(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041470
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形材料およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/06 20060101AFI20220304BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20220304BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20220304BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220304BHJP
C08K 7/28 20060101ALI20220304BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20220304BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
C08L67/06
C08L53/02
C08K5/01
C08K3/00
C08K7/28
C08K9/06
C08K7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020146685
(22)【出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】船ケ山 勝也
(72)【発明者】
【氏名】塩根 英樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 欧
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BP01X
4J002CF21W
4J002DE057
4J002DE077
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DL008
4J002DL009
4J002EA046
4J002FA049
4J002FA108
4J002FB098
4J002FD010
4J002FD019
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD160
4J002FD177
4J002FD310
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】製造適性に優れ、優れた表面平滑性を有する低比重の成形品が得られる樹脂組成物、成形材料及びその成形品を提供する。
【解決手段】マレイン酸及び/又はフマル酸を90モル%以上含有する多塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合物である不飽和ポリエステル(A)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、スチレンモノマー(C)、無機充填材(D)、ガラスバルーン(E)、湿潤分散剤(F)、及び重合開始剤(G)を含有する樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル(A)、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び前記スチレンモノマー(C)の合計100質量部に対して、前記無機充填材(D)が10~100質量部であり、前記ガラスバルーン(E)が5~40質量部であり、前記湿潤分散剤(F)が1~10質量部であることを特徴とする樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイン酸及び/又はフマル酸を90モル%以上含有する多塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合物である不飽和ポリエステル(A)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、スチレンモノマー(C)、無機充填材(D)、ガラスバルーン(E)、湿潤分散剤(F)、及び重合開始剤(G)を含有する樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル(A)、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び前記スチレンモノマー(C)の合計100質量部に対して、前記無機充填材(D)が10~100質量部であり、前記ガラスバルーン(E)が5~40質量部であり、前記湿潤分散剤(F)が1~10質量部であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記ガラスバルーン(E)がシラン化合物で表面処理されたものである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の樹脂組成物、及びガラス繊維を含有することを特徴とする成形材料。
【請求項4】
請求項3記載の成形材料を使用した成形品。
【請求項5】
比重が1.1~1.6の範囲である請求項4記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形材料およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
シートモールディングコンパウンド(SMC)は、熱硬化性樹脂、無機充填剤、増粘剤、硬化剤等を混ぜたペースト(コンパウンド)をガラス繊維に含浸させてシート状とし、熟成処理を行って、半硬化させた成形材料である。このSMCを金型によって加熱・加圧成形することで、成形品が得られる。このような成形品は、優れた耐久性や耐水性、機械的強度等の特性を利用して、浴室機器や貯水槽、浄化槽、建築材、床材、電気部品、車両用材料等として幅広く用いられているが、特に車両用材料、航空機材料等においては軽量化が求められている。
【0003】
これらのFRPでは、十分な強度を得る為にガラス繊維を用い、またコスト低減の為に炭酸カルシウム等の無機充填材を添加する場合が多く、その比重は1.7~2.0程度であるが、近年、炭酸ガス削減や燃費向上の要求により、自動車部材・船舶部材・航空機部材を中心に軽量化が求められてきた。
【0004】
