(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037689
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 105/18 20060101AFI20220302BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20220302BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220302BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220302BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20220302BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20220302BHJP
【FI】
C10M105/18
C10N20:00 A
C10N20:00 Z
C10N40:00 D
C10N30:00 Z
C10N30:08
C10N30:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020141945
(22)【出願日】2020-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 明雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】緒方 賢一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太
(72)【発明者】
【氏名】成田 恵一
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB41A
4H104CB02A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104EA04A
4H104EA30A
4H104LA01
4H104LA04
4H104LA20
4H104PA39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた冷却性能、電気絶縁性を有し、高引火点、低流動点である潤滑油組成物。
【解決手段】下記一般式(1)のポリアルキレングリコール及び下記一般式(2)のポリビニルエーテルから選ばれる1種以上の合成油を含む潤滑油組成物。
[一般式(1)中、R
1及びR
2は各々独立に水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基。R
3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基。nは3~5の整数。]
[一般式(2)中、R
5、R
6、及びR
7は各々独立に水素原子又は炭素数1~8の1価の炭化水素基。R
8は炭素数2~10の2価の炭化水素基。R
9は炭素数1~10の1価の炭化水素基。mは3又は4。qは0~10の整数。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)を含有する潤滑油組成物であって、
前記基油(A)は、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコール及び下記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の合成油(A1)を含む、潤滑油組成物。
【化1】
[前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を表す。R
3は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、3~5の整数である。]
【化2】
[前記一般式(2)中、R
5、R
6、及びR
7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の1価の炭化水素基を表す。R
8は、炭素数2~10の2価の炭化水素基を表す。R
9は、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。mは、3又は4である。qは、0~10の整数である。]
【請求項2】
前記一般式(1)中、R3が、メチル基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記一般式(2)中、R5、R6、及びR7が、水素原子であり、
R9がメチル基であり、
q=0である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記合成油(A1)の含有量が、前記基油(A)の全量基準で、30質量%~100質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
相対熱伝達率が1.01以上であり、
前記相対熱伝達率は、下記要件(α1)~(α4)を満たす鉱油(α)の20℃における熱伝達率を1.00とした場合の熱伝達率である、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
・要件(α1):20℃における動粘度が、7.06mm2/sである。
・要件(α2):20℃における比熱が、1.67kJ/(kg・K)である。
・要件(α3):20℃における密度が、0.857g/cm3である。
・要件(α4):20℃における熱伝導率が、0.141W/(m・K)である。
【請求項6】
25℃における体積抵抗率が、1.00×108Ω・m以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
引火点が、100℃以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
流動点が、-40℃以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
電動車両用機器の冷却に用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記電動車両用機器は、モーター、発電機、蓄電器、コンバーター、インバーター、エンジン、及びトランスミッションからなる群から選択される1種以上である、請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
電動車両用機器を冷却するための冷却システムであって、請求項1~10のいずれか1項に記載の潤滑油組成物を備える、冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、例えば、電動車両用機器の冷却に用いられる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から二酸化炭素削減が強く求められている。自動車の分野でも省燃費技術の開発に力が注がれており、燃費および環境性能に優れた自動車であるハイブリッド車及び電気自動車(以下、これらを「電動車両」ともいう)の普及が進められている。電動車両が有する電動車両用機器には、冷却性能及び電気絶縁性に優れる冷却油が必要とされる。また、電動車両においては、歯車減速機を有する形式のものもあることから、これらの冷却油は、上記性能に加えて潤滑性を備えることも必要とされる。
【0003】
電動車両用機器の冷却油としては、主に既存のオートマチックトランスミッションフルード(以下、「ATF」ともいう)や連続可変トランスミッションフルード(以下、「CVTF」ともいう)等の潤滑油組成物が使用されているが、これらに替わる種々の冷却油の開発も進められつつある。
【0004】
例えば、特許文献1では、電気自動車エンジン及びその種々の部分を冷却及び/又は潤滑する潤滑油組成物として、2~8個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子を含むアルキレンオキシドの重合又は共重合によって得られる少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含む潤滑油組成物を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の潤滑油組成物は、冷却性能が十分なものとはいえなかった。
