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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040403
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】走査プローブ顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G01Q 30/04 20100101AFI20220303BHJP
   G01Q 60/10 20100101ALI20220303BHJP
   G01Q 60/24 20100101ALI20220303BHJP
【FI】
G01Q30/04
G01Q60/10
G01Q60/24
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008371
(22)【出願日】2022-01-24
(62)【分割の表示】P 2018011262の分割
【原出願日】2018-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 真行
(72)【発明者】
【氏名】鹿倉 良晃
(72)【発明者】
【氏名】工藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】上野 利浩
(57)【要約】
【課題】測定データと、その差分データの分布像とを選択的又は共に表示可能で、エッジ強調画像が得られると共に、ユーザの利便性を向上させた走査プローブ顕微鏡を提供する。
【解決手段】カンチレバー1と、カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器5とを備え、探針99を試料300の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡200において、測定データの1次元又は2次元の第1の分布像201と、測定データの隣接するデータの差分データの1次元又は2次元の第2の分布像202とを算出する分布像算出手段40aと、分布像算出手段に対し、第1の分布像及び第2の分布像のいずれか一方又は両方の算出を指示すると共に、算出させた分布像を所定の表示手段に表示させる表示制御手段40bと、をさらに備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、
前記測定データの1次元又は2次元の第1の分布像と、前記測定データを走査方向の順に並べると共に、前記走査方向と交差する方向に各走査毎に離間して並べて2次元上に並べたときの隣接するデータの差分データの1次元又は2次元の第2の分布像とを算出する分布像算出手段と、
前記分布像算出手段に対し、前記第1の分布像及び前記第2の分布像のいずれか一方又は両方の算出を指示すると共に、当該算出させた分布像を所定の表示手段に表示させる表示制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記第1の分布像及び前記第2の分布像の両方を表示する際、同一位置の前記測定データ及び前記差分データを同時に表示させる請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記第1の分布像及び前記第2の分布像を算出する際のデータの算出方向を指定する算出方向指定手段をさらに備え、
前記分布像算出手段は、前記算出方向指定手段によって指定された前記算出方向に沿って、第1の分布像及び前記第2の分布像のうち、前記表示手段に表示される分布像を算出する請求項1又は2に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記第2の分布像を算出する際の隣接するデータの差分の差引き順序を指定する差引き順序指定手段をさらに備え、
前記分布像算出手段は、前記差引き順序指定手段によって指定された差引き順序で、前記第2の分布像を算出する請求項1~3のいずれか一項に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記表示制御手段は、走査方向又は前記算出方向に沿う差分データ毎に前記第2の分布像を順次表示させ、
前記分布像算出手段は、前記第2の分布像の表示中に、前記算出方向指定手段及び/又は前記差引き順序指定手段によって前記算出方向及び/又は前記差引き順序が指定されたとき、指定された前記算出方向及び/又は前記差引き順序に基づいて前記第2の分布像を算出する請求項3又は4に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項6】
前記分布像算出手段は、指定された前記算出方向及び/又は前記差引き順序に基づいて、当該指定前の前記測定データによる前記第2の分布像を再算出し、
前記表示制御手段は、前記再算出した前記第2の分布像と、前記指定後の前記第2の分布像とを共に表示させる請求項5に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項7】
前記表示制御手段は、走査方向又は前記算出方向の1ライン毎に、前記測定データ及び/又は前記差分データを表示させる請求項1~6のいずれか一項に記載の走査プローブ顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料と探針間の物理的な相互作用を検出し、試料と探針間の距離の制御や相互作用した物理的な測定データの取得に用いる走査プローブ顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
