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特開2022-37253化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
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  • 特開-化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037253
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/54 20060101AFI20220302BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20220302BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20220302BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C07C211/54 CSP
C07D307/91
C07D333/76
H05B33/14 A
H05B33/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018210093
(22)【出願日】2018-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】羽毛田 匡
(72)【発明者】
【氏名】工藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕勝
【テーマコード(参考)】
3K107
4C037
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB08
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD72
3K107DD78
4C037SA05
4H006AA01
4H006AB92
(57)【要約】
【課題】素子性能が改善された有機EL素子及びこれを実現することができる化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物。

(上記式中、R~R、R10~R19、R30~R46、Ar、L及び*aは式(1)において定義したとおりである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)において、
~Rから選ばれる1つは*aに結合する単結合であり、
~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rは、
それぞれ独立して、水素原子又は置換基であり、
該置換基は、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30ハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基、及び、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
ただし、R~Rから選ばれる隣接する2つ、R10~R19から選ばれる隣接する2つ、及び*aに結合する単結合ではないR~Rから選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は前記置換基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。
30~R46は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基である。ただし、R30とR33、R31とR32、R37~R41から選ばれる隣接する2つ、及びR42~R46から選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。
Arは、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数10~26の、6員環からのみで構成される縮合アリール基、
置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基であり、
Arの前記「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基が、
無置換の炭素数1~30のアルキル基、
無置換の炭素数1~30のアルキル基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基であり、
Lは単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~20のアリーレン基である。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-a)又は(1-b)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化2】

(式(1-a)及び(1-b)において、R~R、R10~R19、R30~R46、L、及びArは式(1)において定義したとおりである。)
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-a)で表される、請求項1又は2に記載の化合物。
【化3】

(式(1-a)において、R~R、R10~R19、R30~R46、L、及びArは式(1)において定義したとおりである。)
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-b)で表される、請求項1又は2に記載の化合物。
【化4】

(式(1-b)において、R~R、R10~R19、R30~R46、L、及びArは式(1)において定義したとおりである。)
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-c)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化5】

(式(1-c)において、R~R、R10~R19、R30~R46、Ar、及び*aは式(1)において定義したとおりである。)
【請求項6】
前記式(1)のLが置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニレン基である請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-d)で表される請求項1~4及び6のいずれか1項に記載の化合物。
【化6】

(式(1-d)において、
~R、R10~R19、R30~R46、Ar、及び*aは式(1)において定義したとおりであり、
51~R56から選ばれる1つは*b1に結合する単結合であり、
*b1に結合する単結合以外のR51~R56から選ばれる1つは*b2に結合する単結合であり、
*b1に結合する単結合ではなく、かつ、*b2に結合する単結合でもないR51~R56は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rと同様に定義される。)
【請求項8】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-e)で表される請求項1~4及び6のいずれか1項に記載の化合物。
【化7】
(式(1-e)において、
~R、R10~R19、R30~R46、Ar、及び*aは式(1)において定義したとおりであり、
51~R54及びR56から選ばれる1つは*b3に結合する単結合であり、
57~R61から選ばれる1つは*b4に結合する単結合であり、
*b3に結合する単結合ではなく、かつ、*b4に結合する単結合でもないR51~R54及びR56~R61は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rと同様に定義される。)
【請求項9】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-f)で表される請求項1~4及び6のいずれか1項に記載の化合物。
【化8】
(式中、
~R、R10~R19、R30~R46、Ar、及び*aは式(1)において定義したとおりであり、
51、R52、R55、R56、及びR62~R65から選ばれる1つは*b5に結合する単結合であり、
*b5に結合する単結合ではないR51、R52、R55、R56、及びR62~R65から選ばれる1つは*b6に結合する単結合であり、
*b5に結合する単結合ではなく、かつ、*b6に結合する単結合でもないR51、R52、R55、R56、及びR62~R65は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rと同様に定義される。)
【請求項10】
Arが置換もしくは無置換のフェニル基である、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Arが置換もしくは無置換の環形成炭素数10~26の、6員環からのみで構成される縮合アリール基である、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Arが置換もしくは無置換のナフチル基、又は置換もしくは無置換のフェナントリル基である、請求項1~9及び11のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
Arが置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基である、請求項1~9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物からなる、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項15】
陽極、陰極、及び該陽極と該陰極との間に配置された有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該有機層が発光層及び該陽極と該発光層の間に配置された正孔輸送帯域を含み、
該正孔輸送帯域が陽極側の第1正孔輸送層と陰極側の第2正孔輸送層を含み、
該第1正孔輸送層及び該第2正孔輸送層の一方が請求項1~14のいずれか1項に記載の式(1)で表される化合物を含み、他方が下記式(2)で表される化合物を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化9】

(式中、
は酸素原子、硫黄原子、CRaRb、又は*cに結合する窒素原子であり、
が酸素原子、硫黄原子、又はCRaRbである場合、R50~R53の1つが*cに結合する単結合であり、
54~R57及び*cに結合する単結合ではないR50~R53は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基であり、該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30ハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
ただし、*cに結合する単結合ではないR50~R53から選ばれる隣接する2つ及びR54~R57から選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は前記置換基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。
Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基であるか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成し、
、L、及びLは、それぞれ独立して、単結合又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基である。
54~R57、*cに結合する単結合ではないR50~R53、前記環構造、L~L、Ar、及びArの「置換もしくは無置換」で表される任意の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30ハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。)
【請求項16】
前記第1正孔輸送層が前記式(1)で表される化合物を含み、前記第2正孔輸送層が前記式(2)で表される化合物を含む、請求項15に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
前記第1正孔輸送層が前記式(2)で表される化合物を含み、前記第2正孔輸送層が前記式(1)で表される化合物を含む、請求項15に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
前記第2正孔輸送層が前記発光層に隣接する、請求項15~17のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
前記発光層が蛍光ドーパントを含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
前記発光層が燐光ドーパントを含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項15~20のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に有機エレクトロルミネッセンス素子(“有機EL素子”)は陽極、陰極、及び陽極と陰極に挟まれた有機層から構成されている。両電極間に電圧が印加されると、陰極側から電子、陽極側から正孔が発光領域に注入され、注入された電子と正孔は発光領域において再結合して励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際に光を放出する。従って、電子又は正孔を発光領域に輸送し、電子と正孔との再結合を促進する素子構造の開発は高性能有機EL素子を得る上で重要である。
【0003】
特許文献1は、中心窒素原子が、直結フルオレン構造、及び非縮合芳香族環構造及び非縮合芳香族複素環構造から選ばれる2つの構造を有するアミン化合物を記載している。
実施例では、中心窒素原子が、直結フルオレン構造、及びビフェニリル基とターフェニリル基から選ばれる2つの基を有するアミン化合物が正孔注入層1/正孔輸送層/正孔注入層2/電子ブロック層/発光層/電子輸送層の層構造を有する有機EL素子の電子ブロック層に使用されている。
特許文献1は、中心窒素原子が、直結フルオレン構造、直鎖状クォーターフェニル基、及びビフェニリル基又はターフェニリル基を有するアミン化合物を例示しているが、そのEL性能は測定されていない。
【0004】
特許文献2は、第1正孔輸送層及び該第1正孔輸送層と発光層の間に形成された単層又は複数層からなる第2正孔輸送層を有する有機EL素子を記載している。第1正孔輸送層は中心窒素原子に直接又はリンカーを介して結合した3-カルバゾリル基が必須であるアミン化合物を含む。第2正孔輸送層の材料は式(2)~(4)のアミン化合物から選ばれる。
特許文献2の実施例には、3-カルバゾリル基が中心窒素原子にリンカーを介して結合したアミン化合物HTM3などを含む第1正孔輸送層及び中心窒素原子に結合した3個のアリール基を有するアミン化合物HTM6などを含む第2正孔輸送層を有する有機EL素子が記載されている。
特許文献2は、式(2)のアミン化合物(第2正孔輸送層材料)として、中心窒素原子が、3’、5’-ジフェニル-4-ビフェニリル基、直結フルオレン構造、及びビフェニリル基を有する化合物が例示している。しかし、この化合物を使用した素子の性能は測定されていない。
【0005】
特許文献3は、中心窒素原子が、3’、5’-ジフェニル-4-ビフェニリル基、直結フルオレン構造、及びビフェニリル基又はフルオレン構造を有するアミン化合物1-3、1-4、及び1-20を記載している。これらの化合物は、カルバゾール構造にインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インデン環などが縮合した化合物と共に発光層のコホストとして使用されている。
【0006】
特許文献4の実施例には、中心窒素原子が、3’、5’-ジフェニル-4-ビフェニリル基、芳香族複素環を含む基、及び、芳香族複素環を含む基及びアリール基から選ばれる基を有するアミン化合物H1~H32が記載されている。該アミン化合物は、単層の正孔輸送層に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表第2015-530735号公報
【特許文献2】韓国公開10-2017-0134163号公報
【特許文献3】韓国公開10-2018-0022325号公報
【特許文献4】国際公開WO2011/059099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載されているように、有機EL素子の性能を改善するために、正孔輸送層を多層構造にすることが知られているが、多層正孔輸送層を有する有機EL素子の性能をより改善することが依然として求められている。
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、素子性能が改善された有機EL素子及びこれを実現することができる化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが、3’、5’-ジフェニル-4-ビフェニリル基を有するアミン化合物について研究した結果、中心窒素原子上に3’、5’-ジフェニル-4-ビフェニリル基、フェニル基もしくはナフチル基等の縮合アリール基、及び9,9-ジフェニルフルオレニル基を有するアミン化合物が正孔輸送層材料として高性能であることが分かった。
また、本発明者らは、これらの知見に基づいて鋭意研究を重ねた結果、陽極側の第1正孔輸送層と陰極側(発光層側)の第2正孔輸送層の一方が、中心窒素原子に結合した3’、5’-ジフェニル-4-ビフェニリル基を含む下記式(1)で表されるモノアミンを含み、他方が、中心窒素原子に直接又はリンカーを介して結合したフルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、及びカルバゾリル基から選ばれる基を含むモノアミン(後述する式(2)で表される化合物)を含む有機EL素子が、改善された寿命を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、一態様において、本発明は下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と称することもある)を提供する。
【0012】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)において、
~Rから選ばれる1つは*aに結合する単結合であり、
~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rは、
それぞれ独立して、水素原子又は置換基であり、
該置換基は、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30ハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基、及び、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
ただし、R~Rから選ばれる隣接する2つ、R10~R19から選ばれる隣接する2つ、及び*aに結合する単結合ではないR~Rから選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は前記置換基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。
30~R46は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基である。ただし、R30とR33、R31とR32、R37~R41から選ばれる隣接する2つ、及びR42~R46から選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。
Arは、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数10~26の、6員環からのみで構成される縮合アリール基、
置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基であり、
Arの前記「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基が、
無置換の炭素数1~30のアルキル基、
無置換の炭素数1~30のアルキル基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基であり、
Lは単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~20のアリーレン基である。)
【0013】
他の態様において、本発明は前記化合物(1)からなる有機EL素子用材料を提供する。
【0014】
さらに他の態様において、本発明は、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極との間に配置された有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該有機層が発光層及び該陽極と該発光層の間に配置された正孔輸送帯域を含み、
該正孔輸送帯域が陽極側の第1正孔輸送層と陰極側の第2正孔輸送層を含み、
該第1正孔輸送層及び該第2正孔輸送層の一方が式(1)で表される化合物を含み、他方が下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」と称することもある)を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【化2】

