IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特開2022-37025転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法
<>
  • 特開-転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法 図1
  • 特開-転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法 図2
  • 特開-転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法 図3
  • 特開-転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法 図4
  • 特開-転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法 図5
  • 特開-転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037025
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220301BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20220301BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20220301BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220301BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220301BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20220301BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220301BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/075 501
G03F7/11 501
G03F7/004 512
B32B27/00 L
B32B27/20 Z
B32B7/06
G06F3/041 660
G06F3/044 125
G06F3/044 127
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195726
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2020552952の分割
【原出願日】2019-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2018196602
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019020457
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019083007
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】霜山 達也
(57)【要約】
【課題】密着性に優れ、低ヘイズである膜を形成することができる転写フィルムの提供、並びに、上記転写フィルムを用いた硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法の提供。
【解決手段】下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす転写フィルム、並びに、上記転写フィルムを用いた硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法。
(1)仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層とを有し、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
(2)仮支持体と 、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層と、第2の透明層とを有し、上記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす転写フィルム。
(1)仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層とを有し、前記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
(2)仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層と、第2の透明層とを有し、前記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
【請求項2】
前記(2)を満たす請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子における前記酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含む請求項1又は請求項2に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子の平均一次粒子径が、10nm以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子において、前記酸化チタンの含有量に対する前記酸化スズの含有量が5質量%以上である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子が、前記酸化チタン及び前記酸化スズ以外の無機酸化物を更に含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子を含有する層が、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤を更に含有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項8】
タッチパネルにおける保護膜形成用転写フィルムである請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項9】
支持体上に、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の転写フィルムにおける前記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、
前記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化膜を形成する工程と、を含む
硬化膜の製造方法。
【請求項10】
電極を有する基板上に、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の転写フィルムにおける前記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、
前記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し、硬化層を形成する工程と、を含む
積層体の製造方法。
【請求項11】
前記電極が、静電容量型入力装置の電極である請求項10に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
基板上にタッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程、
前記タッチパネル用基板の前記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された側の面の上に、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の転写フィルムを用いて感光性層を形成する工程と、
前記タッチパネル用基板上に形成された前記感光性層をパターン露光する工程と、
パターン露光された前記感光性層を現像することにより、前記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の少なくとも一部を保護するタッチパネル用保護膜を得る工程と、を含む
タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写フィルム、硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機、銀行の端末などの電子機器では、近年、液晶装置などの表面にタブレット型の入力装置が配置される。液晶装置の画像表示領域に表示された指示画像を参照しながら、指示画像が表示されている箇所に指又はタッチペンなどを触れることで、指示画像に対応する情報の入力が行える装置がある。
【0003】
既述の如き入力装置(以下、タッチパネルと称することがある。)には、抵抗膜型、静電容量型などがある。静電容量型入力装置は、単に一枚の基板に透光性導電膜を形成すればよいという利点がある。かかる静電容量型入力装置では、例えば、互いに交差する方向に電極パターンを延在させて、指などが接触した際、電極間の静電容量が変化することを検知して入力位置を検出するタイプの装置がある。
静電容量型入力装置の電極パターンや枠部にまとめられた引き回し配線(例えば銅線などの金属配線)などを保護する等の目的で、指などで入力する表面とは反対側に透明樹脂層が設けられている。
【0004】
また、従来の転写フィルムとしては、特許文献1に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、仮支持体と、第一の透明樹脂層と、第二の透明樹脂層とをこの順で有し、上記第二の透明樹脂層が金属酸化物粒子及び有機成分を含み、上記第二の透明樹脂層の中の上記金属酸化物粒子を構成する金属原子の上記有機成分を構成する炭素原子に対する比率の厚み方向分布プロファイルの面積をAとし、上記プロファイルのピーク高さをPとした場合に以下の式(1)を満たす転写フィルムが記載されている。
0.01(nm)-1≦P/A≦0.08(nm)-1 式(1)
また、上記金属酸化物粒子として、酸化チタン粒子を用いた例も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-64988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、密着性に優れ、低ヘイズである膜を形成することができる転写フィルムを提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記転写フィルムを用いた硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす転写フィルム。
(1)仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層とを有し、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
(2)仮支持体と 、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層と、第2の透明層とを有し、上記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
<2> 上記(2)を満たす<1>に記載の転写フィルム。
<3> 上記金属酸化物粒子における上記酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含む<1>又は<2>に記載の転写フィルム。
<4> 上記金属酸化物粒子の平均一次粒子径が、10nm以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の転写フィルム。
<5> 上記金属酸化物粒子において、上記酸化チタンの含有量に対する上記酸化スズの含有量が5質量%以上である<1>~<4>のいずれか1つに記載の転写フィルム。
<6> 上記金属酸化物粒子が、上記酸化チタン及び上記酸化スズ以外の無機酸化物を更に含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の転写フィルム。
<7> 上記金属酸化物粒子を含有する層が、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤を更に含有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の転写フィルム。
<8> タッチパネルにおける保護膜形成用転写フィルムである<1>~<7>のいずれか1つに記載の転写フィルム。
<9> 支持体上に、<1>~<8>のいずれか1つに記載の転写フィルムにおける上記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、上記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化膜を形成する工程と、を含む硬化膜の製造方法。
<10> 電極を有する基板上に、<1>~<8>のいずれか1つに記載の転写フィルムにおける上記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、上記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法。
<11> 上記電極が、静電容量型入力装置の電極である<10>に記載の積層体の製造方法。
<12> 基板上にタッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程と、上記タッチパネル用基板の上記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された側の面の上に、<1>~<8>のいずれか1つに記載の転写フィルムを用いて感光性層を形成する工程と、上記タッチパネル用基板上に形成された上記感光性層をパターン露光する工程と、パターン露光された上記感光性層を現像することにより、上記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の少なくとも一部を保護するタッチパネル用保護膜を得る工程と、を含むタッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、密着性に優れ、低ヘイズである膜を形成することができる転写フィルムを提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記転写フィルムを用いた硬化膜の製造方法、積層体の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る転写フィルムの一例を示す概略断面図である。
図2】本開示に係る転写フィルムの他の一例を示す概略断面図である。
図3】本開示に係るタッチパネルの第1具体例を示す概略断面図である。
図4】本開示に係るタッチパネルの第2具体例を示す概略断面図である。
図5】本開示に用いられるカバーモジュールの一例を表示装置ともに示す断面図である。
図6】本開示に用いられるカバーモジュールの他の一例の示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、樹脂中の構成単位の割合は、特に断りが無い限り、モル割合を表す。
本開示において、分子量分布がある場合の分子量は、特に断りが無い限り、重量平均分子量(Mw)を表す。
本開示において、特段の断りが無い限り、屈折率は、エリプソメーターにより25℃において測定した波長550nmの光での値である。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0011】
(転写フィルム)
本開示に係る転写フィルムは、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす。
(1)仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層とを有し、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
(2)仮支持体と 、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層と、第2の透明層とを有し、上記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
すなわち、本開示に係る転写フィルムの第1の実施態様は、仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層とを有し、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
また、本開示に係る転写フィルムの第2の実施態様は、仮支持体と 、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層と、第2の透明層とを有し、上記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
密着性及びヘイズの観点から、特定粒子を上記第2の透明層に含有すること(上記(2)、上記第2の実施態様)が好ましい。第2の透明層に特定粒子を含有させること(第2の実施態様)で、転写して形成した積層体において、透明電極パターンの隠蔽性に優れる。
本開示に係る転写フィルムの第2の実施態様においては、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を更に含有していてもよい。
なお、本開示において、「本開示に係る転写フィルム」と述べる場合は、上記第1の実施態様及び上記第2の実施態様の両方を含むものとする。
また、本開示において、単に「第1の透明層」と述べる場合は、上記第1の実施態様及び上記第2の実施態様の両方を含むものとする。
また、本開示に係る転写フィルムは、タッチパネルにおける保護膜形成用転写フィルムとして好適に用いることができ、タッチパネルにおける透明電極保護膜形成用転写フィルムとしてより好適に用いることができる。
更に、本開示に係る転写フィルムは、屈折率調整層形成用転写フィルムとしても好適に用いることができる。
【0012】
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、密着性に優れ、低ヘイズである膜を形成することができる転写フィルムを提供することができることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有することにより、特に酸化スズを含むことで樹脂との相性が良く、低ヘイズである膜が得られる。また、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有することにより、酸化チタン及び酸化スズ、特に酸化チタンの屈折率が高いため、少ない量の金属酸化物添加で所望の屈折率を実現できるようになる。そのため、転写フィルム中の有機成分を多くできることで基材に対する密着性を向上することができると推定される。
【0013】
なお、本開示における「ヘイズ」とは、透明性に関する指標で、濁度(曇度)を表すものであり、ヘイズ値が小さいほど、曇り及び濁りが少なく、透明性に優れる。
【0014】
以下、本開示に係る転写フィルムについて、第1の実施態様、第2の実施態様の順に詳細に説明する。
【0015】
〔第1の実施態様〕
本開示に係る転写フィルムの第1の実施態様は、仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層とを有し、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
【0016】
<仮支持体>
本開示に係る転写フィルムは、仮支持体を有する。
仮支持体は、フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。
仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮又は伸びを生じないフィルムを用いることができる。
このようなフィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
また、仮支持体として使用するフィルムは、シワ等の変形や、傷がないものであることが好ましい。
仮支持体として使用するフィルムのヘイズは1.0%以下が好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。フィルムに含まれる直径5μm以上の粒子及び直径5μm以上の凝集物の総数が5個/mm以下であることが好ましい。
また、仮支持体の両面において、仮支持体における樹脂中の気泡の破裂によって生じる直径が40μm以上100μm以下の破泡痕の密度が、5個/0.25m以下であることが好ましい。
また、仮支持体における第1の透明層側の面の表面粗さSa(SRa)は20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。SRzは100nm以下であることが好ましい。仮支持体の第1の透明層と接しない面の表面粗さSRaは20nm以下であることが好ましく、1nm~12nmであることがより好ましい。面の最大高さSz(SRz)は300nm以下であることが好ましい。
上記を満たす2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、ルミラー16QS62(東レ(株)製)、ルミラー16QS52(東レ(株)製)、ルミラー16QS48(東レ(株)製)、ルミラー12QS62(東レ(株)製)などが挙げられる。
【0017】
仮支持体の厚みは、特に制限はないが、3μm~200μmであることが好ましく、4μm~50μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることが特に好ましい。
【0018】
<第1の透明層>
本開示に係る転写フィルムの第1の実施態様は、仮支持体と、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層とを有し、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
第1の透明層における酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子については、後述する。
本開示において、「透明」とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が、80%以上であることを意味する。したがって、「透明層」とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が80%以上である層を指す。「透明層」の可視光の透過率は、90%以上であることが好ましい。
また、転写フィルム及び転写フィルムの各層の光透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、例えば、(株)日立製作所製の分光光度計U-3310を用いて測定することができる。
【0019】
-酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子-
本開示に係る転写フィルムの第1の実施態様は、上記第1の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
以下、上記酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を「特定粒子」ともいう。
【0020】
特定粒子は、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子、すなわち、酸化チタン-酸化スズ複合粒子である。
特定粒子における酸化チタンは、ヘイズの観点から、二酸化チタンであることが好ましい。
特定粒子における酸化チタン(二酸化チタン)における結晶構造は、アナターゼ型(正方晶)、ルチル型(正方晶)、ブルッカイト型(斜方晶)のいずれであってもよい。
中でも、得られる膜の屈折率、密着性、ヘイズ、及び、耐光性の観点から、特定粒子は、ルチル型酸化チタンを含むことが好ましく、ルチル型酸化チタンであることがより好ましい。
また、特定粒子における酸化スズは、ヘイズの観点から、二酸化スズであることが好ましい。
【0021】
特定粒子は、密着性及びヘイズの観点から、酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物を含むことが好ましい。
上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む酸化物が挙げられる。
なお、本開示における金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれる。
中でも、上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物としては、密着性、ヘイズ、及び、耐光性の観点から、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び、酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物が好ましく、二酸化ケイ素がより好ましい。
上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物は、1種単独で含有されていても、2種以上を含有されていてもよい。
【0022】
また、特定粒子は、親水化処理、疎水化処理等の表面処理が施された粒子であってもよい。
表面処理方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0023】
特定粒子における酸化チタンの含有量は、得られる膜の屈折率、密着性及びヘイズの観点から、特定粒子の全質量に対し、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上95質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。
【0024】
特定粒子における酸化スズの含有量は、得られる膜の屈折率、密着性及びヘイズの観点から、特定粒子の全質量に対し、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
特定粒子が上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物を含む場合、特定粒子における酸化チタンの含有量に対する上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物の含有量は、得られる膜の屈折率、密着性及びヘイズ、耐光性の観点から、特定粒子の全質量に対し、0.1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上30質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0026】
特定粒子の形状は、特に制限はなく、球状、紡錘状、角柱状、円柱状、平板状、不定形状等が挙げられる。
特定粒子の平均一次粒子径は、密着性及びヘイズの観点から、100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましく、1nm以上10nmであることが特に好ましい。
本開示における特定粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡により任意の粒子200個の粒子径を測定し、その算術平均をいう。また、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を径とする。
【0027】
本開示における転写フィルムは、特定粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
上記第1の実施態様における上記第1の透明層に含有される特定粒子の含有量は、得られる膜の屈折率、透明電極パターンの隠蔽性、密着性及びヘイズの観点から、上記第1の透明層の全質量に対し、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上80質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以上70質量%以下であることが特に好ましい。
【0028】
<<重合性化合物>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、重合性化合物を含有する。
重合性化合物は、感光性(すなわち、光硬化性)、及び、得られる硬化膜の強度に寄与する成分である。
上記重合性化合物としては、重合可能な化合物、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物等が挙げられるが、エチレン性不飽和化合物が好ましく挙げられる。
エチレン性不飽和化合物は、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
エチレン性不飽和化合物としては、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
ここで、2官能以上のエチレン性不飽和化合物とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0029】
上記第1の透明層は、硬化後の硬化性の観点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含有することが特に好ましい。
【0030】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、より具体的には、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業(株)製)、ポリテトラメチレングリコール#650ジアクリレート(A-PTMG-65、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0031】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0032】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0033】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0034】
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(好ましくは3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物)も挙げられる。
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0035】
また、エチレン性不飽和化合物は、現像性向上の観点から、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
酸基としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基、及び、カルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、酸基を有する3~4官能のエチレン性不飽和化合物(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=80mgKOH/g~120mgKOH/g))、酸基を有する5~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=25mgKOH/g~70mgKOH/g))、等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0036】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより現像性、及び、硬化膜の強度が高まる。
カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、又は、アロニックスM-510(東亞合成(株)製)を好ましく用いることができる。
【0037】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物は、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物であることも好ましい。この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0038】
本開示に用いられるエチレン性不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)としては、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。
また、上記第1の透明層に含まれるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、上記第1の透明層に含有されるすべてのエチレン性不飽和化合物に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0039】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~70質量%がより好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
【0040】
また、上記第1の透明層が2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物とを含有する場合、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~85質量%がより好ましく、30質量%~80質量%が更に好ましい。
また、この場合、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、15質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、この場合、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との総含有量に対し、40質量%以上100質量%未満であることが好ましく、40質量%~90質量%であることがより好ましく、50質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0041】
また、上記第1の透明層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記第1の透明層は、更に単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
更に、上記第1の透明層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記第1の透明層に含有されるエチレン性不飽和化合物において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が主成分であることが好ましい。
具体的には、上記第1の透明層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層に含有されるエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、40質量%~100質量%が好ましく、50質量%~100質量%がより好ましく、60質量%~100質量%が特に好ましい。
【0042】
また、上記第1の透明層が、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物又はそのカルボン酸無水物)を含有する場合、酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0043】
<<重合開始剤>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、重合開始剤を含有する。
重合開始剤としては特に制限はなく、公知の重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、光重合開始剤、及び、熱重合開始剤が好ましく挙げられ、光重合開始剤がより好ましく挙げられる。
光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0044】
光重合開始剤は、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0045】
また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、特開2015-014783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0046】
光重合開始剤の市販品としては、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:IRGACURE 379EG、BASF社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 907、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 127、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(商品名:IRGACURE 369、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE 184、BASF社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:IRGACURE 651、BASF社製)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0047】
光重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、上記第1の透明層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。
また、光重合開始剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0048】
<<樹脂>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、樹脂を含む。
上記樹脂としては、バインダーポリマーであることが好ましい。
上記樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
上記樹脂は、特に制限はないが、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上の樹脂であることが好ましく、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂であることが特に好ましい。
【0049】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂(以下、特定重合体Aと称することがある。)としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて特に制限はなく、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。
例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂であるバインダーポリマー、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂等が、本実施形態における特定重合体Aとして好ましく用いることができる。
ここで、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の少なくとも一方を含む樹脂を指す。
(メタ)アクリル樹脂中における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。
【0050】
特定重合体Aにおける、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の割合は、特定重合体A100質量%に対して、好ましくは5質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~40質量%、更に好ましくは10質量%~30質量%の範囲内である。
特定重合体Aは、反応性基を有していてもよく、反応性基を特定重合体Aに導入する手段としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、スルホン酸などに、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート化合物、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、カルボン酸無水物などを反応させる方法が挙げられる。
これらの中でも、反応性基としては、ラジカル重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和基であることがより好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることが特に好ましい。
【0051】
また、上記樹脂、特に特定重合体Aは、硬化後の透湿度及び強度の観点から、芳香環を有する構成単位を有することが好ましい。
芳香環を有する構成単位を形成するモノマーとしては、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香環を有する構成単位としては、後述する式P-2で表される構成単位を少なくとも1種含有することが好ましい。また、芳香環を有する構成単位としては、スチレン化合由来の構成単位であることが好ましい。
【0052】
上記樹脂が芳香環を有する構成単位を含有する場合、芳香環を有する構成単位の含有量は、上記樹脂の全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0053】
また、上記樹脂、特に特定重合体Aは、タック性、及び、硬化後の強度の観点から、脂肪族環式骨格を有する構成単位を有することが好ましい。
脂肪族環式骨格を有する構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記脂肪族環式骨格を有する構成単位が有する脂肪族環としては、ジシクロペンタン環、シクロヘキサン環、イソボロン環、トリシクロデカン環等が好ましく挙げられる。中でも、トリシクロデカン環が特に好ましく挙げられる。
【0054】
上記樹脂が脂肪族環式骨格を有する構成単位を含有する場合、脂肪族環式骨格を有する構成単位の含有量は、上記樹脂の全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、20質量%~70質量%であることが更に好ましい。
【0055】
また、上記樹脂、特に特定重合体Aは、タック性、及び、硬化後の強度の観点から、エチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましく、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を有することがより好ましい。
なお、本開示において、「主鎖」とは樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリル基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
上記樹脂がエチレン性不飽和基を有する構成単位を含有する場合、エチレン性不飽和基を有する構成単位の含有量は、上記樹脂の全質量に対し、5質量%~70質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0056】
本開示に用いられる上記樹脂の酸価は、60mgKOH/g以上であることが好ましく、60mgKOH/g~200mgKOH/gであることがより好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gであることが更に好ましく、60mgKOH/g~130mgKOH/gであることが特に好ましい。
本明細書において、酸価は、JIS K0070(1992年)に記載の方法に従って、測定された値を意味する。
【0057】
特定重合体Aの重量平均分子量は、5,000以上が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
【0058】
また、上記樹脂は、上記特定重合体A以外にも、任意の膜形成樹脂を目的に応じて適宜選択して用いることができる。転写フィルムを静電容量型入力装置の電極保護膜として用いる観点から、表面硬度、耐熱性が良好な膜が好ましく、アルカリ可溶性樹脂がより好ましく、アルカリ可溶性樹脂の中でも、公知の感光性シロキサン樹脂材料などを好ましく挙げることができる。
【0059】
本開示に用いられる上記樹脂としては、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を含む重合体(以下、特定重合体Bとも称する。)を含むことが好ましい。特定重合体Bを含むことにより、現像性、及び、硬化後の強度により優れる。
カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造及び環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。
環状カルボン酸無水物構造の環としては、5~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環が更に好ましい。
また、環状カルボン酸無水物構造は、他の環構造と縮環又は結合して多環構造を形成していてもよいが、多環構造を形成していないことが好ましい。
【0060】
環状カルボン酸無水物構造に他の環構造が縮環又は結合して多環構造を形成している場合、多環構造としては、ビシクロ構造又はスピロ構造が好ましい。
多環構造において、環状カルボン酸無水物構造に対し縮環又は結合している他の環構造の数としては、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
他の環構造としては、炭素数3~20の環状の炭化水素基、炭素数3~20のヘテロ環基等が挙げられる。
ヘテロ環基としては、特に限定されないが、脂肪族ヘテロ環基及び芳香族ヘテロ環基が挙げられる。
また、ヘテロ環基としては、5員環又は6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。
また、ヘテロ環基としては、酸素原子を少なくとも一つ含有するヘテロ環基(例えば、オキソラン環、オキサン環、ジオキサン環等)が好ましい。
【0061】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位であるか、又は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
【0062】
【化1】

