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特開2022-37494エネルギー供給システム、エネルギー供給システムの制御装置およびエネルギー供給システムの制御方法
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  • 特開-エネルギー供給システム、エネルギー供給システムの制御装置およびエネルギー供給システムの制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037494
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】エネルギー供給システム、エネルギー供給システムの制御装置およびエネルギー供給システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220302BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20220302BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220302BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220302BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
H02J3/38 120
H02J15/00 G
H02J3/32
H02J3/00 180
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141662
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕佑
(72)【発明者】
【氏名】松岡 孝司
(72)【発明者】
【氏名】高見 洋史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏一
(72)【発明者】
【氏名】喜久里 浩之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 潤
(72)【発明者】
【氏名】古谷 博秀
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HB02
5G066HB04
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA08
(57)【要約】
【課題】エネルギー供給システムにおける送電量の変動をより確実に緩和する。
【解決手段】エネルギー供給システム1は、再生可能エネルギーで発電した電力の少なくとも一部を電力系統16に送電する再生可能エネルギー発電装置2と、再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統16に送電可能な蓄電池4と、電力系統16への送電量の変化率が許容変化率を超えないように蓄電池4を制御するとともに、再生可能エネルギー発電装置2の発電が停止して電力系統16への送電量がゼロまで下がる際に蓄電池4からの送電によって変化率を許容変化率以下に維持するために必要な必要SoCを算出し、必要SoCが現状のSoCを上回った場合に送電量が減るように蓄電池4を制御する制御部30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電する再生可能エネルギー発電装置と、
前記再生可能エネルギー発電装置が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電可能な蓄電池と、
電力系統への送電量の変化率が予め設定される許容変化率を超えないように前記蓄電池を制御するとともに、前記再生可能エネルギー発電装置の発電が停止して電力系統への送電量がゼロまで下がる際に前記蓄電池からの送電によって前記変化率を前記許容変化率以下に維持するために必要な前記蓄電池のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが前記蓄電池の現状のSoCを上回った場合に前記送電量が減るように前記蓄電池を制御する制御部と、を備える、
エネルギー供給システム。
【請求項2】
前記再生可能エネルギー発電装置が発電した電力および前記蓄電池から放電される電力の少なくとも一方を用いて水素を製造する水素製造装置を備え、
前記制御部は、前記送電量の変化率が前記許容変化率を超えないように前記蓄電池および前記水素製造装置を制御するとともに、前記必要SoCが現状のSoCを上回った場合に前記送電量が減るように前記蓄電池および前記水素製造装置を制御する、
請求項1に記載のエネルギー供給システム。
【請求項3】
前記制御部は、予め設定される電力価格および水素価格に基づいて、前記蓄電池および前記水素製造装置を制御する、
請求項2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項4】
少なくとも前記電力価格に基づいて定まる、前記再生可能エネルギー発電装置で発電した単位電力を蓄電池非経由で電力系統に送電した場合の利益額を第1利益額とし、
少なくとも前記電力価格および前記蓄電池の充放電にともなう電力損失に基づいて定まる、前記再生可能エネルギー発電装置で発電した単位電力を蓄電池経由で電力系統に送電した場合の利益額を第2利益額とし、
少なくとも前記水素価格および前記水素製造装置の水素製造効率に基づいて定まる、前記再生可能エネルギー発電装置で発電した単位電力を蓄電池非経由で前記水素製造装置に供給して水素を製造した場合の利益額を第3利益額とし、
少なくとも前記水素価格、前記水素製造効率および前記電力損失に基づいて定まる、前記再生可能エネルギー発電装置で発電した単位電力を蓄電池経由で前記水素製造装置に供給して水素を製造した場合の利益額を第4利益額とするとき、
前記第1利益額は前記第2利益額よりも高く、前記第3利益額は前記第4利益額よりも高く、
前記制御部は、
前記第1利益額および前記第2利益額が前記第3利益額よりも高い場合、蓄電池非経由での前記再生可能エネルギー発電装置から電力系統への送電量である直送電量が前記蓄電池および前記水素製造装置への電力供給量よりも多く、且つ前記蓄電池への電力供給量が前記水素製造装置への電力供給量よりも多い第1目標状態に近づくように前記蓄電池および前記水素製造装置を制御し、
前記第1利益額が前記第3利益額よりも高く前記第2利益額が前記第3利益額よりも低い場合、前記直送電量が前記蓄電池および前記水素製造装置への電力供給量よりも多く、且つ前記水素製造装置への電力供給量が前記蓄電池への電力供給量よりも多い第2目標状態に近づくように前記蓄電池および前記水素製造装置を制御し、
前記第3利益額が前記第1利益額よりも高く前記第4利益額が前記第1利益額よりも低い場合、前記水素製造装置への電力供給量が前記直送電量および前記蓄電池への電力供給量よりも多く、且つ前記直送電量が前記蓄電池への電力供給量よりも多い第3目標状態に近づくように前記蓄電池および前記水素製造装置を制御し、
前記第3利益額および前記第4利益額が前記第1利益額よりも高い場合、前記水素製造装置への電力供給量が前記直送電量および前記蓄電池への電力供給量よりも多く、且つ前記蓄電池への電力供給量が前記直送電量よりも多い第4目標状態に近づくように前記蓄電池および前記水素製造装置を制御する、
請求項3に記載のエネルギー供給システム。
【請求項5】
前記蓄電池の容量および前記水素製造装置の最大消費電力の組み合わせは、前記許容変化率に応じて定められる、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のエネルギー供給システム。
【請求項6】
再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電する再生可能エネルギー発電装置、および前記再生可能エネルギー発電装置が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電可能な蓄電池を備えるエネルギー供給システムの制御装置であって、
電力系統への送電量の変化率が予め設定される許容変化率を超えないように前記蓄電池を制御するとともに、前記再生可能エネルギー発電装置の発電が停止して電力系統への送電量がゼロまで下がる際に前記蓄電池からの送電によって前記変化率を前記許容変化率以下に維持するために必要な前記蓄電池のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが前記蓄電池の現状のSoCを上回った場合に前記送電量が減るように前記蓄電池を制御する制御部を備える、
エネルギー供給システムの制御装置。
【請求項7】