(式中、
は酸素原子、硫黄原子、CRaRb、又は*cに結合する窒素原子であり、
が酸素原子、硫黄原子、又はCRaRbである場合、R50~R53の1つが*cに結合する単結合であり、
54~R57及び*cに結合する単結合ではないR50~R53は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基であり、該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30ハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
ただし、*cに結合する単結合ではないR50~R53から選ばれる隣接する2つ及びR54~R57から選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は前記置換基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。
Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基であるか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成し、
、L、及びLは、それぞれ独立して、単結合又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基である。
54~R57、*cに結合する単結合ではないR50~R53、前記環構造、L~L、Ar、及びArの「置換もしくは無置換」で表される任意の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30ハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。)
【0015】
さらにまた他の態様において、本発明は前記有機EL素子を備えた電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0016】
素子性能が改善された有機EL素子及びこれを実現することができる化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一態様に係る有機EL素子の層構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明の一態様に係る有機EL素子の層構成の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。
【0019】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表すものであり、置換されている場合の置換基の原子数は含めない。
【0020】
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換ZZ基」とは、ZZ基の水素原子が置換基で置換されていないことを意味する。
【0021】
本明細書において、「水素原子」とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0022】
本明細書において、「アリール基」及び「アリーレン基」とは、芳香族炭化水素の残基であり、環形成ヘテロ原子を含むヘテロアリール基及びヘテロアリーレン基とは区別される。
【0023】
本明細書において、「環形成炭素数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数に含めない。
【0024】
本明細書において、「環形成原子数」とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環は環形成原子数は6であり、キナゾリン環は環形成原子数が10であり、フラン環の環形成原子数は5である。ピリジン環やキナゾリン環の環形成炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子は、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロビフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
【0025】
化合物(1)
化合物(1)は下記式(1)で表される。
【化3】
【0026】
~Rから選ばれる1つ、好ましくは、R又はRは、*aに結合する単結合である。本発明の一態様においては、Rが*aに結合する単結合であることが好ましく、他の態様においてはRが*aに結合する単結合であることが好ましい。
【0027】
従って、本発明の好ましい態様において、化合物(1)は下記式(1-a)又は(1-b)で表される化合物を含む。
【化4】
【0028】
~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基である。ただし、R~Rから選ばれる隣接する2つ、及び*aに結合する単結合ではないR~Rから選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は前記置換基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。本発明の一態様においては、少なくとも一組の隣接する2つが置換もしくは無置換の環構造を形成することが好ましく、他の態様においては、前記隣接する2つが置換もしくは無置換の環構造を形成しないことが好ましい。
本発明の一態様において、R~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rはすべて水素原子であることが好ましい。
【0029】
前記置換基は、ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基;置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30、好ましくは3~10、より好ましくは3~8、さらに好ましくは5又は6のシクロアルキル基;置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基;置換もしくは無置換の炭素数7~36、好ましくは7~26、より好ましくは7~20のアラルキル基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルコキシ基;置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリールオキシ基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8ハロアルキル基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のハロアルコキシ基;及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30、好ましくは5~24、より好ましくは5~13のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
前記置換基の中で、
好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれ;
より好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれ;
更に好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基であり、
特に好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基である。
【0030】
前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、フッ素原子が好ましい。
【0031】
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基において、該炭素数1~30のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、又はドデシル基であり、
好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、又はペンチル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、又はt-ブチル基であり、
更に好ましくは、メチル基又はt-ブチル基である。
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0032】
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基において、該環形成炭素数3~30のシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はシクロヘプチル基であり、好ましくは、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基である。
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0033】
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基において、該環形成炭素数6~30のアリール基は、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ビフェニレニル基、ナフチル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基、又はトリフェニレニル基であり、
好ましくは、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、又は、ナフチル基であり、
より好ましくは、フェニル基、2-、3-、又は4-ビフェニリル基、2-、3-、又は4-o-ターフェニリル基、2-、3-、又は4-m-ターフェニリル基、2-、3-、又は4-p-ターフェニリル基、又は、1-又は2-ナフチル基であり、
更に好ましくは、フェニル基、2-、3-、又は4-ビフェニリル基、又は、1-又は2-ナフチル基であり、
特に好ましくは、フェニル基である。
置換された環形成炭素数6~30のアリール基は、例えば、トリル基、t-ブチルフェニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、9,9-ジフェニルフルオレニル基、又は、9,9’-スピロビフルオレニル基である。
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0034】
前記置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基において、該炭素数7~36のアラルキル基のアリール部位は上記の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基から選択され、アルキル部位は上記の置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基から選択される。該炭素数7~36のアラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェネチル基、又は、フェニルプロピル基であり、ベンジル基が好ましい。
前記置換もしくは無置換の炭素数7~36のアラルキル基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0035】
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基において、該炭素数1~30のアルコキシ基のアルキル部位は上記置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基から選択される。該炭素数1~30のアルコキシ基は、例えば、t-ブトキシ基、プロポキシ基、エトキシ基、又はメトキシ基であり、好ましくは、エトキシ基又はメトキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基である。
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0036】
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基において、該環形成炭素数6~30アリールオキシ基のアリール部位は上記置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基から選択される。該環形成炭素数6~30のアリールオキシ基は、例えば、ターフェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、又はフェノキシ基であり、好ましくは、ビフェニルオキシ基又はフェノキシ基であり、より好ましくは、フェノキシ基である。
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0037】
前記モノ、ジ又はトリ置換シリル基が有する置換基は、上記置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基、及び、上記置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基から選択される。トリ置換シリル基が好ましく、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、又はトリトリルシリル基がより好ましい。
前記モノ、ジ又はトリ置換シリル基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0038】
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルキル基において、該炭素数1~30のハロアルキル基は、上記炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基の少なくとも1個の水素原子、好ましくは1~7個の水素原子、又は全ての水素原子をハロゲン原子で置換して得られる基である。該ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれ、好ましくはフッ素原子である。該ハロアルキル基は炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のフルオロアルキル基が好ましく、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はトリフルオロメチル基がさらに好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルキル基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0039】
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基において、該炭素数1~30のハロアルコキシ基のハロアルキル部位は上記炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のハロアルキル基から選択される。該ハロアルコキシ基は炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のフルオロアルコキシ基が好ましく、ヘプタフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、又はトリフルオロメトキシ基がより好ましく、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、又はトリフルオロメトキシ基がさらに好ましく、トリフルオロメトキシ基が特に好ましい。
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロアルコキシ基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0040】
前記置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基において、該環形成原子数5~30のヘテロアリール基は1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個の環形成ヘテロ原子を含む。該環形成ヘテロ原子は、例えば、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される。該ヘテロアリール基の遊離原子価は環形成炭素原子上に存在するか、又は、可能な場合には、環形成窒素原子上に存在する。
該環形成原子数5~30のヘテロアリール基は、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、イミダゾピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、キノリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、インダゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基(ベンゾチエニル基、以下同様)、イソベンゾチオフェニル基(イソベンゾチエニル基、以下同様)、ナフトベンゾチオフェニル基(ナフトベンゾチエニル基、以下同様)、ジベンゾチオフェニル基(ジベンゾチエニル基、以下同様)、又はカルバゾリル基である。
好ましくは、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチオフェニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基(9-カルバゾリル基、又は、1-、2-、3-又は4-カルバゾリル基)である。
置換された環形成原子数5~30のヘテロアリール基は、例えば、9-フェニルカルバゾリル基、9-ビフェニリルカルバゾリル基、9-フェニルフェニルカルバゾリル基、9-ナフチルカルバゾリル基、フェニルジベンゾフラニル基、又はフェニルジベンゾチオフェニル基(フェニルジベンゾチエニル基、以下同様)である。
前記置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基は、存在する場合には異性体基を含む。
【0041】
~Rから選ばれる隣接する2つ、及び*aに結合する単結合ではないR~Rから選ばれる隣接する2つが任意に形成する前記環構造は、例えば、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の環形成炭素数5~18の脂肪族炭化水素環、置換もしくは無置換の環形成原子数5~18の芳香族複素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~18の脂肪族複素環である。
前記環形成炭素数6~18の芳香族炭化水素環は、例えば、ベンゼン環、ビフェニレン環、ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾアントラセン環、フェナントレン環、ベンゾフェナントレン環、フェナレン環、ピレン環、クリセン環、又はトリフェニレン環であり、好ましくはベンゼン環又はナフタレン環である。
前記環形成炭素数5~18の脂肪族炭化水素環は、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、又は、前記環形成炭素数6~18の芳香族炭化水素環を部分的に水素化して得られる脂肪族環である。
前記環形成原子数5~18の芳香族複素環は、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ジベンゾフラン環、ナフトベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトベンゾチオフェン環、カルバゾール環、又はベンゾカルバゾール環である。
前記環形成原子数5~18の脂肪族複素環は、例えば、上記環形成原子数5~18の芳香族複素環を部分的に水素化して得られる脂肪族複素環である。
2個以上の前記環構造が同一の環上に形成されてもよい。
【0042】
Arは、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数10~26の、6員環からのみで構成される縮合アリール基、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基であり、Arの前記「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基が、無置換の炭素数1~30のアルキル基、無置換の炭素数1~30のアルキル基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基である。
【0043】
Arの前記「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基は、無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基であり、
無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基を置換基に有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基である。
前記無置換の炭素数1~30のアルキル基において、該炭素数1~30のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、又はドデシル基であり、
好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、又はペンチル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、又はt-ブチル基であり、
更に好ましくは、メチル基又はt-ブチル基である。
前記置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基は、存在する場合には異性体基を含む。
また、無置換の炭素数1~30のアルキル基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基の、該モノ、ジ又はトリ置換シリル基が有する無置換の炭素数1~30のアルキル基の詳細は、無置換の炭素数1~30のアルキル基に関して上記したアルキル基の詳細と同じである。
【0044】
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数10~26の、6員環からのみで構成される縮合アリール基において、該環形成炭素数10~26の6員環からのみで構成される縮合アリール基は、例えば、ナフチル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、ピセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、ペリレニル基、又はトリフェニレニル基であり、
好ましくは、ナフチル基、フェナントリル基である。
【0045】
本発明の好ましい態様において、Arは下記式(3-1)で表されるフェニル基を含む。
【化5】

