(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038352
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20220303BHJP
H03F 1/52 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H03F3/45 210
H03F1/52 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020142809
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】境 要典
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA47
5J500AC46
5J500AC56
5J500AH02
5J500AH08
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK09
5J500AT02
5J500DN01
5J500DN12
5J500DP01
5J500PF05
5J500PG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】過電流保護回路の出力電流値の不要な増加を招くことなく、電源ラインに混入する高周波外来ノイズに対するノイズ耐性の高い演算増幅器を提供する。
【解決手段】演算増幅器は、出力段における過電流を検出すると共に、過電流が検出された場合に出力段の電流抑圧を可能としてなる過電流保護回路117を有する。過電流保護回路117には、所望の高周波領域における過電流検出の感度を抑制する高周波ノイズ対策回路122が設けられており、それによって、過電流保護回路117の出力電流値を変化させることなく、電源ラインに混入する高周波外来ノイズによる演算増幅器の出力電圧への影響が低減可能となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非反転入力端子と反転入力端子間に印加された入力信号の差動増幅可能に構成されてなる演算増幅器であって、
前記演算増幅器は、出力段における過電流が検出された場合に前記出力段の電流抑圧を可能としてなる過電流保護回路を有し、前記過電流保護回路は、所望の高周波領域における過電流検出の感度を抑制する高周波ノイズ対策回路が設けられてなることを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
前記過電流保護回路は、過電流検出用トランジスタと、前記出力段に流れる電流検出のために前記出力段に設けられた検出用抵抗器とを有し、前記過電流検出用トランジスタのベースとエミッタ間に前記検出用抵抗器が接続されて、前記検出用抵抗器における過電流が検出された場合に前記過電流検出用トランジスタにより前記出力段の電流を低減するよう構成されてなり、
前記高周波ノイズ対策回路は、前記検出抵抗器と並列接続された第1のノイズ対策コンデンサを有してなり、
前記第1のノイズ対策コンデンサの容量値CX2は、
不等式CX2>1/(2π×21/2×fc×R2)を満たす値に設定され、
前記不等式におけるfcは、除去する高周波ノイズの周波数、前記不等式におけるR2は、前記検出抵抗器の抵抗値であり、
前記検出抵抗器と前記第1のノイズ対策コンデンサとの並列接続部分におけるインピーダンスの低下により前記過電流保護回路における前記高周波領域での過電流検出感度を低下せしめることで前記高周波ノイズに起因する出力電圧の変動抑圧を図ったことを特徴とする請求項1記載の演算増幅器。
【請求項3】
前記検出用抵抗器と前記過電流検出用トランジスタのベースとの間に、ノイズ対策抵抗器が接続される一方、前記第1のノイズ対策コンデンサに代えて第2のノイズ対策コンデンサが前記過電流検出用トランジスタのベースとエミッタ間に接続され、
前記ノイズ対策抵抗器の抵抗値RX2と前記第2のノイズ対策コンデンサの容量値CX3は、
不等式fc>1/(2π×CX3×RX2)を満たす値に設定され、
前記ノイズ対策抵抗器と前記第2のノイズ対策コンデンサによるローパスフィルタ作用により前記過電流保護回路における高周波領域での過電流検出感度を低下せしめることで前記高周波ノイズに起因する出力電圧の変動抑圧を図ったことを特徴とする請求項1記載の演算増幅器。
【請求項4】
前記過電流検出用トランジスタのベースと前記検出抵抗器との間に、ノイズ対策抵抗器が設けられると共に、前記過電流検出用トランジスタのベースとエミッタとの間に第2のノイズ対策コンデンサが設けられ
前記ノイズ対策抵抗器の抵抗値RX2と前記第2のノイズ対策コンデンサの容量値CX3は、
不等式fc>1/(2π×CX3×RX2)を満たす値に設定され、
前記検出抵抗器と前記第1のノイズ対策コンデンサとの並列接続部分におけるインピーダンスの低下による前記高周波ノイズに起因する出力電圧の変動抑圧に加えて、
前記ノイズ対策抵抗器と前記第2のノイズ対策コンデンサによるローパスフィルタ作用により前記過電流保護回路における高周波領域での過電流検出感度を低下せしめることで前記高周波ノイズに起因する出力電圧の変動抑圧を図ったことを特徴とする請求項2記載の演算増幅器。
【請求項5】
前記第1のノイズ対策コンデンサを前記過電流検出用トランジスタのベース・エミッタ間の寄生容量とすることを特徴とする請求項2記載の演算増幅器。
【請求項6】
前記第2のノイズ対策コンデンサを前記過電流検出用トランジスタのベース・エミッタ間の寄生容量とすることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器に係り、特に、高周波外来ノイズに起因する出力特性の劣化防止、動作の安定性確保等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、演算増幅器における高周波外来ノイズに対する方策としては、ノイズが入力端子に混入することに着目して対策を施したものが多い。例えば、特許文献1等には、入力に混入する高周波外来ノイズをコンデンサと抵抗器で構成されるローパスフィルタ(LPF)で軽減するものが提案されている。
【0003】
特許文献1においては、同文献で開示されたローパスフィルタによる高周波外来ノイズ対策は、
図10に示された回路を用いて高周波外来ノイズの混入について検証した結果を反映したものである旨が述べられている。
図10に示された検証回路は、演算増幅器OP1の非反転入力端子に、DCカット用コンデンサCA1を介してAC電圧源RFが接続されているところに特徴を有するものである。
【0004】
また、
図11には、演算増幅器OP1の具体的な回路構成例が示されている。
この
図11に示された回路は、特許文献1において演算増幅器OP1の従来回路として開示されているものと基本的に同一構成のものであるが、
図11においては、電流分配用のカレントミラー回路の具体回路構成も示されたものとなっている。
この電流分配用のカレントミラー回路は、カレントミラー元であるトランジスタQ109と電流源CS1とを用いて構成されており、トランジスタQ109に電流源CS1が接続されて、この電流源CS1の電流がトランジスタQ110~Q117にミラーされている。
【0005】
図12には、
図10に示された検証回路において、AC電圧源RFによりAC電圧を演算増幅器OP1に印加した場合の出力電圧Voutの変化の測定結果が示されている。なお、AC電圧源RFの電圧振幅は0.2Vppである。
同図によれば、出力電圧Voutは、周波数が低い領域では0V付近で安定しているが、周波数が高くなるにつれて変動することが確認できる。この出力電圧Voutの変動は、演算増幅器の後段の集積回路において誤動作を招く原因となる。
【0006】
かかる出力電圧Voutの変動対策として、特許文献1においては、