成形品を軽量化する手法として、中空ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーンに代表される中空充填剤(バルーン)を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、バルーンを添加すると表面平滑性が劣ること、コンパウンド粘度が高くなることによりSMC製造適性が損なわれる課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、製造適性に優れ、優れた表面平滑性を有する低比重の成形品が得られる樹脂組成物、成形材料及びその成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、特定の不飽和ポリエステル、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレンモノマー、無機充填材、ガラスバルーン及び湿潤分散剤を特定の比率で含有する樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、マレイン酸及び/又はフマル酸を90モル%以上含有する多塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合物である不飽和ポリエステル(A)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、スチレンモノマー(C)、無機充填材(D)、ガラスバルーン(E)、湿潤分散剤(F)、及び重合開始剤(G)を含有する樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル(A)、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び前記スチレンモノマー(C)の合計100質量部に対して、前記無機充填材(D)が10~100質量部であり、前記ガラスバルーン(E)が5~40質量部であり、前記湿潤分散剤(F)が1~10質量部であることを特徴とするに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、低比重で、表面平滑性に優れることから、SMC用途として一般的である浴槽や洗面ボウル等の住宅設備部材に加えて、自動車部品、船体部品、航空機部品等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、マレイン酸及び/又はフマル酸を90モル%以上含有する多塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合物である不飽和ポリエステル(A)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、スチレンモノマー(C)、無機充填材(D)、ガラスバルーン(E)、湿潤分散剤(F)、及び重合開始剤(G)を含有する樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル(A)、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び前記スチレンモノマー(C)の合計100質量部に対して、前記無機充填材(D)が10~100質量部であり、前記ガラスバルーン(E)が5~40質量部であり、前記湿潤分散剤(F)が1~10質量部であるものである。
【0011】
前記不飽和ポリエステル(A)は、マレイン酸及び/又はフマル酸を90モル%以上含有する多塩基酸成分と多価アルコール成分とを縮合重合して得られた不飽和ポリエステルである。多塩基酸成分中のマレイン酸及び/又はフマル酸が90モル%未満である場合は、得られる成形品の成形収縮が大きくなり、表面平滑性が悪化すると共に、強度が不十分となる。
【0012】
前記不飽和ポリエステル(A)の原料となるマレイン酸及びフマル酸以外の前記多塩基酸成分としては、例えば、イタコン酸、シトラコン酸及びこれら二塩基酸の無水物、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルコン酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。これらの多塩基酸成分は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0013】
前記不飽和ポリエステル(A)の原料となる前記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA、ジオキシエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、ジオキシプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、オクチルアルコール、オレイルアルコール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの多価アルコール成分は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0014】
前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)としては、例えば、スチレン/エチレン/プロピレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0015】
前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の製造法は、特に限定されないが、スチレン/共役ジエン共重合体の二重結合を水素添加して得る方法が挙げられる。
【0016】
表面平滑性がより向上することから、前記不飽和ポリエステル(A)、前記エラストマー(a2)、及び前記スチレンモノマー(C)からなる成分中の前記不飽和ポリエステル(A)は、20~50質量%が好ましく、前記エラストマー(B)は、1~30質量%が好ましく、前記スチレンモノマー(C)は、30~60質量%が好ましい。
【0017】
前記無機充填材(D)としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、クレー、タルク、カオリン、シリカ等が挙げられる。これらの無機充填材(D)は、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0018】
前記無機充填材(D)は、前記不飽和ポリエステル(A)、前記エラストマー(a2)、及び前記スチレンモノマー(C)の合計100質量部に対し、10~100質量部であるが、表面平滑性及び製造適性がより向上することから、10~70質量部が好ましい。
【0019】
前記ガラスバルーン(E)としては、特に限定されないが、表面平滑性がより向上することから、シラン化合物で表面処理されたものが好ましく、シラザンで表面処理されたものがより好ましい。また、ガラスバルーンの表面処理方法は特に限定されないが、均一処理により表面平滑性が高くなる湿式処理法による表面処理が好ましい。
【0020】
前記ガラスバルーン(E)は、前記不飽和ポリエステル(A)、前記エラストマー(a2)、及び前記スチレンモノマー(C)の合計100質量部に対し、5~40質量部であるが、表面平滑性及び製造適性がより向上することから、10~30質量部が好ましい。
【0021】
前記湿潤分散剤(F)としては、特に限定されないが、酸基を有する高分子湿潤分散剤が好ましい。その具体例としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製の高分子湿潤分散剤、例えば、BYK-W940、BYK-W972、BYK-W974、BYK-W996、BYK-W9010、BYK-W9011、Disper-BYK110、Disper-BYK111、Disper-BYK180等が挙げられる。これらの湿潤分散剤(F)は、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0022】
前記湿潤分散剤(F)は、前記不飽和ポリエステル(A)、前記エラストマー(a2)、及び前記スチレンモノマー(C)の合計100質量部に対し、1~10質量部であるが、1質量部よりも少ない場合は表面平滑性及び製造適性に問題があり、10質量部よりも多い場合は湿潤分散剤が表面にブリードアウトするため好ましくない。
