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特開2022-43045イオン伝導性化合物およびそれに関連する使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043045
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】イオン伝導性化合物およびそれに関連する使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20220308BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220308BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220308BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220308BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220308BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01B1/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021188923
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2018526705の分割
【原出願日】2016-11-04
(31)【優先権主張番号】62/259,449
(32)【優先日】2015-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ホイ・ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー・アール・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】チャリクリー・スコーディリス-ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ライトナー
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・クリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マリーナ・サフォント・センピア
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・テア・マート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電極の保護層、固体電解質層、および/または電気化学セル内の他のあらゆる適切な構成要素として組み込むことができる、イオン伝導性化合物を含む物品を提供する。
【解決手段】式:Li2xx+w+5z2zで表され、Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、xは8~16であり、yは0.1~6であり、wは0.1~15であり、およびzは0.1~3である化合物を含む、電気化学セルにおける使用のための物品である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおける使用のための物品であって、
式(I)の化合物を含んで成り、
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~16であり、
yは0.1~6であり、
wは0.1~15であり、および
zは0.1~3である、
物品。
【請求項2】
式(I)の化合物を含んで成る層を有して成る、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
層に堆積された式(I)の化合物を含んで成る、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
xが10以上である、請求項1~3のいずれかに記載の物品。
【請求項5】
xが10~14である、請求項1~4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
yが1である、請求項1~5のいずれかに記載の物品。
【請求項7】
zが1である、請求項1~6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
Mが、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウムおよびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載の物品。
【請求項9】
式(I)の化合物が立方体構造を有する、請求項1~8のいずれかに記載の物品。
【請求項10】
式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成る、請求項1~9のいずれかに記載の物品。
【請求項11】
式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成る層を有して成る、請求項1~10のいずれかに記載の物品。
【請求項12】
前記複数の粒子が、10nm以上100ミクロン以下の平均最大断面寸法を有する、請求項10~11のいずれかに記載の物品。
【請求項13】
前記複数の粒子が、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度を有する、請求項10~12のいずれかに記載の物品。
【請求項14】
式(I)の化合物を含んで成る層が、電極と直接的に接触している、請求項2に記載の物品。
【請求項15】
式(I)の化合物を含んで成る層が、セパレータである、請求項2に記載の物品。
【請求項16】
式(I)の化合物を含んで成る層が、1ミクロン以上50ミクロン以下の平均厚さを有する、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
式(I)の化合物を含んで成る層が、保護層である、請求項2に記載の物品。
【請求項18】
式(I)の化合物を含んで成る層が、1ナノメートル以上10ミクロン以下の平均厚さを有する、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
式(I)の化合物を含んで成る層が、固体電解質層である、請求項2に記載の物品。
【請求項20】
式(I)の化合物を含んで成る層が、50nm以上25ミクロン以下の平均厚さを有する、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
式(I)の化合物を含んで成る層が、リチウム-インターカレーション電極である、請求項2に記載の物品。
【請求項22】
式(I)の化合物を含んで成る層が、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度を有する、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
式(I)の化合物を含んで成る層の少なくとも一部分が、結晶質である、請求項2に記載の物品。
【請求項24】
式(I)の化合物を含んで成る層が、50重量%以上99重量%以下の結晶質である、請求項2に記載の物品。
【請求項25】
前記層に含まれる式(I)の化合物の結晶分画が、該層に含まれる式(I)の化合物の総重量を基準にして50~100重量%である、請求項2に記載の物品。
【請求項26】
式(I)の化合物を含んで成る層が、非晶質である、請求項2に記載の物品。
【請求項27】
式(I)の化合物が結晶質である、請求項1に記載の物品。
【請求項28】
式(I)の化合物が非晶質である、請求項1に記載の物品。
【請求項29】
請求項1~28のいずれかに記載の物品を含んで成る、電気化学セル。
【請求項30】
液体電解質をさらに含んで成る、請求項29に記載の電気化学セル。
【請求項31】
リチウムまたはケイ素を含んで成るアノードを有して成る、請求項29~30のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項32】
硫黄を含んで成るカソードを有して成る、請求項29~31のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項33】
リチウム-インターカレーション種を含んで成るカソードを有して成る、請求項29~32のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項34】
式(I)の化合物であって、
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~16であり、
yは0.1~6であり、
wは0.1~15であり、および
zは0.1~3である、
化合物。
【請求項35】
xが10以上である、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
xが10~14である、請求項34または35に記載の化合物。
【請求項37】
yが1である、請求項34~36のいずれかに記載の化合物。
【請求項38】
zが1である、請求項34~37のいずれかに記載の化合物。
【請求項39】
Mが、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、およびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項34~38のいずれかに記載の化合物。
【請求項40】
Mがケイ素である、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
前記化合物が立方体構造を有する、請求項34~40のいずれかに記載の化合物。
【請求項42】
複数の粒子を形成する方法であって、
元素Li、S、PおよびMの原子を含んで成る前駆体の混合物を、3時間~24時間にわたって、400℃~900℃の温度に加熱すること、
前記混合物を冷却すること、ならびに
式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を形成すること
Li2xx+W+5Z2Z (I)
を含んで成り、
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~16であり、
yは0.1~6であり、
wは0.1~15であり、および
zは0.1~3である、
方法。
【請求項43】
前記混合物が、xLiS、yMSおよび/またはzPを含んで成り、
aが0~8であり、
bが0~2であり、および
b+cが1以上となるように、cが0~8である、
請求項42に記載の複数の粒子を形成する方法。
【請求項44】
電気化学セルにおいて使用するための物品を形成する方法であって、
層に式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を堆積させることを含んで成り、
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~16であり、
yは0.1~6であり、
wは0.1~15であり、および
zは0.1~3である、
方法。
【請求項45】
xが10以上である、請求項42~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
xが10以上14以下である、請求項42~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
yが1である、請求項42~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
zが1である、請求項42~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
Mが、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、およびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項42~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
式(I)の化合物が立方体構造を有する、請求項42~49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記複数の粒子が、10nm以上100ミクロン以下の平均最大断面寸法を有する、請求項42~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記複数の粒子が、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度を有する、請求項42~51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
加熱に先立って、前記混合物をボールミルによって混合する、請求項42または43に記載の方法。
【請求項54】
前記混合物の加熱が、0.1MPa~0.3MPaの圧力で行われる、請求項42または43に記載の方法。
【請求項55】
式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を前記層に堆積させることが、エアロゾル蒸着を含んで成る、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
式(I)の化合物を前記層に堆積させることが、真空蒸着を含んで成る、請求項44に記載の方法。
【請求項57】
前記粒子を堆積させる層が、電極である、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
前記粒子を堆積させる層が、リチウム金属層である、請求項44に記載の方法。
【請求項59】
前記粒子を堆積させる層が、保護層またはセパレータである、請求項44に記載の方法。
【請求項60】
wがy、1.5yまたは2yに等しい、請求項1~28のいずれかに記載の物品。
【請求項61】
wが、y、1.5yまたは2yに等しい、請求項34~41のいずれかに記載の化合物。
【請求項62】
wがy、1.5yまたは2yに等しい、請求項42~59のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
イオン伝導性化合物を含む物品、化合物および方法が供される。ある態様では、イオン伝導性化合物は、電気化学セルに有用である。
【背景技術】
【0002】
リチウム化合物含有電気化学セルおよびこのようなセルを含んで成る電池は、エネルギー貯蔵のための最新の手段である。それらは、容量および寿命に関して特定の従来の二次電池の性能を超え、多くの場合、鉛のような有毒物質の使用を避けることができる。しかしながら、従来の鉛系二次電池とは対照的に、様々な技術的課題がまだ解決されていない。
【0003】
LiCoO、LiMnおよびLiFePOなどのリチウム化金属酸化物を含むカソードをベースとする二次電池が十分に確立されている。しかしながら、このタイプの電池の中には容量が限られているものがある。このため、電極材料を改良する試みが数多くなされている。特に有望なものは、いわゆるリチウム硫黄電池である。そのような電池では、リチウムは酸化され、Li8-aなどの硫化リチウムに変換される(aは0~7の数である)。再充電中、リチウムおよび硫黄は再生される。このような二次電池は、大容量の利点を有する。
【0004】
異なる組成および性質の硫化物材は、リチウムイオン伝導体(例えば、Li/Pガラス、Li/P由来ガラスセラミック、Li11、チオリシコン、オキシスルフィドガラス)であることが知られている。しかし、このような材料は、液体有機電解液に対する低い安定性、金属リチウムもしくは高電圧カソード材に対する不十分な安定性、水分および/もしくは空気に対する極度の感度、ならびに/または本質的に低いイオン伝導度などの課題を抱えている場合がある。
【0005】
したがって、改良されたリチウムイオンのイオン伝導性化合物が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
イオン伝導性化合物(ionically conductive compound)を含む物品(article)、化合物および方法が供される。ある態様では、イオン伝導性化合物は、電気化学セル(electrochemical cell)に有用である。
【0007】
本発明の対象は、場合によっては、相互に関係する製品、特定の問題に対する代替解決策ならびに/または1以上のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる使用を含む。
【0008】
一態様では、化合物が供される。ある態様では、化合物は、式(I)のような組成を有する。
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、xは8~16であり、yは0.1~6であり、wは0.1~15であり、およびzは0.1~3である。
【0009】