図13に示されたように、反転入力端子INMとトランジスタQ1のベースとの間に抵抗器Rin1を、非反転入力端子INPとトランジスタQ2のベースとの間に抵抗器Rin2を、それぞれ挿入した構成が開示されている。
上述の構成において、トランジスタQ1、Q2のベースと負電源端子VEEとの間には、寄生容量Cin1、Cin2が存在する。
その結果、抵抗器Rin1、Rin2と寄生容量Cin1、Cin2とでローパスフィルタ(LPF)が構成され、それによる高周波外来ノイズの低減によって出力電圧Voutの変動抑制が可能となっている。
【0007】
本願発明者は、実際に
図13の構成における高周波外来ノイズの低減効果の検証を行った。
図14には、その検証結果である入力周波数変化に対する出力電圧Voutの変化特性が示されている。すなわち、同図において、実線の特性線は、
図13に示された回路構成における入力周波数変化に対する出力電圧Voutの変化特性であり、対策がない場合(点線の特性線)に比して、高周波外来ノイズに対する一定の低減効果が確認できる。
【0008】
ところが、高周波外来ノイズが混入するのは入力端子だけとは限らず、例えば、電源ラインに混入する可能性を否定できない。特に、近年の車載半導体においては、電源ラインにおける高周波外来ノイズに対する高い耐性が求められる場合が増加している。
本願発明者は、かかる観点から、先の
図13に示された演算増幅器における電源ラインへの高周波外来ノイズ混入の際の出力電圧Voutの挙動を検証した。
【0009】
図15には、検証に用いた回路例が示されており、同図を参照しつつ検証内容について説明する。
まず、
図15に示された回路例において、演算増幅器OP1は、先の
図13の回路構成のものである。演算増幅器OP1の端子にはインダクタンスL1~L5が付加されているが、これらは、パッケージングされた演算増幅器OP1に用いられている金線のインダクタンスを等価的に表したものである。
【0010】
図15に示された回路例は、演算増幅器OP1によりボルテージフォロア回路が構成されており、反転入力端子INMは寄生インダクタンスL2、L5を介して出力端子OUTに接続されている。
一方、非反転入力端子INPは、寄生インダクタンスL3を介してDC電圧源V2=6Vに接続されている。
【0011】
また、負電源端子VEEは、寄生インダクタンスL4を介してグランドに接続されている。
正電源端子VCCは、寄生インダクタンスL1及びインダクタLA1を介してDC電圧源V1=12Vに接続されると共に、DCカット用コンデンサCA1を介してAC電圧源RFに接続されている。インダクタLA1は、DC電圧源への高周波信号を遮断する。
AC電圧源RFは、高周波外来ノイズを模しており、出力はPin(dBm)である。
【0012】
ここで、DC電圧源V1=12Vと、DCカットコンデンサCA1と、寄生インダクタンスL1とが電気的に導通状態とされるノードを、以下、説明の便宜上”電源ライン”と称する。
以下、この電源ラインにおける高周波外来ノイズの混入に対する演算増幅器OP1への影響に関する検証について説明する。
【0013】
かかる検証は、AC電圧源RFからの入力電力を増加した場合の出力電圧VoutのDCレベルを計測することで行う。
例えば、
図15の回路において、AC電圧源RFからの入力電圧が無い場合、出力電圧Voutが6Vとなることは自明である。しかし、AC電圧源RFからの入力電力Pinが増加すると、演算増幅器OP1は何等かの影響を受け、出力電圧Voutは変動を来す。
【0014】
図16には、
図15の回路における検証結果として、電源ラインへのAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性が点線の特性線により示されている。
この検証結果は、入力電力Pinを変化させた際の、出力電圧Voutの変化を計測した結果である。
なお、AC電圧源RFの周波数は0.5GHzである。
【0015】
演算増幅器OP1は、先に
図13に示されたように入力端子に対する高周波外来ノイズに対する対策が施されたものであるが、
図16に示された検証結果においては、AC電圧源RFの入力電力Pinが28dBm付近になると、出力電圧Voutは大きく変動し始めていることが確認できる。
これは、高周波外来ノイズが電源ラインに混入すると、出力電圧Voutが変動することを意味するものである。
【0016】
このような出力電圧Voutの変動は、実使用において誤動作を招く原因となる。なお、このようにAC電源などを用いて、特定の端子に高周波外来ノイズを印加する実験は、Direct Power Injectionと称され、DPIと略称されることもある。
本願発明者は、多くの試験を積み重ね、鋭意研究の結果、
図17に示された回路構成を用いることで、正電源端子への高周波外来ノイズ耐性の高い演算増幅器を得ることができる結論を導くに至った。
【0017】
この
図17に示された回路構成は、コンデンサCX1と抵抗器RX1、RX11及びダイオードDX1を設けると共に、それぞれ、所定の条件を満たす回路定数を選定することで、次述するように高い高周波外来ノイズ耐性を得ることができるものとなっている。
【0018】
以下、
図18に示された特性線図を参照しつつ、
図17に示された回路構成の演算増幅器の高周波外来ノイズ耐性について説明する。
図18は、演算増幅器における高周波外来ノイズの入力電力変化に対する出力電圧の変化特性例を示す特性線図であり、横軸は電源ラインへの高周波外来ノイズのAC入力電力を、縦軸は出力電圧を、それぞれ示している。
【0019】
同図には、先に
図13に示された回路構成の演算増幅器(従来回路)における高周波外来ノイズのAC入力電力変化に対する出力電圧Voutの変化例が点線の特性線により、また、
図17の回路構成の演算増幅器(提案回路)における高周波外来ノイズのAC入力電力変化に対する出力電圧Voutの変化例が実線の特性線により、それぞれ示されている。なお、いずれの特性線も高周波外来ノイズの周波数が0.5GHzとした場合のものである。
【0020】
まず、
図13に示された回路構成の演算増幅器の場合、AC入力電力が28dBm付近からAC入力電力の増加に伴い出力電力Voutが低下する傾向を示している。
これに対して、
図17に示された回路構成の演算増幅器の場合、AC入力電力が33dBmとなるまでは出力電力Voutをほぼ一定に維持できていることが確認できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【0022】
【非特許文献1】P.R.グレイ等著、「アナログ集積回路設計技術 上巻」、培風館
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、本願発明者のさらなる研究の結果、特定の高周波0.61GHzにおいて正電源端子にAC電力を入射すると、出力電圧Voutが著しく悪化することを見出すに至った。
図19には、この事を説明する特性線図が示されており、以下、同図を参照しつつ、上述の現象について説明する。
まず、
図19は、電源ラインへのAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性を示した特性線図である。
同図において、横軸は電源ラインへの高周波外来ノイズのAC入力電力を、縦軸は出力電圧を、それぞれ示している。
【0024】
図19において、点線の特性線は、
図17に示された回路において、AC入力電力の周波数を0.61GHzとした場合の電源ラインへのAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性を示している。
また、二点鎖線の特性線は、同回路において、AC入力電力の周波数を0.5GHzとした場合の電源ラインへのAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性を、実線の特性線は、AC入力電力の周波数を0.7GHzとした場合の電源ラインへのAC入力電力Pinの変化に対する出力電圧Voutの変化特性を、それぞれ示している。
