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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046095
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ガラス原料供給装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/173 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
C03B5/173
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151965
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】赤木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】渡部 知也
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 和幸
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 潤一
(72)【発明者】
【氏名】小室 泰生
(57)【要約】
【課題】素地替え時にガラス原料の投入を円滑化する、技術を提供する。
【解決手段】ガラス原料供給装置は、投入機と、押し部材と、高さ調節機構とを有する。前記投入機は、溶解槽の側壁の上方から前記溶解槽の内部にガラス原料を投入し、前記溶解槽の内部に溜めた溶融ガラスの液面に前記ガラス原料の原料山を形成する。前記押し部材は、前記投入機よりも下方にて、前記溶解槽の前記側壁から離れる方向に前記原料山を押す。前記高さ調節機構は、前記投入機に対する前記押し部材の高さを調節する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解槽の側壁の上方から前記溶解槽の内部にガラス原料を投入し、前記溶解槽の内部に溜めた溶融ガラスの液面に前記ガラス原料の原料山を形成する投入機と、
前記投入機よりも下方にて、前記溶解槽の前記側壁から離れる方向に前記原料山を押す押し部材と、
前記投入機に対する前記押し部材の高さを調節する高さ調節機構と、を備える、ガラス原料供給装置。
【請求項2】
前記押し部材は、冷媒の流れる第1冷媒管を含む、請求項1に記載のガラス原料供給装置。
【請求項3】
前記第1冷媒管は、U字状に形成され、前記溶解槽の前記側壁に沿って水平に配置され前記原料山を押す第1水平部と、前記第1水平部の両端から上方に延びる一対の第1鉛直部とを含む、請求項2に記載のガラス原料供給装置。
【請求項4】
前記第1鉛直部は、屈曲部と、前記屈曲部の上側に設けられる第1直線部と、前記屈曲部の下側に設けられる第2直線部とを含み、
前記第1直線部は、下方に向かうほど前記溶解槽の前記側壁に近づくように傾斜しており、
前記第2直線部は、前記第1鉛直部の延長線を基準として前記溶解槽の前記側壁とは反対側に配置される、請求項3に記載のガラス原料供給装置。
【請求項5】
前記押し部材は、冷媒の流れる第2冷媒管を更に含み、
前記第2冷媒管は、U字状に形成され、前記溶解槽の前記側壁に沿って水平に配置され前記原料山を押す第2水平部と、前記第2水平部の両端から上方に延びる一対の第2鉛直部とを含み、
前記第1冷媒管の前記第1水平部と、前記第2冷媒管の前記第2水平部とは、鉛直方向にずらして配置される、請求項3又は4に記載のガラス原料供給装置。
【請求項6】
前記押し部材は、隣り合う前記第1冷媒管の前記第1鉛直部の上端と、前記第2冷媒管の前記第2鉛直部の上端とをつなぐ接続管を更に含む、請求項5に記載のガラス原料供給装置。
【請求項7】
前記投入機は、前記ガラス原料を溜めるホッパーと、前記ホッパーから投下される前記ガラス原料を載せる搬送パンと、前記搬送パンを前記溶解槽に向けて進退させる進退機構とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラス原料供給装置。
【請求項8】
前記押し部材は、前記高さ調節機構を介して前記搬送パンに連結されており、前記搬送パンと共に進退し、
前記高さ調節機構は、前記搬送パンに対する前記押し部材の高さを調節する、請求項7に記載のガラス原料供給装置。
【請求項9】