また、電動車両用機器の冷却に用いられる潤滑油組成物には、安全性の確保の観点から高引火点であることが要求され、寒冷地での使用の観点から低流動点であることも要求される。また、上記のように、電気絶縁性に優れることも要求される。
【0007】
本発明は、上記問題点及び上記要求に鑑みてなされたものであって、優れた冷却性能を有しながらも、引火点が高く、流動点が低く、しかも電気絶縁性にも優れる潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の量体数を有するポリアルキレングリコール及び特定の量体数を有するポリビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の合成油を含有する潤滑油組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記[1]~[3]に関する。
[1] 基油(A)を含有する潤滑油組成物であって、
前記基油(A)は、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコール及び下記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の合成油(A1)を含む、潤滑油組成物。
【化1】
[前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を表す。R
3は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、3~5の整数である。]
【化2】
[前記一般式(2)中、R
5、R
6、及びR
7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の1価の炭化水素基を表す。R
8は、炭素数2~10の2価の炭化水素基を表す。R
9は、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。mは、3又は4である。qは、0~10の整数である。]
[2] 前記電動車両用機器は、モーター、発電機、蓄電器、コンバーター、インバーター、エンジン、及びトランスミッションからなる群から選択される1種以上である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3] 電動車両用機器を冷却するための冷却システムであって、[1]又は[2]記載の潤滑油組成物を備える、冷却システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば優れた冷却性能を有しながらも、引火点が高く、流動点が低く、しかも電気絶縁性にも優れる潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、「A~B」および「C~D」が記載されている場合、「A~D」および「C~B」の範囲も数値範囲として、本発明に範囲に含まれる。また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は特記されない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
【0012】
[潤滑油組成物の態様]
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)を含有する潤滑油組成物であって、前記基油(A)は、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコール及び下記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の合成油(A1)を含む。
【化3】
[前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を表す。R
3は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、3~5の整数である。]
【化4】
[前記一般式(2)中、R
5、R
6、及びR
7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の1価の炭化水素基を表す。R
8は、炭素数2~10の2価の炭化水素基を表す。R
9は、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。mは、3又は4である。qは、0~10の整数である。]
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、3量体~5量体のポリアルキレングリコール、更には3量体又は4量体のポリビニルエーテルが、優れた冷却性能を有しながらも、引火点が高く、流動点が低く、しかも電気絶縁性にも優れることを見出した。
【0014】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油(A)のみから構成されていることが好ましいが、本発明の効果を損なうことのない範囲で、基油(A)以外の他の成分を含有していてもよい。
具体的には、本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油(A)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、更になお好ましくは80質量%以上、一層好ましくは90質量%以上、より一層好ましくは95質量%以上、更に一層好ましくは99質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは50質量%~100質量%、更に好ましくは60質量%~100質量%、より更に好ましくは70質量%~100質量%、更になお好ましくは80質量%~100質量%、一層好ましくは90質量%~100質量%、より一層好ましくは95質量%~100質量%、更に一層好ましくは99質量%~100質量%である。
以下、基油(A)について、詳細に説明する。
【0015】
[基油(A)]
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)を含有する。
基油(A)は、上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコール及び上記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の合成油(A1)を含む。
つまり、基油(A)は、上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコールから選択される1種以上を単独で用いてもよく、上記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルから選択される1種以上を単独で用いてもよい。また、上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコールから選択される1種以上と、上記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルから選択される1種以上とを、組み合わせて用いてもよい。
ここで、合成油(A1)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、基油(A)の全量基準で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは40質量%~100質量%、更に好ましくは45質量%~100質量%、より更に好ましくは50質量%~100質量%である。
以下、本発明の潤滑油組成物が含有するポリアルキレングリコール(PAG)及びポリビニルエーテル(PVE)について、詳細に説明する。
【0016】
<ポリアルキレングリコール(PAG)>
ポリアルキレングリコール(以下、「PAG」と略記することもある)としては、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコールが用いられる。当該PAGは、当該構成単位を1種単独で有する単独重合体であってもよく、2種以上組み合わせた共重合体であってもよい。当該共重合体の共重合の態様としては、特に制限はなく、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又はグラフト共重合体であってもよい。
