(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045217
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】酸性排ガスの処理方法、酸性排ガスの処理設備、及び、焼却施設
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20220311BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20220311BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20220311BHJP
B01D 53/75 20060101ALI20220311BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20220311BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20220311BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20220311BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220311BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20220311BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20220311BHJP
C01F 7/00 20220101ALI20220311BHJP
B01J 23/34 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B01D53/50 100
B01D53/56 ZAB
B01D53/96
B01D53/75
B01D53/82
B01D53/86 222
B01J20/08 C
B01J20/34 F
B01D53/68 100
F23J15/00 A
F23J15/00 Z
F23J15/00 B
C01F7/00 C
B01J23/34 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150789
(22)【出願日】2020-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】韓 田野
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 敏明
(72)【発明者】
【氏名】亀田 知人
【テーマコード(参考)】
3K070
4D002
4D148
4G066
4G076
4G169
【Fターム(参考)】
3K070DA02
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4G169CA07
4G169CA13
4G169DA06
4G169EC22X
4G169EC22Y
(57)【要約】
【課題】酸性排ガス中の、窒素酸化物を含む酸性ガスに対して高い処理能力を有する酸性排ガスの処理方法、酸性排ガスの処理設備、及び、焼却施設を提供する。
【解決手段】焼却炉から発生する酸性排ガスの処理方法であって、以下の第1~第3の工程を含む、酸性排ガスの処理方法。
焼却炉から発生する酸性排ガスをアニオン型層状複水酸化物に接触させて、前記酸性排ガス中のSO
xを除去する第1の工程
前記第1の工程を経た酸性排ガスを遷移金属酸化物に接触させて、前記酸性排ガス中のNOをNO
2に酸化する第2の工程
前記第2の工程を経た酸性排ガス中のNO
xを除去する第3の工程
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉から発生する酸性排ガスの処理方法であって、以下の第1~第3の工程を含む、酸性排ガスの処理方法。
焼却炉から発生する酸性排ガスをアニオン型層状複水酸化物に接触させて、前記酸性排ガス中の硫黄酸化物を除去する第1の工程
前記第1の工程を経た酸性排ガスを遷移金属酸化物に接触させて、前記酸性排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に変換する第2の工程
前記第2の工程を経た酸性排ガス中の窒素酸化物を除去する第3の工程
【請求項2】
前記第3の工程において、前記第2の工程を経た酸性排ガス中の窒素酸化物及び塩化水素を除去する、請求項1に記載の酸性排ガスの処理方法。
【請求項3】
前記アニオン型層状複水酸化物がCO3型Mg-Al層状複水酸化物である、請求項1又は2に記載の酸性排ガスの処理方法。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物がγ型二酸化マンガンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理方法。
【請求項5】
前記第3の工程において、前記第2の工程を経た酸性排ガスを、アニオン型層状複水酸化物に接触させて酸性排ガス中の窒素酸化物を除去する、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理方法。
【請求項6】
前記第1の工程は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路のうちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、前記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生する、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理方法。
【請求項7】
