(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044098
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】アミン誘導体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 233/13 20060101AFI20220310BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20220310BHJP
C07C 233/47 20060101ALI20220310BHJP
C07C 233/18 20060101ALI20220310BHJP
C07D 209/44 20060101ALI20220310BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220310BHJP
【FI】
C07C233/13
C07C231/12
C07C233/47
C07C233/18
C07D209/44
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149548
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優輔
【テーマコード(参考)】
4C204
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C204AB01
4C204CB04
4C204DB03
4C204EB02
4C204FB20
4C204GB24
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AB84
4H006AC30
4H006BA25
4H006BA48
4H006BB12
4H006BD70
4H006BE23
4H039CA41
4H039CA65
4H039CD10
(57)【要約】
【課題】 アミン誘導体、安息香酸誘導体、アルコール誘導体、及び、イソインドリン誘導体の効率的な製造方法、並びに、新規な化合物であるアミン誘導体及び安息香酸誘導体を提供する。
【解決手段】
一実施形態によると、下記式(II)で表されるアミン誘導体が提供される。
【化1】
式(II)において、X
1は、Cl又はBrである。Y
1は、X
1がClである場合にはBr又はIであり、X
1がBrである場合にはIである。R
1は、アミノ基の保護基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で表されるアミン誘導体:
【化1】
前記式(II)において、
X
1は、Cl又はBrであり、
Y
1は、前記X
1がClである場合にはBr又はIであり、前記X
1がBrである場合にはIであり、
R
1は、アミノ基の保護基である。
【請求項2】
請求項1に記載のアミン誘導体の製造方法であって、
ブレンステッド酸存在下、下記式(I)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体と、下記式(1)に表される1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとを接触させて、前記アミン誘導体を得ることを含む、アミン誘導体の製造方法:
【化2】
前記式(I)において、X
1及びR
1は、前記式(II)のものと同義であり、
【化3】
前記式(1)において、Y
1は、前記式(II)のものと同義である。
【請求項3】
パラジウム触媒及びホスフィン類存在下、請求項1に記載のアミン誘導体と、下記式(2)で表されるギ酸フェニル化合物とを接触させて、下記式(III)で表される安息香酸誘導体を得ることを含む、安息香酸誘導体の製造方法:
【化4】
前記式(2)において、R
2は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、又はニトロ基であり、nは0以上5以下であり、
【化5】
前記式(III)において、X
1及びR
1は、前記式(II)のものと同義であり、R
2及びnは、前記式(2)のものと同義である。
【請求項4】
下記式(III)で表される安息香酸誘導体:
【化6】
前記式(III)において、
X
1は、Cl又はBrであり、
R
1は、アミノ基の保護基であり、
R
2は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、又はニトロ基であり、
nは0以上5以下である。
【請求項5】
請求項4に記載の安息香酸誘導体を還元して、下記式(IV)で表されるアルコール誘導体を得ることを含む、アルコール誘導体の製造方法:
【化7】
前記式(IV)において、X
1及びR
1は、それぞれ、前記式(III)のものと同義である。
【請求項6】
請求項5に記載の方法により得られた前記式(IV)に表されるアルコール誘導体と、脱離基含有化合物とを接触させて、下記式(V)で表される脱離基含有アミン誘導体を得ることと、
前記式(V)で表される脱離基含有アミン誘導体と塩基とを接触させて、下記式(VI)で表されるイソインドリン誘導体を得ることとを含む、イソインドリン誘導体の製造方法:
【化8】
前記式(V)において、X
1及びR
1は、それぞれ、前記式(IV)のものと同義であり、Zは、脱離基であり、
【化9】
前記式(VI)において、X
1は、前記式(IV)のものと同義であり、R
1は、前記式(IV)におけるものと同義である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン誘導体及びその製造方法、安息香酸誘導体及びその製造方法、アルコール誘導体の製造方法、並びに、イソインドリン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(VII)で表される5-ブロモ-1-メチルイソインドリンは、種々の医薬品の製造中間体として用いられる(特許文献1)。
【0003】
【0004】
特許文献1には、下記式(IV’)で表される化合物又はその塩を脱水することにより、下記式(VI’)で表される化合物を得られることが記載されている。
【0005】
【0006】
【0007】
ここで、上記式(IV’)及び(VI’)において、R3は、例えば、水素原子であり、R4は、例えば、アルキル基であり、R5は、例えば、水素原子であり、X1は、例えば、ブロモ基である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アミン誘導体、安息香酸誘導体、アルコール誘導体、及び、イソインドリン誘導体の効率的な製造方法、並びに、新規な化合物であるアミン誘導体及び安息香酸誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によると、下記式(II)で表されるアミン誘導体が提供される。
【0011】
【0012】
式(II)において、X1は、Cl又はBrである。Y1は、X1がClである場合にはBr又はIであり、X1がBrである場合にはIである。R1は、アミノ基の保護基である。
【0013】
他の実施形態によると、実施形態に係るアミン誘導体の製造方法が提供される。この製造方法は、ブレンステッド酸存在下、下記式(I)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体と、下記式(1)に表される1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとを接触させて、アミン誘導体を得ることを含む。
【0014】
【0015】
式(I)において、X1及びR1は、式(II)のものと同義である。
【0016】
【0017】
式(1)において、Y1は、式(II)のものと同義である。
【0018】
他の実施形態によると、下記式(III)で表される安息香酸誘導体が提供される。
【0019】
【0020】
式(III)において、X1及びR1は、式(II)のものと同義である。R2は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、又はニトロ基である。nは0以上5以下である。
【0021】