【0025】
図19によれば、AC入力電力の周波数が0.5GHz、0.7GHzの場合、入力電力が33dBm付近までは出力電圧Voutが一定値を維持できるのに対して、周波数0.61GHzでは入力電力29dBm付近までしか出力電圧Voutを一定値に維持することができず、入力電力29dBm以降は急激な電圧低下が生じていることが確認できる。
すなわち、
図17に示された回路の演算増幅器は、周波数0.61GHzの高周波外来ノイズが正電源端子に混入した際、出力電圧Voutの大きな変動が生ずることとなる。
【0026】
本願発明者は、このような特定の周波数0.61GHzにおいてのみノイズ耐性が大幅に劣化する原因について、鋭意研究の結果、演算増幅器の終段部分に設けられている過電流保護回路に原因があることを導くに至った。
図20には、過電流保護回路CLim1に該当する部分を点線で囲んだ
図17と同一の回路構成が示されている。
同回路において、トランジスタQ14~Q16、及び、抵抗器R1,R2から構成される部分が過電流保護回路CLim1であり、本願発明者は、特定の周波数0.61GHzにおいてのみ、過電流保護回路CLim1が極端にONし易い状態に陥ることを突き止めるに至った。
【0027】
換言すれば、
図20に示された回路構成の演算増幅器の正電源端子に高周波外来ノイズが混入すると、例えノイズ振幅が小さくとも、そのノイズ周波数が0.61GHzである場合には、過電流保護回路CLim1はON状態となり、出力電圧Voutが悪化するという現象が生ずる。
【0028】
トランジスタQ14~Q16、抵抗器R1,R2から構成される過電流保護回路CLim1の動作は、従来から良く知られている回路(例えば、非特許文献1等参照)であるので、以下、概括的に説明する。
この過電流保護回路CLim1は、抵抗器R2に流れる電流Ioutが下記する式1の条件を満たすまで増加した際にON状態となる。
【0029】
Vbe(Q14)=R2×Iout・・・式1
【0030】
ここで、Vbe(Q14)は、トランジスタQ14のベース・エミッタ間電圧であって、具体的には、約0.6Vである。
また、R2は、抵抗器R2の抵抗値、Ioutは、抵抗器R2を介して流れる出力電流の電流値である。
出力電流Ioutが増加し、式1の条件を満たす状態となった際に、トランジスタQ14のコレクタ電流IcQ14が流れ、トランジスタQ15のベース電流IbQ15が制限されることとなる(
図20参照)。
【0031】
その結果、トランジスタQ15とダーリントン接続されたトラジスタQ16のエミッタ電流は、式1を満たす出力電流Ioutを越える大きな電流を流さなくなる。
かかる動作を有する過電流保護回路CLim1の回路構成は、フィードバック回路が構成されたものとなっている。
このような回路構成であることを考慮しつつ、周波数0.61GHzのノイズが混入した際に、この演算増幅器の出力電圧Voutが低下する理由を、
図21を参照しつつ説明する。
【0032】
まず、過電流保護回路CLim1に周波数0.61GHzの僅かな電圧振幅の信号が正電源端子に混入すると、過電流保護回路CLim1がON状態になる。
過電流保護回路CLim1がONしていない通常の状態であれば、トランジスタQ10のコレクタ電位は、トランジスタQ15,Q16及び抵抗器R2を介して出力端子OUTに伝達される。
しかし、過電流保護回路CLim1がONした状態であると、トランジスタQ15のベース電流IbQ15が制限されるため、トランジスタQ15のベースからエミッタへ、トランジスタQ10の電圧信号を伝達することができなくなる。
【0033】
そのため、トランジスタQ10のコレクタ電位の信号は、別の伝達ルートとして、トランジスタQ17を介して出力端子OUTに伝達されることとなる。
また、過電流保護回路CLim1がONしてない通常の状態であれば、トランジスタQ117コレクタ電流IcQ117は、一定程度、トランジスタQ10のコレクタに流れる。しかし、過電流保護回路CLim1がONすると、トランジスタQ14のコレクタ電流IcQ14にトラジスタQ117のコレクタ電流IcQ117の大部分が費やされる。その結果、トランジスタQ10のコレクタ電流IcQ10は、トランジスタQ17のベース電流IbQ17でのみ補われることとなる。
【0034】
しかし、トランジスタQ17のベース電流IbQ17の大きさは限られており、トラジスタQ10のコレクタ電流IcQ10は、過電流保護回路CLim1がONする前に比較して減少せざる得なくなる。
一方、トランジスタQ10のベース電流IbQ10は、過電流保護回路CLim1のON、OFFに拘わらず一定の大きさである。
したがって、トランジスタQ10のベース電流IbQ10が一定である一方、コレクタ電流IcQ10が減少するという状態に陥る。
【0035】
そして、トランジスタQ10のコレクタ電位は、コレクタ電流IcQ10を減少させるために低下する。このトランジスタQ10のコレクタ電位の低下は、トランジスタ17を介して出力端子OUTに伝達され、結果として、出力電圧Voutが低下する現象が表れる。以上が周波数0.61GHzのノイズが正電源端子に混入した際に出力電圧Voutが低下する理由である。
【0036】
上述の問題を解決する方策としては、過電流保護回路CLim1が簡単にONしないように、電流検出抵抗器R2の抵抗値を小さくする方法が考えられる。しかし、抵抗器R2の抵抗値を小さくすることは、先の式1を参照すると、出力電流Ioutの増大を意味する。
演算増幅器の出力電流Ioutの増大は、出力電流Ioutを所望の値以下に抑えて演算増幅器や周囲の回路を保護するという過電流保護回路の機能が果たせなくなるという問題を招くこととなる。
【0037】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、過電流保護回路の出力電流値の不要な増加を招くことなく、電源ラインに高周波外来ノイズが混入しても安定した出力特性を得ることのできる演算増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る演算増幅器は、
非反転入力端子と反転入力端子間に印加された入力信号の差動増幅可能に構成されてなる演算増幅器であって、
前記演算増幅器は、出力段における過電流を検出すると共に、前記過電流が検出された場合に前記出力段の電流抑圧を可能としてなる過電流保護回路を有し、前記過電流保護回路は、所望の高周波領域における過電流検出の感度を抑制する高周波ノイズ対策回路が設けられてなるものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、過電流保護回路の出力電流値を変化させることなく、電源ラインに混入する高周波外来ノイズによる演算増幅器の出力電圧への影響を低減することができ、出力特性の安定した演算増幅器を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施の形態における演算増幅器の基本構成を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態における演算増幅器の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態における演算増幅器の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施の形態における演算増幅器の第3の回路構成例を示す回路図である。
【
図5】本発明の実施の形態における演算増幅器の抵抗器とコンデンサの合成インピーダンスの周波数特性を示す特性線図である。
【
図6】第1の回路構成を有する演算増幅器における高周波外来ノイズの入力電力変化に対する出力電圧の変化特性例を示した特性線図である。
【
図7】第2の回路構成を有する演算増幅器における高周波外来ノイズの入力電力変化に対する出力電圧の変化特性例を示した特性線図である。