【0063】
式P-1中、RA1aは置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよい。
1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表す。n1aは0以上の整数を表す。
【0064】
A1aで表される置換基としては、上述したカルボン酸無水物構造が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0065】
1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が特に好ましい。
【0066】
式P-1で表される部分構造は、他の環構造と縮環又は結合して多環構造を形成していてもよいが、多環構造を形成していないことが好ましい。
ここでいう他の環構造としては、上述した、カルボン酸無水物構造と縮環又は結合してもよい他の環構造と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0067】
1aは、0以上の整数を表す。
1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは0~4の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0が更に好ましい。
1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
【0068】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位であることが好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることがより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることが更に好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位であることが更に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位であることが特に好ましい。
【0069】
以下、カルボン酸無水物構造を有する構成単位の具体例を挙げるが、カルボン酸無水物構造を有する構成単位はこれらの具体例に限定されるものではない。
下記の構成単位中、Rxは、水素原子、メチル基、CHOH基、又はCF基を表し、Meは、メチル基を表す。
【0070】
【化2】

【0071】
【化3】

【0072】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位としては、上記式a2-1~式a2-21のいずれかで表される構成単位のうちの少なくとも1種であることが好ましく、上記式a2-1~式a2-21のいずれかで表される構成単位のうちの1種であることがより好ましい。
【0073】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、現像性、及び、得られる硬化膜の透湿度の観点から、式a2-1で表される構成単位及び式a2-2で表される構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、式a2-1で表される構成単位を含むことがより好ましい。
【0074】
特定重合体Bにおけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位の含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、特定重合体Bの全量に対し、0モル%を超え60モル%以下であることが好ましく、5モル%~40モル%であることがより好ましく、10モル%~35モル%であることが更に好ましい。
なお、本開示において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、当該「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本開示において上記「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0075】
特定重合体Bは、下記式P-2で表される構成単位を少なくとも1種含有することが好ましい。これにより、得られる硬化膜の透湿度がより低くなり、また、強度がより向上する。
【0076】
【化4】

【0077】
式P-2中、RP1は、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を表し、RP2は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nPは0~5の整数を表す。nPが2以上の整数である場合、2つ以上存在するRP1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
P1としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、カルボキシ基、F原子、Cl原子、Br原子、又はI原子であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、Cl原子、又はBr原子であることがより好ましい。
P2としては、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素原子6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0079】
nPは、0~3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0080】
式P-2で表される構成単位としては、スチレン化合物に由来する構成単位であることが好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,p-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられ、スチレン又はα-メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
式P-2で表される構成単位を形成するためのスチレン化合物は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
【0081】
特定重合体Bが式P-2で表される構成単位を含有する場合、特定重合体Bにおける式P-2で表される構成単位の含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、特定重合体Bの全量に対し、5モル%~90モル%であることが好ましく、30モル%~90モル%であることがより好ましく、40モル%~90モル%であることが更に好ましい。
【0082】
特定重合体Bは、カルボン酸無水物構造を有する構成単位及び式P-2で表される構成単位以外のその他の構成単位を少なくとも1種含んでいてもよい。
その他の構成単位は、酸基を含有しないことが好ましい。
その他の構成単位としては特に限定されないが、単官能エチレン性不飽和化合物に由来する構成単位が挙げられる。
上記単官能エチレン性不飽和化合物としては、公知の化合物を特に限定なく用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物;アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物の誘導体;等が挙げられる。
【0083】
特定重合体Bにおけるその他の構成単位の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、特定重合体Bの全量に対し、0モル%~90モル%であることが好ましく、0モル%~70モル%であることがより好ましい。
【0084】
上記樹脂の重量平均分子量は、特に制限はないが、3,000を超えることが好ましく、3,000を超え60,000以下であることがより好ましく、5,000~50,000であることが更に好ましい。
【0085】
上記樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を含有してもよい。
上記樹脂の含有量は、得られる硬化膜の強度、及び、転写フィルムにおけるハンドリング性の観点から、上記第1の透明層の全質量に対し、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
上記樹脂に対する上記重合性化合物の質量割合(上記重合性化合物の含有量/上記樹脂の含有量)は、転写フィルムにおけるハンドリング性の観点から、0.20~2.0が好ましく、0.30~1.5がより好ましく、0.35~0.95が特に好ましい。
【0086】
<<熱架橋性化合物>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、硬化後の硬度の観点から、熱架橋性化合物を含有することが好ましく、ブロックイソシアネート化合物を含有することがより好ましい。
なお、熱架橋性化合物とは、「加熱により架橋反応を起こし得る官能基(熱架橋性基)を1分子中に1つ以上有する化合物」をいう。
熱架橋性化合物としては、ブロックイソシアネート化合物、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物のエポキシ化合物、メラミン系化合物などが挙げられる。
中でも、現像残渣抑制性、並びに、得られる硬化膜の透湿度及び曲げ耐性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(マスク)した構造を有する化合物」のことをいう。
【0087】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、100℃~160℃であることが好ましく、130℃~150℃であることがより好ましい。
本明細書中におけるブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200)によりDSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合に、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」のことをいう。
【0088】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、ピラゾール化合物(3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾールなど)、活性メチレン化合物(マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル)など)、トリアゾール化合物(1,2,4-トリアゾールなど)、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどの分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)などが挙げられる。中でも、保存安定性の観点から、オキシム化合物、又は、ピラゾール化合物が好ましく、オキシム化合物が特に好ましい。
【0089】
また、ブロックイソシアネート化合物がイソシアヌレート構造を有することが膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から好ましい。イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えばヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより調製することができる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、現像残渣を少なくしやすい観点から好ましい。
【0090】
本開示に用いられるブロックイソシアネート化合物は、硬化後の硬度の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましい。
ラジカル重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、例えば、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基等のエチレン性不飽和基、グリシジル基等のエポキシ基を有する基などが挙げられる。中でも、重合性基としては、得られる硬化膜における表面の面状、現像速度及び反応性の観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることがより好ましい。
【0091】
本開示に用いられるブロックイソシアネート化合物としては、市販のブロックイソシアネート化合物を挙げることもできる。例えば、カレンズAOI-BM、カレンズMOI-BM、カレンズ、カレンズMOI-BP(いずれも昭和電工(株)製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0092】
本開示に用いられるブロックイソシアネート化合物は、分子量が200~3,000であることが好ましく、250~2,600であることがより好ましく、280~2,200であることが特に好ましい。
【0093】
本開示においては、熱架橋性化合物を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
熱架橋性化合物の含有量は、得られる硬化膜の強度の観点から、上記第1の透明層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0094】
<<複素環化合物>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、複素環化合物を更に含むことが好ましい。
上記複素環化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。中でも、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、窒素原子、及び、硫黄原子、及び、酸素原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子をヘテロ原子として有することが好ましく、窒素原子を少なくともヘテロ原子として有することがより好ましい。
上記複素環化合物としては、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、窒素原子を有することが好ましく、上記複素環化合物における複素環が窒素原子を含むことがより好ましく、上記複素環化合物における複素環が窒素原子を含む5員環であることが更に好ましく、上記複素環化合物における複素環が窒素原子及び硫黄原子及び酸素原子を含む5員環であることが特に好ましい。
また、上記複素環化合物の複素環としては、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、5員環、又は、6員環であることが好ましく、5員環であることがより好ましい。
【0095】
上記複素環化合物は、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、メルカプト基(チオール基)を有する複素環化合物であることが好ましく、複素環上にメルカプト基が直接結合した複素環化合物であることがより好ましい。
また、上記複素環化合物がメルカプト基を有する場合、上記複素環化合物におけるメルカプト基の数は、特に制限はないが、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0096】
上記複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、又は、ピリミジン化合物が好ましく挙げられる。
中でも、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、又は、ベンゾオキサゾール化合物が好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、又は、ベンゾオキサゾール化合物がより好ましく、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、又は、ベンゾオキサゾール化合物が特に好ましい。
【0097】
上記複素環化合物としては特に制限はないが、密着性、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、下記式H1~式H13のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0098】
【化5】

