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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043361
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20220309BHJP
   G01N 21/956 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
H01L21/66 J
H01L21/66 Z
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018209474
(22)【出願日】2018-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良広
(72)【発明者】
【氏名】増田 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】松野 均
(72)【発明者】
【氏名】芝山 慧
(72)【発明者】
【氏名】吉村 修
(72)【発明者】
【氏名】飯島 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2G051
4M106
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051DA01
2G051DA08
2G051DA17
4M106AA01
4M106CA38
4M106DB30
4M106DH47
4M106DJ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】清浄な空気を検査室に対して供給する検査装置において、基板周辺の清浄な空気流を基板の下方へ確実に向かわせることが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査室100において、基板20を載置するステージ120の上面の一部を覆うとともに、気体供給部110とステージとの間に配置され基板へ向かう気流を遮断する、整流板140を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに載置されている基板を検査する検査装置であって、
前記ステージを配置している検査室の内部に対して前記ステージの側方から気体の流れを供給する気体供給部、
前記気体を前記検査室から排出する排出部、
前記気体の流れを整流する整流板、
を備え、
前記整流板は、前記ステージの上面の一部を覆う第1部位を有しており、
前記整流板は、前記気体供給部が前記気体を噴射する供給口と前記ステージとの間に配置されることにより、前記気体供給部が供給する前記気体の流れが前記基板に対して直接当たらないようにする、第2部位を有しており、
前記第1部位と前記第2部位は、前記整流板の連続する部位として形成されており、
前記整流板は、前記第1部位と前記ステージの上面との間に第1空間が形成される位置に配置されており、
前記整流板は、前記第2部位と前記ステージとの間に第2空間が形成される位置に配置されている
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記整流板は、屈折または湾曲する形状によって前記第1部位と前記第2部位が形成されることにより、前記第1部位が前記ステージの上面の一部を覆うとともに、前記第2部位が前記ステージの側方を前記気体の流れから覆うように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記整流板は、平板が鈍角に屈折することにより前記第1部位と前記第2部位が形成された形状を有する
ことを特徴とする請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
前記整流板は、前記第1部位が前記ステージの上面に対して平行ではない傾斜角を有するように配置されている
ことを特徴とする請求項3記載の検査装置。
【請求項5】
前記整流板は、前記第2部位が前記ステージの法線方向に対して平行ではない傾斜角を有するように配置されている
ことを特徴とする請求項3記載の検査装置。
【請求項6】
前記整流板は、アーチ状に湾曲することにより前記第1部位と前記第2部位が形成された形状を有する
ことを特徴とする請求項2記載の検査装置。
【請求項7】
前記整流板は、前記第1部位と前記ステージの上面との間の距離が、前記ステージの上面の中心から外周に向かって次第に小さくなる形状に形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の検査装置。
【請求項8】
