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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039093
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ゼリー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20220303BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220303BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20220303BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20220303BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20220303BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20220303BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20220303BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20220303BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20220303BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 Z
A23L2/00 D
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/281
A23L29/231
A23L29/244
A23L29/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143927
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆将
【テーマコード(参考)】
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B041LC01
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK07
4B041LK19
4B041LP01
4B041LP03
4B041LP16
4B117LC03
4B117LE05
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK08
4B117LK13
4B117LK16
4B117LL09
4B117LP14
4B117LP16
4B117LP17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クエン酸等の酸味成分を多量に配合した場合であっても、酸味成分に由来する過度な刺激感を抑制し、飲用時に良好な酸味を感じることのできるゼリー飲料、および酸味を有するゼリー飲料の酸味抑制方法の提供。
【解決手段】酸味成分を含み、粘度が700mPa・s以上であり、酸度が0.5~3.0、pHが3~4.6であって、寒天、脱アシルジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ペクチン、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含む、スパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸味成分を含み、以下の測定方法で測定した粘度が700mPa・s以上である、スパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料。
<測定方法>
(1)スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー飲料を、品温を20℃に保持する。
(2)前記スパウト付きパウチ容器からゼリー飲料を押し出し、ステンレスビーカー(口径:80mm、高さ:110mm、容量:500ml)に前記ゼリー飲料を180g量り取る。
(3)ホモミクサーMARK II 2.5型(PRIMIX社製)を用いて、前記ゼリー飲料を1,000rpmで30秒間攪拌する。
(4)前記撹拌処理後のゼリー飲料の全量を、トールビーカー(口径:50mm、高さ:120mm、容量:200ml)に入れ、B型粘度計を用いて、ローターNo.3、回転数60rpmで1分間撹拌した際の粘度(品温20℃)を測定する。
【請求項2】
酸度が0.5~3.0である、請求項1に記載のゼリー飲料。
【請求項3】
酸度が1.0~3.0である、請求項1に記載のゼリー飲料。
【請求項4】
pHが3~4.6である、請求項1~3の何れか一項に記載のゼリー飲料。
【請求項5】
