IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

特開2022-37885走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置
<>
  • 特開-走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置 図1
  • 特開-走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置 図2
  • 特開-走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置 図3
  • 特開-走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置 図4
  • 特開-走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置 図5
  • 特開-走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置 図6
  • 特開-走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037885
(43)【公開日】2022-03-09
(54)【発明の名称】走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092684
(22)【出願日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】20192523
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ハイネマン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・オリバー・ティーマン
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA43
2F077FF34
2F077PP26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置とを提供すること。
【解決手段】本発明は、プリント基板と、電子部品とを含む走査素子1であって、プリント基板は第1のシールド層および第2のシールド層を含み、第1の検出器ユニットが第1の層Aおよび第2の層Bに配置され、第2の検出器ユニットが第3の層Eおよび第4の層Fに配置されるように構成されている。シールド層は、第1の直線g1が、第1の検出器ユニットと第1のシールド層の両方を貫通し、一方、第2のシールド層が第1の直線g1に貫通されず、第1のシールド層は、第1の検出器ユニットを起点として、中心面Mを越えて配置されるような寸法である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導式位置測定装置のための走査素子(1;1’)であって、多層プリント基板(1.1;1.1’)と、電子部品(1.2)とを含む走査素子において、
- 前記プリント基板(1.1;1.1’)は第1の検出器ユニット(1.11)および第2の検出器ユニット(1.12)を含み、
- 前記第1の検出器ユニット(1.11)は、第1の励磁線(1.111)および第1の受信線(1.112)を有し、
- 前記第2の検出器ユニット(1.12)は、第2の励磁線(1.121)および第2の受信線(1.122)を有し、
- 前記プリント基板(1.1;1.1’)は、第1のシールド層(1.13)および第2のシールド層(1.14)と、幾何学的な中心面(M)とを有し、前記中心面(M)は、前記検出器ユニット(1.11、1.12)と前記シールド層(1.13、1.14)との間に位置し、さらに、前記プリント基板(1.1;1.1’)は、
- 前記第1の検出器ユニット(1.11)が第1の層(A)および第2の層(B)に配置され、
- 前記第2の検出器ユニット(1.12)が第3の層(E)および第4の層(F)に配置されるように構成されており、
前記シールド層(1.13、1.14)は、
- 第1の直線(g1)が、前記第1の検出器ユニット(1.11)と前記第1のシールド層(1.13)の両方を貫通し、一方、前記第2のシールド層(1.14)が前記第1の直線(g1)に貫通されず、前記第1のシールド層(1.13)は、前記第1の検出器ユニット(1.11)を起点として、前記中心面(M)を越えて配置され、
- 第2の直線(g2)が、前記第2の検出器ユニット(1.12)と前記第2のシールド層(1.14)の両方を貫通し、一方、前記第1のシールド層(1.13)は前記第2の直線(g2)によって貫通されず、前記第2のシールド層(1.14)は、前記第2の検出器ユニット(1.12)を起点として、前記中心面(M)を越えて配置されているような寸法であり、前記第1の直線(g1)および前記第2の直線(g2)は、前記中心面(M)に対して直交する方向に方向づけられている、走査素子。
【請求項2】
請求項1に記載の走査素子(1;1’)であって、前記第1のシールド層(1.13)は第5の層(C)に配置され、前記第2のシールド層(1.14)は第6の層(D)に配置されている、走査素子。
