(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044860
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】半導体処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220311BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20220311BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220311BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220311BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220311BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
H01L21/68 A
G01N1/28 Z
G01N1/00 101C
H01L21/66 J
G03F7/20 521
H01L21/30 541Z
G03F7/20 504
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150211
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 明
(72)【発明者】
【氏名】中川 周一
(72)【発明者】
【氏名】水落 真樹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 貴朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真志
(72)【発明者】
【氏名】野村 健太
(72)【発明者】
【氏名】石垣 直也
【テーマコード(参考)】
2G052
2H197
4M106
5F056
5F131
【Fターム(参考)】
2G052AA13
2G052AB26
2G052AB27
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052CA04
2G052EB12
2G052FD17
2G052GA35
2G052HA19
2G052HC17
2H197CD23
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2H197DB17
2H197FA01
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DB30
4M106DH24
4M106DH33
4M106DH47
5F056BC06
5F056CD05
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5F131DA42
5F131JA08
5F131JA16
5F131JA28
5F131JA32
(57)【要約】
【課題】半導体処理装置において、大型の排気装置を設置することなく、外部からの電磁ノイズや騒音の侵入を抑えるとともに、制御機器が発する熱が半導体に対して与える影響を抑制する。
【解決手段】本発明に係る半導体処理装置は、本体装置と制御装置を覆う本体カバーを備え、前記本体カバーは半導体を受け渡しするための受け渡し開口を有し、前記本体カバーはさらに、前記本体カバー内部において水平方向の気流を生じさせる吸気口を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体を検査または加工する本体装置、前記本体装置を制御する制御装置、前記本体装置との間で前記半導体を受け渡しする受け渡し装置、を備えた半導体処理装置であって、
前記半導体処理装置はさらに、前記本体装置と前記制御装置を覆う本体カバーを備え、
前記本体カバーは、前記受け渡し装置との間で前記半導体を受け渡しするための受け渡し開口を有し、
前記受け渡し装置は、前記受け渡し装置の内部において下降気流を生じさせて前記下降気流を前記半導体に対して当てるように構成されたファンフィルタユニットを有し、
前記本体カバーはさらに、前記本体カバーの内部の上部領域において水平方向の気流を生じさせる上部吸気口を有し、
前記本体カバーはさらに、前記上部領域における水平方向の気流を排気する排気口を有する
ことを特徴とする半導体処理装置。
【請求項2】