前記整流板は、前記第2部位と前記ステージとの間の距離が、前記ステージの下方に向かうほど次第に大きくなる形状に形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の検査装置。
【請求項9】
前記ステージは、前記検査室の外から前記基板を受け取る受け取り位置と、前記基板を検査する検査位置との間で、前記基板を相互に移動させることができるように構成されており、
前記整流板は、前記受け取り位置から前記検査位置まで延伸している
ことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項10】
前記整流板は、前記気体が前記供給口から前記ステージの上面へ向かって通過する開口部を有し、
前記開口部は、前記ステージの上面に対して投影したとき、前記基板を検査する検査位置において、前記ステージと重なる領域をもつような円形形状を有する
ことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項11】
前記整流板は、前記気体が前記供給口から前記ステージの上面へ向かって通過する開口部を有し、
前記開口部は、前記ステージの上面に対して投影したとき、前記検査室の外から前記基板を受け取る受け取り位置から前記基板を検査する検査位置まで延伸し、それぞれの位置において前記ステージと重なる領域をもつような円形形状を有する
ことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項12】
前記整流板は、前記気体供給部が供給する前記気体の流れを、前記第1部位の上方、前記ステージの上面、前記第1空間、前記第2空間、の順に導くように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項13】
ステージに載置された被検査基板を検査する検査装置において、
清浄な気体を装置内に平行流を側方から供給する供給手段と、
前記気体を排出する排出部と、
前記ステージを回転駆動する回転駆動手段と、
前記清浄な気体を整流する整流板と、
を備え、
前記整流板は被検査基板に対向する第1の面と、第1の面に連続で非平行な第2の面を有し、
前記被検査基板と前記整流板における第1の面との間に空間を有し、
前記清浄な空気が前記第2の面、前記空間、前記第1の面の順に通過をして、前記排出部に流入するように配置される、
検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、基板(半導体ウエハ)上に異物が存在すると、配線の絶縁不良や短絡等の不良の原因となる。これらの異物は、搬送装置等の可動部から発生するものや、人体から発生するもの、プロセスガスにより処理装置内で反応生成されたもの、薬品や材料の混入していたもの等種々の状態で混入される。磁気ディスクや液晶表示素子の製造工程においても同様であり、発生した異物の基板(磁気ディスク、又は液晶表示素子)への付着は不良の原因となる。
【0003】
そこで、製造工程においては表面検査装置を用いて基板表面の異物を検出し、管理することにより、各製造装置の発塵状況や各工程の清浄度などを監視・制御し、製品の品質低下や歩留り低下等の抑制を図っている。しかし、そのような表面検査装置においても、可動部等からの異物の発生は皆無ではなく、他の工程と同様に検査対象の基板(被検査基板)への異物の付着が懸念される。
【0004】
検査装置の清浄技術に関する先行技術としては、主に特許文献1と2があげられる。
特許文献1は、基板の表面状態を検査する表面検査装置について記載している。同文献は、『検出感度の校正を容易に行うことができる表面検査装置及びその校正方法を提供する。』ことを課題として、『ケース15内の検出ユニット14内に設けられたウエハチャック7に載置されたウエハ1を高速回転することにより検査する表面検査装置において、FFU3により検出ユニット14内のウエハ1周辺に清浄な空気を供給し、ウエハチャック7の下方に設けた排気口により検出ユニット14内の空気を排出することにより、ウエハチャック7の下方に設けられ回転機構4によって、ウエハチャック7及びウエハ1が高速回転する場合に、その周辺に生じる乱流を層流にする。』という技術を記載している(要約参照)。
【0005】
特許文献2は、装置内の清浄化を図るために、ファンフィルタユニットと呼ばれる清浄空気を供給するファンと排気ユニットを複数配置し、それぞれの流量を制御することで装置内の気流の乱れを抑制し、異物付着数を低減することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-236948号公報