再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電する再生可能エネルギー発電装置、および前記再生可能エネルギー発電装置が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電可能な蓄電池を備えるエネルギー供給システムの制御方法であって、
電力系統への送電量の変化率が予め設定される許容変化率を超えないように前記蓄電池を制御するとともに、前記再生可能エネルギー発電装置の発電が停止して電力系統への送電量がゼロまで下がる際に前記蓄電池からの送電によって前記変化率を前記許容変化率以下に維持するために必要な前記蓄電池のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが前記蓄電池の現状のSoCを上回った場合に前記送電量が減るように前記蓄電池を制御することを含む、
エネルギー供給システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー供給システムならびにその制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生成過程での二酸化炭素排出量が少ないエネルギーとして、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギー(自然エネルギー)が注目されている。また、再生可能エネルギー利用の一環として、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を電力系統に送電するエネルギー供給システムが検討されている。
【0003】
再生可能エネルギー発電装置の発電量は、気象条件によって大きく変動することが知られている。例えば、太陽光発電装置の場合、日中は発電できるが日没後は発電できない。このため、1日の中で発電量が0から最大まで変動する。また、太陽光発電装置では、天候の変化により数分間から数時間の時間間隔で発電量が変動し得る。また、風力発電装置の場合は、風が吹けば昼夜を問わず発電できる。しかしながら、風の強弱の変化により数秒間から数時間の時間間隔で発電量が変動し得る。
【0004】
再生可能エネルギー発電装置における発電量の変動は、電力系統への送電量の変動につながる。電力系統への送電量が変動すると、電力系統の周波数が不安定になるといった不具合が生じ得る。このため、送配電事業者は、電力系統への送電量の変動幅に制限を設けている。これに対し、例えば特許文献1には、再生可能エネルギー発電装置に蓄電池、水電解槽および燃料電池を組み合わせた電力供給システムが開示されている。このシステムでは、再生可能エネルギーで発電した電力の一部を蓄電池に充電し、また当該電力の他の一部を利用して水電解槽で水素を製造していた。そして、蓄電池の充放電や、水素を用いた燃料電池での発電によって、送電量の変動を緩和していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/013751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、再生可能エネルギー発電装置を用いたエネルギー供給システムについて鋭意検討を重ねた結果、電力系統への送電量の変動をより確実に緩和することが可能な技術を見出した。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、再生可能エネルギー発電装置を用いたエネルギー供給システムにおける送電量の変動をより確実に緩和するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、エネルギー供給システムである。このシステムは、再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電する再生可能エネルギー発電装置と、再生可能エネルギー発電装置が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電可能な蓄電池と、電力系統への送電量の変化率が予め設定される許容変化率を超えないように蓄電池を制御するとともに、再生可能エネルギー発電装置の発電が停止して電力系統への送電量がゼロまで下がる際に蓄電池からの送電によって変化率を許容変化率以下に維持するために必要な蓄電池のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが蓄電池の現状のSoCを上回った場合に送電量が減るように蓄電池を制御する制御部と、を備える。
【0009】
本発明の他の態様は、再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電する再生可能エネルギー発電装置、および再生可能エネルギー発電装置が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電可能な蓄電池を備えるエネルギー供給システムの制御装置である。この制御装置は、電力系統への送電量の変化率が予め設定される許容変化率を超えないように蓄電池を制御するとともに、再生可能エネルギー発電装置の発電が停止して電力系統への送電量がゼロまで下がる際に蓄電池からの送電によって変化率を許容変化率以下に維持するために必要な蓄電池のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが蓄電池の現状のSoCを上回った場合に送電量が減るように蓄電池を制御する制御部を備える。
【0010】
本発明の他の態様は、再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電する再生可能エネルギー発電装置、および再生可能エネルギー発電装置が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統に送電可能な蓄電池を備えるエネルギー供給システムの制御方法である。この制御方法は、電力系統への送電量の変化率が予め設定される許容変化率を超えないように蓄電池を制御するとともに、再生可能エネルギー発電装置の発電が停止して電力系統への送電量がゼロまで下がる際に蓄電池からの送電によって変化率を許容変化率以下に維持するために必要な蓄電池のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが蓄電池の現状のSoCを上回った場合に送電量が減るように蓄電池を制御することを含む。
【0011】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再生可能エネルギー発電装置を用いたエネルギー供給システムにおける送電量の変動をより確実に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係るエネルギー供給システムの模式図である。
図2】変動安定化制御の一例を示すフローチャートである。
図3】変動安定化の保証制御を説明するための図である。
図4】変動安定化の保証制御の一例を示すフローチャートである。
図5】利益比較制御を説明するための図である。
図6】利益比較制御の一例を示すフローチャートである。
図7】蓄電池の容量と、水素製造装置の最大消費電力と、月間の利益額との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、この用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
図1は、実施の形態に係るエネルギー供給システム1の模式図である。本実施の形態のエネルギー供給システム1は、再生可能エネルギー発電装置2と、蓄電池4と、水素製造装置6と、制御装置8とを備える。
【0016】
再生可能エネルギー発電装置2は、再生可能エネルギーを利用して発電する。例えば、再生可能エネルギー発電装置2は、太陽光を利用する太陽光発電装置10や、風力を利用する風力発電装置12等を含む。なお、再生可能エネルギー発電装置2は、地熱発電装置、波力発電装置、温度差発電装置、バイオマス発電装置等の、太陽光や風力以外の再生可能エネルギーを利用する発電装置を含んでもよい。また、再生可能エネルギー発電装置2の数は限定されない。
【0017】
再生可能エネルギー発電装置2は、変圧器(図示せず)等を介して送電線14に接続される。送電線14は、電力系統16に接続される。再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力の少なくとも一部は、送電線14を介して電力系統16に送電される。送電線14には、第1電力計18および第2電力計20が接続される。第1電力計18は、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreを所定の時間間隔で(例えば1秒毎に)繰り返し計測し、計測値を制御装置8に送る。第2電力計20は、エネルギー供給システム1から電力系統16への送電量Pgridを所定の時間間隔で(例えば1秒毎に)繰り返し計測し、計測値を制御装置8に送る。