寒天、脱アシルジェランガム、カラナギン、キサンタンガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ペクチン、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含む、請求項1~4の何れか一項に記載のゼリー飲料。
【請求項6】
酸味を有するゼリー飲料の酸味抑制方法であって、
以下の測定方法で測定したゼリー飲料の粘度が700mPa・s以上となるように、前記ゼリー飲料の組成を調節することを特徴とする、スパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料の酸味抑制方法。
<測定方法>
(1)スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー飲料を、品温を20℃に保持する。
(2)前記スパウト付きパウチ容器からゼリー飲料を押し出し、ステンレスビーカー(口径:80mm、高さ:110mm、容量:500ml)に前記ゼリー飲料を180g量り取る。
(3)ホモミクサーMARK II 2.5型(PRIMIX社製)を用いて、前記ゼリー飲料を1,000rpmで30秒間攪拌する。
(4)前記撹拌処理後のゼリー飲料の全量を、トールビーカー(口径:50mm、高さ:120mm、容量:200ml)に入れ、B型粘度計を用いて、ローターNo.3、回転数60rpmで1分間撹拌した際の粘度(品温20℃)を測定する。
【請求項7】
寒天、脱アシルジェランガム、カラナギン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ペクチン、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を添加することにより、前記ゼリー飲料の組成を調節することを特徴とする、請求項6に記載のスパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料の酸味抑制方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強い酸味が抑制され、良好な酸味を有するゼリー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性成分を含む飲食品が日々開発されている。中でもクエン酸は、疲労回復効果が期待される機能性成分として広く用いられている。しかし、クエン酸やレモン果汁等の酸味料を多量に配合した飲料は、酸味の刺激感が強く、飲用に適さないという問題がある。
【0003】
このような課題に対して、ゼリー飲料のゲル強度を一定の範囲とすることにより、ほどよい酸味を有するゼリー飲料が開発されている。特許文献1には、酸度が0.7~1.5(w/v%)、ゲル強度が40~90(g)であるゼリー飲料が、口中にてレモンの風味やフレーバーを、まろやかさと酸味、さらに刺激とのバランスを備えて感じることができると記載されている。
【0004】
また、多糖類等の増粘剤を添加することで、飲食品の酸味を抑制する技術も開発されている。
例えば、特許文献2には、多糖を添加して粘度を調節することにより酢の刺激感を抑制する方法が開示されている。特許文献3には、増粘剤を添加することにより麦芽飲料の呈味を改善する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-148011号公報
【特許文献2】特開2018-61510号公報
【特許文献3】特開2014-55号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ゼリー飲料は手軽に喫食することを目的とし、スパウト付きパウチ容器に充填されたものが販売されている。このようなゼリー飲料は、容器本体を圧縮するか、又はスパウト部分を吸引するだけで容器から取り出すことができ、手軽に摂取することができる。
【0007】
しかしながら、スパウト部分から吸い出されたゼリー飲料は、スパウトを通過する過程で粗い粒子状となり、さらに口内での温度上昇や咀嚼等によって粘度が低下し、結果として酸味を感じやすくなるといった問題があった。特に多量の酸味料を配合した場合、スパウト付きパウチ容器から摂取したゼリー飲料は、酸味に由来する強い刺激感が生じ、嗜好性の観点からは良好とは言い難かった。
【0008】
そこで、本発明者らは、スパウト付きパウチ容器入りのゼリー飲料において、容器から押し出され、口内に入れた際のゼリー飲料の粘度変化に着目し、飲用時の過度な酸味を抑制するために必要な粘度を特定するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、クエン酸等の酸味成分を多量に配合した場合であっても、酸味成分に由来する過度な刺激感を抑制し、飲用時に良好な酸味を感じることのできるゼリー飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記事情に鑑みなされた本発明は、酸味成分を含み、以下の測定方法で測定した粘度が700mPa・s以上である、スパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料である。
<測定方法>
(1)スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー飲料を、品温を20℃に保持する。