【特許文献2】特開2011-75351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、気流ガイド212(同文献の図2)やルーバ412(同文献の図6)などの部材によって、ウエハ周辺の気流を排気口へ導くとともに、乱流発生を抑制することを図っている。しかし同文献においては、気流を排気口へ導く吸い込み力の大部分を排気ファンユニット11に依拠している。したがって同文献においては、ウエハ周辺の気流がFFU9から供給される気流によって押し戻され、ウエハ上に戻る可能性がある。これによりウエハが汚染される可能性が増す。
特許文献2においては、検査装置においてウエハを載置するステージの数千rpm程度での回転により発生する回転気流は、特許文献1に開示されるようなファンフィルタユニットから供給される気流よりも流速が高く、検査部内で支配的な流れになりやすい。よって、特許文献1に開示される方法のみでは回転気流による異物の巻き上げや気流の乱れを完全に排除することはできない。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、清浄な空気を検査室に対して供給する検査装置において、基板周辺の清浄な空気流を基板の下方へ確実に向かわせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検査装置は、基板を載置するステージの上面の一部を覆うとともに、気体供給部と前記ステージとの間に配置され前記基板へ向かう気流を遮断する、整流板を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る検査装置によれば、検査室に対して供給する正常な空気を、基板周辺において基板の下方へ確実に向かわせることができる。これにより、基板上に気流が戻されて基板が汚染される可能性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る検査装置10の構成要素を示す概略上面図である。
図2】検査室100の内部構成を示す透視側面図である。
図3】整流板140の配置を説明する図である。
図4】整流板140周辺の気流を説明する図である。
図5A】比較例として第1部位141と第2部位142が形成する角度を直角とした構成例を示す。
図5B】比較例として第1部位141と第2部位142が形成する角度を鋭角とした構成例を示す。
図5C】比較例として第1部位141とステージ120の上面との間の距離を図4よりも広げた構成例を示す。
図5D】比較例として第1部位141が図4よりも長い構成例を示す。
図6】実施形態2における整流板140の構成例を示す図である。
図7】実施形態3における整流板140の構成例を示す図である。
図8】実施形態4における検査室100の構成を示す。
図9】実施形態5における検査室100の構成を示す。
図10】比較例として整流板140の上部開口形状が矩形である構成例を示す。
図11】整流板140の上部が図8の円形状の開口部を有している場合の検査位置MPにおける気流の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る検査装置10の構成要素を示す概略上面図である。基板である半導体ウエハ20を搭載したカートリッジ200が検査装置10に対して導入されると、プリアライナ300は半導体ウエハ20の位置合わせなどを実施する。半導体ウエハ20はその後、検査室100に搬送される。検査室100は、受け取り位置(Transfer Position:TP)において半導体ウエハ20を受け取り、検査位置(Measurement Position:MP)において半導体ウエハ20を検査する。気体供給装置110は、検査室100内に対して清浄な気流を供給する。
【0013】
図2は、検査室100の内部構成を示す透視側面図である。半導体ウエハ20は、ステージ120上に載置される。ステージ120は、受け取り位置TPと検査位置MPとの間で半導体ウエハ20を移動させる。ステージ120はさらに、半導体ウエハ20の表面を検査するために、ステージ機構121により、半導体ウエハ20を光学検査ユニット130の下方で回転させることができる。図2は半導体ウエハ20が検査位置MPにある状態を示している。光学検査ユニット130は、半導体ウエハ20の表面状態を検査する。
【0014】
検査室100の側方(ステージ120の側方)からは、気体供給装置110によって清浄な空気流が供給される。気体供給装置110は、例えばファンフィルタユニット(FFU)によって構成することができる。FFUは、取り付けられている壁から外気を吸引し、これを清浄化して平行気流に変換する。気体供給装置110は、その清浄空気の平行気流を検査室100に対して供給する。
【0015】