【0018】
再生可能エネルギー発電装置2は、気象条件等によって発電量Pvreが変動する。発電量Pvreの変動には、数秒間~数十秒間の短期変動、数分間~数十分間の中期変動および数時間以上の長期変動が含まれる。電力系統16への送電量Pgrid全体に占める、再生可能エネルギー発電装置2由来の電力の割合が増大すると、発電量Pvreの変動が電力系統16に与える影響が大きくなる。これに対し、エネルギー供給システム1は、蓄電池4および水素製造装置6の少なくとも一方を用いて再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreの変動を緩和することで、電力系統16への送電量Pgridの安定化を図る。
【0019】
蓄電池4としては、リチウムイオン電池等の公知の蓄電池を用いることができる。蓄電池4は、送電線14を介して再生可能エネルギー発電装置2および電力系統16に接続される。これにより、蓄電池4は、再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統16に送電可能である。また、蓄電池4は、充電した電力の少なくとも一部を水素製造装置6に供給することもできる。
【0020】
蓄電池4は、PCS22(パワーコンディショナ)を介して送電線14に接続される。PCS22は、交流と直流の変換および電圧の変換、または当該2つの変換のいずれかを行う装置である。したがって、再生可能エネルギー発電装置2で発電された電力は、PCS22で調整された後に蓄電池4に供給される。また、蓄電池4が放電した電力は、PCS22で調整された後に電力系統16あるいは水素製造装置6に供給される。蓄電池4は、残容量を表すSoC(State of Charge)や、充放電時の電流値等を計測するセンサ(図示せず)を有する。蓄電池4は、SoC等を所定の時間間隔で(例えば1秒毎に)繰り返し計測し、計測値を制御装置8に送る。また、蓄電池4は、制御装置8からの指令を受けて蓄電池4の充放電を制御する制御ユニット(図示せず)を有する。
【0021】
水素製造装置6としては、水電解槽等の公知の水素製造装置を用いることができる。水素製造装置6は、送電線14を介して再生可能エネルギー発電装置2および蓄電池4に接続される。これにより、水素製造装置6は、再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力および蓄電池4から放電される電力の少なくとも一方を用いて水素を製造することができる。
【0022】
水素製造装置6は、PCS24を介して送電線14に接続される。PCS24は、交流と直流の変換および電圧の変換、または当該2つの変換のいずれかを行う装置である。したがって、再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力および蓄電池4が放電した電力は、PCS24で調整された後に水素製造装置6に供給される。また、水素製造装置6は、消費電力量等を計測するセンサ(図示せず)を有する。水素製造装置6は、消費電力量等を所定の時間間隔で(例えば1秒毎に)繰り返し計測し、計測値を制御装置8に送る。水素製造装置6における消費電力量は、水素製造装置6の稼働量、言い換えれば水素製造装置6における水素製造量と相関する。また、水素製造装置6は、制御装置8からの指令を受けて水素製造装置6の稼働を制御する制御ユニット(図示せず)を有する。
【0023】
水素製造装置6で製造された水素は、水素利用施設26で消費される。水素利用施設26としては、特に限定されないが、水素ステーション、製油所、化学プラント等が例示される。水素ステーションは、水素を燃料とする燃料電池自動車等に水素を供給する施設である。水素利用施設26が製油所や化学プラントである場合、水素は、水素化精製装置や水素化分解装置等で利用される。水素化精製装置には、処理対象となる基材から硫黄、窒素、酸素等の不純物を除去する装置、基材に水添処理を施す装置等が含まれ得る。水素化分解装置には、例えば重質留分を水素化分解して軽質留分に変換する装置等が含まれる。
【0024】
本実施の形態において、水素製造装置6で製造された水素は、電力系統16への送電用の発電には利用されない。しかしながら、これに限らず、水素製造装置6で製造された水素を利用して燃料電池等で発電し、得られた電力を電力系統16に送電したり、蓄電池4に充電したりしてもよい。また、水素製造装置6で製造された水素は、メチルシクロヘキサン等の有機ハイドライドや、水素吸蔵合金等の状態で水素利用施設26に供給されてもよい。また、水素製造装置6で製造された水素は、水素利用施設26に供給される前に水素タンクに貯蔵されてもよい。
【0025】
蓄電池4の充放電と、水素製造装置6における水素製造とは、制御装置8によって制御される。制御装置8は、記録部28と、制御部30とを有する。図1では、記録部28および制御部30を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0026】
記録部28は、第1電力計18から計測値を受領して、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreを経時的に記録する。また、記録部28は、第2電力計20から計測値を受領して、電力系統16への送電量Pgridを経時的に記録する。第2電力計20によって計測される送電量Pgridには、再生可能エネルギー発電装置2から直に電力系統16に送電される電力量と、蓄電池4から電力系統16に送電される電力量とが含まれ得る。また、記録部28は、蓄電池4から計測値を受領して、蓄電池4のSoC等を経時的に記録する。また、記録部28は、水素製造装置6から計測値を受領して、水素製造装置6における消費電力量(水素製造量)を経時的に記録する。
【0027】
制御部30は、記録部28に記録されている各種の情報に基づいて、蓄電池4および水素製造装置6を制御する。例えば、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが急激に増大した際に、再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力を充電するよう、または蓄電池4からの放電を抑制するよう制御部30が蓄電池4を制御することで、電力系統16への送電量Pgridの増加を抑制することができる。また、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが急激に減少した際に、蓄えている電力を放電するよう、または充電を抑制するよう制御部30が蓄電池4を制御することで、電力系統16への送電量Pgridの減少を抑制することができる。
【0028】
また、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが急激に増大した際に、消費電力量が増大するよう制御部30が水素製造装置6を制御することで、電力系統16への送電量Pgridの増加を抑制することができる。また、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが急激に減少した際に、消費電力量が減少するよう制御部30が水素製造装置6を制御することで、電力系統16への送電量Pgridの減少を抑制することができる。
【0029】
(変動安定化制御)
送配電事業者と発電事業者との契約等において、エネルギー供給システム1には、電力系統16への送電量Pgridの許容変化率ΔPgridが予め設定される。設定された許容変化率ΔPgridは、記録部28に記録される。許容変化率ΔPgridは、送電量Pgridの単位時間当たりの変化量(kW/s)の許容値、つまり1秒間で変化させてよい送電量の最大値である。このため、制御部30は変動安定化制御として、電力系統16への送電量Pgridの変化率(kW/s)が許容変化率ΔPgridを超えないように、蓄電池4および水素製造装置6を制御する。
【0030】
例えば、許容変化率ΔPgridは、エネルギー供給システム1から電力系統16へ送電可能な最大送電量Pgrid,maxに所定の係数Mを乗じて決定される。最大送電量Pgrid,maxおよび係数Mは、送配電事業者と発電事業者との契約等で定められる。一例として、係数Mは1%/60sである。つまり、1分間で最大送電量Pgrid,maxの1%分の変動が許容される。この場合、制御部30は、最大送電量Pgrid,maxの1%を現状の送電量Pgridに加えた値を上限とし、最大送電量Pgrid,maxの1%を現状の送電量Pgridから減じた値を下限とする範囲内に、1分後の送電量Pgridが収まるように(当然、現在から1分後までの間の送電量Pgridも当該範囲内に収まっていなければならない)、電力系統16への送電量Pgridを制御する。