【
図8】第3の回路構成を有する演算増幅器における高周波外来ノイズの入力電力変化に対する出力電圧の変化特性例を示した特性線図である。
【
図9】第1乃至第3の回路構成におけるそれぞれの出力電流リミット値と従来回路における出力電流リミット値を説明する説明図である。
【
図10】演算増幅器の入力端子に混入する高周波外来ノイズの出力電圧に対する影響を検証するための検証回路の回路構成を示す回路図である。
【
図11】
図10に示された検証回路に用いられた従来の演算増幅器の具体的な回路構成例を示す回路図である。
【
図12】
図10に示された回路におけるAC電圧源RFの周波数変化に対する演算増幅器OP1の出力電圧Voutの変化特性例を示す特性線図である。
【
図13】高周波外来ノイズに対する出力電圧の変動対策を施した従来の演算増幅器の回路構成例を示す回路図である。
【
図14】
図13に示された従来回路における高周波外来ノイズの周波数変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線図である。
【
図15】演算増幅器の電源ラインに混入する高周波外来ノイズの出力電圧に対する影響を検出する検証回路の回路構成を示す回路図である。
【
図16】
図15に示された検証回路を用いた検証結果である電源ラインへのAC入力電力の変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線図である。
【
図17】従来の演算増幅器の正電源端子への高周波外来ノイズの混入に対するノイズ耐性策を施した本願発明者提案の演算増幅器の回路構成例を示す回路図である。
【
図18】
図17に示された演算増幅器の電源ラインへのAC入力電力の変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線図である。
【
図19】
図17に示された演算増幅器の電源ラインへのAC入力の周波数の違いによるAC入力電力の変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線図である。
【
図20】
図17に示された回路構成の演算増幅器の過電流保護回路を明確にした回路図である。
【
図21】
図17に示された回路構成の演算増幅器の動作を説明するため主要な電流経路を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図9を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における演算増幅器の基本回路構成について、
図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における演算増幅器は、差動増幅回路(
図1においては「DIF1」と表記)110と、出力回路(
図1においては「OST1」と表記)116に大別されて構成されたものとなっている。
【0042】
この演算増幅器の正電源端子64は、差動増幅回路110の端子D3及び出力回路116の端子D6に、それぞれ接続されている。
また、負電源端子65は、差動増幅回路110の端子D4及び出力回路116の端子D7に、それぞれ接続されている。
演算増幅器の非反転入力端子(
図1においては「INP」と表記)62は、端子D2に、反転入力端子(
図1においては「INM」と表記)61は、端子D1に、それぞれ接続されている。
【0043】
さらに、演算増幅器の出力端子63は、出力回路116の端子D9に接続されている。
また、差動増幅回路110の出力端子D5は、出力回路116の入力端子D8に接続されている。
【0044】
差動増幅回路110は、差動対をなす2つのトランジスタなどを主たる構成要素として構成された従来から良く知られた構成を有して差動増幅を行う回路である。
かかる差動増幅回路110は、例えば、ダーリントン接続の入力差動対や、正電源電位から負電源電位までの入力信号に対応した、いわゆる入力フルスイング演算増幅器を構成するようにしても良く、特定の構成に限定される必要はない。
一方、本発明の実施の形態における出力回路116は、差動増幅回路110の出力信号を所望の電圧レベルとして出力するための従来同様の回路である。
【0045】
この出力回路116は、過電流保護回路(
図1においては「CLim」と表記)117を有している。
さらに、本発明の過電流保護回路117は、従来と異なり高周波ノイズ対策回路(
図1においては「EX」と表記)122が内蔵されているが、その点を除けば基本的に従来同様の構成を有してなるものである。
この高周波ノイズ対策回路122は、過電流保護回路117が高周波成分に反応しないようにする機能を有してなるものである。すなわち、高周波ノイズ対策回路122は、高周波ノイズにより過電流保護回路117の電流リミット値が変化することのないように構成されたものである(詳細は後述)。
【0046】
図2には、上述の基本構成における具体的な回路構成の一つである第1の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における演算増幅器は、差動増幅回路110と、第1及び第2のレベルシフト回路111,112と、第3及び第4のレベルシフト回路113,114と、高利得増幅回路115と、出力回路116と、過電流保護回路117と、起動回路121と、電流源回路118と、ローパスフィルタ119とに大別されて構成されたものとなっている。
【0047】
本発明の実施の形態における演算増幅器は、従来の演算増幅器の回路構成と基本的に同様の回路構成を有するものであるが、電源ラインへ混入する高周波外来ノイズによる出力特性の変動を抑圧するための高周波外来ノイズ対策回路122が過電流保護回路117に設けられた構成を有する点が従来と異なるものである(詳細は後述)。
【0048】
以下、本発明の実施の形態における演算増幅器の具体的な回路構成について説明する。
まず、差動増幅回路110は、差動対を構成する第3及び第4のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q3」、「Q4」と表記)3,4と、アクティブ負荷を構成する第5及び第6のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q5」、「Q6」と表記)5,6を主たる構成要素として構成されている。
なお、本発明の実施の形態においては、第3及び第4のトランジスタ3,4にPNP型バイポーラトランジスタが、第5及び第6のトランジスタ5,6には、NPN型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0049】
第3及び第4のトランジスタ3,4は、エミッタが相互に接続されると共に、PNP型バイポーラトランジスタを用いた第112のトランジスタ(
図2においては「Q112」と表記)32のコレクタに接続されている。そして、この第112のトランジスタ32のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
【0050】
一方、第5及び第6のトランジスタ5,6は、カレントミラー接続されて設けられている。
すなわち、第5及び第6のトランジスタ5,6は、ベースが相互に接続されると共に、第5のトランジスタ5のコレクタと接続されて、第5のトランジスタ5は、いわゆるダイオード接続されて設けられている。
第5のトランジスタ5のコレクタには、第3のトランジスタ3のコレクタが、第6のトランジスタ6のコレクタには、第4のトランジスタ4のコレクタが、それぞれ接続されている。また、第5及び第6のトランジスタ5,6のエミッタには、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
【0051】
次に、第1及び第2のレベルシフト回路111,112は、反転入力端子(