【請求項3】
請求項1に記載の走査素子であって、前記第1のシールド層(1.13)は第1の層(A)または第2の層(B)に配置され、前記第2のシールド層(1.14)は前記第3の層(E)または前記第4の層(F)に配置されている、走査素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記第1の励磁線(1.111)および前記第2の励磁線(1.121)は、第1の方向(x)に沿って延び、前記第1の方向(x)に直交して方向づけられている第2の方向(y)において、
- 前記第1のシールド層(1.13)は、前記第2の励磁線(1.121)に対して第1の間隔(a1)だけずれて配置され、
および/または、
- 前記第2のシールド層(1.14)は、前記第1の励磁線(1.111)に対して第2の間隔(a2)だけずれて配置されている、走査素子。
【請求項5】
請求項4に記載の走査素子(1;1’)であって、前記中心面(M)に対して直交する第3の方向(z)において、
- 前記第1の検出器ユニット(1.11)は、前記第1のシールド層(1.13)に対してある距離(t;t’)だけずれて配置されており、前記第2の間隔(a2)は、前記距離(t;t’)の25%以上であり、前記距離(t;t’)の100%以下であり、したがって、
0.25・t≦a2≦1・tまたは0.25・t’≦a2≦1・t’が成立し、
および/または
- 前記第2の検出器ユニット(1.12)は、前記第2のシールド層(1.14)に対してある距離(t;t’)だけずれて配置されており、前記第1の間隔(a1)は、前記距離(t;t’)の25%以上であり、前記距離(t;t’)の100%以下であり、したがって、
0.25・t≦a1≦1・tまたは0.25・t’≦a1≦1・t’が成立する、走査素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記第1の受信線(1.112)および前記第2の受信線(1.122)は、第1の方向(x)に沿って延び、前記第1の受信線(1.112)は、第2の方向(y)において、前記第2の受信線(1.122)に対してずれ(Y)を有して配置されている、走査素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記走査素子(1;1’)は、前記第1の直線(g1)および/または前記第2の直線(g2)が前記電子部品(1.2)の少なくとも1つを貫通するように構成されている、走査素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記プリント基板(1.1;1.1’)は、前記第1の直線(g1)が前記第1の受信線(1.112)を貫通し、および/または前記第2の直線(g2)が前記第2の受信線(1.122)を貫通するように構成されている、走査素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記第1の励磁線(1.111)および前記第2の励磁線(1.121)は、第1の方向(x)に沿って延びており、前記第1の励磁線(1.111)は、第2の方向(y)について重なるように、前記プリント基板(1.1;1.1’)上の前記第2の励磁線(1.121)に対して相対的に配置されている、走査素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記第1の検出器ユニット(1.11)は第3の励磁線(1.113)を有し、前記第2の検出器ユニット(1.12)は第4の励磁線(1.123)を有する、走査素子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記走査素子(1;1’)は、前記第1の励磁線(1.111)および前記第2の励磁線(1.121)が電気的に直列に接続されるように構成されている、走査素子。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記第1の励磁線(1.111)および前記第2の励磁線(1.121)に、経時変化する励磁電流が通電され、前記励磁電流は、前記電子部品(1.2)によって生成可能である、走査素子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)であって、前記第1の受信線(1.112)および前記第2の受信線(1.122)によって生成可能な信号が、前記電子部品(1.2)によってさらに処理可能である、走査素子。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の走査素子(1;1’)と、第1のスケール素子(2)および第2のスケール素子(3)とを含む誘導式位置測定装置であって、前記スケール素子(2、3)は、中心面(M)に直交する向きの第3の方向(z)において、前記プリント基板(1.1;1.1’)の両側に離間して配置されている、誘導式位置測定装置。
【請求項15】
請求項14に記載の誘導式位置測定装置であって、前記スケール素子(2、3)は、前記走査素子(1;1’)に対して共通の軸(R)を中心に回転可能に配置されている、誘導式位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる速度で移動可能な2つのスケール素子に対する走査素子を位置決定するための、請求項1に記載の誘導式位置測定装置用の走査素子に関する。