他の実施形態によると、実施形態に係る安息香酸誘導体の製造方法が提供される。この製造方法は、パラジウム触媒及びホスフィン類存在下、実施形態に係る式(II)に記載のアミン誘導体と、下記式(2)で表されるギ酸フェニル化合物とを接触させて、上記式(III)で表される安息香酸誘導体を得ることを含む。
【0022】
【0023】
式(2)において、R2及びnは、式(III)のものと同義である。
【0024】
他の実施形態によると、アルコール誘導体の製造方法が提供される。この製造方法は、実施形態に係る式(III)に表される安息香酸誘導体を還元して、下記式(IV)で表されるアルコール誘導体を得ることを含む。
【0025】
【0026】
式(IV)において、X1及びR1は、それぞれ、式(III)のものと同義である。
【0027】
他の実施形態によると、イソインドリン誘導体の製造方法が提供される。この製造方法は、実施形態に係る方法で得られた上記式(IV)に表されるアルコール誘導体と、脱離基含有化合物とを接触させて、下記式(V)で表される脱離基含有アミン誘導体を得ることと、式(V)で表される脱離基含有アミン誘導体と塩基とを接触させて、下記式(VI)で表されるイソインドリン誘導体を得ることとを含む。
【0028】
【0029】
式(V)において、X1及びR1は、それぞれ、式(IV)のものと同義であり、Zは、脱離基である。
【0030】
【0031】
式(VI)において、X1は、式(IV)のものと同義であり、R1は、式(IV)におけるものと同義である。
【発明の効果】
【0032】
実施形態によると、アミン誘導体、安息香酸誘導体、アルコール誘導体、及び、イソインドリン誘導体の効率的な製造方法、並びに、新規な化合物であるアミン誘導体及び安息香酸誘導体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上述したとおり、特許文献1には、上記式(IV’)で表される化合物又はその塩から、上記式(VI’)で表される化合物を合成する方法が記載されている。しかしながら、上記式(IV’)で表される化合物又はその塩を、効率的に製造する方法については十分に開示されていない。
【0034】
そこで、本発明者らは、上記式(IV’)で表される化合物であるアルコール誘導体の効率的な製造方法について鋭意研究した。本発明は、この研究結果に基づくものである。
【0035】
すなわち、先ず、ブレンステッド酸存在下、上記式(I)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体と、上記式(1)に表される1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとを接触させる。これにより、式(I)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体のベンゼン環における2番炭素に官能基Y1を選択的に導入できる。このようにして式(II)で表されるアミン誘導体が得られる。
【0036】
この式(II)で表されるアミン誘導体において、官能基Y1は、X1がClである場合にはBr又はIであり、X1がBrである場合にはIである。官能基X1及びY1は、何れも脱離基として機能し得るハロゲノ基である。ハロゲノ基の脱離のし易さは、クロロ基、ブロモ基、ヨード基の順に大きい。すなわち、官能基Y1として、官能基X1よりも脱離し易いハロゲノ基が導入される。これにより、式(II)で表されるアミン誘導体と上記式(2)で表されるギ酸フェニル化合物とを接触させると、式(II)で表されるアミン誘導体において官能基Y1が結合した2番炭素に、選択的に上記式(2)に表されるギ酸フェニル化合物を導入できる。このようにして、上記式(III)で表される安息香酸誘導体が得られる。
【0037】
この式(III)に表される安息香酸誘導体を還元することにより、2番炭素にメタノール基が導入された上記式(IV)に表されるアルコール誘導体を得られる。この式(IV)に表されるアルコール誘導体に脱離基を導入して式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体を得た後、これを環化することにより、式(VI)に表されるイソインドリノン誘導体が得られる。
【0038】
以上の方法によると、官能基X1よりも脱離し易いハロゲノ基である官能基Y1が2番炭素に選択的に導入された式(II)で表されるアミン誘導体を用いるため、式(III)で表される安息香酸誘導体を効率的に得ることができ、ひいては、式(IV)に表されるアルコール誘導体、式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体、及び式(VI)に表されるイソインドリノン誘導体を効率的に得ることができる。
【0039】
以下、実施形態の詳細について説明する。
(アミン誘導体及びその製造方法)
アミン誘導体は、下記式(II)で表される。このアミン誘導体は、例えば、医薬品の製造中間体として使用される。このアミン誘導体は、R体であることが好ましい。
【0040】
【0041】
式(II)において、X1は、Cl又はBrである。Y1は、X1がClである場合にはBr又はIであり、X1がBrである場合にはIである。X1がBrであり、Y1がIであることが好ましい。
【0042】
R1は、アミノ基の保護基である。アミノ基の保護基としては、カルバメート系、アシル系、アミド系、スルホンアミド系等、何れの保護基を用いてもよい。カルバメート系の保護基の例には、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基及びアリルオキシカルボニル基が挙げられる。アシル系の保護基の例には、アセチル基、ピバロイル基、及びベンゾイル基が挙げられる。アミド系の保護基の例には、トリフルオロアセチル基が挙げられる。スルホンアミド系の保護基の例には、p-トルエンスルホニル基、及び2-ニトロベンゼンスルホニル基が挙げられる。アミノ基の保護基は、アシル系又はアミド系の保護基であることが好ましい。アミノ基の保護基は、ピバロイル基又はトリフルオロアセチル基であることがより好ましい。
【0043】
このアミン誘導体は、例えば、ブレンステッド酸存在下、4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体と、1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとを接触させることにより得られる。すなわち、ブレンステッド酸存在下で、4番炭素にハロゲノ基X1が導入された1-メチルベンジルアミン誘導体と、ハロゲノ基Y1を有するヒダントイン化合物とを接触させることにより、4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体の2番炭素にハロゲノ基Y1が選択的に導入される。得られた化合物は、核磁気共鳴(NMR)分光分析により同定できる。
【0044】
ブレンステッド酸存在下での4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体と、1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとの接触において、接触温度は、例えば、-40℃以上100℃以下とし、好ましくは、-20℃以上40℃以下とし、より好ましくは、0℃以上40℃以下とする。接触時間は、例えば、30分以上48時間以下とし、好ましくは、1時間以上24時間以下とし、より好ましくは、1時間以上10時間以下とする。4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体と、1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとは、接触時間の間、上記の接触温度に保たれた状態で攪拌されることが好ましい。
【0045】
4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体は、下記式(I)で表される。式(I)において、X1及びR1は、式(II)のものと同義である。
【0046】
【0047】
X1は、Br又はClである。すなわち、4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体は、4-ブロモ-1-メチルベンジルアミン誘導体又は4-クロロ-1-メチルベンジルアミン誘導体である。
【0048】