走査プローブ顕微鏡(SPM)は、探針を試料表面に近接又は接触させ、試料の表面形状や物性を測定するものである。走査プローブ顕微鏡の測定モードとしてはSTM(走査トンネル顕微鏡)、AFM(走査原子間力顕微鏡)など多くの種類が存在する。もっとも良く使用されるAFMは、(1)探針と試料の間の原子間力をカンチレバーのたわみとして検出し、一定に保って試料の表面形状を測定するコンタクト・モードの他、(2)カンチレバーをピエゾ素子等によって共振周波数近傍で強制振動させ、探針を試料に接触又は近接させた時に、両者の間にはたらく間欠的な力によって探針の振幅が変化するのを利用して試料の形状を測定する方法(以下、適宜「ダイナミック・フォース・モード(DFM測定モード)」という)などが知られている。
これらの走査プローブ顕微鏡は、カンチレバーの変位を示す信号を検出し、この信号に基づいてカンチレバーと試料の表面との間の物理量(力や振動振幅)を一定に維持させながら、探針を試料の表面に沿って相対的に走査させ、試料表面形状や、カンチレバーと試料が相互作用した物理的な測定データを取得する。
【0003】
ところで、例えばSPMを用いて取得した試料表面の凹凸像(形状像)は、高低で配色され、低い場所が暗く、高い場所が明るく表現されるのが一般的である。しかしながら、従来の形状像では、試料表面に大きな凹凸と小さな凹凸が含まれる場合、大きな凹凸の高低に合わせて配色すると小さな凹凸のコントラストが小さくなって見にくく、一方、小さな凹凸の高低に合わせて配色すると大きな凹凸のコントラストがレンジオーバーしてしまい、両者を同一画像内で表現することが困難であった。
一方、従来から画像処理の分野では、隣接する画像データの差分画像を生成して見やすくするエッジ強調(画像強調)と称される技術が用いられている。しかしながら、走査プローブ顕微鏡の分野では、差分データは、例えば画像の歪み成分を除去して画像の精度を改善するための利用に留まっていた(特許文献1参照)。この理由として、走査型プローブ顕微鏡の分野におけるエッジ強調は、AFMにおけるカンチレバーの走査方向の変位信号や、DFMにおけるカンチレバーの走査方向の振動振幅の変位信号である誤差信号を利用した誤差信号像を得ることで行われるためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-94851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来の走査プローブ顕微鏡の測定データを差分してエッジ強調したい場合、取り込んだ測定データを別のソフトウェア等で差分処理し、測定データと別個に画面表示等する必要があり、作業が煩雑かつ利便性に劣る。
又、用途に応じて、測定データのみを取得して表示したい場合もあれば、差分データを取得して表示したい場合、又は測定データと差分データの両方を画面上に表示したい場合もある。このような各種要望に対し、例えば一律に差分データを計算すると、差分データが不要な場合にコンピュータの処理が無駄になると共に、処理速度が低下するという問題がある。又、特定の試料や表面形状の場合にのみ選択的に差分データを取得したい場合に対応できない。
そして、測定データと差分データの両方を画面上に表示する走査プローブ顕微鏡はこれまで開発されていない。
【0006】
また、走査型プローブ顕微鏡の分野における誤差信号像は、いわゆる光てこシステムにおいて、カンチレバーの変位検出用の4分割受光セルの受光量が不均等になることで得られる誤差信号に基づく。換言すれば、変位の制御基準からのズレであり、本来はそれズレが無いように制御することが理想である。このため、誤差信号像は、測定精度が向上するほど形状像との差異が小さくなるため、測定精度が向上するにつれて、エッジ強調手段となり得なくなるという問題がある。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、測定データと、その差分データの分布像とを選択的又は共に表示可能で、測定精度に関わらずエッジ強調画像が得られると共に、ユーザの利便性を向上させた走査プローブ顕微鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の走査プローブ顕微鏡は、試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、前記測定データの1次元又は2次元の第1の分布像と、前記測定データを走査方向の順に並べると共に、前記走査方向と交差する方向に各走査毎に離間して並べて2次元上に並べたときの隣接するデータの差分データの1次元又は2次元の第2の分布像とを算出する分布像算出手段と、前記分布像算出手段に対し、前記第1の分布像及び前記第2の分布像のいずれか一方又は両方の算出を指示すると共に、当該算出させた分布像を所定の表示手段に表示させる表示制御手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
この走査プローブ顕微鏡によれば、測定データからなる第1の分布像が見にくい場合に、その差分データからなる第2の分布像を算出することで、エッジ強調画像が得られ、試料表面の物理量の分布を見やすくなる。特に、差分データを用いることで、誤差信号像を用いた従来の走査プローブ顕微鏡とは異なり、測定精度に関わらず第2の分布像(エッジ強調画像)が得られる。
又、第1の分布像と第2の分布像を1つの表示手段に表示させれば、各分布像の一方を表示させた場合に比べ、元の像(例えば形状像)である第1の分布像と、差分データからなる第2の分布像を、一画面上で見比べることができるので、より有用な情報が得られる。
【0010】