式(3-1)において、
71~R76の1つは、*hに結合する単結合を表し、*hに結合する単結合以外のR71~R76の詳細は、それぞれ独立に、上記したArの任意の置換基の詳細と同じである。
但し、上記の基において、“*h”は中心窒素原子への結合位置を表す(以下、同様である)。
【0046】
本発明の他の一態様においては、*hに結合する単結合ではないR71~R76はすべて水素原子であることが好ましい。
本発明の一態様において、Arは、置換もしくは無置換のフェニル基が特に好ましい。
【0047】
本発明の好ましい態様において、Arは下記式(3-2)で表されるナフチル基を含む。
【化6】

(式(3-2)において、
71、R72、R75、R76、及びR82~R85の1つは、*hに結合する単結合を表し、*hに結合する単結合以外のR71、R72、R75、R76、及びR82~R85の詳細は、それぞれ独立に、上記したArの任意の置換基の詳細と同じである。
【0048】
本発明の一態様において、ナフタレン骨格に結合するR72、R75、R82、又はR85が*hを介して窒素原子に結合する単結合であることが好ましい。
本発明の一態様においては、*hに結合する単結合ではないR71、R72、R75、R76、及びR82~R85はすべて水素原子であることが好ましい。
本発明の他の態様において、ナフタレン骨格に結合するR72、R75、R82、又はR85が*hを介して窒素原子に結合する単結合であり、単結合でない他のR71、R72、R75、R76、及びR82~R85がすべて水素原子であることが好ましい。
【0049】
本発明の好ましい態様において、Arは下記式(3-3)で表されるフェナントリル基を含む。
【化7】

(式(3-3)において、
71、R72、R73、R76、及びR90~R95の1つは、*hに結合する単結合を表し、*hに結合する単結合以外のR71、R72、R73、R76、及びR90~R95の詳細は、それぞれ独立に、上記したArの任意の置換基の詳細と同じである。
【0050】
本発明の一態様において、フェナントレン骨格に結合するR95、R76、R71、又はR72が*hを介して窒素原子に結合する単結合であることが好ましい。
本発明の一態様においては、*hに結合する単結合ではないR71、R72、R73、R76、及びR90~R95はすべて水素原子であることが好ましい。
本発明の他の態様において、フェナントレン骨格に結合するR95、R76、R71、又はR72が*hを介して窒素原子に結合する単結合であり、単結合でない他のR71、R72、R73、R76、及びR90~R95がすべて水素原子であることが好ましい。
【0051】
本発明の他の態様において、Arは、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基であることが好ましい
【0052】
従って、本発明の好ましい態様において、Arは下記式(3-4)で表されるジベンゾフラニル基を含む。
【化8】

式(3-4)において、
101~R108の1つは、*hに結合する単結合を表し、*hに結合する単結合以外のR101~R108の詳細は、それぞれ独立に、上記したArの任意の置換基の詳細と同じである。
【0053】
本発明の一態様において、ジベンゾフラン骨格に結合するR101、R102、R103又はR104が*hを介して窒素原子に結合する単結合であることが好ましい。
本発明の一態様においては、*hに結合する単結合ではないR101~R108はすべて水素原子であることが好ましい。
本発明の他の態様において、ジベンゾフラン骨格に結合するR101、R102、R103又はR104が*hを介して窒素原子に結合する単結合であり、単結合でない他のR101~R108がすべて水素原子であることが好ましい。
【0054】
本発明の好ましい態様において、Arは下記式(3-5)で表されるジベンゾチオフェニル基を含む。
【化9】