気体供給装置110が気流を供給する供給口と、ステージ120との間には、整流板140が配置されている。ステージ120の回転により、ステージ120外周部からは流速の高い旋回流が放出される。整流板140は、気体供給装置110が供給する気流の一部をステージ120の上方に導き、ステージ120外周部からの旋回流の作用により、整流板140とステージ120外周の隙間を通して、気流をステージ120の下方へ導く役割を有する。さらに、整流板140の内側に導かれた気流は、検査室100の下方に導かれる。整流板140とステージ機構121の間には狭い隙間122が設けられており、整流板140内側の空間はベンチュリ効果によって負圧になるため、旋回流から放出された気流が効率よく検査室100の下方に導かれる。また整流板140は、気体供給装置110が供給する気流の一部を検査室の下方に導く。検査室の下方、さらにステージ機構121の下方へ導かれた気流は、検査室100の下方に配置された排気口150から検査室100外へ排出される。整流板140は、ステージ120から見て気体供給装置110の反対側にも配置することができる。気体供給装置110から光学検査ユニット130を通過した気流は整流板上側を通って検査室100の外に排出される。また整流板140とステージ120外周の隙間を通して、ステージ120の下方(気体供給装置110の反対側)へ導かれた気流は、整流板下側を通って検査室100の外に排出される。
【0016】
図3は、整流板140の配置を説明する図である。図3は、図2のうちステージ120の周辺を拡大したものである。整流板140は、第1部位141、第2部位142および両者を接続する曲率を有する第3部位143で構成される。第1部位141は、上方から投影したとき、ステージ120の上面と空隙をもちつつステージ120の上面の一部と重なる位置に配置されている。さらには、半導体ウエハ20の上面との一部とも重なるか、あるいはほぼ同等であることが望ましい。第2部位142は、気体供給装置110からの気流を第1部位141、さらにステージ120の上方に導くとともに、気体供給装置110の供給口とステージ120との間の空間を遮ることにより、気流が半導体ウエハ20に対して直接当たらない位置に配置されている。第2部位142はさらに、ステージ120の底面よりも下方まで延伸していることが望ましい。第3部位143は第1部位141と第2部位142を連続の曲線で接続する部位であり、曲率の大きさは第2部位142と気体供給装置110の空間距離で決定される。第1部位141とステージ120の上面との間、および第2部位142とステージ120の側端部との間には、それぞれ空隙が設けられている。第1部位141と第2部位142が形成する角度については後述する。
【0017】
図4は、整流板140周辺の気流を説明する図である。記載の便宜上、一部の符号と部材を省略した。気体供給装置110が供給する水平方向の気流は、第2部位142から第3部位143を通して第1部位141に至る連続した曲線形状により、ステージ120および半導体ウエハ20の上方に導かれる。一方、ステージ120の回転により、ステージ上面および下面からの気流はステージ120の外周に輸送されて、外周には旋回流が発生する。この旋回流により、ステージ120および半導体ウエハ20の上方に導かれた気流が引き込まれるとともに、気流は旋回慣性力によって勢いをもって外周方向へ放たれる。この気流はステージ120の機構等から発生する塵埃を含んでいる可能性があるので、半導体ウエハ20の上方へ循環させることなくステージ120の下方へ確実に導く必要がある。
【0018】
ステージ120の旋回流に起因して、ステージ120の端部と第1部位141との間の空間において、負圧領域144が発生する。この負圧は、整流板の第1部位141がステージ120の上面と空隙をもちつつステージ120の一部と重なって設置された構成において、ステージ120が回転することにより発生する。この負圧領域144の作用により気流が引き込まれる。したがって、ステージ120および半導体ウエハ20の上方に到達した気流は、第1部位141とステージ120の上面との間の空隙に導かれ、第3部位143で滑らかに第2部位142方向へ導かれ、さらに第2部位142とステージ120の側端部との間の空隙に導かれる。これにより、気流はよどみ点を形成することなく、ステージ120の下方へ導かれることになる。このとき、気体供給装置110が供給する水平方向の気流は第2部位142によって遮られているので、ステージ120の下方へ導かれた気流が半導体ウエハ20の上方に再度巻き上げられる可能性は小さいといえる。これに加えて、ステージ120下面でも旋回流が発生し、外周に向かう旋回慣性力による気流が生じる。この気流は、半導体ウエハ20上面の気流同様に第2部位142に衝突し、該部位は下方に導く傾斜形状となっているため、半導体ウエハ20上面からの気流の流れを妨げることがない。したがって、塵埃を含む可能性がある気流は半導体ウエハ20の上方へ循環することなく排気口150から排出されるので、検査装置10の信頼性を高めることができる。