誘導式位置測定装置は、例えば、相対的に回転可能な機械部品の角度位置を決定するための角度測定器として使用される。誘導式位置測定装置では、多くは、励磁線および受信線が、導体路などの形態で、共通の、通常は多層のプリント基板に被着され、その基板は、例えば角度測定器のステータに固定接続されている。このプリント基板に対向して、ピッチ構造が施され、角度測定器のロータに回転不能に接続されたスケール素子がある。励磁線に時間的に変化する励磁電流を印加すると、ロータとステータが相対回転している間に、角度位置に依存した信号が受信コイルに発生する。これらの信号は、その後、評価用電子機器でさらに処理される。
【0002】
特に、ロボットの駆動装置では、駆動軸の角度位置を決定すると同時に、被動軸の角度位置を正確に決定するための測定器として、誘導式位置測定装置が頻繁に使用されており、駆動軸の動きが減速機によって被動軸に導入される。この場合、両側に対応する検出器ユニットを有するプリント基板を含む走査素子を用いて角度位置を測定し、その結果、プリント基板の両側に回転可能に配置されたスケール素子のそれぞれの角度位置を決定することができる。
【0003】
誘導式位置測定装置は、互いに相対的に、特に直線的に変位可能な2つの機械部品の位置を決定する長さ測定器としても使用される。この用途でも、両側に配置された検出器ユニットを有する本発明にかかる走査素子を使用することができる。
【背景技術】
【0004】
国際公開第2019/185336号では、多層プリント基板上に配置された送信コイルおよびセンサコイルを備えた走査素子が記載されており、プリント基板は、シールドとして構成される層を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/185336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2つのスケール素子の位置決定を可能にする誘導式位置測定装置のための、比較的正確に動作し、安価に製造可能な走査素子を作成するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。
誘導式位置測定装置に適し、誘導式位置測定装置のために決定された走査素子は、第1の検出器ユニットおよび第2の検出器ユニットを備えた多層プリント基板と、電子部品とを含む。特に、第1の検出器ユニットは、プリント基板の第1の面に配置され、第2の検出器ユニットは、プリント基板の第2の面に配置されている。第1の検出器ユニットは、第1の励磁線および第1の受信線を有する。第2の検出器ユニットは、第2の励磁線および第2の受信線を有する。さらに、プリント基板は、第1のシールド層および第2のシールド層と、特にプリント基板の第1の面と第2の面との間の中央に配置された幾何学的な中心面とを有し、中心面は検出器ユニットとシールド層との間に位置する。さらに、この多層プリント基板は、第1の検出器ユニットが第1の層および第2の層に配置され、さらに第2の検出器ユニットが第3の層および第4の層に配置されるように構成されている。シールド層は、架空の幾何学的な第1の直線が、第1の検出器ユニットと第1のシールド層の両方を貫通または交差し、一方、第2のシールド層が第1の直線に貫通されないような寸法である。その際、第1の検出器ユニットを起点として、第1のシールド層が中心面を越えて配置されている。また、架空の幾何学的な第2の直線が、第2の検出器ユニットと第2のシールド層の両方を貫通または交差し、一方、第1のシールド層は第2の直線によって貫通されない。第2のシールド層は、第2の検出器ユニットを起点として中心面を越えて配置されている。第1の直線および第2の直線は、中心面に対して直交する方向に方向づけられている。
【0008】
第1の直線は、第1の励磁線の領域または第1の受信線の領域において、第1の検出器ユニットと交差または貫通することができる。第2の直線は、第2の励磁線の領域または第2の受信線の領域で、第2の検出器ユニットと交差または貫通することができる。第1の励磁線および第2の励磁線は、プリント基板の異なる層(すなわち、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層)に延びる励磁導体路を含む。同様に、第1の受信線および第2の受信線は、プリント基板の第1の層、第2の層、第3の層、第4の層に延びる受信導体路を含む。
【0009】
発明対象の空間的な配置構成を規定することに関して、まず第1の方向xを定義することができる。第1の方向xは、求められた位置を測定する方向(測定方向)を表す。第1の方向xは、例えば、周方向や接線方向などである。この場合、第1の方向の位置測定により、(回転)軸を中心とした回転運動または旋回運動に関する走査素子に対するスケール素子の角度位置を測定することができる。直線的な位置測定の場合、第1の方向xは直線的な測定経路に沿って延びる。
【0010】
さらに、第1の方向xと直交する第2の方向yを定義することができる。