上記および本明細書に記載の化合物を含む特定の態様では、式(I)の化合物は結晶質(または結晶性、crystalline)である。上記および本明細書に記載の化合物を含む特定の態様では、式(I)の化合物は非晶質(または非晶性、amorphous)である。
【0010】
別の態様では、電気化学セルにおける使用のための物品が供される。ある態様では、物品は式(I)の化合物を含んで成る。
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、xは8~16であり、yは0.1~6であり、wは0.1~15であり、およびzは0.1~3である。上記および本明細書に記載の物品を含む特定の態様では、物品は、式(I)の化合物を含んで成る層を有して成る。上記および本明細書に記載の物品を含む特定の態様では、物品は、層に堆積された(または蒸着された、もしくはデポジションされた、deposited)式(I)の化合物を含んで成る。
【0011】
さらに別の態様では、方法が供される。ある態様では、この方法は、元素Li、S、PおよびMの原子を含む前駆体の混合物を400℃~900℃の温度で、3時間~24時間にわたって加熱すること、その混合物を冷却すること、式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を形成することを含んで成る。
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、xは8~16であり、yは0.1~6であり、wは0.1~15であり、およびzは0.1~3である。特定の態様では、混合物は、xLiS、yMSおよび/またはzP(aは0~8であり、bは0~2であり、およびb+cが1以上となるように、cは0~8である)を含んで成る。
【0012】
ある態様では、この方法は、層に式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を堆積させることを含んで成る。
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、xは8~16であり、yは0.1~6であり、wは0.1~15であり、およびzは0.1~3である。
【0013】
上記および本明細書に記載の方法を含む特定の態様では、加熱に先立って、混合物をボールミル粉砕によって混合する。上記および本明細書に記載の方法を含む特定の態様では、混合物の加熱は、0.1MPa~0.3MPaの圧力で行う。上記および本明細書に記載の方法を含む特定の態様では、層に式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を堆積させることは、エアロゾル蒸着(または、エアロゾル堆積、もしくはエアロゾルデポジション、aerosol deposition)または真空蒸着(vacuum deposition)を含んで成る。上記および本明細書に記載の方法を含む特定の態様では、粒子が堆積される層は、電極、リチウム金属層、保護層またはセパレータである。
【0014】
上記および本明細書に記載の化合物、物品および/または方法を含む特定の態様では、xは10以上である。
【0015】
上記および本明細書に記載の化合物、物品および/または方法を含む特定の態様では、yは1である。
【0016】
上記および本明細書に記載の化合物、物品および/または方法を含む特定の態様では、wはy、1.5y、または2yに等しい。
【0017】
上記および本明細書に記載の化合物、物品および/または方法を含む特定の態様では、zは1である。
【0018】
上記および本明細書に記載の化合物、物品および/または方法を含む特定の態様では、Mは、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウムおよびそれらの組合せから成る群から選択される。
【0019】
上記および本明細書に記載の化合物、物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物は、立方体構造(cubic structure)を有する。
【0020】
上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、物品または方法は、式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成る。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、物品または方法は、式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成る層を有して成る。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、複数の粒子は、10nm以上100ミクロン以下の平均最大断面寸法(average largest cross-sectional dimension)を有する。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、複数の粒子は、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度(または伝導率、もしくは伝導性、conductivity)を有する。
【0021】
上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、電極と直接的に接触している。
【0022】
上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層はセパレータである。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、1ミクロン以上50ミクロン以下の平均厚さを有する。
【0023】
上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は保護層である。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、1ナノメートル以上10ミクロン以下の平均厚さを有する。
【0024】
上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、固体電解質層である。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、50nm以上25ミクロン以下の平均厚さを有する。
【0025】
上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、リチウム-インターカレーション電極(lithium-intercalation electrode)である。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度を有する。
【0026】
上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層の少なくとも一部分は結晶質である。上記および本明細書に記載の物品および/または方法を含む特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は非晶質である。
【0027】
さらに別の態様では、電気化学セルが供される。ある態様では、電気化学セルは、上記および本明細書に記載される物品を含んで成る。上記および本明細書に記載の電気化学セルを含む特定の態様では、電気化学セルは、液体電解質、リチウムもしくはケイ素を含んで成るアノード、および/または硫黄もしくはリチウム-インターカレーション種を含んで成るカソードを有して成る。
【0028】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図面と併せて考慮して、本発明の様々な非限定的な態様の、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。本明細書および参照によって組み込まれる文献が、矛盾するおよび/または不一致の開示を含む場合、本明細書を基準とする(またはコントロールする、control)ものとする。参照によって組み込まれた2以上の文書に、互いに矛盾するおよび/または不一致の開示が含まれている場合、その後の有効日を持つ文書を基準とするものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の非限定的な態様は、模式図であり、一定の縮尺であることを意図しない添付図面を参照して例として記載される。図面では、図示されている同一またはほぼ同一の構成要素は、通常、単一の数字によって表される。明瞭化のために、すべての構成要素がすべての図においてラベルされているわけではなく、当業者が本発明を理解することを可能にするために図示が必要でない場合、本発明の各態様の各構成要素は示されていない。
【0030】
図1A図1Aは、ある態様による、イオン伝導性化合物を組み込んだ物品の模式図である。
図1B図1Bは、ある態様による、イオン伝導性化合物を組み込んだ物品の模式図である。
図1C図1Cは、ある態様による、イオン伝導性化合物を組み込んだ物品の模式図である。
図1D図1Dは、ある態様による、イオン伝導性化合物を組み込んだ物品の模式図である。
図1E図1Eは、ある態様による、イオン伝導性化合物を組み込んだ物品の模式図である。
図2図2は、ある態様による、Li2Xx+7SiPにおけるような式を有する化合物についてのxの関数としての伝導度(単位S/cm)のプロットである。
図3図3は、一組の態様による、Li1012SiPおよびLi2017SiPのXRDスペクトルプロットである。
図4図4は、一組の態様による、Li1012SiPおよびLi2419SiPのXRDスペクトルプロットである。
図5図5は、一組の態様による、電解質暴露前後のLi2017SiPのXRDスペクトルプロットである。
図6図6は、一組の態様による、電解質暴露前後のLi22SiP18のXRDスペクトルプロットである。
図7図7は、一組の態様による、電解質暴露前後のLi1815BrのXRDスペクトルプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
イオン伝導性化合物を含む物品、化合物および方法が供される。ある態様では、イオン伝導性化合物は、電気化学セルに有用である。開示されたイオン伝導性化合物は、例えば、電極の保護層、固体電解質層、および/または電気化学セル内の他のあらゆる適切な構成要素として、電気化学セル(例えば、リチウム硫黄電気化学セル、リチウムイオン電気化学セル、インターカレート-カソード・ベースの電気化学セル)に組み込むことができる。特定の態様では、本明細書に記載のイオン伝導性化合物を含んで成る層を含む電極構造および/または電極構造を作る方法が供される。
【0032】
本明細書に記載されるようなイオン伝導性化合物を電気化学セルに組み込むことは、電気化学セルに使用される特定の既存のイオン伝導性化合物と比較して、例えば、電気化学セル内の電極(例えば、リチウム電極)の安定性を高め、イオン伝導性を高め、および/または製造(例えば、薄膜の形成)を容易にし得る。ある態様では、本明細書に記載されるようなイオン伝導性化合物を電気化学セルに組み込むことは、電解質の成分(例えば、ポリスルフィド)とアノードの電気活性材(または活物質、active material)(例えば、金属リチウムなどのリチウムを含んで成るアノード)との間の化学反応の発生を防止または低減することができる。
【0033】
本明細書でより詳細に記載されるイオン伝導性化合物を含んで成る層は、ある場合において、リチウムカチオンを選択的に伝導するが、アニオンは選択的に伝導せず、電解質(例えば液体電解質)の障壁(例えば保護構造)として機能し得る。例えば、保護層(例えば、液体電解質を含む電気化学セル)におけるイオン伝導性化合物の使用は、電気化学セルの充放電中のリチウム(例えば、リチウム金属)の消費の低減を含む、特定の既存の保護層に対していくつかの利点を供することができる。保護層は、電極(例えば、アノード、カソード)と電解質および/または電解質中に存在する特定の種との直接的な接触を実質的に阻害するために使用されてもよい。ある態様では、固体電解質層内(例えば、固体電気化学セル内)に、本明細書に記載されるイオン伝導性化合物を使用することにより、イオン伝導性の向上および/または化学安定性の向上を含む、特定の既存の固体電解質に対していくつかの利点を供することができる。
【0034】
開示されたイオン伝導性化合物は、一次電池または二次電池を含む電気化学セルに組み込まれてよく、これは複数回充電および放電することができる。特定の態様では、本明細書に記載の物品、化合物および方法は、液体電解質を含む電池に関連して使用することができる。しかし、他の態様では、化合物、および方法は、固体電池に関連して使用することができる。
【0035】
ある態様では、本明細書に記載の材料、システムおよび方法は、リチウム電池(例えば、リチウム硫黄電池)と関連して使用することができる。しかし、本明細書の記載の多くはリチウム-硫黄電池に関するものであるが、本明細書に記載のイオン伝導性化合物およびイオン伝導性化合物を含んで成る層は、他のアルカリ金属ベースの電池を含む、他のリチウムベースの電池に適用されてもよい。
【0036】
本明細書に記載の電気化学セルは、自動車、コンピュータ、パーソナル・デジタルアシスタント、携帯電話、時計、カムコーダ、デジタルカメラ、温度計、計算機、ラップトップBIOS、通信機器または遠隔自動車ロックの製造または操作などの様々な用途に用いることができる。
【0037】
ある態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)のような組成を有する。
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、xは8~16であり、yは0.1~6であり、wは0.1~15であり、およびzは0.1~3であり、Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択される。
【0038】
ある態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)(xが8~16、8~12、10~12、10~14または12~16である)のような組成を有する。ある態様では、xは8以上、8.5以上、9以上、9.5以上、10以上、10.5以上、11以上、11.5以上、12以上、12.5以上、13以上、13.5以上、14以上、14.5以上、15以上、または15.5以上である。特定の態様では、xは16以下、15.5以下、15以下、14.5以下、14以下、13.5以下、13以下、12.5以下、12以下、11.5以下、11以下、10.5以下、10以下、9.5以下または9以下である。上記範囲の組合せも可能である(例えば、8以上16以下、10以上12以下)。他の範囲も可能である。ある態様では、xは10である。特定の態様では、xは12である。
【0039】
特定の態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)(yが0.1~6、0.1~1、0.1~3、0.1~4.5、0.1~6、0.8~2、1~4、2~4.5、3~6または1~6である)のような組成を有する。例えば、ある態様では、yは1である。ある態様では、yは0.1以上、0.2以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1以上、1.2以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.8以上、3.0以上、3.5以上、以上4.0以上、4.5以上、5.0以上または5.5以上である。特定の態様では、yは6以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.8以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.2以下、1.0以下、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下または0.2以下である。上記範囲の組合せも可能である(例えば、0.1以上6.0以下、1以上6以下、1以上3以下、0.1以上4.5以下、1.0以上2.0以下)。他の範囲も可能である。式(I)の化合物が1以上のMを含む態様では、yの合計は、上記範囲の1つ以上の値を有してもよく、ある態様では、0.1~6の範囲内であってもよい。
【0040】
ある態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)(zが0.1~3、0.1~1、0.8~2または1~3である)のような組成を有する。例えば、ある態様では、zは1である。ある態様では、zは0.1以上、0.2以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1以上、1.2以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上または2.8以上であってもよい。特定の態様では、zは3.0以下、2.8以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.2以下、1.0以下、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下または0.2以下である。上記範囲の組合せも可能である(例えば、0.1以上3.0以下、1.0以上2.0以下)。他の範囲も可能である。