式(3-5)において、
111~R118の1つは、*hに結合する単結合を表し、*hに結合する単結合以外の、R111~R118の詳細は、それぞれ独立に、上記したArの任意の置換基の詳細と同じである。
【0055】
本発明の一態様において、ジベンゾチオフェン骨格に結合するR111、R112、R113又はR114が*hを介して窒素原子に結合する単結合であることが好ましい。
本発明の一態様においては、*hに結合する単結合ではないR111~R118はすべて水素原子であることが好ましい。
本発明の他の態様において、ジベンゾチオフェン骨格に結合するR111、R112、R113又はR114が*hを介して窒素原子に結合する単結合であり、単結合でない他のR111~R118がすべて水素原子であることが好ましい。
【0056】
30~R46は、それぞれ独立して、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基である。ただし、隣接するR30とR33、隣接するR31とR32、R37~R41から選ばれる隣接する2つ、及びR42~R46から選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。本発明の一態様においては、少なくとも一組の隣接する2つが置換もしくは無置換の環構造を形成することが好ましく、他の態様においては、前記隣接する2つが置換もしくは無置換の環構造を形成しないことが好ましい。
本発明の一態様において、R30~R46はすべて水素原子であることが好ましい。
【0057】
該アルキル基の詳細は、R~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rに関して上記したアルキル基の詳細と同じである。
隣接するR30とR33、隣接するR31とR32、R37~R41から選ばれる隣接する2つ、及R42~R46から選ばれる隣接する2つが任意に形成する前記環構造の詳細は、R~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rに関して上記した環構造の詳細と同じである。2個以上の前記環構造が同一の環上に形成されてもよい。
【0058】
Lは単結合又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~20、好ましくは6~18、より好ましくは6~14のアリーレン基である。
本発明の一態様においては、Lは単結合であることが好ましい。従って、本発明の好ましい態様において、式(1)の化合物は下記式(1-c)で表される化合物を含む。
【化10】
【0059】
(式中、R~R、R10~R19、R30~R46、*aは式(1)において定義したとおりである。)
【0060】
本発明の他の態様においては、Lは置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基である。好ましくは6~20、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14のアリーレン基である。
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基において、該環形成炭素数6~30のアリーレン基は、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ビフェニレニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ベンゾアントリレン基、フェナントリレン基、ベンゾフェナントリレン基、フェナレニレン基、ピセニレン基、ペンタフェニレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、ベンゾクリセニレン基、フルオレニレン基、フルオランテニレン基、ペリレニレン基、又はトリフェニレニレン基であり、
好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基、又はナフチレン基であり、
より好ましくは、フェニレン基又はビフェニレン基であり、
更に好ましくは、フェニレン基である。
前記フェニレン基は、o-フェニレン基、m-フェニレン基、又はp-フェニレン基であり、p-フェニレン基が特に好ましい。
前記ビフェニレン基は、好ましくは4,2’-ビフェニレン基、4,3’-ビフェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、又は3,3’-ビフェニレン基であり、より好ましくは4,3’-ビフェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、又は3,3’-ビフェニレン基であり、4,4’-ビフェニレン基がさらに好ましい。
前記ナフチレン基は、好ましくは1,4-ナフチレン基又は2,6-ナフチレン基、より好ましくは1,4-ナフチレン基である。
従って、本発明の好ましい態様において、式(1)の化合物は下記式(1-d)で表される化合物を含む。
【化11】
【0061】
(式中、
~R、R10~R19、R30~R46、及び*aは式(1)において定義したとおりであり、
51~R56から選ばれる1つは*b1に結合する単結合であり、
*b1に結合する単結合以外のR51~R56から選ばれる1つはb2に結合する単結合であり、
*b1に結合する単結合ではなく、かつ、*b2に結合する単結合でもないR51~R56は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rと同様に定義される。)
【0062】
本発明の他の好ましい態様において、式(1)の化合物は下記式(1-e)で表される化合物を含む。
【化12】
【0063】
(式中、
~R、R10~R19、R30~R46、及び*aは式(1)において定義したとおりであり、
51~R54及びR56から選ばれる1つは*b3に結合する単結合であり、
57~R61から選ばれる1つは*b4に結合する単結合であり、
*b3に結合する単結合ではなく、かつ、*b4に結合する単結合でもないR51~R54及びR56~R61は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rと同様に定義される。)
【0064】
本発明の好ましい態様において、式(1)の化合物は下記式(1-f)で表される化合物を含む。
【化13】
【0065】
(式中、
~R、R10~R19、R30~R46、及び*aは式(1)において定義したとおりであり、
51、R52、R55、R56、及びR62~R65から選ばれる1つは*b5に結合する単結合であり、
*b5に結合する単結合ではないR51、R52、R55、R56、及びR62~R65から選ばれる1つは*b6に結合する単結合であり、
*b5に結合する単結合ではなく、かつ、*b6に結合する単結合でもないR51、R52、R55、R56、及びR62~R65は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rと同様に定義される。)
【0066】
以下に化合物(1)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0067】
【化14】
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
【化18】
【0072】
【化19】
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】
【化22】
【0076】
【化23】
【0077】
【化24】

【0078】
【化25】

【0079】
【化26】
【0080】
【化27】
【0081】
【化28】

【0082】
【化29】
【0083】
【化30】
【0084】
【化31】

【0085】
【化32】
【0086】
【化33】
【0087】
【化34】
【0088】
【化35】
【0089】
【化36】
【0090】
【化37】

【0091】
【化38】
【0092】
【化39】
【0093】
化合物(2)
化合物(2)は下記式(2)で表される。
【化40】
【0094】
は酸素原子、硫黄原子、CRaRb、又は*cに結合する窒素原子である。
が酸素原子、硫黄原子、又はCRaRbである場合、R50~R53の1つが*cに結合する単結合である。XがCRaRbである場合、R51又はR53が*cに結合する単結合であることが好ましい。
本発明の一態様においては、Xは酸素原子、硫黄原子、又はCRaRbであることが好ましく、他の態様においては、Xは*cに結合する窒素原子であることが好ましい。
【0095】
54~R57及び*cに結合する単結合ではないR50~R53は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基である。ただし、*cに結合する単結合ではないR50~R53から選ばれる隣接する2つ及びR54~R57から選ばれる隣接する2つは、それぞれ独立して、水素原子又は前記置換基を表すか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。本発明の一態様においては、少なくとも一組の前記隣接する2つが置換もしくは無置換の環構造を形成することが好ましく、他の態様においては、前記隣接する2つが置換もしくは無置換の環構造を形成しないことが好ましい。
本発明の一態様において、R54~R57及び*cに結合する単結合ではないR50~R53がすべて水素原子であることが好ましい。
【0096】
前記置換基は、ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基;置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30、好ましくは3~10、より好ましくは3~8、さらに好ましくは5又は6のシクロアルキル基;置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基;置換もしくは無置換の炭素数7~36、好ましくは7~26、より好ましくは7~20のアラルキル基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルコキシ基;置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリールオキシ基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8ハロアルキル基;置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のハロアルコキシ基;及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30、好ましくは5~24、より好ましくは5~13のヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
前記置換基は、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれ;
より好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれ;
更に好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基であり、
特に好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基である。
前記置換基の詳細は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rに関して上記した対応する置換基の詳細と同じである。
【0097】
*cに結合する単結合ではないR50~R53から選ばれる隣接する2つ及びR54~R57から選ばれる隣接する2つが任意に形成する前記環構造の詳細は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rに関して上記した環構造の詳細と同じである。2個以上の前記環構造が同一の環上に形成されてもよい。
【0098】
Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基であるか、又は、互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成する。
前記アルキル基及びアリール基の詳細は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rに関して上記した対応する置換基の詳細と同じである。
本発明の好ましい態様において、Ra及びRbは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のメチル基又は置換もしくは無置換のフェニル基であるか、又は、互いに結合してスピロ環構造を完成する環、例えば、置換もしくは無置換のシクロペンタン環、置換もしくは無置換のシクロヘキサン環、又は置換もしくは無置換のフルオレン環を形成する。
本発明の他の好ましい態様において、Ra及びRbのそれぞれは、メチル基又はフェニル基であるか、又は、互いに結合して9,9’-スピロビフルオレン構造を完成するフルオレン環を形成する。
【0099】
、L、及びLは、それぞれ独立して、単結合又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~20のアリーレン基である。該アリーレン基の詳細は、式(1)のLに関して前記したアリーレン基の詳細と同じである。
が*cに結合する窒素原子である場合、Lは置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基であることが好ましく、フェニレン基(p-フェニレン基、o-フェニレン基、又はm-フェニレン基)又はビフェニレン基(4,4’-ビフェニレン基、4,3’-ビフェニレン基、又は4,2’-ビフェニレン基)であることがより好ましい。
が酸素原子又は硫黄原子である場合、Lは単結合又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基であることが好ましく、単結合又はフェニレン基(p-フェニレン基)であることがより好ましい。さらに好ましくは、Lが単結合であり、かつ、下記式で表される基が、
【化41】

2-、3-、もしくは4-ジベンゾフラニル基、又は2-、3-、もしくは4-ジベンゾチオフェニル基であるか、又は、Lがp-フェニレン基であり、かつ、下記式で表される基が、
【化42】

1-、2-、3-、もしくは4-ジベンゾフラニル基、又は1-、2-、3-、もしくは4-ジベンゾチオフェニル基である。
がCRaRbである場合、Lがp-フェニレン基であり、かつ、下記式で表される基が、
【化43】