【0099】
式H1~式H13中、R1h、R5h、R7h、R9h、R20h及びR25hはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアミノ基を表し、R2h~R4h、R8h、R10h~R13h、R15h~R18h、R22h、R24h、R26h~R28h及びR30hはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、R6h、R14h、R21h、R23h及びR29hはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、R19hは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、n1~n5はそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
【0100】
なお、上記式H1又は式H2で表される化合物はトリアゾール化合物であり、上記式H3で表される化合物はベンゾトリアゾール化合物であり、上記式H4で表される化合物はテトラゾール化合物であり、上記式H5~式H7で表される化合物はチアジアゾール化合物であり、上記式H8で表される化合物はトリアジン化合物であり、上記式H9で表される化合物はローダニン化合物であり、上記式H10で表される化合物はベンゾチアゾール化合物であり、上記式H11で表される化合物はベンゾイミダゾール化合物であり、上記式H12で表される化合物はチアゾール化合物であり、上記H13で表される化合物は、ベンゾオキサゾール化合物である。
【0101】
1h、R7h、R9h、R20h及びR25hはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
5hは、水素原子、アルキル基又はアミノ基であることが好ましく、水素原子又はアミノ基であることがより好ましい。
2h~R4h、R8h、R10h~R13h、R15h~R18h、R22h、R24h、R26h~R28h及びR30hはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、メルカプト基又はアルキルチオ基であることが好ましく、水素原子、アミノ基、メルカプト基又はアルキルチオ基であることがより好ましい。
15h~R17hはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、メルカプト基又はアルキルチオ基であることが好ましく、アミノ基又はヘテロアリール基であることがより好ましく、アミノ基又はピリジル基であることが特に好ましい。
また、合成上の観点から、R15h~R17hは、同じ基であることが好ましい。
18hは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、メルカプト基又はアルキルチオ基であることが好ましく、水素原子、アミノ基、メルカプト基又はアルキルチオ基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
6h、R14h、R21h、R23h及びR29hはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はカルボキシ基であることがより好ましい。
また、R6h、R14h、R21h、R23h及びR29hは、上記各式におけるベンゼン環上の任意の位置の水素原子を置換し結合することができる。
19hは、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
n1~n5はそれぞれ独立に、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0102】
上記複素環化合物は、密着性の観点から、上記式H1、式H2及び式H4~式H13のいずれかで表される化合物であることが好ましく、上記式H4~式H13のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、上記式H5~式H7、式H10及び式H13のいずれかで表される化合物であることが更に好ましく、上記式H5~式H7及び式H13のいずれかで表される化合物であることが特に好ましい。
また、上記複素環化合物は、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、上記式H5~式H7及び式H13のいずれかで表される化合物であることが好ましく、上記式H5、式H6及び式H13のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、上記式H6で表される化合物、又は、上記式H13で表される化合物であることが更に好ましく、上記式H13で表される化合物であることが特に好ましい。
【0103】
上記複素環化合物として、具体的には、以下に示す化合物が好ましく例示できる。
トリアゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0104】
【化6】

【0105】
テトラゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0106】
【化7】

【0107】
チアジアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0108】
【化8】

【0109】
トリアジン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0110】
【化9】

【0111】
ローダニン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0112】
【化10】

【0113】
チアゾール化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0114】
【化11】

【0115】
ベンゾチアゾール化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0116】
【化12】

【0117】
ベンゾイミダゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0118】
【化13】

【0119】
ベンゾオキサゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0120】
【化14】

【0121】
上記第1の透明層は、上記複素環化合物を、1種単独で含有しても、2種以上を含有してもよい。
上記複素環化合物の含有量は、特に制限はないが、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、上記第1の透明層の全質量に対して、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~8質量%であることが更に好ましく、1質量%~5質量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、得られる硬化物の硬度及び金属配線への腐食防止性により優れ、また、得られる硬化物の透明性に優れる。
【0122】
<<チオール化合物>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、チオール化合物を更に含むことが好ましい。
チオール化合物としては、単官能チオール化合物、又は、多官能チオール化合物が好適に用いられる。中でも、硬化後の硬度の観点から、2官能以上のチオール化合物(多官能チオール化合物)を含むことが好ましく、多官能チオール化合物であることがより好ましい。
本開示において多官能チオール化合物とは、メルカプト基(チオール基)を分子内に2個以上有する化合物を意味する。多官能チオール化合物としては、分子量100以上の低分子化合物が好ましく、具体的には、分子量100~1,500であることがより好ましく、150~1,000が更に好ましい。
多官能チオール化合物の官能基数としては、硬化後の硬度の観点から、2官能~10官能が好ましく、2官能~8官能がより好ましく、2官能~6官能が更に好ましい。
また、多官能チオール化合物としては、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、脂肪族多官能チオール化合物であることが好ましい。
更に、チオール化合物としては、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、第二級チオール化合物がより好ましい。
【0123】
多官能チオール化合物として具体的には、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、p-キシレンジチオール、m-キシレンジチオール、ジ(メルカプトエチル)エーテル等を例示することができる。
【0124】
これらの中でも、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、及び、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が好ましく挙げられる。
【0125】
単官能チオール化合物としては、脂肪族チオール化合物、及び、芳香族チオール化合物のどちらも用いることができる。
単官能脂肪族チオール化合物としては、具体的には、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
単官能芳香族チオール化合物としては、ベンゼンチオール、トルエンチオール、キシレンチオール等が挙げられる。
【0126】
上記チオール化合物は、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、エステル結合を有するチオール化合物であることが好ましく、下記式1で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0127】
【化15】

【0128】
式1中、nは1~6の整数を表し、Aは炭素数1~15のn価の有機基、又は、下記式2で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表す。ただし、Aが下記式2で表される基を表す場合は、nは3である。
【0129】
【化16】

【0130】
式2中、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表し、波線部分は、上記式1における酸素原子との結合位置を表す。
【0131】
式1におけるnは、硬化後の硬度の観点から、2~6の整数であることが好ましい。
式1におけるAは、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数1~15のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることが好ましく、炭素数4~15のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることがより好ましく、炭素数5~10のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることが更に好ましく、上記式2で表される基であることが特に好ましい。
また、式1におけるAは、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、水素原子及び炭素原子からなるn価の基、又は、水素原子、炭素原子及び酸素原子からなるn価の基であることが好ましく、水素原子及び炭素原子からなるn価の基であることがより好ましく、n価の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。
式1におけるRはそれぞれ独立に、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数1~15のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数3のアルキレン基であることが更に好ましく、1,2-プロピレン基であることが特に好ましい。上記アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。
【0132】
式2におけるR~Rはそれぞれ独立に、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数2~15の脂肪族基であることが好ましく、炭素数2~15のアルキレン基、又は、炭素数3~15のポリアルキレンオキシアルキル基であることがより好ましく、炭素数2~15のアルキレン基であることが更に好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0133】
また、多官能チオール化合物としては、下記式S-1で表される基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0134】
【化17】

【0135】
式S-1中、R1Sは水素原子又はアルキル基を表し、A1Sは-CO-又は-CH2-を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【0136】
多官能チオール化合物としては、式S-1で表される基を2以上6以下有する化合物が好ましい。
式S-1中のR1Sにおけるアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、炭素数の範囲としては1~16が好ましく、1~10がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、2-エチルへキシル基等であり、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基が好ましい。
1Sとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、イソプロピル基が特に好ましく、メチル基又はエチル基が最も好ましい。
【0137】
更に、多官能チオール化合物としては、上記式S-1で表される基を複数個有する下記式S-2で表される化合物であることが特に好ましい。
【0138】
【化18】

【0139】
式S-2中、R1Sはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、A1Sはそれぞれ独立に、-CO-又は-CH2-を表し、L1SはnS価の連結基を表し、nSは2~8の整数を表す。合成上の観点からは、R1Sは全て同じ基であることが好ましく、また、A1Sは全て同じ基であることが好ましい。
【0140】
式S-2中のR1Sは、上記式S-1中のR1Sと同義であり、好ましい範囲も同様である。nSは2~6の整数が好ましい。
式S-2中のnS価の連結基であるL1Sとしては、例えば-(CH2mS-(mSは2~6の整数を表す。)などの二価の連結基、トリメチロールプロパン残基、-(CH2pS-(pSは2~6の整数を表す。)を3個有するイソシアヌル環などの三価の連結基、ペンタエリスリトール残基などの四価の連結基、ジペンタエリスリトール残基などの五価又は六価の連結基が挙げられる。
【0141】
チオール化合物として具体的には、以下の化合物が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは、言うまでもない。
【0142】
【化19】