下記一般式(1)で表される構成単位の含有量は、本発明の効果を発揮させやすくする観点から、PAGの全構成単位基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%、一層好ましくは95質量%~100質量%である。
また、当該PAGは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化5】
【0017】
前記一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を表す。R3は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、3~5の整数である。
複数存在するR3は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
また、R1及びR2は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0018】
(R1及びR2)
R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を表す。
当該炭化水素基の炭素数が18を超える場合、冷却性能に優れるPAGとし難い。
【0019】
R1及びR2として選択し得る炭素数1~18の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基等の炭素数1~18のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基、各種トリメチルシクロヘキシル基等の炭素数3~18のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種トリメチルフェニル基等の炭素数6~18のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等の炭素数6~18のアリールアルキル基;等が挙げられる。
なお、本明細書においては、「各種X基」との表現により、X基として考えられるすべての異性体を包含している。例えば、「各種アルキル基」とは、「直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基」を表す。例えば、「各種プロピル基」は、「n-プロピル基、イソプロピル基」を表す。また、「各種ブチル基」は、「n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基」を表す。
【0020】
R1及びR2として選択し得る1価の炭化水素基の炭素数は、PAGの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~3、更になお好ましくは1~2、一層好ましくは1である。
【0021】
また、R1及びR2として選択し得る炭素数1~18の1価の炭化水素基は、PAGの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくはアルキル基である。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~3、更になお好ましくは1~2、一層好ましくは1である。
【0022】
ここで、体積抵抗率をより向上させやすくする観点から、R1及びR2の少なくとも一方が炭素数1~18の1価の炭化水素基であることが好ましく、R1及びR2の双方が炭素数1~18の1価の炭化水素基であることが好ましい。この場合の好ましい炭化水素基及び炭素数は、上記のとおりである。
【0023】
(R3)
R3は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
当該アルキル基の炭素数が4を超える場合、冷却性能に優れるPAGとし難い。
【0024】
R3として選択し得る炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0025】
R3として選択し得るアルキル基の炭素数は、PAGの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、更に好ましくは1である。
【0026】
なお、R3は、PAGの冷却性能、体積抵抗率、及び低温流動性のバランスの観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。また、R3は、冷却性能の向上の観点からは水素原子であることが好ましく、体積抵抗率及び低温流動性の向上の観点からはメチル基であることが好ましい。
【0027】
(n)
nは、3~5の整数である。
上記一般式(1)において、nの値は、PAGの量体数を表しており、本発明においては、3量体~5量体のPAGを用いる点に特徴がある。
nが2以下であると、PAGの引火点が低下し、電気絶縁性も低下する。また、nが6以上であると、PAGの冷却性能が低下する。
ここで、PAGの冷却性能を向上させる観点から、nの値は、好ましくは3~4、より好ましくは3である。一方、PAGの引火点及び電気絶縁性を向上させる観点から、nの値は、好ましくは4~5、より好ましくは5である。
また、冷却性能、引火点、及び電気絶縁性のバランスに優れるPAGとする観点から、nの値は、好ましくは4である。
【0028】
(分子量)
PAGの分子量は、冷却性能により優れるPAGとする観点から、好ましくは150以上、より好ましくは160以上、更に好ましくは180以上、より更に好ましくは200以上、更になお好ましくは220以上である。また、好ましくは1100以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは500以下、より更に好ましくは400以下、更になお好ましくは336以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは150~1100、より好ましくは160~800、更に好ましくは180~500、より更に好ましくは200~400、更になお好ましくは220~336である。
【0029】
<ポリビニルエーテル(PVE)>
ポリビニルエーテル(以下、「PVE」と略記することもある)としては、下記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルが用いられる。当該PVEは、当該構成単位を1種単独で有する単独重合体であってもよく、2種以上組み合わせた共重合体であってもよい。当該共重合体の共重合の態様としては、特に制限はなく、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又はグラフト共重合体であってもよい。
下記一般式(2)構成単位基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%、一層好ましくは95質量%~100質量%である。
また、当該PVEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化6】
【0030】
前記一般式(2)中、R5、R6、及びR7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の1価の炭化水素基を表す。R8は、炭素数2~10の2価の炭化水素基を表す。R9は、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。mは、3又は4である。qは、0~10の整数である。
複数存在するR5は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。複数存在するR6、R7、R8、及びR9についても同様である。
また、R5、R6、及びR7は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
また、qが0である場合、前記一般式(2)中の炭素原子(C)と-OR9との結合は単結合であり、当該炭素原子(C)と-OR9とは直接結合する。
【0031】
(R5、R6、及びR7)
R5、R6、及びR7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の1価の炭化水素基を表す。
当該炭化水素基の炭素数が8を超える場合、冷却性能に優れるPVEとし難い。
【0032】