図2においては「INM」と表記)61と非反転入力端子(
図2においては「INP」と表記)62に入力される入力信号のダイナミックレンジの下限レベルを負電源端子の電位以下に拡大する機能を果たすものである。
第1のレベルシフト回路111は、第1のトランジスタ(
図2においては「Q1」と表記)1と、第111のトランジスタ(
図2においては「Q111」と表記)31と、第1の入力抵抗器(
図2においては「Rin1」と表記)41とを有して構成されている。
【0052】
また、第2のレベルシフト回路112は、第2のトランジスタ(
図2においては「Q2と表記)2と、第113のトランジスタ(
図2においては「Q113」と表記)33と、第2の入力抵抗器(
図2においては「Rin2」と表記)42とを有して構成されている。いずれのレベルシフト回路111,112も基本的構成は同一である。
【0053】
なお、本発明の実施の形態においては、第1及び第2のトランジスタ1,2、並びに、第111及び第113のトランジスタ31,33には、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
【0054】
第1のトランジスタ1のエミッタは、第3のトランジスタ3のベースに接続されると共に、第111のトランジスタ31のコレクタに接続されている。そして、第111のトランジスタ31のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第1のトランジスタ1のコレクタは、負電源電圧VEEが印加される一方、ベースは、第1の入力抵抗器41を介して反転入力端子61に接続されている。
【0055】
第2のトランジスタ2のエミッタは、第4のトランジスタ4のベースに接続されると共に、第113のトランジスタ33のコレクタに接続されている。そして、第113のトランジスタ33のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第2のトランジスタ2のコレクタは、負電源電圧VEEが印加される一方、ベースは、第2の入力抵抗器42を介して非反転入力端子62に接続されている。
【0056】
第3のレベルシフト回路113は、第7のトランジスタ(
図2においては「Q7」と表記)7と第110のトランジスタ(
図2においては「Q110」と表記)30とを有して構成されている。この第3のレベルシフト回路113は、第5及び第6のトランジスタ5,6により構成されたアクティブ負荷に流れる電流の誤差をなくすために設けられたダミー回路である。
なお、本発明の実施の形態においては、第7のトランジスタ7及び第110のトランジスタ30に、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
【0057】
第7のトランジスタ7のエミッタは、第110のトランジスタ30のコレクタに接続され、第110のトランジスタ30のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第7のトランジスタ7のコレクタには、負電源電圧VEEが印加される一方、ベースは第5のトランジスタ5のコレクタに接続されている。
【0058】
第4のレベルシフト回路114は、第8のトランジスタ(
図2においては「Q8」と表記)8と第114のトランジスタ34とを有して構成されている。
なお、本発明の実施の形態において、第8のトランジスタ8及び第114のトランジスタ34には、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
第8のトランジスタ8のエミッタは、第114のトランジスタ34のコレクタに接続され、第114のトランジスタ34のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
【0059】
この第4のレベルシフト回路114は、アクティブ負荷となる第6のトランジスタ6のコレクタ・エミッタ電圧を、第5のトランジスタ5のコレクタ・エミッタ間電圧Vce(=Vbe:ベース・エミッタ間電圧)と同一電位にバイアスする機能を果たす。
【0060】
高利得増幅回路115は、ダーリントン接続された第9及び第10のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q9」、「Q10」と表記)9,10と、第115及び第117のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q115」、「Q117」と表記)35,37とを有して構成されている。
本発明に実施の形態において、第9及び第10のトランジスタ9,10には、NPN型バイポーラトランジスタが、第115及び第117のトランジスタ35,37には、PNP型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0061】
第9のトランジスタ9のベースは、第8のトランジスタ8のエミッタに接続される一方、エミッタは、第10のトランジスタ10のベースに接続されている。
また、第9のトランジスタ9のコレクタは、第115のトランジスタ35のコレクタに接続されており、この第115のトランジスタ35のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
【0062】
一方、第10のトランジスタ10のコレクタは、第117のトランジスタ37のコレクタに接続されており、この第117のトランジスタ37のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。
また、第10のトランジスタ10のエミッタは、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
そして、第10のトランジスタ10のコレクタは、次述する出力回路116の入力段に接続されている。
【0063】
出力回路116は、第15乃至第17のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q15」、「Q16」、「Q17」と表記)15~17と、第1及び第2の抵抗器(
図2においては、それぞれ「R1」、「R2」と表記)43,44とを有して構成されている。
本発明の実施の形態において、第15及び第16のトランジスタ15,16には、NPN型バイポーラトランジスタが、第17のトランジスタ17には、PNP型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0064】
正電源電圧VCCと負電源電圧VEEとの間に、正電源電圧VCC側から、第16のトランジスタ16、第2の抵抗器44、及び、第17のトランジスタ17が直列接続されて設けられている。
第16のトランジスタ16のベースには、この第16のトランジスタ16とダーリントン回路を構成する第15のトランジスタ15のエミッタが接続されると共に、第1の抵抗器43を介して第16のトランジスタ16のエミッタが接続されている。
【0065】
第15のトランジスタ15のコレクタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている一方、ベースは、高利得増幅回路115の第10のトランジスタ10のコレクタに接続されている。
なお、第15のトランジスタ15のベースと第8のトランジスタ8のベースとの間には、第15のトランジスタ15のベース側から、減衰抵抗器(
図2においては「RX11」と表記)49、位相補償用コンデンサ(
図2においては「C1」と表記)51の順で直列接続されて設けられている。
【0066】
過電流保護回路117は、第11乃至第14のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q11」、「Q12」、「Q13」、「Q14」と表記)11~14と、第116のトランジスタ(