第1の方向xに直交し、同時に第2の方向yに直交して第3の方向zが方向づけられている。例えば、第3の方向zは、スケール素子が走査素子に対して相対的に回転可能な(回転)軸に平行であってもよい。さらに、第3の方向zは、中心面に対して直交する方向にある。プリント基板の各層は、第3の方向zに互いにずれて配置されている。
【0011】
中心面は第3の方向zに関して、第1の検出器ユニットと第1のシールド層との間に位置するか、または、第1の検出器ユニットおよび第1のシールド層が中心面の両側に配置されている。したがって、同様に、中心面が第3の方向zに関して、第2の検出器ユニットと第2のシールド層との間に位置することも成立し、第2の検出器ユニットおよび第2のシールド層が中心面の両側に配置されていることも成立する。
【0012】
有利には、第1のシールド層はプリント基板の第5の層に配置され、第2のシールド層はプリント基板の第6の層に配置されている。代替的に、第1のシールド層を第1の層または第2の層に配置し、第2のシールド層を第3の層または第4の層に配置してもよい。
【0013】
本発明のさらなる形態では、第1の励磁線および第2の励磁線は、第1の方向xに沿って延びる。第2の方向yにおいて、第1のシールド層は、第2の励磁線に対して第1の間隔だけずれて配置されている。代替的または補完的に、第2のシールド層は、第1の励磁線に対して、第2の方向に第2の間隔だけずれて配置されている。
【0014】
有利には、中心面に対して直交する方向に方向づけられた第3の方向において、第1の検出器ユニットは、第1のシールド層に対してある距離だけずれて配置されており、第2の間隔は、距離の25%以上であり、距離の100%以下である。代替的または補完的に、第2の検出器ユニットは、第2のシールド層に対してある距離だけずれて配置されており、第1の間隔は、距離の25%以上であり、距離の100%以下である。好ましくは、第2の間隔は距離の33%以上、75%以下であり、および/または、第1の間隔は距離の33%以上、75%以下である。
【0015】
有利には、第1の受信線および第2の受信線は、第1の方向xに沿って延びる。第1の受信線は、第2の方向yにおいて、第2の受信線に対してずれを有して配置されている。
本発明のさらなる形態では、走査素子は、第1の直線または第2の直線が電子部品の少なくとも1つを貫通するように構成されている。代替的に、特にプリント基板の両面に電子部品が実装されている場合には、第1の直線および第2の直線が1つ以上の電子部品を貫通することができる。
【0016】
有利には、プリント基板は、第1の直線が第1の検出器ユニットの第1の受信線を貫通し、および/または第2の直線が第2の検出器ユニットの第2の受信線を貫通するように構成されている。
【0017】
有利には、第1の励磁線および第2の励磁線は、第1の方向xに沿って延びており、第1の励磁線は、第2の方向yについて重なるように、プリント基板上の第2の励磁線に対して相対的に配置されている。換言すれば、第1の励磁線および第2の励磁線の領域は、第2の方向yで重なっている。特に、第1の励磁線が第2の励磁線に対して、第2の方向yに実質的にずれることなく配置されているように、重なりはほぼ100%の値であってもよい。
【0018】
本発明のさらなる形態では、第1の検出器ユニットが第3の励磁線を有し、第2の検出器ユニットが第4の励磁線を有する。第3の励磁線は、第2の方向において、第4の励磁線に対してずれて配置されている。
【0019】
有利には、走査素子は、第1の励磁線および第2の励磁線が電気的に直列に接続されるように構成されている。
有利には、第1の励磁線および第2の励磁線に、通常は経時変化する電流強度を有する励磁電流(交流電流または混合電流)を通電することができる。励磁電流は、電子部品によって生成可能であり、すなわち、その経路は電子部品によって形成可能である。電流強度と電圧強度には物理的な関連性があるため、当然、励磁電圧についても同じように考えることができる。
【0020】
本発明のさらなる形態では、第1の受信線および第2の受信線によって生成可能な信号は、特に評価回路を形成する電子部品によってさらに処理可能である。
すなわち、電子部品は、異なる電子回路の素子であってもよいし、異なる回路に割り当てられていてもよい。例えば、ある電子部品は励磁電流を発生させるための回路素子であり、さらなる電子部品は信号を評価し、または信号をさらに処理するためのさらなる回路素子であってよい。
【0021】
さらなる側面によると、本発明は、走査素子と、第1のスケール素子および第2のスケール素子とを備える誘導式位置測定装置も含む。スケール素子は、第3の方向z(中心面に直交する方向)に、プリント基板の両側に離間して配置されている。さらに、スケール素子は、走査素子に対して共通の軸を中心に回転可能に配置されていてもよい。
【0022】
本発明の有利な構成は、従属請求項からわかる。
本発明にかかる走査素子のさらなる詳細および利点は、添付の図を参照して、いくつかの実施例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】走査素子、第1のスケール素子および第2のスケール素子を含む位置測定装置の斜視図。
図2】走査素子の第1の側面の平面図。
図3】走査素子の第2の側面の平面図。
図4】第1の実施例にかかる走査素子の詳細断面図。
