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  • 特開-鉱石の判別方法及び、鉱石の選別方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043894
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】鉱石の判別方法及び、鉱石の選別方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20220309BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G01N21/27 B
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149395
(22)【出願日】2020-09-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2019年度 資源・素材関係学協会 合同秋季大会 資源・素材講演集,Vol.6(2019),No.2(秋・京都) 「選鉱プロセスにおけるハイパースペクトルカメラと深層学習を用いた鉱物同定の検討」 発行所:一般社団法人 資源・素材学会 発行日:令和1年 9月11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構「銅原料中の不純物低減技術開発事業」委託研究、産業技術力強化法(平成12年法律第44号)第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川村 洋平
(72)【発明者】
【氏名】柴山 敦
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 一寿
(72)【発明者】
【氏名】石黒 康也
【テーマコード(参考)】
2G059
4K001
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB08
2G059CC01
2G059EE12
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059KK04
4K001AA09
4K001BA03
4K001CA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】砒素を含有する鉱石を比較的高精度で簡便に判別することができる鉱石の判別方法及び、鉱石の選別方法を提供する。
【解決手段】鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影して得られるスペクトルデータから、少なくとも砒素含有量に応じて鉱石を判別する。前記鉱石中の砒素含有量の多少を推定することを含むものである。スペクトルデータは少なくとも400nm~1000nmの波長領域における情報を含む。スペクトルデータをインプットとして畳み込みニューラルネットワークによる深層学習がなされた解析システムにより推定が行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも砒素含有量に応じて鉱石を判別する方法であって、
鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影して得られるスペクトルデータから、前記鉱石中の砒素含有量の多少を推定することを含む、鉱石の判別方法。
【請求項2】
前記鉱石中の砒素含有量の多少を推定するに当り、前記スペクトルデータをインプットとし、機械学習がなされた解析システムで解析を行うことを含む、請求項1に記載の鉱石の判別方法。
【請求項3】
前記解析システムとして、畳み込みニューラルネットワークによる深層学習がなされた解析システムを用いる、請求項2に記載の鉱石の判別方法。
【請求項4】
前記スペクトルデータが、少なくとも400nm~1000nmの波長領域における光の強度に関する情報を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉱石の判別方法。
【請求項5】
さらに銅含有量を考慮して鉱石を判別する、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉱石の判別方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の鉱石の判別方法で得られる判別結果に基づいて、鉱石を選別する、鉱石の選別方法。
【請求項7】
前記鉱石の搬送時に、前記鉱石を前記ハイパースペクトルカメラで撮影し、当該撮影により得られる前記スペクトルデータから、前記鉱石中の砒素含有量の多少を推定すること、ならびに、
前記判別結果より除外すべきと判別された鉱石を、搬送対象から外して除外することを含む、請求項6に記載の鉱石の選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、鉱石の判別方法及び、鉱石の選別方法に関する技術を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
鉱山で採掘された鉱石は一般に、磨鉱で所定の大きさに調整された後、選鉱により、所定の金属の品位が高い有用鉱物(精鉱)と、当該金属の品位が低い無用鉱物(尾鉱)とに選別される。その後、精鉱は、製錬にて該精鉱から所定の金属を取り出すための処理が施される。
【0003】
選鉱等の効率化や経済性の観点からは、鉱石から予め、不純物を多く含む鉱物を判別した上で選別して分離させておくことが望まれる。
【0004】