図2においては「Q116」と表記)36とを有して構成されている。かかる過電流保護回路117は、出力回路116の第16のトランジスタ16に流れる電流の抑圧と、第9のトランジスタ9のコレクタ電流の制限を行うものである。本発明の実施の形態においては、出力段に設けられた第2の抵抗器44が、過電流保護回路117の検出用抵抗器として流用される構成となっている。
なお、本発明の実施の形態において、第11及び第116のトランジスタ11,36には、PNP型バイポーラトランジスタが、第12乃至第14のトランジスタ12~14には、NPN型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0067】
第12及び第13のトランジスタ12,13は、カレントミラー回路を構成している。
すなわち、第12及び第13のトランジスタ12,13のベースは相互に接続されると共に、第12のトランジスタ12のコレクタに接続されている一方、各々のエミッタには、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
【0068】
また、第12のトランジスタ12のコレクタは、第116のトランジスタ36のコレクタに接続され、第116のトランジスタ36のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている。さらに、第12のトランジスタ12のコレクタには、第11のトランジスタ11のベースが接続されている。
第11のトランジスタ11のエミッタは、第9のトランジスタ9のコレクタに接続される一方、第11のトランジスタ11のコレクタには、負電源電圧VEEが印加されるようになっている。
【0069】
また、第13のトランジスタ13のコレクタは、過電流検出用トランジスタである第14のトランジスタ14のベースと共に第16のトランジスタ16のエミッタに接続されている。
そして、第14のトランジスタ14のコレクタは、第15のトランジスタ15のベースに接続される一方、第14のトランジスタ14のエミッタは、第17のトランジスタ17のエミッタと共に出力端子63に接続されている。
【0070】
本発明の実施の形態における過電流保護回路117には、従来と異なり、次述するように高周波ノイズ対策回路122が設けられている。
すなわち、高周波ノイズ対策回路122は、第1のノイズ対策コンデンサ(
図2においては「CX2」と表記)53と、第2の抵抗器44とを有して構成されている。
第1のノイズ対策コンデンサ53と第2の抵抗器44は、並列接続状態とされて、その一端は第16のトランジスタ16のエミッタに、他端は出力端子63に、それぞれ接続されている。
【0071】
電流源回路118は、第109乃至第117のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q109」、「Q110」、「Q111」、「Q112」、「Q113」、「Q114」、「Q115」、「Q116」、「Q117」と表記)29~37と、定電流源回路120とを有して構成されている。
本発明の実施の形態において、第109乃至第117のトランジスタ29~37には、PNP型バイポーラトランジスタが用いられている。
【0072】
第109のトランジスタ29と、第110乃至第117のトランジスタ30~37は、カレントミラー回路を構成しており、入力段を構成する第109のトランジスタ29側から出力段となる第110乃至第117のトランジスタ30~37の各トランジスタに電流出力が得られるようになっている。
すなわち、第109のトランジスタ29のエミッタには、正電源電圧VCCが印加されるようになっている一方、ベースとコレクタとは相互に接続されて、その接続点と負電源電圧VEEとの間に定電流源120が設けられている。
そして、第109のトランジスタ29のベースは、第110乃至第117のトランジスタ30~37の各ベースと相互に接続されている。
【0073】
定電流源回路120は、第103乃至第108のトランジスタ(
図2においては、それぞれ「Q103」、「Q104」、「Q105」、「Q106」、「Q107」、「Q108」と表記)23~28と、電流源用第1乃至第3の抵抗器(
図2においては、それぞれ「R101」、「R102」、「R103」と表記)46~48を有して構成されている。
【0074】
この第1の回路構成例において、第103及び第104のトランジスタ23,24、並びに第107及び第108のトランジスタ27,28には、NPN型バイポーラトランジスタが、第105及び第106のトランジスタ25,26には、PNP型バイポーラトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0075】
第103のトランジスタ23は、第102のトランジスタ22と相互のコレクタ同士、相互のエミッタ同士が、それぞれ接続されており、エミッタ同士の接続点と負電源端子65との間には電流源用第2の抵抗器47が接続されている。
第102及び第103のトランジスタ22,23のコレクタ同士の接続点は、第105のトランジスタ25のベースに接続されると共に、電流源用第1の抵抗器46を介して第105のトランジスタ25のコレクタ及び第106のトランジスタ26のベースに接続されている。
【0076】
第105及び第106のトランジスタ25,26のエミッタは、共に正電源端子64に接続されている。
また、第103のトランジスタ23のベースは、第104のトランジスタ24のベースと相互に接続されると共に、第104のトランジスタ24のコレクタに接続されている。そして、第103のトランジスタ23と第104のトランジスタ24は、カレントミラー回路を構成している。
【0077】
第104のトランジスタ24のコレクタは、第106のトランジスタ26のコレクタに接続される一方、第104のトランジスタ24のエミッタは、電流源用第3の抵抗器48を介して第107のトランジスタ27のコレクタに接続されている。
また、第107のトランジスタ27のベースは、第104のトランジスタ24のエミッタに接続され、第107のトランジスタ27のコレクタには、第108のトランジスタ28のベースが接続されている。
【0078】
第107及び第108のトランジスタ27,28のエミッタは、共に負電源端子65に接続される一方、第108のトランジスタ28のコレクタは、第109のトランジスタ29のコレクタ及びベースに接続されている。
第109のトランジスタ29のエミッタは、正電源端子64に接続されている。この第109のトランジスタ29は、第110乃至第117のトランジスタ30~37と共にカレントミラー回路を構成している。
【0079】
次に、起動回路121は、起動用ダイオード(フィルタ用ダイオード)55と、起動用抵抗器(フィルタ用抵抗器)56と、第102のトランジスタ(
図2においては「Q102」と表記)22とを有して構成されている。
起動用ダイオード(
図2においては「DX1」と表記)55のアノードは、起動用抵抗器(
図2においては「RX1」と表記)56を介して正電源端子64に接続される一方、カソードは、負電源端子65に接続されている。
また、起動用ダイオード55のアノードには、第102のトランジスタ(起動用トランジスタ)22のベースが接続されている。
なお、第102のトランジスタ22には、NPN型バイポーラトランジスタが用いられている。
【0080】
ローパスフィルタ119は、フィルタ用抵抗器を兼ねる起動用抵抗器56と、フィルタ用ダイオードを兼ねる起動用ダイオード55と、フィルタ用コンデンサ(
図2においては「CX1」と表記)52とを有して構成されており、起動回路121の起動用抵抗器56と起動用ダイオード55を流用する構成となっている。
【0081】
次に、過電流保護回路117の動作について説明する。
ここでは、高周波外来ノイズの電源ラインへの混入が無い正常時における動作について説明する。
高周波外来ノイズの電源ラインへの混入が無い正常における過電流保護回路117の動作は、従来同様であるので、以下、概括的に説明する。