【0041】
特定の態様では、yとzとの比は、0.03以上、0.1以上、0.25以上、0.5以上、0.75以上、1以上、2以上、4以上、8以上、10以上、15以上、20以上、以上、25以上、30以上、40以上、45以上または50以上である。ある態様では、yとzとの比は、60以下、50以下、45以下、40以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、8以下、4以下、3以下、2以下、1以下、0.75以下、0.5以下、0.25以下、または0.1以下である。上記範囲の組合せも可能である(例えば、yとzの比が0.1以上で60以下、yとzとの比が0.1以上10以下、0.25以上4以下、または0.75以上2以下である)。ある態様では、yとzとの比は1である。
【0042】
ある態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)(wは0.1~15、0.1~1、0.8~2、1~3、1.5~3.5、2~4、2.5~5、3~6、4~8、6~10、8~12または10~15である)の組成を有する。例えば、ある態様では、wは1である。場合によっては、wは1.5であってもよい。特定の態様では、wは2である。ある態様では、wは0.1以上、0.2以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1以上、1.5以上、2以上、2.5以上、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上または14以上である。特定の態様では、wは15以下、14以下、12以下、10以下、8以下、6以下、4以下、3以下、2.5以下、2以下、1.5以下、1以下、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下または0.2以下である。上記範囲の組合せも可能である(例えば、0.1以上15以下、1.0以上3.0以下)である。他の範囲も可能である。
【0043】
例示的な態様では、イオン伝導性化合物は、Li1615MPにおけるような組成を有する。別の例示的な態様では、イオン伝導性化合物は、Li2017MPにおけるような組成を有する。さらに別の例示的な態様では、イオン伝導性化合物は、Li2117SiPにおけるような組成を有する。さらに別の例示的な態様では、イオン伝導性化合物は、Li24Si19MPにおけるような組成を有する。例えば、本発明によるイオン伝導性化合物は、Li1615MP、Li2017MPおよびLi2419MPから成る群から選択される式に従う組成を有する。
【0044】
ある態様では、wはyに等しい。特定の態様では、wは1.5yに等しい。他の態様では、wは2yに等しい。さらに他の態様では、wは2.5yに等しい。さらなる態様では、wは3yに等しい。理論に束縛されることを望まないが、当業者は、wの値がいくつかの場合にMの価数に依存し得ることを理解するであろう。例えば、ある態様では、Mは4価の原子であり、wは2yであり、yは0.1~6である。ある態様では、Mは3価の原子であり、wは1.5yであり、yは0.1~6である。ある態様では、Mは2価の原子であり、wはyに等しく、yは0.1~6である。wの他の価数および値も可能である。
【0045】
ある態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)(Mは4価であり、xは8~16であり、yは0.1~6であり、wは2yであり、zは0.1~3である)のような組成を有する。そのような態様では、イオン伝導性化合物は、式(II)のような組成を有する。
Li2xx+2y+5z2z (II)
式(II)において、xは8~16であり、yは0.1~6であり、zは0.1~3であり、Mは4価であり、ランタニド、第4族、第8族、第12族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択される。例示的な態様では、式(II)の化合物がLi2117.5SiPであるように、MはSiであり、xは10.5であり、yは1であり、zは1である。
【0046】
ある態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)(Mは3価であり、xは8~16であり、yは1であり、wは1.5yであり、zは1である)のような組成を有する。そのような態様では、イオン伝導性化合物は、式(III)のような組成を有する。
Li2xx+1.5y+5z2z (III)
式(III)において、xは8~16であり、yは0.1~6であり、zは0.1~3であり、Mは3価であり、ランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択される。例示的な態様では、式(III)の化合物がLi2117GaPであるように、MはGaであり、xは10.5であり、yは1であり、zは1である。
【0047】
ある態様では、Mはジルコニウムのような第4群(すなわち、IUPAC第4族)原子である。特定の態様では、Mは鉄のような第8族(すなわち、IUPAC第8族)原子である。ある態様では、Mは亜鉛のような第12族(すなわち、IUPAC第12族)原子である。特定の態様では、Mはアルミニウムのような第13族(すなわち、IUPAC第13族)原子である。ある態様では、Mはケイ素、ゲルマニウム、またはスズのような第14族(すなわち、IUPAC第14族)原子である。ある場合には、Mは、ランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および/または第14族の原子から成る群から選択されてもよい。例えば、ある態様では、Mは、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、およびそれらの組合せから選択されてもよい。特定の態様では、Mは、ケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、鉄および亜鉛から選択される。ある態様では、Mは遷移金属原子である。
【0048】
ある場合には、Mは、ランタノイド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子から成る群から選択される2以上の原子の組合せであってもよい。すなわち、Mが2以上の原子を含む特定の態様では、各原子(すなわち、各原子M)は、ランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子から成る群から独立して選択されてもよい。ある態様では、Mは単一原子である。特定の態様では、Mは2つの原子の組合せである。他の態様では、Mは3つの原子の組合せである。ある態様では、Mは4つの原子の組合せである。ある態様では、Mは、ランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子から成る群から選択される、1つ以上の1価原子、1つ以上の2価原子、1つ以上の3価原子および/または1つ以上の4価原子の組合せであってもよい。
【0049】
そのような態様では、Mにおける各原子の化学量論比は、Mに存在する原子の総量がyであり、かつ0.1~6であるか、またはyについて本明細書に記載される他のあらゆる適切な範囲であり得る。例えば、ある態様では、Mは、Mに存在する2つの原子の総量がyであり、かつ0.1~6であるような2つの原子の組合せである。特定の態様では、各原子は実質的に同じ量でMに存在し、Mに存在する原子の総量はyであり、かつ0.1~6の範囲内、またはyについて本明細書に記載される他の適切な範囲である。他の態様では、各原子はMに異なる量で存在してもよく、Mに存在する原子の総量はyであり、かつ0.1~6の範囲内、またはyについて本明細書に記載される他の適切な範囲である。例示的な態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)のような組成を有し、Mにおける各原子は、ケイ素またはゲルマニウムのいずれかであり、かつyは、0.1~6である。例えば、そのような態様では、Mにおける各原子は、実質的に同じ量で存在するケイ素またはゲルマニウムのいずれかであってもよく、かつMyがSi0.5Ge0.5であるため、yは1である。別の例示的な態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)のような組成を有し、Mにおける各原子は、ケイ素またはゲルマニウムのいずれかであってもよく、各原子は、MがSiy-pGe(式中におけるpは0~yであり、例えば、yは1であり、pは0.25または0.75である)であるように、各原子は異なる量で存在する。他の範囲および組合せも可能である。当業者であれば、ある態様では、yの値および範囲は、2つ以上の原子の組合せとしてのMの原子価に依存してもよく、および本明細書の教示に基づいてyを選択および/または決定することができることを理解し得るであろう。上記のように、式(I)の化合物がMにおいて1つ以上の原子を含む態様では、yの合計は0.1~6であってもよい。
【0050】
例示的な態様では、Mはケイ素である。例えば、ある態様では、イオン伝導性化合物は、Li2Xx+w+5Z2zであり、式中、xは8以上16以下、yは0.1以上3以下、wは2yに等しく、zは0.1以上3以下である。各x、yおよびzを、それぞれ上記のx、yおよびzの値および範囲から独立して選択してもよい。例えば、特定の一態様では、xは10であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2017SiPである。ある態様では、xは10.5であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2117.5SiPである。特定の態様では、xは11であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2218SiPである。特定の態様では、xは12であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2419SiPである。場合によっては、xは14であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2821SiPである。さらに別の例示的な態様では、Mは2つの原子の組合せであり、第1原子はSiであり、第2原子はランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子から成る群から選択される。例えば、ある態様では、イオン伝導性化合物は、Li2Xx+W+5ZSi2Zであり、Qは、ランタノイド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子から成る群から選択され、a+bはyであり、各w、x、yおよびzは、それぞれ上記のx、yおよびzの値および範囲から独立して選択してもよい。ある態様では、イオン伝導性化合物は、Li21La0.5Si1.5PS16.75である。特定の態様では、イオン伝導性化合物は、Li21LaSiPS16.5である。特定の態様では、イオン伝導性化合物は、Li21AlSiPS16.5である。特定の態様では、イオン伝導性化合物は、Li21Al0.5Si1.5PS16.75である。特定の態様では、イオン伝導性化合物はLi21AlSi16である。特定の態様では、イオン伝導性化合物は、Li21BP17である。
【0051】
本明細書の上記記載の多くは、yが1であり、zが1であり、wが2yであるイオン伝導性化合物に関し、ケイ素、w、x、yおよびzの値の他の組合せを含んで成り、Mの元素も可能であることを理解されたい。例えば、ある場合には、MはGeであり、イオン伝導性化合物はLi2Xx+W+5ZGe2z(xは8以上16以下、yは0.1以上3以上であり、wは2yに等しく、zは0.1以上3以下である)であってもよい。各w、x、yおよびzを、それぞれ上記のw、x、yおよびzの値および範囲から独立して選択してもよい。例えば、1の特定の態様では、wは2であり、xは10であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2017GePである。特定の態様では、wは2であり、xは12であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2419GePである。場合によっては、wは2であり、xは14であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2821GePである。上記の他の化学量論比も可能である。
【0052】
特定の態様では、MはSnであり、イオン伝導性化合物は、Li2xx+w+5zSn2z(xは8以上16以下、yは0.1以上3以下、wは2yに等しく、zは0.1以上3以下である)であってもよい。各w、x、yおよびzを、それぞれ上記のw、x、yおよびzの値および範囲から独立して選択してもよい。例えば、特定の態様では、wは2であり、xは10であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2017SnPである。特定の態様では、wは2であり、xは12であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2419SnPである。場合によっては、wは2であり、xは14であり、yは1であり、zは1であり、イオン伝導性化合物はLi2821SnPである。上記の他の化学量論比も可能である。
【0053】
例示的な態様では、イオン伝導性化合物は、式(I)のような組成を有する。
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、xは5~14であり、yは1~2であり、zは0.5~1であり、(x+w+5z)は12~21であり、MはSi、Ge、La、Al、B、Gaおよびそれらの組合せ(例えば、MはLa0.5Si1.5、LaSi、AISi、Al0.5Si1.5またはAlSiなど)から成る群から選択される。式(I)のような組成を有する化合物の非限定的な例としては、Li1012SiP、Li1213SiP、Li1615SiP、Li2017SiP、Li2117SiP、Li2117.5SiP、Li2218SiP、Li2419SiP、Li2821SiP、Li2419GeP、Li21SiP17.5、Li21La0.5Si1.5PS16.75、Li21LaSiPS16.5、Li21LaPS16、Li21AlP17、Li17AlP15、Li17AlPS14、Li11AlP12、Li11AlP12、Li21AlSiPS16.5、Li21Al0.5Si1.5PS16.75、Li21AlSi16、Li21BP17およびLi21GaP17を含む。他の化合物も可能である。
【0054】
ある態様では、イオン伝導性化合物(例えば、式(I)のイオン伝導性化合物)は、粒子の形態である。イオン伝導性化合物を含んで成る複数の粒子は、実質的にイオン伝導性(例えば、リチウムイオンに対して実質的に伝導性)であってもよい。例えば、特定の態様では、イオン伝導性化合物を含んで成る複数の粒子は、電気活性材(例えば、リチウム)のイオンに対して伝導性であってもよい。場合によっては、複数の粒子は、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度(例えば、リチウムイオン伝導度)を有していてもよい。特定の態様では、複数の粒子の平均イオン伝導度は、10-4S/cm以上、10-3S/cm以上、10-2S/cm以上または10-1S/cm以上である。ある態様では、複数の粒子の平均イオン伝導度は、1S/cm以下、10-1S/cm以下、10-2以下または10-3S/cm以下である。上記基準範囲の組合せ(例えば、10-4S/cm以上10-1S/cm以下のイオン伝導度、10-4S/cm以上10-2S/cm以下のイオン伝導度)も可能である。他のイオン伝導度も可能である。
【0055】
ある態様では、複数の粒子の平均イオン伝導度は、粒子が電気化学セルの層(例えば、保護層、固体電解質層、インターカレートされた電極層)に組み込まれる前に決定することができる。平均イオン伝導度は、4トン/cmまでの圧力で2つの銅シリンダーの間で粒子をプレスすることによって測定することができる。特定の態様では、平均イオン伝導度(すなわち、平均抵抗率の逆数)は、1kHzで動作する伝導性ブリッジ(conductivity bridge)(すなわち、インピーダンス測定回路)を使用して500kg/cm単位で測定することができる。いくらかのそのような態様では、平均イオン伝導度の変化がもはや試料中に観察されなくなるまで、圧力を増加させる。伝導度は、室温(例えば、摂氏25度)で測定することができる。
【0056】