【0023】
前記重合開始剤(G)は、特に限定されないが、有機過酸化物が好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等が挙げられ、成形条件に応じて適宜選択できる。これらの重合開始剤(G)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
本発明の樹脂組成物中の前記重合開始剤(G)の含有量は、本発明の目的を達成する範囲であれば特に限定されるものではないが、本発明の成形材料の硬化特性と保存安定性が共に優れることから、重合性不飽和基を有する成分に対して、0.3~3質量%の範囲が好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物には、前記不飽和ポリエステル(A)、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、スチレンモノマー(C)、無機充填材(D)、ガラスバルーン(E)、湿潤分散剤(F)、及び重合開始剤(G)以外の成分として、前記不飽和ポリエステル(A)以外の熱硬化性樹脂、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)以外の熱可塑性樹脂、スチレンモノマー(C)以外の重合性不飽和単量体、重合禁止剤、増粘剤、離型剤、顔料、減粘剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、安定剤、補強材、光硬化剤等を含有することができる。
【0026】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。また、これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0027】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、およびこれらを共重合等により変性させたものが挙げられる。また、これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
前記重合性不飽和単量体としては、例えば、ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。また、これらの重合性不飽和単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0029】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p-t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらの重合禁止剤は、前記樹脂組成物(A)中に、10~1000ppm含有することが好ましい。
【0030】
前記増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物や金属水酸化物、イソシアネート化合物等が挙げられ、本発明の加熱圧縮成形材料の取り扱い性によって適宜選択肢できる。これらの増粘剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、酸化マグネシウムが好ましい。
【0031】
前記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。好ましくは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス等が挙げられる。これらの離型剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0032】
本発明の成形材料は、前記樹脂組成物及びガラス繊維を含有するものである。
【0033】
前記ガラス繊維としては、例えば、ロービングと呼ばれる長繊維をカットした繊維、予め短くカットされたチョップドストランドと呼ばれる短繊維等が挙げられる。また、繊維を平織り、朱子織り、不織布、マット状の形態にしたものも使用できる。これらのガラス繊維は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0034】
前記ガラス繊維の種類としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Rガラス、ARガラス、または低ホウ素含有率ガラス等を、繊維径10~25μmで、線密度1000~5000g/km(TEX)で集束したものなどを用いることができる。また、集束剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂と、シランカップリング剤とを併用することが好ましい。
【0035】
本発明の成形材料は、前記樹脂組成物を、前記ガラス繊維に含浸させて得られるものであるが、成形材料中の前記ガラス繊維の含有量は、得られる成形品の強度及び表面平滑性がより向上することから、10~50質量%の範囲が好ましく、20~40質量%の範囲がより好ましい。
【0036】
また、本発明の成形材料は、成形材料としての取り扱いや成形性の観点から、SMC又はバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCと略記する。)であることが好ましい。
【0037】
前記SMCの製造方法としては、通常のロール、インターミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、押し出し機などの混合機を用いて、不飽和ポリエステル(A)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、スチレンモノマー(C)、無機充填材(D)、ガラスバルーン(E)、湿潤分散剤(F)、及び重合開始剤(G)等の樹脂組成物の各成分を混合分散し、上下に設置されたキャリアフィルムに均一な厚さになるように塗布し、所定の長さにカットされたガラス繊維を、前記上下に設置されたキャリアフィルムの樹脂組成物に挟み込み、次いで、全体を含浸ロールの間に通して、圧力を加えて繊維補強材に樹脂組成物を含浸させた後、ロール状に巻き取るか又はつづら折りに畳んでSMCが得られる。必要に応じて、この後に熟成等を行う。増粘剤を配合した場合は、25~60℃の温度で熟成することが好ましい。キャリアフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。
【0038】
前記BMCの製造方法としては、前記SMCの製造方法と同様に、通常のロール、インターミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、押し出し機などの混合機を用いて、不飽和ポリエステル(A)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、スチレンモノマー(C)、無機充填材(D)、ガラスバルーン(E)、湿潤分散剤(F)、及び重合開始剤(G)等を含む前記樹脂組成物を分散させた後、最後に前記ガラス繊維を混合・分散させる方法が好ましい。BMCの場合、前記ガラス繊維としては、分散性の観点から比較的短繊維を使用するのが好ましく、例えば、5~13mm長さの範囲である。また、SMCと同様に増粘剤を混合した場合は、25~60℃の温度で熟成することが好ましい。
【0039】