前記本体カバーはさらに、前記本体カバーの内部の下部領域において水平方向の気流を生じさせる下部吸気口を有し、
前記本体カバーはさらに、前記下部領域における水平方向の気流を排気する排気口を有する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体処理装置。
【請求項3】
前記本体カバーは、前面側に前記受け渡し開口を有し、
前記本体カバーはさらに、前記本体カバーの内部の背面側の上部に第1排気ファンを有し、
前記本体カバーはさらに、前記第1排気ファンが排出する空気を下向きに導く第1排気ダクトを有する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体処理装置。
【請求項4】
前記第1排気ファンは、複数の軸流ファンを並列に配置することによって構成されている
ことを特徴とする請求項3記載の半導体処理装置。
【請求項5】
前記第1排気ダクトの排気経路には、ハニカム構造を有する金属板が配置されている
ことを特徴とする請求項3記載の半導体処理装置。
【請求項6】
前記制御装置のうち一部は、前記本体カバーの内部の背面側の上部に配置された上部制御装置を含み、
前記本体カバーの内部の上部領域には、仕切板が配置されており、
前記仕切板は、前記上部制御装置と前記本体装置との間に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の半導体処理装置。
【請求項7】
前記上部吸気口と前記下部吸気口は、複数の開口を並べることによって構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の半導体処理装置。
【請求項8】
前記本体カバーはさらに、前記受け渡し開口の両側部にそれぞれ配置された側部吸気口を有し、
各前記側部吸気口は、複数の開口を並べることによって構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の半導体処理装置。
【請求項9】
前記制御装置のうち一部は、前記本体カバーの内部の背面側の下部に配置された下部制御装置を含み、
前記半導体処理装置はさらに、前記本体カバーの内部の背面側の下部領域に配置され、前記下部制御装置を収容する、下部制御装置筐体を備え、
前記下部制御装置は、複数の制御装置を積層配置することによって構成されており、
前記下部制御装置筐体は、前記下部制御装置の内部の空気を排気する第2排気ファンを有する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体処理装置。
【請求項10】
前記制御装置のうち一部は、前記本体カバーの内部の背面側の下部に配置された下部制御装置を含み、
前記半導体処理装置はさらに、前記本体カバーの内部の背面側の下部領域に配置され、前記下部制御装置を収容する、下部制御装置筐体を備え、
前記下部制御装置筐体は、前記下部制御装置の内部の空気を排気する第2排気ファン、前記第2排気ファンが排気する空気を下方へ導く第2排気ダクト、を有し、
前記第1排気ダクトと前記第2排気ダクトは、水平方向において互いに対してシフトして配置されることにより、前記第1排気ダクトの排気口を前記第2排気ダクトが覆わないように配置されている
ことを特徴とする請求項3記載の半導体処理装置。
【請求項11】
前記制御装置のうち一部は、前記本体カバーの内部の背面側の下部に配置された下部制御装置を含み、
前記半導体処理装置はさらに、前記本体カバーの内部の背面側の下部領域に配置され、前記下部制御装置を収容する、下部制御装置筐体を備え、
前記下部制御装置筐体は、前記下部制御装置の内部の空気を排気する第2排気ファン、前記第2排気ファンが排気する空気を下方へ導く第2排気ダクト、を有し、
前記第2排気ダクトの排気経路には、ハニカム構造を有する金属板が配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の半導体処理装置。
【請求項12】
前記金属板は、前記第2排気ダクトの排気経路の延伸方向に対して傾斜して配置されている
ことを特徴とする請求項11記載の半導体処理装置。
【請求項13】
前記下部制御装置筐体は、背面に前記第2排気ファンを有するとともに、前面に筐体吸気口を有し、
前記筐体吸気口は、複数の穴によって構成されている
ことを特徴とする請求項9記載の半導体処理装置。
【請求項14】
前記下部制御装置は、前記下部制御装置以外の前記制御装置に対して電力を供給する電源ユニットであり、