R5、R6、及びR7として選択し得る、炭素数1~8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等の炭素数1~8のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等の炭素数6~8のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等の炭素数6~8のアリールアルキル基;等が挙げられる。
【0033】
R5、R6、及びR7として選択し得る1価の炭化水素基の炭素数は、PVEの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは1~3、より更に好ましくは1~2、更になお好ましくは1である。
【0034】
また、R5、R6、及びR7として選択し得る炭素数1~8の1価の炭化水素基は、PVEの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくはアルキル基である。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは1~3、より更に好ましくは1~2、更になお好ましくは1である。
【0035】
ここで、PVEの冷却性能をより向上させやすくする観点から、R5、R6、及びR7の少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、2つ以上が水素原子であることがより好ましく、3つとも水素原子であることが更に好ましい。
【0036】
(R8)
R8は、各々独立に、炭素数2~10の2価の炭化水素基を表す。
当該炭化水素基の炭素数が10を超える場合、冷却性能に優れるPVEとし難い。
また、当該炭化水素基の炭素数が1であるPVEは製造することが困難である。
【0037】
R8として選択し得る、炭素数2~10の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基等の炭素数2~10のアルキレン基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、エチルシクロへキシレン基、ジメチルシクロへキシレン基等の炭素数3~10のシクロアルキレン基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン基等の炭素数6~10の2価の芳香族基;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分とにそれぞれ1価の結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;キシレン、ジエチルベンゼン等のアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;等が挙げられる。
【0038】
R8として選択し得る2価の炭化水素基の炭素数は、PVEの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、更に好ましくは2~4である。
【0039】
また、R8として選択し得る炭素数2~10の2価の炭化水素基は、PVEの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくはアルキレン基である。当該アルキレン基の炭素数は、PVEの冷却性能の向上及び体積抵抗率の向上のバランスの観点から、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、更に好ましくは2~4である。
【0040】
(R9)
R9は、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。
当該炭化水素基の炭素数が10を超える場合、冷却性能に優れるPVEとし難い。
【0041】
R9として選択し得る、炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等の炭素数6~10のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等の炭素数6~10のアリールアルキル基;等が挙げられる。
【0042】
R9として選択し得る1価の炭化水素基の炭素数は、PVEの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~3、更になお好ましくは1~2、一層好ましくは1である。
【0043】
また、R9として選択し得る炭素数1~10の1価の炭化水素基は、PVEの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくはアルキル基である。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~4である、より更に好ましくは1~3以下、更になお好ましくは1~2、一層好ましくは1である。
【0044】
(q)
qは、0~10の整数である。
qが10を超える整数である場合、冷却性能に優れるPVEとし難い。
なお、qの値は、PVEの冷却性能を向上させやすくする観点から、好ましくは0~5、より好ましくは0~3、更に好ましくは0~2、より更に好ましくは0~1、更になお好ましくは0である。
【0045】
(m)
mは、3又は4である。
上記一般式(2)において、mの値は、PVEの量体数を表しており、本発明においては、3量体又は4量体のPVEを用いる点に特徴がある。
mが2以下であると、PVEの引火点が低下する。また、mが5以上であると、PVEの冷却性能が低下する。
ここで、PVEの冷却性能を向上させる観点から、mの値は、好ましくは3である。一方、PVEの引火点を向上させる観点から、mの値は、好ましくは4である。
【0046】
(PVEの末端構造)
PVEの末端構造は、特に制限されず、例えば、水素原子、又は飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、アミド、もしくはニトリル等に由来の1価の基が挙げられる。
なお、PVEの末端とは、下記一般式(2)中の*部分を意味する
【化7】
【0047】
(分子量)
PVEの分子量は、冷却性能により優れるPVEとする観点から、好ましくは176以上である。また、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下、更に好ましくは1,000以下、より更に好ましくは500以下、更になお好ましくは234以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは176~5,000、より好ましくは176~3,000、更に好ましくは176~1,000、より更に好ましくは176~500、更になお好ましくは176~234である。
【0048】
<合成油(A1)以外の他の基油(A2)>
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油(A)は、合成油(A1)以外の他の基油(A2)(以下、単に「他の基油(A2)」ともいう)を含んでいてもよい。
当該他の基油(A2)の含有量は、合成油(A1)の性能を発揮させて、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、基油(A)の全量基準で、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
【0049】
他の基油(A2)としては、合成油(A1)以外の合成油及び鉱油からなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0050】
合成油(A1)以外の合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体及びα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル及び二塩基酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル(但し、PVEを除く);アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(ガストゥリキッド(GTL)ワックス)を異性化することで得られるGTL基油等が挙げられる。
【0051】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油;等が挙げられる。
【0052】