前記第3の工程は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路うちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、前記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生する、請求項1~6のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理方法を行う手段を有する、酸性排ガスの処理設備。
【請求項9】
前記第1の工程に用いられる前記アニオン型層状複水酸化物を収容する第1収容部と、
前記第2の工程に用いられる前記遷移金属酸化物を収容する第2収容部と、
前記第3の工程に用いられる前記アニオン型層状複水酸化物を収容する第3収容部と、
焼却炉から発生する酸性排ガスを前記第1収容部に導き、前記第1収容部から排出されるガスを前記第2収容部に導き、前記第2収容部から排出されるガスを前記第3収容部に導くための配管と、を備える、請求項8に記載の酸性排ガスの処理設備。
【請求項10】
前記第1収容部は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第1の容器と第2の容器とを含み、
焼却炉から発生する酸性排ガスを、前記第1の容器及び第2の容器に選択的に導くための第1の切替え弁を更に備える、請求項9に記載の酸性排ガスの処理設備。
【請求項11】
前記第2収容部より上流側に配置された、前記第1収容部から排出される酸性排ガス中の硫黄酸化物の濃度を連続的に検知する第1の濃度検知装置を更に備える、請求項9又は10に記載の酸性排ガスの処理設備。
【請求項12】
前記第3収容部は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第3の容器及び第4の容器を含み、
前記第2収容部から排出されるガスを、前記第3の容器及び第4の容器に選択的に導くための第2の切替え弁を更に備える、請求項9~11のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理設備。
【請求項13】
焼却炉と、請求項8~12のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理設備と、を有する焼却施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉から発生する酸性排ガスの処理方法、酸性排ガスの処理設備、及び、焼却施設に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼施設において焼却炉から排出される燃焼排ガスには、塩化水素、二酸化硫黄等の硫黄酸化物(SOX)、一酸化窒素や二酸化窒素等の窒素酸化物(NOX)などの有害な酸性物質である酸性ガスが含まれている。このため、燃焼排ガスを大気中に放出するのに先立って、これらの酸性ガスを除去する必要がある。以下、酸性ガスを含む燃焼排ガスを酸性排ガスという。
【0003】
特許文献1には、燃焼施設で発生する酸性排ガスを、層状複水酸化物を含む固体状の酸性排ガス処理剤に接触させることにより、塩化水素、SOX及びNOX等の酸性物質を同時に処理する酸性排ガスの処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている酸性排ガスの処理方法では、層状複水酸化物が塩化水素やSOxに比べて一酸化窒素を取り込みにくいことが原因で、酸性排ガス中のNOx成分の多くを占める一酸化窒素に対して、十分な処理性能を発揮できないという課題があった。
そこで、一酸化窒素を酸化触媒によって酸化して二酸化窒素に変換した後に、特許文献1に記載されている酸性排ガスの処理方法のように、層状複水酸化物を含む酸性排ガス処理剤に排ガスを接触させることも考えられるが、酸化触媒と酸性排ガス中の成分とが反応して反応物を生成し、酸化触媒の酸化触媒効果を損ねる恐れがあった。酸化触媒の酸化触媒効果が損なわれると、酸性排ガス中の一酸化窒素に対する処理性能が低下するという問題を生じる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、酸性排ガス中の、窒素酸化物を含む酸性ガスに対して高い処理能力を有する酸性排ガスの処理方法、酸性排ガスの処理設備、及び、焼却施設を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、層状複水酸化物で酸性排ガス中のSOxを除去した後に、遷移金属酸化物によって一酸化窒素を酸化して二酸化窒素に変換することで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[13]を提供するものである。
[1]焼却炉から発生する酸性排ガスの処理方法であって、以下の第1~第3の工程を含む、酸性排ガスの処理方法。
焼却炉から発生する酸性排ガスをアニオン型層状複水酸化物に接触させて、前記酸性排ガス中の硫黄酸化物を除去する第1の工程
前記第1の工程を経た酸性排ガスを遷移金属酸化物に接触させて、前記酸性排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に変換する第2の工程
前記第2の工程を経た酸性排ガス中の窒素酸化物を除去する第3の工程
[2]前記第3の工程において、前記第2の工程を経た酸性排ガス中の窒素酸化物及び塩化水素を除去する、[1]に記載の酸性排ガスの処理方法。
[3]前記アニオン型層状複水酸化物がCO3型Mg-Al層状複水酸化物である、[1]又は[2]に記載の酸性排ガスの処理方法。
[4]前記遷移金属酸化物がγ型二酸化マンガンである、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の酸性排ガスの処理方法。
[5]前記第3の工程において、前記第2の工程を経た酸性排ガスを、アニオン型層状複水酸化物に接触させて酸性排ガス中の窒素酸化物を除去する、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の酸性排ガスの処理方法。