ある態様では、イオン伝導性化合物を含んで成る複数の粒子(例えば、電気化学セルの層内の粒子、または層に組み込まれる前の粒子)の平均最大断面寸法は、例えば、100ミクロン以下、50ミクロン以下、25ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、100nm以下または50nm以下であってもよい。ある態様では、複数の粒子の平均最大断面寸法は、10nm以上、100nm以上、500nm以上、1ミクロン以上、2ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、25ミクロン以上、または50ミクロン以上であってもよい。上記範囲の組合せも可能である(例えば、100ミクロン未満および10ミクロンより大きく、25ミクロン未満および1ミクロンより大きく、または2ミクロン未満および100nmより大きい、500nm未満および10nmより大きい最大断面寸法であってもよい)。
【0057】
複数の粒子の平均最大断面寸法は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子を画像化することによって決定されてもよい。画像は、複数の粒子の全体的な寸法に応じて、10X~100,000Xの倍率で取得してもよい。当業者は、試料を画像化するための適切な倍率を選択することができるであろう。複数の粒子の平均最大断面寸法は、各粒子の最大断面寸法をとり、その最大断面寸法を平均化する(例えば、10の粒子の最大断面寸法を平均化する)ことによって決定することができる。
【0058】
ある態様では、本明細書に記載されるイオン伝導性化合物を含んで成る粒子は、本明細書でより詳細に記載されるように、前駆体の混合物を加熱することによって形成してもよい。ある態様では、前駆体は、元素Li、S、PおよびMの混合物を含んで成り、Mは上記の通り、ランタニド、周期系の第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択される。ある態様では、元素Li、S、PおよびMは、元素の形態または化学的に結合した形態のいずれかで存在する。例えば、Liは、化学的に結合した形態、例えばLiと、上記の元素S、PおよびMの1以上の原子を含んで成る化学的な化合物(例えば、LiSであり、M、PおよびSは元素の形態で供されてもよい)の形態で供されてもよい。ある態様では、前駆体は、元素Li、S、PおよびSiの混合物を含んで成る。特定の態様では、前駆体は、元素Li、S、PおよびGeの混合物を含んで成る。場合によっては、前駆体は、元素Li、S、PおよびSnの混合物を含んで成ってもよい。
【0059】
ある態様では、前駆体の少なくとも一部分は、xLiS、yMSおよび/またはzPから成る群から選択され、xは8~16であり、yは0.1~6であり、zは0.1~3であり、aは0~8であり、bは0~2でありおよびb+cは1以上であるように、cは0~8である。例えば、ある態様では、xは10~14であり、yは1であり、aは0~8であり、bは1~2であり、およびcは2~5である。ある態様では、前駆体の少なくとも一部分は、LiS、MSおよびPから成る群から選択され、aは0~8であり、bは0~2であり、およびb+cは1以上であるように、cは0~8である。例えば、いくらかのそのような態様では、aは0~8であり、bは1~2であり、およびcは2~5である。適切な前駆体の非限定的な例には、LiS、SiS、GeS、SnS、Si、Ge、Sn、S、S、S、P、Pおよびそれらの組合せを含む。
【0060】
ある態様では、aは0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、または7以上である。特定の態様では、aは、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。上記範囲の組合せ(例えば、0以上8以下、1以上4以下、2以上6以下、4以上8以下)も可能である。場合によっては、aは0であってもよい(すなわち、前駆体は元素Mである)。
【0061】
特定の態様では、bは0以上、または1以上である。場合によっては、bは2以下、または1以下であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、0以上2以下)も可能である。ある態様では、bは0である(すなわち、前駆体は硫黄元素である)。特定の態様では、bは1である。場合によっては、bは2であってもよい。
【0062】
ある態様では、cは0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上または7以上である。特定の態様では、cは8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。上記範囲の組合せ(例えば、0以上8以下、1以上4以下、2以上6以下、4以上8以下)も可能であるである。特定の態様では、cは0である(すなわち、前駆体は元素状リンである)。ある態様では、cは1である。
【0063】
ある態様では、bおよびcは、b+cが1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上または9以上)であるように選択される。場合によっては、b+cは10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。上記範囲の組合せも可能である。
【0064】
例示的な態様では、前駆体の少なくともいくつかは、xLiS、yMSおよび/またはzPから成る群から選択され、xは10であり、yは1であり、zは1であり、aは2であり、bは2であり、およびcは5である。
【0065】
特定の態様では、本明細書に記載される前駆体の混合物は、上記のように、式(I)における元素Li、S、PおよびMの化学量論比を有する(すなわち、Li2xx+W+5Z2Z)。ある態様では、Li、S、PおよびMは、混合物から形成される複数の粒子が式(I)の化合物を含んで成るような化学量論比を有する。例えば、場合によっては、前駆体の混合物は、元素Li、S、PおよびMの比が、Li2017MP、Li2117.5SiP、Li2218SiP、Li2419MPまたはLi2821MPなどの本明細書に記載のイオン伝導性化合物の形成をもたらすように選択される。式(I)のような化合物を形成するための他の適切な比も可能である。例えば、ある場合には、過剰のS(例えば、本明細書に記載のイオン伝導性化合物の式に含まれる硫黄の量を超えた硫黄)が混合物中に存在していてもよい。過剰なSは、例えば、混合中の硫黄の損失を補うことができる。例えば、ある態様では、本明細書に記載の前駆体の混合物は、元素Li2x、P2z、MおよびSの化学量論比を有し、x、yおよびzは上記の通りであり、dはx+w+5zの合計以上であり、wは上記の通りである。
【0066】
例えば、ある態様では、dは、15以上、17以上、19以上、21以上、23以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、100以上または150以上であってもよい。特定の態様では、dは200以下、100以下、50以下または45以下であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、15以上200以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0067】
ある態様では、前駆体の混合物は、LiS、MS(例えば、SiSもしくはGeS)およびP、またはLiS、M(例えば、SiもしくはGe)、SおよびP、またはLiS、M(例えば、SiもしくはGe)、SおよびPを含んで成る、または、それらから成る。
【0068】
前駆体の混合物(元素Li、S、PおよびMの混合物を含んで成る前駆体の混合物)は、本明細書に記載の化合物を形成するためのあらゆる適切な温度で加熱されてもよい。特定の態様では、前駆体の混合物を、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上または850℃以上に加熱する。ある態様では、前駆体の混合物を、900℃以下、850℃以下、800℃以下、750℃以下、700℃以下、650℃以下、600℃以下、550℃以下、500℃以下、または450℃以下に加熱する。上記範囲の組合せ(例えば、400℃以上900℃以下、400℃以上800℃以下、500℃以上700℃以下、600℃以上800℃以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0069】
前駆体の混合物は、あらゆる適切な時間で加熱することができる。場合によっては、前駆体の混合物は、3時間以上、5時間以上、8時間以上、12時間以上、16時間以上または20時間以上加熱されてもよい。特定の態様では、前駆体の混合物は、24時間以下、48時間以下、36時間以下、24時間以下、20時間以下、16時間以下、12時間以下、8時間以下または5時間以下加熱される。上記範囲の組合せ(例えば、3時間以上24時間以下、5時間以上12時間以下、8時間以上20時間以下、12時間以上24時間以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0070】
前駆体の混合物は、あらゆる適切な圧力で加熱されてもよい。ある態様では、前駆体の混合物を比較的低圧で加熱される。例えば、特定の態様では、前駆体の混合物は、0.1MPa~0.3MPaの間の圧力、または他の適切な圧力で加熱される。
【0071】
特定の態様では、前駆体の混合物を加熱した後、混合物を冷却する。例えば、前駆体の混合物は、3時間~24時間の間で、400℃~900℃の間の温度(例えば、400℃~800℃)に加熱されてもよく、混合物は400℃未満の温度(例えば、室温)で冷却されてもよい。次いで、混合物を所望の大きさの複数の粒子に粉砕してもよい。当業者であれば、例えば、ボールミル粉砕またはブレンダー粉砕を含む材料を粉砕するための適切な方法を選択することができるであろう。ある態様では、前駆体の混合物は、加熱の前および/または加熱中にボールミルにおいて粉砕されてもよい。場合によっては、複数の粒子の粉砕は、相対的に低い圧力で行われる。例えば、複数の粒子の粉砕は、約1GPa以下、約500MPa以下、約100MPa以下、約50MPa以下、約10MPa以下、約5MPa以下、約1MPa以下または約0.5MPa以下の圧力で行われてもよい。特定の態様では、複数の粒子の粉砕は、少なくとも約0.1MPa、少なくとも約0.5MPa、少なくとも約1MPa、少なくとも約5MPa、少なくとも約10MPa、少なくとも約50MPa、少なくとも約100MPaまたは少なくとも約500MPaの圧力で行われてもよい。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも約0.1MPaかつ約1GPa以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0072】
ある態様では、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)が層として堆積される。特定の態様では(例えば、電気化学セルにおいて)、式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子が層として堆積される。
【0073】
本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)を含んで成る層は、スパッタリング(例えば、マグネトロン・スパッタリング)、イオンビーム蒸着、分子線エピタキシー、電子ビーム蒸着、真空熱蒸着、エアロゾル蒸着、ゾル-ゲル法、レーザー・アブレーション、化学気相蒸着(CVD)、熱蒸発、プラズマ強化化学気相蒸着(PECVD)、レーザー強化化学気相蒸着、ジェット気相蒸着などのあらゆる適切な方法によって、表面(例えば、もう一方の表面)に堆積されてもよい。ある態様では、本明細書に記載の化合物を含んで成る層は、冷間プレスによって作製される。使用される技術は、層の所望の厚さ、堆積される材料などに依存する場合がある。式(I)の化合物は、場合によっては粉末形態で堆積させてもよい。ある態様では、式(I)の化合物を含んで成る粒子は、表面に堆積され、焼結されてもよい。
【0074】
ある態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、電極/電気活性材(例えば、アノード、カソード)に堆積される。特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、セパレータ、保護層、電解質層、または電気化学セルの別の層に堆積される。
【0075】
特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、実質的に結晶質である。ある態様では、式(I)の化合物を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、少なくとも部分的に非晶質である。特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、1重量%~100重量%の結晶質である。すなわち、ある態様では、層(または粒子)に含まれる式(I)の化合物の結晶分画(または結晶フラクション、crystalline fraction)は、層(または粒子)に含まれる式(I)の化合物の総重量を基準にして、1%~100%である。特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、50重量%以上、75重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、または99.9重量%以上の結晶質である。特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、99.9重量%以下、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または2重量%以下の結晶質である。
【0076】
ある態様では、式(I)の化合物を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、99.2重量%以上、99.5重量%以上、99.8重量%以上、または99.9重量%以上の結晶質をである。場合によっては、式(I)の化合物を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、100%結晶質であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、1重量%以上100重量%以下、50重量%以上100重量%以下)も可能である。
【0077】
ある態様では、式(I)の化合物は立方体結晶構造(cubic crystal structure)を有する。他に示されない限り、本明細書で使用する結晶構造および/または結晶化度は、その化合物を含んで成る粒子のシンクロトロンを用いた1.541nmの波長でのX線回折結晶学によって決定される。場合によっては、ラマン分光法を使用してもよい。
【0078】
ある態様では、式(I)のイオン伝導性化合物は、全層の重量に対して、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約98重量%の量で層(例えば、セパレータ、保護層)中に存在していてもよい。特定の態様では、式(I)のイオン伝導性化合物は、全層の重量に対して、約100重量%以下、約99重量%以下、約98重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、または約2重量%以下の量で層中に存在していてもよい。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも約1重量%かつ約100重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0079】
場合によっては、層は、以下詳細に記載される、式(I)のイオン伝導性化合物および1以上の付加的な材料(例えば、ポリマー、金属、セラミック、イオン伝導性材)を含んで成ってもよい。
【0080】
ある態様では、電気化学セルの1以上の層は、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成ってもよい。場合によっては、1以上の層における化合物は、複数の粒子の形態である。ある態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、電極(例えば、電極の電気活性材)と直接的に接触している。
【0081】
特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、イオン(例えば、リチウムイオンなどの電気化学的に活性なイオン)が層を通過することを可能にするが、電子が層を通過するのを実質的に妨げてもよい。「実質的に妨げる(substantially impedes)」ことによって、この文脈では、層は、この態様において、電子通過の10倍以上のリチウムイオン流束を可能にすることを意味する。有利には、本明細書に記載の粒子および層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る粒子および層)は、特定のアニオン(例えば、ポリスルフィドアニオン)を伝導しないで、特定のカチオン(例えばリチウムカチオン)を伝導してもよく、ならびに/または電解質および/もしくは電極用の電解質中の成分(例えば、ポリスルフィド種)に対する障壁として作用してもよい。