(2)前記スパウト付きパウチ容器からゼリー飲料を押し出し、ステンレスビーカー(口径:80mm、高さ:110mm、容量:500ml)に前記ゼリー飲料を180g量り取る。
(3)ホモミクサーMARK II 2.5型(PRIMIX社製)を用いて、前記ゼリー飲料を1,000rpmで30秒間攪拌する。
(4)前記撹拌処理後のゼリー飲料の全量を、トールビーカー(口径:50mm、高さ:120mm、容量:200ml)に入れ、B型粘度計用いて、ローターNo.3、回転数60rpmで1分間撹拌した際の粘度(品温20℃)を測定する。
このような形態を有するゼリー飲料は、飲用時に優れた風味及び食感を有する。
【0011】
本発明の好ましい形態では、酸度が0.5~3.0である。
このような形態とすることで、良好な酸味を感じるゼリー飲料を得ることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、酸度が1.0~3.0である。
このような形態とすることで、良好な酸味を感じると共に、酸味成分を多量に摂取することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、pHが3~4.6である。
このような形態とすることで、安定した酸味を感じることができ、さらに衛生安全性に優れる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、寒天、脱アシルジェランガム、カラナギン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ペクチン、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含む。
このような形態とすることで、ゼリー飲料に適度な粘度を付与し、ゼリー飲料の酸味を低減することができる。
【0015】
また、本発明は、酸味を有するゼリー飲料の酸味抑制方法であって、
以下の条件で測定したゼリー飲料の粘度が700mPa・s以上となるように、前記ゼリー飲料の組成を調節することを特徴とする、スパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料の酸味抑制方法である。
<測定方法>
(1)スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー飲料を、品温を20℃に保持する。
(2)前記スパウト付きパウチ容器からゼリー飲料を押し出し、ステンレスビーカー(口径:80mm、高さ:110mm、容量:500ml)に前記ゼリー飲料を180g量り取る。
(3)ホモミクサーMARK II 2.5型(PRIMIX社製)を用いて、前記ゼリー飲料を1,000rpmで30秒間攪拌する。
(4)前記撹拌処理後のゼリー飲料の全量を、トールビーカー(口径:50mm、高さ:120mm、容量:200ml)に入れ、B型粘度計を用いて、ローターNo.3、回転数60rpmで1分間撹拌した際の粘度(品温20℃)を測定する。
本発明の酸味抑制方法を用いることにより、飲用時におけるゼリー飲料の酸味を抑制することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、寒天、脱アシルジェランガム、カラナギン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ペクチン、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を添加することにより、前記ゼリー飲料の組成を調節する。
このようにゼリー飲料の組成を調節することで、ゼリー飲料に適度な粘度を付与し、ゼリー飲料の酸味を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酸味成分に由来する過度な刺激感が抑制され、飲用時に良好な酸味を感じるゼリー飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験例1における、スパウト付きパウチ容器から押し出した直後のゼリー飲料の粉砕状態を示す図である。
図2】試験例1における、嚥下直前のゼリー飲料の粉砕状態を示す図である。
図3】試験例1における、ホモミクサーを用いて1,000rpmで30秒撹拌処理後のゼリー飲料の粉砕状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、特許請求の範囲に記載された範囲内において適宜変更が可能である。
【0020】
本発明のゼリー飲料は、多糖類やゼラチン等を含む高分子原料のネットワークに水が保持された組織を主とし、全体として弾力性及び保形性を有する。
【0021】
また、本発明のゼリー飲料は酸味成分を含有し、飲用時に良好な酸味を有するゼリー飲料である。
【0022】
本発明のゼリー飲料は、ゼリー飲料を一定条件で撹拌処理したときの粘度が700mPa・s以上である。
当該攪拌処理条件は、下記の試験例1に示すように、ゼリー飲料の通常の摂取動作によって得られる内容物の粉砕状態の代表的な例に相当する。
【0023】
本発明のゼリー飲料の粘度の測定は、以下の手順に従って行う。