[6]前記第1の工程は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路のうちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、前記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生する、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の酸性排ガスの処理方法。
[7]前記第3の工程は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路のうちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、前記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生する、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の酸性排ガスの処理方法。
[8]上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の酸性排ガスの処理方法を行う手段を有する、酸性排ガスの処理設備。
[9]前記第1の工程に用いられる前記アニオン型層状複水酸化物を収容する第1収容部と、
前記第2の工程に用いられる前記遷移金属酸化物を収容する第2収容部と、
前記第3の工程に用いられる前記アニオン型層状複水酸化物を収容する第3収容部と、
焼却炉から発生する酸性排ガスを前記第1収容部に導き、前記第1収容部から排出されるガスを前記第2収容部に導き、前記第2収容部から排出されるガスを前記第3収容部に導くための配管と、を備える、上記[8]に記載の酸性排ガスの処理設備。
[10]前記第1収容部は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第1の容器と第2の容器とを含み、
焼却炉から発生する酸性排ガスを、前記第1の容器及び第2の容器に選択的に導くための第1の切替え弁を更に備える、上記[9]に記載の酸性排ガスの処理設備。
[11]前記第2収容部より上流側に配置された、前記第1収容部から排出される酸性排ガス中の硫黄酸化物の濃度を連続的に検知する第1の濃度検知装置を更に備える、上記[9]又は[10]に記載の酸性排ガスの処理設備。
[12]前記第3収容部は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第3の容器及び第4の容器を含み、
前記第2収容部から排出されるガスを、前記第3の容器及び第4の容器に選択的に導くための第2の切替え弁を更に備える、上記[9]~[11]のいずれか一つに記載の酸性排ガスの処理設備。
[13]焼却炉と、上記[8]~[12]のいずれか一つに記載の酸性排ガスの処理設備と、を有する焼却施設。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸性排ガス中の、窒素酸化物を含む酸性ガスに対して高い処理能力を有する酸性排ガスの処理方法、酸性排ガスの処理設備、及び、焼却施設を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る酸性排ガスの処理設備及び焼却施設の一例を示す模式的な構成図である。
【
図2】上記酸性排ガスの処理設備の制御回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る酸性排ガスの処理方法、酸性排ガスの処理設備、及び、焼却施設について説明する。
【0011】
[酸性排ガスの処理方法]
本発明の実施形態に係る酸性排ガスの処理方法は、焼却炉から発生する酸性排ガスの処理方法であって、以下の第1~第3の工程を含む。
・第1の工程:焼却炉から発生する酸性排ガスをアニオン型層状複水酸化物に接触させて、上記酸性排ガス中の硫黄酸化物を除去する。
・第2の工程:上記第1の工程を経た酸性排ガスを遷移金属酸化物に接触させて、上記酸性排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に変換する。
・第3の工程:上記第2の工程を経た酸性排ガス中の窒素酸化物を除去する。
【0012】
上記酸性排ガスの処理方法においては、まず、第1の工程において、焼却炉から発生する酸性排ガスをアニオン型層状複水酸化物に接触させることによって、酸性排ガス中の酸性ガス成分のうち硫黄酸化物(SOx)が除去される。次に、第2の工程において、第1の工程を経た後の酸性排ガスを遷移金属酸化物に接触させ、酸性排ガス中の酸性ガス成分のうち一酸化窒素(NO)を、遷移金属酸化物の酸化触媒作用によって酸化して二酸化窒素(NO2)に変換する。その後、第3の工程において、第2の工程を経た後の酸性排ガスをアニオン型層状複水酸化物に接触させ、NO2を除去する。
上記酸性排ガスの処理方法は、酸性排ガス中の、窒素酸化物(NOx)を含む酸性ガスに対して高い処理能力を有する。この効果が得られる理由としては、これに限るものではないが、以下の理由が考えられる。
【0013】
上記酸性排ガスの処理方法においては、第1の工程においてSOxが除去されるとともに、第2の工程で遷移金属酸化物の酸化触媒作用により、酸性排ガス中のNOx成分の多くを占めるNOを十分に酸化してNO2に変換することができる。生成したNO2は第3の工程で除去される。こうして、高い効率でSOx及びNOxを除去することができる。また、第1の工程においてSOxが除去された後に、第2の工程において、酸性排ガスが遷移金属酸化物に接触するので、遷移金属酸化物とSOxとの反応による被毒作用が抑制される。このため、当該遷移金属酸化物の酸化触媒作用が損なわれることが防止され、酸化触媒効果を保つことができる。加えて、酸性排ガス中の塩化水素の少なくとも一部が第1の工程で除去され、第3の工程でアニオン型層状複水酸化物を用いている場合は、第3の工程においても塩化水素が除去される。