図5】第1のスケール素子の平面図。
図6】第2のスケール素子の平面図。
図7】第2の実施例にかかる走査素子の詳細断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、第1のスケール素子2の角度位置と、第2のスケール素子3の角度位置の両方を検出するために使用できる走査素子1を有する位置測定装置を参照して、図1に従って説明される。2つのスケール素子2、3は、走査素子1に対して軸Rを中心に回転可能に配置されている。このような位置測定装置は、例えば、ロボットの駆動装置で使用することができる。そして、第2のスケール素子3は、例えば、モータの駆動軸に回転不能に接続されている。これが、他方では被動軸を有する減速機につながっている。この被動軸とともに第2のスケール素子は回転する。このようにして、例えば、モータの転流のための角度位置を第2のスケール素子3を用いて行い、ロボットの位置決めのための比較的高精度の角度位置を第1のスケール素子2を用いて行うことができる。
【0025】
図2図3にそれぞれ平面図で示されている走査素子1は、複数の層を有するプリント基板1.1と、プリント基板1.1上に取り付けられた電子部品1.2(図3)とを含む。走査素子1は、第1のスケール素子2の走査と同時に、第2のスケール素子3の走査にも使用される。このため、図2にかかるプリント基板1.1の第1の面には第1の検出器ユニット1.11が配置され、図3にかかるプリント基板1.1の第2の面には第2の検出器ユニット1.12が配置されている。本実施例では、電子部品1.2は第2の面にのみ取り付けられている。しかし、代替的または追加的に、プリント基板1.1の第1の面に電子部品を実装することも可能である。
【0026】
第1の検出器ユニット1.11は、第1の励磁線1.111、第1の受信線1.112、第3の励磁線1.113、第3の受信線1.114および第5の励磁線1.115を含む。第2の検出器ユニット1.12は、第2の励磁線1.121、第2の受信線1.122、第4の励磁線1.123および第4の受信線1.124を含む。
【0027】
図4には、走査素子1を通る、またはプリント基板1.1を通る概略的な部分断面図が示されており、見易くするために、プリント基板1.1の電気絶縁材料のハッチングは省略されている。さらに、図4の部分断面図は、本発明にかかる走査素子1をよりよく説明するために、縮尺通りには記載されていない。すでに上述したように、プリント基板1.1は多層構造になっている。幾何学的に見ると、プリント基板1.1に対していわゆる中心面Mを定義することができ、この中心面Mは、プリント基板1.1の第1の側面に平行に、また第2の側面に平行に、それぞれ第1の側面と第2の側面との間の中心に配置されている。さらに、個々の素子の相互の幾何学的な関係は、座標系を用いて定義することができる。ここで、第1の方向xは、位置または角度の測定が意図した通りに行われるべき方向である。本実施例では、第1の方向xは周方向に相当する。スケール素子2、3が周囲を回転可能な軸Rは、第3の方向zに平行に延び、この第3の方向zは、ここでは軸方向とも定義できる。第3の方向zおよび第1の方向xに直交して第2の方向yが方向づけられており、第2の方向yは、本実施例(角度測定)では半径方向とも呼ぶことができる。したがって、x軸およびy軸で構成される平面は中心面Mに平行に方向づけられ、第3の方向zと軸Rは中心面Mと直交して延びている。プリント基板1.1の第1の層Aおよびプリント基板1.1の第2の層Bには第1の検出器ユニット1.11が配置され、一方、第3の層Eおよび第4の層Fには第2の検出器ユニット1.12が配置されている。第1の層Aは、プリント回路基板1.1の第1の面に最も近い位置にあり、第2の層Bは、プリント回路基板1.1の第1の面に2番目に近い位置にある。プリント回路基板1.1の第2の面に関して、第3の層Eおよび第4の層Fについても同様である。
【0028】
第1の検出器ユニット1.11の励磁線1.111、1.113、1.115は、第1の層Aおよび第2の層Bに延びる励磁導体路1.1111、1.1131、1.1151を含む。これと同様に、第2の検出器ユニット1.12の励磁線1.121、1.123は、第3の層Eおよび第4の層Fに延びる励磁導体路1.1231、1.1231を含む。
【0029】
第1の検出器ユニット1.11の励磁線1.111、1.113、1.115は、第1の受信線1.112または第3の受信線1.114を囲む。第2の検出器ユニット1.12の第2の励磁線1.121および第4の励磁線1.123は、第2の検出器ユニット1.12の第2の受信線1.122を囲む。同様に第2の検出器ユニット1.12.に割り当てられる第4の受信線1.124は、第4の励磁線1.123によって片側が囲まれている。励磁線1.111、1.121、1.113、1.115、1.121、1.123と受信線1.112、1.114、1.122、1.124の両方は、第1の方向xに沿って延びる。
【0030】
