(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047195
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤、抗白髪用組成物、処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220316BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20220316BHJP
A61K 36/8994 20060101ALI20220316BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20220316BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20220316BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220316BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220316BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220316BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220316BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20220316BHJP
C12N 9/00 20060101ALN20220316BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/9794
A61K36/8994
A61K36/74
A61K36/53
A61Q5/00
A61Q19/00
A61P43/00 111
A61P17/00
C12N15/52 Z ZNA
C12N9/00
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152974
(22)【出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】永見 恵子
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇希
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 圭子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 瑞穂
【テーマコード(参考)】
4B050
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B050DD11
4B050LL01
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC372
4C083AC422
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4C083AC442
4C083AC482
4C083AC642
4C083AC662
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4C083AC762
4C083AC782
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4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD352
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4C083AD442
4C083AD532
4C083AD632
4C083BB51
4C083BB53
4C083CC02
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4C083FF01
4C088AB14
4C088AB38
4C088AB77
4C088MA07
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現を促進する新たな発現促進剤の提供、及び当該発現促進剤を用いた頭皮は皮膚の処理方法の提供。
【解決手段】ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含む、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤、並びに、当該発現促進剤を用いた頭皮又は皮膚の処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含む、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤。
【請求項2】
抗白髪用に用いられる、請求項1に記載の発現促進剤。
【請求項3】
請求項1に記載の発現促進剤が配合された、抗白髪用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の発現促進剤を用いた、頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法。
【請求項5】
請求項3に記載の抗白髪用組成物を用いた、頭皮の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤、抗白髪用組成物、処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラニンは、毛髪及び皮膚に存在しており、紫外線による生体組織の損傷を防止する役割を果たしている。また、メラニンは有色の色素であり、毛髪や皮膚の色調に関与している。
【0003】
従来から、メラニンの産生を促進させて、新たに毛包から産生される毛髪のメラニン量を増加させることで、白髪の発生予防や毛髪の色調改善を行う研究がなされている。また、表皮に存在するメラニン産生細胞によるメラニンの産生を促進させて、皮膚のタンニング等を目的とした皮膚の色調改善を行う研究もなされている。
【0004】
そのような研究の一例として、キク科ネコノシタ属の植物抽出物を有効成分とするメラノサイト活性化剤によって、メラノサイトにおけるサイクリックAMP誘導作用およびチロシナーゼ活性促進作用を発揮させることで白髪防止剤やタンニング剤等としての使用が可能な優れたメラノサイト活性化作用を有する剤が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、上記特許文献1とは別の例として、生体内のメラニン産生のメカニズムに着目して、メラノサイト等のメラニン産生細胞においてメラニン産生に関連する遺伝子の発現を促進させることで、メラニン産生を促進させる技術が知られている。例えば、特許文献2では、葛根の抽出物等が、毛髪のメラニン合成、メラノソーム形成、及びメラノソーム輸送に関する遺伝子発現を亢進することで、毛髪の色調変化の予防・改善効果を奏する毛髪の色調変化の予防、改善剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-114700号公報
