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特開2022-40612非水電解質二次電池用非水電解質及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040612
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用非水電解質及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20220304BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220304BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145401
(22)【出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】長田 広幸
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 宏美
(72)【発明者】
【氏名】撹上 健二
(72)【発明者】
【氏名】立石 光
(72)【発明者】
【氏名】長野 英晃
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM01
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM06
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】非水電解質二次電池において、高温保存若しくは高温での充放電を経ても高い電気容量を維持できるようにすること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用非水電解質。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を表し、R及びRは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Xは、スルフィド基、ジスルフィド基、スルフィニル基又はスルホニル基を表す。但し、R及びRは炭素数2~3の基で連結されて環を形成してもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用非水電解質。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を表し、R及びRは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Xは、スルフィド基、ジスルフィド基、スルフィニル基又はスルホニル基を表す。但し、R及びRは炭素数2~3の基で連結されて環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物を、前記非水電解質二次電池用非水電解質に対して、0.01~10質量%含有する請求項1に記載の非水電解質二次電池用非水電解質。
【請求項3】
正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、及び請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用非水電解質を有する非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池に好適に使用できる非水電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯用パソコン、ハンディビデオカメラ、情報端末等の携帯電子機器の普及に伴い、高電圧、高エネルギー密度を有する非水電解質二次電池が電源として広く用いられるようになった。また、環境問題の観点から、電池自動車や電力を動力の一部に利用したハイブリッド車の実用化が行われている。
【0003】
非水電解質二次電池では、非水電解質二次電池の安定性や電気特性の向上のために、非水電解質用の種々の添加剤が提案されている。このような添加剤として、1,3-プロパンスルトン(例えば、特許文献1を参照)、ビニルエチレンカーボネート(例えば、特許文献2を参照)、ビニレンカーボネート(例えば、特許文献3を参照)、1,3-プロパンスルトン、ブタンスルトン(例えば、特許文献4を参照)、ビニレンカーボネート(例えば、特許文献5を参照)、ビニルエチレンカーボネート(例えば、特許文献6を参照)、チオジカルボン酸シリルエステル等が提案されている(例えば、特許文献7を参照)等が提案されている。中でも、チオジカルボン酸シリルエステルは効果が大きいが、高温で長期間使用すると出力が急激に低下するという問題があった。
【0004】
一方、チオジカルボン酸長鎖アルコールエステルは酸化防止剤として知られており、電解液に添加することによりセパレータの分解が抑制され、サイクル特性の向上や高温保存時の膨れ抑制の効果があることが知られている(例えば、特許文献8を参照)。しかしながら、チオジカルボン酸長鎖アルコールエステルを電解液に添加すると充放電容量が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-102173号公報
【特許文献2】特開平4-87156号公報
【特許文献3】特開平5-74486号公報
【特許文献4】特開平10-50342号公報
【特許文献5】特開平8-045545号公報
【特許文献6】特開2001-6729号公報
【特許文献7】国際公開第2017/047626号パンフレット