【0143】
【化20】

【0144】
チオール化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
チオール化合物の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、0.1質量%~40質量%が好ましく、0.5質量%~30質量%がより好ましく、1質量%~25質量%が特に好ましい。
【0145】
<<界面活性剤>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017及び特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤、公知のフッ素系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F551(DIC(株)製)が挙げられる。
【0146】
上記第1の透明層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましく、0.1質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0147】
<<重合禁止剤>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤(重合禁止剤ともいう)を用いることができる。
中でも、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールを好適に用いることができる。
【0148】
上記第1の透明層が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0149】
<<水素供与性化合物>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、水素供与性化合物を更に含むことが好ましい。
本開示において水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような水素供与性化合物の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-20189号公報、特開昭51-82102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-84305号公報、特開昭62-18537号公報、特開昭64-33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、p-メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0150】
また、水素供与性化合物の更に別の例としては、アミノ酸化合物(例、N-フェニルグリシン等)、特公昭48-42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-34414号公報記載の水素供与体、特開平6-308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0151】
これら水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、上記第1の透明層の全質量に対し、0.1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上25質量%以下の範囲がより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下の範囲が更に好ましい。
【0152】
<<シランカップリング剤及びチタンカップリング剤>>
第1の実施態様における上記第1の透明層は、金属酸化物粒子の分散安定性の観点から、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤を更に含有することが好ましい。また、上記第1の透明層は、シランカップリング剤及びチタンカップリング剤の両方を含有していてもよい。
シランカップリング剤及びチタンカップリング剤はそれぞれ、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤及びチタンカップリング剤の総含有量は、第1の透明層の全質量に対し、0.1質量%~30質量%が好ましく、0.2質量%~20質量%がより好ましく、0.5質量%~10質量%が更に好ましく、0.5質量%~5質量%が特に好ましい。
【0153】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラントリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリイソシアネートシラン等を用いることができ、これらを単独で使用しても、複数組合せて使用してもよい。中でも、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、金属酸化物粒子の分散安定性の観点から好ましい。
【0154】
上記シランカップリング剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KA-1003、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBE-603,KBM-903,KBE-903,KBE-9103,KBM-573、KBM-575、KBM-6123、KBE-585、KBM-703、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007、KBM-04、KBE-04、KBM-13、KBE-13、KBE-22、KBE-103、HMDS-3、KBM-3063、KBM-3103C、KPN-3504及びKF-99(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0155】
チタンカップリング剤としては、特に限定されず、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ-n-ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラキス(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラステアリルチタネート、テトラメチルチタネート、ジエトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロピルビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、イソプロポキシ(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン、ジ(2-エチルヘキソキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン、ジ-n-ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等を挙げることができる。
【0156】
上記チタンカップリング剤としては、市販品を用いることができ、例えば、味の素ファインテクノ(株)製のプレンアクトシリーズであるKR-TTS、KR-46B、KR-55、KR-41B、KR-38S、KR-138S、KR-238S、338X、KR44、KR9SA等;マツモトファインケミカル(株)製のオルガチックスシリーズであるTA‐10、TA‐25、TA‐22、TA‐30、TC‐100、TC‐200、TC‐401、TC‐750等;日本曹達(株)製のA-1、B-1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A-10、TBT、B-2、B-4、B-7、B-10、TBSTA-400、TTS、TOA-30、TSDMA、TTAB、TTOP等を挙げることができる。
【0157】
<<その他の成分>>
上記第1の透明層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤、等が挙げられる。
【0158】
また、上記第1の透明層は、その他の成分として、微量の着色剤(顔料、染料、等)を含有してもよいが、透明性の観点から、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。
具体的には、上記第1の透明層における着色剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0159】
上記第1の透明層の厚さは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、12μm以下が特に好ましい。
上記第1の透明層の厚さが、20μm以下であると、転写フィルム全体の薄膜化、第1の透明層又は得られる硬化膜の透過率向上、上記第1の透明層又は得られる硬化膜の黄着色化抑制等の面で有利である。
上記第1の透明層の厚さは、製造適性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上が特に好ましい。
【0160】
上記第1の実施態様における上記第1の透明層の屈折率としては、透明電極パターンの隠蔽性の観点から、1.50~2.10であることが好ましく、1.60~1.90であることがより好ましく、1.63~1.80であることが更に好ましく、1.65~1.78であることが特に好ましい。
本開示において、「屈折率」は、波長550nmにおける屈折率を指す。
本開示における「屈折率」は、特に断りが無い限り、温度23℃において波長550nmの可視光で、エリプソメトリーによって測定した値を意味する。
【0161】
上記第1の透明層の形成方法には、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
上記第1の透明層の形成方法の一例として、仮支持体上に、溶剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
塗布の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ダイコート法(即ち、スリットコート法)等が挙げられ、ダイコート法が好ましい。
乾燥の方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の方法を、単独で、又は複数組み合わせて適用することができる。
【0162】
-溶剤-
上記感光性樹脂組成物は、塗布による層形成の観点から、溶剤を更に含むことが好ましい。
溶剤としては、通常用いられる溶剤を特に制限なく用いることができる。
溶剤としては、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、2-プロパノールなどを挙げることができる。また、使用する溶剤は、これらの化合物の混合物である混合溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤、又はジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤が好ましい。
【0163】
溶剤を使用する場合、感光性樹脂組成物の固形分含有量としては、感光性樹脂組成物の全量に対し、5質量%~80質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が特に好ましい。
【0164】
また、溶剤を使用する場合、感光性樹脂組成物の粘度(25℃)は、塗布性の観点から、1mPa・s~50mPa・sが好ましく、2mPa・s~40mPa・sがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sが特に好ましい。
粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業(株)製)を用いて測定する。
感光性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、感光性樹脂組成物の表面張力(25℃)は、塗布性の観点から、5mN/m~100mN/mが好ましく、10mN/m~80mN/mがより好ましく、15mN/m~40mN/mが特に好ましい。
表面張力は、例えば、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定する。
【0165】
溶剤としては、米国特許出願公開第2005/282073号明細書の段落0054及び0055に記載のSolventを用いることもでき、この明細書の内容は本明細書に組み込まれる。
また、溶剤として、必要に応じて沸点が180℃~250℃である有機溶剤(高沸点溶剤)を使用することもできる。
【0166】
溶剤を含む上記感光性樹脂組成物を用いて上記第1の透明層を形成した場合、上記第1の透明層において、溶剤は、完全に除去されている必要はないが、上記第1の透明層における溶剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0167】
<保護フィルム>
本開示に係る転写フィルムにおける第1の実施態様は、更に、第1の透明層からみて仮支持体とは反対側に、保護フィルムを備えていてもよい。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
保護フィルムとして使用するフィルムは、シワ等の変形や、傷がないものであることが好ましい。
保護フィルムとして使用するフィルムのヘイズは1.0%以下が好ましく、フィルムに含まれる直径5μm以上の粒子及び直径5μm以上の凝集物の総数が5個/mm以下であることが好ましい。
また、保護フィルムの両面において、保護フィルムにおける樹脂中の気泡の破裂によって生じる直径が40μm以上100μm以下の破泡痕の密度が、5個/0.25m以下であることが好ましい。
これらを満たす保護フィルムとしては、ルミラー16QS62(東レ(株)製)、ルミラー16QS52(東レ(株)製)、ルミラー16QS48(東レ(株)製)、ルミラー12QS62(東レ(株)製)、トレファン12KW37(東レ(株)製)、トレファン25KW37(東レ(株)製)、アルファンE-501L(王子エフテックス(株))、アルファンHS-501(王子エフテックス(株))などが挙げられる。
【0168】
保護フィルムの厚みは、特に制限はないが、5μm~200μmであることが好ましく、取扱い易さ及び汎用性の観点から、10μm~150μmであることが特に好ましい。
【0169】
<熱可塑性樹脂層>
本開示に係る転写フィルムにおける第1の実施態様は、更に、仮支持体と第1の透明層との間に、熱可塑性樹脂層を備えていてもよい。
転写フィルムが熱可塑性樹脂層を備える場合には、転写フィルムを基板に転写して積層体を形成した場合に、積層体の各要素に気泡が発生しにくくなる。この積層体を画像表示装置に用いた場合には、画像ムラなどが発生し難くなり、優れた表示特性が得られる。
熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性を有することが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、転写時において、基板表面の凹凸を吸収するクッション材として機能する。
基板表面の凹凸には、既に形成されている、画像、電極、配線なども含まれる。熱可塑性樹脂層は、凹凸に応じて変形し得る性質を有していることが好ましい。
【0170】
熱可塑性樹脂層は、特開平5-72724号公報に記載の有機高分子物質を含むことが好ましく、ヴィカー(Vicat)法(具体的には、アメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質を含むことがより好ましい。
【0171】
熱可塑性樹脂層の厚さとしては、3μm~30μmが好ましく、4μm~25μmがより好ましく、5μm~20μmが更に好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さが3μm以上であると、基板表面の凹凸に対する追従性が向上するので、基板表面の凹凸をより効果的に吸収できる。
熱可塑性樹脂層の厚さが30μm以下であると、プロセス適性がより向上する。例えば、仮支持体に熱可塑性樹脂を塗布形成する際の乾燥(溶剤除去)の負荷がより軽減され、また、転写後の熱可塑性樹脂層の現像時間が短縮される。
【0172】
熱可塑性樹脂層は、溶剤及び熱可塑性の有機高分子を含む熱可塑性樹脂層形成用組成物を仮支持体に塗布し、必要に応じ乾燥させることによって形成され得る。
塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、第1の透明層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
溶剤としては、熱可塑性樹脂層を形成する高分子成分を溶解するものであれば、特に制限されず、有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n-プロパノール、及び2-プロパノール)が挙げられる。
【0173】
熱可塑性樹脂層は、100℃で測定した粘度が1,000~10,000Pa・sであることが好ましい。また、100℃で測定した熱可塑性樹脂層の粘度が、100℃で測定した第1の透明層の粘度よりも低いことが好ましい。
【0174】
<中間層>
本開示に係る転写フィルムにおける第1の実施態様は、更に、仮支持体と第1の透明層との間に、中間層を備えていてもよい。
本開示に係る転写フィルムが熱可塑性樹脂層を備える場合、中間層は、好ましくは、熱可塑性樹脂層と第1の透明層との間に配置される。
中間層の成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、又は、これらのうちの少なくとも2種を含む混合物である樹脂が挙げられる。
また、中間層としては、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されているものを用いることもできる。
【0175】
仮支持体上に熱可塑性樹脂層、中間層、及び、第1の透明層をこの順に備える態様の転写フィルムを製造する場合において、中間層は、例えば、熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤と、中間層の成分としての上記樹脂と、を含有する中間層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることによって形成され得る。塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、第1の透明層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
上記の場合、例えば、まず、仮支持体上に熱可塑性樹脂層形成用組成物を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を形成する。次いで、この熱可塑性樹脂層上に中間層形成用組成物を塗布し、乾燥させて中間層を形成する。その後、中間層上に、有機溶剤を含有する態様の感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて第1の透明層を形成する。この場合の有機溶剤は、中間層を溶解しない有機溶剤であることが好ましい。
【0176】
<その他の層>
本開示に係る転写フィルムにおける第1の実施態様は、更に、その他の層を有していてもよい。
その他の層としては、特に制限はなく、転写フィルムにおける公知の層を有することができる。
【0177】
-不純物-
本開示に係る転写フィルムにおいて、信頼性やパターニング性を向上させる観点から、上記各層の不純物の含有量が少ないことが好ましい。
不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、及びこれらのイオン、並びに、ハロゲン化物イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)などが挙げられる。中でも、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが特に好ましい。
各層における不純物の含有量は、質量基準で、1,000ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、40ppm以下が特に好ましい。下限は特に定めるものではないが、現実的に減らせる限界及び測定限界の観点から、質量基準で、10ppb以上とすることができ、また、100ppb以上とすることができる。各不純物の具体的数値としては例えば、0.1ppmを挙げることができる。
不純物を上記範囲に減らす方法としては、各層の原料に不純物を含まないものを選択すること、及び層の形成時に不純物の混入を防ぐこと、洗浄して除去すること等が挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、イオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量することができる。
【0178】
また、各層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサン等の化合物の含有量が少ないことが好ましい。これら化合物の各層中における含有量としては、質量基準で、1,000ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、40ppm以下が特に好ましい。下限は特に定めるものではないが、現実的に減らせる限界及び測定限界の観点から、質量基準で、10ppb以上とすることができ、また、100ppb以上とすることができる。
化合物の不純物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制することができる。また、公知の測定法により定量することができる。
【0179】
〔第2の実施態様〕
本開示に係る転写フィルムの第2の実施態様は、仮支持体と 、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層と、第2の透明層とを有し、上記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
本開示に係る転写フィルムの第2の実施態様における仮支持体、保護フィルム、熱可塑性樹脂層、及び、その他の層、並びに、これらの好ましい態様については、本開示に係る転写フィルムの第1の実施態様における仮支持体、保護フィルム、熱可塑性樹脂層、及び、その他の層、並びに、これらの好ましい態様と同様である。
【0180】
<第1の透明層>
本開示に係る転写フィルムの第2の実施態様は、仮支持体と 、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層を有する。
本開示に係る転写フィルムは、仮支持体上に、重合性化合物、重合開始剤、及び、樹脂を含む第1の透明層を有する。
第2の実施態様における上記第1の透明層は、特定粒子を含有していてもよい。
第2の実施態様における上記第1の透明層に含有していてもよい特定粒子の好ましい態様は、第2の実施態様における上記第1の透明層に含有される定粒子の好ましい態様と同様である。
本開示において、「透明」とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が、80%以上であることを意味する。したがって、「透明層」とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が80%以上である層を指す。「透明層」の可視光の透過率は、90%以上であることが好ましい。
また、転写フィルム及び転写フィルムの各層の光透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、例えば、(株)日立製作所製の分光光度計U-3310を用いて測定することができる。
【0181】
<<重合性化合物>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、重合性化合物を含有する。
重合性化合物は、感光性(すなわち、光硬化性)、及び、得られる硬化膜の強度に寄与する成分である。
第2の実施態様における上記第1の透明層に用いられる重合性化合物は、第1の実施態様における上記第1の透明層に用いられる重合性化合物と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0182】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~70質量%がより好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
【0183】
また、上記第1の透明層が2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物とを含有する場合、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~85質量%がより好ましく、30質量%~80質量%が更に好ましい。
また、この場合、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、15質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、この場合、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との総含有量に対し、40質量%以上100質量%未満であることが好ましく、40質量%~90質量%であることがより好ましく、50質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0184】
また、上記第1の透明層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記第1の透明層は、更に単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
更に、上記第1の透明層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記第1の透明層に含有されるエチレン性不飽和化合物において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が主成分であることが好ましい。
具体的には、上記第1の透明層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層に含有されるエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、40質量%~100質量%が好ましく、50質量%~100質量%がより好ましく、60質量%~100質量%が特に好ましい。
【0185】
また、上記第1の透明層が、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物又はそのカルボン酸無水物)を含有する場合、酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0186】
<<重合開始剤>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、重合開始剤を含有する。
重合開始剤としては特に制限はなく、公知の重合開始剤を用いることができる。
第2の実施態様における上記第1の透明層に用いられる重合開始剤は、第1の実施態様における上記第1の透明層に用いられる重合開始剤と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0187】
光重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、上記第1の透明層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。
また、光重合開始剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0188】
<<樹脂>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、樹脂を含む。
上記樹脂としては、バインダーポリマーであることが好ましい。
上記樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
第2の実施態様における上記第1の透明層に用いられる樹脂は、第1の実施態様における上記第1の透明層に用いられる樹脂と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0189】
上記樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を含有してもよい。
上記樹脂の含有量は、得られる硬化膜の強度、及び、転写フィルムにおけるハンドリング性の観点から、上記第1の透明層の全質量に対し、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0190】
<<熱架橋性化合物>>
上記第1の透明層は、硬化後の硬度の観点から、熱架橋性化合物を含有することが好ましく、ブロックイソシアネート化合物を含有することがより好ましい。
なお、熱架橋性化合物とは、「加熱により架橋反応を起こし得る官能基(熱架橋性基)を1分子中に1つ以上有する化合物」をいう。
第2の実施態様における上記第1の透明層に用いられる熱架橋性化合物は、第1の実施態様における上記第1の透明層に用いられる熱架橋性化合物と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0191】
本開示においては、熱架橋性化合物を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
熱架橋性化合物の含有量は、得られる硬化膜の強度の観点から、上記第1の透明層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0192】
<<複素環化合物>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、複素環化合物を更に含むことが好ましい。
第2の実施態様における上記第1の透明層に用いられる複素環化合物は、第1の実施態様における上記第1の透明層に用いられる複素環化合物と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0193】
上記第1の透明層は、上記複素環化合物を、1種単独で含有しても、2種以上を含有してもよい。
上記複素環化合物の含有量は、特に制限はないが、接触する金属配線の変色防止性、及び、得られるパターンの直線性の観点から、上記第1の透明層の全質量に対して、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~8質量%であることが更に好ましく、1質量%~5質量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、得られる硬化物の硬度及び金属配線への腐食防止性により優れ、また、得られる硬化物の透明性に優れる。
【0194】
<<チオール化合物>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、チオール化合物を更に含むことが好ましい。
チオール化合物としては、単官能チオール化合物、又は、多官能チオール化合物が好適に用いられる。中でも、硬化後の硬度の観点から、2官能以上のチオール化合物(多官能チオール化合物)を含むことが好ましく、多官能チオール化合物であることがより好ましい。
第2の実施態様における上記第1の透明層に用いられるチオール化合物は、第1の実施態様における上記第1の透明層に用いられるチオール化合物と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0195】