【0031】
図2は、変動安定化制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、制御部30によって所定のタイミングで繰り返し実行される。変動安定化制御の一例において、まず制御部30は、時間t(現在)における再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvre(t)を記録部28から取得する(S101)。そして、制御部30は、発電量Pvre(t)が、時間tの直前に記録された時間t-1の発電量Pvre(t-1)よりも増加したか判断する(S102)。
【0032】
発電量Pvre(t)が増加した場合(S102のY)、制御部30は、発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)の差がしきい値を超えるか判断する(S103)。当該しきい値は、許容変化率ΔPgridに対応する発電変化量であり、記録部28に予め記録されている。発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)との差がしきい値を超える場合(S103のY)、制御部30は、時間tにおける送電量Pgrid(t)の増加抑制処理を実行して(S104)、本ルーチンを終了する。
【0033】
増加抑制処理において、制御部30は、蓄電池4への充電電力増加指令、蓄電池4への放電電力減少指令および水素製造装置6への水素製造増加指令の少なくとも一つを実施する。充電電力増加指令には、充電を開始させることも含まれる。放電電力減少指令には、放電を停止させることも含まれる。水素製造増加指令には、停止中の水素製造装置6を稼働させることも含まれる。これにより、時間t-1から時間tにかけての送電量Pgridの変化率、つまり送電量Pgrid(t-1)と送電量Pgrid(t)との差を許容変化率ΔPgrid以下とすることができる。
【0034】
発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)との差がしきい値以下である場合(S103のN)、制御部30は、増加抑制処理を実行することなく本ルーチンを終了する。この場合、蓄電池4の充放電電力および水素製造装置6における水素製造量が時間tと時間t-1とで同一であるため、電力系統16への送電量Pgrid(t)は、発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)の差分だけ増加し得る。
【0035】
発電量Pvre(t)が発電量Pvre(t-1)よりも増加していない場合(S102のN)、制御部30は、発電量Pvre(t)が発電量Pvre(t-1)よりも減少したか判断する(S105)。発電量Pvre(t)が減少した場合(S105のY)、制御部30は、発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)との差がしきい値を超えるか判断する(S106)。発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)との差がしきい値を超える場合(S106のY)、制御部30は、送電量Pgrid(t)の減少抑制処理を実行して(S107)、本ルーチンを終了する。
【0036】
減少抑制処理において、制御部30は、蓄電池4への放電電力増加指令、蓄電池4への充電電力減少指令および水素製造装置6への水素製造減少指令の少なくとも一つを実施する。放電電力増加指令には、放電を開始させることも含まれる。充電電力減少指令には、充電を停止させることも含まれる。水素製造減少指令には、水素製造装置6の稼働を停止させることも含まれる。これにより、時間t-1から時間tにかけての送電量Pgridの変化率を許容変化率ΔPgrid以下とすることができる。
【0037】
発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)との差がしきい値以下である場合(S106のN)、制御部30は、減少抑制処理を実行することなく本ルーチンを終了する。この場合、蓄電池4の充放電電力および水素製造装置6における水素製造量が時間tと時間t-1とで同一であるため、電力系統16への送電量Pgrid(t)は、発電量Pvre(t)と発電量Pvre(t-1)の差分だけ減少し得る。
【0038】
発電量Pvre(t)が発電量Pvre(t-1)よりも減少していない場合(S105のN)、制御部30は、発電量Pvre(t)がゼロであるか判断する(S108)。発電量Pvre(t)がゼロでない場合(S108のN)、制御部30は、増加抑制処理も減少抑制処理も実施することなく、本ルーチンを終了する。発電量Pvre(t)がゼロである場合(S108のY)、制御部30は、時間t-1における送電量Pgrid(t-1)が許容変化率ΔPgrid以下であるか、つまり許容される単位時間当たりの最大変化量に相当する送電量以下であるか判断する(S109)。送電量Pgridが許容変化率ΔPgrid以下である場合(S109のY)、制御部30は、増加抑制処理も減少抑制処理も実施することなく、本ルーチンを終了する。送電量Pgrid(t-1)が許容変化率ΔPgrid以下でない場合(S109のN)、制御部30は、送電量Pgrid(t)の減少抑制処理を実行して(S110)、本ルーチンを終了する。
【0039】
なお、変動安定化制御のフローは上述のものに限定されない。例えば、発電量Pvre(t-1)と送電量Pgrid(t-1)との差分電力Presを算出し、PresおよびΔPgridのうち小さい方の値と-ΔPgridとを比較し、大きい方の値を送電量Pgrid(t-1)に加算して送電量Pgrid(t)を算出する制御であってもよい。これにより、差分電力Presの絶対値が許容変化率ΔPgrid未満である場合には差分電力Presだけ送電量Pgrid(t)を増減させ、差分電力Presの絶対値が許容変化率ΔPgrid以上である場合には許容変化率ΔPgridだけ送電量Pgrid(t)を増減させることができる。また、上述の制御に蓄電池4のSoCを考慮した制御を加えてもよい。
【0040】
(変動安定化の保証制御)
また、制御部30は、送電量Pgridの変化率が許容変化率ΔPgridを超えることをより確実に回避するために、以下に説明する変動安定化の保証制御を実行する。図3は、変動安定化の保証制御を説明するための図である。この制御は、再生可能エネルギー発電装置2における発電が突然停止したとき、送電量Pgridが0に到達するまで、蓄電池4からの放電によって送電量Pgridの減少率を許容変化率ΔPgrid以下に抑えることができるように、送電量Pgridと蓄電池4のSoCとのバランスを調整する制御である。変動安定化の保証制御は、主として再生可能エネルギー発電装置2の発電中に実行される。
【0041】
保証制御において、まず制御部30は、記録部28に記録された現状の送電量Pgrid,0に応じた必要SoC(SoCrequired)を算出する。必要SoCとは、再生可能エネルギー発電装置2の発電が停止して電力系統16への送電量Pgridが現状の量からゼロまで下がる際に、蓄電池4からの送電によって送電量Pgridの変化率を許容変化率ΔPgrid以下に維持するために必要な蓄電池4のSoCである。
【0042】
図3に示すように、再生可能エネルギー発電装置2の発電が停止する直前の送電量Pgrid,0から、許容変化率ΔPgrid(つまり許容される変化の最大値)で送電量Pgridを徐々に減少させていった際、T秒後に送電量Pgridが0に到達するとする。送電量Pgridの漸減は、蓄電池4の放電によって送電量Pgridを賄うことで実現される。
【0043】
t秒(t≦T)後の送電量Pgrid(t)は、数式(1)に基づいて算出される。
【数1】
【0044】
数式(1)に、時間Tと、時間Tにおける送電量Pgrid(T)=0とを代入することで、時間Tは数式(2)のように表される。
【数2】
【0045】
また、再生可能エネルギー発電装置2の発電停止から時間Tまでの蓄電池4からの放電量Qは、数式(2)を用いて数式(3)のように表される。
【数3】
【0046】
蓄電池4の容量をCBT(kWh)とすると、発電停止直前の送電量Pgrid,0に対する必要SoCは、数式(4)のように表される。蓄電池4の容量をCBT、最大送電量Pgrid,maxおよび数式(4)は、予め記録部28に記録されている。
【数4】
【0047】
例えば、蓄電池4の容量CBTが21kWh、最大送電量Pgrid,maxが18kW、係数Mが1%/60s、許容変化率ΔPgridが0.003kW/s(18×0.01/60=18/6000=0.003)であるとき、必要SoCは、Pgrid,0 /453.6となる。したがって、制御部30は、記録部28に記録されている情報を用いて、発電停止直前の送電量Pgrid,0に応じた必要SoC、言い換えれば現状の送電量Pgridに応じた必要SoCを算出することができる。例えば、発電停止直前の送電量Pgrid,0が18kWである場合、必要SoCは約71.4%である。
