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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042418
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】組成物、硬化物、硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
C08G59/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147842
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山岸 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】松土 和彦
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AA05
4J036AB01
4J036AD08
4J036EA04
4J036FA11
4J036FA14
4J036GA03
4J036GA26
4J036HA02
4J036JA06
(57)【要約】
【課題】硬化性及び耐久性のバランスに優れた組成物を提供すること。
【解決手段】カチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分と、を含み、上記カチオン重合性成分が、芳香族エポキシ化合物と、脂肪族エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、を含み、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の中で、上記芳香族エポキシ化合物の含有量が最も多く、上記ラジカル重合性成分が、カチオン反応性基とエチレン性不飽和基とを有する化合物であるカチオン反応性化合物、及び、2個以上のエチレン性不飽和基を有しエチレン性不飽和基当量が100以下の化合物である非カチオン反応性化合物を含む、組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性成分と、
ラジカル重合性成分と、を含み、
前記カチオン重合性成分が、
芳香族エポキシ化合物と、
脂肪族エポキシ化合物と、
オキセタン化合物と、
を含み、
前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の中で、前記芳香族エポキシ化合物の含有量が最も多く、
前記ラジカル重合性成分が、カチオン反応性基とエチレン性不飽和基とを有する化合物であるカチオン反応性化合物、及び、2個以上のエチレン性不飽和基を有しエチレン性不飽和基当量が100以下の化合物である非カチオン反応性化合物を含む、組成物。
【請求項2】
前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計の含有量が、前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物、前記オキセタン化合物、前記カチオン反応性化合物及び前記非カチオン反応性化合物の合計100質量部中に、40質量部以上90質量部以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族エポキシ化合物の含有量が、前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計100質量部中に、30質量部以上60質量部以下であり、
前記脂肪族エポキシ化合物の含有量が、前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計100質量部中に、15質量部以上40質量部以下であり、
前記オキセタン化合物の含有量が、前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計100質量部中に、10質量部以上40質量部以下
である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記芳香族エポキシ化合物がビスフェノール型エポキシ化合物を含み、
前記脂肪族エポキシ化合物が2個以上のエポキシ基を有する鎖状脂肪族エポキシ化合物を含み、
前記オキセタン化合物が多官能オキセタン化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記非カチオン反応性化合物のエチレン性不飽和基の数が3個であり、
前記カチオン反応性化合物のカチオン反応性基が水酸基であり、
前記カチオン反応性化合物のエチレン性不飽和基の数が1個である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン反応性化合物の含有量が、前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物と、カチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物との合計100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であり、
前記非カチオン反応性化合物の含有量が、前記芳香族エポキシ化合物、前記脂肪族エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物と、カチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物との合計100質量部中に、1質量部以上30質量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を硬化する工程を有する硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性及び耐久性に優れた組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物及びラジカル重合性化合物を含む硬化性組成物は、インキ、塗料、各種コーティング剤、接着剤、光学部材等の分野において用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1~2では、エポキシ化合物及びラジカル重合性化合物を含む硬化性組成物が記載されている。また、特許文献1~2では、上記硬化性組成物がプラスチックフィルム等に対して優れた接着力を発揮することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2017/018472
【特許文献2】WO2015/194654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等の硬化性組成物では、例えば、透過率が低い部材越しに露光した場合に、硬化性(初期硬化速度)及び耐久性(湿熱環境後の接着力)が不十分となる場合があるといった不具合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、硬化性及び耐久性のバランスに優れた組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、カチオン重合性成分及びラジカル重合性成分を含む組成物において、カチオン重合性成分として、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン化合物を含み、それらの中で芳香族エポキシ化合物がカチオン重合性成分の主成分であること、さらに、ラジカル重合性成分として、カチオン反応性基を有するラジカル化合物及びカチオン反応性基を有さないラジカル化合物を含むことにより、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、カチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分と、を含み、上記カチオン重合性成分が、芳香族エポキシ化合物と、脂肪族エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、を含み、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の中で、上記芳香族エポキシ化合物の含有量が最も多く、上記ラジカル重合性成分が、カチオン反応性基とエチレン性不飽和基とを有する化合物であるカチオン反応性化合物、及び、2個以上のエチレン性不飽和基を有しエチレン性不飽和基当量が100以下の化合物である非カチオン反応性化合物を含む、組成物である。
本発明によれば、硬化性及び耐久性のバランスに優れた組成物を提供できる。
【0009】
本発明においては、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計の含有量が、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物、上記オキセタン化合物、上記カチオン反応性化合物及び上記非カチオン反応性化合物の合計100質量部中に、40質量部以上90質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0010】
本発明においては、上記芳香族エポキシ化合物の含有量が、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計100質量部中に、30質量部以上60質量部以下であり、上記脂肪族エポキシ化合物の含有量が、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計100質量部中に、15質量部以上40質量部以下であり、上記オキセタン化合物の含有量が、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計100質量部中に、10質量部以上40質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0011】
本発明においては、上記芳香族エポキシ化合物がビスフェノール型エポキシ化合物を含み、上記脂肪族エポキシ化合物が2個以上のエポキシ基を有する鎖状脂肪族エポキシ化合物を含み、上記オキセタン化合物が多官能オキセタン化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0012】
本発明においては、上記非カチオン反応性化合物のエチレン性不飽和基の数が3個であり、上記カチオン反応性化合物のカチオン反応性基が水酸基であり、上記カチオン反応性化合物のエチレン性不飽和基の数が1個であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0013】
本発明においては、上記カチオン反応性化合物の含有量が、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物と、上記カチオン反応性化合物及び上記非カチオン反応性化合物との合計100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であり、上記非カチオン反応性化合物の含有量が、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物と、上記カチオン反応性化合物及び上記非カチオン反応性化合物との合計100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0014】
本発明は、上述の組成物の硬化物である。
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、耐久性に優れた硬化物を提供することができる。
【0015】
本発明は、上述の組成物を硬化する工程を有する硬化物の製造方法である。
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、耐久性に優れた硬化物を容易に形成可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬化性及び耐久性のバランスに優れた組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、組成物、その硬化物及び硬化物の製造方法に関するものである。
以下、本発明の組成物、硬化物、硬化物の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
A.組成物
まず、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、カチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分と、を含み、上記カチオン重合性成分が、芳香族エポキシ化合物と、脂肪族エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、を含み、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の中で、上記芳香族エポキシ化合物の含有量が最も多く、上記ラジカル重合性成分が、カチオン反応性基とエチレン性不飽和基とを有する化合物であるカチオン反応性化合物、及び、2個以上のエチレン性不飽和基を有しエチレン性不飽和基当量が100以下の化合物である非カチオン反応性化合物を含むことを特徴とするものである。