チオール化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
チオール化合物の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、0.1質量%~40質量%が好ましく、0.5質量%~30質量%がより好ましく、1質量%~25質量%が特に好ましい。
【0196】
<<界面活性剤>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017及び特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤、公知のフッ素系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F551(DIC(株)製)が挙げられる。
【0197】
上記第1の透明層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましく、0.1質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0198】
<<重合禁止剤>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤(重合禁止剤ともいう)を用いることができる。
中でも、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールを好適に用いることができる。
【0199】
上記第1の透明層が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0200】
<<水素供与性化合物>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、水素供与性化合物を更に含むことが好ましい。
本開示において水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような水素供与性化合物の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-20189号公報、特開昭51-82102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-84305号公報、特開昭62-18537号公報、特開昭64-33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、p-メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0201】
また、水素供与性化合物の更に別の例としては、アミノ酸化合物(例、N-フェニルグリシン等)、特公昭48-42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-34414号公報記載の水素供与体、特開平6-308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0202】
これら水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、上記第1の透明層の全質量に対し、0.1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上25質量%以下の範囲がより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下の範囲が更に好ましい。
【0203】
<<その他の成分>>
第2の実施態様における上記第1の透明層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤、等が挙げられる。
また、第2の実施態様における上記第1の透明層における不純物及びその好ましい含有量については、上述した第1の実施態様における上記第1の透明層と同様である。
【0204】
また、上記第1の透明層は、その他の成分として、微量の着色剤(顔料、染料、等)を含有してもよいが、透明性の観点から、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。
具体的には、上記第1の透明層における着色剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0205】
上記第1の透明層の厚さは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、12μm以下が特に好ましい。
上記第1の透明層の厚さが、20μm以下であると、転写フィルム全体の薄膜化、第1の透明層又は得られる硬化膜の透過率向上、上記第1の透明層又は得られる硬化膜の黄着色化抑制等の面で有利である。
上記第1の透明層の厚さは、製造適性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上が特に好ましい。
【0206】
上記第2の実施態様において第1の透明層が特定粒子を含有する場合における上記第1の透明層の屈折率としては、透明電極パターンの隠蔽性の観点から、1.50~2.10であることが好ましく、1.60~1.90であることがより好ましく、1.63~1.80であることが更に好ましく、1.65~1.78であることが特に好ましい。
上記第2の実施態様において第1の透明層が特定粒子を含有しない場合における上記第1の透明層の屈折率としては、特に制限はないが、透明電極パターンの隠蔽性の観点から、1.47~1.56が好ましく、1.48~1.55がより好ましく、1.49~1.54が更に好ましく、1.50~1.53が特に好ましい。
本開示において、「屈折率」は、波長550nmにおける屈折率を指す。
本開示における「屈折率」は、特に断りが無い限り、温度23℃において波長550nmの可視光で、エリプソメトリーによって測定した値を意味する。
【0207】
上記第1の透明層の形成方法には、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
上記第1の透明層の形成方法の一例として、仮支持体上に、溶剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
塗布の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ダイコート法(即ち、スリットコート法)等が挙げられ、ダイコート法が好ましい。
乾燥の方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の方法を、単独で、又は複数組み合わせて適用することができる。
【0208】
-溶剤-
上記感光性樹脂組成物は、塗布による層形成の観点から、溶剤を更に含むことが好ましい。
溶剤としては、通常用いられる溶剤を特に制限なく用いることができる。
溶剤としては、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、2-プロパノールなどを挙げることができる。また、使用する溶剤は、これらの化合物の混合物である混合溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤、又はジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤が好ましい。
【0209】
溶剤を使用する場合、感光性樹脂組成物の固形分含有量としては、感光性樹脂組成物の全量に対し、5質量%~80質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が特に好ましい。
【0210】
また、溶剤を使用する場合、感光性樹脂組成物の粘度(25℃)は、塗布性の観点から、1mPa・s~50mPa・sが好ましく、2mPa・s~40mPa・sがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sが特に好ましい。
粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業(株)製)を用いて測定する。
感光性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、感光性樹脂組成物の表面張力(25℃)は、塗布性の観点から、5mN/m~100mN/mが好ましく、10mN/m~80mN/mがより好ましく、15mN/m~40mN/mが特に好ましい。
表面張力は、例えば、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定する。
【0211】
溶剤としては、米国特許出願公開第2005/282073号明細書の段落0054及び0055に記載のSolventを用いることもでき、この明細書の内容は本明細書に組み込まれる。
また、溶剤として、必要に応じて沸点が180℃~250℃である有機溶剤(高沸点溶剤)を使用することもできる。
【0212】
溶剤を含む上記感光性樹脂組成物を用いて上記第1の透明層を形成した場合、上記第1の透明層において、溶剤は、完全に除去されている必要はないが、上記第1の透明層における溶剤の含有量は、上記第1の透明層の全質量に対し、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0213】
<第2の透明層>
本開示に係る転写フィルムの第2の実施態様は、第2の透明層を有し、上記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
また、上記第2の透明層は、密着性及びヘイズの観点から、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子(特定粒子)を含有すること、すなわち、上記(2)を満たすこと(上記第2の実施態様)が好ましい。
更に、上記第2の透明層の屈折率は、透明電極パターンの隠蔽性、密着性及びヘイズの観点から、上記第1の透明層の屈折率よりも大きいことが好ましい。
第2の透明層の屈折率は、透明電極パターンの隠蔽性の観点から、1.50~2.10であることが好ましく、1.60~1.90であることがより好ましく、1.63~1.80であることが更に好ましく、1.65~1.78であることが特に好ましい。
【0214】
第2の透明層は、光硬化性(すなわち、感光性)を有してもよいし、熱硬化性を有していてもよいし、光硬化性及び熱硬化性の両方を有してもよい。
転写後の光硬化により、強度に優れた硬化膜を形成する観点からは、第2の透明層は光硬化性を有することが好ましい。
また、熱硬化により、硬化膜の強度をより向上させることができる観点から、第2の透明層は熱硬化性を有することが好ましい。
第2の透明層は、熱硬化性及び光硬化性を有することが好ましい。
第2の透明層は、アルカリ可溶性(例えば、弱アルカリ水溶液に対する溶解性)を有することが好ましい。
【0215】
第2の透明層が感光性を有する態様は、転写後において、基板上に転写された上記第1の透明層及び第2の透明層を、一度のフォトリソグラフィによってまとめてパターニングできるという利点を有する。
【0216】
<<酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子>>
本開示に係る転写フィルムの第2の実施態様は、上記第2の透明層が、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子を含有する。
【0217】
特定粒子は、酸化チタン及び酸化スズを含む金属酸化物粒子、すなわち、酸化チタン-酸化スズ複合粒子である。
特定粒子における酸化チタンは、ヘイズの観点から、二酸化チタンであることが好ましい。
特定粒子における酸化チタン(二酸化チタン)における結晶構造は、アナターゼ型(正方晶)、ルチル型(正方晶)、ブルッカイト型(斜方晶)のいずれであってもよい。
中でも、得られる膜の屈折率、密着性、ヘイズ、及び、耐光性の観点から、特定粒子は、ルチル型酸化チタンを含むことが好ましく、ルチル型酸化チタンであることがより好ましい。
また、特定粒子における酸化スズは、ヘイズの観点から、二酸化スズであることが好ましい。
【0218】
特定粒子は、密着性及びヘイズの観点から、酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物を含むことが好ましい。
上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む酸化物が挙げられる。
なお、本開示における金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれる。
中でも、上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物としては、密着性、ヘイズ、及び、耐光性の観点から、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び、酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物が好ましく、二酸化ケイ素がより好ましい。
上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物は、1種単独で含有されていても、2種以上を含有されていてもよい。
【0219】
また、特定粒子は、親水化処理、疎水化処理等の表面処理が施された粒子であってもよい。
表面処理方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0220】
特定粒子における酸化チタンの含有量は、得られる膜の屈折率、密着性及びヘイズの観点から、特定粒子の全質量に対し、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上95質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。
【0221】
特定粒子における酸化スズの含有量は、得られる膜の屈折率、密着性及びヘイズの観点から、特定粒子の全質量に対し、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0222】
特定粒子が上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物を含む場合、特定粒子における酸化チタンの含有量に対する上記酸化チタン及び酸化スズ以外の金属酸化物の含有量は、得られる膜の屈折率、密着性及びヘイズ、耐光性の観点から、特定粒子の全質量に対し、0.1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上30質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0223】
特定粒子の形状は、特に制限はなく、球状、紡錘状、角柱状、円柱状、平板状、不定形状等が挙げられる。
特定粒子の平均一次粒子径は、密着性及びヘイズの観点から、100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましく、1nm以上10nmであることが特に好ましい。
本開示における特定粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡により任意の粒子200個の粒子径を測定し、その算術平均をいう。また、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を径とする。
【0224】
第2の実施態様における転写フィルムは、特定粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
上記第2の実施態様における上記第2の透明層に含有される特定粒子の含有量は、得られる膜の屈折率、透明電極パターンの隠蔽性、密着性及びヘイズの観点から、上記第2の透明層の全質量に対し、20質量%以上95質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上85質量%以下であることが更に好ましく、45質量%以上75質量%以下であることが特に好ましく、55質量%以上75質量%以下であることが最も好ましい。
【0225】
第2の透明層の厚さとしては、500nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、90nm以下が特に好ましい。
また、第2の透明層の厚さは、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、50nm以上が特に好ましい。
第2の透明層の厚さは、50nm以上、90nm以下が最も好ましい。
【0226】
第2の透明層の屈折率は、透明電極パターンの屈折率に応じて調整することが好ましい。
例えば、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)からなる透明電極パターンのように透明電極パターンの屈折率が1.8~2.0の範囲である場合は、第2の透明層の屈折率は、1.60以上が好ましく、1.65以上がより好ましい。この場合の第2の透明層の屈折率の上限は特に制限されないが、2.1以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。
また、例えば、IZO(Indium Zinc Oxide;酸化インジウム亜鉛)からなる透明電極パターンのように、透明電極パターンの屈折率が2.0を超える場合は、第2の透明層の屈折率は、1.65以上1.95以下が好ましく、1.70以上1.85以下がより好ましい。
【0227】
第2の透明層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と特定粒子とを用いる方法、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法、等が挙げられるが、樹脂と特定粒子とを用いる方法が好ましい。
【0228】
また、第2の実施態様における第2の透明層は、樹脂、及び、重合性化合物を含有することが好ましく、樹脂、重合性化合物、及び、特定粒子を含有することが好ましい。
第2の実施態様の第2の透明層における樹脂及び重合性化合物の好ましい態様としては、第2の実施態様の第1の透明層における樹脂及び重合性化合物の好ましい態様と同様である。
【0229】
第2の透明層における樹脂の含有量は、得られる硬化膜の強度、及び、転写フィルムにおけるハンドリング性の観点から、第2の透明層の全質量に対し、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0230】
第2の透明層における重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物を用いることが好ましい。
第2の透明層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、第2の透明層の全質量に対し、0.1質量%~30質量%が好ましく、0.5質量%~20質量%がより好ましく、0.5質量%~10質量%が更に好ましく、0.5質量%~5質量%が特に好ましい。
【0231】
また、第2の透明層が3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。更に、第2の透明層が酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
【0232】
第2の実施態様における第2の透明層に含有される特定粒子の好ましい態様としては、上述した特定粒子の好ましい態様に記載した内容と同様である。
また、第2の実施態様における第2の透明層に含有される特定粒子の好ましい含有量は、上述した通りである。
【0233】
また、第2の実施態様における第2の透明層は、複素環化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
第2の透明層が複素環化合物を含有する場合には、第2の透明層を基板(即ち、転写対象物)上に転写する際に、第2の透明層と直接接する部材(例えば、基板上に形成された導電性部材)を表面処理することができる。この表面処理は、第2の透明層と直接接する部材に対し金属酸化抑制機能(保護性)を付与する。
複素環化合物としては、上述したものが挙げられる。
【0234】
第2の実施態様における上記第2の透明層は、金属酸化物粒子の分散安定性の観点から、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤を更に含有することが好ましい。また、上記第2の透明層は、シランカップリング剤及びチタンカップリング剤の両方を含有していてもよい。
第2の実施態様における上記第2の透明層に用いられるシランカップリング剤及びチタンカップリング剤は、第1の実施態様における上記第1の透明層に用いられるシランカップリング剤及びチタンカップリング剤と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0235】
第2の実施態様における第2の透明層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
第2の実施態様における第2の透明層に含有され得るその他の成分としては、第2の実施態様における上記第1の透明層に含まれる各成分と同様のものが挙げられる。
第2の透明層は、その他の成分として、界面活性剤を含有することが好ましい。
また、第2の実施態様における上記第2の透明層における不純物及びその好ましい含有量については、上述した第1の実施態様における上記第1の透明層と同様である。
【0236】
第2の透明層の形成方法には特に限定はない。
第2の透明層の形成方法の一例として、仮支持体上に形成された上記第1の透明層上に、水系溶剤を含有する態様の第2の透明層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、上記第1の透明層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
【0237】
第2の透明層形成用組成物は、上述した第2の透明層の各成分を含有し得る。
第2の透明層形成用組成物は、例えば、バインダーポリマー、エチレン性不飽和化合物、粒子、及び、水系溶剤を含有することが好ましい。
また、第2の透明層形成用組成物としては、国際公開第2016/009980号の段落0034~0056に記載されている、アンモニウム塩を有する組成物も好ましい。
【0238】
<第3の透明層>
本開示に係る転写フィルムにおける第2の実施態様は、第3の透明層を有することが好ましく、第3の透明層を上記第2の透明層上に有することがより好ましい。
第2の実施態様における上記第3の透明層は、特定粒子を含有しない層であることが好ましい。
第2の実施態様における上記第3の透明層は、樹脂、及び、重合性化合物を含有することが好ましい。
また、上記第3の透明層における樹脂、及び、重合性化合物の好ましい態様、並びに、好ましい含有量としては、第1の透明層又は第2の透明層における樹脂、及び、重合性化合物の好ましい態様、並びに、好ましい含有量と同様である。
【0239】
第2の実施態様における第3の透明層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
第3の透明層に含有され得るその他の成分としては、特定粒子以外の上記第1の透明層又は第2の透明層に含まれる各成分と同様のものが挙げられる。
第3の透明層の形成方法については特に限定はない。第3の透明層の形成方法の一例として、上記第2の透明層上に、水系又は有機溶剤を含有する態様の第3の透明層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。また、別の形成方法としては、仮支持体上に形成された上記第1の透明層上に、水系溶剤を含有する態様の第2の透明層形成用組成物を塗布、乾燥する際に、第1の透明層の成分を抽出して第2の透明層の上に偏在させることで形成する方法が挙げられる。また、別の形成方法としては、第2の透明層形成用組成物を塗布、乾燥する際に、第2の透明層形成組成物の相分離により形成する方法が挙げられる。
【0240】
第3の透明層における特定粒子の含有量は、密着性及びヘイズの観点から、特定粒子を含有しないか、又は、第3の透明層の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、特定粒子を含有しないか、又は、第3の透明層の全質量に対し、1.0質量%以下であることがより好ましく、特定粒子を含有しないか、又は、第3の透明層の全質量に対し、0.5質量%以下であることが更に好ましく、特定粒子を含有しないことが特に好ましい。
【0241】
第3の透明層の厚さとしては、密着性及びヘイズの観点から、0.5nm~30nmが好ましく、1nm~15nmがより好ましい。
【0242】
<転写フィルムの具体例>
図1は、本開示に係る転写フィルムの一具体例である転写フィルム10の概略断面図である。
図1に示されるように、転写フィルム10は、保護フィルム16/第2の透明層20A/第1の透明層18A/仮支持体12の積層構造(即ち、仮支持体12と、第1の透明層18Aと、第2の透明層20Aと、保護フィルム16と、がこの順に配置された積層構造)を有する。
ただし、本開示に係る転写フィルムは、転写フィルム10であることには限定されず、例えば、第2の透明層20A及び保護フィルム16は省略されていてもよい。また、仮支持体12と第1の透明層18Aとの間に、上述の熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方を備えていてもよい。
【0243】
第2の透明層20Aは、第1の透明層18Aからみて仮支持体12が存在する側とは反対側に配置された層である。
転写フィルム10は、ネガ型材料(ネガ型フィルム)である。
また、特定粒子を第2の透明層20Aに少なくとも含む場合、本開示に係る転写フィルムにおける第2の実施態様の一例を表す。
【0244】
本開示に係る転写フィルムの製造方法は、特に制限されない。
本開示に係る転写フィルムの製造方法は、例えば、図1に示す転写フィルム10を作製する場合、仮支持体12上に第1の透明層18Aを形成する工程と、第1の透明層18A上に第2の透明層20Aを形成する工程と、第2の透明層20A上に保護フィルム16を形成する工程と、をこの順に含むことが好ましい。
転写フィルム10の製造方法は、第2の透明層20Aを形成する工程と保護フィルム16を形成する工程との間に、国際公開第2016/009980号の段落0056に記載されている、アンモニアを揮発させる工程を含んでもよい。
【0245】
図2は、本開示に係る転写フィルムの他の一具体例である転写フィルム10の概略断面図である。
図2に示されるように、転写フィルム10は、保護フィルム16/第1の透明層18A/仮支持体12の積層構造(即ち、仮支持体12と、第1の透明層18Aと、保護フィルム16と、がこの順に配置された積層構造)を有する。
また、図2における第1の透明層18Aは特定粒子を含み、図2に示す転写フィルム10は、本開示に係る転写フィルムにおける第1の実施態様の一例を表す。
【0246】
(硬化膜及びその製造方法)
本開示に係る転写フィルムとして、上記第1の実施態様における転写フィルムを用いる場合、本開示に係る硬化膜は、本開示に係る転写フィルムにおける上記第1の透明層を少なくとも転写、及び、硬化してなる硬化膜である。
本開示に係る転写フィルムとして、上記第2の実施態様の転写フィルムを用いる場合、本開示に係る硬化膜は、本開示に係る転写フィルムにおける上記第1の透明層及び上記第2の透明層を少なくとも転写、及び、硬化してなる硬化膜である。
また、上記硬化膜は、所望のパターン形状であってもよい。
本開示に係る転写フィルムにおける上記第1の透明層を少なくとも転写する被転写体としては、特に制限はなく、支持体や後述する基板等が好適に挙げられる。
本開示に係る硬化膜は、層間絶縁膜(絶縁膜)やオーバーコート膜(保護膜)として好適に用いることができ、タッチパネル用保護膜としてより好適に用いられる。
本開示に係る硬化膜は、膜物性に優れるため、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用である。
中でも、本開示に係る硬化膜は、タッチパネル用保護膜としてより好適に用いることができ、タッチパネル配線用保護膜としてより好適に用いることができる。
上記硬化膜の厚さは、特に制限はないが、1μm以上20μm以下が好ましく、2μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上12μm以下が特に好ましい。
【0247】
本開示に係る硬化膜の製造方法は、本開示に係る転写フィルムを用いる方法であればよい。
上記第1の実施態様における転写フィルムを用いる場合、本開示に係る硬化膜の製造方法は、支持体上に、上記転写フィルムにおける上記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、上記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し、硬化膜を形成する工程とを含む方法であることが好ましく、上記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、転写した上記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化層を形成する工程と、を含む方法であることがより好ましい。
また、上記第2の実施態様における転写フィルムを用いる場合、本開示に係る硬化膜の製造方法は、支持体上に、上記転写フィルムにおける上記第1の透明層及び上記第2の透明層を少なくとも転写することと、上記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化膜を形成することとを含む方法であることが好ましい。
上記第2の実施態様における転写フィルムの上記第2の透明層が、重合性化合物、及び、重合開始剤を含む層である場合、本開示に係る硬化膜の製造方法は、支持体上に、上記転写フィルムにおける上記第1の透明層及び上記第2の透明層を少なくとも転写することと、上記第1の透明層の少なくとも一部及び上記第2の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化膜を形成することとを含む方法であることが好ましい。
本開示に係る硬化膜の製造方法における上記転写は、公知の転写方法及びラミネート方法を用いて行うことができる。また、好ましい転写方法の詳細は、後述するタッチパネルの製造方法における感光性層形成工程における好ましい態様を参照することができる。
本開示に係る転写フィルムが第1の透明層及び第2の透明層のみを有する場合、例えば、本開示に係る転写フィルムを支持体上にラミネートし、本開示に係る転写フィルムの第2の透明層側を上記支持体に接触させ転写する方法が挙げられる。
本開示に係る転写フィルムが第1の透明層、第2の透明層及び第3の透明層を感光性層として有する場合、上記において、本開示に係る転写フィルムの第3の透明層側を上記支持体に接触させ転写する方法が挙げられる。
【0248】
本開示に係る硬化膜の製造方法における支持体としては、特に制限はなく、所望に応じて適宜選択すればよい。
支持体としては、樹脂フィルム、基板等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、上述した仮支持体における樹脂フィルム等が挙げられる。
基板としては、樹脂基板、ガラス基板、金属基板、シリコン基板等の公知の基板が挙げられ、電極等の公知の構造を基板表面及び基板内部に更に有していてもよい。
基板としては、後述する積層体における基板が好ましく挙げられる。
【0249】