前記電源ユニットは、スイッチング素子によって構成されている
ことを特徴とする請求項9記載の半導体処理装置。
【請求項15】
前記電源ユニットの形状は、短辺と長辺を有し、
前記長辺は、前記第2排気ファンによって排出される気流に沿って延伸しており、
前記下部制御装置は、複数の前記電源ユニットを、前記気流に対して直交する方向に並列配置することによって構成されている
ことを特徴とする請求項14記載の半導体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を検査・加工などする半導体処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の微細化にともない、半導体製造装置のみならず、半導体の検査や評価をする装置においても、高精度に半導体の位置などを取り扱う技術が求められている。例えば、半導体ウェハ上に形成した回路の形状寸法を測定して検査する装置としては、電子顕微鏡を用いて撮像し、回路の寸法を読み取る測長SEM(Scanning Electron Microscope)などがある。
【0003】
現在の半導体回路においては数ナノメートルの線幅で回路が形成されており、それと同オーダーの間隔で回路が並んでいる。これを電子顕微鏡で撮像し、検査する場合、非常に小さな視野で撮像することになる。したがって、半導体ウェハを位置決めするステージ装置にわずかな温度変化が生じた場合であっても、装置の熱変形によって、静止させている半導体ウェハの位置が動いてしまう。その場合、どの箇所の撮像をしているか分からなくなることもある。測長SEMにおいては、電子顕微鏡を用いるので、試料である半導体ウェハを真空チャンバーに置く必要があり、このチャンバーを試料室と呼んでいる。その試料室の内部にステージ装置があって半導体ウェハを位置決めすることから、試料室自身の温度を極力一定に保つ必要がある。
【0004】
同様に、半導体製造装置においても、半導体ウェハの位置決めを行う装置等が、わずかな温度変化を起こした場合であっても、製造する半導体回路の位置がずれてしまう。よって、ウェハの位置決めなどをする装置は、温度変化を極力抑えて、高精度に温度を安定化させることが重要となる。
【0005】
一方、電子顕微鏡のような電子線を利用する装置を組み込んでいる場合、外部から電磁波のノイズが侵入すると、電子線の軌道にわずかな変化が生じ、精度悪化の要因となる。したがって半導体処理装置においては、装置全体を金属のカバーで覆い、電磁ノイズの侵入を抑えることが、精度向上のために有効となる。また、ナノメートルオーダーの精密さを追求する装置においては、音波の侵入によって、音が装置を振動させ、その動作がノイズとなる問題も生じる。したがって、装置本体をカバーで覆うことは、周囲の他の装置が発する騒音による音波の侵入を防ぐ役割も持つ。ただし、半導体処理装置は、そのメイン装置を駆動するために、様々な制御機器を利用しており、メイン装置と制御機器はセットで1つの装置となる。したがって、本体カバーの中には、メイン装置の他に、多数の制御機器も含まれる。ここでいう制御機器の中には、例えば制御機器のための電源装置も含まれる。
【0006】
制御機器においては、電気を利用する上で、エネルギー損失にともなう発熱が生じる。個々の発熱は、その部品の周囲に空気の流れがあれば、空気を介して放熱されるが、装置全体を見た場合、個別部品の発熱は、カバー内の空気温度上昇をもたらす。そのような空気温度の上昇は、半導体ウェハに触れる装置の熱変形につながり、精度悪化をもたらす。一般に、半導体処理装置はクリーンルーム内で使用される。クリーンルーム内は空気温度を一定に保ち、空気中のゴミを取り除くのが通常である。しかし、本体カバーに覆われた装置の中では、上記のような空気の温度変化を生じさせる要因がある。
【0007】
特許文献1は、上記に関連する技術を記載している。同文献においては、クリーンルームのバックヤードにあたる機械室にブロアを置き、ダクトを通じて半導体処理装置から空気を吸引し、クリーンルームの温調された空気を半導体処理装置が吸い込むことにより、装置内部の空気温度上昇を防止する手段が述べられている。
【0008】
特許文献2は、半導体処理装置の中で使われる制御機器を効果的に冷却する技術を記載している。この技術においては、制御機器を構成する筐体ユニットを複数積層して収納するラックを構成し、そのラックと排気ダクトの間に導風室を設け、導風室内の調整板で排気ダクトに吸引される空気流量を調整し、複数の筐体ユニットを均等に冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7-335707号公報