9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基であるか、又は、Lが単結合であり、かつ、下記式で表される基が、
【化44】

9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-4-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-4-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-2-イル基、又は9,9’-スピロビフルオレン-4-イル基であることが好ましい。
【0100】
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~30、好ましくは5~24、より好ましくは5~13ヘテロアリール基である。
前記アリール基及び前記ヘテロアリール基の詳細は、ヘテロアリール基が1-、2-、3-、又は4-カルバゾリル基を含まないことを除いて、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rに関して上記したアリール基及びヘテロアリール基の詳細と同じである。
本発明の一態様において、化合物(1)と化合物(2)は異なり、本発明の他の態様において、Ar及び/又はArが置換もしくは無置換のアリール基である場合、該アリール基は3’、5’-ジフェニル-4-ビフェニリル基ではないことが好ましい。
【0101】
本発明の好ましい態様において、Ar及びArは、それぞれ独立して、フェニル基、ビフェニリル基(4-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、又は2-ビフェニリル基)、ターフェニリル基(好ましくは、1,1’:4’,1”-ターフェニル-4-イル基、1,1’:4’,1”-ターフェニル-2-イル基)、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ジベンゾフラニル基(1-、2-、3-又は4-ジベンゾフラニル基)、ジベンゾチオフェニル基(1-、2-、3-又は4-ジベンゾチオフェニル基)、9,9-ジメチルフルオレニル基(好ましくは、9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、又は9,9-ジメチルフルオレン-4-イル基)、9,9-ジフェニルフルオレニル基(好ましくは、9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基又は9,9-ジフェニルフルオレン-4-イル基)、又は9,9’-スピロビフルオレニル基(好ましくは、9,9’-スピロビフルオレン-2-イル基又は9,9’-スピロビフルオレン-4-イル基)である。
【0102】
式(2)において、Lは単結合であり、かつ、Arはフェニル基、4-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、2-ビフェニリル基、1,1’:4’,1”-ターフェニル-4-イル基、1,1’:4’,1”-ターフェニル-2-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-4-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-2-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-4-イル基、2-、3-、もしくは4-ジベンゾフラニル基、又は2-、3-、もしくは4-ジベンゾチオフェニル基であるか、又は、Lはp-フェニレン基又は4,4’-ビフェニレン基、特に、p-フェニレン基であり、かつ、Arは1-ナフチル基、2-ナフチル基、9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基、1-、2-、3-、もしくは4-ジベンゾフラニル基、又は、1-、2-、3-、もしくは4-ジベンゾチオフェニル基であることが好ましい。
【0103】
式(2)において、Lは単結合であり、かつ、Arは4-ビフェニリル基、2-ビフェニリル基、1,1’:4’,1”-ターフェニル-4-イル基、1,1’:4’,1”-ターフェニル-2-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-4-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-2-イル基、又は9,9’-スピロビフルオレン-4-イル基であるか、又は、Lはp-フェニレン基又は4,4’-ビフェニレン基、特に、p-フェニレン基であり、Arは1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-もしくは4-ジベンゾフラニル基、又は、2-もしくは4-ジベンゾチオフェニル基であることが好ましい。
【0104】
本発明の一態様において、化合物(2)は下記式(2a)で表される。
【化45】
【0105】
、R50~R57、*c、L~L、及びArは式(2)において定義したとおりである。
は酸素原子、硫黄原子、CRcRd、又は*dに結合する窒素原子、好ましくは酸素原子、硫黄原子、又はCRcRdである。Xが酸素原子、硫黄原子、又はCRcRdである場合、R60~R63の1つが*dに結合する単結合である。
64~R67及び*dに結合する単結合ではないR60~R63は、それぞれ独立して、式(2)のR54~R57及び*cに結合する単結合ではないR50~R53と同様に定義される。
本発明の一態様においては、R54~R57、*cに結合する単結合ではないR50~R53、R64~R67、及び*dに結合する単結合ではないR60~R63はすべて水素原子であることが好ましい。
Rc及びRdは、それぞれ独立して、式(2)のRa及びRbと同様に定義される。
【0106】
本発明の一態様において、Xが*cに結合する窒素原子であり、かつ、Xが酸素原子、硫黄原子、又はCRcRdであることが好ましく、他の態様においては、Xが酸素原子、硫黄原子、又はCRcRdであり、かつ、Xが酸素原子、硫黄原子、又はCRcRdであることが好ましい。
【0107】
本発明の一態様において、化合物(2)は下記式(2b)で表される。
【化46】
【0108】
、X、R50~R57、R60~R67、*c、*d、及びL~Lは式(2)及び(2a)で定義したとおりである。
は酸素原子、硫黄原子、CReRf、又は*eに結合する窒素原子、好ましくは酸素原子、硫黄原子、又はCReRf、更に好ましくはCReRfである。Xが酸素原子、硫黄原子、又はCReRfである場合、R70~R73の1つが*eに結合する単結合である。
74~R77及び*eに結合する単結合ではないR70~R73は、それぞれ独立して、式(2)のR54~R57及び*cに結合する単結合ではないR50~R53と同様に定義される。本発明の一態様においては、R54~R57、*cに結合する単結合ではないR50~R53、R64~R67、*dに結合する単結合ではないR60~R63、R74~R77、及び*eに結合する単結合ではないR70~R73はすべて水素原子であることが好ましい。
Re及びRfは、それぞれ独立して、式(2)のRa及びRbと同様に定義される。
【0109】
本発明の一態様において、式(2)の化合物は、中心窒素原子に直接又はリンカーを介して結合する9-カルバゾリル基を1個だけ有することが好ましい。
【0110】
化合物(2)の具体例としては、例えば、式(2)において、下記式で表される基が、
【化47】
【0111】
下記グループAの式A1~A27から選ばれる基であり、Ar-L-が下記グループBの式B1~B29から選ばれる基であり、-L-Arが下記グループCの式C1~C15から選ばれる基である化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
グループA
【化48】
【0113】
グループB
【化49】
【0114】
グループC
【化50】
【0115】
上記各基において、“*”は中心窒素原子への結合位置を表す。
【0116】
本明細書において、「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基は、特に断らない限り、ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基;環形成炭素数3~30、好ましくは3~10、より好ましくは3~8、さらに好ましくは5又は6のシクロアルキル基;環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基;炭素数7~36、好ましくは7~26、より好ましくは7~20のアラルキル基;炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルコキシ基;環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリールオキシ基;炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のアルキル基及び環形成炭素数6~30、好ましくは6~25、より好ましくは6~18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基;炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8ハロアルキル基;炭素数1~30、好ましくは1~18、より好ましくは1~8のハロアルコキシ基;及び、環形成原子数5~30、好ましくは5~24、より好ましくは5~13のヘテロアリール基からなる群より選ばれる。
上記任意の置換基は、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ、ジ又はトリ置換シリル基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれ;より好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、及び、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基からなる群から選ばれ;更に好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基であり、特に好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基である。
上記任意の置換基の詳細は、式(1)のR~R、R10~R19、及び*aに結合する単結合ではないR~Rに関して上記した対応する置換基の詳細と同じである。
【0117】
化合物(2)は、当業者であれば、目的物に合わせた既知の代替反応や原料を用いることで合成することができる。
【0118】
以下、有機EL素子構成について説明する。
有機EL素子は、陰極、陽極、及び、陰極と陽極の間に有機層を含む。該有機層は発光層及び該陽極と該発光層の間に配置された正孔輸送帯域を含む。該正孔輸送帯域は陽極側の第1正孔輸送層と陰極側の第2正孔輸送層を含み、該第1正孔輸送層及び該第2正孔輸送層の一方が前記式(1)で表される化合物を含み、他方が前記式(2)で表される化合物を含む。
【0119】
例えば、シンプル型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(1)陽極/発光ユニット/陰極
また、上記発光ユニットは、燐光発光層や蛍光発光層を複数有する積層型であってもよく、その場合、各発光層の間に、燐光発光層で生成された励起子が蛍光発光層に拡散することを防ぐ目的で、スペース層を有していてもよい。シンプル型発光ユニットの代表的な層構成を以下に示す。括弧内の層は任意である。
(a)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(b)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/燐光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(c)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/第1蛍光発光層/第2蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(d)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/第1燐光発光層/第2燐光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(e)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(f)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/第1燐光発光層/第2燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(g)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層層/第1燐光発光層/スペース層/第2燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(h)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/第1蛍光発光層/第2蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(i)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/電子阻止層/蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(j)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/電子阻止層/燐光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(k)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/励起子阻止層/蛍光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(l)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/励起子阻止層/燐光発光層(/電子輸送層/電子注入層)
(m)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/蛍光発光層/第1電子輸送層/第2電子輸送層(/電子注入層)
(n)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/燐光発光層/第1電子輸送層/第2電子輸送層(/電子注入層)
(o)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/蛍光発光層/正孔阻止層(/電子輸送層/電子注入層)
(p)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/燐光発光層/正孔阻止層(/電子輸送層/電子注入層)
(q)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/蛍光発光層/励起子阻止層(/電子輸送層/電子注入層)
(r)(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/燐光発光層/励起子阻止層(/電子輸送層/電子注入層)
【0120】
上記各燐光又は蛍光発光層は、それぞれ互いに異なる発光色を示すものとすることができる。具体的には、上記積層発光ユニット(f)において、(正孔注入層/)第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/第1燐光発光層(赤色発光)/第2燐光発光層(緑色発光)/スペース層/蛍光発光層(青色発光)/電子輸送層といった層構成等が挙げられる。
なお、各発光層と第2正孔輸送層あるいはスペース層との間には、適宜、電子阻止層を設けてもよい。また、各発光層と電子輸送層との間には、適宜、正孔阻止層を設けてもよい。電子阻止層や正孔阻止層を設けることで、電子又は正孔を発光層内に閉じ込めて、発光層における正孔と電子の再結合を容易にし、発光効率を向上させることができる。
【0121】
タンデム型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(2)陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット及び第2発光ユニットとしては、例えば、それぞれ独立に上述の発光ユニットから選択することができる。
上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、第1発光ユニットに電子を、第2発光ユニットに正孔を供給する、公知の材料構成を用いることができる。
【0122】
