学系は、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。条件式(2-1)の下限以下とならないようにすることによって、画像表示面Simから第1光学系G1へ向かう光束の広がりを抑制できるため、投写用光学系全体の小型化に有利となる。
-1.5<(Bf1-Bf-Exp)/Ymax<1.5 (2)
0<(Bf1-Bf-Exp)/Ymax<1 (2-1)
【0055】
投写用光学系の縮小側の最大像高をYmax、第2光学系G2の焦点距離をf2、投写用光学系の焦点距離をf、拡大像が無限遠に位置する状態での、第2光学系G2の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系G2の縮小側のYmax×|f2/f|×0.8の像高でのサジタル像面までの第2光軸AX2の方向の距離をSr、拡大像が無限遠に位置する状態での、第2光学系G2の縮小側の近軸結像位置を基点とした第2光学系G2の縮小側のYmax×|f2/f|×0.8の像高でのタンジェンシャル像面までの第2光軸AX2の方向の距離をTrとした場合、投写用光学系は下記条件式(3)および(4)を満足することが好ましい。ただし、SrおよびTrについて、各々の基点より拡大側の距離の符号を負、各々の基点より縮小側の距離の符号を正とする。また、f2およびfについて、各光学系が変倍光学系の場合は広角端での各値とする。条件式(3)を満足することによって広い画角を確保することができる。|{(Sr+Tr)/2}/Ymax|は絶対値であるから0<|{(Sr+Tr)/2}/Ymax|となる。条件式(4)は像面湾曲に関する式である。条件式(4)の上限以上とならないようにすることによって、第1光軸AX1と第2光軸AX2とが平行な構成において像面湾曲が良好に補正された状態を保持することが容易となる。条件式(3)および(4)を満足することによって、像面湾曲が良好に補正された広角の光学系の実現に有利となる。より良好な特性を得るためには投写用光学系は、条件式(3)および(4)を満足したうえで、下記条件式(3-1)、(3-2)、(3-3)、および(4-1)の少なくとも1つを満足することがより好ましい。条件式(3-3)の上限以上とならないようにすることによって、第2光学系G2の光学素子の大径化を抑制しながら収差補正を行うことが容易となる。
0.47<Ymax/|f| (3)
0.84<Ymax/|f| (3-1)
1.2<Ymax/|f| (3-2)
1.73<Ymax/|f|<5 (3-3)
0<|(Sr+Tr)/2|/Ymax<0.1 (4)
0<|(Sr+Tr)/2|/Ymax<0.05 (4-1)
【0056】
第2光学系G2の焦点距離をf2、投写用光学系の焦点距離をfとした場合、投写用光学系は下記条件式(5)を満足することが好ましい。ただし、f2およびfについて各光学系が変倍光学系の場合は広角端での各値とする。条件式(5)の下限以下とならないようにすることによって、第2光学系G2の収差補正に有利となる。条件式(5)の上限以上とならないようにすることによって、光学系の大型化を抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには投写用光学系は、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。
0.6<|f2/f|<4 (5)
1<|f2/f|<3 (5-1)
【0057】
第2光学系G2の最も縮小側の面を基点とした第2光学系G2の縮小側焦点位置までの第2光軸AX2上の空気換算距離をBf2、投写用光学系の焦点距離をfとした場合、投写用光学系は下記条件式(6)を満足することが好ましい。ただし、Bf2について、基点より拡大側の距離の符号を負、基点より縮小側の距離の符号を正とする。また、fについて投写用光学系が変倍光学系の場合は広角端での値とする。条件式(6)の下限以下とならないようにすることによって、第2光学系G2の最も縮小側の光学素子と中間像との距離が大きくなり過ぎないため、第2光学系G2の最も縮小側の光学素子の小径化に有利となる。条件式(6)の上限以上とならないようにすることによって、第2光学系G2のバックフォーカスが長くなり過ぎないため、光学系の大型化を抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには投写用光学系は、下記条件式(6-1)を満足することがより好ましい。
-5<Bf2/|f|<5 (6)
-3<Bf2/|f|<3 (6-1)
【0058】
投写用光学系の最も縮小側の面を基点とした投写用光学系の縮小側焦点位置までの第1光軸AX1上の空気換算距離をBf、投写用光学系の焦点距離をfとした場合、投写用光学系は下記条件式(7)を満足することが好ましい。ただし、Bfについて、基点より拡大側の距離の符号を負、基点より縮小側の距離の符号を正とする。また、fについて投写用光学系が変倍光学系の場合は広角端での値とする。条件式(7)の下限以下とならないようにすることによって、照明系部材との干渉を避けることに有利となる。条件式(7)の上限以上とならないようにすることによって、投写用光学系のバックフォーカスが長くなり過ぎないため、光学系の大型化を抑制することに有利となる。より良好な特性を得るためには投写用光学系は、下記条件式(7-1)を満足することがより好ましい。
0.5<Bf/|f|<10 (7)
0.8<Bf/|f|<5 (7-1)
【0059】