【0019】
上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものである。
ここで、上記組成物が、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなる理由は、以下のように推察される。
【0020】
上記組成物は、カチオン重合性成分として、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン化合物を含み、それらの中で芳香族エポキシ化合物の含有量を最も多くすることで、耐久性に優れたものとなる。
また、芳香族エポキシ化合物と共に、脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン化合物を含むことで、上記組成物は、硬化性に優れたものとなる。
さらに、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン化合物を含むカチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分とを含むこと、特に、ラジカル重合性成分として、特定の非カチオン反応性化合物を含むことで、硬化性に優れたものとなる。また、ラジカル重合性成分として、特定の非カチオン反応性化合物を含むことで、ラジカル重合性成分の重合進行時による分子量増加速度の低下が容易となり、組成物の高粘度化抑制、さらには、カチオン重合性成分及びカチオン重合性成分の重合を促進する酸成分等の拡散低下抑制を図ることができる。その結果、カチオン重合性成分同士の硬化性に優れたものとなるのである。
さらにまた、ラジカル重合性成分としてカチオン反応性化合物を含むことで、カチオン重合性成分同士の架橋が容易となり、耐久性に優れたものとなる。
以上のことより、特定のカチオン重合性成分と、特定のラジカル重合性成分とを組み合わせることにより、上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるのである。
また、脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン化合物は、例えば、脂環式エポキシ化合物等と比較して、組成物の低粘度化が容易となる。このため、カチオン重合性成分として、芳香族エポキシ化合物と共に、脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン化合物を含むことで、上記組成物は、例えば溶剤除去後の硬化性に優れるとの効果を発揮することができ、さらに、溶剤量が少ない場合でも、塗布性に優れたものとなるとの効果を発揮可能となる。
【0021】
本発明の組成物は、カチオン重合性成分及びラジカル重合性成分を含むものである。
以下、本発明の組成物の各成分について説明する。
【0022】
1.カチオン重合性成分
カチオン重合性成分は、カチオン重合性化合物の1種又は2種以上からなるものである。
このようなカチオン重合性化合物としては、酸発生剤から発生した酸により重合反応又は架橋反応を起こす化合物であればよく、例えば、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基、環状ラクトン基、環状アセタール基、環状チオエーテル基、スピロオルトエステル基、ビニルエーテル基等を有する化合物が挙げられる。
すなわち、カチオン重合性成分は、カチオン重合性化合物として、例えば、エポキシ化合物及びオキセタン化合物等の環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物並びにビニルエーテル化合物等を含むことができる。
本発明においては、カチオン重合性成分が、芳香族エポキシ化合物と、脂肪族エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、を含む。
本発明において、エチレン性不飽和基を有する化合物及びアルコキシシリル基を有する化合物はカチオン重合性成分に含まれないものとする。
本発明において、エポキシ化合物にはエポキシ基を含む全ての化合物が含まれるものとする。例えば、エポキシ基及びオキセタニル基の両者を含む化合物はエポキシ化合物に該当するものとなる。
【0023】
(1)芳香族エポキシ化合物
上記芳香族エポキシ化合物は、芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であり、複数のエポキシ基を有していてもよい。また、上記芳香族エポキシ化合物は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられる。本発明においては、芳香環がベンゼン環であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0024】
このような芳香族エポキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の一価フェノール、及びそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、2個以上の芳香環を有する多価フェノール、及びそのアルキレンオキサイド付加物等の多価フェノール類のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ化合物;レゾルシノール、ハイドロキノン及びカテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール類のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノール、ベンゼンジエタノール及びベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;フタル酸、テレフタル酸及びトリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;安息香酸、トルイル酸及びナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル;スチレンオキサイド及びジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物に用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0025】
上記芳香族エポキシ化合物中のエポキシ基の数は、1以上であればよいが、2以上であることが好ましく、2以上10以下であることが好ましく、2以上5以下であることが好ましく、2以上3以下であることが好ましく、2であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0026】
上記芳香族エポキシ化合物中の芳香環の数としては、1以上であればよいが、2以上であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0027】
本発明においては、芳香族エポキシ化合物が、少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルであることが好ましく、2個以上の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることがより好ましく、特に、下記一般式(6-1)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0028】
【化1】
(式中、R62-1及びR63-1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
r1及びs1は、それぞれ独立に、0~5の数を表し、
61-1は、下記一般式(7)で表される二価の芳香環含有基を表す。)
【0029】
【化2】
(式中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86及びR87は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
及びZは、それぞれ独立に、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、アルキレン基中の水素原子はメチル基又はハロゲン原子で置換されてもよく、
tは、0~5の整数を表し、
uは、0~30の整数を表し、
*は、結合箇所を表す。)
【0030】
一般式(6-1)のR62-1及びR63-1で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0031】
一般式(7)のR71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86及びR87で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、一般式(6-1)のR62-1及びR63-1で表される炭素原子数1~4のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0032】
一般式(7)のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチリデン基、エチレン基、エチリデン基、n-プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、メチルエチレン基、n-ブチレン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、sec-ブチリデン基、1,2-ジメチルエチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0033】
一般式(7)のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基中の水素原子を置換するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0034】
一般式(6-1)において、r1及びs1は、それぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、なかでも、0~2の整数であることが好ましく、0~1の整数であることがより好ましく、特に0であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0035】
一般式(7)において、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86及びR87が、水素原子又は炭素原子数1~2のアルキル基、すなわち、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0036】
一般式(7)において、Z及びZが、それぞれ独立に、炭素原子数1~4のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数2~4のアルキレン基であることが好ましい。
一般式(7)において、Z及びZが、連結されるベンゼン環間の炭素原子数が1であるアルキリデン基であること、すなわち、上記芳香族エポキシ化合物が、ビスフェノール構造を有する化合物であることが好ましい。上記の連結されるベンゼン環間の炭素原子数が1であるアルキリデン基は、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等の炭素原子数2~3のアルキリデン基であることが好ましく、なかでも特に、エチリデン基、イソプロピリデン基等であること、すなわち、上記芳香族エポキシ化合物が、ビスフェノールA型構造、ビスフェノールF型構造等のビスフェノール構造を有する化合物であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0037】
一般式(7)において、tが、0~3であることが好ましく、なかでも、0~1であることが好ましい。また、uが、0~10であることが好ましく、なかでも、0~5であることが好ましく、特に、0~2であることが好ましく、なかでも特に、0~1であることが好ましい。t及びuが上記範囲であることで、上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0038】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の中で最も多いものである。
ここで、上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の中で最も多いとは、含有質量を比較した場合に、上記芳香族エポキシ化合物の含有量が、上記脂肪族エポキシ化合物の含有量より多く、かつ、上記オキセタン化合物の含有量よりも多いことをいうものである。