4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体は、市販のものを用いてもよく、合成したものを用いてもよい。4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体は、例えば、下記式(I-i)で表される1-メチルベンジルアミンのアミノ基を保護して下記式(I-ii)で表されるベンジルアミン誘導体を得た後、このベンジルアミン誘導体とハロゲン化剤とを、ブレンステッド酸存在下で接触させることにより得られる。
【0049】
【0050】
【0051】
式(I-ii)において、R1は、式(II)のものと同義である。
【0052】
保護基R1は、公知の方法で1-メチルベンジルアミンに導入できる。例えば、保護基を含む化合物と、1-メチルベンジルアミンとを接触させることにより、上記式(I-ii)で表されるメチルベンジルアミン誘導体が得られる。保護基を含む化合物としては、例えば、トリフルオロ酢酸無水物、ベンジルオキシカルボニルクロリド、ピコリルクロリド、又はピバロイルクロリドを用いる。
【0053】
ブレンステッド酸存在下、上記式(I-ii)で表されるメチルベンジルアミン誘導体と、ハロゲン化剤とを接触させることにより、1-メチルベンジルアミン誘導体の4番炭素にハロゲノ基X1が導入された4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体が得られる。ブレンステッド酸としては、後述するものと同様のものを用い得る。ハロゲン化剤としては、例えば、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン又は1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントインを用いる。
【0054】
1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインは、下記式(1)で表される。式(1)において、Y1は、式(II)のものと同義である。
【0055】
【0056】
1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとしては、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン又は1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインを用いる。1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインを用いると、官能基Y1としてBrを導入できる。1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインを用いると、官能基Y1としてIを導入できる。
【0057】
1モルの4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体に対する1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインの量は、例えば、0.1モル以上100モル以下であり、好ましくは、0.3モル以上2モル以下であり、より好ましくは、0.3モル以上1.0モル以下である。
【0058】
この方法において、ブレンステッド酸は、触媒として機能し得る。ブレンステッド酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及び、カンファースルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。ブレンステッド酸としては、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0059】
1モルの4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体に対するブレンステッド酸の量は、例えば、0.1モル以上100モル以下であり、好ましくは、0.1モル以上10モル以下であり、より好ましくは、1モル以上5モル以下である。
【0060】
ブレンステッド酸存在下での4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体と1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインとの接触は、第1反応溶媒存在下で行われることが好ましい。
【0061】
第1反応溶媒を用いる場合、先ず、4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体を第1反応溶媒と混合して混合液を調製し、これにブレンステッド酸及び1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインを加えることが好ましい。より好ましくは、上記混合液にブレンステッド酸を加えて1分以上1時間以下にわたって攪拌した後、1,3-ジハロゲノ-5,5-ジメチルヒダントインを加えることが好ましい。なお、ブレンステッド酸としては、ブレンステッド酸を有機溶媒に溶解させた溶液を用いてもよい。有機溶媒としては、第1反応溶媒と同様のものを用い得る。
【0062】
第1反応溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルTHF、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。第1反応溶媒としては、塩化メチレンを用いることが好ましい。
【0063】
1gの4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体に対する第1反応溶媒の量は、例えば、1mL以上100mL以下であり、好ましくは、2mL以上10mL以下である。
【0064】
4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体のモノブロモ化又はモノヨード化反応終了後、得られた式(II)で表されるアミン誘導体は、下記の方法で取り出されることが好ましい。
【0065】
先ず、式(II)で表されるアミン誘導体を含む反応液を、-10℃以上10℃以下に冷却した後、これに、例えば、5質量%亜硫酸ナトリウムの水溶液を混合し攪拌して、反応液を有機層及び水層に分離させる。有機層を抽出した後、これを、5質量%重曹水、水等を用いて洗浄する。洗浄後の有機層に、硫酸マグネシウム等を加えて脱水した後、減圧濃縮することにより、残渣を得る。この残渣と、例えば、2-プロパノール等の有機溶媒とを混合し攪拌した後、固形物を濾別する。濾別した固形物を減圧乾燥して、式(II)で表されるアミン誘導体の結晶が得られる。
【0066】
(安息香酸誘導体及びその製造方法)
安息香酸誘導体は、下記式(III)で表される。この安息香酸誘導体は、例えば、医薬品の製造中間体として使用される。この安息香酸誘導体は、R体であることが好ましい。
【0067】
【0068】
式(III)において、X1及びR1は、式(II)のものと同義である。R2は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、又はニトロ基である。アルキル基の炭素数は、1以上6以下であることが好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1以上6以下であることが好ましい。R2は、好ましくはハロゲノ基であり、クロロ基であることがより好ましい。
【0069】
nは0以上5以下である。nは、1以上5以下であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0070】
この安息香酸誘導体は、例えば、パラジウム触媒及びホスフィン類存在下、上記式(II)に表されるアミン誘導体と、下記式(2)で表されるギ酸フェニル化合物とを接触させることにより得られる。すなわち、上記条件下での接触により、式(II)で表されるアミン誘導体のハロゲノ基Y1が、式(2)で表されるギ酸フェニル化合物に選択的に置換される。得られた化合物は、NMR分光分析により同定できる。
【0071】