【特許文献8】特開2007-250380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、非水電解質二次電池において、高温保存若しくは高温での充放電を経ても高い電気容量を維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行なった結果、特定の構造の二塩基酸エステル化合物を含有する非水電解質を使用することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用非水電解質である。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を表し、R及びRは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Xは、スルフィド基、ジスルフィド基、スルフィニル基又はスルホニル基を表す。但し、R及びRは炭素数2~3の基で連結されて環を形成しもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非水電解質二次電池において、高温保存若しくは高温での充放電を経ても高い電気容量を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非水電解質は、公知の非水電解質二次電池用非水電解質と同様に、有機溶媒及び電解質を含有し、一般式(1)で表される化合物を更に含有することに特徴がある。一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を表す。炭素数1~8の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;エチニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、2-メチル-2-プロペニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基等が挙げられる。R及びRとしては、サイクル特性に優れ、充放電容量の低下が少ないことから、炭素数1~6の炭化水素基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数2~4のアルキル基が最も好ましい。RとRとは同一でも異なってもよいが、一般式(1)で表される化合物の製造が容易であることから、RとRとは同一であることが好ましい。
【0012】
Xは、スルフィド基(-S-)、ジスルフィド基(-S-)、スルフィニル基(-S(=O)-)又はスルホニル基(-S(=O)-)を表す。Xとしては、サイクル特性に優れ、充放電容量の低下が少ないことから、スルフィド基及びジスルフィド基が好ましく、スルフィド基が更に好ましい。
【0013】
及びRは炭素数1~4のアルキレン基を表す。炭素数1~4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、ブチレン基、2,2-ジメチルエチレン基、3-メチルプロピレン基等が挙げられる。R及びRとしては、サイクル特性に優れ、充放電容量の低下が少ないことから、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が好ましい。
【0014】
但し、R及びRは炭素数2~3の基で連結されて環を形成してもよい。一般式(1)において、R及びRが炭素数2~3の基で連結されて環を形成した化合物としては、下記一般式(2)~(7)で表される化合物が挙げられる。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R、R及びXは、一般式(1)と同義である。)
【0017】
本発明の非水電解質において、一般式(1)で表される化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。また、本発明の非水電解質において、一般式(1)で表される化合物の含有量が、少なすぎる場合には十分な効果を発揮できず、一方、多すぎる場合には、配合量に見合う増量効果は得られないばかりか、非水電解質の特性に悪影響を及ぼすことがある。そのため、一般式(1)で表される化合物の含有量は、非水電解質に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.2~3質量%であることが更により好ましく、0.3~2質量%であることが最も好ましい。
【0018】
本発明の非水電解質に含有される有機溶媒としては、非水電解質二次電池の非水電解質に通常使用される有機溶媒、例えば、飽和環状カーボネート化合物、飽和環状エステル化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物、アマイド化合物、飽和鎖状カーボネート化合物、鎖状エーテル化合物、環状エーテル化合物、飽和鎖状エステル化合物等が使用できる。
【0019】
飽和環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,3-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,1-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0020】
飽和環状エステル化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン等が挙げられる。
【0021】
スルホキシド化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、チオフェン等が挙げられる。
【0022】
スルホン化合物としては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホンともいう)、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、3,4-ジフェニメチルスルホラン、スルホレン、3-メチルスルホレン、3-エチルスルホレン、3-ブロモメチルスルホレン等が挙げられる。
【0023】
アマイド化合物としては、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0024】
飽和鎖状カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、t-ブチルプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0025】
鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物としては、例えば、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、1,2-ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2-ビス(エトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2-ビス(エトキシカルボニルオキシ)プロパン、エチレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル、プロピレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル、エチレングリコールビス(トリフルオロメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル等が挙げられる。