【0082】
ある態様では、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る層(例えば、セパレータ、保護層、固体電解質層)はイオン伝導性である。ある態様では、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る層の平均イオン伝導度は、10-5S/cm以上、10-4S/cm以上、10-3S/cm以上、10-2S/cm以上、10-1S/cm以上である。特定の態様では、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る層の平均イオン伝導度は、1S/cm以下、10-1S/cm以下、10-2S/cm以下、10-3S/cm以下、または10-4S/cm以下である。上記範囲の組合せ(例えば、10-5S/cm以上10-1S/cm以下の平均イオン伝導度)も可能である。他のイオン伝導性も可能である。
【0083】
ある態様では、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る層の平均イオン伝導度は、3トン/cmまでの圧力で2つの銅シリンダーの間で層をプレスすることによって決定することができる。特定の態様では、平均イオン伝導度(すなわち、平均抵抗率の逆数)は、1kHzで動作する伝導性ブリッジ(すなわち、インピーダンス測定回路)を使用して500kg/cm単位で測定することができる。いくらかのそのような態様では、平均イオン伝導度の変化がもはや試料中に観察されなくなるまで、圧力を増加させる。伝導度は、室温(例えば、摂氏25度)で測定されてもよい。
【0084】
本明細書に記載の通り、本明細書に記載の化合物を含む層が、特定の電気化学システム用の他の材料から形成される層と比較して、有利な特性を有するかどうかを決定することが望ましい場合がある。候補物質間の選択を助けるために、単純なスクリーニング試験を用いることができる。1の簡単なスクリーニング試験には、電気化学セルにおいて、例えばセル内の保護層として、層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る)を位置付けることが含まれる。次いで、電気化学セルは、複数の放電/充電サイクルを経てもよく、電気化学セルは、阻害性(inhibitory)または他の破壊的挙動が制御システムのものと比較して生じるかどうかについて観察されてもよい。制御システムと比較して、セルのサイクル中に阻害性または他の破壊的挙動が観察される場合、それは、組み立てられた電気化学セル内の問題の層の劣化または他の不具合を示し得る。本明細書に記載され、当業者に知られている方法を使用して、層の電気伝導性および/またはイオン伝導度を評価することも可能である。測定された値は、候補物質間で選択するために比較されてもよく、対照中のベースライン物質との比較に使用されてもよい。
【0085】
ある態様では、電気化学セルに使用される特定の電解質または溶媒の存在下で膨潤させる(swelling)ために、層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る層)を試験することが望ましい場合がある。簡単なスクリーニング試験は、例えば、計量され、次いで、任意の適切な時間(例えば、24時間)にわたって、電気化学セルに使用される溶媒または電解質に位置付けられる層片(pieces of the layer)を含んでもよい。溶媒または電解質の添加前後の層の重量(または体積)のパーセント差は、電解質または溶媒の存在下での層の膨潤の量を決定し得る。
【0086】
別の簡単なスクリーニング試験は、ポリスルフィドに対する層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る層)の安定性(すなわち、完全性)を決定することを含んでもよい。つまり、層は、ポリスルフィド溶液/混合物に任意の適切な時間(例えば、72時間)曝露されてもよく、ポリスルフィド溶液への曝露後の層のパーセント重量損失は、曝露前後の層の重量差を計算することによって決定されてもよい。例えば、ある態様では、ポリスルフィド溶液への暴露後の層のパーセント重量損失は、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下であってもよい。特定の態様では、ポリスルフィド溶液への暴露後の層のパーセント重量損失は、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上または10重量%以上であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、0.1重量%以上5重量%以下)も可能である。
【0087】
さらに別の簡単なスクリーニング試験は、金属リチウムに対する層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る層)の安定性(すなわち、完全性)を決定することを含んでもよい。つまり、式(I)の化合物を含んで成る層またはペレットは、電気化学セルにおける2つのリチウム金属ホイルの間に位置付けられてもよく、任意の適切な時間(例えば、72時間)にわたってインピーダンスの変化を測定することができる。一般に、インピーダンスが低いと、金属リチウムに対する層の安定性がより高くなり得る。
【0088】
上記のスクリーニング試験は、層の個々の成分(例えば、式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子)の特性を決定するために適合させて使用されてもよい。
【0089】
ここで図面を参照すると、本開示の様々な態様が以下でより詳細に説明される。図面に示された特定の層は、互いに直接に配置されているが、特定の態様では、図示された層の間に他の中間層が存在してもよいことを理解されたい。したがって、本明細書で使用されるように、ある層が他の層に「~に配置される(disposed on)」、「~に堆積される、または~に蒸着される(deposited on)」、または「~に(on)」と言及される場合、それは層に直接、配置されてもよいし、堆積されても良いし、もしくは存在してもよく、または、介在層が存在しても良い。対照的に、「別の層に直接配置され」、「別の層に接触し」、「別の層に直接堆積され」または「別の層に直接存在する」層は、介在層が存在しないことを示す。
【0090】
ある態様では、本明細書に記載される1以上のイオン伝導性化合物をセパレータ(例えば、図1Aのセパレータ30)に組み込んでもよい。一般に、セパレータは、電気化学セルにおいてカソードとアノードとの間に配置される。セパレータは、アノードとカソードとを互いに分離または絶縁して短絡を防止し、アノードとカソードとの間のイオンの輸送を可能にし得る。セパレータは多孔質であってもよく、細孔は電解質で部分的または実質的に充填されていてもよい。セパレータは、セルの製造中にアノードとカソードとを交互に配置した多孔性の自立膜(free standing films)として供されてもよい。あるいは、セパレータ層は、電極の一方の表面に直接適用され(または塗布され、applied)てもよい。
【0091】
図1Aは、電気化学セルに組み込むことができる物品の例を示す。物品10は、電気活性材と、電極に隣接するセパレータ30とを含む電極20(例えば、アノードまたはカソード)を含む。ある態様では、セパレータ(例えば、セパレータ30)は、式(I)のイオン伝導性化合物および/または式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成る。一方で、セパレータを形成するために他の材料を使用することもできる。電極は、以下でより詳細に記載する、電気活性材(例えば、アノード活性電極材、カソード活性電極材)を含んでもよい。
【0092】
ある態様では、電気化学セルは電解質を含んで成る。ある態様では、セパレータは、電解質と電極(例えば、アノード、カソード)との間に位置付けられる。例えば、図1Bに示すように、物品11は、電気活性材と、電極に隣接する電解質40と、電解質に隣接するセパレータ30とを含んで成る電極20(例えば、アノードまたはカソード)を含む。電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができる。電解質は、本明細書でより詳細に記載されるように、液体電解質、固体電解質、またはゲルポリマー電解質などのあらゆる適切な構成を有してもよい。
【0093】
ある態様では、セパレータは、ポリマー材(例えば、電解質に曝露されると膨潤するか、または膨潤しないポリマー材)を含んで成る。セパレータは、オプションとして、式(I)のイオン伝導性化合物(または、化合物を含んで成る複数の粒子)を含んでもよい。特定の態様では、イオン伝導性化合物は、セパレータの表面の少なくとも一部分に直接堆積される。特定の態様では、イオン伝導性化合物は、セパレータに組み込まれる。
【0094】
セパレータは、電気化学セルの短絡を招く可能性がある、第1電極と第2電極との間の物理的接触を阻害する(例えば、防止する)ように構成されてもよい。セパレータは、実質的に電気的に非伝導性であり、セパレータが電気化学セルの短絡を引き起こす度合い(degree)を阻害することができる。特定の態様では、セパレータの全部または一部は、10以上、10以上、1010以上、1015以上または10-20オーム・メートル以上のバルク電子抵抗率を有する材料で形成することができる。ある態様では、バルク電子抵抗率は1050オーム・メートル以下であってもよい。バルク電子抵抗率は、室温(例えば、摂氏25度)で測定してもよい。
【0095】
ある態様では、セパレータは固体であってもよい。セパレータは、電解質溶媒が通過できるように多孔質であってもよい。ある場合には、セパレータは、セパレータの細孔を通過するか、または細孔に存在する溶媒を除いて、溶媒(ゲルのような溶媒)を実質的に含まない。他の態様では、セパレータはゲルの形態であってもよい。
【0096】
ある態様では、セパレータの空隙率(または多孔度、porosity)は、例えば、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上または90体積%以上とすることができる。特定の態様では、空隙率は、90体積%以下、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、40体積%以下、または30体積%以下である。他の空隙率も可能である。上記範囲の組合せも可能である。本明細書で使用する空隙率は、層の全体積で割った層中の空隙の体積の割合を指し、水銀ポロシメトリーを用いて測定される。
【0097】
セパレータは種々の材料から作ることができる。ある態様では、セパレータは、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る。追加的または代替的に、セパレータは、ポリマー材などの適切なセパレータ材を含んで成ってもよい。適切なポリマー材の例には、限定されないが、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI))、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、ポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton(登録商標))(NOMEX(登録商標))(KEVLAR(登録商標)))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート))、ポリアセタール、ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート)、ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO))、ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)およびポリ(ビニリデンフルオライド))、ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテレフタロイル))、ポリへテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT))、ポリヘテロ環式化合物(例えば、ポリピロール)、ポリウレタン、フェノールポリマー(例えば、フェノール-ホルムアルデヒド)、ポリアルキレン(例えば、ポリアセチレン)、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン)、ポリシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、ポリメチルフェニルシロキサン(PMPS))、ならびに無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)を含む。ある態様では、ポリマーは、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリ(ニトリル)およびポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton(登録商標))(NOMEX(登録商標))(KEVLAR(登録商標)))、ナイロンポリエーテルイミドケトン(PEEK)、およびこれらの組合せから選択されてもよい。
【0098】
これらのポリマーの機械的性質および電子的性質(例えば、導電率、抵抗率)は公知のものである。したがって、当業者は、それらの機械的特性および/もしくは電子的特性(例えば、イオン伝導度/抵抗率および/もしくは電子伝導度/抵抗率)に基づいて、適切な材料を選択することができ、ならびに/または本明細書の記載との組合せで、当技術分野の知識に基づいて、イオン伝導性(例えば、単一イオンに対する伝導性)をそのようなポリマーに調整することができる。例えば、上記および本明細書にリストされたポリマー材は、所望により、イオン伝導性を向上させるために、塩、例えば、リチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO、LiAsF、LiSOCF、LiSOCH、LiBF、LiB(Ph)、LiPF、LiC(SOCFおよびLiN(SOCF)、ならびに/または式(I)のイオン伝導性化合物をさらに含んで成ってもよい。
【0099】
セパレータは多孔質であってもよい。ある態様では、セパレータ孔径は、例えば、5ミクロン未満であってもよい。ある態様では、孔径は、5ミクロン以下、3ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下または50nm以下であってもよい。ある態様では、孔径は、50nm以上、100nm以上、300nm以上、500nm以上、または1ミクロン以上であってもよい。他の値も可能である。上記範囲の組合せ(例えば、300nm未満および100nm以上の孔径)も可能である。特定の態様では、セパレータは、実質的に非多孔質であってもよい。
【0100】
セパレータは、あらゆる適切な厚さを有してもよい。ある態様では、セパレータは、500nm以上、1ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、15ミクロン以上、20ミクロン以上、25ミクロン以上、30ミクロン以上または40ミクロン以上の厚さを有することができる。ある態様では、セパレータの厚さは、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下または5ミクロン以下である。他の値も可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0101】
本明細書に記載されるセパレータまたは他の層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定される。つまり、層は、形成後に(例えば、層を切断することによって)断面に沿って画像化することができ、SEMによって画像を取得することができる。平均厚さは、断面に沿ったいくつかの異なる位置(例えば、少なくとも10箇所)でのサンプルの厚さの平均をとることによって決定されてもよい。当業者は、試料を画像化するための適切な倍率を選択することができるであろう。
【0102】