【特許文献2】特開2005-268546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体処理装置の内部空気温度を一定に保つための手段としては、装置が置かれるクリーンルームとは別の部屋にブロアを設置し、そのブロアと半導体処理装置との間をダクトで接続し、ブロアによって半導体処理装置の排熱を吐き出す方法がある。その場合、半導体処理装置を設置する度に、排気ダクトの工事が必要となり、装置を設置するための負荷が大きい。
【0011】
一方、半導体処理装置が排気ファンを備え、装置の排熱をクリーンルーム内に吐き出す方法もある。この場合、排気ダクトの工事が不要になる一方、ブロアのような大型のファンを半導体処理装置が抱えると、ブロアの振動や騒音を装置自身が受けることになり、精密な動作の妨げになる。ファンの振動や騒音を抑えるためには、ブロアよりも低出力のファンを用いるのがよいが、低出力化するほど、振動・騒音が低下する一方、排気流量も低下する。
【0012】
そこで、少ない排気流量であっても、半導体処理装置の内部空気温度を一定に保つための技術が必要になる。特に、測長SEMのような装置においては、本体カバーの中に様々な制御機器を備え、それらの機器が発熱し、本体カバーの中に熱がこもりやすい状況の中で、試料室のような半導体ウェハを扱う箇所を、特に一定温度に保つ必要がある。
【0013】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、半導体処理装置において、大型の排気装置を設置することなく、外部からの電磁ノイズや騒音の侵入を抑えるとともに、制御機器が発する熱が半導体に対して与える影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る半導体処理装置は、本体装置と制御装置を覆う本体カバーを備え、前記本体カバーは半導体を受け渡しするための受け渡し開口を有し、前記本体カバーはさらに、前記本体カバー内部において水平方向の気流を生じさせる吸気口を有する。
【発明の効果】
【0015】
上記構成を用いることにより、半導体処理装置は外部からの電磁ノイズや音波の侵入を防ぐとともに、相反する関係にある制御機器の発熱がカバー内にこもる現象を防ぎ、かつ、その熱のこもりを防ぐために、振動・騒音が問題になる大型のファンを使用することなく、低出力のファンで効率的に排熱する。これにより、半導体を取り扱う本体装置周りの空気温度が、クリーンルームの温度以上に上昇することを抑制し、本体装置の熱変形と振動影響を防ぎ、半導体処理装置の精密な稼働を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】半導体処理装置1の全体構成を示した図である。
【
図2A】本体カバー2のみを取り上げ、その内部を開放して表示する図である。
【
図2B】排気ダクト12と17の位置関係を示す模式図である。
【
図4】筐体14内部の構造を開放して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体処理装置1の全体構成を示した図である。半導体処理装置1は、本体カバー2に覆われた領域と、半導体受け渡し装置3とに分かれている。本体カバー2は本体装置を収容する。本体装置は、半導体を検査・加工などする装置である。本実施形態においては、本体装置として測長SEMを例にして説明するが、その他の半導体製造装置などにおいても本発明を用いることができる。
【0018】
半導体の様々の処理工程は、クリーンルーム内に設置された様々な装置によって実施されるが、その装置間を移動する際は、半導体ウェハをポッドに入れて搬送する。ポッドは、完全密閉にすることによって、ウェハ表面に微小な異物が付着することを防止している。しかし、そのポッドから半導体ウェハを取り出し、処理装置に受け渡す際、クリーンルームの空気にさらされることにより、微小な異物が付着する可能性がある。したがって半導体受け渡し装置3は、ファンフィルタユニット(FFU)13を備え、ファンでクリーンルームの空気を吸い込み、フィルターを通して空気を清浄化し、その清浄な空気を均一に下向きに流すことにより、局所的に清浄な環境を作っている。半導体受け渡し装置3においては、ポッドを開いた時から清浄な空気に半導体ウェハが触れるようにした上で、ロボットハンドでウェハを取り出し、本体装置にウェハを受け渡す。
【0019】