本開示に係る硬化膜の製造方法における上記硬化は、用いる本開示に係る転写フィルムにおける各層の組成に応じ、光、又は、熱による硬化が好ましく挙げられる。
中でも、露光による硬化が好ましく、所望の形状にパターン形成する観点から、パターン露光による硬化がより好ましい。
光、又は、熱による硬化方法としては、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。また、好ましいパターン露光方法については、後述するタッチパネルの製造方法におけるパターン露光工程における好ましい態様を参照することができる。
【0250】
また、本開示に係る硬化膜の製造方法は、上述した以外のその他の工程を含んでいてもよい。
上記その他の工程としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の工程を含むことができる。
【0251】
(積層体、及び、静電容量型入力装置)
以下に述べる本開示に係る積層体は、本開示に係る硬化膜を有していればよいが、基板、電極、及び、本開示に係る硬化膜をこの順に積層してなる積層体であることが好ましい。
また、本開示に係る積層体における上記硬化膜は、所望のパターン形状であってもよい。
更に、本開示に係る積層体における上記硬化膜は、上記第1の透明層を転写し、その少なくとも一部を硬化してなる硬化膜であることが好ましい。また、第2の実施態様である場合、上記第1の透明層、及び、上記第2の透明層を転写し、その少なくとも一部を硬化してなる硬化膜であることが好ましく、上記第1の透明層、上記第2の透明層、及び、上記第3の透明層を転写し、その少なくとも一部を硬化してなる硬化膜であることがより好ましい。
本開示に係る静電容量型入力装置は、本開示に係る硬化膜、又は、本開示に係る積層体を有する。
上記基板は、静電容量型入力装置の電極を含む基板であることが好ましい。
また、上記電極は、静電容量型入力装置の電極であることが好ましい。
【0252】
静電容量型入力装置の電極は、透明電極パターンであっても、引き回し配線であってもよい。積層体は、静電容量型入力装置の電極が、電極パターンであることが好ましく、透明電極パターンであることがより好ましい。
【0253】
本開示に係る積層体においては、基板と、透明電極パターンと、透明電極パターンに隣接して配置された第2の透明層と、第2の透明層に隣接して配置された第1の透明層と、を有し、第2の透明層の屈折率が第1の透明層の屈折率よりも高いことが好ましい。第2の透明層の屈折率は、1.6以上であることが好ましい。
既述の積層体の構成とすることにより、透明電極パターンの隠蔽性が良好となる。
【0254】
上記基板としては、ガラス基板又は樹脂基板が好ましい。
また、基板は、透明な基板であることが好ましく、透明な樹脂基板であることがより好ましい。本開示における透明とは、全可視光線の透過率が85%以上であることを意図し、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
基板の屈折率は、1.50~1.52が好ましい。
ガラス基板としては、例えば、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)などの強化ガラスを用いることができる。
樹脂基板としては、光学的に歪みがないもの及び透明度が高いものの、少なくとも一方を用いることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂からなる基板が挙げられる。
透明な基板の材質としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に記載されている材質が好ましく用いられる。
【0255】
上記静電容量型入力装置としては、タッチパネルが好適に挙げられる。
タッチパネル用電極としては、例えば、タッチパネルの少なくとも画像表示領域に配置される透明電極パターンが挙げられる。タッチパネル用電極は、画像表示領域からタッチパネルの枠部にまで延びていてもよい。
タッチパネル用配線としては、例えば、タッチパネルの枠部に配置される引き回し配線(取り出し配線)が挙げられる。
タッチパネル用基板及びタッチパネルの好ましい態様は、透明電極パターンのタッチパネルの枠部に延びている部分に、引き回し配線の一部が積層されることにより、透明電極パターンと引き回し配線とが電気的に接続されている態様が好適である。
【0256】
透明電極パターンの材質としては、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜が好ましい。
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛及びマンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム又はチタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0257】
本開示に係るタッチパネル用電極保護膜は、電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)を保護する目的で、電極等を直接又は他の層を介して覆うように設けられる。
タッチパネル用電極保護膜の厚さの好ましい範囲は、上述した第1の透明層の厚さの好ましい範囲と同様である。
【0258】
本開示に係る電極保護膜、好ましくはタッチパネル用電極保護膜は、開口部を有していてもよい。
上記開口部は、第1の透明層の非露光部が現像液によって溶解されることによって形成され得る。
この場合において、タッチパネル用電極保護膜が、転写フィルムを用いて高温のラミネート条件で形成された場合においても、タッチパネル用電極保護膜の開口部における現像残渣が抑制される。
【0259】
タッチパネルは、更に、電極等とタッチパネル用電極保護層との間に第一屈折率調整層を備えていてもよい(例えば、後述するタッチパネルの第1具体例参照)。
第一屈折率調整層の好ましい態様は、第2の実施態様における転写フィルムに備えられ得る第2の透明層の好ましい態様と同様である。第一屈折率調整層は、第一屈折率調整層形成用組成物の塗布及び乾燥によって形成されてもよいし、別途、屈折率調整層を備える転写フィルムの屈折率調整層を転写することによって形成されてもよい。
第一屈折率調整層を備える態様のタッチパネルは、好ましくは、第2の実施態様における転写フィルムを用い、上記転写フィルムにおける第1の透明層及び第2の透明層を転写することによって形成することが好ましい。この場合、上記転写フィルムにおける第1の透明層からタッチパネル用電極保護層が形成され、転写フィルムにおける第2の透明層から第一屈折率調整層が形成される。
【0260】
また、タッチパネル又はタッチパネル用基板は、基板と電極等との間に、第二屈折率調整層を備えていてもよい(例えば、後述するタッチパネルの第1具体例参照)。
第二屈折率調整層の好ましい態様は、転写フィルムに備えられ得る第2の透明層の好ましい態様と同様である。
【0261】
タッチパネルが第一屈折率調整層を備える態様(より好ましくは第一屈折率調整層及び第二屈折率調整層を備える態様)は、電極等が視認されにくくなる(即ち、いわゆる骨見えが抑制される)という利点を有する。
【0262】
タッチパネルの構造については、特開2014-10814号公報又は特開2014-108541号公報に記載の静電容量型入力装置の構造を参照してもよい。
【0263】
<タッチパネルの第1具体例>
図3は、本開示に係るタッチパネルの第1具体例であるタッチパネル30の概略断面図である。より詳細には、図3は、タッチパネル30の画像表示領域の概略断面図である。
図3に示されるように、タッチパネル30は、基板32と、第二屈折率調整層36と、タッチパネル用電極としての透明電極パターン34と、第一屈折率調整層20と、タッチパネル用電極保護膜18と、がこの順序で配置された構造を有する。
タッチパネル30では、タッチパネル用電極保護膜18及び第一屈折率調整層20が、透明電極パターン34の全体を覆っている。しかし本開示に係るタッチパネルはこの態様には限定されない。タッチパネル用電極保護膜18及び第一屈折率調整層20は、透明電極パターン34の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0264】
また、第二屈折率調整層36及び第一屈折率調整層20は、それぞれ、透明電極パターン34が存在する第1領域40及び透明電極パターン34が存在しない第2領域42を、直接又は他の層を介して連続して被覆することが好ましい。これにより、透明電極パターン34がより視認されにくくなる。
第二屈折率調整層36及び第一屈折率調整層20は、第1領域40及び第2領域42の両方を、他の層を介して被覆するよりも、直接被覆することが好ましい。「他の層」としては、例えば、絶縁層、透明電極パターン34以外の電極パターン、等が挙げられる。
【0265】
第一屈折率調整層20は、第1領域40及び第2領域42の両方にまたがって積層されている。第一屈折率調整層20は、第二屈折率調整層36と隣接しており、更に、透明電極パターン34とも隣接している。
第二屈折率調整層36と接触する箇所における透明電極パターン34の端部の形状が、図3に示される如きテーパー形状である場合は、テーパー形状に沿って(すなわち、テーパー角と同じ傾きで)、第一屈折率調整層20が積層されていることが好ましい。
【0266】
透明電極パターン34としては、ITO透明電極パターンが好適である。
透明電極パターン34は、例えば、以下の方法により形成できる。
第二屈折率調整層36が形成された基板32の上に、スパッタリングにより電極用薄膜(例えばITO膜)を形成する。この電極用薄膜の上に、エッチング用感光性レジストを塗布することにより、又は、エッチング用感光性フィルムを転写することにより、エッチング保護層を形成する。次いで、露光及び現像により、このエッチング保護層を所望とするパターン形状にパターニングする。次いで、エッチングにより、電極用薄膜のうちパターニングされたエッチング保護層に覆われていない部分を除去する。これにより、電極用薄膜を所望の形状のパターン(すなわち、透明電極パターン34)とする。続いて、剥離液によりパターニングされたエッチング保護層を除去する。
【0267】
第一屈折率調整層20及びタッチパネル用電極保護膜18は、例えば以下のようにして、第二屈折率調整層36及び透明電極パターン34が順次設けられた基板32(即ち、タッチパネル用基板)の上に形成される。
まず、図1に示した転写フィルム10(すなわち、保護フィルム16/第2の透明層20A/第1の透明層18A/仮支持体12の積層構造を有する転写フィルム10)を準備する。
次に、転写フィルム10から保護フィルム16を取り除く。
次に、保護フィルム16が取り除かれた転写フィルム10を、第二屈折率調整層36及び透明電極パターン34が順次設けられた基板32(即ち、タッチパネル用基板)の上にラミネートする。ラミネートは、保護フィルム16が取り除かれた転写フィルム10の第2の透明層20Aと、透明電極パターン34と、が接する向きで行う。このラミネートにより、仮支持体12/第1の透明層18A/第2の透明層20A/透明電極パターン34/第二屈折率調整層36/基板32の積層構造を有する積層体が得られる。
次に、積層体から仮支持体12を取り除く。
次に、仮支持体12が取り除かれた積層体をパターン露光することにより、第1の透明層18A及び第2の透明層20Aをパターン状に硬化させる。第1の透明層18A及び第2の透明層20Aのパターン状に硬化は、それぞれ別個のパターン露光によって別個に行ってもよいが、1回のパターン露光によって同時に行うことが好ましい。
次に、現像によって第1の透明層18A及び第2の透明層20Aの非露光部(即ち、非硬化部)を除去することにより、第1の透明層18Aのパターン状の硬化物であるタッチパネル用電極保護膜18(パターン形状については不図示)、及び、第2の透明層20Aのパターン状の硬化物である第一屈折率調整層20(パターン形状については不図示)をそれぞれ得る。パターン露光後の第1の透明層18A及び第2の透明層20Aの現像は、それぞれ別個の現像によって別個に行ってもよいが、1回の現像によって同時に行うことが好ましい。
【0268】
ラミネート、パターン露光、現像の好ましい態様は後述する。
【0269】
タッチパネルの構造については、特開2014-10814号公報又は特開2014-108541号公報に記載の静電容量型入力装置の構造を参照してもよい。
【0270】
<タッチパネルの第2具体例>
図4は、本開示に係るタッチパネルの第2具体例であるタッチパネル90の概略断面図である。
図4に示されるように、タッチパネル90は、画像表示領域74及び画像非表示領域75(すなわち、枠部)を有する。
図4に示されるように、タッチパネル90は、基板32の両面にタッチパネル用電極を備えている。詳細には、タッチパネル90は、基板32の一方の面に第1透明電極パターン70を備え、他方の面に第2透明電極パターン72を備えている。
タッチパネル90では、第1透明電極パターン70及び第2透明電極パターン72のそれぞれに、引き回し配線56が接続されている。引き回し配線56は、例えば銅配線である。
タッチパネル90では、基板32の一方の面において、第1透明電極パターン70及び引き回し配線56を覆うようにタッチパネル用電極保護膜18が形成されており、基板32の他方の面において、第2透明電極パターン72及び引き回し配線56を覆うようにタッチパネル用電極保護膜18が形成されている。
基板32の一方の面及び他方の面には、それぞれ、第1具体例における第一屈折率調整層及び第二屈折率調整層が設けられていてもよい。
【0271】
また、本開示に係るタッチパネルの他の一例について、図5に示す。
図5は、本開示に用いられるカバーモジュールの一例を表示装置ともに示す断面図である。また、図5に示す本開示に係るタッチパネルの他の一例は、カバーモジュール120と表示装置115からなる。
図5に示す静電容量方式のカバーモジュール120は、フィルムセンサー130と、上記フィルムセンサー130が保護膜114によって裏面に貼り付けられたカバーパネル112と、を備えている。
図5に示すように、フィルムセンサー130は、基材フィルム132と、基材フィルム132の一方の側(観察者側)の面132a上に設けられた第1電極部140と、基材フィルム132の他方の側(表示装置115の側)の面132b上に設けられた第2電極部145と、を有している。
【0272】
第1電極部140は、基材フィルム132の一方の側(観察者側、図5における指105が接している側)の面132a上に所定のパターンで配置された第1導電体141を有している。第2電極部145は、基材フィルム132の他方の側(表示装置115の側)の面132b上に所定のパターンで配置された第2導電体146を有している。フィルムセンサー130は、上述したように、表示装置115の表示パネル上に配置されている。
基材フィルム132、第1導電体41及び第2導電体146は、透光性を有しており、観察者は、これらを介して、表示装置115に表示された映像を観察することができる。
【0273】
第1導電体141及び第2導電体146は、導電性を有した材料(例えば、ITO(酸化インジウムスズ))から形成され、指などの外部導体105のカバーパネル112への接触位置を検出するように構成された検出制御部(図示しない)の検出回路に電気的に接続されている。
【0274】
また、本開示に係るタッチパネルに用いられるカバーモジュールの一例について、図6に示す。
図6は、本開示に用いられるカバーモジュールの他の一例の示す上面図である。
カバーモジュールは、図6に示すように、基材フィルム132の一方の側の面131a上に第1電極部140と、第2電極部145と、互いに絶縁可能に設けてもよい。基材フィルム132のフィルム面の法線方向から観察した場合、第1電極部140に含まれる第1導電体141と第2電極部145に含まれる第2導電体146とは、各導電体141,146のライン部142,147のみにおいて交わっているが、本開示においては、各導電体141,146の交差領域において、導電体141,146間に絶縁層149を介在させる。なお、交差領域に設けられた絶縁層149の上から形成され隣接する導電体141の膨出部どうしを電気的に接続するブリッジ部155は、ブリッジ部として導電体141の膨出部143、導電体146のライン部147及び膨出部148とは別の工程で形成する。
【0275】
(積層体の製造方法)
本開示に係る積層体の製造方法は、本開示に係る転写フィルムを用いる方法であればよく、電極を有する基板上に、本開示に係る転写フィルムにおける上記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、上記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化層を形成する工程と、を含む方法であることが好ましく、上記第1の透明層を少なくとも転写する工程と、転写した上記第1の透明層の少なくとも一部を硬化し硬化層を形成する工程と、を含む方法であることがより好ましい。
本開示に係る積層体の製造方法により得られる積層体の好ましい態様は、上述した本開示に係る積層体の好ましい態様と同様である。
また、本開示に係る積層体は、本開示に係る積層体の製造方法により製造された積層体であることが好ましい。
【0276】
本開示に係る積層体の製造方法における上記転写は、公知の転写方法及びラミネート方法を用いて行うことができる。また、好ましい転写方法の詳細は、後述するタッチパネルの製造方法における感光性層形成工程における好ましい態様を参照することができる。
本開示に係る積層体の製造方法における上記電極を有する基板は、基板表面に電極を有することが好ましい。また、本開示に係る積層体の製造方法における上記転写は、表面に電極を有している基板の上記電極の少なくとも一部に接触するように、本開示に係る転写フィルムにおける上記第1の透明層を転写することが好ましい。
【0277】
本開示に係る積層体の製造方法における上記硬化は、用いる本開示に係る転写フィルムにおける各層の組成に応じ、光、又は、熱による硬化が好ましく挙げられる。
中でも、露光による硬化が好ましく、所望の形状にパターン形成する観点から、パターン露光による硬化がより好ましい。
光、又は、熱による硬化方法としては、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。また、好ましいパターン露光方法については、後述するタッチパネルの製造方法におけるパターン露光工程における好ましい態様を参照することができる。
【0278】
また、本開示に係る積層体の製造方法は、上述した以外のその他の工程を含んでいてもよい。
上記その他の工程としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の工程を含むことができる。
【0279】
(タッチパネルの製造方法)
本開示に係るタッチパネルを製造する方法には、特に制限はないが、以下の製造方法が好ましい。
本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法は、
基板上に電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう。)と、
タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上に、本開示に係る転写フィルムを用いて感光性層を形成する工程(以下、「感光性層形成工程」ともいう。)と、
タッチパネル用基板の上記面の上に形成された感光性層をパターン露光する工程(以下、「パターン露光工程」ともいう。)と、
パターン露光された感光性層を現像することにより、電極等の少なくとも一部を保護するタッチパネル用電極保護膜を得る工程(以下、「現像工程」ともいう。)と、を含む。
【0280】
上記好ましい製造方法によれば、曲げ耐性に優れたタッチパネル用電極保護膜を備えるタッチパネルを製造できる。
また、上記好ましい製造方法では、本開示に係る転写フィルムを用い高温のラミネート条件で感光性層を形成した場合においても、現像後の感光性層の非露光部において、現像残渣の発生が抑制される。
【0281】
以下、上記好ましい製造方法の各工程について説明する。
【0282】
<準備工程>
準備工程は、便宜上の工程であり、基板上に電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程である。
準備工程は、予め製造されたタッチパネル用基板を単に準備するだけの工程であってもよいし、タッチパネル用基板を製造する工程であってもよい。
タッチパネル用基板の好ましい態様は、上述のとおりである。
【0283】
<感光性層形成工程>
感光性層形成工程は、タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上に、本開示に係る転写フィルムを用いて感光性層を形成する工程である。
【0284】
以下、感光性層形成工程において、本開示に係る転写フィルムを用いる態様について説明する。
上記感光性層は、例えば、本開示に係る転写フィルムにおける第1の透明層、第2の透明層及び第3の透明層等が挙げられる。
本開示に係る転写フィルムが第1の透明層及び第2の透明層のみを感光性層として有する場合、例えば、本開示に係る転写フィルムをタッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上にラミネートし、本開示に係る転写フィルムの第2の透明層を上記面の上に転写することにより、上記面の上に感光性層を形成する。
本開示に係る転写フィルムが第1の透明層、第2の透明層及び第3の透明層を感光性層として有する場合、上記において、本開示に係る転写フィルムの第3の透明層を上記面の上に転写することにより、上記面の上に感光性層を形成する。
ラミネート(感光性層の転写)は、真空ラミネーター、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを用いて行うことができる。
【0285】
ラミネート条件としては、一般的な条件を適用できる。
ラミネート温度としては、80℃~150℃が好ましく、90℃~150℃がより好ましく、100℃~150℃が特に好ましい。
上述のとおり、本開示に係る転写フィルムを用いる態様では、ラミネート温度が高温(例えば120℃~150℃)である場合においても、熱かぶりによる現像残渣の発生が抑制される。
ゴムローラーを備えたラミネーターを用いる場合、ラミネート温度は、ゴムローラー温度を指す。
ラミネート時の基板温度には特に制限はない。ラミネート時の基板温度としては、10℃~150℃が挙げられ、20℃~150℃が好ましく、30℃~150℃がより好ましい。基板として樹脂基板を用いる場合には、ラミネート時の基板温度としては、10℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましく、30℃~50℃が特に好ましい。
また、ラミネート時の線圧としては、0.5N/cm~20N/cmが好ましく、1N/cm~10N/cmがより好ましく、1N/cm~5N/cmが特に好ましい。
また、ラミネート時の搬送速度(ラミネート速度)としては、0.5m/分~5m/分が好ましく、1.5m/分~3m/分がより好ましい。
【0286】
例えば、保護フィルム/第1の透明層/中間層/熱可塑性樹脂層/仮支持体の積層構造を有する上記第1の実施態様における転写フィルムを用いる場合には、まず、転写フィルムから保護フィルムを剥離して第1の透明層を露出させ、次いで、露出した第1の透明層とタッチパネル用基板の電極等が配置された側の面とが接するようにして、転写フィルムとタッチパネル用基板とを貼り合わせ、次いで加熱及び加圧を施す。これにより、上記第1の実施態様における転写フィルムの第1の透明層が、タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面上に転写され、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/第1の透明層/電極等/基板の積層構造を有する積層体が形成される。この積層構造のうち、「電極等/基板」の部分が、タッチパネル用基板である。
その後、必要に応じ、上記積層体から仮支持体を剥離する。ただし、仮支持体を残したまま、後述のパターン露光を行うこともできる。
【0287】
タッチパネル用基板上に転写フィルムの第1の透明層を転写し、パターン露光し、現像する方法の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0288】
<パターン露光工程>
パターン露光工程は、タッチパネル用基板上に形成された感光性層をパターン露光する工程である。
ここで、パターン露光とは、パターン状に露光する態様、すなわち、露光部と非露光部とが存在する態様の露光を指す。
タッチパネル用基板上の感光性層のうち、パターン露光における露光部が硬化され、最終的に硬化膜となる。
一方、タッチパネル用基板上の感光性層のうち、パターン露光における非露光部は硬化せず、次の現像工程で、現像液によって除去(溶解)される。非露光部は、現像工程後、硬化膜の開口部を形成し得る。
パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよい。
【0289】
パターン露光の光源としては、感光性層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及び、メタルハライドランプが挙げられる。露光量は、好ましくは5mJ/cm~200mJ/cmであり、より好ましくは10mJ/cm~200mJ/cmである。
【0290】
転写フィルムを用いて基板上に感光性層を形成した場合には、パターン露光は、仮支持体を剥離してから行ってもよいし、仮支持体を剥離する前に露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。
また、露光工程では、パターン露光後であって現像前に、感光性層に対し熱処理(いわゆるPEB(Post Exposure Bake))を施してもよい。
【0291】
<現像工程>
現像工程は、パターン露光された感光性層を現像することにより(即ち、パターン露光における非露光部を現像液に溶解させることにより)、電極等の少なくとも一部を保護するタッチパネル用電極保護膜を得る工程である。
【0292】
現像に用いる現像液は特に制限されず、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を用いることができる。
現像液としては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。
アルカリ性水溶液に含有され得るアルカリ性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)、等が挙げられる。
アルカリ性水溶液の25℃におけるpHとしては、8~13が好ましく、9~12がより好ましく、10~12が特に好ましい。
アルカリ性水溶液中におけるアルカリ性化合物の含有量は、アルカリ性水溶液全量に対し、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~3質量%がより好ましい。
【0293】
現像液は、水に対して混和性を有する有機溶剤を含有してもよい。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε-カプロラクタム、及び、N-メチルピロリドンを挙げることができる。
有機溶剤の濃度は、0.1質量%~30質量%が好ましい。
現像液は、公知の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の濃度は0.01質量%~10質量%が好ましい。
現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0294】
現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像、等の方式が挙げられる。
シャワー現像を行う場合、パターン露光後の感光性層に現像液をシャワー状に吹き付けることにより、感光性層の非露光部を除去する。感光性層と熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方とを備える転写フィルムを用いた場合には、これらの層の基板上への転写後であって感光性層の現像の前に、感光性層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワー状に吹き付け、熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方(両方存在する場合には両方)を予め除去してもよい。
また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付けつつブラシなどで擦ることにより、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温度は、20℃~40℃が好ましい。
【0295】
現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化膜を加熱処理(以下、「ポストベーク」ともいう)する段階と、を含んでいてもよい。
基板が樹脂基板である場合には、ポストベークの温度は、100℃~160℃が好ましく、130℃~160℃がより好ましい。
このポストベークにより、透明電極パターンの抵抗値を調整することもできる。
また、感光性層がカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を含む場合には、ポストベークにより、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の少なくとも一部をカルボン酸無水物に変化させることができる。これにより、現像性、及び、硬化膜の強度に優れる。
【0296】
また、現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化膜を露光(以下、「ポスト露光」ともいう。)する段階と、を含んでいてもよい。
現像工程がポスト露光する段階及びポストベークする段階を含む場合、好ましくは、ポスト露光、ポストベークの順序で実施する。
【0297】
パターン露光、現像などについては、例えば、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0298】
本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法は、上述した工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、通常のフォトリソグラフィ工程に設けられることがある工程(例えば、洗浄工程など)を特に制限なく適用できる。
【0299】
(画像表示装置)
本開示に係る画像表示装置は、本開示に係る静電容量型入力装置、好ましくは本開示に係るタッチパネル(例えば、第1~第2具体例のタッチパネル)を備える。
本開示に係る画像表示装置としては、本開示に係るタッチパネルを公知の液晶表示素子と重ね合わせた構造を有する液晶表示装置が好ましい。
タッチパネルを備える画像表示装置の構造としては、例えば、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行(株)テクノタイムズ)、三谷雄二監修、『タッチパネルの技術と開発』、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292に開示されている構造を適用することができる。
【実施例0300】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
なお、以下の実施例において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。また、酸価は、理論酸価を用いた。
【0301】
<第1の透明層形成用塗布液の調製>
以下の表1又は表2に示す組成となるように第1の透明層形成用塗布液である材料A-1~A-8をそれぞれ調製した。
【0302】
【表1】