本発明の走査プローブ顕微鏡において、前記表示制御手段は、前記第1の分布像及び前記第2の分布像の両方を表示する際、同一位置の前記測定データ及び前記差分データを同時に表示させてもよい。
この走査プローブ顕微鏡によれば、同一位置の第1の分布像と第2の分布像とを同時に表示させるので、両分布像の相違を同一位置で比較でき、さらに有用な情報が得られる。
【0011】
本発明の走査プローブ顕微鏡において、前記第1の分布像及び前記第2の分布像を算出する際のデータの算出方向を指定する算出方向指定手段をさらに備え、前記分布像算出手段は、前記算出方向指定手段によって指定された前記算出方向に沿って、第1の分布像及び前記第2の分布像のうち、前記表示手段に表示される分布像を算出してもよい。
データの算出方向によっては、第1の分布像や第2の分布像のコントラスト等が低下して見にくくなり、有用な情報が得られないことがある。そこで、この走査プローブ顕微鏡によれば、算出方向を変えることで、第1の分布像や第2の分布像のコントラスト等を増加させて見やすくし、さらに有用な情報が得られる。
【0012】
本発明の走査プローブ顕微鏡において、前記第2の分布像を算出する際の隣接するデータの差分の差引き順序を指定する差引き順序指定手段をさらに備え、前記分布像算出手段は、前記差引き順序指定手段によって指定された差引き順序で、前記第2の分布像を算出してもよい。
データの差引き順序によっては、第2の分布像のコントラスト等が低下して見にくくなり、有用な情報が得られないことがある。そこで、この走査プローブ顕微鏡によれば、差引き順序を変えることで第2の分布像の明暗を反転させ、コントラスト等を増加させて見やすくし、さらに有用な情報が得られる。
【0013】
本発明の走査プローブ顕微鏡において、前記表示制御手段は、走査方向又は前記算出方向に沿う差分データ毎に前記第2の分布像を順次表示させ、前記分布像算出手段は、前記第2の分布像の表示中に、前記算出方向指定手段及び/又は前記差引き順序指定手段によって前記算出方向及び/又は前記差引き順序が指定されたとき、指定された前記算出方向及び/又は前記差引き順序に基づいて前記第2の分布像を算出してもよい。
この走査プローブ顕微鏡によれば、差分データ毎に前記第2の分布像を順次表示させることで、第2の分布像のコントラスト等が低下して見にくくなったと感じたときにすぐに算出方向及び/又は前記差引き順序を変えることができ、その後の第2の分布像を見やすくし、有用な情報が得られるようになる。
【0014】
本発明の走査プローブ顕微鏡において、前記分布像算出手段は、指定された前記算出方向及び/又は前記差引き順序に基づいて、当該指定前の前記測定データによる前記第2の分布像を再算出し、前記表示制御手段は、前記再算出した前記第2の分布像と、前記指定後の前記第2の分布像とを共に表示させてもよい。
この走査プローブ顕微鏡によれば、差分データ毎に前記第2の分布像を順次表示させることで、第2の分布像のコントラスト等が低下して見にくくなったと感じた過去の(算出済の)第2の分布像を、算出方向及び/又は前記差引き順序を変えて再算出するので、過去の第2の分布像をも見やすくし、有用な情報が得られるようになる。
【0015】
本発明の走査プローブ顕微鏡において、前記表示制御手段は、走査方向又は前記算出方向の1ライン毎に、前記測定データ及び前記差分データを表示させてもよい。
この走査プローブ顕微鏡によれば、1ライン毎に、測定データ及び/又は差分データを表示させるので、リアルタイムで即座に測定データ及び/又は差分データを見ることができる。又、測定データ及び/又は差分データが見にくいと感じたときにすぐに対応(算出方向及び/又は前記差引き順序の変更)ができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走査プローブ顕微鏡の測定データと、その差分データの分布像とを選択的又は共に表示可能で、エッジ強調画像が得られると共に、ユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る走査プローブ顕微鏡のブロック図である。
図2】走査プローブ顕微鏡のコンピュータのブロック図である。
図3】走査プローブ顕微鏡のコンピュータにおける処理フローを示す図である。
図4】第1の分布像と第2の分布像の両方を1つのモニタに表示させた状態を示す模式図である。
図5】試料が十字の凸部を有する場合の第2の分布像の算出方向を示す図である。
図6図5の試料の走査方向における第2の分布像を示す模式図である。
図7図5の試料の算出方向を走査方向と直交させたときの、第2の分布像を示す模式図である。
図8】データの算出方向の一例を示す図である。
図9】算出方向を指定したとき、再算出した第2の分布像と、指定後の第2の分布像とを共に表示する態様を示す模式図である。
図10】第2の分布像を算出する際のデータの差分の差引き順序を示す図である。
図11】算出方向と差引き順序を共に指定したとき、再算出した第2の分布像と、指定後の第2の分布像とを共に表示する態様を示す模式図である。
図12】実際の試料の第1の分布像と第2の分布像を示す図である。
図13】実際の試料の第1の分布像と第2の分布像を示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る走査プローブ顕微鏡200のブロック図である。なお、図1(a)が走査プローブ顕微鏡200の全体図であり、図1(b)はカンチレバー1近傍の部分拡大図である。
図1(a)において、走査プローブ顕微鏡200は、先端に探針99を有するカンチレバー1と、試料300が載置される試料台10と、カンチレバー1に振動を与えるカンチレバー加振部3と、カンチレバー加振部3を駆動させるための加振電源(加振信号発生器)21と、カンチレバー1の変位を示す信号を検出する変位検出器5と、交流-直流変換機構6と、制御手段(プローブ顕微鏡コントローラー24、コンピュータ40)等とを有する。