他の基油(A2)は、鉱油を単独で又は複数種組み合わせて用いてもよいし、合成油(A1)以外の合成油を単独で又は複数種組み合わせて用いてもよい。また、1種以上の鉱油と1種以上の合成油(A1)以外の合成油とを組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ここで、他の基油(A2)としては、鉱油が好ましい。合成油(A1)と鉱油とを組み合わせて用いることで、冷却性能を大きく低下させることなく冷却性能を十分に確保しながらも、電気絶縁性をより向上させることができ、冷却性能と電気絶縁性とのバランスに極めて優れる潤滑油組成物を調製することができる。
かかる観点から、鉱油の含有量としては、基油(A)の全量基準で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは10質量%~70質量%、より好ましくは30質量%~60質量%、更に好ましくは40質量%~60質量%である。
また、合成油(A1)と鉱油との含有比率[(合成油(A1))/(鉱油)]は、質量比で、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上である。また、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは30/70~90/10、より好ましくは40/60~70/30、更に好ましくは40/60~60/40である。
【0054】
また、上記一般式(1)中、nが2以下の整数であるPAG及びnが6以上の整数であるPAG(但し、R1、R2、及びR3は、上記のとおりである。)、並びに、上記一般式(2)中、mが2以下の整数であるPVE及びmが5以上の整数であるPVE(但し、R5、R6、R7、R8、及びR9は、上記のとおりである。)からなる群から選択される1種以上の合成油(A1’)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、少ないことが好ましい。
具体的には、合成油(A1’)の含有量は、合成油(A1)100質量部に対し、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0質量部である。
【0055】
[基油(A)の性状]
本発明の一態様において、基油(A)は、以下の要件(1)~(8)に規定する性状を満たすことが好ましい。
【0056】
<要件(1):相対熱伝達率>
本発明の一態様において、基油(A)は、相対熱伝達率が1.01以上であることが好ましい(要件(1))。
前記相対熱伝達率は、下記要件(α1)~(α4)を満たす鉱油(α)の20℃における熱伝達率を1.00とした場合の熱伝達率である。
・要件(α1):20℃における動粘度が、7.06mm2/sである。
・要件(α2):20℃における比熱が、1.67kJ/(kg・K)である。
・要件(α3):20℃における密度が、0.857g/cm3である。
・要件(α4):20℃における熱伝導率が、0.141W/(m・K)である。
【0057】
熱伝達率は、2つの物質間(すなわち、基油(A)と被冷却物)での熱の伝わりやすさの指標である。要件(1)では、基油(A)の熱伝達率を、鉱油(α)の熱伝達率を基準とする相対熱伝達率として規定している。要件(1)で規定する相対熱伝達率が大きいほど、冷却性能に優れるといえる。
【0058】
流体の20℃における熱伝達率(A
α、単位:W/(m
2・K))は、以下の式(I)から計算することができる。
【数1】
上記式(I)中、A
D20は、流体の20℃における密度(単位:g/cm
3)である。A
C20は、流体の20℃における比熱(単位:kJ/(kg・K))である。A
HC20は、流体の20℃における熱伝導率(単位:W/(m・K))である。A
KV20は、流体の20℃における動粘度(単位:mm
2/s)である。
【0059】
ここで、要件(1)に規定する相対熱伝達率は、より好ましくは1.03以上、更に好ましくは1.06以上、より更に好ましくは1.10以上である。また、通常1.50以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは1.01~1.50、より好ましくは1.03~1.50、更に好ましくは1.06~1.50、より更に好ましくは1.10~1.50である。
【0060】
<要件(2):動粘度>
本発明の一態様において、基油(A)は、40℃における動粘度(以下、「40℃動粘度」ともいう)が、6.00mm2/s以下であることが好ましい(要件(2))。基油(A)を低粘度化する程、冷却性能は向上する反面、基油(A)の引火点は低下しやすい。しかし、本発明では、合成油(A1)を含むことによって、基油(A)が低粘度でありながらも、高い引火点が確保されている。
ここで、要件(2)で規定する基油(A)の40℃動粘度は、より好ましくは5.80mm2/s以下、更に好ましくは5.60mm2/s以下、より更に好ましくは5.40mm2/s以下である。また、通常1.20mm2/s以上である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは1.20mm2/s~6.00mm2/s、より好ましくは1.20mm2/s~5.80mm2/s、更に好ましくは1.20mm2/s~5.60mm2/s、より更に好ましくは1.20mm2/s~5.40mm2/sである。
【0061】
また、要件(2)では、基油(A)の40℃動粘度に加えて、さらに基油(A)の20℃における動粘度(以下、「20℃動粘度」ともいう)が、所定値以下であることが好ましい。具体的には、好ましくは11.0mm2/s以下、より好ましくは10.5mm2/s以下、更に好ましくは10.0mm2/s以下である。また、通常1.50mm2/s以上である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは1.50mm2/s~11.0mm2/s、より好ましくは1.50mm2/s~10.5mm2/s、更に好ましくは1.50mm2/s~10.0mm2/sである。
【0062】
なお、本明細書において、基油(A)の40℃動粘度及び20℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出される値である。
【0063】
<要件(3):比熱>
本発明の一態様において、基油(A)は、20℃における比熱が、1.60kJ/(kg・K)以上であることが好ましい(要件(3))。20℃における比熱が大きいほど、基油(A)の冷却性能が向上しやすい。
かかる観点から、要件(3)で規定する基油(A)の20℃における比熱は、より好ましくは1.62kJ/(kg・K)以上、更に好ましくは1.64kJ/(kg・K)以上である。また、通常1.75kJ/(kg・K)以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは1.60kJ/(kg・K)~1.75kJ/(kg・K)、より好ましくは1.62kJ/(kg・K)~1.75kJ/(kg・K)、更に好ましくは1.64kJ/(kg・K)~1.75kJ/(kg・K)である。
【0064】
なお、本明細書において、基油(A)の20℃における比熱は、熱伝導率測定装置により測定される熱伝導率測定値及び熱浸透率測定値並びに後述する方法により測定される20℃における密度を利用し、以下の式(f1)により算出される値を意味する。
(20℃における比熱)=(20℃における熱浸透率)2/{(20℃における熱伝導率)×(20℃における密度)}・・・・(f1)
【0065】
<要件(4):密度>
本発明の一態様において、基油(A)は、20℃における密度が、0.840g/cm3以上であることが好ましい(要件(4))。20℃における密度が大きいほど、基油(A)の冷却性能が向上しやすい。
かかる観点から、要件(4)で規定する基油(A)の20℃における密度は、より好ましくは0.850g/cm3以上、更に好ましくは0.880g/cm3以上、より更に好ましくは0.900g/cm3以上である。また、通常0.980g/cm3以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.840g/cm3~0.980g/cm3、より好ましくは0.850g/cm3~0.980g/cm3、更に好ましくは0.880g/cm3~0.980g/cm3、より更に好ましくは0.900g/cm3~0.980g/cm3である。
【0066】
