(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047691
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】流体制御弁及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/36 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
F16K1/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153607
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】今井 和也
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA02
3H052CA39
(57)【要約】
【課題】弁体の駆動域を犠牲にすることなく、着座面の拡大を図り、しかも、その着座面を樹脂層により形成するうえで量産性の向上をも図る。
【解決手段】アクチュエータ30からの動力がプランジャ40を介して弁体20に伝達されるように構成されており、弁体20の着座面21が弁座10の弁座面11に対して接離することで流体の流れを制御する流体制御弁Vであって、弁体20がプランジャ40とは別体であり、着座面21が樹脂層20bにより形成されたものにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータからの動力がプランジャを介して弁体に伝達されるように構成されており、前記弁体の着座面が弁座の弁座面に対して接離することで流体の流れを制御する流体制御弁であって、
前記弁体が前記プランジャとは別体であり、
前記着座面が樹脂層により形成されている、流体制御弁。
【請求項2】
前記アクチュエータに電圧が印加されていない状態では前記着座面と前記弁座面との間に隙間が形成されており、
前記アクチュエータに電圧を印加すると、当該アクチュエータの動力により前記弁体が前記弁座に近づいて流量を減少させる、請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記アクチュエータに電圧が印加されていない状態では前記弁体が前記弁座に着座しており、
前記アクチュエータに電圧を印加すると、当該アクチュエータの動力により前記弁体が前記弁座から離れて流量を増大させる、請求項1記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記着座面が、前記弁体の下面である、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記樹脂層が、架橋改質フッ素系樹脂である、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記樹脂層が、前記弁体に形成された窪み部に設けられている、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記弁体及び前記プランジャが、前記弁座及び前記弁体の接触に伴って生じる前記プランジャの傾斜を抑制する傾斜抑制突起を介して接触している、請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の流体制御弁を備える流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁及び流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体制御弁としては、特許文献1に示すように、アクチュエータからの動力が弁体に伝達されて、弁体の着座面が弁座の弁座面に対して接離することで流体の流れを制御するように構成されたものがある。
【0003】
かかる構成において、弁座と弁体との間のシール性を向上させるべく、弁体の着座面をフッ素系樹脂などの樹脂層により形成することがある。
【0004】
このように樹脂層により着座面を形成する場合、弁座と弁体との間を閉じようとすると、
図7に示すように、樹脂層が弁座面に食い込む状態となる。この食い込みの分、弁座と弁体との間を閉じるためには、着座面が金属により形成されている構成と比べて、アクチュエータによる弁体のストローク量が余分に奪われることになる。
【0005】
ところで、上述した特許文献1の弁体は、着座面の周囲にダイアフラムが一体的に設けられている。このことから、シール性の向上を図るべく、着座面を広げようとすると、その分、ダイアフラムの面積が狭くなる。そうすると、ダイアフラムの面積によっては弁体の駆動域が狭くなるので、着座面を樹脂層により形成する構成においては、上述した食い込み分のストローク量が稼げなくなる恐れがあり、着座面の拡大には限度が生じる。
【0006】
また、着座面の周囲にダイアフラムが一体的に設けられている弁体において、この着座面を樹脂層により形成しようとすると、1つ1つの弁体に切り取ったシート状のフッ素系樹脂を貼り付ける等の工程が必要となり、量産性が悪いといった課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上述した課題を一挙に解決するべくなされたものであり、弁体の駆動域を犠牲にすることなく、着座面の拡大を図り、しかも、その着座面を樹脂層により形成するうえでの量産性をも向上させることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る流体制御弁は、アクチュエータからの動力がプランジャを介して弁体に伝達されるように構成されており、前記弁体の着座面が弁座の弁座面に対して接離することで流体の流れを制御する流体制御弁であって、前記弁体が前記プランジャとは別体であり、前記着座面が樹脂層により形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