プローブ顕微鏡コントローラー24は周波数・振動特性検出機構7を有している。
コンピュータ40は、走査プローブ顕微鏡200の動作を制御するための制御基板、CPU(中央制御処理装置)、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段、インターフェース、操作部等を有する。又、コンピュータ40にはモニタ(表示手段)41及びキーボード42が接続されている。
なお、走査プローブ顕微鏡200は、カンチレバー1が固定され、試料300側をスキャンするサンプルスキャン方式となっている。
【0020】
プローブ顕微鏡コントローラー24は、後述するZ制御回路20、周波数・振動特性検出機構7、加振電源21、X,Y,Z出力アンプ22、粗動制御回路23を有する。プローブ顕微鏡コントローラー24はコンピュータ40に接続されてデータの高速通信が可能である。コンピュータ40は、プローブ顕微鏡コントローラー24内の回路の動作条件を制御し、測定されたデータを取り込み制御し、表面形状等の表面物性測定などを実現する。
プローブ顕微鏡コントローラー24は、測定データを適宜増幅し、試料表面形状や、カンチレバーと試料が相互作用した物理量を取得する
なお、バイアス電源回路29は、試料台10へ直接バイアス電圧を印加し、探針99と試料300間の表面電位を測定するKFMなどでも使用する。
【0021】
コンピュータ40が、特許請求の範囲の「分布像算出手段」、「表示制御手段」、「算出方向指定手段」、「差引き順序指定手段」に相当する。
【0022】
粗動機構12は、アクチュエータ11及びその上方の試料台10を大まかに3次元移動させるものであり、粗動制御回路23によって動作が制御される。
アクチュエータ(スキャナ)11は、試料台10(及び試料300)を3次元に移動(微動)させるものであり、試料台10をそれぞれxy(試料300の平面)方向に走査する2つの(2軸の)圧電素子11a、11bと、試料台10をz(高さ)方向に走査する圧電素子11cと、を備えた円筒になっている。圧電素子は、電界を印加すると結晶がひずみ、外力で結晶を強制的にひずませると電界が発生する素子であり、圧電素子としては、セラミックスの一種であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を一般に使用することができるが、粗動機構12の形状や動作方法はこれに限られない。
圧電素子11a~11cはX,Y,Z出力アンプ22に接続され、X,Y,Z出力アンプ22から所定の制御信号(電圧)を出力して圧電素子11a、11bをそれぞれxy方向へ駆動し、圧電素子11cをz方向へ駆動する。圧電素子11cへ出力される電気信号は、プローブ顕微鏡コントローラー24の中で検出され、上述の「測定データ」として取り込まれる。
【0023】
試料台10上に試料300が載置され、試料300は探針99に対向配置されている。
カンチレバー1は、カンチレバーチップ部8の側面に接し、片持ちバネの構造を構成している。カンチレバーチップ部8は、カンチレバーチップ部押さえ9により斜面ブロック2に押さえつけられ、斜面ブロック2は、加振器3に固定されている。そして、加振機3は加振電源21からの電気信号により振動し、カンチレバー1及びその先端の探針99を振動させる。カンチレバーの加振方法として、圧電素子、電場や磁場、光照射、電流の通電なども含まれる。
【0024】
そして、レーザ光源30からレーザ光がダイクロックミラー31に入射されカンチレバー1の背面に照射され、カンチレバー1から反射されたレーザ光はミラー32で反射されて変位検出器5で検出される。変位検出器5は、例えば4分割光検出器であり、カンチレバー1の上下(z方向)の変位量は、カンチレバー1から反射されたレーザの光路の変化(入射位置)として変位検出器5で検出される。つまり、カンチレバー1の振動振幅は、変位検出器5の電気信号の振幅に対応する。
変位検出器5の電気信号の振幅は、プリアンプ50を通過して適宜増幅され、交流-直流変換機構6により振幅の大きさに対応した直流のレベル信号に変換される。
【0025】
交流-直流変換機構6の直流レベル信号は、Z制御回路20へ入力される。Z制御回路20は、DFM測定モードにおける探針99の目標振幅と一致するように、Z出力アンプ22のZ信号部へ制御信号を伝達し、Z信号部は圧電素子11cをz方向へ駆動する制御信号(電圧)を出力する。すなわち、試料300と探針99の間に働く原子間力によって生じるカンチレバー1の変位を上述の機構で検出し、探針99(カンチレバー1)の振動振幅が目標振幅となるようにアクチュエータ11cを変位させ、探針99と試料300の接する力を制御する。そして、この状態で、X,Y,Z出力アンプ22にてxy方向にアクチュエータ11a、11bを変位させて試料300のスキャンを行い、表面の形状や物性値をマッピングする。
【0026】
又、交流-直流変換機構6の直流レベル信号は、プローブ顕微鏡コントローラー24の周波数・振動特性検出機構7へ入力される。又、加振電源21からの電気信号も、周波数・振動特性検出機構7へ入力される。周波数・振動特性検出機構7は、交流-直流変換機構6及び加振電源21からの入力に基づいて演算した所定の周波数・振動特性信号を処理してロックイン検出によるsin、cos、振幅信号等を取得し、コンピュータ40へ伝達する。
そして、試料台10のxy面内の変位に対して、(i) 試料台10の高さの変位から3次元形状像を、(ii)共振状態の位相の値から位相像を、(iii)振動振幅の目標値との差により誤差信号像を、(iv)探針試料間の物性値から多機能測定像を、コンピュータ40上に表示し、解析や処理を行うことにより、プローブ顕微鏡として動作させる。