前記高さ調節機構は、前記搬送パンの側板に固定される支柱と、鉛直方向に間隔をおいて前記支柱に形成される複数のピン穴と、前記押し部材を保持すると共に前記支柱に沿って昇降するブラケットと、前記ブラケットに形成される貫通穴と、前記ピン穴及び前記貫通穴に抜き取り可能に挿入されるピンとを含む、請求項8に記載のガラス原料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス原料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、連続ガラス溶融炉における溶融ガラスの素地替え(例えば、組成の変更、又は色の変更)方法が記載されている。この素地替え方法は、溶融炉から溶融ガラスの大部分を一旦排出した後に、新たなガラス原料を投入する。
【0003】
特許文献2には、ガラス原料を投入する投入機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6670460号公報
【特許文献2】国際公開第2012/026254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶解槽は、ガラス原料を溶解した溶融ガラスを収容する。溶解槽の上方には、溶融ガラスを加熱するバーナー等が設けられる。溶融ガラスは、加熱されることによって対流を生じ、溶解槽の全体に熱を運ぶ。
【0006】
投入機は、溶解槽に対して側方からガラス原料を投入する。溶解槽に投入されたガラス原料は、溶融ガラスの液面に原料山を形成する。原料山は、溶融ガラスの上に浮かびながら、溶融ガラスの熱によって溶解する。
【0007】
素地替え時には、溶解槽から溶融ガラスの大部分が一旦排出され、溶融ガラスの液面が下がる。その結果、溶融ガラスの層厚が薄くなり、溶融ガラスの鉛直方向の温度差が小さくなる。従って、溶融ガラスの対流が弱くなり、熱が移動しにくくなる。
【0008】
従来、素地替え時に、ガラス原料の投入位置付近に、熱が十分に供給されずに、原料山が積み上がってしまうことがあった。その結果、ガラス原料の固まりができてしまい、ガラス原料が投入できなくなることがあった。
【0009】
本開示の一態様は、素地替え時にガラス原料の投入を円滑化する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係るガラス原料供給装置は、投入機と、押し部材と、高さ調節機構とを有する。前記投入機は、溶解槽の側壁の上方から前記溶解槽の内部にガラス原料を投入し、前記溶解槽の内部に溜めた溶融ガラスの液面に前記ガラス原料の原料山を形成する。前記押し部材は、前記投入機よりも下方にて、前記溶解槽の前記側壁から離れる方向に前記原料山を押す。前記高さ調節機構は、前記投入機に対する前記押し部材の高さを調節する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、素地替え時にガラス原料の投入を円滑化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は一実施形態に係る搬送パンの前進位置を示す断面図であり、図1(B)は一実施形態に係る搬送パンの後退位置を示す断面図である。
図2図2は、高さ調節機構、及び押し部材の一例を示す上面図である。
図3図3は、図2の矢印A方向から見た押し部材の動作の一例を示す断面図である。
図4図4は、図2の矢印A方向から見た押し部材の動作の別の一例を示す断面図である。
図5図5(A)は第1水冷管及び第2水冷管の一例を示す上面図であり、図5(B)は第1水冷管及び第2水冷管の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。また、各図面において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向であって、X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0014】
先ず、図1を参照して、ガラス原料供給装置1について説明する。ガラス原料供給装置1は、投入機10を備える。投入機10は、溶解槽100の側壁101の上方から溶解槽100の内部にガラス原料Mを投入する。ガラス原料Mの投入は、連続的又は断続的に行われる。投入機10の数は、1つ又は複数である。投入機10の数が複数である場合、溶解槽100の側壁101に沿って複数の投入機10が横に並んで配置される。
【0015】