したがって、上記芳香族エポキシ化合物の含有量が、上記脂肪族エポキシ化合物の含有量より多いが、上記オキセタン化合物の含有量と同量である場合は、「最も多い」に該当しない。
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物と、上記脂肪族エポキシ化合物との合計100質量中に、50質量部超であればよく、51質量部以上80質量部以下であることが好ましく、53質量部以上70質量部以下であることが好ましく、55質量部以上60質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物と、上記オキセタン化合物との合計100質量中に、50質量部超であればよく、51質量部以上90質量部以下であることが好ましく、60質量部以上85質量部以下であることが好ましく、65質量部以上75質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0039】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の中で最も多いものであればよいが、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計100質量部中に、30質量部以上60質量部以下であることが好ましく、35質量部以上55質量部以下であることがより好ましく、特に40質量部以上50質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0040】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計の含有量が、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物、上記オキセタン化合物、カチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物の合計100質量部中に、40質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、50質量部以上88質量部以下であることが好ましく、なかでも、60質量部以上85質量部以下であることが好ましく、なかでも、70質量部以上83質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0041】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記組成物100質量部中に、15質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、20質量部以上50質量部以下であることが好ましく、特に、25質量部以上45質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、25質量部以上45質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0042】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記組成物の固形物100質量部中に、15質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、20質量部以上50質量部以下であることが好ましく、特に、25質量部以上45質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、25質量部以上45質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
なお、以下、組成物の固形分は、組成物中の溶剤以外の全ての成分の合計をいうものである。
【0043】
上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計の含有量は、上記組成物100質量部中に、30質量部以上93質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上90質量部以下であることが好ましく、特に、60質量部以上85質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、65質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0044】
上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中に、30質量部以上93質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上90質量部以下であることが好ましく、特に、60質量部以上85質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、65質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0045】
上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物、上記オキセタン化合物、カチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物の合計の含有量が、上記組成物100質量部中に、80質量部以上99質量部以下であることが好ましく、なかでも、85質量部以上98質量部以下であることが好ましく、特に、90質量部以上95質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、91質量部以上94質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0046】
上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物、上記オキセタン化合物、カチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物の合計の含有量が、上記組成物の固形分100質量部中に、80質量部以上99質量部以下であることが好ましく、なかでも、85質量部以上98質量部以下であることが好ましく、特に、90質量部以上97質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、92質量部以上96質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0047】
(2)脂肪族エポキシ化合物
上記脂肪族エポキシ化合物は、エポキシ基を有し、芳香族環及び脂環式エポキシ基を有しない化合物である。上記脂環式エポキシ基とは、シクロアルケンオキサイド構造を指す。
上記脂肪族エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であり、複数のエポキシ基を有していてもよい。また、上記脂肪族エポキシ化合物は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
このような脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族炭化水素環を含まない鎖状脂肪族エポキシ化合物、及び脂肪族炭化水素環を含む脂肪族環含有エポキシ化合物が挙げられる。
本発明においては、脂肪族エポキシ化合物が、鎖状脂肪族エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0049】
上記鎖状脂肪族エポキシ化合物としては、2個以上のエポキシ基を有する鎖状エポキシ化合物であることが好ましく、例えば、下記式(6-2)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化3】
(一般式(6-2)中、R62-2及びR63-2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
r2及びs2は、それぞれ独立に、0~5の数を表し、
61-2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、又は炭素原子数1~10のアルキレン基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が酸素原子で置換された構造の基を表す。)
【0051】
上記式(6-2)中のR61-2で表される炭素原子数1~10のアルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキル基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0052】
上記炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基及びイソデシル基等が挙げられる。
【0053】
上記R61-2としては、炭素原子数2~8のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数2~8のアルキレン基、又は炭素原子数5~8のアルキレン基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が酸素原子で置換された構造の基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
上記R61-2に用いられるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよいが、分岐状であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0054】
一般式(6-2)において、r2及びs2は、それぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、なかでも、0~2の整数であることが好ましく、特に、0~1の整数であることが好ましく、なかでも特に0であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0055】
脂肪族環含有エポキシ化合物としては、例えば、下記式(6-3)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化4】
(一般式(6-3)中、R62-3及びR63-3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
r3及びs3は、それぞれ独立に、0~5の数を表し、
61-3は、シクロアルキル環を有する二価の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0057】
一般式(6-3)のR62-3及びR63-3で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、一般式(6-1)中のR62-1及びR63-1で表される炭素原子数1~4のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0058】
一般式(6-3)において、r3及びs3は、それぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、なかでも、0~2の整数であることが好ましく、特に、0~1の整数であることが好ましく、なかでも特に0であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0059】
上記R61-3で表されるシクロアルキル環を有する二価の脂肪族炭化水素基におけるシクロアルキル環としては、シクロアルキル基から水素原子を1つ除いたシクロアルキレン基が挙げられる。
【0060】
上記シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、テトラメチルシクロヘキシル基、ペンタメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基及びメチルシクロヘプチル基等の単環式脂肪族炭化水素基;ビシクロ[2.1.1]ヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[4.3.1]デシル基、ビシクロ[3.3.1]ノニル基、ボルニル基、ボルネニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル基、トリシクロブチル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0061】
上記R61-3で表されるシクロアルキル環を有する二価の脂肪族炭化水素基としては、上記シクロアルキル基から水素原子を1つ除いたシクロアルキレン基と、アルキレン基とを組み合わせた基も挙げられる。
上記R61-3の炭素原子数としては、3以上20以下であることが好ましく、6以上18以下であることがより好ましく、特に、10以上15以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0062】