【0027】
次に、図2図10を参照し、本発明の特徴部分について説明する。本発明は、測定データの1次元又は2次元の第1の分布像と、測定データの隣接するデータの差分データの1次元又は2次元の第2の分布像とを、選択的又は共に算出して表示する。以下、測定データが形状データの場合を例として説明する。
【0028】
図2に示すように、表示制御手段40bは、キーボード42からユーザの要求があった分布像の算出を指示する。分布像算出手段40aは、プローブ顕微鏡コントローラー24から測定データを取り込み、表示制御手段40bから指示された分布像を算出する。
又、分布像算出手段40aは、算出方向指定手段40cからの指示に従った算出方向で、第1の分布像及び第2の分布像を算出する。同様に、分布像算出手段40aは、差引き順序指定手段40dからの指示に従った差引き順序で、第2の分布像を算出する。
なお、算出方向指定手段40c及び差引き順序指定手段40dの指示は、キーボード42からユーザが行う。
そして、表示制御手段40bは、分布像算出手段40aが算出した分布像をモニタ41に表示させる。
【0029】
次に、コンピュータ40における処理フローについて説明する。
図3において、例えばキーボード42からユーザが第1の分布像と第2の分布像のいずれか(本例では、第1の分布像と第2の分布像の両方)を取得(表示)したい旨の要求を入力すると、表示制御手段40bは、要求があった分布像の算出を分布像算出手段40aに指示する(ステップS100)。
分布像算出手段40aは、後述するステップS110の判定処理の後、指示された分布像を1ライン毎に算出する(ステップS102)。
表示制御手段40bは、算出された分布像を1ライン毎にモニタ41に表示させる(ステップS104)。
ここで、後述するステップS110で指定が無い限り、ステップS102、104では、後述する算出方向及び差引き順序はデフォルトの値(例えば、算出方向は走査方向と同一)である。又、算出方向が走査方向と同一の場合、1ラインは1つの走査線に相当する。
【0030】
図4は、図3の処理によって、第1の分布像201と第2の分布像202の両方を1つのモニタ41に表示させた状態を示す模式図である。第1の分布像201のL1~L3は、この順で、それぞれ1ライン毎の一次元の測定データの分布像を示している。同様に、第2の分布像202のD1~D3は、この順で、それぞれ1ライン毎の一次元の差分データの分布像を示している。そして、各ラインを経時で並べることで、測定データ及び差分データの2次元の分布像となる。
【0031】
形状像である第1の分布像201には、大きな山M1と小さな山M2が含まれており、これを大きな凹凸の高低に合わせて2次元上で配色すると小さな山M2のコントラストが小さくなって見にくくなる等の問題がある。
そこで、隣接する測定データのの差分データからなる第2の分布像202を算出して表示することで、例えば大きな山M1と小さな山M2が同一画像上に含まれていても、エッジ強調して山M1、M2を区別した明瞭な画像202が得られる。
【0032】
特に、第1の分布像201と第2の分布像202を1つのモニタ41に表示させれば、各分布像の一方を表示させた場合に比べ、元の像(例えば形状像)である第1の分布像201と、差分データからなる第2の分布像202とを、一画面上で見比べることができるので、より有用な情報が得られる。
とりわけ、第1の分布像201と、第2の分布像202とにおいて、同一位置の測定データ及び差分データを同時に表示させると、両分布像の相違を同一位置で比較できるので、さらに有用な情報が得られる。
【0033】
ここで、「同一位置」とは、例えば測定データの1画素に対応したものでもよいが、通常は走査線等の1ライン毎に表示を行うので、測定データの特定の1ラインと、その1ラインの測定データに基づく差分データによる1ライン分のデータとを同一位置としてよい。
又、「同時」とは、測定データの1画素を逐次表示する場合であれば、測定データの1画素と、その前後の差分データによる1画素とを対応させて同時刻に表示させる。但し、通常は走査線等の1ライン毎に表示を行うので、測定データの特定の1ラインと、その差分データによる1ライン分のデータとを同時刻に表示させてもよい。
又、上記趣旨に含まれる限り、他のデータの単位を「同一位置」や、「同時」に表示させても良い(例えば2ライン分を1単位として同時に表示するなど)。
【0034】
ところで、図5に示すように、例えば試料301が十字の凸部を有する場合、走査方向S1が十字の一方に平行な向きであると、凸部の十字の中心を通って平らな表面上を走査したときに何ら凹凸情報が得られず、ひいては、図6に示すように、その差分データである第2の分布像202xもフラットで有用な情報を含まないことがある。
そこで、第1の分布像及び第2の分布像を算出する算出方向S2を、走査方向S1と同一方向でなく、例えば十字を横断する縦向きとすると、図7に示すように、第2の分布像202yに有用な情報を含ませることができる。
【0035】
図7の処理は、図3のステップS110~114のように行うことができる。
まず、分布像算出手段40aは、ステップS100の後でS102の前に、データの算出方向及び/又は差引き順序が指定されたか否かを判定する(ステップS110)。差引き順序については後述する。
ここで、算出方向の指定は、例えばキーボード42からユーザが算出方向を入力すると、算出方向指定手段40cがその算出方向を分布像算出手段40aに設定して行うことができる。
ステップS110で「Yes」であれば、ステップS112に移行し、「No」であれば、ステップS102に移行する。
【0036】