【特許文献2】特開2019-38790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のメラニンの産生を促進させる技術には、特許文献1、2に示されるような提案が存在するものの、メラニンに関する遺伝子の発現を促進する観点での報告は少ないのが現状である。
そのような背景から、メラニンに関する遺伝子の発現を促進させるための新たな技術の提案が要望されている。また、メラニンに関する遺伝子の発現を促進することに着目した新たな抗白髪用組成物の提案も同様に要望されている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現を促進する新たな発現促進剤の提供、及び当該発現促進剤を用いた頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法の提供を目的とする。
また、本発明の別の目的は、新たな抗白髪用組成物の提供、及び当該抗白髪用組成物を用いた頭皮の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題に基づきメラノサイトにおけるメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現を促進可能な成分について鋭意検討を行ったところ、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物が、メラノサイトにおけるメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現を促進可能であるとの新たな知見を得た。そして、当該知見に基づき、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、又はワイルドタイム抽出物が、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤として用いることが可能であることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明のメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤は、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含むものである。
【0011】
本発明の発現促進剤は、抗白髪用に用いられると、白髪の改善や予防ができるため好ましい。
【0012】
本発明の抗白髪用組成物は、本発明の発現促進剤が配合されたものである。
【0013】
本発明の頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法は、本発明のキナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含むメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤を頭皮又は頭皮を除く皮膚に用いるものである。
【0014】
本発明の頭皮の処理方法は、本発明の発現促進剤が配合された抗白髪用組成物を頭皮に用いるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤によれば、新たなメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤が提供できる。また、当該発現促進剤を用いた頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法が提供できる。
【0016】
本発明に係る抗白髪用組成物によれば、新たな抗白髪用組成物が提供できる。また、抗白髪用組成物を用いた頭皮の処理方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と表記する)に基づき、本発明を以下に説明する。
【0018】
(1)メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤
本実施形態に係るメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤(以下、「本実施形態の発現促進剤」と表記する)は、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含むものである。
なお、「及び/又は」の用語は、両方又はいずれか一方であることを意味する(以下、同様の意味で用いる)。
【0019】
本実施形態の発現促進剤は、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現を促進させることができる。本実施形態の発現促進剤によるメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進によって、毛根部又は皮膚に存在するメラノサイトにおけるメラニンの合成及び輸送の働きをより向上させることで、毛髪または皮膚のメラニン量を増加させることが可能となる。
【0020】
(メラニン合成遺伝子)
本実施形態の発現促進剤に係るメラニン合成遺伝子は、細胞においてメラニンの合成に関与する遺伝子を意味する。メラニン合成遺伝子としては、例えば、TYR遺伝子、DCT遺伝子、TYRP1遺伝子、Pmel17遺伝子、及びpreproendothelin1遺伝子等が挙げられる。
そのため、本実施形態の発現促進剤は、例えば、TYR遺伝子、DCT遺伝子、TYRP1遺伝子、Pmel17遺伝子、及びpreproendothelin1遺伝子から選ばれる1種又は2種以上のメラニン合成遺伝子の発現促進剤とすることができる。
【0021】
TYR遺伝子は、チロシナーゼ(TYROSINASE)をコードする遺伝子である。チロシナーゼは、細胞においてメラニン色素産生に関わる酵素である。
DCT遺伝子は、ドーパクロムトートメラーゼ(dopachrome tautomerase)をコードする遺伝子である。ドーパクロムトートメラーゼは、細胞においてメラニン色素産生に関わる酵素である。
TYRP1遺伝子は、チロシナーゼの活性をサポートする役割があるチロシナーゼ関連タンパク質1(TYROSINASE related protein 1)をコードする遺伝子である。チロシナーゼ関連タンパク質1は、チロシナーゼの活性をサポートする役割があり、メラニン色素産生に関わるものである。
【0022】
毛根部に存在するメラノサイトにおいて、TYR遺伝子、DCT遺伝子、又はTYRP1遺伝子の発現量が増加すれば、細胞内のメラニン色素産生を促進するチロシナーゼ、ドーパクロムトートメラーゼ、又はチロシナーゼ関連タンパク質1が増加することで、メラノサイトにおけるメラニン色素の産生が促進されて、毛幹に供給されるメラニン量が増加するため、毛髪の明度低下に寄与すると考えられる。