この工程において、上述した方法で得られる式(II)に表されるアミン誘導体を用いる場合、式(II)に表されるアミン誘導体の保護基R1を、他の種類のものに変更してから用いてもよい。例えば、上述した方法で得られた式(II)に表されるアミン誘導体の保護基R1が、ピバロイル基以外のものである場合、その保護基R1をピバロイル基に変換してから、式(2)で表されるギ酸フェニル化合物との接触に供してもよい。保護基R1は、公知の方法で他の種類の保護基へと変換できる。例えば、ピバロイル基を除く保護基R1を有する式(II)に表されるアミン誘導体を脱保護化した後、塩化ピバロイル等のピバロイル基導入試薬と接触させることにより、保護基R1としてピバロイル基を有する式(II)に表されるアミン誘導体が得られる。
【0072】
パラジウム触媒及びホスフィン類存在下、上記式(II)に表されるアミン誘導体と、下記式(2)で表されるギ酸フェニル化合物との接触において、接触温度は、例えば、0℃以上120℃以下とし、好ましくは、10℃以上100℃以下とし、より好ましくは、10℃以上40℃以下とする。接触時間は、例えば、1時間以上24時間以下とし、好ましくは、2時間以上12時間以下とし、より好ましくは、2時間以上6時間以下とする。式(II)に表されるアミン誘導体とギ酸フェニル化合物とは、接触時間の間、上記の接触温度に保たれた状態で攪拌されることが好ましい。
【0073】
ギ酸フェニル化合物は、下記式(2)で表される。式(2)において、R2及びnは、式(III)のものと同義である。
【0074】
【0075】
ギ酸フェニル化合物の具体例には、例えば、ギ酸フェニル、及び、ギ酸2,4,6-トリクロロフェニルが挙げられる。
【0076】
1モルの式(II)に表されるアミン誘導体に対する式(2)で表されるギ酸フェニル化合物の量は、例えば、0.1モル以上10モル以下とし、好ましくは、1モル以上5モル以下とする。
【0077】
パラジウム触媒としては、0価又は2価のパラジウム触媒を用い得る。0価のパラジウム触媒の例には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、及びトリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)が挙げられる。2価のパラジウム触媒の例には、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が挙げられる。パラジウム触媒としては、複数の種類を用いてもよく、単一の種類を用いてもよい。
【0078】
パラジウム触媒としては、2価のパラジウム触媒を用いることが好ましく、塩化パラジウム及び酢酸パラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0079】
1モルの式(II)に表されるアミン誘導体に対するパラジウム触媒の量は、例えば、0.001モル以上1モル以下であり、好ましくは、0.01モル以上0.1モル以下である。
【0080】
ホスフィン類は、パラジウム触媒に配位するホスフィン配位子を供給する。ホスフィン類は、ホスフィン部位を2つ有するジホスフィンであることが好ましい。ホスフィン部位は、PQ1Q2Q3で表される。Q1、Q2、及びQ3は、それぞれ、有機基又は水素原子である。
【0081】
ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(2-フリル)ホスフィン、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(DPPM)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DPPB)、ビス[(2-ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(DPEphos)、キサントホス(Xantophos)、及びエチレンビス(ビスシクロヘキシルホスフィン)(dCype)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。ホスフィン類としては、キサントホスを用いることが好ましい。
【0082】
1モルの式(II)に表されるアミン誘導体に対するホスフィン類の量は、例えば、0.001モル以上1モル以下であり、好ましくは、0.01モル以上0.1モル以下である。
【0083】
1モルのパラジウム触媒に対するホスフィン類の量は、例えば、0.1モル以上10モル以下であり、好ましくは、1モル以上3モル以下である。
【0084】
パラジウム触媒及びホスフィン類存在下、上記式(II)に表されるアミン誘導体と、下記式(2)で表されるギ酸フェニル化合物との接触は、第1塩基存在下で行われることが好ましい。
【0085】
第1塩基は、有機塩基であることが好ましい。第1塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、及びN,N-ジエチルアニリンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。第1塩基としては、トリエチルアミンを用いることが好ましい。
【0086】
1モルの式(II)に表されるアミン誘導体に対する第1塩基の量は、例えば、0.1モル以上10モル以下であり、好ましくは、1モル以上4モル以下である。
【0087】
パラジウム触媒及びホスフィン類存在下、上記式(II)に表されるアミン誘導体と、下記式(2)で表されるギ酸フェニル化合物との接触は、第2反応溶媒存在下で行われることが好ましい。
【0088】
第2反応溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、2-メチルTHF、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。第2反応溶媒としては、アセトニトリル及びトルエンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0089】
1gの式(II)に表されるアミン誘導体に対する第2反応溶媒の量は、例えば、1mL以上100mL以下であり、好ましくは、3mL以上60mL以下であり、より好ましくは、20mL以上40mL以下である。
【0090】
式(II)に表されるアミン誘導体へのギ酸フェニル化合物の導入反応終了後、得られた安息香酸誘導体は、下記の方法で取り出されることが好ましい。
先ず、安息香酸誘導体を含む反応液を濃縮乾燥し、残渣を得る。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、安息香酸誘導体の生成物を得られる。
【0091】
(アルコール誘導体の製造)
アルコール誘導体は、下記式(IV)で表される。このアルコール誘導体は、例えば、医薬品の製造中間体として使用される。このアルコール誘導体は、R体であることが好ましい。
【0092】
【0093】
式(IV)において、R1及びX1は、式(III)のものと同義である。
【0094】
このアルコール誘導体は、上記式(III)に表される安息香酸誘導体を還元することにより得られる。すなわち、安息香酸誘導体を還元することにより、安息香酸誘導体のエステル基部位が開環され、水酸基で修飾される。得られた化合物は、NMR分光分析により同定できる。
【0095】
式(III)に表される安息香酸誘導体の還元は、例えば、安息香酸誘導体と還元剤とを接触させることにより行われる。
【0096】
式(III)に表される安息香酸誘導体と還元剤との接触において、接触温度は、例えば、-70℃以上80℃以下とし、好ましくは、-20℃以上40℃以下とし、より好ましくは、-10℃以上30℃以下とする。接触時間は、例えば、30分以上48時間以下とし、好ましくは、1時間以上30時間以下とし、より好ましくは、10時間以上24時間以下とする。式(III)に表される安息香酸誘導体と還元剤とは、接触時間の間、上記の接触温度に保たれた状態で攪拌されることが好ましい。
【0097】
1モルの式(III)に表される安息香酸誘導体に対する還元剤の量は、例えば、0.1モル以上10モル以下とし、好ましくは、0.1モル以上5モル以下とし、より好ましくは、1モル以上3モル以下とする。
【0098】