(1)スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー飲料を、品温を20℃に保持する。
(2)前記スパウト付きパウチ容器からゼリー飲料を押し出し、ステンレスビーカー(口径:80mm、高さ:110mm、容量:500ml)に前記ゼリー飲料を180g量り取る。
(3)ホモミクサーMARK II 2.5型(PRIMIX社製)を用いて、前記ゼリー飲料を1,000rpmで30秒間攪拌する。
(4)前記撹拌処理後のゼリー飲料の全量を、トールビーカー(口径:50mm、高さ:120mm、容量:200ml)に入れ、B型粘度計(東京計器(株)製)を用いて、ローターNo.3、回転数60rpmで1分間撹拌した際の粘度(品温20℃)を測定する。
【0024】
本発明のゼリー飲料の撹拌処理後の粘度は、700mPa・s以上、より好ましくは800mPa・s以上、特に好ましくは1000mPa・s以上である。
このような粘度を有するゼリー飲料は、飲用時に過度な酸味を抑制することができる。
【0025】
本発明のゼリー飲料の撹拌処理後の粘度は、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下である。
このような粘度を有するゼリー飲料は、スパウト付きパウチ容器から容易に飲用することができる。
【0026】
本発明のゼリー飲料の酸度の下限値は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1.0以上である。
酸度が下限値以上であることで、飲用時に好ましい酸味を感じることができる。
なお、本発明における酸度とはクエン酸換算酸度(w/w%)のことであり、中和滴定(果実飲料の日本農林規格第25条)により測定することができる。
【0027】
本発明のゼリー飲料の酸度の上限値は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。
酸度が上限値以下であることで、飲用に適した好ましい酸味を感じることができる。
【0028】
本発明のゼリー飲料に用いられるスパウト付きパウチ容器としては、例えば、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態であることが好ましい(特許3663084号、特許3477396号、特許3659775号参照)。
【0029】
本発明のスパウト付きパウチ容器は、容量が好ましくは50~500mL、より好ましくは80~300mL、さらに好ましくは100~200mLである。
また、本発明のスパウト付き容器のスパウトは、パウチ内部まで侵入したストローを有していることが好ましく、ストローの経口部の外径が好ましくは5~20mm、より好ましくは10~15mmであり、ストローの全長は好ましくは50~300mm、より好ましくは80~100mmである。
さらに、本発明のスパウト付き容器におけるストロー部分の形状は特定されないが、円柱状であることが好ましい。
【0030】
以下、本発明のゼリー飲料に含まれる各成分について好ましい形態を説明する。
なお、本明細書における各成分の含有量(濃度)は、容器内に収容される組成物(可食部分)の質量を示し、容器の質量は含まないものとする。
【0031】
本発明のゼリー飲料は、酸味を有する酸味成分を含む。酸味成分の配合量を調節することで、ゼリー飲料の酸度を調節することができる。
酸味成分としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イタコン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸、アスコルビン酸(ビタミンC)、リン酸等が挙げられ、特にクエン酸を配合することが好ましい。
【0032】
また、本発明のゼリー飲料の酸味成分としてレモン果汁等の柑橘類の果汁を用いても良く、果汁は透明果汁と混濁果汁の何れであってもよい。
【0033】
酸味成分としてクエン酸を配合する場合、酸味成分の含有量は、0.5~3.0質量%が好ましく、0.7~2.5質量%がより好ましく、1.5~2.5質量%がさらに好ましい。
また、酸味成分としてアスコルビン酸を配合する場合、酸味成分の含有量は、1.0~9.0質量%が好ましく、1.5~5.0質量%が好ましく、3.0~4.5質量%がさらに好ましい。
酸味成分の含有量を上記範囲内とすることで、酸味成分に由来する清涼感及び適度な刺激感を有するゼリー飲料を得ることができる。
【0034】
また、本発明のゼリー飲料は、ゲル化剤を含む。
本発明に用いるゲル化剤としては、グルコマンナン、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドガム、グアガム、寒天、脱アシルジェランガム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、及びペクチンから選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
【0035】