【0048】
なお、必要SoCは、所定のマージン定数Nを含む値であってもよい。つまり、必要Socは、SoCrequired=(Q/3600CBT)+Nで表すことができる。式(4)は、マージン定数Nがゼロの場合に相当する。マージン定数Nは、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能であり、例えば1~5%である。
【0049】
そして制御部30は、必要SoCが蓄電池4の現状のSoCを上回った場合に、送電量Pgridの変化率が許容変化率ΔPgrid以下となる範囲で、送電量Pgridが減るように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。制御部30は、送電量Pgridの低減処理として、蓄電池4への充電電力増加指令、蓄電池4への放電電力減少指令および水素製造装置6への水素製造増加指令の少なくとも1つを実施する。これにより、送電量Pgridを減少させることができるため、必要SoCを現状のSoC以下に下げることができる。
【0050】
必要SoCが現状のSoC以下となるように送電量Pgridを調整することで、再生可能エネルギー発電装置2の発電が突然停止した場合に(このときの送電量Pgridが発電停止直前の送電量Pgrid,0となる)、蓄電池4からの放電のみで送電量Pgridの変化率を許容変化率ΔPgrid以下に維持しながら、送電量Pgridを現状の量からゼロまで下げることができる。つまり、蓄電池4のみで変動安定化制御を実現することができる。したがって、送電量Pgridの変動安定化を保証することができる。
【0051】
なお、蓄電池4への充電によって送電量Pgridを減少させる場合、蓄電池4のSoCが増加し得る。この場合は、送電量Pgridの減少とSoCの増加との相乗作用によって、必要SoCを現状のSoC以下にすることができる。また、制御部30は、変動安定化制御と保証制御とを並行して実行することができる。2つの制御において実行しようとする制御内容が相反する場合には、保証制御に基づく送電量Pgridの調整が優先して実行される。なお、保証制御は、送電量Pgridの変化率を許容変化率ΔPgrid以下に保ちながら送電量Pgridを減少させる制御である。このため、保証制御は、広義には変動安定化制御の一部と解釈することもできる。また、変動安定化制御および保証制御は、エネルギー供給システム1が水素製造装置6を有しない場合であっても、蓄電池4の充放電によって実現することができる。
【0052】
図4は、変動安定化の保証制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、制御部30によって所定のタイミングで繰り返し実行される。変動安定化の保証制御の一例において、まず制御部30は、記録部28に記録されている現状の送電量Pgridを取得し、必要SoCを算出する(S201)。そして、制御部30は、記録部28に記録された現状のSoCを取得し、必要SoCが現状のSoCを上回るか判断する(S202)。
【0053】
必要SoCが現状のSoCを上回る場合(S202のY)、制御部30は、送電量Pgridの低減処理を実行して(S203)、本ルーチンを終了する。必要SoCが現状のSoC以下である場合(S202のN)、制御部30は、低減処理を実行することなく本ルーチンを終了する。
【0054】
(利益比較制御)
制御部30は、変動安定化制御および保証制御とともに、以下に説明する利益比較制御を実行する。図5は、利益比較制御を説明するための図である。利益比較制御において、制御部30は、予め設定される電力価格および水素価格に基づいて、蓄電池4および水素製造装置6を制御する。また、本実施の形態の制御部30は、電力価格および水素価格に加え、蓄電池4の充放電にともなう電力損失(充放電効率)、および水素製造装置6の水素製造効率(電力消費量あたりの水素製造量であり水素製造原単位ともいう)に基づいて、蓄電池4および水素製造装置6を制御する。
【0055】
電力価格は、例えば市場価格であり、30分毎の取引価格(スポット価格)が前日に決まる。水素価格は、例えば水素ステーションでの水素の売価であり、各事業者により設定される。また、水素価格は、水素市場が確立された場合には、市場価格であってもよい。蓄電池4の充放電にともなう電力損失は、蓄電池4やPCS22の特性に応じて定まる。水素製造装置6の水素製造効率は、水素製造装置6やPCS24の特性に応じて定まる。電力価格、水素価格、電力損失および水素製造効率は、記録部28に予め記録される。電力価格や水素価格は、電気通信回線等を通じて提供されてもよい。
【0056】
再生可能エネルギー発電装置2で発電した電力を電力系統16に送電すると、電力価格に応じた利益が得られる。一方、再生可能エネルギー発電装置2で発電した電力を用いて水素製造装置6で水素を製造すると、水素価格および水素製造効率に応じた利益が得られる。電力系統16への送電により得られる利益(送電利益)が、同量の電力で水素を製造した場合に得られる利益(水素製造利益)を上回る場合は電力系統16への送電を優先し、水素製造利益が送電利益を上回る場合は水素の製造を優先することで、エネルギー供給システム1の収益性を高めることができる。
【0057】
また、再生可能エネルギー発電装置2で発電した電力を蓄電池4に充電し、充電した電力を送電あるいは水素製造に割り振ることで、収益性のさらなる向上を図り得る。一方で、蓄電池4の充放電は電力損失をともなう。このため、電力損失分の減益を考慮しながら蓄電池4に充電した電力の供給先を切り替えることで、エネルギー供給システム1の収益性をより向上させることができる。なお、利益比較制御で実行しようとする制御内容が変動安定化制御または保証制御おいて実行しようとする制御内容と相反する場合には、変動安定化制御または保証制御に基づく制御が優先して実行される。利益比較制御は、利益比較の結果に基づいて変動安定化制御の制御アルゴリズム(電力の供給先の優先度)を切り替える制御と捉えることもできる。
【0058】
本実施の形態では、第1利益額EP1、第2利益額EP2、第3利益額HP3および第4利益額HP4が予め設定されて記録部28に記録される。第1利益額EP1は、少なくとも電力価格に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4非経由で電力系統16に送電した場合の利益額である。第2利益額EP2は、少なくとも電力価格および電力損失に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4経由で電力系統16に送電した場合の利益額である。第3利益額HP3は、少なくとも水素価格および水素製造効率に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4非経由で水素製造装置6に供給して水素を製造した場合の利益額である。第4利益額HP4は、少なくとも水素価格、水素製造効率および電力損失に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4経由で水素製造装置6に供給して水素を製造した場合の利益額である。
【0059】
上述のように、一例としての電力価格は、30分毎に価格が変動する。したがって、第1利益額EP1および第2利益額EP2は、所定の時間間隔で繰り返し更新される。一方、水素価格は、電力価格に比べて価格の変動頻度が少なく、例えば数週間~数ヶ月の頻度で変動する。また、電力損失は、蓄電池4やPCS22に固有のものであり、実質的に変動しない。また、水素製造効率は、水素製造装置6やPCS24に固有のものであり、実質的に変動しない。したがって、第3利益額HP3は水素価格の改定時と水素製造装置6およびPCS24の少なくとも一方の換装時に更新され、第4利益額HP4は水素価格の改定時と蓄電池4、PCS22、水素製造装置6およびPCS24の少なくとも1つの換装時に更新されるものの、制御の一例においては、第3利益額HP3および第4利益額HP4を固定値と捉えることができる。よって、各利益額の大小関係は、電力価格の変動にともなって変化する。なお、当然に第1利益額EP1は第2利益額EP2よりも高く、第3利益額HP3は第4利益額HP4よりも高い。
【0060】
図5に示すように、第1利益額EP1および第2利益額EP2が第3利益額HP3よりも高い区分Aの場合、制御部30は、第1目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。第1目標状態は、蓄電池4非経由での再生可能エネルギー発電装置2から電力系統16への送電量Pgridである直送電量α1が蓄電池4への電力供給量α2および水素製造装置6への電力供給量α3よりも多く、且つ蓄電池4への電力供給量α2が水素製造装置6への電力供給量α3よりも多い状態である。