還元剤としては、例えば、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素アルカリ土類金属塩、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL-H)、リチウムアルミニウムヒドリド(LAH)、及び水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Vitride)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。
【0099】
水素化ホウ素アルカリ金属塩は、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、及び水素化ホウ素カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。水素化ホウ素アルカリ土類金属塩は、水素化ホウ素カルシウムを含む。
【0100】
還元剤としては、水素化ホウ素カルシウムを用いることが好ましい。水素化ホウ素カルシウムは、安全性が高く、かつ、コストが低い物質である。水素化ホウ素カルシウムは、カルシウムのハロゲン化物と、水素化ホウ素の1価の金属塩とを反応溶媒中で反応させることにより調製できる。水素化ホウ素の1価の金属塩としては、上述した水素化ホウ素アルカリ金属塩を用い得る。反応溶媒としては、例えば、エタノール等の炭素数1以上4以下のアルコール類を用い得る。1モルのカルシウムのハロゲン化物に対する、水素化ホウ素の1価の金属塩の量は、例えば、2モルとする。得られた水素化ホウ素カルシウムは、上記方法で製造した後、単離することなく、そのまま使用することが好ましい。水素化ホウ素カルシウムは、不安定な物質であるためである。なお、水素化ホウ素カルシウムは、精製して使用してもよい。
【0101】
式(III)に表される安息香酸誘導体と還元剤との接触は、第3反応溶媒存在下で行われることが好ましい。第3反応溶媒が存在すると、式(III)に表される安息香酸誘導体の還元反応が促進される。
【0102】
第3反応溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、2-メチルTHF、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、及びヘプタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。第3反応溶媒としては、エタノールを用いることが好ましい。
【0103】
1gの式(III)に表される安息香酸誘導体に対する第3反応溶媒の量は、例えば、1mL以上100mL以下であり、好ましくは、40mL以上80mL以下である。
【0104】
第3反応溶媒を用いる場合、先ず、式(III)に表される安息香酸誘導体と第3反応溶媒とを混合して混合液を得た後、この混合液に還元剤を加えることが好ましい。また、この混合液に還元剤を加え、-20℃以上10℃以下の比較的低温下で1時間以上5時間以下にわたって攪拌した後、これを10℃より高く40℃以下の温度にまで加熱して、10時間以上30時間以下にわたって攪拌してもよい。
【0105】
なお、上記の方法で調製された水素化ホウ素カルシウムを、単離することなく用いる場合、水素化ホウ素カルシウムの調製のために用いた反応溶媒は、第3反応溶媒として機能し得る。水素化ホウ素カルシウムを単離することなく用いる場合、以下の方法でアルコール誘導体を得ることが好ましい。
【0106】
先ず、第3反応溶媒にカルシウムのハロゲン化物を溶解させ混合液を得た後、この混合液に水素化ホウ素の1価の金属塩を添加し、-10℃以上10℃以下の温度で1分以上1時間以下にわたって攪拌して、水素化ホウ素カルシウム含有液を調製する。この水素化ホウ素カルシウム含有液に、式(III)に表される安息香酸誘導体を添加し、-10℃以上10℃以下の温度で20分以上2時間以下にわたって攪拌して、反応液を得る。この反応液を15℃以上35℃以下まで加熱して10時間以上30時間以下にわたって攪拌する。攪拌後の反応液を40℃以上60℃以下にまで更に加熱し、2時間以上6時間以下にわたって更に攪拌する。
【0107】
安息香酸誘導体の還元反応終了後、得られたアルコール誘導体は、下記の方法で取り出されることが好ましい。
先ず、アルコール誘導体を含む反応液に、塩酸、酢酸エチル等を加えて、反応液を有機層と水層とに分離させる。この有機層を抽出する。水層に酢酸エチルを更に加え有機層と水層とに再び分離させて有機層を回収し、これを先に抽出した有機層に加えてもよい。以上の方法で得られた有機層を、水等を用いて洗浄する。洗浄後の有機層に、硫酸マグネシウム等を加えて脱水した後、減圧濃縮することにより、残渣を得る。この残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、アルコール誘導体の生成物が得られる。
【0108】
(脱離基含有アミン誘導体の製造方法)
脱離基含有アミン誘導体は、下記式(V)で表される。この脱離基含有アミン誘導体は、例えば、医薬品の製造中間体として使用される。この脱離基含有アミン誘導体は、R体であることが好ましい。
【0109】
【0110】
式(V)において、X1及びR1は、それぞれ、式(IV)のものと同義である。Zは、脱離基である。脱離基としては、例えば、メシロキシ基、トシロキシ基、又はハロゲン原子を用いる。ハロゲン原子としては、ヨウ素、臭素、又は塩素を用いることが好ましい。
【0111】
この脱離基含有アミン誘導体は、上記式(IV)に表されるアルコール誘導体と脱離基含有化合物とを接触させることにより得られる。すなわち、アルコール誘導体と脱離基含有化合物とを接触させることにより、アルコール誘導体の水酸基部位が脱離基に置換される。得られた化合物は、NMR分光分析により同定できる。
【0112】
式(IV)に表されるアルコール誘導体と脱離基含有化合物との接触において、接触温度は、例えば、-10℃以上100℃以下とし、好ましくは、0℃以上80℃以下とし、より好ましくは、0℃以上20℃以下とする。接触時間は、例えば、6分以上24時間以下とし、好ましくは、30分以上17時間以下とし、より好ましくは、1時間以上10時間以下とする。アルコール誘導体と脱離基含有化合物とは、接触時間の間、上記の接触温度に保たれた状態で攪拌されることが好ましい。
【0113】
1モルの式(IV)に表されるアルコール誘導体に対する脱離基含有化合物の量は、例えば、1モル以上10モル以下とし、好ましくは、1モル以上5モル以下とする。
【0114】
脱離基含有化合物としては、脱離基として、メシロキシ基、トシロキシ基、又はハロゲノ基を導入できるものを用いることが好ましい。メシロキシ基を導入できる脱離基含有化合物としては、例えば、メタンスルホニルクロリドが挙げられる。トシロキシ基を導入できる脱離基含有化合物としては、例えば、p-トルエンスルホニルクロリドが挙げられる。クロロ基を導入できる脱離基含有化合物としては、例えば、メタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド及び塩化チオニルが挙げられる。ブロモ基を導入できる脱離基含有化合物としては、例えば、臭化チオニルが挙げられる。
【0115】
脱離基含有化合物としては、上記のものを単独で用いてもよく、複数種類を用いてもよい。脱離基含有化合物としては、メタンスルホニルクロリド及び塩化チオニルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0116】
式(IV)に表されるアルコール誘導体と脱離基含有化合物との接触は、第2塩基存在下で行われることが好ましい。第2塩基が存在すると、アルコール誘導体への脱離基の導入が促進される。第2塩基を用いる場合、先ず、第2塩基とアルコール誘導体とを混合して混合物を得た後、この混合物に脱離基含有化合物を加えることが好ましい。
【0117】
第2塩基は、有機塩基であることが好ましい。第2塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、及びN,N-ジエチルアニリンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。第2塩基としては、トリエチルアミンを用いることが好ましい。
【0118】
1モルの式(IV)に表されるアルコール誘導体に対する第2塩基の量は、例えば、0.1モル以上10モル以下であり、好ましくは、0.5モル以上5モル以下であり、より好ましくは、1.5モル以上4モル以下である。
【0119】