ステップS112で、分布像算出手段40aは、指定された算出方向に沿って、第1の分布像及び第2の分布像のうち、表示手段に表示された分布像(本例では、第1の分布像と第2の分布像の両方)を1ライン毎に算出する。
続いて、ステップS114で「No」であれば、ステップS104に移行し、指定された算出方向で算出された分布像を表示する。
【0037】
図8は、データの算出方向の一例を示す。図8のa1~a9は、個々の測定データを示す。
測定データa1、a2、a3の並ぶ方向を走査方向S1とすると、走査方向S1と異なる算出方向は多数あり、例えば走査方向S1に直交する算出方向S2の他、S1とS2のなす角(本例では90度)の二等分線となる算出方向S31、S1とS31の間の算出方向S32、S2とS31の間の算出方向S33など、個々の測定データを一列に結ぶ方向であれば制限されない。
又、1ラインとは、例えば算出方向S31の場合、算出方向S31に平行な個々の線上のすべてのデータであり、図8では、データa1、a5、a9が1ライン、データa4、a8が1ラインである。又、算出方向S31のように算出方向が走査方向S1に対して斜め(直交する算出方向S2を除く)の場合、1ラインのデータ数は一定ではなく、例えば上述のように、算出方向S31の場合は、1ラインでデータが2個、3個の異なる場合がある。但し、1ラインでデータ1個となる場合は算出方向から除く。
【0038】
ところで、ユーザが図6の第2の分布像202を1ライン毎に順次見て、途中から算出方向S2を変えた方が良いと判断する場合があり、むしろ最初から最適な算出方向が既知であるよりは、第2の分布像202を見てから算出方向を修正することが多いと考えられる。
この場合、図9(a)に示すように、測定スタートから3本の各ラインD1,D2,D3が表示され、これを見たユーザが算出方向S2を変えた場合、第2の分布像202xyは、各ラインD1,D2,D3におけるフラットな分布像と、算出方向S2による各ラインD4~D6の分布像が併存し、算出方向S2による全体像を把握し難いことがある。
【0039】
そこで、図9(b)に示すように、算出方向S2を変える前(指定前)の測定データについても、算出方向S2で第2の分布像をライン毎に再算出し、指定後の算出方向S2の第2の分布像(各ラインD4~D6)と共に表示すると好ましい。
なお、図9(b)において、指定前の走査方向S1では、測定データによる第2の分布像が3ライン(D1~D3)得られるが、図8の算出方向S31に示すように、算出方向が走査方向S1に対して斜めの場合、測定スタートからの測定データが同一であっても、得られる第2の分布像は同数のラインになるとは限らず、2ライン(D11、D12)に減少しても構わない。
【0040】
図9(b)の処理は、図3のステップS114~120のように行うことができる。
まず、分布像算出手段40aは、ステップS112の後、算出方向の指定前の第2の分布像を再算出するか否かを判定する(ステップS114)。
ここで、再算出の有無は、例えばキーボード42からユーザが再算出の要求を入力すると、分布像算出手段40aがその要求を取得して行うことができる。又、デフォルトで再算出するよう設定されていてもよい。
ステップS114で「Yes」であれば、ステップS116に移行して後述するフラグがあるか否かを判定し、「Yes」であれば、ステップS104に移行し、「No」であれば、ステップS118に移行する。
【0041】
ステップS118では、分布像算出手段40aは、指定前の測定データにより指定された算出方向にて、第2の分布像を再算出し、再算出した旨のフラグを立てる。
続いてステップS120では、、表示制御手段40bは、S118で再算出した第2の分布像と、算出方向を指定後の第2の分布像とをまとめてモニタ41に表示させる。
ステップS120又はステップS104に続き、ステップS130では、分布像算出手段40aは、測定データが終了したか否かを判定し、「Yes」であれば処理を終了し、「No」であれば、ステップS110に戻って処理を繰り返す。
【0042】
なお、最初のステップS114で第2の分布像を再算出すると、S118でフラグが立てられた後、S120で再算出した第2の分布像と、算出方向を指定後の第2の分布像とをまとめて表示する。次に、2回目以降のステップS114では、既に再算出した旨のフラグが立っているので、「No」と判定され、これ以上の再算出をせずにS104へ移行する。
つまり、例えば図9(b)にて、最初のステップS114では再算出した第2の分布像D11、D12と、算出方向を指定後の第2の分布像D4~D6がまとめて表示されるが、2回目以降のステップS114では、指定後の第2の分布像が1ライン毎にD6の後に付け加えられることとなる。
【0043】
次に、図10図11を参照し、差引き順序について説明する。
図10(a)に示すように、第2の分布像を算出する際、隣接するデータの差分の差引き順序としては、(1)1ライン上の時系列的に後のデータa2から時系列的に前のデータa1を差し引いて差分D(=a2-a1)を算出する他、(2)(1)と逆の順序で、差分-D(=a1-a2)を算出するものがある。そして、差分Dと差分-Dとは高低が逆になり、第2の分布像の明暗を反転させる効果があり、差分Dによる第2の分布像が見難い場合に、明暗を反転させて差分-Dを表示すると見やすくなることがある。このように、目的に応じて差引き順序を選択することができる。
従って、例えば図7にて、D1~D3の第2の分布像202が見難い場合に、例えばキーボード42からユーザが差引き順序を入力すると、差引き順序指定手段40dがその差引き順序を分布像算出手段40aに設定して行うことができる。
【0044】
なお、差分Dを求める隣接データは、図10(a)のような図8の横軸に沿ったデータ列に限らず、例えば図10(b)のような図8の縦軸に沿ったデータ列でもよく、横軸と縦軸の間の斜めに沿ったデータ列でもよい。