【0061】
つまり、区分Aでは、再生可能エネルギー発電装置2から電力系統16への直送電が最も収益性が高い。このため、直送電量α1を蓄電池4および水素製造装置6への電力供給量α2,α3よりも多くすることで、収益性を高めることができる。また、区分Aでは、蓄電池4の充放電による電力損失をともなう売電で得られる利益(EP2)が、当該電力損失をともなわない水素製造で得られる利益(HP3)よりも高い。このため、水素製造装置6への電力供給量α3よりも蓄電池4への電力供給量α2を多くすることで、収益性の向上につなげることができる。蓄電池4に充電された電力は、直送電量α1が最大送電量Pgrid,max未満であるとき、電力系統16に送電される。
【0062】
制御部30は、充電電力を増加(充電の開始を含む)させるよう蓄電池4を制御することで、電力供給量α2を増加させることができる。また、充電電力を減少(充電の停止を含む)させるよう蓄電池4を制御することで、電力供給量α2を減少させることができる。また、制御部30は、水素製造量を増加(水素製造の開始を含む)させるよう水素製造装置6を制御することで、電力供給量α3を増加させることができる。また、水素製造量を減少(水素製造の停止を含む)させるよう水素製造装置6を制御することで、電力供給量α3を減少させることができる。また、制御部30は、電力供給量α2および電力供給量α3の少なくとも一方を増減させることによって、直送電量α1を増減させることができる。
【0063】
理想的には、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreのうち直送電量α1が占める割合が100%に近づくように制御される。そして、発電量Pvreが最大送電量Pgrid,max超えて余剰電力が生じたとき、この余剰電力が水素製造装置6よりも蓄電池4に優先的に供給される。ただし、上述した変動安定化制御および保証制御が利益比較制御よりも優先されるため、発電量Pvreが急増した場合には、直送電量α1が最大送電量Pgrid,max未満であっても、直送電量α1の変化率が許容変化率ΔPgridを満たすように蓄電池4への電力供給量α2が増加され得る。また、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが急減した場合には、電力供給量α2が低減され得る。また必要に応じて蓄電池4から電力系統16に送電され得る。
【0064】
例えば制御部30は、時間t(現在)における再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvre(t)が時間t-1における送電量Pgrid(t-1)よりも大きいとき、最大送電量Pgrid,maxを超えない範囲で、時間tにおける送電量Pgrid(t)、つまり直送電量α1を増加させる。発電量Pvre(t)が送電量Pgrid(t-1)よりも小さいとき、直送電量α1を減少させる。制御部30が電力供給量α2,α3を変化させなければ、発電量Pvre(t)と送電量Pgrid(t-1)との差分が、そのまま直送電量α1の増加量あるいは減少量となる。
【0065】
また、発電量Pvre(t)が最大送電量Pgrid,maxを超えて余剰電力が生じた場合、制御部30は、蓄電池4への電力供給量α2を増加させる。余剰電力が減った場合は、それに応じて電力供給量α2を減少させる。また、一例として水素製造装置6への電力供給量α3はゼロとする。ただし、蓄電池4のSoCは、所定のしきい値以下に維持しておくことが望ましい。これは、蓄電池4の空き容量に余裕を持たせて、余剰電力の吸収漏れを極力減らすためである。このため、蓄電池4のSoCが当該しきい値を超える場合、制御部30は、水素製造装置6への電力供給量α3を増加させ得る。
【0066】
なお、余剰電力が生じていない状況で、再生可能エネルギー発電装置2で発電した電力の一部を蓄電池4に供給する制御を実施してもよい。この場合、蓄電池4のSoCがしきい値を超える際は、電力供給量α3の増加と直送電量α1の増加との組み合わせによってSoCの増加を抑制してもよい。一例としては、直送電量α1の増加が電力供給量α3の増加よりも先に実施される。
【0067】
第1利益額EP1が第3利益額HP3よりも高く第2利益額EP2が第3利益額HP3よりも低い区分Bの場合、制御部30は、第2目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。第2目標状態は、直送電量α1が蓄電池4および水素製造装置6への電力供給量α2,α3よりも多く、且つ水素製造装置6への電力供給量α3が蓄電池4への電力供給量α2よりも多い状態である。
【0068】
つまり、区分Bでは、再生可能エネルギー発電装置2から電力系統16への直送電が最も収益性が高い。このため、直送電量α1を蓄電池4および水素製造装置6への電力供給量α2,α3よりも多くすることで、収益性を高めることができる。また、区分Bでは、蓄電池4の充放電による電力損失をともなわない水素製造で得られる利益(HP3)が、当該電力損失をともなう売電で得られる利益(EP2)よりも高い。このため、蓄電池4への電力供給量α2よりも水素製造装置6への電力供給量α3を多くすることで、収益性を高めることができる。蓄電池4に充電された電力は、直送電量α1が最大送電量Pgrid,max未満であるとき、電力系統16に送電される。
【0069】
理想的には、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreのうち直送電量α1が占める割合が100%に近づくように制御される。そして、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが最大送電量Pgrid,maxを超えて余剰電力が生じたとき、この余剰電力が蓄電池4よりも水素製造装置6に優先的に供給される。ただし、上述した変動安定化制御および保証制御が優先される点は、区分Aにおける制御と同様である。
【0070】
例えば制御部30は、発電量Pvre(t)が送電量Pgrid(t-1)よりも大きいとき、最大送電量Pgrid,maxを超えない範囲で、時間tの直送電量α1を増加させる。発電量Pvre(t)が送電量Pgrid(t-1)よりも小さいとき、時間tの直送電量α1を減少させる。また、発電量Pvre(t)が最大送電量Pgrid,maxを超えて余剰電力が生じた場合、制御部30は、水素製造装置6への電力供給量α3を増加させる。余剰電力が減った場合は、それに応じて電力供給量α3を減少させる。また、一例として蓄電池4への電力供給量α2は、変動安定化制御および保証制御で許容される限りにおいてゼロとする。SoCを維持する制御は、区分Aの場合と同様であるが、一例としては電力供給量α3の増加が直送電量α1の増加よりも先に実施される。
【0071】
第3利益額HP3が第1利益額EP1よりも高く第4利益額HP4が第1利益額EP1よりも低い区分Cの場合、制御部30は、第3目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。第3目標状態は、水素製造装置6への電力供給量α3が直送電量α1および蓄電池4への電力供給量α2よりも多く、且つ直送電量α1が蓄電池4への電力供給量α2よりも多い状態である。
【0072】
つまり、区分Cでは、再生可能エネルギー発電装置2から水素製造装置6へ直に給電して水素製造することが最も収益性が高い。このため、水素製造装置6への電力供給量α3を直送電量α1および蓄電池4への電力供給量α2よりも多くすることで、収益性を高めることができる。また、区分Cでは、蓄電池4の充放電による電力損失をともなわない売電で得られる利益(EP1)が、当該電力損失をともなう水素製造で得られる利益(HP4)よりも高い。このため、蓄電池4への電力供給量α2よりも直送電量α1を多くすることで、収益性を高めることができる。蓄電池4に充電された電力は、水素製造装置6の水素製造に必要な電力が再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreでは足りないとき、水素製造装置6に供給される。
【0073】
理想的には、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreのうち電力供給量α3が占める割合が100%に近づくように制御される。そして、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが、水素製造装置6における上限量の水素製造に必要な最大電力供給量α3maxを超えて余剰電力が生じたとき、この余剰電力が蓄電池4よりも電力系統16に優先的に供給される。ただし、上述した変動安定化制御および保証制御が優先される点は、区分A,Bにおける制御と同様である。