また、脂肪族環含有エポキシ化合物として、下記式(2-3)で表される化合物も挙げられる。
【0063】
【化5】
【0064】
上記式(2-3)中、R21は、炭素原子数1~10のt価の脂肪族炭化水素基であり、sは、1~30の整数を表し、tは、1~10の整数を表す。tが2以上の場合、複数のsはそれぞれ異なっていてもよい。
【0065】
上記式(2-3)中のR21で表される炭素原子数1~10のt価の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~10のアルキル基から水素原子をt-1個除いた基が挙げられる。
上記炭素原子数1~10のアルキル基は、上記式(2-1)の説明で例示した炭素原子数1~10のアルキル基と同様である。
【0066】
上記脂肪族エポキシ化合物中のエポキシ基の数は、1以上であればよいが、2以上であることが好ましく、2以上10以下であることが好ましく、2以上5以下であることが好ましく、2以上3以下であることが好ましく、2であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0067】
上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計100質量部中に、15質量部以上40質量部以下であることが好ましく、20質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、特に30質量部以上40質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0068】
上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、上記組成物100質量部中に、5質量部以上45質量部以下であることが好ましく、なかでも、10質量部以上40質量部以下であることが好ましく、特に、15質量部以上35質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、20質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0069】
上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、上記組成物の固形物100質量部中に、5質量部以上45質量部以下であることが好ましく、なかでも、10質量部以上40質量部以下であることが好ましく、特に、15質量部以上35質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、20質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0070】
(3)オキセタン化合物
上記オキセタン化合物は、オキセタニル基を有し、エポキシ基を有しない化合物である。
上記オキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタニル基を有する化合物であり、複数のオキセタニル基を有していてもよい。また、上記オキセタン化合物は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記オキセタン化合物のうち、オキセタニル基を1つ有する化合物としては、例えば、下記式(3-1)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【化6】
【0073】
上記式(3-1)中、R31は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R32は炭素原子数1~10のアルキル基を表す。
【0074】
上記式(3-1)中のR31及びR32で表される炭素原子数1~10のアルキル基は、上記式(3-1)の説明で例示した炭素原子数1~10のアルキル基と同様である。
【0075】
上記式(3-1)で表される化合物の具体例としては、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(メトキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチロキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
【0076】
また、オキセタニル基を2つ有する化合物としては、例えば、下記式(3-2)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
【化7】
【0078】
上記式(3-2)中、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、Zは炭素原子数2~20の連結基を表し、nは0~3の整数を表す。
【0079】
上記式(3-1)中のR33及びR34で表される炭素原子数1~10のアルキル基は、上記式(3-1)の説明で例示した炭素原子数1~10のアルキル基と同様である。
【0080】
上記式(3-2)中のZで表される炭素原子数2~20の連結基としては、炭素原子数2~10のアルキレン基及び炭素原子数8~20の芳香環含有基等が挙げられる。
上記式(3-2)中のZで表される炭素原子数2~10のアルキレン基としては、炭素原子数2~10のアルキル基から水素原子を1個除いた基が挙げられ、該アルキル基としては、上記式(2-1)の説明で例示した炭素原子数1~10のアルキル基のうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。具体的には、メチルメチン基、イソプロピリデン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。
【0081】
上記式(3-2)中のZで表される炭素原子数8~20の芳香環含有基としては、ベンゼン環1~2個と、アルキレン基、カーボネート基、アミド基若しくはこれらが複数連結した基を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基としては、上述の連結基として用いることができるものとして記載の内容と同様とすることができる。
このような芳香環含有基としては、具体的には、下記式(3a)~(3d)で表される基等が挙げられる。
【0082】
【化8】
【0083】
上記式(2-2)で表される化合物の具体例としては、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシメチル)オキセタン、キシリレンビスオキセタン等が挙げられる。
【0084】
オキセタン化合物の市販品としては、例えば、アロンオキセタンOXT-101、OXT-212、OXT-121、OXT-221(東亞合成製)、エタナコールEHO、HBOH、OXBP、OXIPA(宇部興産製)等が挙げられる。
【0085】
本発明においては、オキセタン化合物が、2個以上のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物を含むことが好ましく、上記式(3-2)で表される化合物を含むことがより好ましい。さらに、上記式(3-2)中のR33及びR34が、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、特に炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。
また、nが0であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0086】
上記オキセタン化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物の合計100質量部中に、10質量部以上40質量部以下であることが好ましく、15質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、特に15質量部以上25質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0087】
上記オキセタン化合物の含有量は、上記組成物100質量部中に、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上25質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、10質量部以上20質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0088】
上記オキセタン化合物の含有量は、上記組成物の固形物100質量部中に、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上25質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、10質量部以上20質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0089】
(4)その他のカチオン重合性化合物
上記カチオン重合性成分は、上記芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン化合物以外の、その他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。その他のカチオン重合性化合物としては、脂環式エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物が挙げられる。
上記その他のカチオン重合性化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、オキセタン化合物及びその他のカチオン重合性化合物の合計100質量部中に、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましく、特に1質量部以下であることが好ましい。上記組成物における硬化性及び耐久性のバランスの調整が容易となるからである。
【0090】
(4-1)脂環式エポキシ化合物
上記脂環式エポキシ化合物は、シクロアルケンオキサイド構造を有する化合物である。
上記シクロアルケンオキサイド構造は、シクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド構造やシクロペンテンオキサイド構造のように、脂肪族環とエポキシ環とが環構造の一部を共有する構造である。
【0091】
上記脂環式エポキシ化合物として、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0092】
(4-2)ビニルエーテル化合物
ビニルエーテル化合物は、ビニルエーテル構造を有し、エポキシ基を有しない化合物である。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,6-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0093】
ビニルエーテル化合物の市販品としては、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学製)が挙げられる。
【0094】
2.ラジカル重合性成分
上記ラジカル重合性成分は、ラジカル重合可能な化合物、具体的には、エチレン性不飽和基を有する化合物の1種又は2種以上を含むものである。上記エチレン性不飽和基を有する化合物には、エポキシ基及びオキセタニル基を有する化合物も含まれる。
【0095】
上記エチレン性不飽和基としては、メタクリル基、アクリル基、アリル基等が挙げられる。
本発明においては、メタクリル基又はアクリル基であること、すなわち、ラジカル重合化合物がメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルであることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0096】
また、上記ラジカル重合性成分は、カチオン反応性基を有するカチオン反応性化合物及びカチオン反応性基を有しない非カチオン反応性化合物を含むものである。
【0097】
(1)カチオン反応性化合物
上記カチオン反応性化合物は、カチオン反応性基とエチレン性不飽和基とを有する化合物である。
【0098】
上記カチオン反応性基とは、上述の芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物が有するエポキシ基、上述のオキセタン化合物が有するオキセタニル基と反応して共有結合を形成可能な基であり、具体的には、水酸基、エポキシ基、オキセタニル基及びカルボキシ基が挙げられる。
本発明においては、上記カチオン反応性基が水酸基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0099】