ガラス原料Mは、粉末状又は粒状である。ガラス原料Mは、複数種類の材料を混ぜて調製される。例えば、ガラスがソーダライムガラスである場合、ガラス原料Mは例えば珪砂、石灰石、ソーダ灰、ホウ酸及び清澄剤などを含む。清澄剤は、三酸化硫黄、塩化物又はフッ化物などである。ガラス原料Mは、ガラスをリサイクルすべく、ガラスカレットを含んでもよい。ガラス原料Mは、粉体原料でもよいし、当該粉体原料を造粒した造粒原料でもよい。
【0016】
溶解槽100は、ガラス原料Mを溶解した溶融ガラスGを収容する。溶解槽100の上方には、溶融ガラスGを加熱する不図示のバーナー等が設けられる。溶融ガラスGを加熱する手段は、バーナーには限定されない。例えば、溶融ガラスGを通電加熱する電極等が溶解槽100の内部に配置されてもよい。溶融ガラスGは、加熱されることによって対流を生じ、溶解槽100の全体に熱を運ぶ。例えば、溶解槽100の側壁101付近では、下降流が生じ、液面Ga付近には前方から後方に向かう流れが形成される。
【0017】
溶融ガラスGは、溶解槽100から排出され、不図示の成形装置に搬送される。成形装置は、溶融ガラスGを所望の形状のガラスに成形する。板状のガラスを得る成形方法として、フロート法、フュージョン法、又はロールアウト法等が用いられる。管状のガラスを得る成形方法として、ベロー法、又はダンナー法等が用いられる。成形されたガラスは、徐冷装置に搬送される。
【0018】
徐冷装置は、成形装置で成形したガラスを徐冷する。徐冷装置は、例えば、徐冷炉と、徐冷炉の内部においてガラスを所望の方向に搬送する搬送ローラとを有する。搬送ローラは、例えば水平方向に間隔をおいて複数配列される。ガラスは、徐冷炉の入口から出口まで搬送される間に、徐冷される。ガラスを徐冷すれば、残留歪みの少ないガラスが得られる。徐冷されたガラスは、加工装置に搬送される。
【0019】
加工装置は、徐冷装置で徐冷したガラスをガラス物品に加工する。加工装置は、例えば切断装置、研削装置、研磨装置、及びコーティング装置から選ばれる1つ以上であってよい。切断装置は、徐冷装置で徐冷したガラスから、ガラス物品を切り出す。切断装置は、例えば、徐冷装置で徐冷したガラスにスクライブ線を形成し、スクライブ線に沿ってガラスを割断する。スクライブ線は、カッター又はレーザー光線を用いて形成される。研削装置は、徐冷装置で徐冷したガラスを研削する。研磨装置は、徐冷装置で徐冷したガラスを研磨する。コーティング装置は、徐冷装置で徐冷したガラスに所望の膜を形成する。
【0020】
なお、溶融ガラスGは、溶解槽100から排出された後、成形装置に搬送される前に、清澄装置に搬送されてもよい。清澄装置は、溶融ガラスG中に含まれる気泡を除去する。気泡を除去する方法として、例えば、溶融ガラスGの周辺雰囲気を減圧する方法、及び溶融ガラスGを高温に加熱する方法から選ばれる1つ以上が用いられる。
【0021】
図1を再度参照して、投入機10について説明する。投入機10は、例えばブランケットチャージャーであり、ホッパー11と、搬送パン12と、進退機構13とを含む。ホッパー11は、ガラス原料Mを溜める。搬送パン12は、ホッパー11から投下されるガラス原料Mを載せる。進退機構13は、例えばコンピュータによる制御下で、搬送パン12を溶解槽100に向けて進退させる。
【0022】
詳しくは後述するが、搬送パン12の前進に伴って、搬送パン12とホッパー11との間の隙間から、ホッパー11内のガラス原料Mが搬送パン12上に投下される。また、搬送パン12の後退に伴って、搬送パン12上のガラス原料Mが溶解槽100へ投入され、溶融ガラスGの液面Gaに原料山Maが形成される。原料山Maは、溶融ガラスGに浮かびながら、溶融ガラスGの熱によって溶解する。
【0023】
ホッパー11は、ガラス原料Mを貯蔵するタンクである。ホッパー11は、ホッパー11内でガラス原料Mが溶融しないように、溶解槽100から離れた場所に設置される。ホッパー11内でガラス原料Mが溶融してしまうと、粒同士が溶着して固まりが生じ、流動性が失われるからである。ホッパー11は、例えば鋼材(例えば、SS材)などで形成され、下方に向けて先細りの筒形状になっている。
【0024】
ホッパー11の上方には、複数種類の原料を秤量、混合して、ガラス原料Mを調製する不図示の混合機が設置してある。混合機で調製されたガラス原料Mは、ホッパー11内へ投下され、貯蔵される。
【0025】