こうして、酸性排ガスからSOx、NOx及び塩化水素を十分除去することができ、しかも、遷移金属酸化物の酸化触媒効果を維持することができ、延いては、酸性排ガス中の、窒素酸化物を含む酸性ガスに対して高い処理能力を有する酸性排ガスの処理方法とすることができる。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0014】
<第1の工程>
第1の工程においては、焼却炉から発生する酸性排ガスをアニオン型層状複水酸化物に接触させて、酸性排ガス中のSOxを除去する。
アニオン型層状複水酸化物は、層状の水酸化物基本層と、層間アニオン及び層間水からなる中間層が交互に積層した構造を有しており、SOxを硫酸イオンの形で層間アニオンと交換することによってこの成分を取り込むため、酸性排ガスからSOxを除去することができる。また、アニオン型層状複水酸化物は、塩素イオンの形で層間アニオンと交換することによって塩化水素も取り込むため、第1の工程において、酸性排ガス中の塩化水素の少なくとも一部も除去される。
【0015】
(アニオン型層状複水酸化物)
第1の工程で酸性排ガス処理剤として用いられるアニオン型層状複水酸化物としては、CO3型Mg-Al層状複水酸化物、SO4型Mg-Al層状複水酸化物、NO3型Mg-Al層状複水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、酸性排ガス処理剤としての対象アニオンの観点から、CO3型Mg-Al層状複水酸化物が好ましい。
CO3型Mg-Al層状複水酸化物は、水酸化物基本層([Mg2+
1-xAl3+
x(OH)2])と、層間炭酸イオン及び層間水から構成される中間層([(CO3
2-)x/2・yH2O])とが交互に積層した構造を有しているナノ粒子である。水酸化物基本層がx相当分の正電荷を持ち、これを補償する負電荷を持つ陰イオンとして炭酸イオンが中間層に存在している不定比化合物である。
CO3型Mg-Al層状複水酸化物に代表されるアニオン型層状複水酸化物は、水酸化物基本層を保持したまま、例えば、塩化水素、二酸化硫黄(SO2)、NO2等の酸性ガスを層間に取り込むことができる。このため、上記の酸性ガスを除去する酸性排ガス処理に好適に用いることができる。但し、アニオン型層状複水酸化物は、塩化水素、SO2、NO2に比べると、層間水へのNOの溶解性が低いため、これらの酸性成分に比べてNOを取り込みにくい。
【0016】
なお、CO3型Mg-Al層状複水酸化物が酸性排ガス処理に用いられる際、CO3型Mg-Al層状複水酸化物以外の層状複水酸化物、あるいはまた、例えば、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム、重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、水酸化ドロマイト、軽焼ドロマイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等の層状複水酸化物以外の薬剤が併用されてもよい。ただし、CO3型Mg-Al層状複水酸化物を効率的に再生して再利用する観点から、他の層状複水酸化物や薬剤と混在させないことが好ましい。
【0017】
CO3型Mg-Al層状複水酸化物は、ハイドロタルサイトとして、天然に産出する粘土鉱物も存在するが、通常、合成粉末が用いられる。合成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、前記特許文献1に記載の方法)を用いることができる。
例えば、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)と硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)をMg/Al=2/1(モル比)で混合した水溶液を、pH10.5に保持しながら、炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液に滴下することにより、CO3型Mg-Al層状複水酸化物を得ることができる。
【0018】
(アニオン型層状複水酸化物の再生)
酸性排ガス処理に使用したCO3型Mg-Al層状複水酸化物は、前記酸性ガスが層間に取り込まれると、層間炭酸イオンが、塩素イオンや硫酸イオン、硝酸イオン等の酸性排ガス由来の他のアニオンに交換される。このようにして酸性排ガス由来のアニオンによってアニオン交換されたMg-Al層状複水酸化物は、酸性排ガスを更に除去する能力を有しない。このため、再度、アニオン交換によりCO3型Mg-Al層状複水酸化物に再生して、再利用に供される。
【0019】
上記第1の工程においては、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路のうちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、前記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生することが好ましい。
【0020】
酸性排ガス処理の使用済み層状複水酸化物である、酸性排ガス由来のアニオンによってアニオン交換されたMg-Al層状複水酸化物は、アニオン化合物を用いて再生することができる。例えば、水分が多量に存在する湿潤環境で、炭酸ガスや炭酸塩と接触させてイオン交換反応を行わせることにより再生することができる。また、水及び濃度5vol%以上の二酸化炭素を含む70℃以上の混合気体を用いてアニオン交換することにより、CO3型Mg-Al層状複水酸化物に再生することができる。炭酸水溶液を用いて、使用済み層状複水酸化物を再生してもよい。
上記の気体接触による再生方法は、液体である炭酸水溶液を用いる方法に比べて、CO3型Mg-Al層状複水酸化物への再生手段として効率的である。