また、1モルの脱離基含有化合物に対する第2塩基の量は、例えば、0.1モル以上5モル以下であり、好ましくは、0.1モル以上5モル以下であり、より好ましくは、0.5モル以上2モル以下である。
【0120】
式(IV)に表されるアルコール誘導体と脱離基含有化合物との接触は、第4反応溶媒存在下で行われることが好ましい。第4反応溶媒が存在すると、アルコール誘導体への脱離基の導入が促進される。第4反応溶媒を用いる場合、先ず、アルコール誘導体を第4反応溶媒と混合して混合液を調製し、これに脱離基含有化合物等を加えることが好ましい。
【0121】
第4反応溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルTHF、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ジメトキシエタン、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。第4反応溶媒としては、塩化メチレン、THF、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0122】
1gの式(IV)に表されるアルコール誘導体に対する第4反応溶媒の量は、例えば、1mL以上100mL以下であり、好ましくは、2mL以上20mL以下である。
【0123】
式(IV)に表されるアルコール誘導体への脱離基導入反応終了後、得られた脱離基含有アミン誘導体は、下記の方法で取り出されることが好ましい。
先ず、脱離基含有アミン誘導体を含む反応液に、水及び第4反応溶媒の混合溶媒を加えて、反応液を有機層と水層とに分離させる。有機層を抽出した後、これを、水、飽和重曹水、食塩水等を用いて洗浄する。洗浄後の有機層に、硫酸マグネシウム等を加えて脱水した後、減圧濃縮することにより、脱離基含有アミン誘導体の生成物が得られる。
【0124】
(イソインドリン誘導体の製造方法)
イソインドリン誘導体は、下記式(VI)で表される。イソインドリン誘導体は、例えば、医薬品の製造中間体として使用される。このイソインドリン誘導体は、R体であることが好ましい。
【0125】
【0126】
式(VI)において、X1及びR1は、それぞれ、式(IV)におけるものと同義である。
【0127】
このイソインドリン誘導体は、上記式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体と第3塩基とを接触させることにより得られる。すなわち、脱離基含有アミン誘導体と第3塩基とを接触させることにより、脱離基含有アミン誘導体の脱離基が外れ、ラクタム環が形成される。得られた化合物は、NMR分光分析により同定できる。
【0128】
式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体と第3塩基との接触において、接触温度は、例えば、-10℃以上100℃以下とし、好ましくは、0℃以上80℃以下とし、より好ましくは、0℃以上40℃以下とする。接触時間は、例えば、6分以上48時間以下とし、好ましくは、30分以上40時間以下とし、より好ましくは、10時間以上30時間以下とする。脱離基含有アミン誘導体と第3塩基とは、接触時間の間、上記の接触温度に保たれた状態で攪拌されることが好ましい。
【0129】
第3塩基は、有機塩基であることが好ましい。第3塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、N,N-ジエチルアニリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、及びナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。金属アルコキシドは、ナトリウムt-ブトキシド及びカリウムt-ブトキシドを含む。第3塩基としては、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ナトリウムt-ブトキシド及びカリウムt-ブトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0130】
1モルの式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体に対する第3塩基の量は、例えば、0.1モル以上10モル以下であり、好ましくは、0.5モル以上5モル以下であり、より好ましくは、1モル以上3モル以下である。
【0131】
式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体と第3塩基との接触は、第5反応溶媒存在下で行われることが好ましい。第5反応溶媒が存在すると、脱離基含有アミン誘導体の環化反応が促進される。第5反応溶媒を用いる場合、先ず、脱離基含有アミン誘導体を第5反応溶媒と混合して混合液を調製し、これに第3塩基等を加えることが好ましい。
【0132】
第5反応溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF(テトラヒドロフラン)、2-メチルTHF、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。第5反応溶媒としては、トルエン、DMF、塩化メチレン、THF、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0133】
1gの式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体に対する第5反応溶媒の量は、例えば、1mL以上100mL以下であり、好ましくは、2mL以上20mL以下である。
【0134】
脱離基含有アミン誘導体の環化反応終了後、得られたイソインドリン誘導体は、下記の方法で取り出されることが好ましい。
先ず、イソインドリン誘導体を含む反応液に、水及び第5反応溶媒の混合溶媒を加えて、反応液を有機層と水層とに分離させる。有機層を抽出した後、これを、水、飽和重曹水、食塩水等を用いて洗浄する。洗浄後の有機層に、硫酸マグネシウム等を加えて脱水した後、減圧濃縮することにより、イソインドリン誘導体を含む生成物が得られる。この生成物を、シリカゲルカラムを用いて精製してもよい。
【0135】
なお、式(V)に表される脱離基含有アミン誘導体を用いる代わりに、式(IV)に表されるアルコール誘導体を、公知の方法で脱水することにより、式(VI)に表されるイソインドリン誘導体を得てもよい。
【実施例0136】
以下に例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0137】
<製造例1>
(4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体の製造)
【0138】
【0139】
以下の方法で、上記式(A)で表されるR-4-ブロモ-1-メチルベンジルアミンを基質として、上記式(IA)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体を得た。なお、式(IA)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体は、R体とした。
【0140】
先ず、20g(100mmol)のR-4-ブロモ-1-メチルベンジルアミンを、200mLのジクロロメタンに溶解させて溶液を調製した。この溶液を5℃まで冷却し、これに19.8g(250mmol)のピリジンを添加し、同温で10分間攪拌して混合液を得た。5℃以下の温度に保ったこの混合液に、26.3g(125mmol)のトリフルオロ酢酸無水物を40分間掛けて滴下した後、25℃の環境下で16時間にわたって攪拌して反応液を得た。
【0141】
25℃の環境下で、この反応液に100mLの10質量%塩酸を添加し、5分間攪拌して、反応液を水層と有機層とに分離させた。この有機層を抽出した。また、水層に50mLのジクロロメタンを加え、水層と有機層とに分離させて、有機層を抽出した。この有機層を先に抽出した有機層に加えて総有機層を得た。100mLの10質量%塩酸、100mLの5質量%重曹水、及び100mLの水の順で総有機層を洗浄した。洗浄後の総有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮乾燥し、固体状の残渣を得た。
【0142】