また、投写用光学系は例えば以下のように構成してもよい。第2光学系G2は最も拡大側に負メニスカスレンズを備えてもよく、このようにした場合は、広角化に有利となる。第2光学系G2は最も拡大側から順に連続して複数枚の負メニスカスレンズを備えてもよく、このようにした場合は、広角化により有利となる。第2光学系G2の最も縮小側のレンズは正レンズとしてもよく、このようにした場合は、レンズの小径化およびテレセントリック性の確保に有利となる。第1光学系G1の最も拡大側のレンズは正レンズであってもよく、このようにした場合は、レンズの小径化に有利となる。第1光学系G1の最も拡大側のレンズ面は凹面であってもよく、このようにした場合はテレセントリック性の確保に有利となる。
【0060】
第1光学系G1および第2光学系G2に含まれるレンズの枚数は、図4に示す例と異なる枚数にしてもよい。投写用光学系に含まれるパワーを持つ光学素子は全てレンズであるように構成してもよく、もしくは、パワーを持つ光学素子として曲率を有する反射部材を含むように構成してもよい。投写用光学系に含まれる全てのレンズはd線に対する屈折率が2.2以下であることが好ましく、現在のレンズ材料の入手性を考慮すると2以下であることがより好ましい。投写用光学系は、回折光学面を含むように構成してもよい。投写用光学系は、Fナンバーが3以下であることが好ましい。投写用光学系は、歪曲収差が-3%以上かつ+3%以下の範囲内に抑えられていることが好ましい。
【0061】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。なお、可能な条件式の範囲としては、式の形式で記載された条件式に限定されず、好ましい、およびより好ましいとされた条件式の中から下限と上限とを任意に組み合わせて得られる範囲を含む。
【0062】
次に、本開示の技術に係る投写用光学系の実施例とその変形例について述べる。
【0063】
実施例1-1および実施例1-2の投写用光学系は直線状の光路を有する。実施例1-1の投写用光学系のレンズ構成と光束は図4に示したものである。図4に示す構成は上述しているため、ここでは重複説明を省略する。
【0064】
実施例1-2の投写用光学系のレンズ構成と光束は図5に示したものである。実施例1-2の各レンズは実施例1-1の各レンズと同一である。実施例1-2の投写用光学系は、実施例1-1の投写用光学系から第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を大きくした光学系である。図5に示す構成は上述しているため、ここでは重複説明を省略する。
【0065】
変形例1-1および変形例1-2の投写用光学系は屈曲光路を有する。変形例1-1の投写用光学系のレンズ構成と光束は図6に示したものである。変形例1-2の投写用光学系のレンズ構成と光束は図7に示したものである。図6および図7に示す構成は上述しているため、ここでは重複説明を省略する。
【0066】
次に、数値データについて説明する。以下では説明の便宜上、実施例1-1の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系を「実施例1の投写用光学系」として示す。実施例1の投写用光学系は、実施例1-2の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系でもある。
【0067】
実施例1の投写用光学系について、基本レンズデータを表1Aおよび表1Bに、諸元を表2に、非球面係数を表3に示す。ここでは、1つの表の長大化を避けるため基本レンズデータを表1Aおよび表1Bの2つの表に分けて表示している。表1Aには第2光学系G2を示し、表1Bには第1光学系G1および光学部材PPを示す。
【0068】
表1Aおよび表1Bにおいて、Snの欄には最も拡大側の面を第1面とし縮小側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示し、Rの欄には各面の曲率半径を示し、Dの欄には各面とその縮小側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。また、Ndの欄には各構成要素のd線に対する屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0069】
表1Aおよび表1Bでは、拡大側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、縮小側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1Bでは開口絞りStに相当する面の面番号の欄に面番号と(St)という語句を記載している。表1BのDの最下欄の値は表中の最も縮小側の面と画像表示面Simとの間隔である。
【0070】
表2に、焦点距離の絶対値|f|、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、および最大像高Ymaxの値をd線基準で示す。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。
【0071】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を示している。表3において、Snの欄には非球面の面番号を示し、KAおよびAmの欄には各非球面についての非球面係数の数値を示す。mは3以上の整数であり、面により異なる。例えば第1面ではm=3、4、5、・・・20である。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×H/{1+(1-KA×C×H1/2}+ΣAm×H
ただし、
Zd:非球面深さ(高さHの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
H:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0072】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0073】
【表1A】
【0074】
【表1B】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
図8に、実施例1の投写用光学系の各収差図を示す。図8では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線に関する収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線に関する収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。図8には投写面から最も拡大側のレンズ面までの距離が752.7の場合のデータを示す。
【0078】
上記の実施例および変形例に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りがない限り以下の実施例のものについても基本的に同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0079】
実施例2-1および実施例2-2の投写用光学系は直線状の光路を有する。実施例2-1の投写用光学系のレンズ構成と光束の断面図を図9に示す。実施例2-1の投写用光学系は、縮小側から拡大側へ順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL1a~L1fと、開口絞りStと、レンズL1g~L1lとからなる。第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL2a~L2sからなる。
【0080】
実施例2-1の投写用光学系は、その内部に2つの中間像を形成する。レンズL1lとレンズL2aとの間に第1中間像MI1が形成され、レンズL2gとレンズL2hとの間に第2中間像MI2が形成される。第1光学系G1は共軸系であり、第1光学系G1の全てのレンズは第1光軸AX1を共通に有する。第2光学系G2は共軸系であり、第2光学系G2の全てのレンズは第2光軸AX2を共通に有する。第1光軸AX1と第2光軸AX2とは平行である。
【0081】
実施例2-2の投写用光学系のレンズ構成と光束の断面図を図10に示す。実施例2-2の各レンズは実施例2-1の各レンズと同一である。実施例2-2の投写用光学系は、実施例2-1の投写用光学系から第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を大きくした光学系である。
【0082】
変形例2-1および変形例2-2の投写用光学系は屈曲光路を有する。変形例2-1のレンズ構成と光束を図11に示す。変形例2-1は、実施例2-1の投写用光学系に3つの光路偏向部材を追加して光路を3回折り曲げた構成を有する。変形例2-2のレンズ構成と光束を図12に示す。変形例2-2は、実施例2-2の投写用光学系に3つの光路偏向部材を追加して光路を3回折り曲げた構成を有する。変形例2-1および変形例2-2のいずれも、レンズL1jとレンズL1kとの間に光路を90度折り曲げるミラーR1が配置され、レンズL2aとレンズL2bとの間に光路を90度折り曲げるミラーR2が配置され、レンズL2gとレンズL2hとの間に光路を90度折り曲げるミラーR3が配置されている。
【0083】
次に、数値データについて示す。以下では説明の便宜上、実施例2-1の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系を「実施例2の投写用光学系」として示す。実施例2の投写用光学系は、実施例2-2の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系でもある。
【0084】
実施例2の投写用光学系について、表4Aおよび表4Bに、諸元を表5に、非球面係数を表6に、各収差図を図13に示す。表4Aには第2光学系G2を示し、表4Bには第1光学系G1および光学部材PPを示す。図13には投写面から最も拡大側のレンズ面までの距離が752.7の場合のデータを示す。
【0085】
【表4A】
【0086】
【表4B】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
実施例3-1の投写用光学系のレンズ構成と光束の断面図を図14に示す。実施例3-1の投写用光学系は、縮小側から拡大側へ順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL1a~L1fと、開口絞りStと、レンズL1g~L1lとからなる。第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL2a~L2nからなる。
【0090】
実施例3-1の投写用光学系は、その内部に1つの中間像MIを形成する。レンズL1lとレンズL2aとの間に中間像MIが形成される。第1光学系G1は共軸系であり、第1光学系G1の全てのレンズは第1光軸AX1を共通に有する。第2光学系G2は共軸系であり、第2光学系G2の全てのレンズは第2光軸AX2を共通に有する。第1光軸AX1と第2光軸AX2とは平行である。
【0091】