【0019】
図5Aは、比較例として第1部位141と第2部位142が形成する角度を直角とした構成例を示す。図5A(1)は第3部位143を設けず、第1部位141と第2部位142が直接接続される。図5A(2)は第3部位143により、第1部位141と第2部位142が連続した曲線で接続される。図4に示す本実施形態1の構成例においては、第1部位141と第2部位142が形成する角度は鈍角であり、第3部位143により連続した曲線で接続されている。これに対して図5A(1)のように両部位間の角度を直角に形成した場合、点線で囲んだ角部に導かれた気流が乱流を生じさせ、ステージ120の下方へ向かう気流を妨げる可能性がある。この角部の乱流は、図5A(2)のように第3部位143を設けることで、緩和される。しかしステージ120下面の気流は第2部位142に直角に衝突することとなり、気流の不安定な状況が生じる。これによって、半導体ウエハ20上面からの下方への流れをも不安定にさせる。したがって図5A(1)、図5A(2)のような構成は望ましくないといえる。
【0020】
図5Bは、比較例として第1部位141と第2部位142が形成する角度を鋭角とした構成例を示す。図5B(1)は第3部位143を設けない場合、図5B(2)は第3部位143を設けた場合である。この場合も図5Aと同様に角部において乱流が発生する可能性があることに加えて、図4図5Aと比較してステージ120の下方へ気流を導く力が弱まる。さらには、ステージ120下面の気流は第2部位に到達すると、該部位はステージ上方に導かれる傾斜形状となっており、半導体ウエハ20からの下方の流れを妨げる作用が生じる。このような構成は図5Aよりもさらに望ましくない。
【0021】
図5Cは、比較例として第1部位141とステージ120の上面との間の距離を図4よりも広げた構成例を示す。この構成例においては、第1部位141とステージ120の上面との間の空間において気流が巻き上がり、半導体ウエハ20の上方に戻ってくる可能性が高まる。さらに、ステージ120の端部と第1部位141との間の空隙が大きいことで発生する負圧も小さくなり、気流の引き込み効果が小さくなる。したがって第1部位141とステージ120の上面との間の距離は、図5Cのような巻き上がり気流を抑制し負圧を発生できるようにあらかじめ調整することが望ましい。
【0022】
図5Dは、比較例として第1部位141が図4よりも長い構成例を示す。第1部位141がステージ120の上面を覆う面積が大きすぎると、第1部位141の上方を通過した気流を第1部位141とステージ120の上面との間の空間へ導く作用が弱まる。さらに、ステージ120の端部と第1部位141との間で発生する負圧が大きくなることで、ステージ120の外周からの旋回慣性力により排出の作用が弱まる。したがって図5Dのような構成は望ましくないといえる。
【0023】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る検査装置10は、気体供給装置110とステージ120との間に配置された整流板140を備え、第1部位141はステージ120との間で空隙をもちつつステージ120の上面の一部を覆い、第2部位142は気体供給装置110が供給する気流を第1部位141、さらにステージ120の上方に導く。これにより、気体供給装置110からステージ120および半導体ウエハ20上方に到達した気流がステージ120の回転による旋回流により引き込まれて、勢いをもって外周方向へ放たれ、整流板140の第1部位141、第3部位143、第2部位142により、ステージ120の下方に排出される。
【0024】
また、第2部位142は気体供給装置110が供給する気流が半導体ウエハ20に対して直接当たらないように遮る。これにより、気流をステージ120下方に導いたとき、気体供給装置110から供給される新たな気流によってステージ120の下方で気流が巻き上げられる可能性を抑制することができる。したがって、ステージ120の機構等から発生する塵埃を含んでいる可能性のある気流をステージ120下方へ確実に導くことができる。すなわち、巻き上げ気流によって半導体ウエハ20が汚染される可能性を抑制することができる。
【0025】
<実施の形態2>
図6は、本発明の実施形態2における整流板140の構成例を示す図である。整流板140以外は実施形態1と同じであるので、以下では整流板140に関する差異点について主に説明する。本実施形態2において、第1部位141と第2部位142が形成する角度は、鈍角でありかつ実施形態1よりも大きい。本実施形態2においても、実施形態1と同様に気流をステージ120の下方へ導く作用が生じるが、以下の点において実施形態1とは異なる。
【0026】