本発明のゼリー飲料においては、寒天、カラギナン、脱アシルジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ペクチン、ゼラチンから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、寒天、カラギナン、脱アシルジェランガムから選ばれる1種又は2種以上を用いることがより好ましく、このうち、カラギナンとしてはカッパカラギナン(k-カラギナン)を用いることが好ましい。
このようなゲル化剤を用いることで、ゼリーとしての食感と飲料としての食感の両方を楽しむことができ、また、スパウト付きパウチ容器から喫食するのに適した物性とすることができる。
【0036】
本発明のゼリー飲料におけるゲル化剤の含有量は、ゲル化剤の種類に応じて、前記条件での攪拌時に、ゼリー飲料が前記粘度となるように適宜調整することができる。基本的には、ゲル化剤は量を増やすことで、前記条件での攪拌時の粘度が高まるという関係にある。
【0037】
ゲル化剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。
ゲル化剤の含有量が下限以上であることで、ゼリー飲料に適した食感が得られる。
【0038】
ゲル化剤の含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
ゲル化剤の含有量が上限以下であることで、ゼリー飲料として飲みやすい食感が得られる。
【0039】
寒天の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。
寒天の含有量が下限以上であることで、ゼリー飲料に適した食感が得られる。
【0040】
寒天の含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下である。
寒天の含有量が上限以下であることで、ゼリー飲料として飲みやすい食感が得られる。
【0041】
k-カラギナンの含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。
k-カラギナンの含有量が下限以上であることで、ゼリー飲料に適した食感が得られる。
【0042】
k-カラギナンの含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
k-カラギナンの含有量が上限以下であることで、ゼリー飲料として飲みやすい食感が得られる。
【0043】
脱アシルジェランガムの含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。
脱アシルジェランガムの含有量が下限以上であることで、ゼリー飲料に適した食感が得られる。
【0044】
脱アシルジェランガムの含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
脱アシルジェランガムの含有量が上限以下であることで、ゼリー飲料として飲みやすい食感が得られる。
【0045】
本発明のBrix値の範囲は、好ましくは5~40、より好ましくは5~30、さらに好ましくは10~25である。
Brix値をこのような範囲とすることで、酸味成分に起因する過度の刺激感が抑制され、良好な酸味を付与することができる。
【0046】
なお、ゼリー飲料のBrix値を算出する方法としては、糖度計を用いてBrix値を測定する方法を挙げることができる。また、屈折計を用いてBrix値を算出する方法、ゼリー飲料中の糖分の濃度をBrix値検量線に照らしてBrix値を定める方法、等を挙げることができる。
【0047】
ここで、ゼリー飲料のBrix値は、ゼリー飲料中の糖質の含有量を調整することで、調節することができる。
【0048】
本発明のゼリー飲料は、その含水量が好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
また、本発明のゼリー飲料は、その含水量が90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
含水率を前記範囲とすることで、過度な刺激感が抑制された良好な酸味を付与することができる。
【0049】
本発明のゼリー飲料は、その離水率が好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
離水率を前記範囲とすることで、過度な刺激感が抑制された良好な酸味を付与することができる。
【0050】
離水率は、以下のような方法により算出することができる。
パウチ容器を解袋し、ゼリー飲料をゲルが崩れないように取り出して、18メッシュ(目開き:0.85mm)の篩上に静かに置き、1分後の篩下に落ちた離水量A(単位:g)を測定することにより、次式により算出することができる。
・離水率(%)=(A/180(パウチ容器に充填した量(単位:g))×100
【0051】
なお、本発明のゼリー飲料は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常ゼリー飲料に用いられる他の成分を任意に配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、ゼリー飲料添加物、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、各種ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤等のほか、乳原料、食物繊維、安定剤などが挙げられる。