また、皮膚に存在するメラノサイトにおいて、TYR遺伝子、DCT遺伝子、又はTYRP1遺伝子の発現量が増加すれば、細胞内のメラニン色素産生を促進するチロシナーゼ、ドーパクロムトートメラーゼ、又はチロシナーゼ関連タンパク質1が増加することで、メラノサイトにおけるメラニン色素の産生が促進されて、皮膚に供給されるメラニン量が増加するため、皮膚の明度低下に寄与すると考えられる。
【0023】
Pmel17遺伝子は、Pmel17をコードする遺伝子である。Pmel17は、メラノソームにおいて、メラニン色素が沈着する線維を構成する糖タンパク質であり、メラノソームの成熟に関わる。
【0024】
毛根部に存在するメラノサイトにおいて、Pmel17遺伝子の発現量が増加すれば、Pmel17が増加する結果、メラノソームの成熟が促進されてメラノソームにおけるメラニン色素の貯蔵量が増加することで、毛幹に供給されるメラニン量が増加し、毛髪の明度低下に寄与すると考えられる。
また、皮膚に存在するメラノサイトにおいて、Pmel17遺伝子の発現量が増加すれば、Pmel17が増加する結果、メラノソームの成熟が促進されてメラノソームにおけるメラニン色素の貯蔵量が増加することで、皮膚に供給されるメラニン量が増加し、皮膚の明度低下に寄与すると考えられる。
【0025】
preproendothelin1遺伝子は、プレプロエンドセリン1(preproendothelin1)をコードする遺伝子である。プレプロエンドセリン1は、エンドセリン-1の前駆体となるタンパク質であり、細胞内の酵素の働きにより、プレプロエンドセリン1からビックエンドセリンに変換された後、エンドセリン-1となる。エンドセリン-1は、メラノサイトを増殖させる働きがあることが知られている。
【0026】
毛根部に存在するケラチノサイトにおいて、preproendothelin1遺伝子の発現量が増加すれば、プレプロエンドセリン1が増加する結果、メラノサイトの増殖が促進され、毛幹に供給されるメラニン量が増加するため、毛髪の明度低下に寄与すると考えられる。
また、皮膚に存在するケラチノサイトにおいて、preproendothelin1遺伝子の発現量が増加すれば、プレプロエンドセリン1が増加する結果、メラノサイトの増殖が促進され、皮膚に供給されるメラニン量が増加するため、皮膚の明度低下に寄与すると考えられる。
【0027】
本実施形態の発現促進剤は、TYR遺伝子、DCT遺伝子、TYRP1遺伝子、Pmel17遺伝子、及びpreproendothelin1遺伝子から選ばれる1種又は2種以上のメラニン合成遺伝子の発現を促進することができる。そのため、本実施形態の発現促進剤は、毛根部のメラノサイトにおけるメラニン合成の働きを向上させて、毛髪の明度低下に寄与することで、毛髪の色調変化や白髪の発生を抑制することができると考えられる。同様に、皮膚のメラノサイトにおけるメラニン合成の働きを向上させて、皮膚の明度低下に寄与することができると考えられる。
【0028】
(メラニン輸送遺伝子)
本実施形態の発現促進剤におけるメラニン輸送遺伝子は、細胞においてメラニンの輸送に関与する遺伝子を意味する。メラニン輸送遺伝子としては、例えば、Rab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、及びMLPH遺伝子等が挙げられる。
そのため、本実施形態の発現促進剤は、例えば、Rab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、及びMLPH遺伝子から選ばれる1種又は2種以上のメラニン輸送遺伝子の発現促進剤とすることができる。
【0029】
Rab27A遺伝子は、Rab27Aをコードする遺伝子である。Rab27Aは、低分子量Gタンパク質の一種であり、メラノサイトにおいてメラノソームを輸送する役割がある。
MYO5A遺伝子は、ミオシンVa(myosin VA)をコードする遺伝子である。ミオシンVaは、アクチン依存性のモータータンパク質である。
MLPH遺伝子は、メラノフィリン(Melanophilin)をコードする遺伝子である。メラノフィリンは、Rabタンパク質のエフェクタータンパク質であり、メラノフィリン、Rab27A、及びミオシンVaと三者複合体を形成することで、メラノソームの輸送を促進する。
【0030】
毛根部に存在するメラノサイトにおいて、Rab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、又はMLPH遺伝子の発現量が増加すれば、Rab27A、ミオシンVa、又はメラノフィリンが増加するため、メラノサイトにおけるメラソームの輸送が促進されることで、毛幹に供給されるメラニン量が増加し、毛髪の明度低下に寄与すると考えられる。
また、皮膚に存在するメラノサイトにおいて、Rab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、又はMLPH遺伝子の発現量が増加すれば、Rab27A、ミオシンVa、又はメラノフィリンが増加するため、メラノサイトにおけるメラソームの輸送が促進されることで、皮膚に供給されるメラニン量が増加し、皮膚の明度低下に寄与すると考えられる。
【0031】
本実施形態の発現促進剤は、Rab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、及びMLPH遺伝子から選ばれる1種又は2種以上のメラニン輸送遺伝子の発現を促進することができる。そのため、本実施形態の発現促進剤は、メラノサイトにおけるメラソームの輸送を促進させて、毛幹に供給されるメラニン量が増加することにより、毛髪の明度低下に寄与することで、毛髪の色調変化や白髪の発生を抑制することができると考えられる。同様に、皮膚のメラノサイトにおけるメラソームの輸送を促進させて、皮膚の明度低下に寄与することができると考えられる。
【0032】
(キナ抽出物)
本実施形態の発現促進剤に係るキナ抽出物は、アカネ科キナノキ属の植物(例えば、キナノキ(学名:Cinchona Succirubra))から抽出して得られた抽出物である。抽出部位としては、例えば、樹皮等が挙げられる。
【0033】
上記抽出物は、抽出対象のアカネ科キナノキ属の植物から抽出溶媒を用いて得られた抽出液、及びその抽出液の加工物(例えば、抽出液の希釈物、濃縮物、又は乾燥物等)が含まれる。抽出物の抽出方法は、公知の方法を採用すればよい。抽出操作において抽出温度としては、使用する抽出溶媒に応じて適宜設定すればよく、例えば、-4℃~100℃の範囲で任意に設定してよい。また、抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。抽出溶媒として有機溶媒を用いる場合、1種又は2種以上を用いても良い。
【0034】
本実施形態の発現促進剤に係るキナ抽出物は、上述した抽出方法を用いて得られたものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。キナ抽出物の市販品としては、例えば、丸善製薬株式会社製のキナ抽出液BG、キナ抽出液-J等が挙げられる。