なお、本明細書において、基油(A)の20℃における密度は、JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準拠して測定される値を意味する。
【0067】
<要件(5):熱伝導率>
本発明の一態様において、基油(A)は、20℃における熱伝導率は、0.135W/(m・K)以上であることが好ましい(要件(5))。20℃における熱伝導率が大きいほど、基油(A)の冷却性能が向上しやすい。
かかる観点から、要件(5)に規定する基油(A)の20℃における熱伝導率は、より好ましくは0.140W/(m・K)以上、更に好ましくは0.143W/(m・K)以上、より更に好ましくは0.145W/(m・K)以上、更になお好ましくは0.147W/(m・K)以上である。また、通常0.165W/(m・K)以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.135W/(m・K)~0.165W/(m・K)、より好ましくは0.140W/(m・K)~0.165W/(m・K)、更に好ましくは0.143W/(m・K)~0.165W/(m・K)、より更に好ましくは0.145W/(m・K)~0.165W/(m・K)、更になお好ましくは0.147W/(m・K)~0.165W/(m・K)である。
【0068】
なお、本明細書において、基油(A)の20℃における熱伝導率は、熱伝導率測定装置により測定される熱伝導率を意味する。
【0069】
<要件(6):体積抵抗率>
本発明の一態様において、基油(A)は、25℃における体積抵抗率が、1.00×108Ω・m以上であることが好ましい(要件(6))。体積抵抗率が高い程、基油(A)が電気絶縁性に優れることを意味する。
ここで、基油(A)の電気絶縁性をより良好なものとする観点から、要件(6)に規定する25℃における体積抵抗率は、好ましくは1.00×109Ω・m以上、より好ましくは5.00×109Ω・m以上、更に好ましくは8.00×109Ω・m以上である。また、通常1.00×1013Ω・m以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは1.00×108Ω・m~1.00×1013Ω・m、より好ましくは1.00×109Ω・m~1.00×1013Ω・m、更に好ましくは5.00×109Ω・m~1.00×1013Ω・m、より更に好ましくは8.00×109Ω・m~1.00×1013Ω・mである。
なお、基油(A)の体積抵抗率をより向上させる観点から、合成油(A1)は、上記一般式(2)で表されるポリビニルエーテルを含むことが好ましい。
【0070】
なお、本明細書において、基油(A)の25℃における体積抵抗率は、JIS C2101:1999に準拠し、測定温度25℃、印加電圧250Vの条件下で測定される値を意味する。
【0071】
<要件(7):引火点>
本発明の一態様において、基油(A)は、引火点が、100℃以上であることが好ましい(要件(7))。基油(A)の引火点が100℃以上であることによって、基油(A)を引火し難いものとして、安全性を向上させやすい。
ここで、要件(7)に規定する引火点は、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上、より更に好ましくは140℃以上、更になお好ましくは150℃以上である。また、通常200℃以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは110℃~200℃、更に好ましくは120℃~200℃、より更に好ましくは130℃~200℃、更になお好ましくは140℃~200℃、一層好ましくは150℃~200℃である。
【0072】
なお、本明細書において、基油(A)の引火点は、JIS K 2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放法(COC法)により測定される値を意味する。
【0073】
<要件(8):流動点>
本発明の一態様において、基油(A)は、流動点が、-40℃以下であることが好ましい(要件(8))。基油(A)の流動点が-40℃以下であることによって、寒冷地での使用にも耐え得るものとできる。
ここで、要件(8)に規定する流動点は、より好ましくは-45℃以下、更に好ましくは-50℃以下、より更に好ましくは-55℃以下、更になお好ましくは-60℃以下である。
【0074】
なお、本明細書において、基油(A)の流動点は、JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準拠して測定される値を意味する。
【0075】
[添加剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、摩耗防止剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、消泡剤、清浄分散剤などの添加剤を配合することができる。
これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの添加剤の含有量の合計は、特に制限されないが、組成物全量基準で、例えば、0~20重量%程度である。
【0076】
<摩耗防止剤>
摩耗防止剤としては、特に制限されず、従来、潤滑油に使用される摩耗防止剤の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車において電動モーターと歯車減速機を組み合わせて使用される場合には、極力電気絶縁性を損なわないように、中性リン系化合物、酸性亜リン酸エステルまたはそのアミン塩、および硫黄系化合物等から選択される1種以上を用いることが好ましい。
摩耗防止剤の含有量は、特に制限されないが、組成物全量基準で、例えば0.01~5重量%程度である。
【0077】
中性リン系化合物としては、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルチオスフェート、トリフェニルチオホスフェートなどの芳香族中性リン酸エステル;トリブチルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシホスフェート、トリブチルチオホスフェートなどの脂肪族中性リン酸エステル;トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルモノ-2-エチルヘキシルホスファイト、ジフェニルモノトリデシルホスファイト、トルクレジルチオホスファイト、トリフェニルチオホスファイトなどの芳香族中性亜リン酸エステル;トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリスデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トルブチルチオホスファイト、トリオクチルチオホスファイトなどの脂肪族中性亜リン酸エステルを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
酸性亜リン酸エステルとしては、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェートアミン塩、ジラウリルアシッドホスフェートアミン塩、ジオレイルアシッドホスフェートアミン塩などの脂肪族酸性リン酸エステルアミン塩;ジ-2-エチルヘキシルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイトなどの脂肪族酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩;ジフェニルアシッドホスフェートアミン塩、ジクレジルアシッドホスフェートアミン塩などの芳香族酸性リン酸エステルアミン塩;ジフェニルハイドロゲンホスファイト、ジクレジルハイドロゲンホスファイトなどの芳香族酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩;S-オクチルチオエチルアシッドホスフェートアミン塩、S-ドデシルチオエチルアシッドホスフェートアミン塩などの硫黄含有酸性リン酸エステルアミン塩;S-オクチルチオエチルハイドロゲンホスファイト、S-ドデシルチオエチルハイドロゲンホスファイトなどの硫黄含有酸性亜リン酸エステルおよびこれらのアミン塩などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