図14においても図4と同様に、第1光学系G1のイメージサークルC1、使用範囲EA1、第2光学系G2のイメージサークルC2、使用範囲EA2を示す。図14の使用範囲EA1はイメージサークルC1の中心より上方で中心から離れた位置にある。すなわち、使用範囲EA1は第1光軸AX1より上方に位置する。使用範囲EA2はイメージサークルC2の下半分に位置し、使用範囲EA2の上端は第2光軸AX2上に位置する。つまり、図14に示す例では、画像表示面に表示される画像は第1光軸AX1上に位置していないが、投写像は第2光軸AX2上に位置する。
【0092】
実施例3-2の投写用光学系のレンズ構成と光束の断面図を図15に示す。実施例3-2の各レンズは実施例3-1の各レンズと同一である。実施例3-2の投写用光学系は、実施例3-1の投写用光学系から第1光軸AX1と第2光軸AX2との相対的なずれ量を大きくした光学系である。
【0093】
図15においても図4と同様に、第1光学系G1のイメージサークルC1、使用範囲EA1、第2光学系G2のイメージサークルC2、使用範囲EA2を示す。図15の使用範囲EA1は第1光軸AX1より上方に位置する。使用範囲EA2はイメージサークルC2の下半分に位置し、使用範囲EA2はその中心がイメージサークルC2の中心と一致している。つまり、図15に示す例では、画像表示面に表示される画像は第1光軸AX1上に位置していないが、投写像の中心は第2光軸AX2上に位置する。
【0094】
次に、数値データについて示す。以下では説明の便宜上、実施例3-1の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系を「実施例3の投写用光学系」として示す。実施例3の投写用光学系は、実施例3-2の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系でもある。
【0095】
実施例3の投写用光学系について、基本レンズデータを表7Aおよび表7Bに、諸元を表8に、非球面係数を表9に、各収差図を図16に示す。図16には投写面から最も拡大側のレンズ面までの距離が970.0の場合のデータを示す。
【0096】
【表7A】
【0097】
【表7B】
【0098】
【表8】
【0099】
【表9】
【0100】
実施例4-1の投写用光学系のレンズ構成と光束の断面図を図17に示す。実施例4-1の投写用光学系は変倍光学系である。図17では「WIDE」と付した上段に広角端の構成を示し、「TELE」と付した下段に望遠端の構成を示す。実施例4-1の投写用光学系は、縮小側から拡大側へ順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなる。第1光学系G1は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL1a~L1fと、開口絞りStと、レンズL1g~L1lとからなる。第2光学系G2は、縮小側から拡大側へ順に、第1レンズ群G21と、第2レンズ群G22と、第3レンズ群G23と、第4レンズ群G24と、第5レンズ群G25とからなり、変倍の際に隣り合うレンズ群の間隔が全て変化する。第1レンズ群G21はレンズL2aからなる。第2レンズ群G22は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL2b~L2fからなる。第3レンズ群G23はレンズL2gからなる。第4レンズ群G24は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL2h~L2iからなる。第5レンズ群G25は、縮小側から拡大側へ順に、レンズL2j~L2kからなる。
【0101】
実施例4-1の投写用光学系は、その内部に1つの中間像MIを形成する。レンズL1lとレンズL2aとの間に中間像MIが形成される。第1光学系G1は共軸系であり、第1光学系G1の全てのレンズは第1光軸AX1を共通に有する。第2光学系G2は共軸系であり、第2光学系G2の全てのレンズは第2光軸AX2を共通に有する。第1光軸AX1と第2光軸AX2とは平行である。
【0102】
実施例4-2の投写用光学系のレンズ構成と光束の断面図を図18に示す。実施例4-2の各レンズは実施例4-1の各レンズと同一である。実施例4-2の投写用光学系は、実施例4-1の投写用光学系から第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を大きくした光学系である。
【0103】
次に、数値データについて示す。以下では説明の便宜上、実施例4-1の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系を「実施例4の投写用光学系」として示す。実施例4の投写用光学系は、実施例4-2の第1光軸AX1と第2光軸AX2とを同一直線上にした投写用光学系でもある。
【0104】
実施例4の投写用光学系について、基本レンズデータを表10Aおよび表10Bに、諸元を表11に、非球面係数を表12に、各収差図を図19に示す。表10Aでは、変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の拡大側の面番号を付してDの欄に記入している。表11には、変倍比Zr、焦点距離の絶対値|f|、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、最大像高Ymax、および、変倍の際の可変面間隔をd線基準で示す。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表11では、広角端、および望遠端の各値をそれぞれWIDE、およびTELEと表記した欄に示している。図19では、「WIDE」と付した上段に広角端における各収差図を示し、「TELE」と付した下段に望遠端における各収差図を示す。図19には投写面から最も拡大側のレンズ面までの距離が1630.0の場合のデータを示す。