【0035】
本実施形態の発現促進剤におけるキナ抽出物の配合量(キナ抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。キナ抽出物の配合量について、以下同じ。)の上限値は、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現をより促進可能とする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、本実施形態の発現促進剤におけるキナ抽出物の配合量の下限値は、例えば、1.5質量%以下である。
【0036】
(ヨクイニン抽出物)
本実施形態の発現促進剤に係るヨクイニン抽出物は、イネ科ジュズダマ属のハトムギ(学名:Coix lachryma-jobi Ma-yuen)の種子から抽出して得られた抽出物である。抽出部位としては、例えば、種子、種皮を除いた種皮等が挙げられる。
【0037】
上記抽出物は、抽出対象のイネ科ジュズダマ属のハトムギの種子から抽出溶媒を用いて得られた抽出液、及びその抽出液の加工物(例えば、抽出液の希釈物、濃縮物、又は乾燥物等)が含まれる。抽出物の抽出方法は、公知の方法を採用すればよい。抽出操作において抽出温度としては、使用する抽出溶媒に応じて適宜設定すればよく、例えば、-4℃~100℃の範囲で任意に設定してよい。また、抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。抽出溶媒として有機溶媒を用いる場合、1種又は2種以上を用いても良い。
【0038】
本実施形態の発現促進剤に係るヨクイニン抽出物は、上述した抽出方法を用いて得られたものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。ヨクイニン抽出物の市販品としては、例えば、丸善製薬株式会社製のヨクイニン抽出液BG、ヨクイニン抽出液-J、ヨクイニン抽出液LA等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の発現促進剤におけるヨクイニン抽出物の配合量(ヨクイニン抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。ヨクイニン抽出物の配合量について、以下同じ。)の上限値は、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現をより促進可能とする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、本実施形態の発現促進剤におけるヨクイニン抽出物の配合量の下限値は、例えば、1.5質量%以下である。
【0040】
(ワイルドタイム抽出物)
本実施形態の発現促進剤に係るワイルドタイム抽出物は、シソ科イブキジャコウソウ属のワイルドタイム(学名:Thymus Serphyllum)から抽出して得られた抽出物である。抽出部位としては、例えば、葉、茎、花、地上部、全草等が挙げられる。
【0041】
上記抽出物は、抽出対象のシソ科イブキジャコウソウ属のワイルドタイムから抽出溶媒を用いて得られた抽出液、及びその抽出液の加工物(例えば、抽出液の希釈物、濃縮物、又は乾燥物等)が含まれる。抽出物の抽出方法は、公知の方法を採用すればよい。抽出操作において抽出温度としては、使用する抽出溶媒に応じて適宜設定すればよく、例えば、-4℃~100℃の範囲で任意に設定してよい。また、抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。抽出溶媒として有機溶媒を用いる場合、1種又は2種以上を用いても良い。
【0042】
本実施形態の発現促進剤に係るワイルドタイム抽出物は、上述した抽出方法を用いて得られたものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。ワイルドタイム抽出物の市販品としては、例えば、丸善製薬株式会社製のワイルドタイム抽出液BG、ワイルドタイム抽出液、ワイルドタイム抽出液LA等が挙げられる。
【0043】
本実施形態の発現促進剤におけるワイルドタイム抽出物の配合量(ワイルドタイム抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。ワイルドタイム抽出物の配合量について、以下同じ。)の上限値は、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現をより促進可能とする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、本実施形態の発現促進剤におけるワイルドタイム抽出物の配合量の下限値は、例えば、0.7質量%以下である。
【0044】
本実施形態の発現促進剤は、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上の成分以外に、他の任意成分を含むものであってもよく、含まないものであっても良い。例えば、本実施形態の発現促進剤が、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上からなるものであってもよい。
【0045】
(任意成分)
本実施形態の発現促進剤は、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物以外に、任意成分を配合することができる。上記任意成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物(キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物を除く)、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、水等が挙げられる。
【0046】
(用途)
本実施形態の発現促進剤は、頭皮、又は頭皮を除く皮膚に用いることができる。発現促進剤としての製品形態は、特に限定されないが、例えば、化粧品、医薬部外品として通常用いられ得る製品形態が挙げられる。
【0047】
本実施形態の発現促進剤は、抗白髪用として用いても良い。また、抗白髪用として、加齢により増加する白髪を抑制するために用いるものとして良い。
なお、「抗白髪用」とは、頭髪における白髪の発生を抑える用途(白髪予防の用途・白髪改善の用途を含む)に用いることを意味する。
【0048】
(剤型)
本実施形態の発現促進剤の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、ローション状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、固形状、フォーム状(泡状)、霧状、粉末状が挙げられる。
【0049】
(製造方法)
本実施形態の発現促進剤の製造方法は、特に限定されず、公知の化粧品又は医薬部外品の製法を採用すれば、製造できる。