測長SEMは、走査型電子顕微鏡を用いて半導体ウェハを撮像し、その画像からウェハに形成した回路の線幅などを測定することにより、回路を検査する。
図1においては、電子顕微鏡18によってこれを実施する。電子顕微鏡18を用いるにあたっては、電子線の軌道を空気が妨げないようにする必要があるので、撮像対象である試料を高真空な環境に置く。この目的のために、電子顕微鏡18と一体となって試料室7があり、内部を高真空に保っている。試料室7の中にステージ装置を設置し、そのステージが半導体ウェハを搭載して任意の場所に移動することにより、電子顕微鏡18が撮像する箇所を任意に選ぶことができる。近年の半導体回路は、最小線幅をナノメートルオーダーで構成しており、それを検査するにあたっては、検査対象に応じた倍率で撮像する必要があり、倍率を上げるほど撮像範囲は狭くなる。一方、半導体ウェハを位置決めしているステージ装置において温度変化が生じた場合、ステージ装置を固定していても、ステージの熱変形により、ウェハの位置を動かしてしまう。このとき測長SEMが非常に狭い範囲の撮像をしていると、その撮像した場所がウェハ上のどこなのか、分からなくなることが起こりえる。したがって、ステージ装置は温度変化が起きないように細心の注意を払う必要があり、そのためには、ステージ装置を収めている試料室7が温度変化を起こさないようにする必要があり、そのために試料室7を取り囲む空気の温度変化をなるべく小さくする必要がある。
【0020】
試料室7の内部は高真空に保つ必要があるが、そこに投入する半導体ウェハは大気圧の環境で運ばれてくるので、それを介在するために、試料室用半導体出し入れ装置19が存在する。試料室用半導体出し入れ装置19は、大気圧の開放状態で、半導体受け渡し装置3からウェハを受け取り、出入口を閉じてから真空引きを実施し、試料室7の真空度に近付いてから、その間にあるシャッターを開き、ウェハを出し入れ装置19から、試料室7の中にあるステージ装置に移し替える。
【0021】
半導体ウェハをポッドから取り出して、試料室用半導体出し入れ装置19の中に収めるまので間に、微小な異物が付着することを避けるためには、その間、ウェハが清浄な空気に囲まれている必要がある。そこで、半導体受け渡し装置3のFFU13が供給する清浄な空気は、半導体受け渡し装置3の中で下降流を形成する他に、半導体受け渡し部4を通じて、本体カバー2の中に向かって空気を流すようにする。このような流れを作るには、半導体受け渡し部4において、半導体受け渡し装置3の側の圧力を、本体カバー2の内部の圧力より高くする必要がある。このための手段としては、FFU13から供給される空気が、半導体受け渡し装置3の下部で外に出ていく箇所において、流れに抵抗が生じるように構成する。具体的には、例えば半導体受け渡し装置3の排気口の流路面積を絞る。このようにして、半導体受け渡し装置3の内部のウェハを取り扱う空間は、外部に対して陽圧にする。
【0022】
本体カバー2の中には、本体装置(電子顕微鏡18、試料室7、出し入れ装置19)の他に、これを駆動するための様々な制御機器が配置される。一部の制御機器8は、試料室7の下側空間に配置し、また別の一部の制御機器10は、試料室7の背面側の空間に配置する。これらの制御機器は、消費する電力に応じて発熱が生じるが、その熱を逃がす上では、各制御機器は間をあけて配置するのがよい。しかし、そのように設計すると、半導体処理装置が大型化し、クリーンルーム内を占有する敷地面積が増える。クリーンルームは、清浄で、温度・湿度を管理した空気を絶え間なく供給する必要があり、大きな運転コストがかかる。したがって、クリーンルーム内を占有する敷地面積が増えると、それだけ大きな運転コストがかかることを意味する。よって半導体処理装置1は、できるだけの小型化が求められるが、機器を高密度に実装する程、熱がこもりやすくなり、それによる温度上昇が精密動作の妨げとなるので、相反する課題を持つ。
【0023】
高密度実装をした装置において、十分な放熱をするためには、強力なファンによって換気することが有効である。しかし、半導体処理装置においては、ファンの騒音も問題になる。すなわち、ファン騒音は、それが発する音波によって装置表面に圧力変動を与え、その変動圧力によって装置が揺さぶられて振動が起き、ナノメートルオーダーの精密動作に対して、振動の影響が表れる。よって、本体カバー2の中をファンで換気するにあたっても、より低出力なファンで必要十分な効果を得る必要がある。これらの課題を解決するため、本体カバー2に施した構造について、
図2Aを用いて詳細に説明する。
【0024】