受信線1.1121、1.114、1.122、1.124は、それぞれ少なくとも2つの受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241を含む。さらに、第1の検出器ユニット1.11の受信導体路1.1121、1.1141は、プリント基板1.1の異なる層、すなわち第1の層Aと第2の層Bにおいてスルーホールを有して延びるため、交差箇所での望ましくない短絡が回避される。第2の検出器ユニット1.12の受信導体路1.1221、1.1241についても同様であり、これらは第3の層Eおよび第4の層Fにおいて延びる。受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、略正弦波または正弦波状である空間的に周期的な経路を有する。本実施例では、1つの同じ受信線1.112、1.114、1.122、1.124にあるそれらの受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、完全な正弦周期の1/4だけ(第1の方向xに沿ってπ/2または90°だけ)互いにずれて配置されている。受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、第1の方向xにおける位置決定に関して、最終的に90°位相をずらした信号を供給できるように、電気的に接続されている。
【0031】
本実施例では、プリント基板1.1はまた、第5の層Cおよび第6の層Dを含んでいる。第6の層Dには第1のシールド層1.13があり、第5の層Cには第2のシールド層1.14がある。ここで、シールド層1.13、1.14は、部分的に中断されているか、部分的に除去されている、比較的面積の大きい銅層である。
【0032】
第1のシールド層1.13は、中心面Mに直交して第3の方向zに平行に方向づけられ、第1の検出器ユニット1.11と第1のシールド層1.13の両方をそれぞれ交差または貫通する第1の直線g1を生成できるような寸法である。さらに、第1の直線g1は電子部品1.2も貫通している。しかしながら、同時に第2のシールド層1.14は第1の直線g1によって貫通されていない。さらに、第1の検出器ユニット1.11を起点として、第1のシールド層1.13は、中心面Mを超えて、つまり、第1の検出器ユニット1.11から見て中心面Mの反対側に配置されている。
【0033】
さらに、第2のシールド層1.14は、中心面Mに直交して方向づけられ、第2の検出器ユニット1.12と第2のシールド層1.14の両方を貫通する第2の直線g2を生成できるような寸法である。第1のシールド層1.13は、第2の直線g2によって貫通されていない。第2の検出器ユニット1.12を起点として、第2のシールド層1.14は、中心面Mを越えて配置されている。
【0034】
特に、プリント基板1.1は、第1の直線g1が第1の検出器ユニット1.11の第1の受信線1.112を貫通し、第2の直線g2が第2の検出器ユニット1.12の第2の受信線1.122を貫通するように配置されている。
【0035】
説明した配置構成によって、第1のシールド層1.13は、第3の方向zに対して距離tだけ第1の検出器ユニット1.11の後方に(または第3の方向zにおいて第1の検出器ユニット1.11へずれて)配置されている。ここで、距離tはプリント基板1の厚さの半分よりも大きい。第2の検出器ユニット1.12に対する第2のシールド層1.14の相対的な配置構成についても同様である。本実施例では、距離tは2mmであり、距離は第3の方向zに延びる。
【0036】
第1の受信線1.112は、第2の受信線1.122に対して、第2の方向yにおけるずれYを有して配置されている。これに対して、本実施例では、第1の励磁線1.111は、第2の励磁線1.121に対して、第2の方向yにおけるずれを持たないため、第1の励磁線1.111は、プリント基板1.1上で第2の励磁線1.121に対して、第2の方向yにおけるずれを持たずに配置されている。
【0037】
第2の方向yに関して、第1のシールド層1.13は第2の励磁線1.121まで延びておらず、第1のシールド層1.13と第2の励磁線1.121との間には、第2の方向yにおける(半径方向の)第1の間隔a1が存在する。同様に、第2のシールド層1.14と第1の励磁線1.111の間には、第2の方向yにおける第2の間隔a2が存在する。したがって、第1のシールド層1.13は、第2の励磁線1.121に対して第1の間隔a1だけずれて配置され、さらに、第2のシールド層1.14は、第1の励磁線1.111に対して第2の間隔a2だけずれて配置されている。第1の間隔a1および/または第2の間隔a2が25%・tから100%・tの間の値(0.25・t≦a1≦1・t;0.25・t≦a2≦1・t)を取る場合、測定信号の質が高く、したがって全体として高い測定精度が得られることが示されている。本実施例では、a1=a2である。
【0038】