【0105】
【表10A】
【0106】
【表10B】
【0107】
【表11】
【0108】
【表12】
【0109】
表13に実施例1~4の投写用光学系の条件式(1)~(7)の対応値を示す。表14には、第1光学系G1の焦点距離f1、第2光学系G2の焦点距離の絶対値|f2|、および条件式に関する数値を示す。実施例1~4はd線を基準波長としており、表13および表14にはd線基準での値を示す。
【0110】
【表13】
【0111】
【表14】
【0112】
以上のデータからわかるように、実施例1~4の投写用光学系は小型に構成されながらも各収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。特に、実施例1、2の投写用光学系は全画角で130度以上という広い画角を確保しながらも小型に構成されて高い光学性能を実現している。
【0113】
次に、本開示の実施形態に係る投写型表示装置について説明する。図20は、本開示の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図20に示す投写型表示装置100は、光源101と、照明光学系102と、画像表示素子としてのDMD103と、本開示の一実施形態にかかる投写用光学系104と、光軸制御部106と、レンズシフト機構107とを備えている。図20では、第1光学系G1および第2光学系G2を概念的に図示している。投写型表示装置100では、図1を参照して上記で説明したように第1光学系G1の第1光軸AX1と第2光学系G2の第2光軸AX2との相対位置が可変に構成されている。図20では、図の煩雑化を避けるため第1光軸AX1および第2光軸AX2の符号の図示を省略している。光軸制御部106は、第1光軸AX1および第2光軸AX2の少なくとも一方を制御して第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を変化させる。ずれ量が0の場合は第1光軸AX1と第2光軸AX2とは同一直線上にあり、ずれ量が0以外の場合は第1光軸AX1と第2光軸AX2とは平行である。
【0114】
投写型表示装置100において、光源101より出射された光束は、不図示のカラーホイールによって、赤色光、緑色光、青色光の3原色光に時系列的に選択変換され、照明光学系102によって光束の光軸Zと垂直な断面における光量分布の均一化が図られた後、DMD103に入射する。DMD103においては、入射光の色の切り替わりに応じて、その色光用への変調切替が行われる。DMD103により光変調された光は、投写用光学系104に入射する。投写用光学系104により、この光変調された光による光学像がスクリーン105に投写される。レンズシフト機構107は、不図示のプロセッサによって制御され、DMD103に対して投写用光学系104を光軸に垂直な方向にシフトさせる。これによって、スクリーン105に投写される投写像の位置を調整することができる。また、光軸制御部106は第1光軸AX1と第2光軸AX2とのずれ量を変化させることができる。これによっても、スクリーン105に投写される投写像の位置を調整することができる。
【0115】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術について説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0116】
また、本開示の技術に係る投写型表示装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、光束分離又は光束合成に用いられる光学部材、および画像表示素子は、種々の態様の変更が可能である。画像表示素子は、光源からの光を画像表示素子により空間変調して、画像データに基づく光学像を画像として出力する態様に限定されず、自発光型の画像表示素子から出力された光自体を、画像データに基づく光学像を画像として出力する態様であってもよい。自発光型の画像表示素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)等の発光素子が2次元配列された画像表示素子が挙げられる。
【0117】
また、上記実施形態では、第1光学系G1および第2光学系G2がともに共軸系の場合について説明したが、第1光学系G1および第2光学系G2の一方もしくは両方を共軸系にしない構成にしてもよい。そのように構成する場合は、第1光学系の最も拡大側の光学素子の光軸を第1光軸とし、第2光学系の最も縮小側の光学素子の光軸を第2光軸として考える。
【符号の説明】
【0118】
2、22 画像
4、24 中間像
6、26 投写像
8 主光線
10、104 投写用光学系
51、61 光源
52、62 カラーホイール
53、63 導光光学系
54、65 DMD
55、66 投写用レンズ
56、67、105 スクリーン
64 TIRプリズム
100、500、600 投写型表示装置
101 光源
102 照明光学系
103 DMD
106 光軸制御部
107 レンズシフト機構
AX1 第1光軸
AX2 第2光軸
C1、C2 イメージサークル
EA1、EA2 使用範囲
G1 第1光学系
G2 第2光学系
G21 第1レンズ群
G22 第2レンズ群
G23 第3レンズ群
G24 第4レンズ群
G25 第5レンズ群
L1a~L1l、L2a~L2s レンズ
MI 中間像
MI1 第1中間像
MI2 第2中間像
PP 光学部材
R1、R2、R3 ミラー
Scr スクリーン
Sim 画像表示面
St 開口絞り
Ymax 最大像高
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22