25℃の環境下、この残渣と150mLのヘキサンとを混合し、1時間攪拌して懸濁液を得た。この懸濁液を濾過し、固形物を濾別した。この固形物を40mLのヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥させることにより、4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体の生成物を得た。生成物の量は24.6gであり、収率は83.1%であった。
【0143】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IA)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体であることを確認した。NMR分光分析結果を下記に示す。
【0144】
1H-NMR(CDCl3)δ:7.80(d,1H)、7.61(d,1H)、7.16(dd,1H)、6.38(brs,1H)、5.05(m,1H)、1.57(d,3H)。
【0145】
<実施例1>
(トリフルオロアセチル基保護アミン誘導体の製造)
【0146】
【0147】
以下の方法で、上記式(IA)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体を基質として、上記式(IIA)に表されるトリフルオロアセチル基保護アミン誘導体を得た。なお、式(IIA)に表されるトリフルオロアセチル基保護アミン誘導体は、R体とした。
【0148】
先ず、3.0g(10.1mmol)の製造例1で得られた上記式(IA)に表される4-ハロゲノ-1-メチルベンジルアミン誘導体を、25mLのジクロロメタンに溶解させてアミン誘導体溶液を調製した。また、2.53g(26.3mmol)のメタンスルホン酸を、5mLの塩化メチレンに溶解させてブレンステッド酸溶液を調製した。25℃の環境下、アミン誘導体溶液にブレンステッド酸溶液を加えて10分間攪拌して混合液を得た。この混合液に、25℃の環境下で2.12g(5.57mmol)の1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインを加え、3時間にわたって攪拌して反応液を得た。
【0149】
この反応液を5℃にまで冷却した後、30mLの5質量%亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて10分間攪拌して、反応液を有機層と水層とに分離させた。有機層を抽出し、これを30mLの5質量%重曹水、及び30mLの水の順で洗浄した。洗浄後の有機層を、硫酸マグネシウムを用いて脱水した後、減圧濃縮して残渣を得た。残渣の量は4.03gであった。この残渣と20mLの2-プロパノールとを混合した後、これを70℃にまで加熱して30分間攪拌した。その後、これを25℃にまで冷却して30分間攪拌して懸濁液を得た。この懸濁液を濾過して、固形物を濾別した。この固形物を10mLのヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥させることにより、アミン誘導体の生成物を得た。生成物の量は2.60gであり、その収率は60.9%であった。
【0150】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IIA)に表されるアミン誘導体であることを確認した。NMR分光分析結果を下記に示す。
【0151】
1H-NMRδ:δ7.80(d,1H)、7.61(d,1H)、7.16(dd,1H)、6.38(brs,1H)、5.05(m,1H)、1.57(d,3H)。
【0152】
(ピバロイル基保護アミン誘導体の製造)
【0153】
【0154】
以下の方法で、上記式(IIA)に表されるトリフルオロアセチル基保護アミン誘導体を基質として、上記式(IIB)に表されるピバロイル基保護アミン誘導体を得た。なお、式(IIB)に表されるアミン誘導体は、R体とした。
【0155】
先ず、1.0g(2.37mmol)の上記の方法で得られた式(IIA)に表されるトリフルオロアセチル基保護アミン誘導体を、20mLのメタノールと1.3mLの蒸留水との混合溶媒に溶解させて溶液を調製した。25℃のこの溶液に9.83mg(7.11mmol)の炭酸カリウムを加えた後、65℃にまで加熱して21時間にわたって攪拌して混合液を得た。この混合液を濾過し、得られた濾液を濃縮して残渣を得た。この残渣を30mLのクロロホルムに溶解させた後、30mLの水を加えて有機層と水層とに分離させた。有機層を抽出し、これに硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、濃縮して、606mgの濃縮物を得た。
【0156】
この濃縮物を10mLのジクロロメタンに溶解させて溶液を得た。25℃の環境下、この溶液に382μL(4.74mmol)のピリジンを添加した後、これを0℃にまで冷却して、346μL(2.84mmol)の塩化ピバロイルと、15mg(0.119mmol)のN,N-ジメチル-4-アミノピリジンとを加えた後、25℃の環境下で14時間にわたって攪拌して反応液を得た。
【0157】
この反応液を0℃にまで冷却した後、5mLの10質量%塩酸を加え10分間攪拌して、反応液を有機層と水層とに分離させた。この有機層を抽出した。また、水層に10mLのジクロロメタンを加え、水層と有機層とに分離させて、有機層を抽出した。この有機層を先に抽出した有機層に加え、総有機層を得た。10mLの5質量%重曹水、及び5mLの水の順で総有機層を洗浄した。洗浄後の総有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、濃縮乾燥し、残渣を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、上記式(IIB)に表されるピバロイル基保護アミン誘導体の生成物を得た。生成物の量は503mgであり、その収率は51.8%であった。
【0158】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IIB)に表されるピバロイル基保護アミン誘導体であることを確認した。NMR分光分析結果を下記に示す。
【0159】
1H-NMRδ:7.76(d,1H)、7.55(d,1H)、7.12(dd,1H)、5.75(brd,1H)、4.98(m,1H)、1.44(d,3H)、1.20(s,9H)。
【0160】
(安息香酸誘導体の製造)
【0161】
【0162】
以下の方法で、上記式(IIB)に表されるピバロイル基保護アミン誘導体を基質として、上記式(IIIA)に表される安息香酸誘導体を得た。式(II)に表されるギ酸フェニル化合物としては、R2がクロロ基であり、nは3であるギ酸2,4,6-トリクロロフェニルを用いた。また、式(IIIA)に表される安息香酸誘導体は、R体とした。
【0163】
耐圧管に、3.3mg(0.0146mmol)の酢酸パラジウム、16.9mg(0.0293mmol)のXantphos、220mg(0.975mmol)のギ酸2,4,6-トリクロロフェニル、及び、200mg(0.488mmol)の上記の方法で得られた上記式(IIB)に表されるピバロイル基保護アミン誘導体を入れ窒素を封入した後、6mLのトルエンを添加し、25℃の環境下で5分間攪拌して混合液を得た。この混合液に136μL(0.975mmol)のトリエチルアミンを加えて素早くキャップを閉め、80℃で3時間攪拌して反応液を得た。
【0164】
この反応液を濃縮して残渣を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、安息香酸誘導体の生成物を得た。生成物の量は143mgであり、その収率は57.8%であった。
【0165】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IIIA)に表される安息香酸誘導体であることを確認した。NMR分光分析結果を下記に示す。
【0166】
1H-NMRδ:7.76(d,1H)、7.55(d,1H)、7.12(dd,1H)、5.75(brd,1H)、4.98(m,1H)、1.44(d,3H)、1.20(s,9H)。
【0167】
(アルコール誘導体の製造)
【0168】
【0169】