【0303】
【表2】

【0304】
TO-2349:カルボキシ基を有するモノマー(東亞合成(株)製アロニックス(登録商標)TO-2349、5官能エチレン性不飽和化合物と6官能エチレン性不飽和化合物との混合物)
MTNR1:チオール化合物、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、昭和電工(株)製カレンズMTNR1
【0305】
【化21】

【0306】
化合物Aにおける各構成単位に併記された数値は、構成単位の含有比率(モル比)である。化合物Aの重量平均分子量Mwは17,000、Mnは7,000であった。
【0307】
<バインダーポリマーP-10の合成>
3口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG、和光純薬工業(株)製)244.2質量部を入れ、窒素下、90℃に保持した。そこに、メタクリル酸ジシクロペンタニル(東京化成工業(株)製)118.7質量部、メタクリル酸(MAA、富士フイルム和光純薬(株)製)94.7質量部、スチレン(富士フイルム和光純薬(株)製)90.9質量部、MFG188.5質量部、p-メトキシフェノール(富士フイルム和光純薬(株)製)0.0610質量部、V-601(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、富士フイルム和光純薬(株)製)16.9質量部の混合液を3時間かけて滴下した。
滴下後、90℃で1時間撹拌し、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)の混合液を添加し、1時間撹拌後、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)の混合液を更に添加した。1時間撹拌後、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)の混合液を更に添加した。3時間撹拌後、MFG2.9質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、(株)ダイセル製)166.9質量部を添加し、均一になるまで撹拌した。
反応液に、付加触媒としてのテトラメチルアンモニウムブロミド(TEAB、東京化成工業(株)製)1.5質量部、p-メトキシフェノール0.7質量部を添加し、100℃に昇温した。更に、メタクリル酸グリシジル(GMA、富士フイルム和光純薬(株)製)61.9質量部を添加し、100℃、9時間撹拌し、重合体P-10のMFG/PGMEA混合溶液を得た。P-10のGPC測定による重量平均分子量は17,000(ポリスチレン換算)であり、数平均分子量は7,000であった。固形分濃度は36.3質量%であった。
【0308】
【化22】

【0309】
P-10における各構成単位に併記された数値は、構成単位の含有比率(モル比)である。
【0310】
<バインダーポリマーP-20の合成>
単量体の種類、及び、量を変更したこと以外は、重合体P-10の合成と同様な方法により、P-20を合成した。P-20における各構成単位に併記された数値は、構成単位の含有比率(モル比)である。
【0311】
【化23】

【0312】
カレンズAOI-BM:アクリル酸2-(O-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボニルアミノ)エチル、昭和電工(株)製
【0313】
<第2の透明層形成用塗布液の調製>
次に、下記表3又は表4に記載の組成で、第2の透明層形成用塗布液である材料B-1~B-15をそれぞれ調製した。
【0314】
【表3】