【0021】
<第2の工程>
第2の工程においては、上記の第1の工程を経た酸性排ガスを遷移金属酸化物に接触させて、酸性排ガス中のNOをNO2に酸化する。なお、第2の工程で生成されるNO2は後述する第3の工程において除去される。
【0022】
(遷移金属酸化物)
第2の工程において用いられる遷移金属酸化物は、酸性ガスに対して酸化触媒として作用する。これにより、酸性排ガスに含まれるNOが酸化されてNO2に変換される。
上記遷移金属酸化物としては、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化バナジウム、二酸化チタン、酸化銅等が挙げられる。この中でも、酸化触媒効果の観点から、二酸化マンガン及び酸化バナジウムが好ましく、コストや入手容易性の観点から、二酸化マンガンが更に好ましく、NOからNO2への転化率の観点から、γ型二酸化マンガンが特に好ましい。
遷移金属酸化物は、NOとO2との反応を活性化することにより、酸性排ガス中のNOを酸化してNO2に変換する。
遷移金属酸化物は、硫黄酸化物等の特定の被毒作用を持つ物質に接触しない限り、酸性触媒作用を継続して発揮する。
【0023】
<第3の工程>
第3の工程においては、第2の工程を経た酸性排ガス中のNOxを除去する。
第3の工程においては、第2の工程を経た酸性排ガスを、アニオン型層状複水酸化物に接触させて酸性排ガス中のNOxを除去することが好ましい。
アニオン型層状複水酸化物としては、上記第1の工程で用いたものと同様のものを用いることができる。
第3の工程において、アニオン型層状複水酸化物を第3の工程における酸性排ガス処理剤として用いることにより、上記第2の工程を経た酸性排ガス中のNOxに加えて塩化水素も除去することができる。
【0024】
第3の工程においては、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路のうちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、上記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生することが好ましい。
このように構成することで、酸性排ガスの処理を継続して行うことができ、十分処理されていないガスが排出されたり、焼却を停止したりすることを回避することができる。
アニオン型層状複水酸化物の再生方法は、上記第1の工程で述べた方法と同様のものを採用することができる。
【0025】
[酸性排ガスの処理設備]
本発明の実施形態に係る酸性排ガスの処理設備は、上記の酸性排ガスの処理方法を行う手段を有する。
上記酸性排ガスの処理設備において、上述した第1の工程を実施する手段としては、例えば、アニオン型層状複水酸化物を収容する容器を含む第1収容部と、当該第1収容部に接続し、焼却炉から発生する酸性排ガスを上記第1収容部に導くための配管と、を備えるユニットが挙げられる。以下、当該ユニットを「第1ユニット」と称する場合がある。
また、上述した第2の工程を実施する手段としては、例えば、遷移金属酸化物を収納した容器を含む第2収容部と、当該第2収容部に接続し、上記第1収容部から排出されるガスを上記第2収容部に導くための配管と、を備えるユニットが挙げられる。以下、当該ユニットを「第2ユニット」と称する場合がある。
更に、上述した第3の工程を実施する手段としては、例えば、アニオン型層状複水酸化物を収納した容器を含む第3収容部と、当該第3収容部に接続し、上記第2収容部から排出されるガスを上記第3収容部に導くための配管と、を備えるユニットが挙げられる。以下、当該ユニットを「第3ユニット」と称する場合がある。
上記各配管は処理対象のガスが流れる煙道を構成する。また、以下の説明において、「上流」「下流」「上流側」「下流側」「入口」「出口」という場合、処理対象のガスが流れる方向を基準にしている。
【0026】
上記酸性排ガスの処理設備においては、上記第1ユニット、第2ユニット、第3ユニットがこの順に直列的に接続された状態で設置される。そして、焼却炉から排出される酸性排ガスを第1ユニットの入口へ導入することにより、上述した第1、第2、及び第3の工程を実行する。これによって、上述したように、SOx、NOx、塩化水素等の酸性ガス成分が十分に除去される。そして、第3ユニットの出口から酸性ガス成分が除去された処理済みのガスを排出する。
【0027】
上記第1収容部は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第1の容器と第2の容器とを含み、焼却炉から発生する酸性排ガスを、上記第1の容器及び第2の容器に選択的に導くための第1の切替え弁を更に備えていてもよい。
上記第1の切換え弁を備えることにより、第1及び第2の容器のうち一方に収容されたアニオン型層状複水酸化物による酸性排ガスの処理能力が低下した場合に、第1の切換え弁によって、第1及び第2の容器のうち他方の容器へガスを導くことにより、当該容器内に収容された、酸性排ガスの処理能力が低下していないアニオン型層状複水酸化物によって、処理能力を低下させることなく、酸性排ガスの処理を継続することができる。
【0028】
上記酸性排ガスの処理設備は、上記第2収容部より上流側に配置された、上記第1収容部から排出される酸性排ガス中のSOxの濃度を連続的に検知する第1の濃度検知装置を更に備えていてもよい。
上記第1の濃度検知装置を備えることにより、第2収容部の遷移金属酸化物がSOxによって被毒する前に、第2収容部に導かれるガス中のSOxの濃度の上昇を把握することができる。そして、上述したように、第1の切換え弁を介して複数の容器にアニオン型層状複水酸化物を収容した構成を採用している場合は、第1の切換え弁によって、SOxの処理効率が低下した容器を、処理効率が低下していない別の容器に切り替えることで、処理能力を低下させることなく、酸性排ガスの処理を継続することができる。
【0029】