不純物の含有量に応じて鉱石を判別する手法としては、非特許文献1及び2等に記載されているように、X線透過法(XRT)、蛍光X線分析法(XRF)又は誘導結合プラズマ分析法(ICP)等による大型測定機器を用いた手法を挙げることができる。また、鉱石の色やテクスチャ、境界を検出し、そこからサポートベクターマシーン(Support Vector Machine、SVM)を用いて選別する手法もある(たとえば非特許文献3参照)。なお、非特許文献4は、鉱石中の不純物ではなく銅について着目されたものであるが、銅品位をハイパースペクトルサンプリングにより分析することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Joseph Lessard et al.,“Development of ore sorting and its impact on mineral processing economics”, Minerals Engineering, 15 October 2014, Volume 65, p.88-97
【非特許文献2】Christopher Robben et al., “X-ray-transmission based ore sorting at the San Rafael tin mine”, Minerals Engineering, 1 January 2020, Volume 145, 105870
【非特許文献3】Onuwa Okwuashia et al., “Deep support vector machine for hyperspectral image classification”, Pattern Recognition, July 2020, Volume 103, 107298
【非特許文献4】Biswajit Samanta et al., “Assessment of Hyperspectral Sampling Based Analysis Technique for Copper Grade Estimation at a Concentrator Plant” , Journal of Powder Metallurgy & Mining, November 2017, Volume 6, Issue 3, DOI: 10.4172/2168-9806.1000184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉱石中の鉱物に含まれ得る代表的な不純物のなかには、砒素がある。特に砒素は、鉱石が選鉱等のプラントに持ち込まれる前にできる限り除去されることが望ましい。この場合、搬送時等に鉱石中の砒素含有量に応じて鉱石を簡易に判別する手法が必要になるが、現状ではそのような判別手法は確立されていない。
【0007】
上述した鉱石の判別手法のうち、XRT等による大型測定機器を用いる手法は、解析速度や利便性ないし経済性等の点で簡便に行い得るとは言い難い。また、SVMを用いる手法を、鉱石の砒素含有量での判別に適用した事例は見つかっていない。
なお、鉱石のRGB画像を取得し、このRGB画像に基づいて鉱石を判別することも考えられるが、この場合は高い精度の結果は望めない。
【0008】
この明細書では、砒素を含有する鉱石を比較的高精度で簡便に判別することができる鉱石の判別方法及び、鉱石の選別方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この明細書で開示する鉱石の判別方法は、少なくとも砒素含有量に応じて鉱石を判別する方法であって、鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影して得られるスペクトルデータから、前記鉱石中の砒素含有量の多少を推定することを含むものである。
【0010】
また、この明細書で開示する鉱石の選別方法は、上記の鉱石の判別方法で得られる判別結果に基づいて、鉱石を選別するというものである。
【発明の効果】
【0011】
上述した鉱石の判別方法によれば、砒素を含有する鉱石を比較的高精度で簡便に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の試験例1で得られた各鉱石のスペクトルデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、上述した鉱石の判別方法及び、鉱石の選別方法の実施の形態について詳細に説明する。
一の実施形態に係る鉱石の判別方法は、鉱石中の、少なくとも砒素含有量に応じて、好ましくはさらに銅含有量も考慮して、該鉱石を判別するというものである。具体的には、この方法には、鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影して得られるスペクトルデータから、鉱石中の砒素含有量の多少を推定することが含まれる。
【0014】
(鉱石)
鉱石は、たとえば、所定の鉱山から採掘された採掘鉱石や、その採掘鉱石を破砕したもの、さらにその後に所定の大きさになるように磨鉱を行って得られたもの等である。一の実施形態では、磨鉱前の鉱石を対象とすることができる。
【0015】
多くの場合は、銅鉱物及び砒素鉱物を含む鉱石を対象とする。その具体例としては、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、黄銅鉱、黄鉄鉱、硫砒銅鉱、硫砒鉄鉱及び砒四面銅鉱から選択される少なくとも一種を含む硫化鉱物や、金及び銀を含有する硫化鉱物等が挙げられるが、これに限らない。また、対象とする鉱石が砒素や銅を含有するか否かは問わない。この実施形態の方法を、たとえば砒素を含有しない鉱石に対して適用し、当該鉱石が砒素を含有しないものであると判別して、それに応じて選別することもできる。
【0016】