特定の態様では、保護層は、式(I)のイオン伝導性化合物および/または式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成ってもよい。ある態様では、本明細書に記載のイオン伝導性化合物を組み込んだ保護層は、電解質に対して実質的に不浸透性である。保護層は、電解質の存在下で膨潤しないように構成されてもよい。しかし、他の態様では、電解質の存在下で保護層の少なくとも一部を膨潤させることができる。保護層は、場合によっては、実質的に非多孔質であってもよい。保護層は、電極に直接隣接して、または介在層(例えば、別の保護層)を介して電極に隣接して位置付けられてもよい。図1Cを参照すると、ある態様では、物品12は、電極20、電極活性表面20’の少なくとも一部に、またはその近傍に配置された保護層32、およびオプションとしての電解質40を含んで成る。他の態様では、保護層32に隣接する第2保護層(図1Cには図示せず)が存在してもよい。ある態様では、保護層32および第2保護層の少なくとも一方または両方が、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成るイオン伝導層を含む。他の構成も可能である。
【0103】
ある態様では、保護層は、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成るイオン伝導層であるが、保護層を形成するために、式(I)の化合物に加えて、または代替的に他の材料を使用してもよい。さらに、1以上の保護層が存在し得る場合、各層は、本明細書に記載の1以上の材料から独立して形成されてもよい。ある態様では、保護層は、セラミックおよび/またはガラス(例えば、リチウムイオンに対して伝導性のイオン伝導性セラミック/ガラス)を含んで成る。適切なガラスおよび/またはセラミックには、当技術分野で知られているように、「改質剤(modifier)」部分および「ネットワーク(network)」部分を含むものとして特徴付けられるものが含まれるが、これらに限定されない。改質剤は、ガラスまたはセラミックにおいて伝導性の金属イオンの金属酸化物を含むことができる。ネットワーク部分は、金属カルコゲナイド、例えば、金属酸化物または硫化物を含むことができる。リチウム金属および他のリチウム含有電極については、リチウムイオンを通過させるためにイオン伝導層をリチウム化またはリチウムを含有してもよい。イオン伝導層は、リチウム窒化物、リチウムシリケート、リチウムボレート、リチウムアルミネート、リチウムホスフェート、オキシ窒化リンリチウム、ケイソ硫化リチウム、ゲルマニウム硫化リチウム、酸化リチウム(例えば、LiO、LiO、LiO、LiRO、ここでRは希土類金属である)、リチウムランタンオキサイド、リチウムランタンジルコニウムオキサイド、リチウムチタンオキサイド、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノサルファイド、リチウムホスフェートおよびリチウムホスホスルフィド、ならびにそれらの組合せのなどの材料を含んで成る層を含んでよい。材料の選択は、これに限定されないが、セル内で使用される電解質、アノード、およびカソードの特性を含む多数の因子に応じてなされるであろう。
【0104】
一組の態様では、保護層は非電気活性金属層である。非電気活性金属層は、特にリチウムアノードが使用される場合、金属アロイ層、例えばリチウム化金属層を含んでもよい。金属アロイ層のリチウム含有量は、例えば、金属の特定の選択、所望のリチウムイオン伝導性および金属アロイ層の所望の可撓性に応じて、0.5重量%~20重量%で変化させてもよい。イオン伝導性材における使用のために適した金属は、Al、Zn、Mg、Ag、Pb、Cd、Bi、Ga、In、Ge、Sb、AsおよびSnが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、上に列挙したような金属の組合せをイオン伝導性材に使用してもよい。
【0105】
保護層は、あらゆる適切な厚さを有してもよい。ある態様では、本明細書に記載の保護層の厚さは、1nm以上、2nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、50nm以上、100nm以上、500nm以上、1ミクロン以上、2ミクロン以上、または5ミクロン以上であってもよい。特定の態様では、保護層の厚さは、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、100nm以下、50nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下または2nm以下であってもよい。他の値も可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0106】
ある態様では、保護層はポリマー層またはポリマー材を含んで成る層である。ある態様では、式(I)のイオン伝導性化合物は、ポリマー層に組み込まれる。電気化学セルにおいて使用するために適したポリマー層は、例えば、リチウムに対して高い伝導性があり、電子に対して最小の伝導性であってもよい。そのようなポリマーは、例えば、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、および炭化水素ポリマーを含んでもよい。ポリマーの選択は、セルに使用される電解質、アノードおよびカソードの特性を含む多くの因子に応じてなされるであろう。適切なイオン伝導性ポリマーは、リチウム電気化学セルのための固体ポリマー電解質およびゲルポリマー電解質(例えば、ポリエチレンオキシド)に有用であることが知られているイオン伝導性ポリマーなどを含む。適切なスルホン化ポリマーは、例えば、スルホン化シロキサンポリマー、スルホン化ポリスチレン-エチレン-ブチレンポリマーおよびスルホン化ポリスチレンポリマーを含む。適切な炭化水素ポリマーは、例えば、エチレンプロピレンポリマー、ポリスチレンポリマーなどを含む。
【0107】
ポリマー層はまた、アルキルアクリレート、グリコールアクリレート、ポリグリコールアクリレート、ポリグリコールビニルエーテルおよびポリグリコールジビニルエーテルなどのモノマーの重合から形成された架橋ポリマー材を含むことができる。例えば、そのような架橋ポリマー材の1つは、ポリジビニルポリ(エチレングリコール)である。架橋ポリマー材は、イオン伝導性を高めるために、塩、例えばリチウム塩をさらに含んでもよい。一態様では、ポリマー層は架橋ポリマーを含んで成る。
【0108】
ポリマー層に使用するために適し得る他の種類のポリマーは、限定されないが、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI))、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド、(例えば、ポリイミド、ポリニトリルおよびポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton))、ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニルフルオライド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリ(イソヘキシルシアナアクリレート))、ポリアセタール、ポリオレフィン(例えば、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート)、ポリエーテル、(ポリ(エチレンオキシド))(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)、ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンクロライド)およびポリ(ビニリデンフルオライド))、ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテレフタロイル))、ポリへテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT))、ポリヘテロ環式化合物(例えば、ポリピロール)、ポリウレタン、フェノールポリマー(例えば、フェノール-ホルムアルデヒド)、ポリアルキレン(例えば、ポリアセチレン)、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン)、ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)、んまらびに無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)を含む。これらのポリマーの機械的特性および電子的特性(例えば、伝導度、抵抗率)は公知である。したがって、当業者は、例えば、それらの機械的および/または電子的特性(例えば、イオン伝導度および/または電子伝導度)に基づいて、リチウム電池での使用に適したポリマーを選択することができ、および/または本明細書の記載と組合せ、当技術分野の知識に基づいて、イオン伝導性(例えば、単一イオンに対する伝導度)および/また電気伝導性になるようにそのようなポリマーを変更することができる。例えば、上記列挙されたポリマー材は、イオン伝導性を向上させるために、塩、例えばリチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiC1O、LiAsF、LiSOCF、LiSOCH、LiBF、LiB(Ph)、LiPF、LiC(SOCF、LiN(SOCF)をさらに含んで成ってもよい。
【0109】
ポリマー材は、例えば、ポリマーブレンドの成分のテーラリング(tailoring)、架橋度(もしあれば)の調整などによって、適切な物理的特性/機械的特性を有するように選択または配合することができる。
【0110】
ある態様では、複合層は、本明細書に記載のポリマー材およびイオン伝導性化合物(例えば、式(I)のイオン伝導性化合物)を含んで成る。このような複合層は、例えば、ポリマー材および式(I)のイオン伝導性化合物を基板に共噴霧(例えば、エアロゾル蒸着)すること、ポリマー材および式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成るスラリー、溶液または懸濁液から複合層をキャストすること、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る粒子を、ポリマー材を含んで成るポリマー層へと圧縮すること、および/または、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る層の細孔をポリマー材で充填することを含む、あらゆる適切な方法によって形成されてもよい。複合層を形成するための他の方法も可能であり、当該技術分野において一般的に知られている。複合層は、保護層などの、本明細書に記載の電気化学セルのあらゆる適切な構成要素に使用されてもよい。このような複合層を形成するためのこれらの方法および他の方法は、2015年5月20日に出願された「電極用保護層」という名称の米国仮特許出願第62/164,200号に詳細に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書で記載するように、特定の態様では、電気化学セルは電解質(例えば、図1B~1Cの電解質40)を含んで成る。電気化学または電池セルにおいて使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質の特別な場合において、これらの材料は、アノードとカソードとの間のセパレータとしてさらに機能し得る。材料が陽極とカソードとの間のイオン(例えば、リチウムイオン)の輸送を促進する限り、イオンを貯蔵し輸送することができるあらゆる適切な液体、固体またはゲル材を使用してもよい。電解質は、アノードとカソードとの間の短絡を防止するために電子的に非伝導性であってもよい。ある態様では、電解質は非固体電解質を含んで成ってもよい。
【0112】
ある態様では、電解質は、特定の厚さを有する層の形態である。電解質層の厚さは、例えば、1ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、15ミクロン以上、20ミクロン以上、25マイクロメートル以上、30マイクロメートル以上、40マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、70マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、200ミクロン以上、500ミクロン以上または1mm以上であってもよい。ある態様では、電解質層の厚さは、1mm以下、500ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、70ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下または50ミクロン以下である。他の値も可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0113】
ある態様では、電解質は、非水性電解質を含む。適切な非水性電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質などの有機電解質を含んでもよい。これらの電解質は、本明細書に記載されているように、(例えば、イオン伝導性を供するかまたは高めるために)1以上のイオン性電解質塩を、オプションとして含んでもよい。有用な非水性液体電解質溶媒の例には、例えば、N-メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル(例えば、炭酸のエステル)、カーボネート(例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート)、スルホン、亜硫酸塩、スルホラン、スフロニミジン(suflonimidies)(例えば、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩)、脂肪族エーテル、非環式エーテル、環状エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、ホスフェートエステル(例えば、ヘキサフルオロホスフェート)、シロキサン、ジオキソラン、N-アルキルピロリドン、硝酸塩含有化合物、前記の置換体、およびそれらのブレンドなどの非水性有機溶媒が含まれるが、これらに限定されない。用いることができる非環式エーテルの例には、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパンおよび1,3-ジメトキシプロパンが含まれるが、これらに限定されない。用いることができる環状エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびトリオキサンが含まれるが、これらに限定されない。用いることができるポリエーテルの例には、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、高グライム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよびブチレングリコールエーテルが含まれるが、これらに限定されない。用いることができるスルホンの例には、スルホラン、3-メチルスルホランおよび3-スルホレンが含まれるが、これらに限定されない。上記のフッ素化誘導体はまた、液体電解質溶媒として有用である。
【0114】
場合によっては、本明細書に記載の溶媒の混合物も使用してもよい。例えば、ある態様では、溶媒の混合物は、1,3-ジオキソランおよびジメトキシエタン、1,3-ジオキソランおよびジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソランおよびトリエチレングリコールジメチルエーテル、ならびに1,3-ジオキソランおよびスルホランから成る群から選択される。混合物中の2つの溶媒の重量比は、場合によっては、5重量%:95重量%~95重量%:5重量%であってもよい。
【0115】
適切なゲルポリマー電解質の非限定的な例には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、過フッ素化メンブレン(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、上記の誘導体、上記のコポリマー、上記の架橋およびネットワーク構造、および上記のブレンドを含む。
【0116】
ある態様では、非水性電解質は、少なくとも1のリチウム塩を含んで成る。例えば、場合によっては、少なくとも1のリチウム塩は、LlNO、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、リチウムビスオキサラトボレート、LiCFSO、LiN(SOF)、LiC(C2n+1SO(式中、nは1~20の整数である)、および、(C2n+1SOQLi(式中、nは1~20の整数であり、Qが酸素または硫黄から選択される場合、mは1であり、Xが窒素またはリンから選択される場合、mは2であり、Qが炭素またはケイ素から選択される場合、mは3である)から成る群から選択される。
【0117】
場合によっては、電解質は、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る固体電解質層である。ある態様では、図1Dを参照して、物品13は、電極20(例えば、アノードまたはカソード)および電極20と直接的に接触する固体電解質42を含んで成る。ある態様では、図1Eを参照して、物品14は、それぞれ、第1電極表面20’および第2電極表面22’において、固体電解質42と直接的に接触する電極20(例えば、カソード)および電極22(例えば、アノード)を含んで成る。固体電解質は、例えば、電気化学セル内の有機または非水性の液体電解質を置き換えてもよい。