硫黄系化合物としては、各種のものが使用可能であるが、具体的には、チアジアゾール系化合物、ポリサルファイド系化合物、ジチオカーバメイト系化合物、硫化油脂系化合物、および硫化オレフィン系化合物などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、従来潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知の酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、アミン系酸化防止剤(ジフェニルアミン類、ナフチルアミン類)、フェノール系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。酸化防止剤の含有量は、特に制限されないが、組成物全量基準で、例えば0.05~7重量%程度である。
【0081】
<粘度指数向上剤>
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体など)などが挙げられる。粘度指数向上剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。粘度指数向上剤の配合量(樹脂分換算)は、特に制限されないが、例えば、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.1重量%以上、10重量%以下程度である。
【0082】
<防錆剤>
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテルなどが挙げられる。防錆剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。防錆剤の好ましい配合量は、特に制限されないが、組成物全量基準で0.01重量%以上、3重量%以下程度である。
【0083】
<金属不活性化剤>
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体が挙げられる。金属不活性化剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。金属不活性化剤の含有量は、特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは0.01~5重量%である。
【0084】
<消泡剤>
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン系化合物、ポリアクリレート等が挙げられる。消泡剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。消泡剤の含有量は、特に制限されないが、組成物全量基準で、0.001重量%以上、0.5重量%以下程度である。
【0085】
<清浄分散剤>
清浄分散剤としては、例えばコハク酸イミド化合物、ホウ素系イミド化合物、酸アミド系化合物などが挙げられる。清浄分散剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。清浄分散剤の含有量は、特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは0.1~20重量%である。
【0086】
[潤滑油組成物の性状]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油(A)の性状として規定した上記要件(1)~(8)を満たすことが好ましい。好適な範囲についても、上記要件(1)~(8)に規定したとおりである。
【0087】
[潤滑油組成物の用途]
本発明の潤滑油組成物は、優れた冷却性能を有しながらも、電気絶縁性が確保されており、しかも引火点も高い。また、潤滑性も確保されている。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、各種の機器を冷却するための冷却油として好適に使用できる。特に、電動車両が有する電動車両用機器を冷却するための冷却油として好適に使用することができる。
具体的には、例えば、モーター、発電機、蓄電器、コンバーター、インバーター、エンジン、及びトランスミッションからなる群から選択される1種以上の電動車両用機器を冷却するための冷却油として好適に使用できる。
なお、前記モーターは、駆動専用のモーターであってもよく、発電機を兼ねるモーターであってもよい。
電動車両用機器として挙げた前記発電機は、発電機を兼ねるモーターとは別に搭載されている発電機を意味する。
前記蓄電器としては、バッテリー及びキャパシタ等が挙げられる。
なお、本発明の一態様では、本発明の潤滑油組成物を、電動車両が有する電動車両用機器の冷却のために使用する、使用方法が提供される。当該電動車両用機器としては、既述のように、モーター、発電機、蓄電器、コンバーター、インバーター、エンジン、及びトランスミッションからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0088】
[冷却システム]
本発明の潤滑油組成物は、優れた冷却性能を有しながらも、電気絶縁性が確保されており、しかも引火点も高い。また、潤滑性も確保されている。
本発明の潤滑油組成物は、優れた冷却性能を有しながらも、電気絶縁性が確保されており、しかも引火点も高い。また、潤滑性も確保されている。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、例えば、電動車両用機器などの各種機器を循環させることにより、機器に潤滑を施しつつ、機器を冷却する。
ここで、本発明の一態様では、電動車両用機器を冷却するための冷却システムであって、上述した本発明の潤滑油組成物を備える冷却システムが提供される。当該電動車両用機器としては、既述のように、モーター、発電機、蓄電器、コンバーター、インバーター、エンジン、及びトランスミッションからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
冷却システムは、前記潤滑油組成物が循環する循環路と、冷却対象部とを備える。前記冷却対象部は、前記機器(好ましくは前記電動車両用機器)である。前記冷却対象部における冷却方式は、直接冷却方式及び間接冷却方式のいずれであってもよく、前記機器(好ましくは前記電動車両用機器)に要求される冷却方式に応じて、適宜設定される。なお、冷却システムには、前記循環路を介して前記冷却対象部に前記潤滑油組成物を供給する供給装置がさらに備えられていてもよい。また、前記冷却対象部の温度を検知するセンサー部と、当該センサー部にて検知した温度に応じて前記供給装置の作動を制御する制御装置とがさらに設けられていてもよい。
本明細書において、「冷却システム」とは、前記循環路及び前記冷却対象部を少なくとも含む複数の構成が集合して、前記冷却対象部を冷却する機能を発揮する「物」を意味し、複数の構成が集合して前記冷却対象部を冷却する機能を発揮する「装置」と言い換えることもできる。
【0089】
[潤滑油組成物の製造方法]
本発明の潤滑油組成物の製造方法は、特に制限されない。一実施形態の潤滑油組成物の製造方法は、上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコール及び上記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の合成油(A1)を含む基油(A)を調製する工程を含む。
また、基油(A)に、必要に応じて添加剤を混合する工程を含んでいてもよい。添加剤は、いかなる方法で配合されてもよく、配合の順序およびその手法は限定されない。
【0090】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様によれば、下記[1]~[11]が提供される。
[1] 基油(A)を含有する潤滑油組成物であって、
前記基油(A)は、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコール及び下記一般式(2)で表される構成単位を有するポリビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の合成油(A1)を含む、潤滑油組成物。
【化8】
[前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を表す。R
3は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、3~5の整数である。]