【0074】
例えば制御部30は、発電量Pvre(t)が時間t-1における水素製造装置6への電力供給量α3よりも大きいとき、時間tの電力供給量α3を増加させる。発電量Pvre(t)が時間t-1の電力供給量α3よりも小さいとき、時間tの電力供給量α3を減少させる。また、発電量Pvre(t)が最大電力供給量α3maxを超えて余剰電力が生じた場合、制御部30は、蓄電池4への電力供給量α2を減少させることで直送電量α1を増加させる。余剰電力が減った場合は、それに応じて直送電量α1が自ずと減少する。一例として蓄電池4への電力供給量α2は、変動安定化制御および保証制御で許容される限りにおいてゼロとする。SoCを維持する制御は、区分A,Bの場合と同様であるが、一例としては直送電量α1の増加が電力供給量α3の増加よりも先に実施される。
【0075】
第3利益額HP3および第4利益額HP4が第1利益額EP1よりも高い区分Dの場合、制御部30は、第4目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。第4目標状態は、水素製造装置6への電力供給量α3が直送電量α1および蓄電池4への電力供給量α2よりも多く、且つ蓄電池4への電力供給量α2が直送電量α1よりも多い状態である。
【0076】
つまり、区分Dでは、再生可能エネルギー発電装置2から水素製造装置6へ直に給電して水素製造することが最も収益性が高い。このため、水素製造装置6への電力供給量α3を直送電量α1および蓄電池4への電力供給量α2よりも多くすることで、収益性を高めることができる。また、区分Dでは、蓄電池4の充放電による電力損失をともなう水素製造で得られる利益(HP4)が、当該電力損失をともなわない売電で得られる利益(EP1)よりも高い。このため、直送電量α1よりも蓄電池4への電力供給量α2を多くすることで、収益性の向上につなげることができる。蓄電池4に充電された電力は、水素製造装置6の水素製造に必要な電力が再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreでは足りないとき、水素製造装置6に供給される。
【0077】
理想的には、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreのうち電力供給量α3が占める割合が100%に近づくように制御される。そして、再生可能エネルギー発電装置2の発電量Pvreが電力供給量α3maxを超えて余剰電力が生じたとき、この余剰電力が電力系統16よりも蓄電池4に優先的に供給される。ただし、上述した変動安定化制御および保証制御が優先される点は、区分A~Cにおける制御と同様である。
【0078】
例えば制御部30は、発電量Pvre(t)が時間t-1の電力供給量α3よりも大きいとき、時間tの電力供給量α3を増加させる。発電量Pvre(t)が時間t-1の電力供給量α3よりも小さいとき、時間tの電力供給量α3を減少させる。また、発電量Pvre(t)が最大電力供給量α3maxを超えて余剰電力が生じた場合、制御部30は、蓄電池4への電力供給量α2を増加させる。これにより直送電量α1は減少する。余剰電力が減った場合は、それに応じて電力供給量α2を減少させる。一例として直送電量α1はゼロとする。SoCを維持する制御は、区分A~Cの場合と同様であるが、一例としては電力供給量α3の増加が直送電量α1の増加よりも先に実施される。
【0079】
なお、第2利益額EP2と第3利益額HP3とが同額の場合(EP2=HP3)、制御部30は、区分Aの制御および区分Bの制御のいずれか一方を実行する。同様に、第1利益額EP1と第3利益額HP3とが同額の場合(EP1=HP3)、制御部30は、区分Bの制御および区分Cの制御のいずれか一方を実行する。なお、第1利益額EP1と第3利益額HP3とが同額の場合は、第2利益額EP2と第4利益額HP4も同額になる(EP2=HP4)。また、第1利益額EP1と第4利益額HP4とが同額の場合(EP1=HP4)、制御部30は、区分Cの制御および区分Dの制御のいずれか一方を実行する。
【0080】
図6は、利益比較制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、制御部30によって所定のタイミングで繰り返し実行される。また、以下に説明する例では、第2利益額EP2と第3利益額HP3とが同額の場合、制御部30は区分Aの制御を実行する。また、第1利益額EP1と第3利益額HP3とが同額の場合、制御部30は区分Bの制御を実行する。また、第1利益額EP1と第4利益額HP4とが同額の場合、制御部30は区分Cの制御を実行する。
【0081】
利益比較制御の一例において、まず制御部30は、第1利益額EP1~第4利益額HP4を記録部28から取得する(S301)。そして、制御部30は、第1利益額EP1が第3利益額HP3よりも高く、第2利益額EP2が第3利益額HP3以上であるか判断する(S302)。ステップS302の判断条件を満たす場合(S302のY)、制御部30は、第1目標状態に近づけるように蓄電池4および水素製造装置6を制御し(S303)、本ルーチンを終了する。
【0082】
ステップS302の判断条件を満たさない場合(S302のN)、制御部30は、第1利益額EP1が第3利益額HP3以上であり、第2利益額EP2が第3利益額HP3よりも低いか判断する(S304)。ステップS304の判断条件を満たす場合(S304のY)、制御部30は、第2目標状態に近づけるように蓄電池4および水素製造装置6を制御し(S305)、本ルーチンを終了する。
【0083】
ステップS304の判断条件を満たさない場合(S304のN)、制御部30は、第3利益額HP3が第1利益額EP1よりも高く、第4利益額HP4が第1利益額EP1以下であるか判断する(S306)。ステップS306の判断条件を満たす場合(S306のY)、制御部30は、第3目標状態に近づけるように蓄電池4および水素製造装置6を制御し(S307)、本ルーチンを終了する。
【0084】
ステップS306の判断条件を満たさない場合(S306のN)、この場合は第3利益額HP3および第4利益額HP4が第1利益額EP1よりも高いことを意味するため、制御部30は、第4目標状態に近づけるように蓄電池4および水素製造装置6を制御し(S308)、本ルーチンを終了する。
【0085】
図7は、蓄電池4の容量と、水素製造装置6の最大消費電力と、月間の利益額との関係を示す図である。図7において、蓄電池4の容量(蓄電池4のサイズともいう)と水素製造装置6の最大消費電力(水素製造装置6のサイズともいう)との各組み合わせのマスに表示される数字は、その組み合わせで得られる利益額である。水素製造装置6の最大消費電力は、水素製造装置6が単位時間当たりに消費する最大電力量を意味し、水素製造量の規模を表す。
【0086】
本発明者は、蓄電池4の容量と水素製造装置6の最大消費電力とを変数として、変動安定化制御、変動安定化の保証制御および利益比較制御を実行した際に得られる月間の利益額をシミュレーションにより算出した。その結果、図7に示すように、蓄電池4の容量と水素製造装置6の最大消費電力との組み合わせによって月間の利益額が変化することを突き止めた。また、所定の組み合わせ、具体的には蓄電池35kW×水素製造装置15kWにおいて、利益額が最大になることを突き止めた。また、図7において白抜きのマス(利益額のないマス)に対応する組み合わせでは、変動安定化制御の要件である許容変化率ΔPgridを満たすことができなかった。したがって、蓄電池4の容量および水素製造装置6の最大消費電力の組み合わせを少なくとも許容変化率ΔPgridに応じて定めることで、電力系統16への送電量Pgridの変動を許容変化率ΔPgrid以下に抑えながら、収益性の最大化を図ることが可能である。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態に係るエネルギー供給システム1は、再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統16に送電する再生可能エネルギー発電装置2と、再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統16に送電可能な蓄電池4と、蓄電池4の充放電を制御する制御部30とを備える。制御部30は、電力系統16への送電量Pgridの変化率が予め設定される許容変化率ΔPgridを超えないように蓄電池4を制御する。また、制御部30は、蓄電池4の必要SoC(State of Charge)を算出する。必要SoCは、再生可能エネルギー発電装置2の発電が停止して電力系統16への送電量Pgridが現状の量からゼロまで下がる際に、蓄電池4からの送電によって送電量Pgridの変化率を許容変化率ΔPgrid以下に維持するために必要なSoCである。そして、制御部30は、当該必要SoCが蓄電池4の現状のSoCを上回った場合に、送電量Pgridが減るように蓄電池4を制御する。