【0118】
固体ポリマー電解質に適し得る他の材料の非限定的な例には、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、上記の誘導体、上記のコポリマー、上記の架橋およびネットワーク構造、および上記のブレンドを含む。
【0119】
固体電解質層(例えば、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成る固体電解質層)は、あらゆる適切な厚さを有してもよい。例えば、ある態様では、固体電解質層の厚さは、5nm以上、10nm以上、20nm以上、50nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、15ミクロン以上、20ミクロン以上、25ミクロン以上、30ミクロン以上または40ミクロン以上である。ある態様では、固体電解質層の厚さは、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、20nm以下または10nm以下である。他の値も可能である。上記範囲の組合せ(例えば、10nm以上50ミクロン以下、10nm以上1ミクロン以下、100nm以上2ミクロン以下、500nm以上10ミクロン以下、1ミクロン以上25ミクロン以下、15ミクロン以上40ミクロン以下、25ミクロン以上50ミクロン以下)も可能である。
【0120】
ある態様では、本明細書に記載の電極は、カソード(例えば、電気化学セルのカソード)であってもよい。ある態様では、カソードなどの電極は、式(I)の化合物を含んで成る。ある態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、本明細書に記載のようにカソードに堆積される。特定の態様では、式(I)の化合物は、カソードへと組み込まれる(例えば、カソードの形成前にカソード活性電極材と混合することによって組み込まれる)。
【0121】
ある態様では、カソード中の電気活性材は、式(I)の化合物を含んで成る。すなわち、式(I)のイオン伝導性化合物は、カソードの活性電極種であってもよい。特定の態様では、式(I)の化合物は、リチウムインターカレーション化合物(例えば、格子サイトおよび/または格子間サイトにリチウムイオンを可逆的にインサートすることができる化合物)である。ある態様では、カソードは、式(I)のイオン伝導性化合物を含んで成るインターカレーション電極であってもよい。例示的な態様では、カソードはLi1615MPを含んで成る。別の例示的な態様では、カソードはLi2017MPを含んで成る。別の例示的な態様では、カソードはLi2117.5MPを含んで成る。さらに別の例示的な態様では、カソードは、Li2218MPを含んで成る。さらに別の例示的な態様では、カソードは、Li2419MPを含んで成る。上記の化合物に加えて、またはそれに代えて、他のイオン伝導性化合物を組み込むことも可能である。
【0122】
ある態様では、式(I)の化合物を含んで成るカソードにおける電気活性材は、総カソード重量に対して、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約98重量%の量でカソードにおいて存在する。特定の態様では、式(I)の化合物を含んで成るカソードにおける電気活性材は、総カソード重量に対して、約100重量%以下、約99重量%以下、約98重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下または約50重量%以下の量でカソードにおいて存在する。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも約40重量%および約95重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0123】
電気活性材(例えば、アルカリ金属イオン)のイオンをインターカレートすることができ、電極(例えば、カソード)に含まれ得る適切な材料のさらなる付加的で非限定的な例は、オキサイド、硫化チタン、および硫化鉄を含む。具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiCoPO、LiMnPOおよびLiNiPO、(式中、(0<x<1)である)、ならびにLiNiMnCo(式中、(x+y+z=1)である)を含む。
【0124】
ある態様では、本明細書に記載の電気化学セルのカソードにおけるカソード活性材として使用する活性電極材は、電気活性遷移金属カルコゲナイド、電気活性伝導ポリマー、硫黄、炭素および/またはそれらの組合せを含んでもよい。本明細書で使用される用語「カルコゲナイド」は、酸素、硫黄およびセレンの元素において1以上の元素を含む化合物に関する。適切な遷移金属カルコゲニドの例は、限定されないが、Mn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、OsおよびIrから成る群から選択される遷移金属の電気活性酸化物、硫化物、およびセレン化物を含む。一態様では、遷移金属カルコゲナイドは、ニッケル、マンガン、コバルトおよびバナジウムの電気活性酸化物、ならびに鉄の電気活性硫化物から成る群から選択される。特定の態様では、カソードは、電気活性種元素として硫黄、硫化物、および/またはポリスルフィドを含んでもよい。
【0125】
一態様では、カソードは、二酸化マンガン、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀および五酸化バナジウム、酸化銅、オキシホスフェート銅、硫化鉛、硫化銅、硫化鉄、鉛ビスマス、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガンならびに炭素から成る群から選択された1以上の材料を含む。別の態様では、カソード活性層は、電気活性伝導性ポリマーを含んで成る。適切な電気活性伝導性ポリマーの例としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェンおよびポリアセチレンから成る群から選択される電気活性および電子伝導性のポリマーが含まれるが、これらに限定されない。伝導性ポリマーの例には、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリアセチレンが含まれる。
【0126】
ある態様では、本明細書に記載の電気化学セルにおけるカソード活性材として使用するための活性電極材は、電気活性硫黄含有材(例えば、リチウム硫黄電気化学セル)を含む。本明細書で使用する「電気活性硫黄含有材(electroactive sulfur-containing materials)」は、電気活性が硫黄原子または部分(moieties)の酸化または還元を含む、あらゆる形態の硫黄元素を含んで成るカソード活性材に関する。本発明の実施に有用な電気活性硫黄含有材の性質は、当該技術分野で知られているように広く変化し得る。例えば、一態様では、電気活性硫黄含有材は硫黄元素を含んで成る。別の態様では、電気活性硫黄含有材は、元素硫黄(または元素状硫黄、elemental sulfur)と硫黄含有ポリマーとの混合物を含んで成る。したがって、適切な電気活性硫黄含有材には、硫黄原子および炭素原子を含んで成る元素硫黄および有機材料(ポリマーであってもなくてもよい)が含まれてもよいが、これらに限定されない。適切な有機材料には、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合材料、および伝導性ポリマーをさらに含んで成るものが含まれる。
【0127】
特定の態様では、硫黄含有材(例えば、酸化形態)は、共有結合性のS部分、イオン性のS部分、およびイオン性のSm2-部分(mは、3以上の整数である)から成る群から選択されるポリスルフィド部分Sを含んで成る。ある態様では、硫黄含有ポリマーのポリスルフィド部分Sのmは、6以上の整数または8以上の整数である。場合によっては、硫黄含有材は硫黄含有ポリマーであってもよい。ある態様では、硫黄含有ポリマーはポリマー骨格鎖を有し、ポリスルフィド部分Sは、その末端の硫黄原子の一方または両方が側鎖としてポリマー骨格鎖に共有結合している。特定の態様では、硫黄含有ポリマーはポリマー骨格鎖を有し、ポリスルフィド部分Sはポリスルフィド部分の末端硫黄原子の共有結合によってポリマー骨格鎖に組み込まれる。
【0128】
ある態様では、電気活性硫黄含有材は、50重量%を超える硫黄を含んで成る。特定の態様では、電気活性硫黄含有材は、75重量%を超える硫黄(例えば、90重量%を超える硫黄)を含んで成る。
【0129】
当業者に知られているように、本明細書に記載される電気活性硫黄含有材の性質は、広範囲に変え得る。ある態様では、電気活性硫黄含有材は元素硫黄を含んで成る。特定の態様では、電気活性硫黄含有材は、元素硫黄と硫黄含有ポリマーとの混合物を含んで成る。
【0130】
特定の態様では、本明細書に記載の電気化学セルは、カソード活性材として硫黄を含んで成る1以上のカソードを含む。いくらかのそのような態様では、カソードは、カソード活性材として元素硫黄を含む。ある態様では、式(I)の化合物は、式(I)の化合物がアノード活性材と異なり、カソード活性物質とは異なるように選択される。
【0131】
本明細書に記載されるように、電気化学セルまたは電気化学セルにおいて使用される物品は、アノード活性材を含んで成る電極(例えば、アノード)を含んでもよい。ある態様では、式(I)の化合物を含んで成る層は、アノードに堆積される。特定の態様では、式(I)の化合物は、(例えば、アノードの形成前に活性電極材と混合することによって)電極に組み込まれる。
【0132】
ある態様では、式(I)の化合物は、総アノード重量に対して、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%または少なくとも約85重量%の量でアノードにおいて存在する。特定の態様では、式(I)の化合物は、総アノード重量に対して、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、または約50重量%以下の量でアノードにおいて存在する。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも約40重量%および約90重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。ある態様では、総アノード重量は、アノード活性層それ自体または任意の保護層を含むアノード活性材として測定されてもよい。
【0133】
本明細書に記載の電気化学セルにおけるアノード活性材として使用するために適した活性電極材には、限定されないが、伝導性基材に堆積されたリチウム箔およびリチウムなどのリチウム金属、リチウムアロイ(例えば、リチウム-アルミニウム・アロイおよびリチウム-スズ・アロイ)、グラファイトが含まれる。本明細書に記載のセラミック材またはイオン伝導材などの保護材によってオプションとして分離された、1のフィルムまたはいくつかのフィルムとしてリチウムを含有させることができる。適切なセラミック材としては、リチウムホスフェート、リチウムアルミネート、リチウムシリケート、リチウムリン酸窒化物、リチウムタンタル酸化物、リチウムアルミノサルファイド、リチウムチタン酸化物、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマニウムサルファイド、リチウムアルミノサルファイド、リチウムボロスルフィド、およびリチウムホスホスルフィド、ならびに上記の2以上の組合せなどのガラス質材を含有するシリカ、アルミナまたはリチウムを含む。本明細書に記載の態様で使用するために適したリチウムアロイは、リチウムおよびアルミニウム、マグネシウム、シリシウム(ケイ素)、インジウムならびに/またはスズのアロイを含むことができる。ある態様では、これらの材料が好ましい場合があるが、他のセル化学も考えられる。例えば、ある態様では、いくらかの例では、特定の電極(例えば、アノード)は、他のアルカリ金属(例えば、第1族原子)を含んでもよい。ある態様では、アノードは、1以上のバインダー材(例えば、ポリマーなど)を含んで成ってもよい。
【0134】
他の態様では、ケイ素含有またはケイ素ベースのアノードを使用してもよい。
【0135】
ある態様では、アノードの厚さは、例えば、2~200ミクロンで変化させてもよい。例えば、アノードの厚さは、200ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、25ミクロン未満、10ミクロン未満または5ミクロン未満であってもよい。特定の態様では、アノードの厚さは、2ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、25ミクロン以上、50ミクロン以上、100ミクロン以上または150ミクロン以上であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、2ミクロン以上200ミクロン以下、2ミクロン以上100ミクロン以下、5ミクロン以上50ミクロン以下、5ミクロン以上25ミクロン以下、10ミクロン以上25ミクロン以下の厚さ)も可能である。他の範囲も可能である。厚さの選択は、所望のリチウムの過剰量、サイクル寿命、およびカソード電極の厚さなどのセル設計パラメータに応じてなされてよい。
【0136】
ある態様では、本明細書に記載の電気化学セルは、少なくとも1の電流コレクタ(または集電体、current collector)を含んで成る。電流コレクタの材料は、場合によっては、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、不動態化金属、および他の適切な金属)、金属化ポリマー、導電性ポリマー、分散された伝導性粒子を含んで成るポリマー、ならびに他の適切な材料から選択されてもよい。特定の態様では、電流コレクタは、物理蒸着、化学蒸着、電気化学堆積、スパッタリング、ドクターブレード、フラッシュ蒸発、または選択された材料のための他の適切な堆積技術を用いて電極層に堆積される。ある場合には、電流コレクタは別個に形成され、電極構造に結合されてもよい。しかし、ある態様では、電気活性層とは分離した電流コレクタが存在しなくてもよく、または必要でないことがあることを理解されたい。
【0137】
ある態様では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、カソード(例えば、電気活性硫黄含有材を含んで成るカソード、インターカレーション・カソード)および式(I)の化合物を含んで成る固体電解質層を含む。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0138】
特定の態様では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、カソード(例えば、電気活性硫黄含有材を含んで成るカソード、インターカレーション・カソード)、液体電解質、および式(I)の化合物を含んで成る保護層を有して成る。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0139】
ある態様では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、カソード(例えば、電気活性硫黄含有材を含んで成るカソード、インターカレーション・カソード)、液体電解質、および式(I)の化合物を含んで成るセパレータを含んで成る。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0140】
特定の態様では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、インターカレーションされたカソード(例えば、インターカレーション種としての式(I)の化合物を含んで成るカソード)および電解質(例えば液体電解質)を含んで成る。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0141】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を例示することを意図しているが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例0142】
(実施例1)
この実施例は、式(I)を有する種々のイオン伝導性化合物の伝導性および組成を記載する。
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、xは5~14、yおよびzは0.5~1、wはy、1.5yまたは2yであり、MはSiである。比較対象の化合物Li2xx+7GePも形成した。
【0143】