以下の方法で、上記式(IIIA)に表される安息香酸誘導体を基質として、上記式(IVA)に表されるアルコール誘導体を得た。なお、式(IVA)に表されるアルコール誘導体は、R体とした。
【0170】
先ず、57.0mg(0.112mmol)の上記の方法で得られた式(IIIA)に表される安息香酸誘導体を、3.4mLのエタノールに溶解させて溶液を得た。この溶液を0℃にまで冷却した後、7.6mg(0.202mmol)の水素化ホウ素ナトリウム、及び、11.2mg(0.101mmol)の塩化カルシウムをこの順で加え、0℃の温度に保った状態で2.5時間攪拌して混合液を得た。この混合液を、25℃で5時間攪拌した後、7.6mg(0.202mmol)の水素化ホウ素ナトリウム、及び、11.2mg(0.101mmol)の塩化カルシウムをこの順で更に加え、25℃に保った状態で15時間攪拌して反応液を得た。
【0171】
この反応液を0℃にまで冷却した後、これに2mLの10質量%塩酸及び10mLの酢酸エチルを加えて5分間攪拌して、反応液を有機層と水層とに分離させた。この有機層を抽出した。また、水層に5mLの酢酸エチルを加え、水層と有機層とに分離させて、有機層を抽出した。この有機層を先に抽出した有機層に加え、総有機層を得た。総有機層を5mLの水で洗浄した。洗浄後の総有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水し、減圧濃縮して残渣を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、アルコール誘導体の生成物を得た。生成物の量は4.5mgであり、収率は12.8%であった。
【0172】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IVA)に表されるアルコール誘導体であることを確認した。NMR分光分析結果を下記に示す。
【0173】
1H-NMRδ:7.49(d,1H)、7.43(d,1H)、7.08(dd,1H)、5.81(brd,1H)、5.04(m,1H)、4.73(d,2H)、1.46(d,3H)、1.20(s,9H)。
【0174】
<実施例2>
(アルコール誘導体の製造)
以下の方法で、上記式(IIIA)に表される安息香酸誘導体を基質として、上記式(IVA)に表されるアルコール誘導体を得た。なお、式(IVA)に表されるアルコール誘導体は、R体とした。
【0175】
先ず、39.4mg(0.355mmol)の塩化カルシウムを6mLのエタノールに溶解させて、塩化カルシウム溶液を調製した。この塩化カルシウム溶液を0℃まで冷却し、これに26.8mg(0.709mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを加えて15分間攪拌して、水素化ホウ素カルシウム溶液を調製した。この水素化ホウ素カルシウム溶液に、200mg(0.394mmol)の実施例1に記載したのと同様の方法で得られた式(IIIA)に表される安息香酸誘導体を添加して混合液を得た。この混合液を0℃の温度に保った状態で1時間攪拌した後、25℃まで加熱し19時間攪拌し、更に、50℃まで加熱し4時間攪拌して反応液を得た。
【0176】
反応液を0℃まで冷却した後、これに2mLの10質量%塩酸、20mLの酢酸エチルを加え5分間攪拌して、反応液を有機層と水層とに分離させた。また、水層に10mLの酢酸エチルを加え、水層と有機層とに分離させて、有機層を抽出した。この有機層を先に抽出した有機層に加え、総有機層を得た。総有機層を10mLの水で洗浄した。洗浄後の総有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮して残渣を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、アルコール誘導体の生成物を得た。生成物の量は27.0mgであり、その収率は21.8%であった。
【0177】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IVA)に表されるアルコール誘導体であることを確認した。
【0178】
<実施例3>
(安息香酸誘導体の製造)
【0179】
【0180】
以下の方法で、上記式(IIB)に表されるピバロイル基保護アミン誘導体を基質として、上記式(IIIB)に表される安息香酸誘導体を得た。式(II)に表されるギ酸フェニル化合物としては、nが0であるギ酸フェニルを用いた。また、式(IIIB)に表される安息香酸誘導体は、R体とした。
【0181】
式(IIB)に表されるピバロイル基保護アミン誘導体の量を200mg(0.488mmol)に変更したこと、220mg(0.975mmol)のギ酸2,4,6-トリクロロフェニルの代わりに、109μL(0.975mmol)のギ酸フェニル用いたこと、トルエンの代わりにアセトニトリルを用いたこと、及び、トリエチルアミンを加えた反応液の攪拌時間を3時間から6時間へと変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で安息香酸誘導体の生成物を得た。生成物の量は147mgであり、その収率は74.7%であった。
【0182】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IIIB)に表される安息香酸誘導体であることを確認した。NMR分光分析結果を下記に示す。
【0183】
1H-NMRδ:7.91(d,1H)、7.67(d,1H)、7.44(m,2H)、7.24-7.35(m,4H)、5.84(brd,1H)、5.10(m,1H)、1.51(d,3H)、1.21(s,9H)。
【0184】
(アルコール誘導体の製造)
【0185】
【0186】
以下の方法で、上記式(IIIB)に表される安息香酸誘導体を基質として、上記式(IVA)に表されるアルコール誘導体を得た。なお、式(IVA)に表されるアルコール誘導体は、R体とした。
【0187】
基質を上記の方法で得られた式(IIIB)に表される安息香酸誘導体に変更したこと、基質の量を145mg(0.358mmol)に変更したこと、塩化カルシウムの量を35.7mg(0.322mmol)に変更したこと、エタノールの量を8.6mLに変更したこと、水素化ホウ素ナトリウムの量を24.4mg(0.644mmol)に変更したこと、及び、安息香酸誘導体添加後の混合液を25℃の温度下で24時間攪拌して反応液を得たこと以外は、実施例2に記載したのと同様の方法でアルコール誘導体の生成物を得た。生成物の量は53.6mgであり、その収率は47.69%であった。
【0188】
<実施例4>
(安息香酸誘導体の製造)
【0189】
【0190】
以下の方法で、上記式(IIA)に表されるトリフルオロアセチル基保護アミン誘導体を基質として、上記式(IIIC)に表される安息香酸誘導体を得た。式(II)に表されるギ酸フェニル化合物としては、nが0であるギ酸フェニルを用いた。また、式(IIIC)に表される安息香酸誘導体は、R体とした。
【0191】
基質として200mg(0.474mmol)の上記式(IIA)に表されるトリフルオロアセチル基保護アミン誘導体を用いたこと、酢酸パラジウムの量を3.2mg(0.0146mmol)に変更したこと、Xantphosの量を6.5mg(0.0284mmol)に変更したこと、ギ酸フェニルの量を106μL(0.948mmol)に変更したこと、及び、トリエチルアミンの量を132μL(0.948mmol)に変更したこと以外は、実施例3に記載したのと同様の方法で安息香酸誘導体の生成物を得た。生成物の量は122mgであり、その収率は62.0%であった。
【0192】
生成物について、1H-NMR分光分析を行い、上記式(IIIC)に表される安息香酸誘導体であることを確認した。
【0193】
実施例1と実施例2との比較から明らかなように、安息香酸誘導体の溶液に水素化ホウ素ナトリウム及び塩化カルシウムを加えて水素化ホウ素カルシウムを生成する方法よりも、水素化ホウ素カルシウムを含む溶液に、安息香酸誘導体を加える方法のほうが、アルコール誘導体の収率が高かった。
【0194】
また、実施例1及び3から明らかなように、式(II)に表されるギ酸フェニル化合物の種類を変更しても、式(III)に表される安息香酸誘導体を得ることができた。また、実施例3及び4から明らかなように、保護基R1の種類を変更しても、式(III)に表される安息香酸誘導体を得ることができた。