混合機で原料を調製する前に、清澄剤等に用いる微量な原料を比較的混合量が多い珪砂等と混合しておくと、微量な原料が混合機内で偏るのが抑えられるため好ましい。微量な原料としては、例えば、蛍石、塩化アンモニウム、塩化ストロンチウム、二水硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0026】
なお、混合機がホッパー11から離れた場所に設置してある場合は、混合機で調製したガラス原料Mをベルト搬送で連続的に、またはバケット搬送で一定の間隔で、ホッパー11上方まで搬送して、ホッパー11内へガラス原料を投下してもよい。
【0027】
ホッパー11の下方には、搬送パン12が設置してある。搬送パン12の前進に伴って、搬送パン12とホッパー11との間の隙間から、ホッパー11内のガラス原料Mが搬送パン12上に投下される。
【0028】
ガラス原料Mの投下量は、搬送パン12とホッパー11との間の隙間の大きさの他、搬送パン12の水平面に対する傾斜角θ、ガラス原料Mの安息角などによって調節することが可能である。
【0029】
傾斜角θは、搬送パン12のガラス原料Mを載置する載置面122と、水平面とのなす角である。傾斜角θは、特に限定されないが、例えば8°~15°であり、好ましくは10°~12°である。
【0030】
安息角は、特に限定されないが、例えば30°~45°であり、好ましくは35°~40°である。ここで、安息角は、JIS R 9301-2-2「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に記載されているような方法で測定される。より詳細には、安息角は、試験体(ホッパー11内に貯蔵される前のガラス原料M)を直径80mm、目開き710μmの篩を振動させながら通過させた後、水平面に160mmの高さの漏斗から直径80mmのテーブルに静かに落下させた時に、試験体によって形成された円錐体の母線と水平面のなす角を測定することで規定され、流動性の良い粉体ほど小さい値となる。ここで、粉体の落下量は安息角が実質的に安定するまで落下させるものとする。
【0031】
搬送パン12は、ホッパー11から投下されるガラス原料Mを溶解槽100に向けて搬送する。ガラス原料Mは、搬送パン12の載置面122に薄く広がる。従って、ガラス原料Mを溶解槽100へ幅広く、且つ、薄く投入することができる。
【0032】
搬送パン12は、鋼材(例えば、SS材)などで形成される。搬送パン12は傾斜板121を有し、傾斜板121の上面がガラス原料Mを載せる載置面122である。載置面122は、前方に向かうほど下方に向かう傾斜面である。前方とは、ホッパー11から溶解槽100の側壁101に向かう方向であり、図1において左方向である。
【0033】
搬送パン12の傾斜板121は、溶解槽100の側壁101を越えて、前方に突き出している。これにより、傾斜板121上のガラス原料Mは、傾斜板121の傾斜によって滑落しても、溶解槽100へ投入される。なお、傾斜板121の前端は、溶融ガラスGと接触しないように、溶融ガラスGの液面Gaよりも上方に配置される。
【0034】
搬送パン12は、前後方向視でU字状に形成され、傾斜板121の幅方向両端に一対の側板124を有する。一対の側板124は、傾斜板121の載置面122から上方に突出しており、載置面122に載置されたガラス原料Mの滑落を防止する。
【0035】
進退機構13は、例えばシリンダーなどを含む。進退機構13は、搬送パン12を前進位置(図1(A)に示す位置)と後退位置(図1(B)に示す位置)との間で往復移動させる。その往復移動は、所定の周期(例えば、1分~10分の周期)で繰り返し実施される。
【0036】
先ず、搬送パン12が、後退位置から前進位置まで前進する。搬送パン12の前進に伴って、搬送パン12とホッパー11との間の隙間から、ホッパー11内のガラス原料Mが搬送パン12上に投下される。搬送パン12が前進する間、搬送パン12上のガラス原料Mは摩擦によって搬送パン12上に安定的に載っている。
【0037】
また、搬送パン12の前進に伴って、搬送パン12の前端がガラス原料Mの原料山Maを前方に押す。溶融ガラスGの液面Ga付近の流れに逆らって、原料山Maを前方に押しやることができる。原料山Maは、搬送パン12から離れた後も、慣性力によって前方に押しやられる。その結果、新たなガラス原料Mを投入するためのスペースを、液面Gaの上に確保できる。
【0038】