上記カチオン反応性化合物が有するカチオン反応性基の数は、1以上であればよいが、1以上3以下であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、特に1であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。特に、カチオン重合成分とラジカル重合性成分との架橋による耐久性向上と、カチオン重合性成分同士の硬化反応の抑制とのバランスに優れたものとなるからである。
【0100】
上記カチオン反応性化合物が有するエチレン性不飽和基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、特に1であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0101】
上記カチオン反応性化合物としては、例えば、下記一般式(4-1)で表される化合物が挙げられる。
【0102】
【化9】
(一般式(4-1)中、R41は、水素原子又はメチル基を表し、
41は、基中の水素原子の1つ以上がカチオン反応性基で置換された炭素原子数2~20の炭化水素基又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が-O-で置換された基を表し、
41は、1~3の整数を表す。)
【0103】
上記一般式(4-1)中の炭素原子数2~20の炭化水素基としては、炭素原子数2~20の脂肪族炭化水素基及び炭素原子数6~20の芳香環含有炭化水素基が挙げられる。
【0104】
上記炭素原子数2~20の脂肪族炭化水素基としては、脂肪族炭化水素環を有する脂肪族環含有炭化水素基、脂肪族炭化水素環を有さない鎖状脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、1価の基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖又は分岐の鎖状脂肪族炭化水素基であるアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;及びシクロヘキシルメチル基等シクロアルキルアルキル基、並びにこれらの基の炭素-炭素一重結合を、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合に置換した構造である不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0105】
上記炭素原子数6~20の芳香環含有炭化水素基としては、芳香族炭化水素環からn41個の水素原子を除いた芳香族炭化水素環基、芳香族炭化水素環とアルキレン基とが結合した化合物から、n41個の水素原子を除いた基等を用いることができる。
芳香環含有炭化水素基における芳香環としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、フェナントリル、ピレン等の単環又は縮合環、ビフェニル等の結合環等が挙げられる。
【0106】
41に用いられる炭化水素基としては、炭素原子数2~15の炭化水素基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数2~7の脂肪族炭化水素基、炭素原子数8~15の芳香環含有炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素原子数3~6の脂肪族炭化水素基、炭素原子数9~12の芳香環含有炭化水素基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
41に用いられる脂肪族炭化水素基としては、鎖状脂肪族炭化水素基直鎖、分岐のいずれも用いることができるが、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
41に用いられる芳香環含有炭化水素基としては、芳香族炭化水素環基であってもよいが、芳香族炭化水素環とアルキレン基とが結合した化合物から、n41個の水素原子を除いた基であることが好ましく、なかでも、芳香族炭化水素環とアルキレン基とが結合した化合物中のアルキレン基から、少なくとも1つの水素原子を除いた基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0107】
上記一般式(4-1)に用いられる、基中の水素原子の1つ以上がカチオン反応性基で置換された炭素原子数2~20の炭化水素基としては、1つ以上3つ以下の水素原子がカチオン反応性基で置換されている基であることが好ましく、1つ又は2つの水素原子がカチオン反応性基で置換されている基であることがより好ましく、特に1つの水素原子がカチオン反応性基で置換されている基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0108】
例えば、上記一般式(4-1)においては、n41が1以上3以下であることが好ましく、n41が1又は2であることがより好ましく、特にn41が1であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0109】
上記カチオン反応性化合物として好ましい化合物としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールトリメタクリレート等が挙げられる。
【0110】
上記カチオン反応性化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物とカチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物との合計100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、特に5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0111】
上記カチオン反応性化合物の含有量は、上記組成物100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0112】
上記カチオン反応性化合物の含有量は、上記組成物の固形物100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0113】
(2)非カチオン反応性化合物
上記非カチオン反応性化合物は、2個以上のエチレン性不飽和基を有しエチレン性不飽和基当量が100以下の化合物であり、上記カチオン反応性基を有しない化合物である。
【0114】
本発明においては、上記非カチオン反応性化合物のエチレン性不飽和基当量が90以下であることがより好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
また、上記非カチオン反応性化合物のエチレン性不飽和基当量の下限については、80以上であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0115】
上記非カチオン反応性化合物が有するエチレン性不飽和基の数は、2以上であればよいが、2以上6以下であることがより好ましく、特に2以上4以下であることが好ましく、なかでも特に、2以上3以下であることが好ましく、なかでも特に、3であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。特に、上記組成物は、ラジカル重合性成分の重合時の分子量増加速度が適度に抑制され、急激な粘度上昇を抑制できる。その結果、ラジカル重合よりも反応の遅いカチオン重合性成分同士の硬化反応の阻害を抑制できる。このようなことにより、上記組成物は、ラジカル重合性成分の重合とカチオン重合性成分の硬化反応のバランスに優れたものとすることができるからである。
【0116】
上記非カチオン反応性化合物としては、例えば、下記一般式(4-2)で表される化合物が挙げられる。
【0117】
【化10】
(一般式(4-2)中、R42は、水素原子又はメチル基を表し、
42は、炭素原子数3~20の炭化水素基又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が-O-で置換された基を表し、
42は、2~6の整数を表す。)
【0118】
上記一般式(4-2)で表される化合物においては、特にn42が2以上4以下であることが好ましく、なかでも特に、2以上3以下であることが好ましく、なかでも特に、3であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0119】
上記一般式(4-2)中の炭素原子数2~20の炭化水素基は、上記一般式(4-1)中の炭素原子数2~20の炭化水素基と同様である。
【0120】
42に用いられる炭化水素基としては、炭素原子数2~15の炭化水素基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数2~6の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素原子数2~4の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。特に、上記組成物は、ラジカル重合性成分の重合時の分子量増加速度が適度に抑制され、急激な粘度上昇を抑制できる。その結果、ラジカル重合よりも反応の遅いカチオン重合性成分同士の硬化反応の阻害を抑制できる。このようなことにより、上記炭化水素基を用いることで、ラジカル重合性成分の重合とカチオン重合性成分の硬化反応のバランスに優れたものとすることができるからである。
41に用いられる脂肪族炭化水素基としては、直鎖、分岐のいずれも用いることができるが、直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0121】
上記非カチオン反応性化合物として好ましい化合物としては、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0122】
上記非カチオン反応性化合物の含有量は、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物とカチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物との合計100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、特に5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0123】
上記非カチオン反応性化合物の含有量は、上記組成物100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0124】
上記非カチオン反応性化合物の含有量は、上記組成物の固形物100質量部中に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特に、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0125】
(3)その他のラジカル重合性化合物
上記組成物は、上記カチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物以外の、その他のラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。
上記その他のラジカル重合性化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物の合計100質量部中に、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましく、特に1質量部以下であることが好ましい。上記組成物における硬化性及び耐久性のバランスの調整が容易となるからである。
【0126】
3.酸発生剤
上記組成物は、硬化を容易にするため、酸発生剤を含んでいてもよい。
上記酸発生剤としては、所定の条件により酸を発生させることが可能な化合物であればどのようなものでもよく、特に限定されるものではない。
このような酸発生剤としては、例えば、紫外線照射等の光照射により酸を発生させることが可能な光酸発生剤、及び熱により酸を発生させることが可能な熱酸発生剤が挙げられる。
本発明においては、硬化性に優れることから、上記組成物が光酸発生剤を含むことが好ましい。
【0127】
上記光酸発生剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線、高周波のような活性エネルギー線(以下、単に「エネルギー線」ともいう)照射により酸を発生させることが可能な化合物である。
【0128】
上記光酸発生剤としては、オニウム塩である複塩又はその誘導体、あるいはオキシムスルホネート化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、ジアゾメタン化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、鉄アレーン錯体、アセトフェノン誘導体化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、光酸発生剤が、オニウム塩である複塩又はその誘導体であることが好ましい。このような光酸発生剤であることで、上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0129】