図2Aは、本体カバー2のみを取り上げ、その内部を開放して表示する図である。効率的な換気のための構成として、本体カバー2の背面側上部に排気ファン11を設置し、排気ダクト12を通じて下向きに排気する。制御機器の発熱によって温められた空気は、自然対流によって上へと流れていくので、排気ファン11を上部に設置することは、より温まった空気を排出することにつながる。排気ファン11が、あまり温度上昇していない空気を排出すると、温度上昇した空気が別の箇所に溜まることになり、温度上昇抑制効果が低下する。したがって、本体カバー2の中で、背面側上部に排気ファン11を設置することは、最も温度上昇した空気をファンが吸い込んで排気することにつながり、ファンの効果的な使用方法となる。
【0025】
本体カバー2内における上部領域とは、例えば高さ方向において中心よりも上側の領域であり、下部領域とは、例えば高さ方向において中心よりも下側の領域である。ただし厳密にこれに限るものではなく、上部に配置する機器と下部に配置する機器との間の相対的位置関係が上下になっていれば、その限りにおいて同様の効果を発揮することができる。以下の説明においても同様である。
【0026】
排気ファン11としては、プロペラ型の軸流ファンを横に複数並べて使用している。軸流ファンは、他の形式のファンに比べて、低圧で大流量を出すのに適している。軸流ファンがより多くの空気を流すには、羽根の回転数を増やすか、羽根の直径を大きくする必要がある。しかし、羽根の回転数を増すと、風切り音が増大し、騒音が大きくなる。また羽根の直径を大きくすると、ファンが大型し、装置全体のサイズが増えてしまう。そこで、装置サイズを増やさずに、低騒音のファンで流量を稼ぐには、軸流ファンを横に並べ、ファンの数を増やして流量を確保することが適している。
【0027】
排気ダクト12の内部には、金属のハニカム構造を持った板24を設置し、空気を通しつつ、電磁波の侵入を抑えている。ハニカム構造は、断面形状が六角形の流路を多数形成することができ、かつ、ハニカムの壁を薄く作成すれば、流路面積の低下を抑えることができるので、空気を流すための支障を少なくできる。一方、電磁波が小口径の管路を通過する際、管路長/管路径に比例した減衰を期待できるので、ハニカム構造の板を設置することによって、空気の流れの圧力損失を抑えて、侵入する電磁波の減衰を大きくとることが可能になる。
【0028】
効率的な換気のための次の構成として、本体カバー2の内部に仕切板9を設ける。本体装置より背面側に制御機器を設置した場合、それらの排熱によって温度上昇した空気は自然対流で上へと向かう。しかし、個別の機器の中には自身でファンを持つものもあり、一様な気流を形成するのは困難であり、様々な方向に流れる力が働くことにより、温まった空気の拡散が起きやすい。そこで、特に空気が温まる上側の空間を、制御機器用の空間と、本体装置用の空間とに仕切ることにより、温まった空気が、本体装置の周囲に拡散することを防ぐことができる。一方、空気温度上昇そのものを抑制するためには、小さな駆動力で、より多くの空気の流れを作り出すのが効果的であるので、仕切板9は上側空間のみに設置し、下側空間は空気が流れやすくする。
【0029】
効率的な換気のための次の構成として、本体カバー2の前面に、上部吸気口5と下部吸気口6を設ける。本体カバー2内の空気を換気するにあたり、空気の供給源として、1番目は半導体受け渡し装置3から半導体受け渡し部4を通じて流入する空気を利用する。その上で、本体カバー2に開口を設け、外部の空気を吸い込めるようにすると、より多くの換気流量を実現できる。ただし、本体カバー2に開口を設けると、そこから電磁ノイズや騒音が侵入しやすくなる。その対策して、開口部は、小口径の穴を多数設ける構造にする。これにより、電磁ノイズの通過が多少弱まる。その上で、半導体受け渡し装置3の裏側にあたる箇所に吸気口5、6、22、23を設けることにより、電磁ノイズや騒音の侵入を抑える。すなわち、正面からやって来る電磁ノイズや騒音は、半導体受け渡し装置3に反射され、直接の侵入を避ける。側面からやってくる電磁ノイズや騒音に対しても、開口面が側面を向いていないので、直接の侵入を避けることができる。その上で、吸気口5、6から流入した空気は、本体カバー2に入った後、水平方向に流れることができる。
【0030】
例えば、吸気口5がない場合、半導体受け渡し部4から流入した空気は、
