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  • 特開-スケール 図1
  • 特開-スケール 図2
  • 特開-スケール 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047645
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】スケール
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
G01D5/245 110R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153548
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】青木 敏彦
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA46
2F077NN08
2F077NN09
2F077VV02
2F077VV11
2F077VV33
(57)【要約】
【課題】 反りを抑制しつつ渦電流のムラを抑制することができるスケールを提供する。
【解決手段】 スケールは、第1主面に導体のスケールパターンが形成された基板と、前記基板の第2主面に形成され、樹脂を母材として導電性材料が添加された導電膜と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面に導体のスケールパターンが形成された基板と、
前記基板の第2主面に形成され、樹脂を母材として導電性材料が添加された導電膜と、を備えることを特徴とするスケール。
【請求項2】
前記導電膜の前記導電性材料は、磁気シールド性を有することを特徴とする請求項1に記載のスケール。
【請求項3】
前記第2主面の一部を支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスケール。
【請求項4】
前記樹脂は、前記基板と前記支持部材との接着性を有することを特徴とする請求項3に記載のスケール。
【請求項5】
前記導電膜は、前記第2主面の全体にわたって形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスケール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、スケールに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導式エンコーダに用いられるスケールが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-294225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスケールは、測定軸に沿って相対移動させるために、スケールパターンが形成されていない面(裏面)が支持部材によって支持されている。支持部材が支持する位置などに応じて、支持部材に発生する渦電流にムラが生じる。この渦電流に起因して、スケールからの信号強度にムラが生じるおそれがある。そこで、スケールの裏面に厚膜メッキなどを形成して厚膜メッキに渦電流を生じさせることが考えられる。しかしながら、厚膜メッキの応力によってスケールに反りが生じるおそれがある。
【0005】
1つの側面では、本発明は、反りを抑制しつつ渦電流のムラを抑制することができるスケールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本発明に係るスケールは、第1主面に導体のスケールパターンが形成された基板と、前記基板の第2主面に形成され、樹脂を母材として導電性材料が添加された導電膜と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記スケールにおいて、前記導電膜の前記導電性材料は、磁気シールド性を有していてもよい。
【0008】
上記スケールにおいて、前記第2主面の一部を支持する支持部材が備わっていてもよい。
【0009】
上記スケールにおいて、前記樹脂は、前記基板と前記支持部材との接着性を有していてもよい。
【0010】
上記スケールにおいて、前記導電膜は、前記第2主面の全体にわたって形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
反りを抑制しつつ渦電流のムラを抑制することができるスケールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】検出ヘッドとスケールとの間の電磁結合を利用した電磁誘導式エンコーダの構成を例示する図である。
図2】スケールが支持部材によって支持された構造を例示する図である。
図3】スケールの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0014】