オニウム塩である複塩又はその誘導体としては、例えば、下記一般式(i)で表される陽イオンと陰イオンの塩が挙げられる。
[A]m+[B]m- (i)
【0130】
ここで、陽イオン[A]m+はオニウムであり、その構造は、例えば、下記一般式で表すことができる。
[(R101Q]m+ (ii)
上記一般式(ii)中、R101は炭素原子数が1~60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいてもよい有機基を表す。
aは1~5の整数を表す。
a個のR101は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。
a個のR101のうち、少なくとも1つが、芳香環を有する上記有機基を表す。
QはS、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F及びN=Nからなる群から選ばれる原子又は原子団を表す。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a-qなる関係が成り立つことが必要である。ただし、N=Nは原子価0として扱う。
【0131】
また、陰イオン[B]m-は、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式(iii)で表すことができる。
[LXm- (iii)
上記一般式(iii)中、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)を表し、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn又はCoである。
Xはハロゲン原子を表す。
bは3~7の整数を表す。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b-pなる関係が成り立つことが必要である。
【0132】
上記一般式(iii)の陰イオン[LXm-の具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(CB]、テトラフルオロボレート(BF、ヘキサフルオロホスフェート(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl、トリス(ペンタフルオロメチル)トリフルオロリン酸イオン(FAPアニオン)等が挙げられる。
【0133】
また、陰イオン[B]m-は、下記一般式(iv)で表される構造であってもよい。
[LXb-1(OH)]m- (iv)
ここで、L、X及びbは上記と同様である。
また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、カンファースルフォネート、ノナフロロブタンスルフォネート、ヘキサデカフロロオクタンスルフォネート、テトラアリールボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0134】
本発明においては、このようなオニウム塩の中でも、下記群I又は群IIで表されるトリフェニルスルホニウムカチオン等のスルホニウムカチオンと、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の陰イオンとのスルホニウム塩が好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0135】
【化11】
【0136】
【化12】
【0137】
上記光酸発生剤の含有量は、単独又は複数種の合計で、上記芳香族エポキシ化合物、上記脂肪族エポキシ化合物及び上記オキセタン化合物とカチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上7質量部以下がより好ましく、特に、1質量部以上5質量部以下が好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
なお、光酸発生剤の市販品は、溶剤に分散又は溶解された状態で販売されることがあるが、本発明における酸発生剤の含有量は、溶剤を除いた固形分としての含有量を表すものである。
【0138】
4.ラジカル開始剤
上記組成物は、硬化を容易にするため、ラジカル開始剤を含んでいてもよい。
ラジカル開始剤としては、ラジカルを発生し、ラジカル重合性成分同士を重合可能なものであればよい。このようなラジカル開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤のいずれも用いることができるが、硬化速度に優れることから、光ラジカル重合開始剤が好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0139】
上記ラジカル発生剤は、エネルギー線の照射によりラジカルを発生させることが可能な化合物である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4’-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4’-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4’-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のオキサイド類;3-(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-メチルカルバゾール等のカルバゾール類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα-ジカルボニル類;特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特開2005-97141号公報、特表2006-516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、国際公開第2006/018973号公報、特開2011-132215号公報、国際公開第2015/152153号公報に記載の化合物等のオキシムエステル類;p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-s-トリアジン等のトリアジン類;過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7-ビス(9’-アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。
【0140】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチルバレレート、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類;テトラメチルチラウムジスルフィド等が挙げられる。
【0141】
ラジカル開始剤の含有量は、ラジカル重合性成分として含まれるカチオン反応性化合物及び非カチオン反応性化合物の合計100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも、1質量部以上35質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、15質量部以上25質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0142】
5.増感剤
上記組成物は、光酸発生剤からの酸発生量を向上させて組成物を高感度とするために増感剤を含んでいてもよい。
本発明においては、より低露光量で組成物を硬化できることから、カルバゾール系増感剤が好ましい。
カルバゾール系増感剤としては、例えば、下記式(5-1)、(5-2)、(5-3)及び(5-4)で表される化合物等が挙げられる。
【0143】
【化13】
(式中、R201は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~30のアリール基を表し、
202、R203、R204、R205、R206、R207、R208及びR209は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、シアノ基、水酸基又はカルボキシ基を表す。)
【0144】
【化14】
(式中、R211は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~30のアリール基を表し、
212、R213、R214、R215、R216、R217、R218、R219、R220及びR221は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、シアノ基、水酸基又はカルボキシ基を表す。)
【0145】
【化15】
(式中、R231は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~30のアリール基を表し、
232、R233、R234、R235、R236、R237、R238、R239、R240及びR241は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、シアノ基、水酸基又はカルボキシ基を表す。)
【0146】
【化16】
(式中、R251は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、ビニル基又は炭素原子数6~30のアリール基を表し、
252、R253、R254、R255、R256、R257、R258、R259、R260及びR261は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、シアノ基、水酸基又はカルボキシ基を表す。)
【0147】
上記式(5-1)、(5-2)、(5-3)及び(5-4)中の炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、「2.脂肪族エポキシ化合物」の項で例示した「炭素原子数1~10のアルキル基」に加えて、4-エチルオクチル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、n-トリデシル基、1-ヘキシルヘプチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基、n-トリコシル基及びn-テトラコシル基等が挙げられる。
【0148】
上記式(5-1)、(5-2)、(5-3)及び(5-4)中の炭素原子数6~30のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、3,4,5-トリメトキシフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基及びフェナントリル基等を挙げることができる。
【0149】
上記式(5-1)、(5-2)、(5-3)及び(5-4)中の炭素原子数1~30のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、アミルオキシ基、イソアミルオキシ基、t-アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、t-オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、4-エチルオクチルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、1,3,5,7-テトラメチルオクチルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基、n-トリコシルオキシ基及びn-テトラコシルオキシ基等が挙げられる。
【0150】
本発明においては、上記カルバゾール系増感剤が、上記式(5-2)、(5-3)、(5-4)で表される化合物であることが好ましく、なかでも、上記式(5-2)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
上記式(5-2)、(5-3)、(5-4)中のR211は、炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数3~15のアルキル基であることがより好ましく、特に、炭素原子数5~12のアルキル基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
211に用いられるアルキル基は、直鎖のアルキル基であってもよいが、分岐のアルキル基であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
また、R212、R213、R214、R215、R216、R217、R218、R219、R220及びR221は、水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0151】