【0050】
(使用方法)
本実施形態の発現促進剤の使用方法は、特に限定されず、適用対象、製品形態、剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
(本実施形態の発現促進剤が配合された頭皮用及び/又は皮膚用組成物)
本実施形態の発現促進剤は、頭皮用及び/又は皮膚用組成物の配合成分として用いることができる。そのため、頭皮用及び/又は皮膚用組成物に、本実施形態の発現促進剤を配合成分として含む頭皮用及び/又は皮膚用組成物としてもよい。また、当該頭皮用及び/又は皮膚用組成物は、頭皮用組成物として用いられる場合、抗白髪用に用いられるものであってよい。
【0052】
頭皮用及び/又は皮膚用組成物の配合成分として、本実施形態の発現促進剤を用いる場合、当該発現促進剤の配合量は、適宜設定すればよい。
例えば、本実施形態の発現促進剤にキナ抽出物を含む場合、頭皮用及び/又は皮膚用組成物におけるキナ抽出物の配合量(キナ抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。)が0.01質量%以上1.5質量%以下の範囲となるように上記発現促進剤を配合することができる。
また、例えば、本実施形態の発現促進剤にヨクイニン抽出物を含む場合、頭皮用及び/又は皮膚用組成物におけるヨクイニン抽出物の配合量(ヨクイニン抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。)が、0.01質量%以上1.5質量%以下の範囲となるように、上記発現促進剤を配合することができる。
また、例えば、本実施形態の発現促進剤にワイルドタイム抽出物を含む場合、頭皮用及び/又は皮膚用組成物におけるワイルドタイム抽出物の配合量(ワイルドタイム抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。)が、0.01質量%以上0.7質量%以下の範囲となるように、上記発現促進剤を配合することができる。
【0053】
(製品形態)
本実施形態の発現促進剤が配合された頭皮用及び/又は皮膚用組成物の製品形態としては、例えば、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、リンス、コンディショナー、整髪料等の頭皮又は毛髪用の化粧料;化粧水、乳液、クリーム、美容液、化粧油、リップクリーム、ハンドクリーム、洗顔料、クレンジング料等の皮膚用化粧料;が挙げられる。
【0054】
(剤型)
本実施形態の発現促進剤が配合された頭皮用及び/又は皮膚用組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、ローション状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、固形状、フォーム状(泡状)、霧状、粉末状が挙げられる。
【0055】
(製造方法)
本実施形態の発現促進剤が配合された頭皮用及び/又は皮膚用組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の化粧品又は医薬部外品の製法を採用すれば、製造できる。
【0056】
(使用方法)
本実施形態の発現促進剤が配合された頭皮用及び/又は皮膚用組成物の使用方法は、特に限定されず、適用対象、製品形態、剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
(頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法)
本実施形態の発現促進剤を用いた頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法は、本実施形態の発現促進剤を用いる以外には、公知の頭皮又は皮膚の処理方法を採用することができる。なお、この頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法は、美容目的のための非治療的な方法である。
また、本実施形態の発現促進剤が配合された頭皮用及び/又は皮膚用組成物を用いた頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法についても、上記の本実施形態の発現促進剤を用いた頭皮又は頭皮を除く皮膚の処理方法と同様である。
なお、「頭皮を除く皮膚」の用語は、頭皮以外の皮膚を意味する。
【0058】
(2)抗白髪用組成物
本実施形態の抗白髪用組成物は、上記(1)メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤で述べた、本実施形態の発現促進剤(キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含むメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤)が配合されたものである。また、本実施形態の抗白髪用組成物は、本実施形態の発現促進剤以外に、任意成分が配合されたものであってもよい。
なお、「抗白髪用」とは、頭髪における白髪の発生を抑える用途(白髪予防の用途・白髪改善の用途を含む)に用いることを意味する。
【0059】
(キナ抽出物)
本実施形態の抗白髪用組成物に、本実施形態の発現促進剤としてキナ抽出物が配合されたものである場合は、キナ抽出物の配合量(キナ抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。キナ抽出物の配合量について、以下同じ。)の下限値が、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現をより促進可能とする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、キナ抽出物の配合量の上限値は、抗白髪用組成物に配合した際のキナ抽出物の保存安定性をより高める観点から、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。
【0060】
(ヨクイニン抽出物)
本実施形態の抗白髪用組成物に、本実施形態の発現促進剤としてヨクイニン抽出物が配合されたものである場合は、ヨクイニン抽出物の配合量(ヨクイニン抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。ヨクイニン抽出物の配合量について、以下同じ。)の下限値が、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現をより促進可能とする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、ヨクイニン抽出物の配合量の上限値は、抗白髪用組成物に配合した際のヨクイニン抽出物の保存安定性をより高める観点から、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。