【化9】
[前記一般式(2)中、R
5、R
6、及びR
7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の1価の炭化水素基を表す。R
8は、炭素数2~10の2価の炭化水素基を表す。R
9は、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。mは、3又は4である。qは、0~10の整数である。]
[2] 前記一般式(1)中、R
3が、メチル基である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3] 前記一般式(2)中、R
5、R
6、及びR
7が、水素原子であり、
R
9がメチル基であり、
q=0である、[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4] 前記合成油(A1)の含有量が、前記基油(A)の全量基準で、30質量%~100質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[5] 相対熱伝達率が1.01以上であり、
前記相対熱伝達率は、下記要件(α1)~(α4)を満たす鉱油(α)の20℃における熱伝達率を1.00とした場合の熱伝達率である、[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
・要件(α1):20℃における動粘度が、7.06mm
2/sである。
・要件(α2):20℃における比熱が、1.67kJ/(kg・K)である。
・要件(α3):20℃における密度が、0.857g/cm
3である。
・要件(α4):20℃における熱伝導率が、0.141W/(m・K)である。
[6] 25℃における体積抵抗率が、1.00×10
8Ω・m以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[7] 引火点が、100℃以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[8] 流動点が、-40℃以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[9] 電動車両用機器の冷却に用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[10] 前記電動車両用機器は、モーター、発電機、蓄電器、コンバーター、インバーター、エンジン、及びトランスミッションからなる群から選択される1種以上である、[9]に記載の潤滑油組成物。
[11] 電動車両用機器を冷却するための冷却システムであって、[1]~[10]のいずれかに記載の潤滑油組成物を備える、冷却システム。
【実施例0091】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
[実施例1~9及び比較例1~9]
以下に示す各種基油を、表1~表3に示すように、単独で又は2種混合して用い、実施例1~9及び比較例1~9の潤滑油組成物とした。
【0093】
<ポリアルキレングリコール>
上記一般式(1)中、R1、R2、及びR3がメチル基であり、nの値のみが異なる、5種のポリプロピレングリコール「PPG-2」~「PPG-6」を用いた。
・「PPG-2」:n=2、分子量=162
・「PPG-3」:n=3、分子量=220
・「PPG-4」:n=4、分子量=278
・「PPG-5」:n=5、分子量=336
・「PPG-6」:n=6、分子量=394
【0094】
<ポリビニルエーテル>
上記一般式(2)中、R5、R6、及びR7が水素原子であり、qが0であり、R9がメチル基であり、mの値のみが異なる、4種のポリビニルエーテル「PVE(Me)-2」~「PVE(Me)-5」を用いた。
・「PVE(Me)-2」:m=2、両末端は水素原子、分子量=118
・「PVE(Me)-3」:m=3、両末端は水素原子、分子量=176
・「PVE(Me)-4」:m=4、両末端は水素原子、分子量=234
・「PVE(Me)-5」:m=5、両末端は水素原子、分子量=292
【0095】
<エステル>
・「エステル1」:オレイン酸2-エチルヘキシル
・「エステル2」:アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)
【0096】
<鉱油>
・「鉱油1」:VG2相当の鉱油
・「鉱油2」:VG5相当の鉱油であり、上述した鉱油(α)に該当する。
【0097】
<その他>
・エチレングリコール
・水
【0098】
[各種物性値の測定方法]
実施例1~9及び比較例1~9の潤滑油組成物の各性状の測定及び算出は、以下に示す要領に従って行った。なお、本実施例では、基油以外の添加物を配合せずに検討したことから、潤滑油組成物の各性状は、基油の性状でもある。
(1)40℃動粘度
JIS K2283:2000に準拠して測定した。
(2)20℃動粘度
JIS K2283:2000に準拠して測定した40℃動粘度及び100℃動粘度の測定結果を用いて算出した。
(3)20℃における密度
JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方-第1部:振動法)に準拠して測定した。
(4)20℃における比熱
熱伝導率測定装置(C-THERM Technology社製、TCi)により熱伝導率測定値及び熱浸透率測定値を得て、上記式(f1)を用いて算出した。20℃における密度は、上記(3)で測定した値を用いた。
(5)20℃における熱伝導率
熱伝導率測定装置(C-THERM Technology社製、TCi)により熱伝導率を測定した。
(6)引火点
JIS K 2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放法(COC法)により測定した。
(7)25℃における体積抵抗率
JIS C2101:1999に準拠し、測定温度25℃、印加電圧250Vの条件下で測定した。
【0099】
<相対熱伝達率の計算>
上記測定により得られた20℃における密度、20℃における比熱、20℃における熱伝導率、及び20℃における動粘度から、上記式(I)を用いて、実施例1~9及び比較例1~9の潤滑油組成物の20℃における熱伝達率を算出した。
そして、比較例8(鉱油(α)に該当する鉱油2を使用)の熱伝達率を1.00とした場合の、実施例1~9、比較例1~7、及び比較例9の熱伝達率を算出し、これを相対熱伝達率とした。
【0100】
<評価>
本実施例では、合格基準を以下のとおりとした。
・相対熱伝達率:1.01以上
・体積抵抗率:1.00×108Ω・m以上
・引火点:100℃以上
・流動点:-40℃以下
【0101】
結果を表1~表3に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
表1に示す結果から、以下のことがわかる。
実施例1~3に示すように、上記一般式(1)中、nの値が3~5であるPAGは、優れた冷却性能を有しながらも、引火点が高く、流動点が低く、しかも電気絶縁性にも優れることがわかる。
これに対し、上記一般式(1)中、nの値が2であるPAGは、引火点が低く、体積抵抗率も低いため電気絶縁性に劣ることがわかる。また、上記一般式(1)中、nの値が6であるPAGは、相対熱伝達率が低く、冷却性能に劣ることがわかる。
【0106】
また、表2に示す結果から、以下のことがわかる。
実施例4及び5に示すように、上記一般式(2)中、mの値が3~4であるPVEは、優れた冷却性能を有しながらも、引火点が高く、流動点が低く、しかも電気絶縁性にも優れることがわかる。
これに対し、上記一般式(2)中、mの値が2であるPVEは、引火点が低いことがわかる。また、上記一般式(2)中、nの値が5であるPVEは、相対熱伝達率が低く、冷却性能に劣ることがわかる。
【0107】
さらに、表3に示す結果から、以下のことがわかる。
実施例6~9に示す結果から、上記一般式(1)中、nの値が3~4であるPAG、上記一般式(2)中、mの値が3~4であるPVEを含有する潤滑油組成物は、優れた冷却性能を有しながらも、引火点が高く、流動点が低く、しかも電気絶縁性にも優れることがわかる。
これに対し、特定のエステル油のみを用いた場合(比較例5、6)、鉱油のみを用いた場合(比較例7、8)、エチレングリコールと水の混合物を用いた場合(比較例9)には、相対熱伝達率、流動点、及び体積抵抗率の少なくともいずれか1つが上記合格基準を満たさないことがわかる。