次に、搬送パン12が、前進位置から後退位置まで後退する。その際、搬送パン12とホッパー11との間の隙間に溜まったガラス原料Mが、その前方のガラス原料Mを搬送パン12の前端から前方に押す。その結果、搬送パン12の前端から溶解槽100の内部にガラス原料Mがこぼれ落ち、新たな原料山Maが形成される。
【0039】
なお、本実施形態の投入機10はブランケットチャージャーであるが、本開示の技術はこれには限定されない。投入機10は、例えば、スクリューチャージャー等であってもよい。
【0040】
ところで、溶融ガラスGの素地替え(例えば、組成の変更、又は色の変更)では、溶解槽100から溶融ガラスGの大部分が一旦排出される。その後、新たなガラス原料Mが、溶解槽100に対して投入される。
【0041】
素地替え時には、溶融ガラスGの液面Gaが一旦下がり、原料山Maの高さが搬送パン12の前端の高さよりも低くなる。従って、搬送パン12の前端が原料山Maを前方に押すことができなくなる。
【0042】
また、素地替え時には、溶融ガラスGの液面Gaが一旦下がり、溶融ガラスGの層厚が薄くなり、溶融ガラスGの鉛直方向の温度差が小さくなる。従って、溶融ガラスGの対流が弱くなり、熱が移動しにくくなる。
【0043】
従来、素地替え時に、ガラス原料Mの投入位置付近に、熱が十分に供給されずに、原料山Maが積み上がってしまうことがあった。その結果、ガラス原料Mの固まりができてしまい、ガラス原料Mが投入できなくなることがあった。
【0044】
そこで、図2図4に示すように、本実施形態のガラス原料供給装置1は、投入機10の他に、更に、押し部材20と高さ調節機構30を備える。押し部材20は、投入機10よりも下方にて、溶解槽100の側壁101から離れる方向(つまり、前方)に原料山Maを押す。高さ調節機構30は、投入機10に対する押し部材20の高さを調節する。
【0045】
押し部材20と高さ調節機構30は、素地替え時に用いられる。素地替え時には、図3及び図4に示すように、溶融ガラスGの液面Gaが一旦下がる。押し部材20は、投入機10よりも下方、具体的には搬送パン12よりも下方にて、原料山Maを押す。押し部材20は、溶融ガラスGと接触しないように、溶融ガラスGの液面Gaよりも上方にて、原料山Maを押す。
【0046】
本実施形態によれば、搬送パン12によって原料山Maを前方に押すことができない場合であっても、押し部材20によって原料山Maを前方に押すことができる。原料山Maは、押し部材20から離れた後も、慣性力によってそのまま前進し、高温の領域にて溶解される。従って、素地替え時に、ガラス原料Mの投入位置付近におけるガラス原料Mの堆積を抑制できる。
【0047】
また、素地替え時には、新しいガラス原料Mが投入されることにより、溶融ガラスGの液面Gaが元の高さまで戻る。液面Gaの高さが変化しても、押し部材20が原料山Maを押せるように、高さ調節機構30は投入機10に対する押し部材20の高さを調節する。投入機10に対する押し部材20の高さを調節すれば、投入機10の高さを変えることなく、押し部材20の高さを変えることができる。
【0048】
ところで、押し部材20は、原料山Maと接触するので、原料山Maから熱を受ける。そこで、押し部材20は、冷媒の流れる第1冷媒管21を含んでもよい。第1冷媒管21は、耐熱鋼などで形成される。第1冷媒管21は、水等の冷媒の流路を形成する。冷媒として、本実施形態では水が用いられるが、気体が用いられてもよい。冷媒は、第1冷媒管21の内部を流れながら、第1冷媒管21の熱を吸収し、吸収した熱を第1冷媒管21の外部に排出する。よって、押し部材20を冷却でき、押し部材20の熱劣化を抑制できる。
【0049】
図5(B)に示すように、第1冷媒管21は、U字状に形成され、原料山Maを押す第1水平部21aと、第1水平部21aの両端から上方に延びる一対の第1鉛直部21b、21cとを含む。第1水平部21aは、溶解槽100の側壁101に沿って水平に配置される。それゆえ、溶融ガラスGの液面Gaに形成された原料山Maを幅広く押すことができる。また、一対の第1鉛直部21b、21cによって第1水平部21aの両端を支持するので、第1水平部21aの片端を支持する場合に比べて、第1水平部21aの自重による傾斜を低減できる。更に、一対の第1鉛直部21b、21cによって第1水平部21aを吊り下げ、溶解槽100の深い場所に第1水平部21aを配置できる。
【0050】