【0061】
(ワイルドタイム抽出物)
本実施形態の抗白髪用組成物に、本実施形態の発現促進剤としてワイルドタイム抽出物が配合されたものである場合は、ワイルドタイム抽出物の配合量(ワイルドタイム抽出物が抽出溶媒又は希釈溶媒を含む場合は、それらを除く量。ワイルドタイム抽出物の配合量について、以下同じ。)の下限値が、メラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現をより促進可能とする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、ワイルドタイム抽出物の配合量の上限値は、抗白髪用組成物に配合した際のワイルドタイム抽出物の保存安定性をより高める観点から、0.7質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0062】
(任意成分)
本実施形態の抗白髪用組成物は、任意成分を配合することができる。上記任意成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物(但し、キナ抽出物、ヨクイニン抽出物、及びワイルドタイム抽出物を除く)、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、水等が挙げられる。
【0063】
(製品形態)
本実施形態の抗白髪用組成物の製品形態としては、例えば、抗白髪用の育毛剤、抗白髪用のヘアトニック、抗白髪用のヘアローション、抗白髪用のヘアクリーム、抗白髪用のヘアシャンプー、抗白髪用のヘアリンス、抗白髪用のコンディショナー、抗白髪用のヘアトリートメント、抗白髪用の整髪料等の頭皮用及び/又は毛髪用の化粧料が挙げられる。
【0064】
(剤型)
本実施形態の抗白髪用組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、乳液状、ローション状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、固形状、フォーム状(泡状)、霧状、粉末状が挙げられる。
【0065】
(製造方法)
本実施形態の抗白髪用組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の頭皮用及び/又は毛髪用の化粧品の製法を採用すれば、製造できる。
【0066】
(使用方法)
本実施形態の抗白髪用組成物の使用方法は、特に限定されず、適用対象、剤型等に応じて適宜設定することができる。
【0067】
(抗白髪用組成物を用いた頭皮の処理方法)
本実施形態の抗白髪用組成物を用いた頭皮の処理方法は、本実施形態の抗白髪用組成物を用いる以外には、公知の頭皮の処理方法を採用すればよい。なお、この頭皮の処理方法は、美容目的のための非治療的な方法である。
【実施例0068】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0069】
(発現促進剤の評価)
本実施形態に係る発現促進剤を用いて、次に示すメラニン合成遺伝子及びメラニン輸送遺伝子の発現量の評価を行った。
【0070】
(実施例1~3、比較例1)
実施例1~3、比較例1に用いた試験試料は以下の成分を常法により混合して調製した。なお、「BG」とは、1,3-ブチレングリコールの略である(以下の記載において同様)。
実施例1:エタノール抽出により得たキナ抽出物 2質量%(乾燥固形分)、エタノール 25質量%、BG 25質量%、水 48質量%。
実施例2:エタノール抽出により得たヨクイニン抽出物 2質量%(乾燥固形分)、エタノール 25質量%、BG 25質量%、水 48質量%。
実施例3:BG抽出により得たワイルドタイム抽出物 2質量%(乾燥固形分)、エタノール 25質量%、BG 25質量%、水 48質量%
比較例1:BG抽出により得たユリ抽出物 2質量%(乾燥固形分)、エタノール 25質量%、BG 25質量%、水 48質量%
【0071】
なお、実施例1~3、比較例1に用いた試験試料中の各抽出物は以下の操作により得た。
実施例1の組成中の「エタノール抽出により得たキナ抽出物」は、キナの樹皮の粗砕物100gに、抽出溶媒として含水エタノールを500mL加えて攪拌した後、濾紙で濾過して抽出液を得た。この抽出液から常法により凍結乾燥品を得た。
実施例2の組成中の「エタノール抽出により得たヨクイニン抽出物」は、ハトムギの種子の粗砕物100gに、抽出溶媒として含水エタノールを1000mL加えて攪拌した後、濾紙で濾過して抽出液を得た。この抽出液から常法により凍結乾燥品を得た。
実施例3の組成中の「BG抽出により得たワイルドタイム抽出物」は、ワイルドタイムの地上部の粗砕物100gに、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコールを500mL加えて攪拌した後、濾紙で濾過して抽出液を得た。この抽出液から常法により凍結乾燥品を得た。
比較例1の組成中の「BG抽出により得たユリ抽出物」は、ユリの球根の粗砕物100gに、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコールを500mL加えて攪拌した後、濾紙で濾過して抽出液を得た。この抽出液から常法により凍結乾燥品を得た。
【0072】
(遺伝子の発現量評価)
下記の[1]~[4]の手順に従ってメラニン合成遺伝子、メラニン輸送遺伝子の発現量の評価を行った。
【0073】
[1]正常ヒト表皮メラノサイト細胞を正常ヒト表皮メラニン細胞増殖用低血清液体培地(クラボウ社製)に5.0×104cells/mLとなるように調整し、24ウェルプレートに1ウェル当たり各1mLずつ播種した後、37℃、5%CO2下で24時間培養した。
[2]培養開始から24時間経過後、各実施例1~3、比較例1の試験試料を、培養液におけるppm濃度が50ppm(実施例1、2)、25ppm(実施例3)、100ppm(比較例1)となるように、各ウェルの培地中に添加した。また、実施例1~3、比較例1のコントロールとして、エタノール25%、BG25%、水50%の水溶液を25ppm(標準1)、50ppm(標準2)、又は100ppm(標準3)の濃度となるように別々のウェルの培地中に添加した。各試験品の添加後、37℃、5%CO2下で24時間培養した。なお、実施例1、2のコントロールは標準試料2、実施例3のコントロールは標準試料1、比較例1のコントロールは標準試料3をそれぞれ用いた。
[3]試料添加から24時間経過後、D-PBS(-)を用いて各ウェルを洗浄し、トリプシン/EDTA水溶液(トリプシン 0.025質量%、EDTA 0.01質量%の水溶液)で各々の試料で処理した細胞を回収した。回収した細胞から、Maxwell RSC simplyRNA Cells Kit(プロメガ社製)を用いて、各細胞のTotal RNAの抽出を行った。