過電流保護回路117は、第2の抵抗器44に流れる電流Ioutが下記する式2の条件を満たすまで増加した際にON状態となる。
【0082】
Vbe(Q14)=R2×Iout・・・式2
【0083】
ここで、Vbe(Q14)は、過電流検出用トランジスタである第14のトランジスタ14のベース・エミッタ間電圧であって、具体的には、約0.6Vである。
また、R2は、第2の抵抗器44の抵抗値、Ioutは、第2の抵抗器44を流れる出力電流の電流値である。
出力電流Ioutが増加し、式2の条件を満たす状態となった際に、第14のトランジスタ14のコレクタ電流IcQ14が流れ、第15のトランジスタ15のベース電流IbQ15が制限されることとなる。
【0084】
その結果、第15のトランジスタ15とダーリントン接続された第16のトラジスタ16のエミッタ電流は、式2を満たす出力電流Ioutを越える大きな電流を流せなくなり、過電流保護が図られることとなる。
かかる動作を有する過電流保護回路117の回路構成は、フィードバック回路が構成されたものとなっている。
【0085】
次に、高周波ノイズ対策回路122を構成する第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値CX2の選定について説明する。
第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値CX2は、下記する式3の条件を満たすものを選択するのが好適である。
【0086】
CX2>1/(2π×21/2×fc×R2)・・・式3
【0087】
ここで、CX2は第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値、fcは除去する高周波ノイズの周波数、R2は第2の抵抗器44の抵抗値である。
かかる容量値の第1のノイズ対策コンデンサ53を用いることで、過電流保護回路117の検出抵抗のインピーダンスZが引き下げられ、高周波領域での過電流保護回路117の過電流検出の感度が低下し、動作し難くなる。そのため、高周波ノイズの混入に起因して過電流保護回路117が安易に動作することがなく、従来と異なり、出力電流の不用意な低下を招くようなことが抑圧、防止されることとなる。
上述のインピーダンスZは、下記する式4で表される。
【0088】
Z=1/{(1/R2)2+(2π・fc・CX2)2}1/2・・・式4
【0089】
ここで、Zは過電流保護回路117の検出抵抗の合成インピーダンスの大きさ、R2は第2の抵抗器44の抵抗値、fcは除去を望む高周波ノイズの周波数、CX2は第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値である。なお、過電流保護回路117の検出抵抗は、第2の抵抗器44と第1のノイズ対策コンデンサ53との並列接続部分を意味する。
【0090】
図5には、第2の抵抗器44の抵抗値を一定の値とし、第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値を種々変えた場合の式4で示される検出抵抗の合成インピーダンスZの周波数変化に対する変化特性例が示されており、以下、同図について説明する。
図5においては、第2の抵抗器44の抵抗値を15Ωとした場合に、第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値CX2を、CX2=5pF、CX2=10pF、CX2=15pFとした場合の、それぞれの合成インピーダンスZの周波数変化を示す特性線が示されている。
【0091】
いずれの場合も、遮断、低減の対象とする高周波ノイズの周波数が高くなるにつれて、インピーダンスZが容量値に応じた変化率で低下してゆくものとなっていることが確認できる。
したがって、このような容量値と合成インピーダンスZとの相関関係を考慮しつつ、遮断の対象とする高周波ノイズ周波数に応じて、第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値を適宜選定することが重要となる。
【0092】
図6には、
図2に示された回路構成において、第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値CX2を14pFとし、先に
図15に示された検証回路を用いて計測された電源ラインへのAC入力電力の変化に対する出力電圧Voutの変化特性例が示されており、以下、同図について説明する。
【0093】
図6において、第1の回路構成(実施例1)の特性例が実線の特性線により、従来回路(
図17参照)の特性例が点線の特性線により、それぞれ示されている。
なお、AC電圧源RFの出力周波数は0.61GHzである。
【0094】
従来回路の場合、AC電圧源RFの入力電力PinがPin=29dBmまでしか出力電圧Voutを一定保つことができなかった(
図6の点線の特性線参照)。
これに対して、第1の回路構成(実施例1)にあっては、入力電力PinがPin=31dBmまで出力電圧Voutを一定値6Vに保つことができるものとなっていることが確認できる(
図6の実線の特性線参照)。
【0095】
このような顕著な効果は、先に述べたように、第1のノイズ対策コンデンサ53と第2の抵抗器44とを並列接続状態で設けることで、過電流保護回路117の高周波領域での合成インピーダンスを低下させ、高周波領域で過電流保護回路117を動作し難くしたことによるものである。
一方、直流レベルでの過電流保護回路117の電流リミット値Ioutrは、第1のノイズ対策コンデンサ53を設ける以前と変わらない。
ここで、電流リミット値Ioutrは、過電流保護回路117が第2の抵抗器44に流れる電流が過電流であるとする際の電流値である。
【0096】
図9には、回路構成毎の電流リミット値を説明する説明図が示されているが、同図によれば、上述した第1の回路構成(実施例1)、また、後述する第2及び第3(実施例2及び実施例3)の回路構成、さらに、従来回路のいずれにおいても電流リミット値は変わらないことが確認できる。なお、
図9における従来回路は、
図17に示された回路構成のものである。
このように電流リミット値が変わらないのは、直流レベルでは第1のノイズ対策コンデンサ53のインピーダンスは無限大と近似できるためである。
過電流保護回路117の電流リミット値Ioutrが変わらないことで、出力電流Ioutを所望の電流値以下に抑制することができ、過電流による回路焼損などのクリティカルな問題発生を防止することが可能となる。
【0097】
したがって、本発明の実施の形態の回路構成を採ることで、高周波ノイズ対策に起因して直流レベルでの過電流保護回路117の電流リミット値を変化させることなく、電源ラインに混入する高周波ノイズに対して出力電圧の変動を抑制する演算増幅器を提供することが可能となる。
【0098】
なお、この第1の回路構成例において、第1のノイズ対策コンデンサ53を、第14のトランジスタ14のベース・エミッタ間のPN接合により生ずる寄生容量に代替させても良い。この場合、第1のノイズ対策コンデンサ53の素子面積を確保する必要がなくなるため、チップ面積の縮小化を図ることが可能となる。
【0099】
次に、第2の回路構成例について、
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、次述する構成の高周波ノイズ対策回路122Aが設けられたものである。この高周波ノイズ対策回路122Aは、ノイズ対策抵抗器(
図3においては「RX2」と表記)57と第2のノイズ対策コンデンサ(
図3においては「CX3」と表記)54とを有して次述するように構成されたものとなっている。
【0100】
ノイズ対策抵抗器57は、その一端が第14のトランジスタ14のベースに接続され、他端は第16のトランジスタ16のエミッタ、換言すれば、第16のトランジスタ16のエミッタと第2の抵抗器44との接続点に接続されている。