上記増感剤の含有量は、上記酸発生剤100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下が好ましく、5質量部以上50質量部以下がより好ましく、特に、10質量部以上30質量部以下が好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0152】
6.溶剤
上記組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。
上記溶剤は、常温(25℃)大気圧下で液状であり、組成物中の各成分を分散又は溶解可能なものであり、上記酸発生剤及びラジカル開始剤の作用により、組成物中の他の成分と反応しないものである。
したがって、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、上述のカチオン重合性成分、ラジカル重合性成分、酸発生剤、ラジカル開始剤及び増感剤は、上記溶剤には含まれない。
【0153】
このような溶剤としては、水、有機溶剤のいずれも用いることができるが、有機溶剤を好ましく用いることができる。
【0154】
上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、1-t-ブトキシ-2-プロパノール、3-メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶剤は1種又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。これらの中でも、ケトン類、エーテルエステル系溶剤等、特にプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらの溶剤は1種又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。
上記有機溶剤の中でも、ケトン類、アルコール系溶剤、エーテルエステル系溶剤、芳香族系溶剤等であることが好ましく、なかでも、エーテルエステル系溶剤、アルコール系溶剤であることが好ましい。上記組成物は、硬化感度及び分散安定性により優れたものとなるからである。
【0155】
上記溶剤の含有量は、上記組成物100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができ、10質量部以上80質量部以下であることが好ましく、15質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上40質量部以下であることが特に好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れたものとなるからである。
【0156】
7.その他の成分
上記組成物は、上述の各成分に加え、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、無機フィラー、有機フィラー、シランカップリング剤、着色剤、光増感剤、消泡剤、増粘剤、チクソ剤、界面活性剤、レベリング剤、難燃剤、可塑剤、安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、静電防止剤、流動調整剤及び接着促進剤等の各種添加物等が挙げられる。
【0157】
8.組成物
上記組成物の製造方法としては、上記各成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、カチオン重合性成分及びラジカル重合性成分を混合した後に、酸発生剤及びラジカル開始剤を添加する方法等が挙げられる。なお、混合方法については、公知の混合装置を用いる方法を採用でき、例えば、3本ロール、サンドミル、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。
【0158】
本発明の組成物の用途としては、硬化物を形成して使用する用途であれば特に限定されるものではなく、光学フィルム、接着剤、メガネ、撮像用レンズに代表される光学材料、塗料、コーティング剤、ライニング剤、インキ、高屈折材料、水溶性材料、半導体・ディスプレイ・MEMS・医療機器用レジスト、液状レジスト、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜、層間絶縁膜、保護膜、カラーフィルタの保護膜、スペーサー、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、ハードディスク用記録材料、固体撮像素子、発光ダイオード、有機発光デバイス、ルミネセントフィルム、蛍光フィルム、アクチュエーター、ホログラム、プラズモンデバイス、偏光板、偏光フィルム、位相差フィルム、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等のレンズシートのレンズ部、又はこのようなシートを用いたバックライト等、マイクロレンズ等の光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、光学的造形用注型剤等が挙げられる。
【0159】
本発明の組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れるとの効果をより効果的に発揮できる観点から、接着剤に用いられることが好ましい。接着剤の具体的な用途としては、メガネや撮像用レンズに代表される光学材料、積層板やプリント基盤に代表される電子材料用途、ヘッドアップディスプレイやカーナビゲーションに代表される車載用機器及び有機ELや液晶に代表されるディスプレイパネル等が挙げられる。なかでも、透明性が要求される用途に用いられることが好ましく、特に、光学材料、車載用機器、ディスプレイパネル等に用いられる光学部材同士の接着用に用いられることが好ましい。
車載用機器、ディスプレイパネル等に含まれる光学部材としては、可視光透過性を有するものが挙げられ、例えば、カラーフィルタ、カバー層、タッチパネル、透明電極層、偏光板等が挙げられる。また、上記光学部材としては、偏光子及び保護フィルム等の偏光板の構成部材等も挙げられる。
【0160】
接着剤により接着される被着体は、無機材料及び有機材料のいずれも用いることができる。
有機材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリイミド;ポリウレタン;エポキシ樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物;ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられる。
また、無機材料としては、例えば、ソーダガラス及び石英ガラス等のガラス、金属、金属酸化物等が挙げられる。
本発明においては、被着体が有機材料であることが好ましく、特に、ポリカーボネート、ポリエステル及びアクリル系樹脂であることが好ましい。硬化性及び耐久性のバランスに優れるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0161】
本発明の組成物の用途は、紫外光透過率の低い光学部材の接着用であることがより好ましい。上記組成物は、硬化性及び耐久性のバランスに優れるとの効果をより効果的に発揮でき、例えば、紫外光透過率の低い光学部材越しにエネルギー線照射される場合でも、優れた硬化性及び耐久性を発揮できるからである。
紫外光透過率の低い光学部材としては、可視光の透過性を有し、紫外線(280nm以上380nm)の透過率が低いものであればよい。
本発明における紫外光透過率の低い光学部材としては、波長280mnの光透過率が、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、特に1%以下であることが好ましい。上記組成物の硬化性及び耐久性のバランスに優れるとの効果を効果的に発揮できるからである。
本発明における紫外光透過率の低い光学部材としては、波長340nmの光透過率が、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、特に1%以下であることが好ましい。上記組成物の硬化性及び耐久性のバランスに優れるとの効果を効果的に発揮できるからである。
本発明における紫外光透過率の低い光学部材としては、波長400nmの光透過率が、1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、特に50%以上であることが好ましい。硬化性及び耐久性のバランスに優れるとの効果を効果的に発揮できるからである。
なお、紫外光透過率の低い光学部材の光透過率は、通常、上記組成物が接着剤として用いられる場合、上記組成物の硬化物の厚み方向をいうものである。より具体的には、上記組成物の硬化物を挟持する2種類の部材間距離が最短となる方向の光透過率をいうものである。
【0162】
B.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上述の組成物の硬化物であることを特徴とするものである。
【0163】
上記硬化物は、上述の組成物を用いているため、耐久性に優れた硬化物を提供することができる。
なお、上述の組成物については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様である。
【0164】
上記硬化物の用途については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様である。
【0165】
上記硬化物の製造方法としては、上記組成物の硬化物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「C.硬化物の製造方法」の項に記載の製造方法が挙げられる。
【0166】
C.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、上述の組成物を硬化する工程を有するものである。すなわち、上記組成物中のカチオン重合性成分同士、ラジカル重合性成分同士及びカチオン重合性成分とラジカル重合性成分中のカチオン反応性化合物を反応させることを特徴とするものである。
なお、上記組成物については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様である。
【0167】
1.硬化する工程
上記組成物を硬化する方法としては、上記酸発生剤から酸を発生させ、上記組成物中のカチオン重合性成分同士及びカチオン重合性成分とラジカル重合性成分中のカチオン反応性化合物とを反応させる方法、並びに、上記ラジカル開始剤からラジカルを発生させ、上記組成物中のラジカル重合性成分同士を反応させる方法が挙げられる。
【0168】
上記酸発生剤から酸を発生させる方法及び上記ラジカル開始剤からラジカルを発生させる方法については、上記「A.組成物」の項に記載の方法と同様の方法を挙げることができる。
本工程においては、上記酸発生剤から酸を発生させる方法及び上記ラジカル開始剤からラジカルを発生させる方法のいずれもエネルギー線を照射する方法を含むことが好ましい。効率よく酸及びラジカルを発生可能であり、上記組成物を効果的に硬化可能だからである。
【0169】
2.その他
上記製造方法により製造される硬化物及び用途等については、上記「B.硬化物」の項に記載の内容と同様である。
【0170】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0171】
以下、実施例等を挙げて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0172】
[実施例1~21及び比較例1~4]
下記表1~3に記載の配合に従って、各成分を配合して組成物を得た。各成分は以下の材料を用いた。なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表す。
【0173】
(芳香族エポキシ化合物)
A1:下記式(A1)で表される化合物(2官能、芳香族環2個)
A2:下記式(A2)で表される化合物(単官能、芳香族環1個)
【0174】
【化17】
【0175】
(脂肪族エポキシ化合物)
B1:下記式(B1)で表される化合物(鎖状脂肪族エポキシ化合物)
B2:下記式(B2)で表される化合物(鎖状脂肪族エポキシ化合物)
B3:ダイセル製 EHPE3150(脂肪族環含有脂肪族エポキシ化合物、エポキシ当量170~190g/eq.、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物)
【0176】
【化18】
【0177】
(オキセタン化合物)
C1:下記式(C1)で表される化合物(2官能、東亞合成製 OXT-221)
C2:下記式(C2)で表される化合物(2官能、東亞合成製 OXT-121)
C3:下記式(C3)で表される化合物(単官能、東亞合成製 OXT-212)
【0178】
【化19】
【0179】
(その他のカチオン重合性化合物)
D1:下記式(D1)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物、2官能、ダイセル製 セロキサイド2021P、エポキシ当量128~145g/eq.)