図1の図面上、右向きに流入するものの、試料室7の上に大きな空間があるので、その空間に反時計周りの流れを生み出してしまうことが、本発明者の研究によって判明した。このような大きな渦が存在すると、制御機器の排熱によって温まった空気を大きく拡散させることになり、本体装置周囲の空気温度もある程度上昇させてしまう。一方、吸気口5が存在すると、上述の反時計周りの渦の上側に右向きの流れを与えることになり、反時計周りの渦を打ち消すことができる。この渦がなくなると、空気の流れは水平化し、本体装置周囲の空気温度上昇が避けられる。特に、試料室7を取り囲む空気の温度は精密動作にとって重要なので、このような空気の流れによって、装置内部での半導体処理の高精度化に貢献する。下部吸気口6から流入した空気は、試料室7の下側に配置した制御機器8の冷却に貢献し、かつ、制御機器8の排熱で温度上昇した空気が試料室7の底面に到達することを防止し、試料室7の周囲温度安定化に貢献する。
【0031】
図2Aに示す通り、本体カバー2の前面の左右2辺にさらに、小口径の穴を多数設けた吸気口22、23を設けることも効果的である。すなわち、左右の吸気口であっても、半導体受け渡し装置3の裏になることは共通しているので、吸気口5、6と同様に、電磁ノイズや騒音の侵入を抑えて、換気のための空気を吸い込み易くする効果がある。また、本体カバー2の前面に設置する吸気口を、中央部よりもより縁の方に設置することにより、空気の流入に対する圧力損失が減り、より低出力の排気ファンで、より大きな換気流量を実現することに貢献する。
【0032】
図1を再び参照する。筐体14の中に発熱体15を備えた制御機器を積層して高密度に実装した上で、各筐体に排気ファン16を設置し、その積層される排気ファンを排気ダクト17で連結し、本体カバー2の外部に対して、下向きに排気する。このような構成をとることにより、排気ファン16によって、発熱体15を冷却できると同時に、排気ファン16の排出流れを利用して、本体カバー2から外部に排気することが可能になり、本体カバー内の換気流量を増やすことができる。また、本体カバー前面の下部吸気口6から流入した空気の流れを利用して、制御機器8の冷却と、発熱体15の冷却を連続して実施すると同時に、本体カバー2の中の空気の流れを水平に保つことに貢献する。すなわち、流れを水平に保つことは、大きな渦の発生を防ぐことにつながり、試料室7を常に温度上昇していない空気で包むことが可能になる。
【0033】
図2Bは、排気ダクト12と17の位置関係を示す模式図である。排気ダクト12と17は、本体カバー2の背面部に配置され、水平方向において互いに対してシフトして配置されている。すなわち制御機器10は本体カバー2内部の上部空間の左右いずれか一方側に配置され、筐体14は本体カバー2内部の下部空間の左右方向の他方側に配置されている。排気ダクト12と17もこの配置関係にしたがって配置されている。これにより、排気ダクト12と17を一連の1つの排気ダクトとして構成する必要がなくなるので、各排気ダクトを短く形成することにより送風抵抗を抑制し、排気ファンを小型化することができる。さらに、排気ダクト12と17を水平方向にずらすことにより、排気ダクト12の排気口を排気ダクト17によって覆わないようにし、排気口を広く確保できる。排気ダクト12の排気口と排気ダクト17が水平方向において一部重なってもよいが、完全に重なると排気口が狭くなるので望ましくない。
【0034】
排気ファンを備えた筐体を積層して高密度実装する構造の具体例について
図3、4、5を用いて説明する。本実施形態においては、筐体内に複数のスイッチング電源を内蔵した電源ユニットを例にして説明する。
【0035】
図3は、筐体14の外形図である。記載の便宜上、複数の部分に分かれている構成要素については、アルファベットの添え字によって各構成要素を区別する。筐体14aに排気ファン16a、筐体14bに排気ファン16b、筐体14cに排気ファン16c、筐体14dに排気ファン16d、筐体14eに排気ファン16eを取り付けている。これら5コの排気ファンを排気ダクト17で接続し、下方へ向けて外部に排気する。
【0036】
図4は、筐体14内部の構造を開放して示した図である。ここでは発熱体15の例としてスイッチング電源15を例示する。筐体14aの中に発熱体にあたるスイッチング電源15aを収納している。排気ダクト17は、排気ファン16と接続する箇所と出口のみが開口しており、残りは閉じた構造となっている。さらに、排気ダクト17の出口には、電磁ノイズの侵入を低減するためのハニカムを設置している。本実施形態の排気ダクトにおいては、5個のファンの合計流量が排出されるので、高流速化にともなう圧力損失が生じやすい。圧力損失が大きくなると、それに打ち勝つために高出力のファンが必要になり、騒音の発生が増える。したがって、なるべく大きな流路断面積と出口開口を設けて、圧力損失を低減し、低出力のファンで放熱能力が成立するように設計することが、半導体処理装置にとって好ましい。一方、排気ダクト17の出口開口面積を大きくすると、外部からの電磁ノイズが侵入しやすくなる。そこで、金属でハニカム状の断面構造をもった板を製作し、排気ダクト17の出口開口部に設置している。このハニカム構造の板を、水平より傾斜して設置することにより、水平設置の場合よりも大きな流路面積を確保することが可能になる。