また、第2のノイズ対策コンデンサ54は、その一端が第14のトランジスタ14のベースに、他端が第14のトランジスタ14のエミッタに、それぞれ接続されたものとなっている。
【0101】
次に、かかる構成における動作等について説明する。
この第2の回路構成は、過電流保護回路117において、第2の抵抗器44を介して出力電流値の検出を行う第14のトランジスタ14のベースとエミッタ間の電圧に、ノイズ対策抵抗器57と第2のノイズ対策コンデンサ54によるローパスフィルタによるフィルタリングが施されるものとなっている。
【0102】
ノイズ対策抵抗器57と第2のノイズ対策コンデンサ54の各々の大きさは、下記する式5の条件を満たすものとする。
【0103】
fc>1/(2π×CX3×RX2)・・・式5
【0104】
ここで、fcは除去する高周波ノイズの周波数、CX3は第2のノイズ対策コンデンサ54の容量値、RX2はノイズ対策抵抗器57の抵抗値である。
【0105】
図7には、
図3に示された回路構成において、ノイズ対策抵抗器57の抵抗値RX2をRX2=1KΩ、第2のノイズ対策コンデンサ54の容量値CX3をCX3=4pFとし、先に
図15に示された検証回路を用いて計測された電源ラインへのAC入力電力の変化に対する出力電圧Voutの変化特性例が示されており、以下、同図について説明する。
【0106】
図7において、第2の回路構成(実施例2)の特性例が実線の特性線により、従来回路(
図17参照)の特性例が点線の特性線により、それぞれ示されている。
なお、AC電圧源RFの出力周波数は0.61GHzである。
【0107】
従来回路の場合、AC電圧源RFの入力電力PinがPin=29dBmまでしか出力電圧Voutを一定保つことができなかった(
図7の点線の特性線参照)。
これに対して、第2の回路構成(実施例2)にあっては、入力電力PinがPin=32dBmまで出力電圧Voutを一定値6Vに保つことができるものとなっていることが確認できる(
図7の実線の特性線参照)。
【0108】
このような顕著な効果が生ずるのは、先に述べたように、第2のノイズ対策コンデンサ54とノイズ対策抵抗器57とを設けることで、第14のトランジスタ14のベース・エミッタ間の電圧に対して、第2のノイズ対策コンデンサ54とノイズ対策抵抗器57とによるローパスフィルタによるフィルタリング(ローパスフィルタ作用)が施されることとなるためである。すなわち、上述のローパスフィルタ作用により、第14のトランジスタ14が高周波信号に対して反応し難くなり、高周波領域で過電流保護回路117が動作し難くなる、すなわち、換言すれば、高周波領域での過電流保護回路117の過電流検出感度が低下するためである。
【0109】
一方、直流レベルでの過電流保護回路117の電流リミット値Ioutrは、第2のノイズ対策コンデンサ54及びノイズ対策抵抗器57を設ける以前と変わらない(
図9参照)。
したがって、この第2の回路構成にあっても、第1の回路構成と同様に、高周波ノイズ対策に起因して直流レベルでの過電流保護回路117の電流リミット値を変化させることなく、電源ラインに混入する高周波ノイズに対して出力電圧の変動を抑制する演算増幅器を提供することが可能となる。
【0110】
なお、第2のノイズ対策コンデンサ54を設けることに代えて、第14のトランジスタ14のベース・エミッタ間のPN接合により生ずる寄生容量に代替させても良い。この場合、第2のノイズ対策コンデンサ54の素子面積を確保する必要がなくなるため、チップ面積の縮小化を図ることが可能となる。
【0111】
次に、第3の回路構成例について、
図4を参照しつつ説明する。
なお、
図1、
図2又は
図3に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の回路構成例は、
図2に示された第1の回路構成における高周波ノイズ対策回路122の構成と
図3に示された第2の回路構成における高周波ノイズ対策回路122Aの構成の双方を備えたものである。
【0112】
すなわち、第3の回路構成例における高周波対策回路122Bは、第2の抵抗器44と、第1のノイズ対策コンデンサ53と、ノイズ対策抵抗器57と、第2のノイズ対策コンデンサ54とを有して構成されたものとなっている。
以下、具体的に説明すれば、まず、第2の抵抗器44は、第16のトランジスタ16のエミッタと第17のトランジスタ17のエミッタ間に直列接続されて設けられて、この第2の抵抗器44と第1のノイズ対策コンデンサ53が並列接続されている点は、基本的に第1の回路構成で説明した構成と同一である。
かかる構成により、第14のトランジスタ14における検出抵抗の合成インピーダンスは、第1の回路構成と同様に引き下げられ、高周波領域で過電流保護回路117が動作し難くなる。
【0113】
また、ノイズ対策抵抗器57が第14のトランジスタ14のベースと第16のトランジスタ16のエミッタ間に直列接続されて設けられ、第2のノイズ対策コンデンサ54が第14のトランジスタ14のベースとエミッタ間に接続されてローパスフィルタとして機能する点も、基本的に第2の回路構成で説明した構成と同一である。
【0114】
したがって、第2の回路構成同様、第14のトランジスタ14のベースとエミッタ間の電圧に対するローパスフィルタ作用により、高周波領域で過電流保護回路117が動作し難くなる。
この第3の回路構成例は、ローパスフィルタ作用と、第14のトランジスタ14の検出抵抗の合成インピーダンスの低下の2つのが機能するため、第1の回路構成、又は、第2の回路構成のいずれかを採る場合に比して、より高い高周波外来ノイズ耐性を確保可能となっている。
【0115】
図8には、この第3の回路構成における演算増幅器の電源ラインへのAC入力電力の変化に対する出力電圧Voutの変化特性例が示されており、以下、同図について説明する。
図8に示された特性例は、ノイズ対策抵抗器57の抵抗値RX2をRX2=1KΩ、第1のノイズ対策コンデンサ53の容量値CX2をCX2=14pF、第2のノイズ対策コンデンサ54の容量値CX3をCX3=4pFとし、先に
図15に示された検証回路を用いて計測されたものである。
【0116】
図8において、第3の回路構成(実施例3)の特性例が実線の特性線により、従来回路(
図17参照)の特性例が点線の特性線により、それぞれ示されている。
いずれの特性例も、AC電圧源RFの出力周波数は0.61GHzで、AC電圧源RFの入力電力Pinを変化させた場合の出力電圧Voutの変動特性を示したものである。
【0117】
従来回路の場合、RF入力電力PinがPin=29dBmまでしか出力電圧Voutを一定保つことができなかった(
図8の点線の特性線参照)。
これに対して、第3の回路構成(実施例3)にあっては、RF入力電力PinがPin=33dBmまで出力電圧Voutを一定値6Vに保つことができるものとなっていることが確認できる(
図8の実線の特性線参照)。
一方、直流レベルでの過電流保護回路117の電流リミット値Ioutrは、ノイズ対策抵抗器57、第1及び第2のノイズ対策コンデンサ53,54を設ける以前と変わらない(
図9参照)。この
図9の測定例の場合、電流リミット値Ioutrは45mAで一定している。
【0118】
なお、この第3の回路構成例においても、先の第2の回路構成例の場合と同様、第2のノイズ対策コンデンサ54を、第14のトランジスタ14のベース・エミッタ間のPN接合により生ずる寄生容量に代替させても良い。
【産業上の利用可能性】
【0119】
過電流保護回路の出力電流値の不要な増加を招くことなく、電源ラインへの高周波外来ノイズの混入に対して安定した出力特性が所望される演算増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0120】
44…第2の抵抗器
53…第1のノイズ対策コンデンサ
54…第2のノイズ対策コンデンサ
57…ノイズ対策抵抗器
117…過電流保護回路
122…高周波ノイズ対策回路