【0026】
飽和鎖状エステル化合物としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、マロン酸メチル、マロン酸エチル、コハク酸メチル、コハク酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールジアセチル、プロピレングリコールジアセチル等が挙げられる。
【0027】
本発明の非水電解質の有機溶媒としては、このほか、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタンやこれらの誘導体、各種イオン液体を用いることもできる。有機溶媒は1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の非水電解質が、リチウムイオン二次電池の非水電解質である場合には、電解質として、リチウム塩を使用する。本発明の非水電解質に用いられるリチウム塩としては、リチウムイオン二次電池用の電解質として従来公知のリチウム塩、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)、LiC(CFSO、LiB(CFSO、LiB(C、LiBF(C)、LiSbF、LiSiF、LiSCN、LiClO、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlF、LiAlCl、LiPO及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0029】
本発明の非水電解質が、ナトリウムイオン二次電池の非水電解質である場合には、電解質として、上記リチウム塩のリチウム原子をナトリウム原子に置き換えたナトリウム塩を使用すればよい。
【0030】
非水電解質中の電解質の濃度が、低すぎると十分な電流密度が得られないことがあり、一方、高すぎると非水電解質の安定性を損なう恐れがある。そのため、本発明の非水電解質中の電解質の濃度は、0.5mol/L~7mol/Lであることが好ましく、0.8mol/L~1.8mol/Lであることがより好ましい。
【0031】
本発明の非水電解質は、電池寿命の向上、安全性向上等のため、ゲル化剤、電極被膜形成剤、酸化防止剤、難燃剤、過充電防止剤等の公知の非水電解質添加剤を更に含んでもよい。公知の非水電解質添加剤を用いる場合の含有量は、少なすぎると添加効果が発揮できず、一方、多すぎると非水電解質二次電池の特性に悪影響を及ぼすことがある。そのため、公知の非水電解質添加剤の含有量は、非水電解質に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0032】
本発明の非水電解質二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、上記した非水電解質とを有するものである。本発明の非水電解質二次電池では、正極と負極との間にセパレータを介在させることが好ましい。
【0033】
正極活物質を含む正極は、集電材上に、正極活物質、導電助剤及び結着剤を含む電極合材層を有している。正極活物質としては、公知のものを用いることができる。公知の正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物、リチウム含有ケイ酸塩化合物、リチウム含有遷移金属硫酸化合物、硫黄変性有機化合物等が挙げられる。
【0034】
リチウム遷移金属複合酸化物としては、LiCoO等のリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO等のリチウムニッケル複合酸化物、LiMnO、LiMn、LiMnO等のリチウムマンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をアルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、ガリウム、ジルコニウム等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。主体となる遷移金属原子の一部を他の金属で置換したリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、Li1.1Mn1.8Mg0.1、Li1.1Mn1.85Al0.05、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.80Co0.17Al0.03、LiNi0.80Co0.15Al0.05、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiMn1.8Al0.2、LiNi0.5Mn1.5、LiMnO-LiMO(M=Co、Ni、Mn)等が挙げられる。
【0035】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、例えば、LiFePO、LiMFe1-xPO(M=Co、Ni、Mn)等のリン酸鉄化合物類、LiCoPO等のリン酸コバルト化合物類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をアルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ等の他の金属で置換したもの、Li(PO等のリン酸バナジウム化合物類等が挙げられる。
【0036】
リチウム含有ケイ酸塩化合物としては、LiFeSiO等が挙げられる。リチウム含有遷移金属硫酸化合物としては、LiFeSO、LiFeSOF等が挙げられる。
【0037】
硫黄変性有機化合物は、硫黄と有機化合物とを混合し、非酸化性ガス雰囲気中、250℃~600℃で加熱変性して得られる化合物であり、硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性エラストマー、硫黄変性ピット、硫黄変性ポリアミド、硫黄変性多核芳香環化合物、硫黄変性脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0038】
正極活物質の粒子径は、粒子径が大き過ぎると均一で平滑な電極合剤層が得られない場合があり、一方、小さ過ぎるとスラリー化工程でのハンドリング性が低下する。そのため、正極活物質の平均粒子径(D50)が0.5μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましく、1μm~30μmであることが更により好ましい。本発明において、平均粒子径(D50)とは、レーザー回折光散乱法により測定された50%粒子径をいう。粒子径は体積基準の直径であり、レーザー回折光散乱法では、二次粒子の直径が測定される。
