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▶ 日清製粉株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044350
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】中華まん類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20220310BHJP
【FI】
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149933
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 一民
(72)【発明者】
【氏名】茂木 大介
(72)【発明者】
【氏名】貴島 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦行
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LE04
4B036LF12
4B036LH01
4B036LH10
4B036LH13
4B036LH16
4B036LH22
4B036LH36
4B036LH48
4B036LK01
4B036LK06
4B036LP14
(57)【要約】
【課題】製造時には生地の伸展性や二次加工性に優れ、かつ製造後、再加熱した後にも良好な食感を有する中華まん類の提供。
【解決手段】穀粉類とデュラム小麦由来の精製蛋白とを含有する中華まん類。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉類とデュラム小麦由来の精製蛋白とを含有する中華まん類。
【請求項2】
前記穀粉類100質量部に対し、前記デュラム小麦由来の精製蛋白を粗蛋白換算で0.3~10質量部含有する、請求項1記載の中華まん類。
【請求項3】
前記穀粉類が普通小麦由来の小麦粉を80%質量以上含有する、請求項1又は2記載の中華まん類。
【請求項4】
前記普通小麦由来の小麦粉の粗蛋白含量が7~11%である、請求項3記載の中華まん類。
【請求項5】
電子レンジ加熱用である、請求項1~4のいずれか1項記載の中華まん類。
【請求項6】
穀粉類とデュラム小麦由来の精製蛋白とを含有する生地を調製することを含む、中華まん類の製造方法。
【請求項7】
前記生地が、前記穀粉類100質量部に対し、前記デュラム小麦由来の精製蛋白を粗蛋白換算で0.3~10質量部含有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記穀粉類が普通小麦由来の小麦粉を80質量%以上含有する、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記普通小麦由来の小麦粉の粗蛋白含量が7~11%である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項記載の方法で製造した中華まん類を電子レンジ加熱することを含む、中華まん類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華まん類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肉まん、あんまん等の中華まん類は、通常、穀粉類を主原料とする生地から、発酵、分割、成形(包餡)、ホイロ、蒸し加熱を経て製造される。このとき、生地が伸展性又は二次加工性に劣ると、分割、成形などがうまくいかなくなることで、製造効率の低下や、製品の外観や食感などの品質の低下が起こり得る。また中華まん類は、常温、冷蔵又は冷凍状態で保存、流通又は販売された後、蒸し器や電子レンジ等で再加熱されることが多い。しかし、再加熱は中華まん類の外観や食感の低下をもたらし得る。
【0003】
中華まん類の製造時の作業性や、外観や食感を向上させる技術として、特許文献1には、デュラム小麦粉を5~50重量%含む穀粉類を原料とする生地を用いた中華まんの製造方法が記載されている。特許文献2には、グルコースオキシダーゼ、グルテン、えんどうデンプン及びアルギン酸エステルを含有する中華まん用添加剤が、長時間の加湿保温後においても中華まん生地の品質低下を抑制することが記載されている。
【0004】
小麦蛋白(グルテン)は、従来、麺類やべーカリー食品の品質改良に用いられている。従来用いられる小麦蛋白は、通常、普通系小麦(6倍体小麦)由来の蛋白質である。一方で、特許文献3には、デュラム小麦蛋白濃縮物が麺類などの小麦粉食品に対して黄色みが強い色調と、弾力や歯ごたえのある良好な食感を与える特性があることが記載されている。特許文献4、5には、デュラムバイタルグルテンを含むパン用小麦粉組成物、及びたこ焼き又はお好み焼き用小麦粉組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-042069号公報
【特許文献2】特開2020-018269号公報
【特許文献3】特開2002-191306号公報
【特許文献4】特開2020-058279号公報