図3及び図4に示すように、第1鉛直部21cは、屈曲部21c1と、屈曲部21c1の上側に設けられる第1直線部21c2と、屈曲部21c1の下側に設けられる第2直線部21c3とを含んでもよい。第1直線部21c2は、下方に向かうほど溶解槽100の側壁101に近づくように傾斜している。一方、第2直線部21c3は、第1直線部21c2の延長線を基準として、溶解槽100の側壁101とは反対側に配置されている。第2直線部21c3は、例えば下方に向かうほど溶解槽100の側壁101から遠ざかるように傾斜しているか、側壁101から一定の距離で鉛直に配置される。
【0051】
屈曲部21c1がなく、第2直線部21c3が第1直線部21c2の延長線上に配置される場合に比べて、第1鉛直部21cと溶解槽100の側壁101とのギャップが広がる。従って、ギャップにガラス原料Mが詰まることを抑制できる。また、押し部材20が後退する際に溶解槽100の側壁101を押し倒してしまうことを防止できる。第1鉛直部21bも、第1鉛直部21cと同様に構成される。
【0052】
押し部材20は、更に、冷媒の流れる第2冷媒管22を含んでもよい。第2冷媒管22は、第1冷媒管21と同様に、耐熱鋼などで形成され、水等の冷媒の流路を形成する。冷媒は、第2冷媒管22の内部を流れながら、第2冷媒管22の熱を吸収し、吸収した熱を第2冷媒管22の外部に排出する。よって、押し部材20を冷却でき、押し部材20の熱劣化を抑制できる。
【0053】
図5(B)に示すように、第2冷媒管22も、第1冷媒管21と同様に、U字状に形成され、原料山Maを押す第2水平部22aと、第2水平部22aの両端から上方に延びる一対の第2鉛直部22b、22cとを含む。第2水平部22aは、溶解槽100の側壁101に沿って水平に配置される。それゆえ、溶融ガラスGの液面Gaに形成された原料山Maを幅広く押すことができる。また、一対の第2鉛直部22b、22cによって第2水平部22aの両端を支持するので、第2水平部22aの片端を支持する場合に比べて、第2水平部22aの自重による傾斜を低減できる。更に、一対の第2鉛直部22b、22cによって第2水平部22aを吊り下げ、溶解槽100の深い場所に第2水平部22aを配置できる。
【0054】
図3及び図4に示すように、第2鉛直部22cは、第1鉛直部21cよりも溶解槽100の側壁101から離れて配置される。従って、第2鉛直部22cは、第1鉛直部21cとは異なり、屈曲部を有しなくてもよく、真っ直ぐ形成されてもよい。第2鉛直部22bも、第2鉛直部22cと同様に構成される。
【0055】
図5(B)に示すように、第1冷媒管21の第1水平部21aと、第2冷媒管22の第2水平部22aとは、鉛直方向にずらして配置される。これにより、原料山Maを高さ方向複数個所で押すことができる。なお、図5(B)に示すように、前後方向視にて、第1水平部21aと、第2水平部22aとは、鉛直方向に一部重なっていてもよい。また、図5(A)に示すように、鉛直方向視にて、第1水平部21aと、第2水平部22aとは、前後方向に一部重なっていてもよい。第1水平部21aは、第2水平部22aを基準として、例えば上方にずらして配置され、且つ後方にずらして配置される。
【0056】
図5(A)に示すように、押し部材20は、接続管23を更に含んでもよい。接続管23は、隣り合う第1冷媒管21の第1鉛直部21bの上端と、第2冷媒管22の第2鉛直部22bの上端とをつなぐ。接続管23は、例えばU字状に形成される。接続管23の一端は第1鉛直部21bの上端に接続され、接続管23の他端は第2鉛直部22bの上端に接続される。接続管23によって、同一の冷媒を第1冷媒管21と第2冷媒管22の両方に流すことができ、冷媒の使用量を低減できる。冷媒は、第1冷媒管21を流れた後で第2冷媒管22を流れてもよいし、第2冷媒管22を流れた後で第1冷媒管21を流れてもよい。
【0057】
押し部材20は、冷媒を供給する供給管24と、冷媒を排出する排出管25とを更に含んでもよい。供給管24と排出管25とは、溶解槽100の上方に水平に配置され、溶解槽100の側壁101に沿って片側に延びている。片側から、冷媒の供給と排出の両方を実施できる。溶解槽100の側壁101に沿って2つの投入機10が横に並ぶ場合に、両側で、冷媒の供給と排出の両方を実施できる。
【0058】
供給管24は第1冷媒管21の第1鉛直部21cの上端に接続され、排出管25は第2冷媒管22の第2鉛直部22cの上端に接続される。冷媒は、供給管24から第1冷媒管21に供給され、続いて接続管23を介して第2冷媒管22に供給され、次いで排出管25から排出される。
【0059】