半導体ウエハ20の周辺を清浄に維持するためには、清浄気流を半導体ウエハ20の上方からステージ120の下方へ向かって確実に導くことが望ましい。図6に示すように、本実施形態2においては、第1部位141とステージ120の上面との間の距離が、ステージ120の上面の中心から外周に向かって次第に小さくなるように構成されている(すなわち第1部位141がステージ120の上面に対して傾斜している)。これにより、気流をステージ120下方に引き込む負圧力は、ステージ120の上面の中心から外周に向かって次第に強くなる。すなわち実施形態1と比較して、気流をステージ120下方へ導く作用が強くなるので、実施形態1よりも確実に、清浄気流を半導体ウエハ20の上方からステージ120の下方へ向かって導くことができる。
【0027】
ただし、気流が第1部位141の下方に入る開口部分があまり大きすぎると、図5Cと同様の巻き上がり気流が生じやすくなるので、第1部位141を傾斜させたことにともなって整流板140全体の位置も調整することが望ましい。
【0028】
<実施の形態3>
図7は、本発明の実施形態3における整流板140の構成例を示す図である。整流板140以外は実施形態1と同じであるので、以下では整流板140に関する差異点について主に説明する。本実施形態3において、整流板140はアーチ状に湾曲している。アーチのうち水平面に投影したとき概ねステージ120の上面と重なる部分が第1部位141に相当し、残部が第2部位142に相当する。
【0029】
本実施形態3においても実施形態1と同様に、気体供給装置110が供給する清浄気流を半導体ウエハ20の上方からステージ120の下方へ導く作用が生じる。また実施形態2と同様に、第1部位141とステージ120の上面との間の距離が、ステージ120の上面の中心から外周に向かって次第に小さくなる。これにより実施形態2と同様に、気流をステージ120下方へ導く作用がより強くなる。
【0030】
実施形態2と3を比較すると、実施形態2においては、ステージ120端部近傍における圧力が第1部位141の傾斜にしたがって1次関数的に変化するので、圧力勾配が緩やかである。したがって急激な圧力変化による振動が生じる可能性が実施形態3よりも低いといえる。他方で実施形態2においては、第1部位141と第2部位142との間に角部が存在するので、角部における乱流が生じる可能性がある。
【0031】
<実施の形態4>
図8は、本発明の実施形態4における検査室100の構成を示す。図8上段は検査室100の上面模式図である。図8下段は整流板140の形状を示す斜視図である。図8において、実施形態1の図3などで説明したステージ120の左側の整流板140に添え字aを付与し、ステージ120の右側の整流板140に添え字bを付与することにより区別している。ステージ120は、受け取り位置TP・検査位置MPのそれぞれにおいて、破線で示している。
【0032】
本実施形態4において、各整流板140は検査位置MPで円形の開口を設けるように構成されている。開口の大きさはステージ120(図中の検査位置MPにおける破線)よりも小さく、ステージ120と重なる領域があるように形成している。これにより、検査位置MPにおいて、ステージ120に載置された半導体ウエハ20を清浄に維持することができる。その他構成は実施形態1~3と同様である。
【0033】
<実施の形態5>
図9は、本発明の実施形態5における検査室100の構成を示す。図9上段は検査室100の上面模式図である。図9下段は整流板140の形状を示す斜視図である。図9において、実施形態1の図3などで説明したステージ120の左側の整流板140に添え字aを付与し、ステージ120の右側の整流板140に添え字bを付与することにより区別している。
【0034】
本実施形態5において、各整流板140の開口部は円形形状が受け取り位置TPから検査位置MPまで延伸するような長円形状に構成されている。開口の大きさは、受け取り位置TP・検査位置MPの両端位置でステージ120(図中の検査位置MP・受け取り位置TPにおける破線)よりも小さく、すなわちステージ120と重なる領域があるように形成している。すなわち、ステージ120に載置された半導体ウエハ20が受け取り位置TPと検査位置MPとの間で回転しながら搬送される間においても、半導体ウエハ20周辺の気流を実施形態1~3と同様にステージ120下方へ導くことができる。これにより、受け取り位置TPと検査位置MP双方において、半導体ウエハ20を清浄に維持することができる。その他構成は実施形態1~3と同様である。
【0035】