【特許文献5】特開2019-213471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造時には生地の伸展性や二次加工性に優れ、かつ製造後、再加熱した後にも良好な食感を有する中華まん類を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、中華まん類の生地にデュラム小麦由来の精製蛋白を配合することにより、生地の伸展性や二次加工性が向上し、さらに、電子レンジ等での再加熱後にも口溶けと歯切れがよく、かつ柔らかさのある良好な食感を維持した中華まん類を製造することができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、穀粉類とデュラム小麦由来の精製蛋白とを含有する中華まん類を提供する。
また本発明は、穀粉類とデュラム小麦由来の精製蛋白とを含有する生地を調製することを含む、中華まん類の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により製造される中華まん類は、生地の伸展性と二次加工性に優れているので、製造効率に優れている。また本発明により製造される中華まん類は、電子レンジ等での再加熱による食感の低下が少なく、再加熱後にも口溶けと歯切れがよく、かつ柔らかさのある良好な食感を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
中華まん類は、穀粉類を含む生地を、発酵、分割、成形(包餡)、ホイロなどの工程を経た後、蒸し加熱して製造される食品である。本発明で製造される中華まん類には、常温、冷蔵、チルド及び冷凍状態で保存又は流通される中華まん類がいずれも包含される。
【0011】
本発明の中華まん類は、穀粉類とデュラム小麦由来の精製蛋白とを含有する生地から製造される。従来一般的に使用される小麦蛋白は、6倍体小麦である普通小麦に由来する。一方、本発明で用いるデュラム小麦由来の精製蛋白は、4倍体小麦であるデュラム小麦に由来し、一般的に使用される小麦蛋白(普通小麦蛋白、いわゆるグルテン)とは異なるものである。本発明で用いるデュラム小麦由来の精製蛋白は、デュラム小麦粉又はその製造工程で生じる蛋白質を多く含む画分から、普通小麦蛋白の製造における定法に従って調製することができる。本発明で用いるデュラム小麦由来の精製蛋白は、粗蛋白含量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。小麦蛋白中の粗蛋白含量は、燃焼法に基づいて測定することができる。以下の本明細書において、デュラム小麦由来の精製蛋白を単に「デュラム小麦蛋白」ということがある。
【0012】
本発明で用いる穀粉類の例としては、小麦粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、オーツ麦粉、ライ麦粉などが挙げられ、好ましくは小麦粉、米粉、及びコーンフラワーが挙げられる。これらの穀粉類は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該穀粉類は小麦粉を含む。該小麦粉は、中華まん類の製造に使用され得るものであればよく、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム粉、全粒粉などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる、好ましくは、該小麦粉は、普通小麦由来の小麦粉、例えば薄力粉、中力粉、準強力粉、及び強力粉からなる群より選択される1種以上である。より好ましくは、該小麦粉は、全体での粗蛋白含量が7~11%である普通小麦由来の小麦粉である。さらに好ましくは、該小麦粉は中力粉である。本明細書における小麦粉の粗蛋白含量は、燃焼法により測定された値である。
【0013】
好ましくは、該穀粉類は、その全量中の70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、なお好ましくは100質量%が小麦粉である。より好ましくは、該穀粉類は、その全量中の70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、なお好ましくは100質量%が普通小麦由来の小麦粉である。
【0014】
本発明の中華まん類の生地は、該穀粉類100質量部に対し、該デュラム小麦蛋白を粗蛋白換算で、好ましくは0.3~10質量部、より好ましくは0.7~5質量部含有する。
【0015】
本発明の中華まん類の生地はさらに、一般的な中華まん類の生地に含まれ得る他の原料を含有することができる。当該他の原料の例としては、澱粉類;イースト;膨張剤;食塩;砂糖、蜂蜜、水あめ等の糖類;牛乳、脱脂粉乳、コンデンスミルク等の乳製品;ショートニング、バター、マーガリン、ラード、植物油等の油脂類;液卵、全卵粉、卵白粉などの卵製品;大豆蛋白質、カゼイン等の蛋白類(但し、上述したデュラム小麦蛋白を除く);香料;調味料;乳化剤、保存剤、pH調整剤、着色料等の添加剤、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の中華まん類に用いる具材の種類は、特に限定されず、肉、魚介、野菜、豆、穀物、芋、果物、ナッツ、乳製品、クリーム類などを適宜使用することができる。例えば、肉と野菜を調味した肉餡や、カレー餡、ピザ餡、小豆餡、芋餡、チーズクリーム、チョコクリームなどの中華まん類に従来使用されている具材を、本発明の中華まん類の具材として使用することができる。
【0017】