[4]抽出したTotal RNAを、GoScript Reverse Transcription System(プロメガ社製)を用いて、cDNAに逆転写した。得られた各cDNAを用いてリアルタイムPCR(Roche社製のLightCycler96)により、TYR遺伝子、DCT遺伝子、TYRP1遺伝子、Pmel17遺伝子、preproendothelin1遺伝子、Rab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、及びMLPH遺伝子の各遺伝子、並びにハウスキーピング遺伝子のβ-Actin遺伝子を内部標準として、各mRNAの発現量を測定した。
なお、実施例1~3、比較例1における、TYR遺伝子、DCT遺伝子、TYRP1遺伝子、Pmel17遺伝子、preproendothelin1遺伝子、Rab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、及びMLPH遺伝子の各遺伝子の発現量は、β-Actin遺伝子の発現量を1とした場合の各遺伝子の発現量の比を求めた後、下記計算式によって算出した。
発現量(%)=(発現量(A):実施例1~3、比較例1の試験試料のいずれかを添加したものの各遺伝子の発現量(β-Actin比))/(発現量(B):コントロールの標準1~3のいずれかを添加した場合の各遺伝子の発現量(β-Actin比))×100
【0074】
上記のリアルタイムPCRによる各遺伝子の発現量の測定に用いたプライマーは下記の通りである。
・TYR遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-GGCCTCAATTTCCCTTCACA-3' (配列番号1)
リバース :5'-CAGAGCACTGGCAGGTCCTAT-3' (配列番号2)
・DCT遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-GGTTCCTTTCTTCCCTCCAG-3' (配列番号3)
リバース :5'-AACCAAAGCCACCAGTGTTC-3' (配列番号4)
・TYRP1遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-CCGAAACACAGTGGAAGGTT-3' (配列番号5)
リバース :5'-TCTGTGAAGGTGTGCAGGA-3' (配列番号6)
・Pmel17遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-GGGCATCTTGCTGGTGTT-3' (配列番号7)
リバース :5'-GAGAAGTCTTGCTTCATAAGTCTGC-3' (配列番号8)
・preproendothelin1遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-TCTCTGCTGTTTGTGGCTTG-3' (配列番号9)
リバース :5'-GAGCTCAGCGCCTAAGACTG-3' (配列番号10)
・Rab27A遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-TGGAGGACCAGAGAGTAGTGAAA-3' (配列番号11)
リバース :5'-AGTTTCAAAGTAGGGGATTCCA-3' (配列番号12)
・MYO5A遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-GGGTTAAAACAAGCCAACAGG-3' (配列番号13)
リバース :5'-TCATGGCTCCTCTTCTGTGA-3' (配列番号14)
・MLPH遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-GATGGAGAACCTGGCTCAGA-3' (配列番号15)
リバース :5'-GGAGAGGAGGCGCTTTTT-3' (配列番号16)
・β-Actin遺伝子の発現量測定に用いたプライマー
フォワード:5'-TGGCACCCAGCACAATGAA-3' (配列番号17)
リバース :5'-CTAAGTCATAGTCCGCCTAGAAGCA-3' (配列番号18)
【0075】
(評価結果)
遺伝子発現の評価結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1に示す結果から、実施例1~3の発現促進剤をそれぞれ細胞に添加したものは、メラニン合成遺伝子のTYR遺伝子、DCT遺伝子、TYRP1遺伝子、Pmel17遺伝子、preproendothelin1遺伝子、並びに、メラニン輸送遺伝子のRab27A遺伝子、MYO5A遺伝子、及びMLPH遺伝子の発現量がいずれも増加した。また、比較例1を細胞に添加したものは、上記のメラニン合成遺伝子及びメラニン輸送遺伝子の発現量がいずれも減少した。
これらの結果から、実施例1~3の発現促進剤はメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現量を促進できることが理解できる。
【0078】
(処方例)
本実施形態に係るメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤の処方例1~11を以下に示す。これらの処方例は、公知の製造方法及び使用方法で、製造及び使用が可能である。
なお、処方例1~11のキナエキス、ヨクイニンエキス、ワイルドタイムエキスはいずれも化粧品表示名称である。
【0079】
(処方例1~5)
表2に処方例1~5のメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤を示す。なお、表中の数値は質量%を示す。
【0080】
【0081】
(処方例6)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2E.O.) 8質量%
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(3E.O,) 4質量%
ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム 1質量%
ココイルイセチオン酸ナトリウム 0.5質量%
イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン 3質量%
テトラオレイン酸POE(60)ソルビット 0.3質量%
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド 2質量%
PCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油 1質量%
POE(7)ヤシ油脂肪酸グリセリン 1質量%
カチオン化セルロース 0.6質量%
プロピレングリコール 1質量%
PPG-17 2質量%
キナエキス 2質量%
ヨクイニンエキス 2質量%
ワイルドタイムエキス 2質量%
香料 0.3質量%
精製水 全量が100質量%となる量
【0082】
(処方例7)
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 1質量%