鉱石が砒素を含有する場合、鉱石中の砒素含有量は、たとえば0.01質量%~0.50質量%、典型的には0.01質量%~1.00質量%である。砒素含有量が比較的多い鉱石は、選鉱等を行うプラントに持ち込まれないように、たとえば磨鉱前等の所定のタイミングで予め取り除いておくことが望ましい。また、銅鉱石等の銅を含有する鉱石の銅含有量は、0.01質量%~1.00質量%、さらに0.01質量%~10.0質量%である場合がある。
【0017】
鉱石は、たとえば、平均粒径D50が50mm~1000mmであるものとすることができる。後述するハイパースペクトルカメラによる撮影前に、必要に応じて、この程度の粒径になるように鉱石を破砕ないし粉砕しておいてもよい。なお、平均粒径D50は、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置で測定して得られる粒径分布グラフで、体積基準の頻度の累積が50%になる粒径を意味する。
【0018】
(スペクトルデータ)
スペクトルデータは、鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影することにより取得することができる。一の実施形態の判別方法には、鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影することが含まれ得るが、撮影自体の行為は必須ではなく、既に撮影されて得られているスペクトルデータを、無線もしくは有線の通信又は記憶媒体等を介して別途取得してもよい。
【0019】
ハイパースペクトルカメラとは、たとえば内部に光を分光させる所定の分光素子を有し、これにより、撮影対象物についての多数の波長帯ないしバンドのイメージデータ、いわゆるデータキューブ(二次元の平面データが、分光された波長ごとに層状に重なったキューブ状のデータ)を生成することができる撮影装置と認識されている。データキューブの二次元の各平面データを所定のサイズに等分して平均化すること等により、当該データキューブから、たとえば横軸を波長とし縦軸を光の強度としたグラフ上にて多数のスペクトル曲線等で表され得るスペクトルデータを取得することができる。ここでは、バンド数が100以上、典型的には100~200であるイメージデータを取得できる撮影装置を、ハイパースペクトルカメラと称する。
【0020】
スペクトルデータは、少なくとも400nm~1000nmの波長領域における光の強度に関する情報を含むことが好適である。砒素を含有する鉱石は、およそ700nmや800nm程度の波長で特徴的な光のピーク強度が現れることが新たな知見として得られたからである。それ故に、鉱石中の砒素含有量が多いか又は少ないかを推定するには、上記の範囲内の波長領域での光の強度を確認することが特に有効である。なお典型的には、スペクトルデータには、400nm~1000nmの範囲又はそれよりも広い範囲の波長領域における光の強度に関する情報が含まれ得る。
【0021】
スペクトルデータを取得するべく鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影する場合は、上記の波長領域の全体が網羅されるように、その撮影時に必要に応じて、鉱石をハロゲンライト等の光源で照らすことができる。
【0022】
(判別方法)
この実施形態では、上述したようなスペクトルデータを用いて、鉱石中の砒素含有量の多少を推定する。これにより、鉱石を砒素含有量に応じて判別することができる。
【0023】
ここでは、スペクトルデータを、たとえば、横軸が波長で縦軸が光の強度であるグラフ上で多数のスペクトル曲線として表し、これを目視等にて確認することにより砒素含有量を推定することも可能である。特に、先に述べたように700nmや800nm付近の波長における光のピーク強度の有無ないし高低を確認すれば、砒素含有量の多少を推定することができる。但し、より高精度の判別結果を得るには、スペクトルデータについて、次に述べるような解析を行うことが好ましい。
【0024】
解析では、スペクトルデータをインプットとして解析システムに入力する。解析システムとしては、予め機械学習がなされた解析システムを用いることが好適である。機械学習がなされた解析システムを用いることにより、ハイパースペクトルカメラにより取得できる大量のデータを含むスペクトルデータから、光の強度情報の僅かな差をもとに、高精度の判別結果を得ることができる。このような解析システムとしては、たとえば、k平均法、決定木、サポートベクターマシーン(Support Vector Machine、SVM)、単純ベイズ、アンサンブル法、線形判別分析(LDA)、二次判別分析(QDA)、k近傍法(k-NN)等が挙げられる。教師あり学習又は教師なし学習のいずれであるかは問わない。
【0025】
判別精度をより高めるとの観点からは、機械学習のなかでも、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network、CNN)による深層学習(ディープラーニング)がなされた解析システムを用いることがより一層好ましい。多くの場合、畳み込みニューラルネットワークは複数の畳み込み層及び全結合層を含む。そしてここでは、入力されたスペクトルデータから複数の畳み込み層で特徴を抽出し、複数の全結合層で分類等の所定の処理を行うことにより、鉱石中の砒素含有量の多少を、極めて高い精度で推定することができる。なおこの場合、畳み込みニューラルネットワークの所定の畳み込み層及び/又は全結合層を、より適切なものに置き換えてもよい。この種の解析システムとして具体的には、GoogLeNet(Szegedy et al., 2014)、LeNet(Yann LeCun, 1998)、AlexNet(Alex Krizhevsky, 2018)等を使用可能であるが、これらに限らない。