図1は、検出ヘッドとスケールとの間の電磁結合を利用した電磁誘導式エンコーダ100の構成を例示する図である。図1で例示するように、電磁誘導式エンコーダ100は、測定軸方向に相対移動する検出ヘッド10とスケール20とを有する。検出ヘッド10およびスケール20は、それぞれ略平板形状を有し、所定の隙間を介して対向配置されている。また、電磁誘導式エンコーダ100は、送信信号生成部30、変位量測定部40などを備えている。図1において、X軸は、検出ヘッド10の変位方向(測定軸)を表している。なお、スケール20が構成する平面において、X軸と直交する方向をY軸とする。
【0015】
検出ヘッド10には、送信コイル50、受信コイル60などが設けられている。送信コイル50は、X軸方向に長さ方向を有する矩形コイルを構成している。図1で例示するように、受信コイル60は、送信コイル50の内側に配置されている。
【0016】
スケール20においては、矩形状を有する複数のスケールパターン22が、X軸方向に沿って、基本周期λで配列されている。各スケールパターン22は、送信コイル50と電磁結合するとともに、受信コイル60と電磁結合する。
【0017】
送信信号生成部30は、単相交流の送信信号を生成し、送信コイル50に供給する。この場合、送信コイル50に磁束が発生する。それにより、複数のスケールパターン22に起電流が発生する。当該複数のスケールパターン22は、送信コイル50が発生する磁束と電磁結合することで、X軸方向に所定の空間周期で変化する磁束を発生する。スケールパターン22が発生する磁束は、受信コイル60に起電流を生じさせる。検出ヘッド10の変位量に応じて各コイル間の電磁結合が変化し、基本周期λと同じ周期の正弦波信号が得られる。したがって、受信コイル60は、複数のスケールパターン22が発生する磁束の位相を検出する。変位量測定部40は、この正弦波信号を電気的に内挿することによって最小分解能のデジタル量として用いることができ、検出ヘッド10の変位量を測定する。
【0018】
スケール20を測定軸に沿って相対移動させるために、スケール20は、スケールパターンが形成されていない面(裏面)が支持部材によって支持されている。図2は、スケール20が支持部材によって支持される構造を例示する図である。一例として、図2は、電磁誘導式エンコーダが組み込まれたインジケータを例示する断面図である。
【0019】
図2で例示するように、インジケータは、一端が開口された円筒状の本体ケース1と、この本体ケース1の一端に回動自在に装着された円筒状の枠体2と、本体ケース1に軸方向に移動可能に支持されたスピンドル3と、このスピンドル3の軸方向の変位量を検出する電磁誘導式エンコーダ100とを有して構成される。
【0020】
本体ケース1には、他端面略中央に支持鍔11が一体形成されている。本体ケース1の図2中の上側つまり外周壁上部には、連結部材12を介してスピンドル保護筒13が、図2中の下側つまり外周壁下部にはステム14が、互いに同一軸線上に沿ってそれぞれ取付けられている。連結部材12およびステム14は、軸受を構成する。
【0021】
ステム14には、図2中の上端のヘッド部31がスピンドル保護筒13内に摺動自在に嵌合されたスピンドル3が摺動自在に挿入されている。スピンドル3には、ステム14の下方より突出した下端に測定子32が設けられているとともに、本体ケース1内に位置する略中央位置に支持部材33およびスプリング係止ピン34がそれぞれ取付けられている。スプリング係止ピン34と本体ケース1の内周壁との間には、スピンドル3を図中下方へ付勢するとともにスピンドル3の回動を規制する役目も果たす引張ばね35が、その自然長よりも長くなるように引っ張られた状態で設けられている。
【0022】
本体ケース1の開口する一端側の内周壁17には、板状の保持部材41が図示しないビスにより固定されている。保持部材41には、図2に示すように、略中央に後述する検出ヘッド10を保持するための切欠部43が形成されている。
【0023】
電磁誘導式エンコーダ100は、検出ヘッド10およびスケール20を含み、スピンドル3の軸方向の絶対的な変位量を検出可能に構成されている。検出ヘッド10は、スピンドル3の近傍でかつスピンドル3の軸方向に沿って、本体ケース1に固定されている保持部材41の切欠部43に嵌合された状態となっている。スケール20は、検出ヘッド10に所定の隙間をもって対向配置され、かつ支持部材33を介してスピンドル3に固定されている。
【0024】
保持部材41の正面側(図2の右側)には、スペーサ51を介して検出側基板5が、保持部材41と平行に固定されている。検出側基板5は、後述する枠体2の回動軸線Aを中心とする仮想円軌跡に沿って円板状に形成されている。検出側基板5の正面側(図2の右側)の表面には、後述する接点パターン52が形成されている。
【0025】