クオタニウム-91 1質量%
ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル 0.5質量%
イソノナン酸イソノニル 0.3質量%
ローズヒップ油 0.5質量%
マカダミアナッツ脂肪酸エチル 0.5質量%
パルミチン酸セチル 0.4質量%
ステアリルアルコール 2質量%
イソプロパノール 0.3質量%
グリセリン 0.1質量%
キャンデリラロウ 0.1質量%
セテアラミドエチルジエトニウム加水分解コメタンパク 0.1質量%
塩酸ピリドキシン 0.1質量%
パントテン酸カルシウム 0.1質量%
キナエキス 2質量%
ヨクイニンエキス 2質量%
ワイルドタイムエキス 2質量%
乳酸 0.1質量%
香料 0.3質量%
精製水 全量が100質量%となる量
【0083】
(処方例8)
加水分解ケラチン 1質量%
ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム 0.4質量%
ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20E.O.) 2質量%
1,3-ブチレングリコール 5質量%
コハク酸ジエトキシエチル 0.05質量%
キナエキス 2質量%
ヨクイニンエキス 2質量%
ワイルドタイムエキス 2質量%
乳酸 0.02質量%
防腐剤 0.4質量%
香料 0.2質量%
精製水 全量が100質量%となる量
【0084】
(処方例9)
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム 0.5質量%
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 5質量%
セタノール 3質量%
ステアリルアルコール 0.8質量%
塩化セチルトリメチルアンモニウム 0.8質量%
臭化セチルトリメチルアンモニウム 1質量%
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1質量%
イソプロパノール 0.2質量%
エタノール 0.4質量%
イソノナン酸イソノニル 0.5質量%
キナエキス 2質量%
ヨクイニンエキス 2質量%
ワイルドタイムエキス 2質量%
防腐剤 0.1質量%
香料 0.2質量%
精製水 全量が100質量%となる量
【0085】
(処方例10)
セタノール 5質量%
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 3質量%
ベヘントリモニウムメトサルフェート 0.1質量%
イソアルキル(C10-40)アミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート 0.1質量%
1,3-ブチレングリコール 3質量%
イソプロパノール 0.7質量%
ヒマシ油 3質量%
ホホバ油 3質量%
シア脂 0.5質量%
アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノ変性シリコーン) 3質量%
アミノプロピルフェニルトリメチコン 3質量%
メチルフェニルポリシロキサン 2質量%
ポリプロピルシルセスキオキサン 0.3質量%
フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸 0.9質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 4質量%
(加水分解シルク/PG-プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー 0.2質量%
加水分解タンパク 0.2質量%
キナエキス 2質量%
ヨクイニンエキス 2質量%
ワイルドタイムエキス 2質量%
防腐剤 0.3質量%
乳酸 0.2質量%
香料 0.4質量%
精製水 全量が100質量%となる量
【0086】
(処方例11)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(2E.O.) 1質量%
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(9E.O.) 1質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(150E.O.) 1質量%
PEG?11メチルエーテルジメチコン 0.5質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 25.6質量%
ジメチルポリシロキサン 4.3質量%
アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体 0.9質量%
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.2質量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.4質量%
タマリンドシードガム 1質量%
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1質量%
ジプロピレングリコール 2質量%
エタノール 1質量%
キナエキス 2質量%
ヨクイニンエキス 2質量%
ワイルドタイムエキス 2質量%
乳酸 適量
パラオキシ安息香酸メチル 0.3質量%
香料 0.4質量%
精製水 全量が100質量%となる量
【0087】
(処方例1a~11a)
頭皮及び/又は皮膚用組成物の処方例1a~11aを示す。この処方例1a~11aは、上記の処方例1~11とそれぞれ同じ組成の組成物である。
なお、処方例1a~11aは、「キナエキス、ヨクイニンエキス、及びワイルドタイムエキスを含むメラニン合成遺伝子及び/又はメラニン輸送遺伝子の発現促進剤」と、当該発現促進剤以外の成分とが、頭皮及び/又は皮膚用組成物に配合されたものであり、各組成物中のキナエキス、ヨクイニンエキス、及びワイルドタイムエキスの配合量がそれぞれ終濃度2質量%となるものである。
処方例1a、2a、3a、4a、5a:抗白髪用の育毛剤、又は皮膚用組成物
処方例6a:抗白髪用のヘアシャンプー
処方例7a:抗白髪用の洗い流すヘアトリートメント
処方例8a、9a、10a:処方例8a、9a、10aをそれぞれ第1剤、第2剤、第3剤とした抗白髪用の3剤式ヘアトリートメント
処方例11a:抗白髪用の洗い流さないヘアトリートメント
【0088】
(処方例1b~11b)
抗白髪用組成物の処方例1b~11bを示す。この処方例1b~11bは、上記の処方例1~11とそれぞれ同じ組成の組成物である。
処方例1b、2b、3b、4b、5b:抗白髪用の育毛剤
処方例6b:抗白髪用のヘアシャンプー
処方例7b:抗白髪用の洗い流すヘアトリートメント
処方例8b、9b、10b:処方例8b、9b、10bを、それぞれ第1剤、第2剤、第3剤とした抗白髪用の3剤式ヘアトリートメント
処方例11bと同じ組成の組成物:抗白髪用の洗い流さないヘアトリートメント