図1に、本発明の有機EL素子の構成の一例を示す概略図である。有機EL素子1は、基板2、陽極3、陰極4、及び該陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット10とを有する。発光ユニット10は、発光層5を有する。発光層5と陽極3との間に正孔輸送帯域6(正孔注入層、正孔輸送層等)、発光層5と陰極4との間に電子輸送帯域7(電子注入層、電子輸送層等)を有する。前記正孔輸送帯域6は、陽極側の第1正孔輸送層と発光層側の第2正孔輸送層を含む。また、発光層5の陽極3側に電子阻止層(図示せず)を、発光層5の陰極4側に正孔阻止層(図示せず)を、それぞれ設けてもよい。これにより、電子や正孔を発光層5に閉じ込めて、発光層5における励起子の生成をさらに容易にすることができる。
【0123】
図2は、本発明の有機EL素子の他の構成を示す概略図である。有機EL素子11は、基板2、陽極3、陰極4、及び該陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット20とを有する。発光ユニット20は、発光層5を有する。陽極3と発光層5の間に配置された正孔輸送帯域は、第1正孔輸送層6a及び第2正孔輸送層6bから形成されている。また、発光層5と陰極4の間に配置された電子輸送帯域は、第1電子輸送層7a及び第2電子輸送層7bから形成されている。
【0124】
なお、本発明において、蛍光ドーパント(蛍光発光材料)と組み合わされたホストを蛍光ホストと称し、燐光ドーパントと組み合わされたホストを燐光ホストと称する。蛍光ホストと燐光ホストは分子構造のみにより区分されるものではない。すなわち、燐光ホストとは、燐光ドーパントを含有する燐光発光層を形成する材料を意味し、蛍光発光層を形成する材料として利用できないことを意味しているわけではない。蛍光ホストについても同様である。
【0125】
基板
基板は、有機EL素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックなどの板を用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニルからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0126】
陽極
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステンおよび酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または前記金属の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0127】
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~10wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを、酸化タングステンおよび酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0128】
陽極に接して形成される正孔注入層は、陽極の仕事関数に関係なく正孔注入が容易である材料を用いて形成されるため、電極材料として一般的に使用される材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、元素周期表の第1族または第2族に属する元素)を用いることができる。
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0129】
正孔注入層
正孔注入層は、正孔注入性の高い材料(正孔注入性材料)を含む層であり、陽極と第1正孔輸送層の間に必要に応じて形成される。
【0130】
正孔注入性材料としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
【0131】
低分子の有機化合物である4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等も正孔注入層材料として挙げられる。
【0132】
高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0133】
さらに、下記式(K)で表されるヘキサアザトリフェニレン(HAT)化合物などのアクセプター材料も正孔注入層材料として好ましい。
【化51】
【0134】
上記式中、R21~R26は、それぞれ独立にシアノ基、-CONH、カルボキシル基、又は-COOR27(R27は炭素数1~20のアルキル基又は炭素数3~20のシクロアルキル基を表す)を表す。ただし、R21及びR22、R23及びR24、又はR25及びR26は互いに結合して-CO-O-CO-で示される基を形成してもよい。
27としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0135】
正孔輸送層
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い材料(正孔輸送性材料)を含む層であり、陽極と発光層の間、正孔注入層を形成した場合は、正孔注入層と発光層の間に形成される。
本発明の有機EL素子の正孔輸送層は、陽極側の第1正孔輸送層と陰極側(発光層側)の第2正孔輸送層を含む多層構造であり、該第1正孔輸送層と該第2正孔輸送層の一方が化合物(1)、他方が化合物(2)を含む。ただし、化合物(1)(第1正孔輸送層材料)と化合物(2)(第2正孔輸送層材料)は異なる化合物である。
第2正孔輸送層は発光層に隣接していてもよく、又、第2正孔輸送層と発光層の間に後述する阻止層などを介在させてもよい。
本発明の一態様においては、第1正孔輸送層が化合物(1)を含み、第2正孔輸送層が化合物(2)を含む。他の態様においては、第1正孔輸送層が化合物(2)を含み、第2正孔輸送層が化合物(1)を含む。
【0136】
化合物(1)及び(2)以外の第1正孔輸送層材料又は第2正孔輸送層材料として、例えば、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用してもよい。
芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’-ビス[N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4”-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、及び、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)が挙げられる。上記化合物は、10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する。
【0137】
カルバゾール誘導体としては、例えば、4,4’-ジ(9-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、9-[4-(9-カルバゾリル)フェニル]-10-フェニルアントラセン(略称:CzPA)、及び、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)が挙げられる。
アントラセン誘導体としては、例えば、2-t-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、及び、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)が挙げられる。
ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
但し、電子輸送性よりも正孔輸送性の方が高い化合物であれば、上記以外の化合物を用いてもよい。
【0138】
発光層のドーパント材料
発光層は、発光性の高い材料(ドーパント材料)を含む層であり、種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光発光材料や燐光発光材料をドーパント材料として用いることができる。蛍光発光材料は一重項励起状態から発光する化合物であり、燐光発光材料は三重項励起状態から発光する化合物である。
【0139】
発光層に用いることができる青色系の蛍光発光材料として、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。
【0140】
発光層に用いることができる緑色系の蛍光発光材料として、芳香族アミン誘導体等を使用できる。具体的には、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)]-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。
【0141】
発光層に用いることができる赤色系の蛍光発光材料として、テトラセン誘導体、ジアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)などが挙げられる。
【0142】
発光層に用いることができる青色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体が使用される。具体的には、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2-(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。
【0143】
発光層に用いることができる緑色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体等が使用される。トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(1,2-ジフェニル-1H-ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))などが挙げられる。
【0144】
発光層に用いることができる赤色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、白金錯体、テルビウム錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体が使用される。具体的には、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジナト-N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナート)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。
【0145】
また、トリス(アセチルアセトナート)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光発光材料として用いることができる。
【0146】
発光層のホスト材料
発光層は、上述したドーパント材料を他の材料(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ドーパント材料よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高占有軌道準位(HOMO準位)が低い材料を用いることが好ましい。
【0147】
ホスト材料としては、例えば
(1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、又は亜鉛錯体等の金属錯体、
(2)オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、又はフェナントロリン誘導体等の複素環化合物、
(3)カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、又はクリセン誘導体等の縮合芳香族化合物、
(4)トリアリールアミン誘導体又は縮合多環芳香族アミン誘導体等の芳香族アミン化合物が使用される。
【0148】
例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体;
2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物;
9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物;及び
N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ホスト材料は複数種用いてもよい。
【0149】
特に、青色蛍光素子の場合には、下記のアントラセン化合物をホスト材料として用いることが好ましい。
【0150】
【化52】
【0151】
【化53】
【0152】
【化54】
【0153】
電子輸送層
電子輸送層は電子輸送性の高い材料(電子輸送性材料)を含む層である。電子輸送層には、例えば、
(1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、
(2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、
(3)高分子化合物を使用することができる。
【0154】
金属錯体としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)が挙げられる。
【0155】
複素芳香族化合物としては、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(ptert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)が挙げられる。
【0156】
高分子化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)が挙げられる。
【0157】
上記材料は、10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い材料であれば、上記以外の材料を電子輸送層に用いてもよい。
【0158】
電子輸送層は、単層でもよく、2以上の層を含む多層でもよい。例えば、電子輸送層は第1電子輸送層(陽極側)と第2電子輸送層(陰極側)を含む層であってもよい。2以上の電子輸送層は、それぞれ前記電子輸送性材料により形成される。
【0159】
電子注入層
電子注入層は、電子注入性の高い材料を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する材料にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極からの電子注入をより効率良く行うことができる。
あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、有機化合物が電子供与体から電子を受け取るため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、受け取った電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層を構成する材料(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す材料であればよい。具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0160】
陰極
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
なお、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0161】
絶縁層
有機EL素子は、超薄膜に電界を印加するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層からなる絶縁層を挿入してもよい。
絶縁層に用いられる材料としては、例えば、酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。なお、これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0162】
スペース層
上記スペース層とは、例えば、蛍光発光層と燐光発光層とを積層する場合に、燐光発光層で生成する励起子を蛍光発光層に拡散させない、あるいは、キャリアバランスを調整する目的で、蛍光発光層と燐光発光層との間に設けられる層である。また、スペース層は、複数の燐光発光層の間に設けることもできる。
スペース層は発光層間に設けられるため、電子輸送性と正孔輸送性を兼ね備える材料であることが好ましい。また、隣接する燐光発光層内の三重項エネルギーの拡散を防ぐため、三重項エネルギーが2.6eV以上であることが好ましい。スペース層に用いられる材料としては、上述の正孔輸送層に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0163】
阻止層