本発明の中華まん類の生地の調製においては、上述した穀粉類、デュラム小麦蛋白、及び必要に応じて他の原料を含む生地原料と、水分とを混合して中華まん類の生地を調製する。該生地の調製において、該穀粉類、デュラム小麦蛋白、及び他の原料は、任意の順序で混合することができる。水分としては、水、塩水、ガス含有水(炭酸水等)などを使用することができる。該生地原料に対する加水量は、適宜調整すればよいが、好ましくは、穀粉類、デュラム小麦蛋白、及び他の原料を含めた生地原料100質量部に対して、35~55質量部である。
【0018】
生地の調製の具体的手順は、特に限定されず、中華まん類の生地の調製のために使用される通常の手順をいずれも使用することができる。例えば、本発明の中華まん類の生地は、ストレート法、中種法などのいずれの方法を使用して調製されてもよい。調製した生地から、発酵、分割、成形(包餡)、ホイロ、蒸し加熱などを経て、本発明の中華まん類が製造される。
【0019】
上述した本発明の中華まん類の製造工程に用いられる条件や装置は、特に限定されず、中華まん類の製造に従来用いられている製造条件、製造装置などを適宜使用することができる。例えば、本発明における生地による包餡(具材の包み)作業は、手作業で行ってもよいが、一般的に使用される自動包餡機を使用して行うことができる。本発明の中華まん類の生地は伸展性及び二次加工性が向上しているので、包餡作業を自動包餡機で行っても具材が生地外に飛び出たもの等の不良品の発生がほとんどない。よって本発明によれば、中華まん類を生産性良く製造することができる。
【0020】
本発明で製造され得る中華まん類の種類としては、従来から中華まん類の範疇に入るものとして取り扱われている製品、例えば、肉まん、あんまん、カレーまん、ピザまん、角煮まん、チーズクリームまん、チョコまん、などを挙げることができる。ただし、本発明で製造される中華まん類の種類は、上記に限定されず、任意の具材を有するものを包含する。また、本発明の中華まん類の重量、形状、寸法などは、特に限定されず、具材や嗜好に合わせて適宜選択することができる。
【0021】
本発明の中華まん類は、製造後直ちに喫食してもよいが、必要に応じて適宜包装して、常温、冷蔵、チルド、又は冷凍状態で保存、流通、又は販売することができる。該中華まん類は、必要に応じて蒸し器、電子レンジなどで再加熱して喫食することができる。好ましくは、本発明の中華まん類は、電子レンジ加熱用、すなわち、製造後、電子レンジで再加熱されて喫食されるものである。
【実施例0022】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にの
み限定されるものではない。
【0023】
(1)デュラム小麦蛋白の調製
デュラム小麦粉(日清製粉製)に約0.7倍量の水を添加して混捏して生地とした。この生地に約5倍量の水を添加して混合及び洗浄した後、さらに水洗して生グルテンを調製した。得られた生グルテンを真空凍結乾燥した後、粉砕してデュラム小麦蛋白を得た(粗蛋白含量:約70質量%)。
【0024】
(2)中華まんの製造
下記に示す手順に従って中華まんを製造した。生地の調製はストレート法により行った。生地で包む具材としては、挽肉に玉ねぎ等の野菜類と調味料、香辛料などを加えて製造した肉餡を用いた。分割した生地で具材を包む成形(包餡)工程は、自動包餡機(レオン自動機株式会社製「火星人CN511」)を用いて行った(1分当たりの生産個数40~50個、2400~3000個/時間)。
【0025】
[生地配合]
小麦粉 表1記載の量
デュラム小麦蛋白 表1記載の量
グルテン(普通小麦由来) 表1記載の量
生イースト 2部
ベーキングパウダー 1部
砂糖 10部
ラード 5部
水 45~60部
[製造工程(ストレート法)]
ミキシング:原料を低速で2分間混捏後、高速で10分間混捏
捏上温度:25℃
発酵:27℃で15分間
分割:50g/1個
成形(包餡):分割した生地1個で35gの肉餡を包む
ホイロ:30分(温度40℃、湿度50%)
蒸し:102℃の蒸気で12分間
【0026】
分割と成形工程での生地の伸展性及び二次加工性を、訓練されたパネラー10名により下記基準で評価した。同じパネラー10名により、製造後の中華まんの食感を下記の基準で評価した。同様の手順で、製造後の中華まんを室温下で3時間保管した後、電子レンジ(600W)で40秒再加熱し、5分間静置した後、その食感を評価した。
<評価基準>
伸展性・二次加工性
5点:伸展性に非常に優れ、二次加工性に優れる
4点:伸展性に優れ、二次加工性にやや優れる
3点:伸展性にやや優れ、問題ない二次加工性である
2点:伸展性にやや劣り、二次加工性にやや劣る
1点:伸展性に劣り、二次加工性に劣る
口溶け
5点:口溶けが非常に優れる
4点:口溶けが優れる
3点:口溶けがやや優れる
2点:口溶けがやや劣る
1点:口溶けが劣る
歯切れ
5点:歯切れが非常に良い
4点:歯切れが良い
3点:歯切れがやや良い
2点:歯切れがやや劣る
1点;歯切れが劣る
柔らかさ
5点:ヒキが無く非常に柔らかな食感である
4点:ヒキがわずかで柔らかな食感である
3点:ヒキが弱く、やや柔らかな食感である
2点:ヒキがややあり、やや硬い食感である
1点:ヒキがあり、硬い食感である
【0027】
結果を表1に示す。デュラム小麦蛋白を含む生地から製造した中華まんは、製造時の生地の伸展性・二次加工性がよく、かつ口溶け、歯切れ、柔らかさに優れていた。さらに、デュラム小麦蛋白を含む生地から製造した中華まんは、比較例の中華まんと比べて、再加熱による口溶け、歯切れ、柔らかさの低下が少なく、再加熱後にも良好な食感を維持していた。
【0028】
【表1】