図5では、第1のスケール素子2が平面図で示されている。また、図6には、第2のスケール素子3が同様に平面図で示されている。スケール素子2、3は、図示の実施例ではエポキシ樹脂製の基板でそれぞれ構成されており、その上にそれぞれ2つのピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2が配置されている。ピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2はリング状に構成されており、基板上に、直径の異なる軸Rに対して同心円状に配置されている。ピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2は、それぞれ、交互に配置された導電性のピッチ領域2.11、2.21;3.11、3.21と、非導電性のピッチ領域2.12、2.22;3.12、3.22の周期的なシーケンスで構成されている。導電性のピッチ領域2.11、2.21;3.11、3.21の材料として、図示の例では銅を基板に塗布した。一方、非導電性のピッチ領域2.12、2.22;3.12、3.22では、基板はコーティングされなかった。それぞれ2つのピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2を有する配置構成によって、スケール素子2、3の角度位置は、それぞれ絶対的に決定することができる。第1のスケール素子2の最も外側のピッチ線2.2は、円周線に沿って最大数のピッチ領域2.11、2.21を有しているため、これによって角度位置の測定に関する最大の解像度を得ることができる。
【0039】
図1にかかる組み立て状態では、走査素子1およびスケール素子2、3は、それぞれ軸方向の間隔や空隙を持って対向しているため、受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241におけるスケール素子2、3と走査素子1との間で相対的な回転が生じる場合、誘導効果によってそれぞれの角度位置に依存した信号を生成することができる。対応する信号を形成するための前提条件は、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1141、1.1211、1.1231が、それぞれ走査されたピッチ構造の領域で経時変化する電磁励磁フィールドを生成することである。図示の実施例では、励磁用導体路1.1111、1.1131、1.1141、1.1211、1.1231は、複数の平面並列型の通電個別導体路として構成されている。走査素子1は、層E、Fを介して互いに電気的に接続された電子部品1.2を備えた電子回路を有する。電子回路は、例えば、ASICモジュールを含んでもよい。この走査素子1の電子回路は、評価素子としてだけでなく、励磁制御素子としても動作し、その制御下で、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1141、1.1211、1.1231を流れる励磁電流が生成される。したがって、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1141、1.1211、1.1231は、1つの同じ励磁制御素子によって通電される。ここで、第1の励磁線1.111および第2の励磁線1.121は電気的に直列に接続されている。
【0040】
励磁線1.111、1.121、1.113、1.115、1.121、1.123が通電されると、励磁導体路1.111、1.1131、1.1141、1.1211、1.1231の周囲に筒状または円筒状に配向した電磁界が形成される。結果として生じる電磁場の磁力線は、励磁線1.111、1.121、1.113、1.115、1.121、1.123の周囲に延び、磁力線の方向は、励磁導体路1.111、1.1131、1.1141、1.1211、1.1231の電流の方向に、既知の方法で依存している。導電性ピッチ領域2.11、2.21;3.11、3.21の領域に渦電流が誘導され、それによってそれぞれ角度位置に依存したフィールドの変調が達成される。したがって、受信線1.112、1.114、1.122、1.124によって、相対的な角度位置をそれぞれ測定することができる。一対の受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、それぞれが90°位相のずれた信号を供給するように、その受信線1.112、1.114、1.122、1.124内に配置されており、その結果、回転方向の決定も可能となる。受信線1.112、1.114、1.122、1.124によって生成された信号は、評価回路を形成する電子部品1.2の一部によってさらに処理される。
【0041】
第1のシールド層1.13と第2のシールド層1.14の特別な寸法と配置構成により、2つの検出器ユニット1.11、1.12による測定精度への悪影響をほぼ防ぐことができる。
【0042】
特に、許容できないほど高いレベルのクロストーク信号が防止されると同時に、励磁場の過度な減衰が回避される。さらに、電子部品1.2によるまたは外部からの検出器ユニット1.11、1.12の電磁干渉も防止される。
【0043】
図7には、第2の実施例にかかる走査素子1’の形態を示されている。第2の実施例のプリント基板1.1’は、4つの層A、B、C、Dのみを有する。本実施例では、第1のシールド層1.13が第3の層Eに位置し、第2のシールド層1.14が第2の層Bに位置している。ここでも、距離t’はプリント基板1’の厚さの半分よりも実質的に大きい。
【0044】
代替的に、第1のシールド層1.13を第1の層Aに配置し、および/または第2のシールド層1.14を第4の層Fに配置することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】