電子阻止層、正孔阻止層、励起子阻止層などの阻止層を発光層に隣接して設けてもいい。電子阻止層とは発光層から正孔輸送層へ電子が漏れることを防ぐ層であり、正孔阻止層とは発光層から電子輸送層へ正孔が漏れることを防ぐ層である。励起子阻止層は発光層で生成した励起子が隣接する層へ拡散することを防止し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0164】
前記有機EL素子の各層は従来公知の蒸着法、塗布法等により形成することができる。例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)などの蒸着法、あるいは、層を形成する化合物の溶液を用いた、ディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0165】
各層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い駆動電圧が必要となり効率が悪くなるため、好ましくは5nm~10μmであり、10nm~0.2μmがより好ましい。
【0166】
前記有機EL素子は、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の表示装置、及び、照明、車両用灯具の発光装置等の電子機器に使用できる。
【実施例0167】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
本発明の一態様に係る化合物(1)の合成実施例を以下に示す。
【0168】
中間体I-Cの合成
【化55】
【0169】
アルゴン雰囲気下、9,9-ジフェニルフルオレン-2-アミン I-A 6.67g(20.0mmol)、クロロ体 I-B 6.82g(20.0mmol)、トリス(ジベンリジリデンアセトン)パラジウム(0)366mg(0.4mmol)、BINAP 498mg(0.8mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド2.69g(28.0mmol)の混合物をキシレン(100ml)溶液で110°Cにて6時間加熱攪拌した。反応液を室温に冷却し、トルエンを加え、不溶物を濾別した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体I-C 4.07gを得た。収率は32%であった。
【0170】
中間体I-Eの合成
【化56】
【0171】
中間体I-Cの合成法において、I-Aの代わりにI-Dを用いて同様な方法にてI-Eを得た。収率は44%であった。
【0172】
中間体I-Gの合成
【化57】
【0173】
中間体I-Cの合成法において、I-Aの代わりにI-Fを用いて同様な方法にてI-Gを得た。収率は47%であった。
【0174】
中間体I-Iの合成
【化58】
【0175】
中間体I-Cの合成法において、I-Aの代わりにI-Hを用いて同様な方法にてI-Iを得た。収率は51%であった。
【0176】
中間体I-Kの合成
【化59】
【0177】
中間体I-Cの合成法において、I-Aの代わりにI-Jを用いて同様な方法にてI-Kを得た。収率は29%であった。
【0178】
中間体I-Mの合成
【化60】
【0179】
中間体I-Cの合成法において、I-Aの代わりにI-Lを用いて同様な方法にてI-Mを得た。収率は30%であった。
【0180】
(合成実施例1)化合物1の合成
【化61】
【0181】
アルゴン雰囲気下、中間体I―C 3.83g(6.0mmol)、ブロモベンゼン 942mg(6.0mmol)、トリス(ジベンリジリデンアセトン)パラジウム(0) 110mg(0.12mmol)、トリーt-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート139mg(0.48mmol)およびナトリウム-t-ブトキシド1.73g(18mmol)のトルエン60mL溶液を110℃にて6時間攪拌した。室温に冷却したのち、残渣を濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶にて精製し、化合物1 3.98gを得た。収率は93%であった。得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物1であり、分子量713.92に対しm/e=713であった。
【0182】
(合成実施例2)化合物2の合成
【化62】
【0183】
化合物1の合成において、ブロモベンゼンのかわりに3-ブロモジベンゾフランを用いるほかは同様の操作を行い、化合物2を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物2であり、分子量804.00に対しm/e=804であった。
【0184】
(合成実施例3)化合物3の合成
【化63】
【0185】
化合物1の合成において、ブロモベンゼンのかわりに1-ブロモナフタレンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物3を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物3であり、分子量763.98に対しm/e=763であった。
【0186】
(合成実施例4)化合物4の合成
【化64】
【0187】
化合物1の合成において、ブロモベンゼンのかわりに9―ブロモフェナントレンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物4を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物4であり、分子量814.04に対しm/e=814であった。
【0188】
(合成実施例5)化合物5の合成
【化65】
【0189】
化合物1の合成において、ブロモベンゼンのかわりに2-ブロモジベンゾチオフェンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物5を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物5であり、分子量820.07に対しm/e=820であった。
【0190】
(合成実施例6)化合物6の合成
【化66】
【0191】
化合物1の合成において、ブロモベンゼンのかわりに1-ブロモジベンゾフランを用いるほかは同様の操作を行い、化合物6を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物6であり、分子量804.01に対しm/e=804であった。
【0192】
(合成実施例7)化合物7の合成
【化67】
【0193】
化合物1の合成において、中間体I-Cのかわりに中間体I-Eを用いるほかは同様の操作を行い、化合物7を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物7であり、分子量713.92に対しm/e=713であった。
【0194】
(合成実施例8)化合物8の合成
【化68】
【0195】
化合物7の合成において、ブロモベンゼンのかわりに2-ブロモナフチレンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物8を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物8であり、分子量763.98に対しm/e=763であった。
【0196】
(合成実施例9)化合物9の合成
【化69】
【0197】
化合物7の合成において、ブロモベンゼンのかわりに2-ブロモジベンゾフランを用いるほかは同様の操作を行い、化合物9を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物9であり、分子量804.01に対しm/e=804であった。
【0198】
(合成実施例10)化合物10の合成
【化70】
【0199】
化合物1の合成において、中間体I-Cのかわりに中間体I-Gを用いるほかは同様の操作を行い、化合物10を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物10であり、分子量790.02に対しm/e=790であった。
【0200】
(合成実施例11)化合物11の合成
【化71】
【0201】
化合物10の合成において、ブロモベンゼンのかわりに1―ブロモナフタレンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物11を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物11であり、分子量840.08に対しm/e=840であった。
【0202】
(合成実施例12)化合物12の合成
【化72】
【0203】
化合物10の合成において、ブロモベンゼンのかわりに4―ブロモジベンゾチオフェンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物12を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物12であり、分子量896.16に対しm/e=896であった。
【0204】
(合成実施例13)化合物13の合成
【化73】
【0205】
化合物1の合成において、中間体I-Cのかわりに中間体I-Iを用いるほかは同様の操作を行い、化合物13を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物13であり、分子量790.02に対しm/e=790であった。
【0206】
(合成実施例14)化合物14の合成
【化74】
【0207】
化合物13の合成において、ブロモベンゼンのかわりに2-ブロモジベンゾフランを用いるほかは同様の操作を行い、化合物14を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物14であり、分子量880.10に対しm/e=880であった。
【0208】
(合成実施例15)化合物15の合成
【化75】
【0209】
化合物1の合成において、中間体I-Cのかわりに中間体I-Kを用いるほかは同様の操作を行い、化合物15を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物15であり、分子量790.02に対しm/e=790であった。
【0210】
(合成実施例16)化合物16の合成
【化76】
【0211】
化合物15の合成において、ブロモベンゼンのかわりに1-ブロモナフタレンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物16を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物16であり、分子量840.08に対しm/e=840であった。
【0212】
(合成実施例17)化合物17の合成
【化77】
【0213】
化合物15の合成において、ブロモベンゼンのかわりに1-ブロモジベンゾフランを用いるほかは同様の操作を行い、化合物17を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物17であり、分子量880.10に対しm/e=880であった。
【0214】
(合成実施例18)化合物18の合成
【化78】
【0215】
化合物1の合成において、中間体I-Cのかわりに中間体I-Mを用いるほかは同様の操作を行い、化合物18を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物18であり、分子量790.02に対しm/e=790であった。
【0216】
(合成実施例19)化合物19の合成
【化79】
【0217】
化合物18の合成において、ブロモベンゼンのかわりに3-ブロモジベンゾフランを用いるほかは同様の操作を行い、化合物19を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物19であり、分子量880.10に対しm/e=880であった。
【0218】
(合成実施例20)化合物20の合成
【化80】
【0219】
化合物18の合成において、ブロモベンゼンのかわりに2-ブロモジベンゾチオフェンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物20を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物20であり、分子量896.16に対しm/e=896であった。
【0220】
(合成実施例21)化合物21の合成
【化81】
【0221】
化合物18の合成において、ブロモベンゼンのかわりに2-ブロモフェナントレンを用いるほかは同様の操作を行い、化合物21を得た。
得られたものは、マススペクトル分析の結果、化合物21であり、分子量890.14に対しm/e=890であった。
【0222】
実施例1
有機EL素子の製造
25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行った。ITO透明電極の厚さは130nmとした。
洗浄後のITO透明電極付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まずITO透明電極を覆うようにして化合物HI-1を蒸着して膜厚5nmの正孔注入層を形成した。
次に、この正孔注入層上に、化合物2s(第1正孔輸送層材料)を蒸着して膜厚80nmの第1正孔輸送層を形成した。
次に、この第1正孔輸送層上に、合成実施例1で得られた化合物1(第2正孔輸送層材料)を蒸着して膜厚10nmの第2正孔輸送層を形成した。
次に、この第2正孔輸送層上に、化合物BH-1(ホスト材料)と化合物BD-1(ドーパント材料)を共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。化合物BD-1の発光層中の濃度は4.0質量%であった。
次に、この発光層の上に、化合物ET-1を蒸着して膜厚10nmの第1電子輸送層を形成した。
次に、この第1電子輸送層の上に、下記化合物ET-2を蒸着して膜厚20nmの第2電子輸送層を形成した。
次に、この第2電子輸送層上に、LiFを蒸着して膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に金属Alを蒸着して膜厚80nmの金属Al陰極を形成した。
実施例1の有機EL素子は、下記構成とした。
ITO(130)/HI-1(5)/化合物2s(80)/化合物1(10)/
BH-1:BD-1(25:4%)/ET-1(10)/ET-2(20)/LiF(1)/Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。
【0223】
【化82】
【0224】
【化83】
【0225】
【化84】
【0226】
(比較例1)
実施例1の第2正孔輸送層に用いた化合物1に代えて、比較化合物1を用いたこと以外、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0227】
(比較例2)
実施例1の第2正孔輸送層に用いた化合物1に代えて、比較化合物2を用いたこと以外、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0228】
(実施例2)
有機EL素子の製造
25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行った。ITO透明電極の厚さは130nmとした。
洗浄後のITO透明電極付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まずITO透明電極を覆うようにして化合物2tと化合物HI-2を共蒸着して膜厚10nmの正孔注入層を形成した。化合物HI-2の正孔注入層中の濃度は3.0質量%、であった。
次に、この正孔注入層上に、化合物2t(第1正孔輸送層材料)を蒸着して膜厚110nmの第1正孔輸送層を形成した。
次に、この第1正孔輸送層上に、化合物1(第2正孔輸送層材料)を蒸着して膜厚35nmの第2正孔輸送層を形成した。
次に、この第2正孔輸送層上に、化合物H-1(ホスト材料1)と化合物H-2(ホスト材料2)、及び化合物D-1(ドーパント材料)を共蒸着し、膜厚40nmの発光層を形成した。化合物H-2(ホスト材料2)の発光層中の濃度は31.7質量%、また、化合物D-1の発光層中の濃度は5.0質量%であった。
次に、この発光層の上に、化合物ET-3を蒸着して膜厚5nmの第1電子輸送層を形成した。
次に、この第1電子輸送層の上に、下記化合物ET-4とLiqを共蒸着して膜厚20nmの第2電子輸送層を形成した。Liqの第2電子輸送層中の濃度は50質量%であった。
次に、この第2電子輸送層上に、Liqを蒸着して膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に金属Alを蒸着して膜厚50nmの金属Al陰極を形成した。
実施例2の有機EL素子は、下記構成とした。
ITO(130)/化合物2t:HI-2(10:3%)/化合物2t(110)/化合物1(35)/H-1:H-2:D-1(40:31.7%;5%)/ET-3(5)/
ET-4:Liq(20:50%)/Liq(1)/Al(50)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。
【0229】
【化85】