イオン伝導性化合物は、LiS、SiS(もしくはGeS)、Pを混合することによって形成され、またはLiS、Si(もしくはGe)、S、Pのような異なる前駆体を用いて、または表1に列挙した化合物を形成するために化学量論に従ってLiS、Si、S、Pを用いて形成された。混合物をボールミルで混合した。混合物を、不活性雰囲気(例えば、アルゴン)下で密閉容器中に密閉し、12時間~16時間、700℃に加熱した。次いで、容器を室温まで冷却し、材料を粉末形態に粉砕した。
【0144】
図2は、式Li2xx+7SiPを有するイオン伝導性化合物の粒子の伝導度を示し、表1に要約する。表1はまた、比較対象の化合物、Li24GeP19の粒子を含む。4トン/cmまでの圧力で、2つの銅シリンダーの間で粒子をプレスすることによって平均イオン伝導度を測定し、25℃、500kg/cm、1kHzで動作する伝導性ブリッジを使用して、試料中の平均イオン伝導度の変化がもはや観察されなくなるまで圧力を増加させ、伝導度を決定した。
【表1】
【0145】
XRDパターンは、Li20SiPSi17粒子(図3)およびLi24SiP19粒子(図4)は、Li10SnP12粒子の構造とは異なる構造を有することを示している。Li20SiP17およびLi24SiP19は、同様のXRDパターンを有し、著しいサテライトピークを示さず、これらの構造が、Li10SnP12およびLi10GeP12に関して報告されたものと比較して、より高い秩序(例えば、立方格子を有する)および構造内のより高い結晶化度を有することを示唆していた。さらに、各スペクトルには、LiSの無視できる程度の特徴(例えば、LiSの標準ピーク位置)が現れ、化学反応が起こったことを示している(開始時の化合物の単なる機械的な混合物ではない)。
【0146】
(実施例2)
この実施例は、電解質の存在下でのイオン伝導性化合物Li20SiP17の安定性を示す。
【0147】
図5は、40℃で3週間、LP30電解質(混合比1:1のエチルカーボネートおよびジメチルカーボネートにおける1MのLiPF)に浸漬する前後の、Li20SiP17の粒子からのXRDパターンを示す。XRDパターンは、電解質浸漬の前後で非常に類似した構造を示す。
【0148】
(実施例3)
この実施例は、本明細書に記載のイオン伝導性化合物の存在下でのリチウムの安定性を示す。
【0149】
イオン伝導性化合物の粒子のペレット(例えば、Li10SiP12、Li20SiP17またはLi24SiP19、例えば、平均厚さ0.5~2mm)を2つのリチウム金属箔の間に位置付けたサンドイッチ構造を用いて、リチウムの安定性を試験した。
【0150】
サンドイッチ構造のLi/Li10SiP12/Liにおいて、リチウム金属が経時的に消費され、材料がリチウム金属に対して安定でないことが示された。Li20SiP17またはLi24SiP19がそれぞれ組み込まれた、例えば、Li/Li20SiP17/LiおよびLi/Li24SiP19/Liのような構造は、Li10SiP12と比較してリチウム金属の次に改善された安定性を示した。安定性はまた、構造(例えば、Li/Li10SiP12/Li)を開き、ペレット層の変化を観察することによって、定性的に確認された。
【0151】
(実施例4)
この例は、式Li2117GaP(すなわち、式(I)Li2xx+W+5Z2Z、xは10.5、yは1、wは1.5y、zは1、およびMはGaである)を有するイオン伝導性化合物の伝導度および構造を記載する。
【0152】
LiS、GaSおよびPを混合することによって、イオン伝導性化合物を形成した。混合物をボールミルで混合した。混合物を、不活性雰囲気(例えば、アルゴン)下で密閉容器に密封し、12時間~16時間にわたって700℃に加熱した。次いで、容器を室温まで冷却し、材料を粉末形態に粉砕して、Li2117GaPを形成した。
【0153】
Li2117GaPの平均イオン伝導度は、1.4×10-4S/cmであった。4トン/cmまでの圧力で、2つの銅シリンダーの間で粒子をプレスすることによって平均イオン伝導度を測定し、25℃、500kg/cm、1kHzで動作する伝導性ブリッジを使用して、試料中の平均イオン伝導度の変化がもはや観察されなくなるまで圧力を増加させ、伝導度を決定した。
【0154】
(実施例5)
この実施例は、電解質の存在下でのイオン伝導性化合物Li22SiP18の安定性を示す。
【0155】
図6は、有機液体カーボネートベースの電解液に、40℃で2週間浸漬する前後のLi22SiP18の粒子からのXRDパターンを示す。XRDパターンは、電解質浸漬の前後で非常に類似した構造を示し、化合物がこの電解質中で安定であることを示している。
【0156】
(比較例5)
この実施例は、電解質の存在下でのイオン伝導性化合物Li1815Brの安定性を示す。
【0157】
図7は、有機液体カーボネートベースの電解質に、40℃で2週間浸漬する前後のLi1815Brの粒子からのXRDパターンを示す。粒子の周りに白色の濃い粉末が形成された。XRDパターンおよび白色粉末は、Li1815Br粒子が電解質と反応したことを示唆している。
【0158】
(実施例6)
この例は、式Li2xx+W+5Z2Zを有する種々のイオン伝導性化合物の伝導度および組成を記載しており、xは5.5~10.5であり、yおよびzは0.5~2であり、wはy、1.5yまたは2yであり、MはSi、Al、La、Bおよび/またはGaである。
【0159】
式Li21AlSi16(PにAlを置換する)を有する比較対象の化合物もまた作製した。
【0160】
イオン伝導性化合物は、LiS、SiS、Pを混合することによって形成され、および/またはLiS、Si(Al、La、Bおよび/またはGa)、S、Pのような異なる前駆体を用いて、または表2に列挙した化合物を形成するために化学量論に従ってLiS、Si、S、Pを用いて形成された。混合物をボールミルで混合した。混合物を、不活性雰囲気(例えば、アルゴン)下で密閉容器中に密閉し、12時間~16時間、500℃または700℃に加熱した。次いで、容器を室温まで冷却し、材料を粉末形態に粉砕した。
【0161】
式Li2xx+W+5Z2Zを有するイオン伝導性化合物の粒子の伝導度を表2に要約する。4トン/cmまでの圧力で、2つの銅シリンダーの間で粒子をプレスすることによって平均イオン伝導度を測定し、25℃、500kg/cm、1kHzで動作する伝導性ブリッジを使用して、試料中の平均イオン伝導度の変化がもはや観察されなくなるまで圧力を増加させ、伝導度を決定した。
【表2】
【0162】
本発明のいくらかの態様を本明細書に記載し、示したが、当業者であれば、機能を実行し、ならびに/または、本明細書に記載された結果および/もしくは利点を得るための種々の他の手段および/もしくは構造を容易に想到し得るであろう。また、そのような変形および/または修正の各々は、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料および構成が例示的であることを意図し、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、具体的な用途または本発明で教示される具体的な用途に応じることは容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の態様に対する多くの等価物を、日常的な実験のみを用いて認識し、確認することができるであろう。したがって、前述の態様は単なる例として提示され、添付の特許請求の範囲およびそれと均等の範囲内で、本発明は、具体的な記載および請求の範囲以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法を対象とする。さらに、そのような特徴、システム、物品、キットおよび/または方法が相互に矛盾しない場合、そのような特徴、システム、物品、キットおよび/または方法の2以上のあらゆる組合せが、本発明の範囲内である。
【0163】
本明細書で規定され、使用されている全ての定義は、辞書における定義、参照により組み込まれた文献における定義および/または定義された用語の通常の意味を基準とすると理解されるべきである。
【0164】
本明細書および特許請求の範囲で使用する不定冠詞「1の(aおよびan)」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0165】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または(and/or)」という語句は、そのように結合された要素の「一方または両方(either or both)」、すなわち場合によっては結合的に存在し、他の場合では離れて存在する要素であることを意味することを理解されたい。「および/または」と列挙された複数の要素は、同じように、すなわちそのように結合された要素の「1以上の、または1または複数の(one or more)」と解釈されるべきである。具体的に特定された要素と関連するかどうかにかかわらず、「および/または」の句によって具体的に特定される要素以外の他の要素がオプションとして存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含んで成る(comprising)」などの開放型言語と併せて使用される場合、「Aおよび/またはB」への言及は、一態様では、Aのみ(オプションとして、B以外の要素を含む)、別の態様では、Bのみ(オプションとして、A以外の要素を含む)、さらに別の態様では、AおよびBの両方(オプションとして、他の要素を含む)に言及する。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、上記で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」もしくは「および/または」は包括的(すなわち、要素の数またはリスト、およびオプションとして付加的なリストにない項目の少なくとも1つを含む(1以上を含む))であると解釈されるべきである。「~の1つだけ(only one of)」または「~の正確に1つ(exactly one of)」または特許請求の範囲で使用される場合、「~から成る(consisting of)」などの、逆に明示された用語のみが、要素の数またはリストの正確な1要素を含むことに言及するであろう。一般的に、本明細書で使用される「または」という用語は、「どちらか(either)」、「~の1つ(one of)」、「~の1つだけ(only one of)」、「~のうちの正確に1つ(exactly one of)」、「本質的に~から成る(consisting of)」などの排他的な条件によって先行される場合、排他的な代替語(すなわち、「1または両方では無く一方(one or the other but not both)」)を示すものとして解釈されるべきであり、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0167】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、1以上の要素のリストを参照して、「少なくとも1の(at least one)」という語句は、要素のリストにおいて、1以上の要素のいずれかから選択される少なくとも1の要素を意味すると理解されるべきであり、必ずしも要素のリスト内に特にリストされた各要素および全ての要素の少なくとも1を含み、要素のリスト内の要素のあらゆる組合せを除外しない。この定義はまた、「少なくとも1の」という語句が指し示す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外に、(特定された要素に関連するものであろうと無関係なものであろうと)要素が任意に存在することを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1の」(または、同等に「AまたはBの少なくとも1の」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1の」)は、一態様では、Bが存在しない(およびオプションとしてB以外の要素を含む)少なくとも1の、オプションとして1以上のAを含み、別の態様では、Aが存在しない(およびオプションとしてA以外の要素を含む)少なくとも1の、オプションとして1以上のBを含み、さらに別の態様では、少なくとも1の、オプションとして1以上のA、および少なくとも1の、オプションとして1以上のBを含む(オプションとして他の要素を含む)等の態様がある。
【0168】
逆に明示されていない場合に限り、1以上の工程または動作を含む本明細書で請求されるいずれの方法において、方法における工程または動作の順序は、必ずしも方法における工程または動作が列挙される順序に限定されないことを理解すべきである。
【0169】
特許請求の範囲および本明細書において、「含んで成る(comprising)」、「含む(including)」、「支持する(carrying)」、「有する(having)」、「含む、または含有する(containing)」、「含む(involving)」、「支持する(holding)」、「~から成る(composed of)」などの全ての移行句(transitional phrases)は、制約がない(open-ended)(すなわち、限定されないことを含むことを意味する)と理解されるべきである。米国特許商標庁の特許審査手続書第2111.03項に記載されているように、移行句「~から成る」および「本質的に~から成る」のみが、それぞれ閉鎖式(closed)または半閉鎖式の(semi-closed)移行句とする。
【関連出願の相互参照】
【0170】
本出願は、2015年11月24日に出願された米国仮出願第62/259,449号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおける使用のための物品であって、
式(I)の化合物を含んで成り、
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~16であり、
yは0.1~6であり、
wは0.1~15であり、および
zは0.1~3である、
物品。
【請求項2】
電気化学セルにおける使用のための物品であって、
式(I)の化合物を含んで成り、
Li2xx+W+5Z2Z (I)
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~14であり、
yは1~2であり、
wは2~4であり、および
zは0.5~1である、
物品。
【請求項3】
式(I)の化合物を含んで成る層を有して成る、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
層に堆積された式(I)の化合物を含んで成る、請求項1~3のいずれかに記載の物品。
【請求項5】
xが10以上である、請求項1~のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
Mが、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウムおよびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の物品。
【請求項7】
式(I)の化合物が立方体構造を有する、請求項1~のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成る、請求項1~のいずれかに記載の物品。
【請求項9】
前記複数の粒子が、10nm以上100ミクロン以下の平均最大断面寸法を有する、請求項に記載の物品。
【請求項10】
前記複数の粒子が、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度を有する、請求項またはに記載の物品。
【請求項11】
式(I)の化合物を含んで成る層が、セパレータ、保護層、固体電解質層またはリチウム-インターカレーション電極である、請求項2に記載の物品。
【請求項12】
式(I)の化合物を含んで成る層が、1ミクロン以上50ミクロン以下の平均厚さを有する、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
式(I)の化合物を含んで成る層が、1nm以上10ミクロン以下の平均厚さを有する、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
式(I)の化合物を含んで成る層が、50nm以上25ミクロン以下の平均厚さを有する、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
式(I)の化合物を含んで成る層が、10-4S/cm以上の平均イオン伝導度を有する、請求項1114のいずれかに記載の物品。
【請求項16】
式(I)の化合物を含んで成る層の少なくとも一部分が、結晶質である、請求項に記載の物品。
【請求項17】
式(I)の化合物を含んで成る層が、50重量%以上99重量%以下の結晶質である、請求項に記載の物品。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の物品を含んで成る、電気化学セル。
【請求項19】
液体電解質をさらに含んで成る、請求項18に記載の電気化学セル。
【請求項20】
リチウムもしくはケイ素を含んで成るアノード、および/または、硫黄もしくはリチウム-インターカレーション種を含んで成るカソードを有して成る、請求項18または19に記載の電気化学セル。
【外国語明細書】