このようなものであれば、弁体をプランジャと別体にしているので、ダイアフラムがプランジャに設けられていれば、ダイアフラムの面積を狭くすることなく、すなわちダイアフラムによる弁体の駆動域を犠牲にすることなく、着座面の拡大を図れる。
さらに、弁体をプランジャと別体にしているので、例えば複数個の弁体に1枚のシート状のフッ素系樹脂を貼り付ける等、複数個の弁体に対して一挙に樹脂層による着座面を形成することができ、量産性の向上をも図れる。
【0011】
上述した作用効果がより顕著に発揮される態様としては、流体制御弁が所謂ノーマルオープンタイプのもの、すなわち、前記アクチュエータに電圧が印加されていない状態では前記着座面と前記弁座面との間に隙間が形成されており、前記アクチュエータに電圧を印加すると、当該アクチュエータの動力により前記弁体が前記弁座に近づいて流量を減少させる態様が挙げられる。
このようなノーマルオープンタイプの流体制御弁は、所謂ノーマルクローズタイプのものに比べて、閉状態におけるシートリークの問題がより顕著であるため、上述した樹脂層により形成した着座面によるシール性の向上効果がより顕著に発揮される。
【0012】
ノーマルオープンタイプのより具体的な実施態様としては、前記着座面が、前記弁体の下面である。
【0013】
また、別の実施態様としては、流体制御弁が所謂ノーマルクローズタイプのもの、すなわち、前記アクチュエータに電圧が印加されていない状態では前記弁体が前記弁座に着座しており、前記アクチュエータに電圧を印加すると、当該アクチュエータの動力により前記弁体が前記弁座から離れて流量を増大させる態様を挙げることができる。
【0014】
前記樹脂層としては、架橋改質フッ素系樹脂が好ましい。
架橋改質フッ素系樹脂は、フッ素系樹脂に特定の条件下で電離放射線を照射するなどして、架橋させたものであり、架橋時に自ら金属と化学的に結合し、金属基体に直接接着することができるので、コンタミの要因ともなるプライマー等の接着層を不要にすることができる。なお、ここでの架橋とは、樹脂同士の架橋であって、金属と樹脂との架橋という意味ではない。
【0015】
樹脂層の加工性の向上を図るためには、前記弁体の前記弁座を向く面に窪み部が形成されており、前記樹脂層が、前記窪み部に設けられていることが好ましい。
【0016】
ところで、従来の流体制御弁においては、弁体及びプランジャを面接触させる構造が採用されている。このような構成においては、弁体及び弁座の機械加工によって生じる公差の影響を受け易く、弁体及び弁座の接触に伴って生じる当該弁体の傾斜によってプランジャが傾斜してしまうため、各部材の製作工程や各部材の組立工程において高い精度が要求される。また、弁体及びプランジャが面接触された状態が維持されると、その隙間に流体が滞留し、この滞留した流体によって弁体及びプランジャが劣化してしまうことがあった。
そこで、前記弁体及び前記プランジャが、前記弁座及び前記弁体の接触に伴って生じる前記プランジャの傾斜を抑制する傾斜抑制突起を介して接触していることが好ましい。
このようなものであれば、弁体及びプランジャが傾斜抑制突起を介して接触しているため、弁体及び弁座の接触に伴って生じる当該弁体の傾斜の影響がプランジャに伝わり難くなる。これにより、プランジャの弁座に対する傾斜が一定に保持され易くなる。さらに、弁体及びプランジャの間の隙間に流体が滞留し難くなり、弁体及びプランジャが接触された状態が維持されたとしても、弁体及びプランジャが劣化し難くなる。
【0017】
また、本発明に係る流体制御装置は、上述した流体体制御弁を備えていることを特徴とするものであり、このようなものであれば、上述した流体制御弁と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された本発明によれば、弁体の駆動域を犠牲にすることなく、着座面の拡大を図り、しかも、その着座面を樹脂層により形成するうえで量産性の向上をも図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態の流体制御装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態の流体制御弁の部分的な構成を示す模式図である。
【
図3】同実施形態のプランジャ及び弁体を示す模式図である。
【
図4】別の実施形態の流体制御弁の部分的な構成を示す模式図である。
【
図5】別の実施形態の流体制御装置の全体構成を示す模式図である。
【
図6】別の実施形態の流体制御装置の全体構成を示す模式図である。
【
図7】着座面を形成する樹脂層が弁座面に食い込む状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る流体制御弁及びその流体制御弁を用いた流体制御装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施形態に係る流体制御装置は、半導体製造プロセスに使用される所謂マスフローコントローラである。なお、本発明に係る流体制御装置は、半導体制御プロセスだけでなく、その他のプロセスにおいても使用することができる。
【0022】
ここでの流体制御装置MFCは、
図1に示すように、圧力式のものである。具体的には、流体制御装置MFCは、その内部に流路Lが設けられたブロック体Bと、ブロック体Bに設置される流体制御弁Vと、ブロック体Bの流体制御弁Vよりも下流側に設置される一対の圧力センサPS1,PS2と、一対の圧力センサPS1,PS2で測定される圧力値に基づき算出される流路Lの流量値が予め定められた目標値に近づくように流体制御弁Vをフィードバック制御する制御部Cと、を備えている。
なお、本実施形態の流体制御装置MFCは、流体制御弁Vに特徴があるので、まずは流体制御弁Vの周辺構造について説明する。
【0023】
ブロック体Bは、例えば直方体形状のものであり、その所定面に流体制御弁V及び一対の圧力センサPS1,PS2が設置されている。また、ブロック体Bには、その所定面に流体制御弁Vを設置するための凹状の収容部B1が設けられており、その収容部B1によって流路Lが上流側流路L1と下流側流路L2とに分断されている。そして、収容部B1には、その底面に上流側流路L1の一端が開口していると共に、その側面に下流側流路L2の一端が開口している。