【0315】
【表4】

【0316】
【化24】

【0317】
化合物Bの重量平均分子量Mwは、15,500であった。また、化合物Bにおける各構成単位の括弧の右下に併記された数値は、構成単位の含有比率(モル比)である。
【0318】
<バインダーポリマーP-3の合成>
三口フラスコに1-メトキシプロパノール(東京化成工業(株)製)270.0質量部を導入し、撹拌しつつ窒素気流下で70℃に昇温させた。一方、アリルメタクリレート45.6質量部(富士フイルム和光純薬(株)製)、メタクリル酸14.4質量部(富士フイルム和光純薬(株)製)を1-メトキシプロパノール(東京化成工業(株)製)270.0質量部に溶解させ、更にV-65(富士フイルム和光純薬(株)製)を3.94質量部溶解させることで滴下液を作製し、フラスコ中へ2.5時間かけて滴下を行った。そのまま2時間、撹拌状態を保持し反応を行った。その後温度を室温(25℃、以下同様)まで戻し、撹拌状態のイオン交換水2,700質量部へ滴下し、再沈殿を実施し、研濁液を得た。ろ紙を引いたヌッチェにて研濁液を導入することでろ過を行い、濾過物を更にイオン交換水で洗浄し、湿潤状態の粉体を得た。45℃の送風乾燥にかけ、恒量になったことを確認し、粉体として収率70%でバインダーポリマー(メタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合樹脂)を得た。バインダーポリマーのGPC測定による重量平均分子量は38,000(ポリスチレン換算)であった。
【0319】
(実施例1~21、及び、比較例1~3:転写フィルムの作製)
厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー16KS40、東レ(株)製)の仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、塗布量を、乾燥後の膜厚が表6又は表7の厚みになる塗布量に調整し、表6又は表7に記載の第1の透明層形成用の材料A-1~A-8のいずれか1種を塗布し、第1の透明層を形成した。
100℃の乾燥ゾーンで溶剤を揮発させた後、スリット状ノズルを用いて、表6又は表7に記載の組み合わせにて、表6又は表7に記載の第2の透明層形成用の材料B-1~B-15のうちの少なくとも1種を用いて、塗布量を、乾燥後の膜厚が表6又は表7に記載の膜厚になる量に調整して第1の透明層の上に塗布した後、80℃の乾燥温度で乾燥させ、第2の透明層を形成した。第2の透明層の上に保護フィルム(ルミラー16KS40、東レ(株)製)を圧着し、実施例1~21、及び、比較例1~3の転写フィルムを作製した。
また、実施例11においては、第2の透明層は形成せず、第1の透明層の上に直接保護フィルム(ルミラー16KS40、東レ(株)製)を圧着して転写フィルムを作製した。
【0320】
<積層体作製に用いる透明電極パターンフィルムの作製>
-透明膜の形成-
膜厚38μm、屈折率1.53のシクロオレフィン樹脂フィルムを、高周波発振機を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を行い、表面改質を行った。得られたフィルムを透明フィルム基板とした。
次に、下記表5中に示す材料-Cの材料を、スリット状ノズルを用いて、透明フィルム基板上に塗工した後、紫外線照射(積算光量300mJ/cm)し、約110℃で乾燥することにより、屈折率1.60、膜厚80nmの透明膜を製膜した。
【0321】
【表5】

【0322】
【化25】

【0323】
また、上記式(3)で表される構造式のポリマーにおける各構成単位の括弧の右下に併記された数値は、構成単位の含有比率(モル比)である。
【0324】
-透明電極パターンの形成-
上記にて得られた透明フィルム基板上に透明膜が積層されたフィルムを、真空チャンバー内に導入し、SnO含有率が10質量%のITOターゲット(インジウム:スズ=95:5(モル比))を用いて、直流(DC)マグネトロンスパッタリング(条件:透明フィルム基板の温度150℃、アルゴン分圧0.13Pa、酸素分圧0.01Pa)により、厚さ40nm、屈折率1.82のITO薄膜を形成し、透明フィルム基板上に透明膜と透明電極層を形成したフィルムを得た。ITO薄膜の表面抵抗は80Ω/□(Ω毎スクエア)であった。
【0325】
-エッチング用感光性フィルムE1の調製-
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記の処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、下記の処方P1からなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、下記の処方E1からなるエッチング用光硬化性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。既述の方法により仮支持体の上に乾燥膜厚が15.1μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、膜厚2.0μmのエッチング用光硬化性樹脂層とからなる積層体を作製し、最後に保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)とエッチング用光硬化性樹脂層とが一体となった転写材料である、エッチング用感光性フィルムE1を作製した。
【0326】
-エッチング用光硬化性樹脂層用塗布液:処方E1-
・メチルメタクリレート/スチレン/メタクリル酸共重合体(共重合体組成(質量%):31/40/29、重量平均分子量60,000、酸価163mgKOH/g):16質量部
・モノマー1(商品名:BPE-500、新中村化学工業(株)製):5.6質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネートのテトラエチレンオキシドモノメタクリレート0.5モル付加物:7質量部
・分子中に重合性基を1つ有する化合物としてのシクロヘキサンジメタノールモノアクリレート:2.8質量部
・2-クロロ-N-ブチルアクリドン:0.42質量部
・2,2-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール:2.17質量部
・マラカイトグリーンシュウ酸塩:0.02質量部
・ロイコクリスタルバイオレット:0.26質量部
・フェノチアジン:0.013質量部
・界面活性剤(商品名:メガファックF-780F、DIC(株)製):0.03質量部
・メチルエチルケトン:40質量部
・1-メトキシ-2-プロパノール:20質量部
なお、エッチング用光硬化性樹脂層用塗布液E1の溶剤除去後の100℃の粘度は2,500Pa・secであった。
【0327】
-熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1-
・メタノール:11.1質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:6.36質量部
・メチルエチルケトン:52.4質量部
・メチルメタクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、分子量=10万、Tg≒70℃:5.83質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=63/37、重量平均分子量=1万、Tg≒100℃):13.6質量部
・モノマー1(商品名:BPE-500、新中村化学工業(株)製):9.1質量部
・フッ素系ポリマー〔下記成分〕:0.54質量部
フッ素系ポリマー:C13CHCHOCOCH=CH 40質量部と、(OCH(CH)CHOCOCH=CH 55質量部と、H(OCHCHOCOCH=CH 5質量部との共重合体(重量平均分子量3万、メチルエチルケトン30質量%溶液、商品名:メガファックF780F、DIC(株)製)
【0328】
-中間層用塗布液:処方P1-
・ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、(株)クラレ製、鹸化度=88%、重合度550):32.2質量部
・ポリビニルピロリドン(商品名:K-30、アイエスピー・ジャパン(株)製):14.9質量部
・蒸留水:524質量部
・メタノール:429質量部
【0329】
-透明電極パターンの形成-
透明フィルム基板上に透明膜と透明電極層を形成したフィルムを洗浄し、保護フィルムを除去したエッチング用感光性フィルムE1をラミネートした。ラミネート条件は、透明フィルム基板の温度:130℃、ゴムローラー温度120℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分にて行った。
仮支持体を剥離後、露光マスク(透明電極パターンを有す石英露光マスク)面と既述のエッチング用光硬化性樹脂層との間の距離を200μmに設定し、露光量50mJ/cm(i線)でパターン露光した。
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T-PD2(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて25℃で100秒間、界面活性剤含有洗浄液(商品名:T-SD3(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて33℃で20秒間処理し、回転ブラシ、超高圧洗浄ノズルで残渣除去を行い、更に130℃30分間のポストベーク処理を行って、透明フィルム基板上に透明膜と透明電極層とエッチング用光硬化性樹脂層パターンとを形成したフィルムを得た。
【0330】
透明フィルム基板上に透明膜と透明電極層とエッチング用光硬化性樹脂層パターンとを形成したフィルムを、ITO用エッチング液(塩酸、塩化カリウム水溶液。液温30℃)を入れたエッチング槽に浸漬し、100秒処理し、エッチング用光硬化性樹脂層で覆われていない露出した領域の透明電極層を溶解除去し、エッチング用光硬化性樹脂層パターンのついた透明電極パターン付のフィルムを得た。
次に、エッチング用光硬化性樹脂層パターンのついた透明電極パターン付のフィルムを、レジスト剥離液(N-メチル-2-ピロリドン、モノエタノールアミン、界面活性剤(商品名:サーフィノール465、エアープロダクツジャパン(株)製)、液温45℃)を入れたレジスト剥離槽に浸漬し、200秒処理し、エッチング用光硬化性樹脂層を除去し、透明フィルム基板上に透明膜及び透明電極パターンを形成したフィルムを得た。
【0331】
<透明積層体の作製>
保護フィルムを剥離した各実施例及び比較例の転写フィルムを用いて、透明フィルム基板上に透明膜及び透明電極パターンを形成したフィルムの透明膜及び透明電極パターンを、転写フィルムが覆う位置にて転写した。その結果、透明フィルム基板が有する透明膜及び透明電極パターン上に転写フィルムによって、第3の透明層、第2の透明層、第1の透明層及び仮支持体がこの順に転写された。転写は、MCK社製真空ラミネーターを用いて、透明フィルム基板の温度:40℃、ゴムローラー温度100℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件で行った。
その後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、露光マスク(オーバーコート形成用パターンを有す石英露光マスク)面と仮支持体とを密着させ、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)でパターン露光した。
仮支持体を剥離後、炭酸ナトリウム1%水溶液32℃で60秒間現像処理を実施した。その後、現像処理後の透明フィルム基板に超高圧洗浄ノズルから超純水を噴射することで残渣を除去した。引き続き、エアを吹きかけて透明フィルム基板上の水分を除去し、145℃30分間のポストベーク処理を行って、透明フィルム基板上に透明膜、透明電極パターン、第2の透明層及び第1の透明層が基板から順に積層された透明積層体を形成した。
【0332】
〔透明積層体の評価〕
<透明電極パターン隠蔽性の評価>
透明フィルム基板上に、透明膜、透明電極パターン、第2の透明層及び第1の透明層をこの順に積層させた透明積層体を、透明接着テープ(スリーエムジャパン(株)製、商品名、OCAテープ8171CL)を介して、黒色PET材と接着させ、基板全体を遮光した。
透明電極パターン隠蔽性は、暗室において、蛍光灯(光源)と作製した基板を、ガラス面側から光を入射させ、ガラス表面からの反射光を、斜めから目視観察することにより行った。A、B又はCであることが好ましく、A又はBであることがより好ましく、Aであることが特に好ましい。
《評価基準》
A:透明電極パターンが全く見えない。
B:透明電極パターンがわずかに見える。
C:透明電極パターンがB評価よりも見えるが、D評価よりは見えない。
D:透明電極パターンがC評価よりも見えるが、はっきりとは見えず、実用上許容できる。
E:透明電極パターンがはっきり見え、実用上許容できない。
【0333】
<ヘイズ(HAZE)評価>
得られた透明積層体を用いて、HAZEメーターNDH4000(日本電色工業(株)製)により、ヘイズ値(HAZE値)を測定した。測定波長は380nm~780nmであり、JIS K7136(2000)に準拠した測定となっている。
ヘイズ値が小さい値であるほど、透明性が高く好ましい。
【0334】
<面状評価>
得られた透明積層体を用いて、上記透明積層体の第1の透明層側から光学顕微鏡にて200倍の倍率にて観察した。観察状態により以下の評価基準により評価した。実用上B以上であることが好ましく、Aであることがより好ましい。
A:全面に特に異常感が見られない。
B:全面にうっすらとした海島状の欠陥あり。
C:全面にはっきりと海島状に欠陥あり。
【0335】
<密着性評価>
JIS規格(K5400-8.5)を参考に100マスのクロスカット試験を実施した。各実施例及び比較例の透明積層体の試験面である転写層(第1の透明層、第2の透明層及び第3の透明層)にカッターナイフを用いて1mm四方の碁盤目の切り傷を入れ、透明粘着テープ#600(スリーエム(株)製)を強く圧着させ、180℃方向に剥離した後、碁盤目の状態を目視により観察し、以下の評価基準にしたがって密着性を評価した。A、B又はCであることが好ましく、A又はBであることがより好ましく、Aであることが特に好ましい。
《評価基準》
A:試験面における全面積の100%が密着している。
B:試験面における全面積のうち95%以上100%未満が密着し残っている。
C:試験面における全面積のうち65%以上95%未満が密着し残っている。
D:試験面における全面積のうち35%以上65%未満が密着し残っている。
E:試験面における全面積のうち密着して残っている部分が35%未満である。
【0336】
以下の表6又は表7に評価結果をまとめて示す。
【0337】
【表6】
【0338】
【表7】
【0339】
なお、実施例10で使用した金属酸化物粒子は、各金属酸化物が表4に記載の範囲内の量を満たす粒子が混在しているものを使用した。
上記表4に示すように、酸化チタンの他に酸化スズを含む金属酸化物粒子を含む実施例1~21の転写フィルムを用いることにより、比較例1~3の転写フィルムに比べ、密着性に優れ、低ヘイズである膜が得られた。
また、実施例1において使用した仮支持体の代わりに、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー12QS62、東レ(株)製)を用いて転写フィルム、透明積層体を作製した結果、実施例1と全く同じ評価結果が得られることを確認した。
【0340】
また、本実施例の透明積層体を使って、420nmで2.4W/(m・nm)出力のキセノン耐光性試験機を用いて500時間処理したが、外観や透明性に問題がみられず、耐光性にも強い材料であることが確認できた。
また、本実施例の透明積層体の透明基材と第2の透明層との間には、粒子がほぼない1nm~15nm程度の極薄い透明層(第3の透明層)が形成されていた。
【0341】
(実施例101~121)
<タッチパネルの作製>
特開2013-214173号公報の記載に従って、図5に記載の第1電極部140及び第2電極部145までの構造体を形成した。更に第一電極部140及び第二電極部145の上に実施例1~21のいずれかの転写フィルムを用いて保護膜114及び119を形成し、フィルムセンサーを形成した。更にフィルムセンサーを、接着層(図示せず)を介してカバーパネル12と、接着層(図示せず)を介して表示装置115と、それぞれ貼り合わせることにより、タッチパネルを作製した。得られたタッチパネルが正常に動作することを確認した。
また、特開2013-214173号公報の記載に従って、図6に記載の片面XY電極のフィルムセンサーにおいて、絶縁膜149を、上記で使用した転写フィルムと同じ実施例1~21のいずれかの転写フィルムを用いて形成することによりタッチパネルを作製した。得られたタッチパネルがいずれも正常に動作することを確認した。
【符号の説明】
【0342】
10:転写フィルム、12:仮支持体、16:保護フィルム、18,18A:第1の透明層(タッチパネル用電極保護膜)、20,20A:第2の透明層(第一屈折率調製層)、30:タッチパネル、32:基板、34:透明電極パターン、36:第二屈折率調整層、40:透明電極パターンが存在する第1領域、42:透明電極パターンが存在しない第2領域、56:引き回し配線、70:第1透明電極パターン、72:第2透明電極パターン、74:画像表示領域、75:画像非表示領域、90:タッチパネル、105:指、110:入出力装置(タッチパネル)、112:カバーパネル、114:保護膜、115:表示装置、119:保護膜、120:カバーモジュール、130:フィルムセンサー、132:基材フィルム、132a:面(一方の側の面)、132b:面(他方の側の面)、136:引き回し配線、140:第1電極部、141:第1導電体、142:ライン部、143:膨出部、145:第2電極部、146:第2導電体、147:ライン部、148:膨出部、149:絶縁層、155:ブリッジ部、A1:表示領域、A2:非表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6