【0052】
また、得られるゼリー飲料のpHが3.0~4.6、より好ましくは3.0~4.0となるように配合されることが好ましい。得られるゼリー飲料のpHが4.6以下とすることで、微生物の繁殖を抑えることができるため、衛生上好ましい。
【0053】
以下、本発明のゼリー飲料の製造方法について、説明する。
なお、各成分や物性、包装の好ましい形態は、前述した本発明のゼリー飲料の説明がそのままあてはまる。
【0054】
(1)調製工程
調製工程は、ゼリー飲料の原料を調製する工程である。
この際、本発明では、酸味成分と、ゲル化剤とを配合することを含む。そして、本発明では、前述した特定の条件で測定した、ゼリー飲料の粘度(品温20℃)が、700mPa・s以上、より好ましくは800mPa・s以上、さらに好ましくは1000mPa・s以上となるようにゼリー飲料の組成を調製することを含む。前記組成は、上述のように、ゲル化剤の種類、含有量等を調節することにより調製することができる。
【0055】
(2)充填工程
充填工程は、調製したゼリー飲料をスパウト付きパウチ容器に充填する工程である。
スパウト付きパウチ容器へのゼリー飲料の充填操作は、例えば本出願人による特許第3527019号公報や、特開平11-157502号公報などに記載された方法によって行うことができる。
【0056】
ここで、本発明のゼリー飲料の製造方法においては、上記(1)、(2)の工程を含むものであれば、充填工程後に加熱後冷却するといった方法、調製工程後のゼリー飲料を一旦加熱した後、スパウト付きパウチ容器に充填し冷却する方法、加熱を経ない方法の何れの方法を含む。
ここで、加熱する場合には、加熱温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。このような加温温度とすることで、高い殺菌効果を得ることができる。
【0057】
また、本発明は、飲用時におけるゼリー飲料の粘度を700mPa・s以上となるようにゼリー飲料の物性を調節することを特徴とする、スパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料の酸味抑制方法である。
【0058】
本発明の酸味抑制方法における粘度の測定は、上述のスパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料と同様に、スパウト付きパウチ容器入りゼリー飲料を一定条件で撹拌処理したときの粘度を測定する方法を採用する。
【0059】
本発明の酸味抑制方法において、ゼリー飲料の粘度の調節は、配合する成分を調節することによって行うことができ、例えば、上述のように、ゲル化剤の含有量、組み合わせ、含有比等を調節することによって行うことができる。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
[試験例1]嚥下直前のゼリー飲料と、ホモミクサーで撹拌処理後のゼリー飲料の比較
嚥下直前のゼリーの粉砕状態を再現するために、以下の市販のゼリー飲料を用いて、実際に口内に含んだ後のゼリーの粉砕状態と、ホモミクサーを用いて撹拌処理後のゼリーの粉砕状態の比較を行った。
<使用した市販のゼリー飲料>
(a)製品名:inゼリー プロテイン(本出願人製品)
(b)製品名:inゼリー マルチビタミン カロリーゼロ(本出願人製品)
また、上記製品(a)及び(b)に用いられている容器は、以下の規格のものであった。
(a)及び(b)のスパウト付きパウチ容器
寸法(ゼリー飲料を充填前の折りたたまれた状態):80.0(幅)×54.0(折込)×135.00mm(高さ)
容量:180g、ストローの外径:13.2mm、ストローの全長:79mm
【0062】
以下、ゼリー飲料の比較方法について説明する。
上記の市販のゼリー飲料をスパウト付きパウチ容器から押し出し、円形容器内に取り出した。押し出したゼリー飲料の状態を、図1に示す。
【0063】
次に、上記の市販のゼリー飲料をスパウト付きパウチ容器から押し出すか、又は吸い出すことによって口に含んだ後、嚥下直前にゼリー飲料を円形容器内へ取り出した。嚥下直前のゼリー飲料の状態に係る複数の再現パターン(No.1~4)を、図2に示す。
【0064】
続いて、上記の市販のゼリー飲料をスパウト付きパウチ容器から押し出し、ホモミクサーMARK II 2.5型(PRIMIX社製)を用いて1,000rpmで30秒撹拌処理し、粒子状となったゼリー飲料を円形容器内に取り出した。撹拌処理後のゼリー飲料の状態を、図3に示す。
【0065】
(結果と考察)
図1及び2に示す通り、嚥下直前のゼリー飲料(図2)は、スパウト付きパウチ容器から押し出した直後のゼリー飲料(図1)よりも細かく粉砕されることが観察された。
ホモミクサーにより1,000rpmで30秒撹拌処理したゼリー飲料は、図3に示す通り、嚥下直前のゼリー飲料のうち細かく粉砕したもの(No.2又は4等)と類似した粉砕状態を示した。
【0066】
ゼリー飲料は、スパウト付きパウチ容器から押し出し又は吸い出すことによって口内に取り込まれ、飲み込むまでの一定時間口内に滞在する。嚥下直前のゼリー飲料の粉砕状態は摂食の態様によってばらつきがあるものの、一般的な摂食の態様において比較的細かく粉砕された状態は、ホモミクサーにより1,000rpmで30秒撹拌処理することで一定の確度をもって再現することができる。