以後、図8の縦軸に沿ったデータ列に基づく図10(b)の差分をD',-D'で表す。
【0045】
なお、分布像算出手段40aが、差引き順序指定手段40dによって指定された差引き順序で、第2の分布像を算出する処理は、指定された算出方向で行うステップS110~S120(図3)と同様である。
又、図11に示すように、算出方向と差引き順序とを共に指定することもできる。この場合、図9(b)に相当する図11(a)にて、算出方向S2の第2の分布像(各ラインD11,D12,D4~D6)を見たユーザが差分Dに対応する差引き順序dから差分-Dに対応する-dに変えた場合、差引き順序を変える前の第2の分布像(各ラインD11,D12,D4~D6)について、差引き順序-dで第2の分布像を再算出し、指定後の差引き順序の第2の分布像(各ラインD7以降)と共に表示すると好ましい。差引き順序-dで再算出した第2の分布像を、模式的にラインD110,D120,D40~D60で表す。
【0046】
図12図13は、第1の分布像(形状像)と、差分による第2の分布像の実際の測定例を示す。なお、図12は複数の波形の畝部が平行に並ぶ試料の像であり、図12は複数の線形の畝部が平行に並ぶ試料の像である。
図12(a)は第1の分布像(形状像)P1であり、図12(b)、(c)はそれぞれ図8の横軸に沿った差分+D,-D(図10(a)参照)を行った第2の分布像P1+D、P1-Dを示す。
一方、図12(d)、(e)はそれぞれ図8の縦軸に沿った差分+D',-D' (図10(b)参照)を行った第2の分布像P1+D'、P1-D'を示す。
図13についても同様であり、図12の符号P1をそれぞれP2で置き換えることとする。
差分+D,-Dの間で高低(明暗)が反転し、同様に差分+D',-D' の間で高低(明暗)が反転することがわかる。従って、必要に応じて所定の差分を行って第2の分布像を得ることで、より多くの情報を取得することができる。
【0047】
なお、図7図8等では第2の分布像のみを表示したが、ステップS104で第1の分布像と第2の分布像の両方を表示させた場合、対応する第1の分布像についても、図7図8等と同様に、指定後の算出方向S2で再算出するのはいうまでもない。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態では、測定データが形状データの場合について説明したが、走査プローブ顕微鏡で測定可能な他の物理量であってもよい。又、上記実施形態では、DFM測定モードについて説明したが、例えばコンタクトモードに、本発明を適用できる。例えば、コンタクトモードで摩擦像を測定する際に、本発明を適用できる。
又、本発明は、走査プローブ顕微鏡のカンチレバー側をスキャンして測定を行うレバースキャン方式にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 カンチレバー
5 変位検出器
40a 分布像算出手段
40b 表示制御手段
40c 算出方向指定手段
40d 差引き順序指定手段
41 表示手段(モニタ)
99 探針
200 走査プローブ顕微鏡
201 第1の分布像
202、202x 第2の分布像
202y 算出方向を指定後の第2の分布像
206 差引き順序を指定後の第2の分布像
300,301 試料
S1 走査方向
S2、S31,S32,S33 算出方向
L1~L3 走査方向の1ライン
D1~D3、D4~D7、D11,D12,D110,D120,D40~D60 算出方向の1ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、
前記測定データの1次元又は2次元の第1の分布像と、前記測定データの並ぶ方向を走査方向とし、前記走査方向、前記走査方向と直交する方向、又は前記走査方向と前記走査方向と直交する方向とのなす角の二等分線となる方向を算出方向とし、前記算出方向に隣接するデータの差分データの1次元又は2次元の第2の分布像とを算出する分布像算出手段と、
前記分布像算出手段に対し、前記第1の分布像及び前記第2の分布像のいずれか一方又は両方の算出を指示すると共に、当該算出させた分布像を所定の表示手段に表示させる表示制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項2】
試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、
前記測定データは少なくとも第1の走査をすることにより得られた第1の測定データを含み、
第1の分布像と第2の分布像を算出する分布像算出手段を有し、
前記第1の分布像は少なくとも前記第1の測定データであり、
前記第2の分布像は、前記第1の測定データの個々のデータのうち、所望のデータとその後ろのデータとの差分、又は所望のデータとその前のデータとの差分を算出することにより得られる差分データを含み、
更に表示手段に情報を表示する表示制御手段を有し、前記表示制御手段は前記第1の分布像と前記第2の分布像の少なくとも一方を表示することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項3】
試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、
前記測定データは少なくとも第1の走査をすることにより得られた第1の測定データと第2の走査をすることにより得られた第2の測定データとを含み、
第1の分布像と第2の分布像を算出する分布像算出手段を有し、
前記第1の分布像は少なくとも前記第1の測定データであり、
前記第2の分布像は、前記第1の測定データと前記第2の測定データとの差分を算出することにより得られる差分データを含む第2の分布像であり、