上記第3収容部についても、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第3の容器及び第4の容器を含むものとし、上記第2収容部から排出されるガスを、上記第3の容器及び第4の容器に選択的に導くための第2の切替え弁を更に備える構成としてもよい。
上記第2の切換え弁を備えることにより、第3及び第4の容器のうち一方の酸性排ガスの処理能力が低下した場合に、第2の切換え弁によって、第3及び第4の容器のうち他方の容器へガスを導くことにより、当該容器内に収容された、酸性排ガスの処理能力が低下していないアニオン型層状複水酸化物によって、処理能力を低下させることなく、酸性排ガスの処理を継続することができる。
【0030】
また、上記酸性排ガスの処理設備は、上記第3収容部より上流側に配置された、上記第2収容部から排出される酸性排ガス中のNOxの濃度を連続的に検知する第2の濃度検知装置を更に備えていてもよい。上記第2の濃度検知装置は、酸性排ガス中のNOx及び塩化水素の濃度を連続的に検知するものであることが好ましい。
第2の濃度検知装置を備えることにより、第3収容部より下流においてガス中のNOxの濃度の上昇を把握することができ、第2収容部の遷移金属酸化物がSOxによって被毒したことに起因して、第2ユニットにおけるNOの処理効率が低下している可能性があること、及び、第3収容部のアニオン型層状複水酸化物のNOxの処理能力が低下している可能性があることを検知することができる。そして、上述したように、第1の切換え弁を介して複数の容器にアニオン型層状複水酸化物を収容している場合は第1の切換え弁によって、SOxの処理効率が低下した容器を、処理効率が低下していない別の容器に切り替えたり、第2の切換え弁を介して複数の容器にアニオン型層状複水酸化物を収容している場合は、第2の切換え弁によって、NOxの処理効率が低下した容器を、処理効率が低下していない別の容器に切り替えたりすることで、処理能力を低下させることなく、酸性排ガスの処理を継続することができる。
【0031】
[焼却施設]
本発明の実施形態に係る焼却施設は、焼却炉と、上記酸性排ガスの処理設備とを有する。
上記酸性排ガス設備は、焼却炉の下流に設置され、焼却炉から排出される酸性排ガスを取込み、上述した第1の工程から第3の工程を実行することによって酸性排ガスを処理する。
【0032】
[酸性排ガスの処理設備を含む焼却施設の具体例]
以下、酸性排ガスの処理設備を含む焼却施設の具体例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る酸性排ガスの処理設備を含む焼却施設の一例を示す模式的な構成図である。本発明は図示した構成には制限されない。
【0033】
図1に示す燃焼施設100は、焼却炉11と、ボイラ12と、ガス冷却装置13と、集塵機14と、誘引通風気15及び煙突16と、これらの間を順次接続して煙道を形成する配管21~34とを備えている。
また、燃焼施設100は、酸性排ガス処理剤である層状複水酸化物を収納する第1収容部を構成する、第1の容器40a及び第2の容器40bと、酸化触媒である遷移金属酸化物を収納する第2収容部を構成する容器41と、酸性排ガス処理剤である層状複水酸化物を収納する第3収容部を構成する、第3の容器42a及び第4の容器42bとを含む酸性排ガスの処理設備80を備えている。
層状複水酸化物をそれぞれ収納している第1の容器40及び第2の容器41の上流側は、それぞれ配管25、26を介して第1の切換え弁45に接続されている。また、層状複水酸化物をそれぞれ収納した第3の容器42及び第4の容器43の上流側は、それぞれ配管30、31を介して第2の切換え弁46に接続されている。
【0034】
焼却施設100において、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第1の容器40a及び第2の容器40b、焼却炉11から発生する酸性排ガスを第1の容器40a及び第2の容器40bに導くための配管24~26、及び、配管24と配管25、26との間に設けられた第1の切換え弁45、により構成されるユニット50が、上述した第1の工程を実行する第1ユニットである。
また、遷移金属酸化物を収容した容器41、第1ユニット50から排出されるガスを容器41に導くための配管29、第1の容器40aと容器41とを接続する配管27、及び、第2の容器40bと容器41とを接続する配管28により構成されるユニット60が、上述した第2の工程を実行する第2ユニットである。
更に、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ収容する第3の容器42a及び第4の容器42b、第2ユニット60から排出されるガスを第3の容器42a及び第4の容器42bに導くための配管29~31、及び、配管29と配管30、31との間に設けられた第2の切換え弁46により構成されるユニット70が、上述した第3の工程を実行する第3ユニットである。
【0035】
上記第2収容部よりも上流側には、上記第1収容部から排出される酸性排ガス中のSOxの濃度を連続的に検知する第1の濃度検知装置が設けられている。
より具体的には、第2の容器41の、第1の容器40aに接続する配管27側の入口と、第2の容器40bに接続する配管28側の入口に、それぞれ第1の濃度検知装置S1a、S1bが設けられている。
また、第3収容部より下流には、第3収容部から排出されるガス中のNOx及び塩化水素の濃度を連続的に検知する第2の濃度検知装置が設けられている。
より具体的には、誘因通風機15の、第3の容器42aに接続する配管32側の入口と、第4の容器42bに接続する配管33側の入口に、それぞれ第2の濃度検知装置S2a、S2bが設けられている。
第1の切換え弁45及び第2の切換え弁46は、第1濃度検知装置S1a、S1b及び第2濃度検知装置S2a、S2bからの出力に基づいて、図示しない制御装置によって制御される。
【0036】
図2は、酸性排ガスの処理設備80の制御回路のブロック図である。