本発明の成形品は、前記成形材料より得られるが、成形材料としての取り扱いや成形性の観点から、その成形方法としては、SMC又はBMCの加熱圧縮成形法が好ましい。
【0040】
前記加熱圧縮成形法としては、例えば、SMC、BMC等の成形材料を所定量計量し、予め110℃~180℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めを行い、成形材料を賦型させ、0.1~20MPaの成形圧力を保持することによって、成形材料を硬化させ、その後成形品を取り出し成形品を得る製造方法が用いられる。この場合シェアエッジを有する金型内で金型温度120℃~160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり1~2分間という規定の時間、1~10MPaの成形圧力を保持し、加熱圧縮成形する製造方法が好ましい。
【0041】
本発明の成形品は、軽量かつ強度に優れることから、比重が1.1~1.6の範囲内であることが好ましい。
【0042】
なお、本発明における成形品の比重は、各原料成分の比重及び組成比から求めた計算比重とする。
【0043】
本発明の成形材料から得られる成形品は、低比重で且つ表面平滑性が優れた成形品が得られることから、浴槽や洗面ボウル等の住宅設備部材に加えて、自動車部品、船体部品、航空機部品等に好適に用いることができる。
【実施例0044】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0045】
(製造例1:不飽和ポリエステル(A-1)の製造)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコにフマル酸3モル及びプロピレングリコール3.15モルを仕込み、205℃にて10時間、脱水縮合反応した。次いで、スチレンを添加し、不飽和ポリエステル(A-1)の60質量%スチレン溶液を得た。
【0046】
(製造例2:ガラスバルーン(E-1)の製造)
攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコにガラスバルーン(スリーエムジャパン株式会社製「グラスバブルズK37」;比重0.37、平均粒子径(D50)45μm)200gとトルエン1000gを仕込み、次いで1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(信越化学製「SZ-31」)10gを仕込み、2時間撹拌した。このガラスバルーンを濾過、乾燥させることで、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたガラスバルーン(E-1)を得た。
【0047】
(製造例3:ガラスバルーン(E-2)の製造)
攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコにガラスバルーン(スリーエムジャパン株式会社製「グラスバブルズK37」;比重0.37、平均粒子径(D50)45μm)200gとトルエン1000gを仕込み、次いで3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製「KBM-503」)15gを仕込み、2時間撹拌した。このガラスバルーンを濾過、乾燥させることで、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスバルーン(E-2)を得た。
【0048】
(実施例1)
製造例1で得られた不飽和ポリエステル(A-1)の60質量%スチレン溶液58質量部(不飽和ポリエステルとして35質量部)、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(株式会社クラレ製「セプトン1020」)の30質量%スチレン溶液50質量部(水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとして15質量部)、スチレン2質量部、重質炭酸カルシウム50質量部、ガラスバルーン(E-1)20質量部、ステアリン酸亜鉛5質量部、湿潤分散剤(ビックケミー株式会社製「BYK-W9010」)4質量部、重合開始剤(化薬ヌーリオン株式会社製「トリゴノックス129-75」)1質量部、重合禁止剤(精工化学製「PBQ」)0.05質量部、及び酸化マグネシウム2質量部をディゾルバーにより混合し、樹脂組成物(1)を得た。
この樹脂組成物(1)を上下に設置された2枚のポリプロピレン製キャリアフィルム上に均一な厚さになるように塗布し、25.4mmにカットしたガラス繊維(日東紡績株式会社製「PB-549」)61質量部を前記上下に設置されたキャリアフィルム上の樹脂組成物の間に挟み込み、全体を含浸ロールの間に通して圧力を加えて樹脂組成物(A-1)をガラス繊維に含浸させた後、45℃で24時間養生し、SMCとして成形材料(1)を得た。
【0049】
(実施例2~4)
実施例1で使用した各成分を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(2)~(4)、及びSMCとして成形材料(2)~(4)を得た。
【0050】
(比較例1~2)
実施例1で使用した各成分を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(R1)~(R2)、及びSMCとして成形材料(R2)を得た。なお、粘度が高すぎたため樹脂組成物(R1)からはSMCが得られなかった。
【0051】
[製造適性の評価]
上記で得られた樹脂組成物の30℃での粘度を測定し、下記の基準により、製造適性を評価した。粘度計は、東機産業製RB-85Hを使用した。
〇:30Pa・s未満
×:30Pa・s以上
【0052】
[成形材料(SMC)の外観の評価]
上記で得られた成形材料(SMC)の表面を目視で確認し、下記の基準により、外観を評価した。
〇:ガラスバルーンの凝集なし
×:ガラスバルーンの凝集あり
【0053】
[成形品の作製]
上記で得られた成形材料600gを300×300mmの金型を用いて加熱圧縮成形し、厚さ4mmの平板上の成形品を得た。加熱圧縮成形条件は、金型温度(下)130℃/(上)145℃、加圧時間6分、圧力5MPaであった。
【0054】
[成形品の表面平滑性の評価1]
上記で得られた成形品の表面を目視で確認し、下記の基準により、外観を評価した。
〇:ガラスバルーンの凝集なし
×:ガラスバルーンの凝集あり
【0055】
[成形品の表面平滑性の評価2]
上記で得られた成形品について、コニカミノルタ株式会社製「Rhopoint IQ-s」を用いて、像鮮明度DOI及び像鮮明度指数RIQを測定した。これらの数値が高いほど、表面平滑性に優れる。
【0056】
上記で得た成形材料(1)~(4)の組成及び評価結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
上記で得た成形材料(R1)~(R2)の組成及び評価結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
実施例1~4の樹脂組成物から得られた成形品は、表面平滑性に優れることが確認された。
【0061】
比較例1は樹脂組成物中に本発明の必須成分である湿潤分散剤を含有しない例であるが、SMCの製造適性が不十分であることが確認された。
【0062】
比較例2は、樹脂組成物中に本発明の必須成分である湿潤分散剤を含有せず、スチレンモノマー量を増量した例であるが、成形品の表面平滑性が劣ることが確認された。