【0026】
深層学習を含む機械学習に用いる教師データは、適宜選択することができる。たとえば、砒素含有量が既知である多数の鉱石をそれぞれハイパースペクトルカメラで撮影して得られる多数のスペクトルデータを、教師データとして用いることができる。
【0027】
判別精度を評価するには、所定の砒素含有量の鉱石についてのスペクトルデータを取得し、該スペクトルデータを用いて解析システムで解析を実施した後、その解析結果(判別結果)と、当該鉱石の実際の砒素含有量とを比較することにより行うことができる。鉱石の実際の砒素含有量は、誘導結合プラズマ分析法(ICP)等により測定可能である。
【0028】
鉱石を判別するには、上述したように砒素含有量だけでなく、銅含有量も考慮することが好ましい。たとえば銅鉱石を対象とする場合、砒素含有量が少ないだけでなく銅含有量が多いものを選別により取り出すことが重要になる場合があるからである。
【0029】
(選別方法)
上述したようにして砒素含有量に応じて鉱石の判別を行った後は、その判別結果に基づいて鉱石を選別することができる。
【0030】
ここでは、種々の選別方法が可能であるが、一例として実際の操業では、たとえば、鉱山で採掘された鉱石をベルトコンベア等の搬送手段にて、磨鉱もしくは選鉱等を行うプラントに搬送する途中で選別することができる。
【0031】
具体的には、ベルトコンベア等を用いて鉱石を搬送する際に、その鉱石をハイパースペクトルカメラで撮影する。このとき、その撮影によって得られたスペクトルデータから鉱石中の砒素含有量の多少を、リアルタイムで推定する。そして、そのようにして推定された砒素含有量の多少に基づいて、各鉱石について、たとえば砒素含有量が比較的多いことにより除去すべきか、又は少ないことにより除去しなくてもよいか等の判別を行う。この判別結果で除外すべきと判断された鉱石は、他の搬送経路を設けておいてそこに送ること等により、磨鉱その他のプラントへの搬送対象から外して除外することができる。これにより、砒素含有量がある程度多い鉱石を、プラントに持ち込まずに予め除去することができる。
【実施例0032】
次に、上述した鉱石の判別方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0033】
(試験例1)
所定の鉱石を暗室にてハロゲンライトで照らしながら、ハイパースペクトルカメラ(Spectral Imaging社製のSpecim IQ)で撮影した。このハイパースペクトルカメラは、400nm~1000nmまでの光の波長を204個の波長帯に分光することができるものである。
【0034】
上記の撮影で得られたデータキューブは、縦512ピクセル、横512ピクセル、奥行に当たる波長データが204ピクセルのデータ収納形式である。ここでは、縦横ピクセルを16等分し、縦横それぞれ32ピクセル、奥行204ピクセルのデータキューブを、一回の撮影につき256個用意した。そして、それらの16等分されたデータのそれぞれに対して、縦横ピクセルがそれぞれ1ピクセルになるように平均し、縦横1ピクセル、奥行204ピクセルのデータに加工した。
【0035】
鉱石として、表1に示す銅、砒素及び硫砒銅鉱の含有量である鉱石A1~A7、鉱石B1~B3及び、鉱石C1~C4を準備した。なお、鉱石A1~A7は砒素含有量が多いもの、鉱石B1~B3は砒素含有量が中程度のもの、鉱石C1~C4は砒素含有量が少ないものである。なお、鉱石は粉末状に加工し、銅及び砒素の含有量をICP発光分光分析法により測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
これらの鉱石A1~A7、鉱石B1~B3及び、鉱石C1~C4のスペクトルデータを、図1に横軸を波長とし縦軸を強度としたグラフで示す。図1より、各スペクトルデータはいずれも、全体として起伏が少なく若干右肩上がりのほぼ「U」字状を描く形状となっているが、700nmや800nm付近に砒素含有量に応じた特有のピークが現れていることが解かる。したがって、ハイパースペクトルカメラによるこのようなスペクトルデータを観察することにより、鉱石中の砒素含有量の多少を推定できる可能性があると考えられる。
【0038】
(試験例2)
畳み込みニューラルネットワークによる深層学習が可能な解析システム(GoogLeNet)にて、教師データとして、上述したようなハイパースペクトルカメラによるスペクトルデータ(ハイパースペクトルデータ)を用いて学習させた場合と、RGB画像を用いて学習させた場合とで判別精度の違いを比較した。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2から、RGB画像を用いた場合はテストの精度が51.7%であったのに対し、ハイパースペクトルデータを用いた場合は90.1%と高い判別精度が得られていることが解かる。このことから、判別対象が、多くの情報を持つ鉱石である場合は、ハイパースペクトルデータを用いるほうが良好な結果になることが確認された。
【0041】
(試験例3)
上述したようなハイパースペクトルカメラによるスペクトルデータについて、表3に示す種々の機械学習による解析システムで解析を行った。その結果の判別精度も表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に示すように、機械学習の種類によっては80%以上の高い精度が得られているが、特に試験例2で先述した深層学習のほうが、精度が90%以上とさらに高いことが解かる。
【0044】
以上より、ここで述べた鉱石の判別方法によれば、ハイパースペクトルカメラで撮影して得られるスペクトルデータを用いることにより、砒素を含有する鉱石を有効に判別できる可能性が示唆された。
図1