【0037】
排気ダクト12における板24を傾斜して配置することもできる。ただしその場合、排気ダクト12からの排気が真下からやや横向きに向かって排出されることになる。そうすると半導体処理装置1に隣接する他装置に対して排気が当たる可能性が増すので、望ましくないことがある。かかる場合は、板24は傾斜させないことが望ましい。他方で排気ダクト17は下側領域に配置されているので、排気が横向きに向かって排出されても他装置に対して与える影響は少ないと考えられる。
【0038】
図5は、本実施形態における電源ユニットの構成を示した図である。本構成においては、筐体14の中に、4コのスイッチング電源を並べて配置している。このスイッチング電源は、他の制御機器の直流電源を担う。半導体処理装置1が数多くの制御機器を使用するにともない、そのため電源も数多く必要になる。電源装置を別置きにすることもできるが、その場合、電源を供給するための大量のケーブルが必要になる。トランスを用いた電源に比べて、スイッチング電源を用いると、小型化と低発熱化が可能になる。したがって、多数のスイッチング電源を筐体内に実装し、かつ、そのような筐体を積層して配置することにより、半導体処理装置1の本体カバー2内に全ての制御機器の電源を設置すると、別置き電源の場合に必要であった大量のケーブルの削減が可能になる。一方で、電源装置は、扱う電力が大きいので発熱が大きくなりやすく、スイッチング電源化しても、それなりの発熱は生じる。そこで、複数のスイッチング電源を筐体内に配置し、比較的大口径のファンで冷却用空気を供給すると、効率よくスイッチング電源を冷却することができる。
【0039】
この際の冷却構造として、筐体14の中の空気を吐き出す形の排気ファン16を設置し、その反対の面に吸気口21を設ける。本実施形態においては、吸気口21を通過する電磁ノイズを少しでも減らすため、細い長穴を多数設けて吸気口にしている。その他に、小口径の丸穴を多数設けて吸気口を形成することも可能である。
【0040】
スイッチング電源15は、直方体の外形形状の最も長い辺を、吸気口から排気ファンへの方向と平行に設置し、次に長い辺を上下方向に設置する。その上で、最も短い辺の方向に、スイッチング電源15を並べていく。排気ファン16の動作によって筐体14の内部は負圧になり、それによって吸気口21から空気が吸い込まれる。この時、吸気口21の開口面に垂直に空気が流入するので、各スイッチング電源に流れが当たるように吸気口を設置することができる。これにより、必要最小限の出力のファンで多数のスイッチングを冷却し、かつ、本体カバー内の換気も同時に実施することが可能になる。
【0041】
スイッチング電源15を以上のように配置することにより、筐体14内において複数のスイッチング電源15を高密度に配置するとともに、気流とスイッチング電源15が接触する面積を広く確保することによって効率的に冷却することができる。
【0042】
<本発明の変形例について>
以上の実施形態において、半導体を検査または加工する半導体処理装置1の本体装置の例として測長SEMを挙げたが、本発明はその他の半導体処理装置においても適用することができる。例えば露光装置などのような半導体処理装置において、本発明と同様に本体装置を本体カバー2によって覆うとともに、本体カバー2内の排気を効率化して半導体に対して与える影響を緩和することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体処理装置
2 本体カバー
3 半導体受け渡し装置
4 半導体受け渡し部
5 上部吸気口
6 下部吸気口
7 試料室
8 制御機器(下側)
9 仕切板
10 制御機器(背面側)
11 排気ファン
12 排気ダクト
13 ファンフィルタユニット(FFU)
14 制御機器筐体
15 発熱体
16 排気ファン
17 排気ダクト
18 電子顕微鏡
19 試料室用半導体出し入れ装置
20 電背面下部排気ダクト用ハニカム
21 吸気口
22 吸気口
23 吸気口
24 板