図10は、比較例として整流板140の上部開口形状が矩形である構成例を示す。図9に示す例において、整流板140の上部は長円形状の開口部を有し、角部がなく円形となっている。これに対して図9における開口部は矩形であり、角部は直角である。このように角部が直角になっていると、角部においては半導体ウエハ20と重なる領域が無いため、気流をステージ120下方へ導く作用が弱まる可能性がある。一方、ウエハ周囲全てが重なるように矩形の開口部を小さくすると、半導体ウエハ20との重なる領域は周方向で一様にならず、例えば重なる領域が大きい箇所では図5Dと同様の作用、それ以外は実施の形態1と同様の作用となるなど、この形状では気流をステージ120下方へ導く作用のバラツキが生じることで、不安定な気流状態となる。したがって整流板140の上部開口は、図8図9のように円形、あるいは長円の形状を有することが望ましい。
【0036】
図11は、本構成の効果を示すものとして、整流板140の上部が図8の円形状の開口部を有している場合の検査位置MPにおける気流の様子を示す。ここでは図8の整流板の概略構造をともに示している。図4の説明で述べたように、ステージ120では、機構部等からの塵埃が外周から放たれる気流にのって排出される可能性がある。そこで図11ではステージ120の外周部からの塵埃放出を想定して、外周を始点にもつ流線を示している。
【0037】
ステージ120外周からの流線は、回転による旋回流によって外周方向へ放たれた後に、ステージ120の回転で発生する負圧によるステージ120上方からの気流引き込みの作用により、ステージ120の下方に向かう。また、整流板140に向かう流れも、整流板140の第1部位141、第3部位143、第2部位142により、ステージ120の下方に導かれて排出される。これらにより、ステージ120の機構等から外周部に向けて塵埃が放出されたとしても、ステージ120外周からの気流をステージ120下方へ確実に導くことができる。すなわち、巻き上げ気流によって半導体ウエハ20が汚染される可能性を抑えることができる。
【0038】
先に、図3の整流板140の配置説明において、整流板140の第1部位141は、上方から投影したとき、ステージ120の上面と空隙をもちつつステージ120の上面の一部と重なる位置に配置されていることを記載した。また、図8において、整流板140は検査位置MPで円形の開口を設けるように構成されており、開口の大きさはステージ120よりも小さく、ステージ120と重なる領域があるように形成することを記載した。これらの、整流板140の開口部の大きさ(円形部の直径)、ステージ120の上面と第1部位141との重なり、ステージ120の上面と第1部位141との空隙について、気流解析等に基づき具体的な数値を検討した。この結果、ステージ120の回転数が数千rpmの場合に、ステージ120の直径に対して、以下の条件であるときに、本発明の効果が好適にあらわれることを見出した。
【0039】
・整流板140開口部の直径:ステージ120の直径の98%~80%
・ステージ120の上面と第1部位141との重なり:ステージ120の直径の1%~10%
・ステージ120の上面と第1部位141との空隙:ステージ120の直径の1%~10%
【0040】
より望ましくは、
・整流板140開口部の直径:ステージ120の直径の98%~90%
・ステージ120の上面と第1部位141との重なり:ステージ120の直径の1%~5%
・ステージ120の上面と第1部位141との空隙:ステージ120の直径の2%~5%
【0041】
なお、図9においては、整流板140の開口部は円形形状が受け取り位置TPから検査位置MPまで延伸するような長円形状に構成されている。この長円形状においても、長円部の開口の大きさや、受け取り位置TP・検査位置MPの両端位置でのステージ120との重なりが上述の範囲にあるときに、本発明の効果が好適にあらわれる。
【0042】
<本発明の変形例について>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0043】
例えば整流板140aとして実施形態2で説明した図6の構成を採用し、整流板140bとして実施形態3で説明した図7の構成を採用することができる。
【0044】
以上の実施形態においては、検査装置10が検査する被検物として半導体ウエハ20を例示したが、被検物はこれに限る者ではなく、半導体ウエハ20以外の被検物を検査する検査装置10においても本発明を適用することができる。
【0045】
以上の実施形態において、気体供給装置110とステージ120との間に整流板140aを配置するとともに、ステージ120から見て整流板140aの反対側に整流板140bを配置する例を説明したが、少なくとも整流板140aを配置することにより、本発明の効果を相応に発揮することができる。
【符号の説明】
【0046】
10:検査装置
20:半導体ウエハ
100:検査室
110:気体供給装置
120:ステージ
130:光学検査ユニット
140:整流板
150:排気口
200:カートリッジ
300:プリアライナ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11