更に表示手段に情報を表示する表示制御手段を有し、前記表示制御手段は前記第1の分布像と前記第2の分布像の少なくとも一方を表示することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記第1の分布像及び前記第2の分布像の両方を表示する際、同一位置の前記測定データ及び前記差分データを同時に表示させる請求項1~3のいずれか一項に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記第1の分布像及び前記第2の分布像を算出する際のデータの算出方向を指定する算出方向指定手段をさらに備え、
前記分布像算出手段は、前記算出方向指定手段によって指定された前記算出方向に沿って、第1の分布像及び前記第2の分布像のうち、前記表示手段に表示される分布像を算出する請求項1~4のいずれか一項に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項6】
前記第2の分布像を算出する際の隣接するデータの差分の差引き順序を指定する差引き順序指定手段をさらに備え、
前記分布像算出手段は、前記差引き順序指定手段によって指定された差引き順序で、前記第2の分布像を算出する請求項1~5のいずれか一項に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項7】
前記表示制御手段は、走査方向又は前記算出方向に沿う差分データ毎に前記第2の分布像を順次表示させ、
前記分布像算出手段は、前記第2の分布像の表示中に、前記算出方向指定手段及び/又は前記差引き順序指定手段によって前記算出方向及び/又は前記差引き順序が指定されたとき、指定された前記算出方向及び/又は前記差引き順序に基づいて前記第2の分布像を算出する請求項5又は6に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項8】
前記分布像算出手段は、指定された前記算出方向及び/又は前記差引き順序に基づいて、当該指定前の前記測定データによる前記第2の分布像を再算出し、
前記表示制御手段は、前記再算出した前記第2の分布像と、前記指定後の前記第2の分布像とを共に表示させる請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項9】
前記表示制御手段は、走査方向又は前記算出方向の1ライン毎に、前記測定データ及び/又は前記差分データを表示させる請求項1~8のいずれか一項に記載の走査プローブ顕微鏡。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様の走査プローブ顕微鏡は、試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、前記測定データの1次元又は2次元の第1の分布像と、前記測定データの並ぶ方向を走査方向とし、前記走査方向、前記走査方向と直交する方向、又は前記走査方向と前記走査方向と直交する方向とのなす角の二等分線となる方向を算出方向とし、前記算出方向に隣接するデータの差分データの1次元又は2次元の第2の分布像とを算出する分布像算出手段と、前記分布像算出手段に対し、前記第1の分布像及び前記第2の分布像のいずれか一方又は両方の算出を指示すると共に、当該算出させた分布像を所定の表示手段に表示させる表示制御手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の第2の態様の走査プローブ顕微鏡は、試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、前記測定データは少なくとも第1の走査をすることにより得られた第1の測定データを含み、第1の分布像と第2の分布像を算出する分布像算出手段を有し、前記第1の分布像は少なくとも前記第1の測定データであり、前記第2の分布像は、前記第1の測定データの個々のデータのうち、所望のデータとその後ろのデータとの差分、又は所望のデータとその前のデータとの差分を算出することにより得られる差分データを含み、更に表示手段に情報を表示する表示制御手段を有し、前記表示制御手段は前記第1の分布像と前記第2の分布像の少なくとも一方を表示することを特徴とする。
本発明の第3の態様の走査プローブ顕微鏡は、試料の表面に接触又は近接させる探針が設けられたカンチレバーと、前記カンチレバーの変位を示す信号を検出する変位検出器とを備え、前記信号に基づいて前記カンチレバーと前記試料の表面との間の所定の物理量を一定に維持させながら、前記探針を前記試料の表面に沿って相対的に走査させたときに得られた測定データを取得する走査プローブ顕微鏡において、前記測定データは少なくとも第1の走査をすることにより得られた第1の測定データと第2の走査をすることにより得られた第2の測定データとを含み、第1の分布像と第2の分布像を算出する分布像算出手段を有し、前記第1の分布像は少なくとも前記第1の測定データであり、前記第2の分布像は、前記第1の測定データと前記第2の測定データとの差分を算出することにより得られる差分データを含む第2の分布像であり、更に表示手段に情報を表示する表示制御手段を有し、前記表示制御手段は前記第1の分布像と前記第2の分布像の少なくとも一方を表示することを特徴とする。
本発明の走査プローブ顕微鏡において、前記表示制御手段は、前記第1の分布像及び前記第2の分布像の両方を表示する際、同一位置の前記測定データ及び前記差分データを同時に表示させてもよい。
この走査プローブ顕微鏡によれば、同一位置の第1の分布像と第2の分布像とを同時に表示させるので、両分布像の相違を同一位置で比較でき、さらに有用な情報が得られる。