【0067】
[試験例2]粘度の異なるゼリー飲料を用いた、酸味の官能評価
ゼリー飲料の粘度と酸味の感じ方の関係性を調べるため、同一組成のゼリー飲料を異なる撹拌条件で粉砕し、粘度と酸味の評価を行った。
酸味成分としてクエン酸を、ゲル化剤として寒天、k-カラギナン、又は脱アシルジェランガムを使用した。
【0068】
初めに、下記表1に基づいて、ゼリー飲料(酸度:1.5)を常法により調製した。調製したゼリー飲料をスパウト付きパウチ容器に充填した。その後、ゼリー飲料が品温20℃となるように、一晩以上静置した。
【0069】
本試験例で用いたスパウト付きパウチ容器の品名、規格は以下の通りである。
(品名)CP07ストロー
(規格)パウチ(ゼリー飲料を充填前の折りたたまれた状態):80.0(幅)×54.0(折込)×135.00mm(高さ)
ストローの全長:94.5mm
ストローの経口部の外径:12.5mm
(メーカー)(株)細川洋行
【0070】
スパウト付きパウチ容器から押し出したゼリー飲料180gを、ホモミクサーMARK II 2.5型(PRIMIX社製)を用いて、下記表2に示す条件で撹拌し、細かい粒子状のゼリー飲料を得た。得られたゼリー飲料を取り出し、その全量をトールビーカー(口径50mm、高さ120mm、容量200ml)に入れ、B型粘度計(東京計器(株)製)を用いて、以下の条件で粘度の測定を行った(品温20℃)。
<粘度測定条件>
回転数:60rpm、時間:1分間、ローター:No.3
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
また、上記表2に記載の撹拌条件で得られたゼリー飲料について、飲食品を専門とする評価者3名(下表パネルA~C)により、酸味の官能評価(酸味評価)を行った。3名の評価値の平均を、各組成における酸味の官能評価値とした。
官能評価は、以下の基準に従って行った。
<酸味の官能評価基準>
上記撹拌条件で得られたゼリー飲料を口内に含んだ直後に感じた酸味と、クエン酸のみを配合した溶液を口内に含んだ時の酸味とを比較し、以下の0~2点に分類した。
2点・・・良好な酸味を感じる
1点・・・比較的強い酸味を感じるが、飲用には問題ない
0点・・・酸味が強すぎて飲用には適さない
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
(結果及び考察)
表3~5に示す通り、同一組成のゼリー飲料であっても、粘度が異なると酸味の感じ方が変化することが確認された。ゲル化剤の種類が異なっても、同様の傾向が見られた。
【0078】
ゲル化剤として寒天、k-カラギナン、脱アシルジェランガムの何れを用いた場合であっても、粘度700mPa・s以上の場合に、ゼリー飲料が飲用に適した酸味を呈することが明らかとなった。
よって、ゲル化剤の種類によらず、ゼリー飲料が口内で700mPa・s以上の粘度となっていれば、強い酸味を抑制することができると考えられる。
【0079】
また、前記組成1~3のいずれのゼリー飲料も、飲用時のゼリー飲料の状態の代表例に相当する撹拌条件a(1,000rpm、30秒)において、良好な酸味を感じるものであることがわかった。
【0080】
[試験例3]酸度の違いによる酸味抑制効果の評価
表6に示す組成に従い、常法にて実施例1~5及び比較例1~5のゼリー飲料を調節した。その後、実施例を撹拌条件b(3,000rpm、30秒)で処理し、比較例を撹拌条件c(5,000rpm、30秒)で処理した後、試験例2と同様に粘度の測定及び酸味の官能評価(酸味評価)を行った。
【0081】
【表6】
【0082】
(結果及び考察)
表6に示す通り、何れの酸度の場合であっても、ゼリー飲料は粘度700mPa・sを境に酸味の感じ方が改善されることが分かった。
【0083】
また、酸度が0.7~2.5の場合、撹拌処理後のゼリー飲料の粘度が700mPa・s以下の場合は、酸味が抑制されず、飲用に適さないほど強い酸味を有していた。一方、撹拌処理後のゼリー飲料の粘度が700mPa・s以上の場合は、飲用に適した酸味となることが明らかとなった。
【0084】
[試験例4]酸味成分の検討
クエン酸以外の酸味成分を配合し、酸味の抑制効果を調べた。すなわち、表7に示す組成に従い、アスコルビン酸を加えたゼリー飲料(酸度:1.5)について、試験例2及び3と同様の方法で、粘度の測定及び酸味の官能評価(酸味評価)を行った。
【0085】
【表7】
【0086】
(結果及び考察)
表7に示す通り、粘度が700mPa・s以上の実施例5は飲用に適した酸味を有していたのに対し、粘度が700mPa・s以下の比較例5は、飲用に適さないほど強い酸味を有していた。この結果は、クエン酸を配合することで酸度を1.5とした実施例3及び比較例3と同様の傾向を示す。
よって、酸味成分の種類によらず、撹拌処理後の粘度が700mPa・s以上のゼリー飲料は、良好な酸味を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、酸味成分を配合する飲食品に応用することができる。

図1
図2
図3