支持部材33の材質、支持部材33によってスケール20が支持される支持範囲、などによっては、スケール20を透過した磁束により支持部材33に発生する渦電流に分布(位置によるムラ)が生じる。したがって、スケール20の場所に応じてスケール20からの信号強度が異なるおそれがある。信号強度に分布(位置によるムラ)が生じると、電磁誘導式エンコーダ100の測定精度に誤差が発生する。
【0026】
そこで、スケール20を構成する基板の裏面全面に、例えば厚さ18μ、程度のCu(銅)の厚膜メッキを形成し、当該メッキに渦電流を発生させ、支持部材33の影響を低減することが考えられる。しかしながら、基板の裏面にCu厚膜メッキを施すことでコストアップになること、また厚膜Cuメッキの応力によりスケール20に反りが発生するといった問題が生じ得る。また、メッキ工程と、支持部材33へのスケール20の接着工程とが別のため、コストアップになる。スケール20の反りは、厚膜Cuメッキを連続膜からメッシュ状に分断することで低減できるが、分断した隙間から磁束が漏れるため信号強度の分布が発生してしまう。
【0027】
そこで、本実施形態に係るスケール20は、低コストで反りを抑制することができる構成を有している。以下、スケール20の詳細について説明する。
【0028】
図3は、スケール20の模式的な断面図である。図3で例示するように、スケール20は、基板21の上面に、所定の間隔で複数の金属格子が配置されたスケールパターン22が形成された構造を有している。
【0029】
基板21は、特に限定されるものではない。基板21は、例えば、金属以外の材料で構成されている。例えば、金属酸化物、有機物、ガラスエポキシ材、ガラスなどである。ガラスとして、石英ガラス(合成溶融石英)のような低膨張係数材料が用いられることもある。
【0030】
スケールパターン22は、金属などの導電体によって構成されている。
【0031】
基板21の裏面には、導電膜23が形成されている。導電膜23は、樹脂材料を母材として導電性材料が添加された導電膜である。樹脂材料は、エポキシ、ウレタン、アクリル、シリコーン等などである。導電性材料は、導電性を有していれば特に限定されるものではない。導電性材料として、例えば、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)などの低抵抗材料を用いることができる。
【0032】
導電膜23が導電性材料を含むことから、磁束がスケール20を透過しても、導電膜23で渦電流を生じさせることができる。それにより、支持部材33の影響を抑制することができる。また、樹脂材料は、一般的にヤング率が1GPa以下から10GPa程度と、Cuメッキ膜の数10GPaから100GPaに対し十分に小さい。したがって、基板21の反りを低減できる。以上のことから、反りを抑制しつつ渦電流のムラを抑制することができる。
【0033】
また、基板21への塗布前の樹脂材料は、ペースト状であるため、スクリーン印刷やディスペンサ等の簡便なプロセスで塗布できる。したがって、プロセスによるコストを低減でき、またメッキのように廃液が発生しないメリットも持つ。
【0034】
導電膜23の導電性材料は、磁束を通さない磁気シールド性を有していることが好ましい。導電膜23が磁束を通さないことで、支持部材33に磁束が到達しない。それにより、支持部材33の影響をより抑制することができるようになる。磁気シールド性を有する導電性材料として、パーマロイ、フェライト等を用いることができる。
【0035】
樹脂材料のうち、エポキシ、ウレタン、アクリル、シリコーン等などは、ICチップ等の実装に用いるような接着機能を有するものもある。このような樹脂材料を用いることで、スケール20と支持部材33とを接着させる接着剤を新たに用意する必要がなくなる。したがって、樹脂材料の塗布と、支持部材33へのスケール20の接着とを、一つの工程にまとめることができる。
【0036】
導電膜23は、基板21の裏面の全体を覆っていることが好ましい。この構成では、磁束の漏れが抑制され、支持部材33の影響をより抑制することができるようになる。また、支持部材33がどのような形状を有していても、支持部材33は導電膜23を介してスケール20を支持するため、支持部材33の形状の影響を受けずに済む。例えば、支持部材33がスケール20を支持する場所が変更されても、支持部材33における渦電流の分布が抑制される。また、導電膜23は、十分に渦電流が流れる程度の厚みを有していることが好ましい。例えば、導電膜23の厚さdは、表皮効果の観点から、d=√(2ρ/ωμ)以上であることが好ましい。ρは電気抵抗率であり、ωは電流の角周波数であり、μは導電膜の絶対透磁率である。
【0037】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 検出ヘッド
20 スケール
21 基板
22 スケールパターン
23 導電膜
30 送信信号生成部
33 支持部材
40 変位量測定部
50 送信コイル
60 受信コイル
100 電磁誘導式エンコーダ
図1
図2
図3