図2に示すように、この制御回路101は、CPU等によって構成され、全体の制御を司る制御装置90と、第1濃度測定装置S1a、S1bと、第2濃度測定装置S2a、S2bと、第1の切換え弁45と、第2の切換え弁46と、管理者に対して表示や音声等によって警報を発する警報器91と、ROM、RAM、HDD、SSD等によって構成され、制御に必要な各種情報を記憶する記憶装置92と、管理者が在籍する管理室やクラウド等に接続して必要な情報を送受信するための通信装置93と、その他の機器94と、を含む。なお、制御回路90を焼却施設100全体の制御回路に組み込んだものとしてもよい。この場合は、酸性排ガスの処理設備80に含まれない他の機器の制御や通信も制御回路90が行うことになる。
【0037】
制御装置90は、第1濃度測定装置S1a、S1b及び第2濃度測定装置S2a、S2bからの出力を受け取り、その結果を記憶装置92に記録するとともに、通信装置93を介して外部へ出力する。また、上記信号を記憶装置92に記憶された情報と比較し、その比較結果に基づいて、第1の切換え弁45及び第2の切換え弁46を制御するとともに、警報器91を作動させて警報を発する。
なお、上記濃度測定装置は、酸性ガス成分の濃度に加えて、処理対象のガスの流量も測定できるものであってもよい。
【0038】
次に、酸性排ガス処理設備80を含む焼却施設100の動作を説明する。
まず、焼却炉11で発生した酸性排ガスは、ボイラ12によって熱回収され、冷却装置13で冷却された後、集塵機14で集められて、酸性排ガス処理設備80の第1ユニット50へと導かれる。このとき、切換え弁45は第1容器40、第2容器41のうち一つを選択し、切換え弁46は、第3容器42、第4容器43のうち一つを選択している。なお、初期状態では、第1~第4の容器に収容されているアニオン型層状複水酸化物はいずれも、酸性排ガスの処理に供されていないもの又は再生済みのものであり、処理能力が低下していない状態のものである。
そして、上記酸性排ガスに対して、第1~第3ユニットにおいて、上述した第1~第3の工程が実行される。これによって、酸性排ガス中の酸性ガス成分であるSOx、NOx、及び、塩化水素が十分に除去される。
処理が終了し酸性ガス成分が除去されたガスは、第3ユニット70から排出され、誘因通風機15を経て煙突16から外部へ放出される。
【0039】
制御装置90は、各濃度測定装置S1a、S1b、S2a、S2bからの出力が、所定条件に合致すると切換え弁45、46を制御して切り換え動作を行わせる。
具体的には、切換え弁45によって、第1の容器40a及び第2の容器40bのうちいずれか一方に酸性排ガスを導いている際に、上記第1の濃度測定装置S1a、S1bのいずれかによって、SOxの濃度が予め設定した閾値に達したことが検知された場合に、切換え弁45を作動させて、第1の容器40a及び第2の容器40bのうち他方に酸性排ガスを導くようにする。また、切換え弁46によって、第3の容器42a及び第4の容器42bのうちいずれか一方に酸性排ガスを導いている際に、上記第2の濃度測定装置S2a、S2bのいずれかによって、NOx及び塩化水素のうち少なくとも一方の濃度が予め設定した閾値に達したことが検知された場合に、切換え弁46を作動させて、第1の容器40及び第2の容器41のうち他方に酸性排ガスを導くようにする。
切換え弁45、46を配置することにより、第1の容器40a及び第2の容器40bのうち一方、及び/又は、第3の容器42a及び第4の容器42bのうち一方の、酸性排ガス処理能力が低下した場合に、酸性排ガス処理能力が低下していない他方の容器に切り替えることができる。このため、酸性排ガス中の酸性ガス成分が十分除去されずに煙突16から外部へ排出されることを回避しやすくなる。
【0040】
切換え弁45、46の制御に合わせて、警報器91により、SOxの濃度が予め設定した閾値に達したこと、及び、NOx及び塩化水素のうち少なくとも一方の濃度が予め設定した閾値に達したことを報知するようにしてもよい。焼却施設の管理者は、警報器91による報知によって、酸性排ガス処理の状況を把握することができる。
【0041】
上記各濃度測定装置が、酸性ガス成分の濃度に加えて、処理対象のガスの流量を測定できるものとしてもよい。あるいは、上記各濃度測定装置に加えて、処理対象のガスの流量を測定する流量計を設けてもよい。これらの構成では、ガスの流量も加味して酸性ガス成分の濃度の上昇度合を判断することができるので、酸性排ガス処理の状況をより正確に把握することができる。
【0042】
切換え弁45、46を手動で操作可能なものとしてもよい。切換え弁45、46を手動操作可能なものとし、制御装置90が、各濃度測定装置S1a、S1b、S2a、S2bからの出力に基づいて、各酸性ガス成分の濃度が閾値に達したことを警報器によって報知することにより、管理者が状況を確認した上で、切換え弁を操作することができる。また、設定時刻になったときに、管理者が切換え弁を手動で切り換えるようにしてもよい。
【0043】
一方、切換え弁45、46を作動させることによって、煙道から切り離された方の容器に含まれる層状複水酸化物は、上述した再生方法によって再生される。再生処理は、他方の容器に含まれる層状複水酸化物による酸性排ガスの処理と並行して行うことができる。
再生処理は、容器から層状複水酸化物を取り出して行ってもよいし、容器に収容したままで、再生処理剤に接触させることにより行ってもよい。
燃焼施設には、層状複水酸化物を再生するための再生手段を更に設けてもよい。この場合、再生手段を燃焼施設100に接続されたインサイトに位置してもよいし、オフサイトに配置してもよい。
【0044】
また、上述した切換え弁及び複数の容器からなる構成に代えて、あるいは、当該構成とともに、まだ処理に供していない層状複水酸化物や再生済みの層状複水酸化物を容器に供給する手段と、一定時間処理に供した層状複水酸化物を容器から取り出す手段とを設けるようにしてもよい。この場合、上記各手段を、酸性排ガスの流量及び/又は酸性ガス成分の濃度に応じて、層状複水酸化物の供給や取り出しを行うものとしてもよい。