【0039】
正極に用いられる導電助剤としては、グラファイトの微粒子、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子等、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0040】
正極に用いられる結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴム、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0041】
正極に用いられる集電材としては、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0042】
負極活物質を含む負極は、集電材上に、負極活物質及び結着剤を含む電極合材層を有している。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、リチウム、リチウム合金、スズ合金、珪素合金、酸化珪素、チタン酸化物等が挙げられる。なお、酸化珪素、チタン酸化物等の導電性の低い負極活物質を使用する場合は、導電助剤を併用することが好ましい。そのような導電助剤としては、グラファイトの微粒子、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子等、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0043】
負極に用いられる結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴム、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0044】
負極に用いられる集電材としては、銅、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が挙げられる。
【0045】
正極と負極との間に介在させるセパレータとしては、通常用いられる高分子の微多孔フィルムを特に限定なく使用できる。該フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等の種々のセルロース類、ポリ(メタ)アクリル酸及びその種々のエステル類等を主体とする高分子化合物やその誘導体、これらの共重合体や混合物からなるフィルム等が挙げられる。
【実施例0046】
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、以下の実施例等により本発明は何ら制限されるものではない。尚、実施例中の「部」や「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0047】
〔非水電解質に添加する化合物〕
A-1:チオジグリコール酸ジメチル
A-2:チオジグリコール酸ジエチル
A-3:チオジグリコール酸ビス(2エチルヘキシル)
A-4:チオジプロピオン酸ジブチル
A-5:ジチオジプロピオン酸ジブチル
A-6:チオフェンジカルボン酸ジブチル
A-7:テトラヒドロチオフェンジカルボン酸ジブチル
A-8:スルホニルジプロピオン酸ジメチル
A-9:スルフィニルビス酢酸ジメチル
B-1:チオジプロピオン酸ジラウリル
B-2:チオジグリコール酸ビス(トリメチルシリル)
B-3:チオフェンジカルボン酸ビス(トリメチルシリル)
【0048】
〔非水電解質の調製〕
エチレンカーボネート30体積%、エチルメチルカーボネート70体積%、及びLiPFを1mol/Lの濃度で含有する混合溶媒に、上記A-1~A-9及びB-1~B-3の化合物のいずれかを下記表1に示す濃度になるように添加し、実施例1~11及び比較例2~5の非水電解質を調製した。上記A-1~A-9及びB-1~B-3の化合物のいずれも添加しない非水電解質を比較例1とした。なお、表中の( )の質量%は、非水電解質に対して添加した化合物の量を示す。
【0049】
〔正極の作製〕
正極活物質としてLiNi1/3CO1/3Mn1/3O 290質量部、導電助剤としてアセチレンブラック 5質量部、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF) 5質量部を混合した後、N-メチル-2-ピロリドン(NMP) 140質量部に分散させてスラリー状とした。このスラリーをアルミニウム製の集電材上に塗布し、乾燥後、プレス成型した。その後、これを所定の大きさにカットして円盤状の正極を作製した。
【0050】
〔負極の作製〕
負極活物質として人造黒鉛 97.0質量部、結着剤としてスチレンブタジエンゴム 1.5質量部、及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1.5質量部を混合し、水120質量部に分散させてスラリー状とした。このスラリーを銅製の集電材上に塗布し、乾燥後、プレス成型した。その後、これを所定の大きさにカットして円盤状の負極を作製した。
【0051】
〔電池の組み立て〕
正極と負極とで、厚さ25μmのポリエチレン製の微多孔フィルムをはさんでケース内に保持し、非水電解質をケース内に注入し、ケースを密閉、封止して、実施例1~11及び比較例1~5の非水電解質を用いたリチウム二次電池(φ20mm、厚さ3.2mmのコイン型)を作製した。
【0052】
〔サイクル特性試験〕
初期特性試験後のリチウム二次電池を、60℃の恒温槽内に入れ、充電電流1.5mA/cm(1C相当の電流値、1Cは電池容量を1時間で放電する電流値)で4.2Vまで定電流充電し、放電電流1.5mA/cmで2.75Vまで定電流放電を行うサイクルを200回繰り返して行った。
5回目の充放電における放電容量に対する、200回目の充放電における放電容量の比(%)を放電容量比として求めた。結果を表1に示す。放電容量比(%)の値が大きいほど、充放電を繰り返しても充電容量の低下が少なく、サイクル特性に優れることを示す。
【0053】
【表1】
【0054】
上記したサイクル特性試験は、60℃という高温条件下で充放電サイクルを繰り返す過酷な試験である。本発明に従う実施例1~11の非水電解質を用いたリチウム二次電池は、比較例1~5の非水電解質を用いたリチウム二次電池に比べ、放電容量比が高く、過酷な条件下でも優れたサイクル特性を示すことが確認された。