【0088】
このように、必要SoCが現状のSoCを超えないように送電量Pgridを調整することで、再生可能エネルギー発電装置2の発電が突然停止しても、蓄電池4からの放電のみによって送電量Pgridの変化率を許容変化率ΔPgrid以下に抑えることができる。よって、エネルギー供給システム1における送電量Pgridの変動をより確実に緩和することができる。また、送電量Pgridの変動安定化の保証は、送電量Pgridを維持しつつ、つまり必要SoCを変化させずに、現状のSoCを必要SoC以上に増加させることによっても実現し得る。しかしながら、この場合は蓄電池4の大容量化が必要になってエネルギー供給システム1のコスト増につながり得る。これに対し、送電量Pgridを減らして必要SoCを小さくすることで、蓄電池4の大容量化を避けながら、蓄電池4によって送電量Pgridの変動安定化を保証することができる。よって、本実施の形態によれば、エネルギー供給システム1の製造コストの増加を抑制することができる。
【0089】
また、本実施の形態のエネルギー供給システム1は、再生可能エネルギー発電装置2が発電した電力および蓄電池4から放電される電力の少なくとも一方を用いて水素を製造する水素製造装置6を備える。そして制御部30は、送電量Pgridの変化率が許容変化率ΔPgridを超えないように蓄電池4および水素製造装置6を制御するとともに、必要SoCが現状のSoCを上回った場合に、送電量Pgridが減るように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。
【0090】
このように、蓄電池4と水素製造装置6を組み合わせて送電量Pgridを調整することで、蓄電池4のみを用いる場合に比べて、より簡単に送電量Pgridの変動を緩和することができる。また、再生可能エネルギー発電装置2の規模に対して送電線14や地域間連系線の太さが不十分である場合等、再生可能エネルギー発電装置2の最大発電量と電力系統16へ送電可能な最大送電量Pgrid,maxとに大きな差があっても、それによって生じる余剰電力を水素製造装置6で消費することができる。このため、エネルギー供給システム1と電力系統16との組み合わせの自由度を高めることができる。また、エネルギー供給システム1からの送電量Pgridが最大送電量Pgrid,maxを超えないようにすることを、より確実あるいはより簡単に実現することができる。
【0091】
また、制御部30は、予め設定される電力価格および水素価格に基づいて、蓄電池4および水素製造装置6を制御する。このような制御により、電力系統16への送電と水素製造装置6における水素製造とでより高い利益が得られる方により多くの電力を供給することができ、エネルギー供給システム1の収益性を高めることができる。
【0092】
一例として、少なくとも電力価格に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4非経由で電力系統16に送電した場合の利益額を第1利益額EP1とする。また、少なくとも電力価格および蓄電池4の充放電にともなう電力損失に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4経由で電力系統16に送電した場合の利益額を第2利益額EP2とする。また、少なくとも水素価格および水素製造装置6の水素製造効率に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4非経由で水素製造装置6に供給して水素を製造した場合の利益額を第3利益額HP3とする。また、少なくとも水素価格、水素製造効率および電力損失に基づいて定まる、再生可能エネルギー発電装置2で発電した単位電力を蓄電池4経由で水素製造装置6に供給して水素を製造した場合の利益額を第4利益額HP4とする。第1利益額EP1は第2利益額EP2よりも高く、第3利益額HP3は第4利益額HP4よりも高い。
【0093】
この場合において、制御部30は、第1利益額EP1および第2利益額EP2が第3利益額HP3よりも高い場合、蓄電池4非経由での再生可能エネルギー発電装置2から電力系統16への送電量Pgridである直送電量α1が蓄電池4および水素製造装置6への電力供給量α2,α3よりも多く、且つ蓄電池4への電力供給量α2が水素製造装置6への電力供給量α3よりも多い第1目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。また、制御部30は、第1利益額EP1が第3利益額HP3よりも高く第2利益額EP2が第3利益額HP3よりも低い場合、直送電量α1が蓄電池4および水素製造装置6への電力供給量α2,α3よりも多く、且つ水素製造装置6への電力供給量α3が蓄電池4への電力供給量α2よりも多い第2目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。
【0094】
また、制御部30は、第3利益額HP3が第1利益額EP1よりも高く第4利益額HP4が第1利益額EP1よりも低い場合、水素製造装置6への電力供給量α3が直送電量α1および蓄電池4への電力供給量α2よりも多く、且つ直送電量α1が蓄電池4への電力供給量α2よりも多い第3目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。また、制御部30は、第3利益額HP3および第4利益額HP4が第1利益額EP1よりも高い場合、水素製造装置6への電力供給量α3が直送電量α1および蓄電池4への電力供給量α2よりも多く、且つ蓄電池4への電力供給量α2が直送電量α1よりも多い第4目標状態に近づくように蓄電池4および水素製造装置6を制御する。
【0095】
また、本実施の形態では、蓄電池4の容量および水素製造装置6の最大消費電力の組み合わせが許容変化率ΔPgridに応じて定められる。これにより、送電量Pgridの変動を抑制しながら、エネルギー供給システム1の収益性をより高めることができる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。
【0097】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統(16)に送電する再生可能エネルギー発電装置(2)、および再生可能エネルギー発電装置(2)が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統(16)に送電可能な蓄電池(4)を備えるエネルギー供給システム(1)の制御装置(8)であって、
電力系統(16)への送電量(Pgrid)の変化率が予め設定される許容変化率(ΔPgrid)を超えないように蓄電池(4)を制御するとともに、再生可能エネルギー発電装置(2)の発電が停止して電力系統(16)への送電量(Pgrid)がゼロまで下がる際に蓄電池(4)からの送電によって変化率を許容変化率(ΔPgrid)以下に維持するために必要な蓄電池(4)のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが蓄電池(4)の現状のSoCを上回った場合に送電量(Pgrid)が減るように蓄電池(4)を制御する制御部(30)を備える、
エネルギー供給システム(1)の制御装置(8)。
[項目2]
再生可能エネルギーを利用して発電した電力の少なくとも一部を電力系統(16)に送電する再生可能エネルギー発電装置(2)、および再生可能エネルギー発電装置(2)が発電した電力を充電可能であるとともに、充電した電力の少なくとも一部を電力系統(16)に送電可能な蓄電池(4)を備えるエネルギー供給システム(1)の制御方法であって、
電力系統(16)への送電量(Pgrid)の変化率が予め設定される許容変化率(ΔPgrid)を超えないように蓄電池(4)を制御するとともに、再生可能エネルギー発電装置(2)の発電が停止して電力系統(16)への送電量(Pgrid)がゼロまで下がる際に蓄電池(4)からの送電によって変化率を許容変化率(ΔPgrid)以下に維持するために必要な蓄電池(4)のSoC(State of Charge)である必要SoCを算出し、当該必要SoCが蓄電池(4)の現状のSoCを上回った場合に送電量(Pgrid)が減るように蓄電池(4)を制御することを含む、
エネルギー供給システム(1)の制御方法。
【符号の説明】
【0098】
1 エネルギー供給システム、 2 再生可能エネルギー発電装置、 4 蓄電池、 6 水素製造装置、 8 制御装置、 16 電力系統、 28 記録部、 30 制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7