【実施例0045】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0046】
各実施例及び比較例の物性値の測定は以下の手順で行った。
<酸性ガス成分の除去率>
酸性排ガスに見立てた試験ガス中の塩化水素、SO2、NOの除去率を以下の手順で測定した。
反応管通過後のガスを採取して、塩化水素、SO2、NOの各成分の濃度をFT-IR式ガス分析計によって測定した。そして、これらの値(A)と、反応管通過前のガスの、塩化水素、SO2、NOの各成分の濃度(B)とを用いて、以下の式によって各酸性ガス成分の除去率を算出した。
酸性ガス成分の除去率[%]=[(B-A)/B]×100
【0047】
[実施例1]
内径16mmのガラス製の反応管A1に0.1gのCO3型Mg-Al層状複水酸化物を充填し、内径16mmのガラス製の反応管A2に0.1gのγ型二酸化マンガンを充填し、内径16mmのガラス製の反応管A3に0.3gのCO3型Mg-Al層状複水酸化物を充填し、反応管A1、反応管A2、反応管A3の順に接続した。窒素ガスを反応管A1の上流から流通し、各反応管を管状電気炉で流通するガス温度が170℃になるように調整した。
塩化水素の濃度300ppm、SO2の濃度50ppm、NOの濃度150ppmになるように窒素を流通しながら、マスフローコントローラーで各ガスの流量を調整し、反応管における空塔速度が1.0m/minになるように反応管にガスを通過させた。こうして、特定濃度の、塩化水素、SO2及びNOを含む窒素ガスを、第1の工程→第2の工程→第3の工程の順で処理するようにした。
試験開始60分後に反応管A3の出口の流通ガス中の塩化水素、SO2、NOx濃度を測定し、除去率を算出した。結果を表1に示す。なお、NOx濃度は、NO、NO2等の窒素酸化物を総合した濃度である。また、表1には、各工程に対応する各反応管の出口における、NO及びNO2の濃度と、これらを総合したNOxの濃度も記載してある。以下説明する各比較例についても同様である。
【0048】
[比較例1]
内径16mmのガラス製の反応管B1に0.3gのCO3型Mg-Al層状複水酸化物を充填し、窒素ガスを反応管1の上流から流通し、反応管を管状電気炉で流通するガス温度が170℃になるように調整した。
塩化水素の濃度300ppm、SO2の濃度50ppm、NOの濃度150ppmになるように窒素を流通しながら、マスフローコントローラーで各ガスの流量を調整し、反応管における空塔速度が1.0m/minになるように反応管にガスを通過させた。こうして、特定濃度の、塩化水素、SO2及びNOを含む窒素ガスを第1の工程のみで処理するようにした。
試験開始60分後に反応管B1の出口の流通ガス中の塩化水素、SO2、NOx濃度を測定し、除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
内径16mmのガラス製の反応管C1に0.1gのγ型二酸化マンガンを充填し、後段に内径16mmのガラス製の反応管C2に0.3gのCO3型Mg-Al層状複水酸化物を充填し、反応管C1、反応管C2の順に接続した。窒素ガスを反応管C1の上流から流通し、各反応管を管状電気炉で流通するガス温度が170℃になるように調整した。
塩化水素の濃度300ppm、SO2の濃度50ppm、NOの濃度150ppmになるように、窒素を流通しながらマスフローコントローラーで各ガスの流量を調整し、反応管における空塔速度が1.0m/minになるように反応管にガスを通過させた。こうして、特定濃度の、塩化水素、SO2及びNOを含む窒素ガスを、第2の工程→第3の工程の順で処理するようにした。
試験開始60分後に反応管C2の出口の流通ガス中の塩化水素、SO2、NOx濃度を測定し、除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例3]
反応管A3を設けないこと以外は実施例1と同様にして、特定濃度の、塩化水素、SO2及びNOを含む窒素ガスを、第1の工程→第2の工程の順で処理するようにした。
試験開始60分後に反応管A2の出口の流通ガス中の塩化水素、SO2、NOx濃度を測定し、除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1から明らかなように、実施例1においては、塩化水素、SO2、NOの全ての成分について高い除去率が得られることが判る。
これに対して、比較例1においては、塩化水素及びSO2の除去率は高いものの、NOが全く除去できていないことが判る。また、比較例2においては、塩化水素及びSO2の除去率が高く、NOも一定量は除去されているものの、NOの除去率は実施例1に比べて低く、遷移金属酸化物の酸化触媒効果が、SO2との反応によって低下していることが理解できる。更に、比較例3においては、塩化水素及びSO2の除去率が高いものの、実施例1とは異なり、第3の工程が存在しないため、第2の工程でNOから変換されたNO2を除去することができないことが判る。
前記第1の工程は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路のうちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、前記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生する、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理方法。
前記第3の工程は、アニオン型層状複水酸化物をそれぞれ含む複数の経路うちのいずれかの経路に前記酸性排ガスを選択的に導き、当該経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物に前記酸性排ガスを接触させている間に、前記複数の経路のうちの他の経路に含まれるアニオン型層状複水酸化物を再生する、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸性排ガスの処理方法。