なお、供給管24と排出管25の配置は逆でもよい。つまり、供給管24は第2冷媒管22の第2鉛直部22cの上端に接続され、排出管25は第1冷媒管21の第1鉛直部21cの上端に接続されてもよい。この場合、冷媒は、供給管24から第2冷媒管22に供給され、続いて、接続管23を介して第1冷媒管21に供給され、次いで排出管25から排出される。
【0060】
図2に示すように、押し部材20は、高さ調節機構30を介して搬送パン12に連結されており、搬送パン12と共に進退する。同一の進退機構13によって、搬送パン12と押し部材20の両方を進退させることができる。押し部材20のみを進退させる専用の進退機構が不要である。
【0061】
なお、押し部材20と高さ調節機構30は、素地替え時に用いられ、通常のガラス生産時には用いられなくてよい。押し部材と高さ調節機構30は、通常のガラス生産時には搬送パン12から取り外される。搬送パン12の進退に要するエネルギーを低減できる。
【0062】
高さ調節機構30は、搬送パン12に対する押し部材20の高さを調節する。溶融ガラスGの液面Gaの高さが変化しても、高さ調節機構30によって押し部材20の高さを調節すれば、再び押し部材20によって原料山Maを押すことができる。また、搬送パン12の高さを変えることなく、押し部材20の高さを変えることができる。
【0063】
高さ調節機構30は、例えば、支柱31と、複数のピン穴32と、ブラケット33と、貫通穴34と、ピン35とを含む。支柱31は、搬送パン12の側板124に固定される。複数のピン穴32は、鉛直方向に間隔をおいて支柱31に形成される。ブラケット33は、押し部材20を保持すると共に支柱31に沿って昇降する。貫通穴34は、ブラケット33に形成される。ピン35は、ピン穴32及び貫通穴34に抜き取り可能に挿入される。
【0064】
ピン35が、ブラケット33の貫通穴34に挿通され、支柱31のピン穴32に挿入されると、押し部材20の高さが決まる。押し部材20の高さを変更するには、先ず、ピン35をピン穴32と貫通穴34から抜き取る。次に、押し部材20の高さを変更した後、再び、ピン35を貫通穴34に挿通し、ピン穴32に挿入する。
【0065】
ピン穴32は、所望のピッチPで配列される。そのピッチPは、特に限定されないが、例えば1cm~5cmであり、好ましくは2cm~4cmである。押し部材20の高さは、ピン穴32のピッチPと同じピッチで変更可能である。
【0066】
ピン穴32は、例えば20cm~200cm(好ましくは20cm~100cm)の範囲に亘って配列される。押し部材20の高さを、例えば20cm~200cm(好ましくは20cm~100cm)の範囲で変更可能である。
【0067】
ブラケット33は、支柱31に沿って昇降するスライダ33aと、第1冷媒管21の第1鉛直部21cを保持するホルダ33bとを有する。スライダ33aには、貫通穴34が形成される。ホルダ33bは、例えば、第1冷媒管21の第1鉛直部21cと、第2冷媒管22の第2鉛直部22cとをまとめて保持する。
【0068】
なお、図2には図示しないが、高さ調節機構30は搬送パン12を幅方向に挟んで一対設けられ、ブラケット33も搬送パン12を幅方向に挟んで一対設けられる。一のブラケット33は、図2に示すように、第1冷媒管21の第1鉛直部21cと、第2冷媒管22の第2鉛直部22cとをまとめて保持する。残りのブラケット33は、図示しないが、第1冷媒管21の第1鉛直部21bと、第2冷媒管22の第2鉛直部22bとをまとめて保持する。
【0069】
高さ調節機構30は、ピン35の抜き止めを行う不図示のストッパを更に有してもよい。ストッパの機構は、特に限定されないが、耐熱性を有するものであればよい。また、高さ調節機構30は、ブラケット33の昇降をロックするロック機構を有してもよい。
【0070】
高さ調節機構30は、図2等に示す機構には限定されない。例えば、高さ調節機構30は、フォークリフトなどであってもよい。フォークリフトは、押し部材20を保持するフォークと、フォークを昇降させる油圧機構とを含む。
【0071】
また、例えばチェーンと滑車などで、押し部材20を吊り上げて固定してもよい。
【0072】
以上、本開示に係るガラス原料供給装置について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0073】
1 ガラス原料供給装置
10 投入機
20 押し部材
30 高さ調節機構
100 溶解槽
101 側壁
G 溶融ガラス
Ga 液面
M ガラス原料
Ma 原料山
図1
図2
図3
図4
図5