【化86】

【化87】
【0230】
(比較例3)
実施例2の第2正孔輸送層に用いた化合物1に代えて、比較化合物1を用いたこと以外、実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0231】
(比較例4)
実施例2の第2正孔輸送層に用いた化合物1に代えて、比較化合物3を用いたこと以外、実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0232】
(実施例3)
有機EL素子の製造
25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行った。ITO透明電極の厚さは130nmとした。
洗浄後のITO透明電極付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まずITO透明電極を覆うようにして化合物1と化合物HI-2を共蒸着して膜厚10nmの正孔注入層を形成した。化合物HI-2の正孔注入層中の濃度は5.0質量%であった。
次に、この正孔注入層上に、化合物1(第1正孔輸送層材料)を蒸着して膜厚80nmの第1正孔輸送層を形成した。
次に、この第1正孔輸送層上に、化合物2u(第2正孔輸送層材料)を蒸着して膜厚10nmの第2正孔輸送層を形成した。
次に、この第2正孔輸送層上に、化合物BH-1(ホスト材料)と化合物BD-2(ドーパント材料)を共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。化合物BD-2の発光層中の濃度は4.0質量%であった。
次に、この発光層の上に、化合物ET-2と化合物ET-5を共蒸着して膜厚20nmの電子輸送層を形成した。化合物ET―5の電子輸送層中の濃度は50質量%であった。
次に、この電子輸送層上に、LiFを蒸着して膜厚1nmの電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、この電子注入性電極上に金属Alを蒸着して膜厚50nmの金属Al陰極を形成した。
実施例3の有機EL素子は、下記構成とした。
ITO(130)/化合物1:HI-2(10:5%)/化合物1(80)/化合物2u(10)/BH-1:BD-2(25:4%)/ET-2:ET-5(20:50%)/LiF(1)/Al(50)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。
【0233】
【化88】

【化89】
【0234】
(比較例5)
実施例3の第1正孔輸送層に用いた化合物1に代えて、比較化合物1を用いたこと以外、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0235】
(比較例6)
実施例3の第1正孔輸送層に用いた化合物1に代えて、比較化合物2を用いたこと以外、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0236】
<有機EL素子の評価>
外部量子効率(EQE)の測定
実施例1(比較例1、2含む)及び実施例2(比較例3、4含む)で得られた有機EL素子を室温下、電流密度10mA/cmで直流定電流駆動し、輝度計(ミノルタ社製分光輝度放射計CS-1000)を用いて輝度を測定した。測定結果から外部量子効率(%)を求めた。結果をこの順に表1及び表2に示す。
【0237】
素子寿命の測定
実施例3(比較例5及び6含む)で得られた有機EL素子を、電流密度50mA/cmで直流駆動し、輝度が初期輝度の95%に減少するまでの時間を測定し、これを95%寿命(LT95)とした。結果を表3に示す。
【0238】
【表1】
【0239】
【表2】
【0240】
【表3】
【0241】
表1から明らかなように、特定の構造を有する化合物(1)及び化合物(2)を青色用の有機EL素子の正孔輸送材料として用いることにより、比較化合物1及び2では実現されない、高い外部量子効率を有する有機EL素子が得られることがわかる。
また、表2から明らかなように、特定の構造を有する化合物(1)及び化合物(2)を緑燐光用の有機EL素子の正孔輸送材料として用いることにより、比較化合物1及び3では実現されない、高い外部量子効率を有する有機EL素子が得られることがわかる。
さらに、表3から明らかなように、特定の構造を有する化合物(1)及び化合物(2)を他の青色用の有機EL素子の正孔輸送材料として用いることにより、比較化合物1及び2では実現されない、素子寿命が改善された有機EL素子が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0242】
1、11 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 陰極
5 発光層
6 正孔輸送帯域
6a 第1正孔輸送層
6b 第2正孔輸送層
7 電子輸送帯域
7a 第1電子輸送層
7b 第2電子輸送層
10、20 発光ユニット
図1
図2