【0180】
【化20】
【0181】
(ラジカル重合性成分)
E1:下記式(E1)で表される化合物(非カチオン反応性化合物、直鎖の鎖状脂肪族化合物、3官能、エチレン性不飽和基当量85)
E2:下記式(E2)で表される化合物(非カチオン反応性化合物、分岐の鎖状脂肪族化合物、3官能、エチレン性不飽和基当量88)
F1:下記式(F1)で表される化合物(その他のラジカル重合性化合物、3官能、エチレン性不飽和基当量141)
G1:下記式(G1)で表される化合物(カチオン反応性化合物、直鎖の鎖状脂肪族化合物、エチレン性不飽和基(単官能)、カチオン反応性基(水酸基、単官能))
G2:下記式(G2)で表される化合物(カチオン反応性化合物、芳香族環含有化合物、エチレン性不飽和基(単官能)、カチオン反応性基(水酸基、単官能))
G3:下記式(G3)で表される化合物(カチオン反応性化合物、分岐の鎖状脂肪族化合物、エチレン性不飽和基(3官能)、カチオン反応性基(水酸基、単官能))
【0182】
【化21】
【0183】
【化22】
【0184】
(酸発生剤)
H1:光酸発生剤(下記式(H1)で表される化合物を含む50質量%炭酸プロピレン溶液)
H2:光酸発生剤(下記式(H2)で表される化合物を含む50質量%炭酸プロピレン溶液)
【0185】
【化23】
【0186】
(増感剤)
I1:カルバゾール系増感剤(下記式(I1)で表される化合物、N-(2-エチルヘキシル)-1,2-ベンゾカルバゾール)
【0187】
【化24】
【0188】
(ラジカル重合開始剤)
J1:IRGACURE 184(α-ヒドロキシアルキルフェノン、アセトフェノン系光ラジカル開始剤、BASF製)
【0189】
(シランカップリング剤)
K1:KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越シリコーン製)
【0190】
[評価]
得られた各組成物につき、硬化性、耐久性、接着力を、下記の手順に従って評価した。
【0191】
1.硬化性
実施例及び比較例の各組成物を、ガラス基板上にワイヤーバーコーターを用いて膜厚約30μmとなるよう塗工し、PETフィルム(東洋紡製 コスモシャインA-4300)越しに無電極紫外光ランプを用いて波長320nm~390nmの範囲の積算光量1,000mJ/cmに相当する光を照射し、組成物を硬化した。露光後にタックフリーとなるまでの時間を硬化時間とし、下記基準で評価した。結果を下記表1~表3に示す。
なお、PETフィルム(A-4300)は、厚み方向の280nmの光透過率が0.0%、320nmの光透過率が32.5%、340nmの光透過率が80.7%、400nmの光透過率が89.0%であった。
+++:60秒未満
++ :60秒以上600秒未満
+ :600秒以上1200秒未満
- :1200秒以上
なお、硬化時間が短いほど、硬化性に優れることを意味する。
【0192】
2.接着力
実施例及び比較例の組成物を、それぞれ、硬化後の厚みが3μmとなるように、第1の基材(PETフィルム:東洋紡製 コスモシャインA-4300)に塗布した後、第2の基材(PMMAフィルム:住友化学製 テクノロイ125S001)とラミネーターを用いて貼り合わせ、無電極紫外光ランプを用いて波長320nm~390nmの範囲の積算光量1,000mJ/cmに相当する光を第1の基材越しに照射し、組成物を硬化した。30℃、50%RH、大気圧条件下で24時間静置した後に、2.5cm幅に切り出して評価用サンプルを得た。
【0193】
接着力評価は、引張試験機FTN1-13A(アイコーエンジニアリング製)を用い、25℃で、評価用サンプルの第1の基材を90°方向に引っ張って剥がし、第1の基材が第2の基材から剥離する際の最大強度(剥離強度)を測定し、下記基準で評価した。結果を下記表1~表3に示す。
+++:第1の基材/第2の基材の接着力が2.0N/2.5cm以上
++ :第1の基材/第2の基材の接着力が1.5N/2.5cm以上2.0N/2.5cm未満
+ :第1の基材/第2の基材の接着力が1.0N/2.5cm以上1.5N/2.5cm未満
- :第1の基材/第2の基材の接着力が1.0N/2.5cm未満
なお、剥離強度が大きいほど、接着力に優れると判断できる。
【0194】
3.耐久性
「2.接着力」と同様にして、評価用サンプルを得た。
評価用サンプルを80℃、耐久性試験(相対湿度80%(RH)の条件で200時間静置)した後に剥離強度(耐吸光試験後接着力)を測定した。
次いで、「2.接着力」で測定された剥離強度(接着力)に対する耐久性試験後接着力の維持率(耐久性試験後接着力/接着力×100(%))を求め、以下の基準で評価した。結果を下記表1~表3に示す。
<評価基準>
+++:90%以上
++ :70%以上90%未満
+ :50%以上70%未満
- :50%未満
なお、維持率が高いほど、耐久性に優れると判断できる。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
[まとめ]
表1~3より、実施例の組成物は、硬化性及び耐久性に優れることが確認できた。また、実施例の組成物は、十分な接着力を有することが確認できた。