【0024】
一対の圧力センサPS1,PS2は、流路Lにおける層流素子S1の上流側と下流側にそれぞれ接続されており、いずれも一対の圧力センサPS1,PS2の出力に基づいて流量を算出する流量算出部S2に接続されている。一対の圧力センサPS1,PS2は、ブロック体Bの所定面に対して流体制御弁Vと共に一列に並べて取り付けてある。
【0025】
制御部Cは、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ等を備えた所謂コンピュータを有し、前記メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協働することによって前記各機能が実現されるようにしてある。具体的には、流量算出部S2で算出された流量値が予めメモリに記憶された目標値に近づくように流体制御弁Vの弁開度をフィードバック制御するものである。
【0026】
次に、本実施形態の流体制御弁Vについて説明する。
【0027】
本実施形態の流体制御弁Vは、所謂ノーマルオープンタイプのものである。具体的にこの流体制御弁Vは、
図1及び
図2に示すように、ブロック体Bの収容部B1に嵌め込まれる弁座10と、弁座10に対して接離方向へ移動できるように設置された弁体20と、弁体20を移動させるアクチュエータ30と、弁体20とアクチュエータ30との間に介在し、アクチュエータ30の動力を弁体20に伝達するプランジャ40と、プランジャ40と一体的に設けられて弁室VRを構成する薄膜状のダイアフラム50と、を備えている。そして、流体制御弁Vは、このダイアフラム50の撓みを利用し、弁室VRの気密性を保持しながら、アクチュエータ30の動力がプランジャ40を介して弁体20に伝達されるようになっている。
【0028】
弁座10は、ブロック体Bの収容部B1に嵌り込む例えば金属製のブロック状のものである。そして、弁座10は、ブロック体Bの収容部B1に嵌め込んだ状態で、そのブロック体Bの所定面と同一方向を向く面が弁座面11となっており、その弁座面11が弁室VRの内面の一部を構成している。また、弁座10の内部には、上流側流路L1と連通する第1流路L3と下流側流路L2と連通する複数の第2流路L4とが設けられている。
【0029】
第1流路L3は、その一端が弁座面11の中央に開口していると共に、その他端が収容部B1の底面と対向する面に開口している。また、第2流路L4は、その一端が弁座面11の中央を中心とした同心円上に開口していると共に、その他端が収容部B1の内側面と対向する外側面に開口している。そして、弁座10の外側面は、段状になっており、弁座面11側が収容部B1の内側面と密着するようになっていると共に、弁座面11と反対面側が収容部B1の内側面と隙間12を空けて対向するようになっている。これにより、ブロック体Bの収容部B1に弁座10を嵌め込んだ状態で、第1流路L3が上流側流路L1と連通すると共に、第2流路L4が隙間12を介して下流側流路L2と連通するようになっている。
【0030】
弁座面11には、その中央を中心として同心円状に複数の流通溝13が形成されている。そして、各流通溝13には、第2流路L4へと連通する複数の導通孔14が等間隔に配置されている。これにより、弁室VR内に滞留する流体が偏りなく第2流路L4へ導出されるようになっている。
【0031】
弁体20は、弁座面11と対向する平坦な着座面21を有する例えば回転体形状をなす薄板状のものである。そして、弁体20には、着座面21と反対側の面であるダイアフラム50と対向する面に曲面状(具体的には、球面状)の傾斜抑制突起22が設けられている。なお、傾斜抑制突起22は、ダイアフラム50に接続されるプランジャ40と対向するように設けられている。また、傾斜抑制突起22は、弁体20の中心軸(
図2中、一点鎖線にて示す。)上にその頂点が位置するように設けられており、また、その頂点がプランジャ40の軸(
図2中、一点鎖線にて示す。)上に位置するように配置されている。また、弁体20は、弁座面11に対し、その弁座面11に設置された支持リング23上に載置されるリング状の板バネ24(弾性体)を介して支持されている。これにより、弁体20は、弁座10側に対する押圧力に対して板バネ24によって反発するようになっている。
【0032】
アクチュエータ30は、ピエゾ素子を複数枚積層してなるピエゾスタック31と、ピエゾスタック31に対して電圧を印加するための端子と、を備え、端子を介して印加される電圧によってピエゾスタック31が伸長するように構成されている。
【0033】
プランジャ40は、その一端側がダイアフラム50と一体的に形成され、その他端側がアクチュエータ30側へ伸びる棒状のものであり、この実施形態では、他端側がアクチュエータ30側に膨出した膨出部41として形成されており、この膨出部41がアクチュエータ30に直接接触している。
【0034】
ダイアフラム50は、弁室VRの気密性を保持しながらプランジャ40の動きを弁体20に伝達する役割を果たすものである。
【0035】
そして、本実施形態の流体制御弁Vは、
図3に示すように、上述した弁体20が、プランジャ40とは別体であり、弁体20の着座面21が樹脂層20bにより形成されていることを特徴とするものである。
【0036】
より詳細に説明すると、
図3に示すように、本実施形態ではプランジャ40の弁体20を向く面に凹部42が設けられており、この凹部42が上述した弁室VRとして形成されている。
【0037】
本実施形態の弁体20は、上述した凹部42内に収容されており、その下面が着座面21として機能するものである。
【0038】
具体的にこの弁体20は、金属製の基体20aと、この基体20aの一部を被覆する樹脂層20bとを具備する。
【0039】
基体20aは、プランジャ40と直接接触するものであり、このプランジャ40を介してアクチュエータ30の動力が伝達される。ここでの基体20aは、プランジャ40を向く面に上述した傾斜抑制突起22が設けられている。一方、基体20aの弁座10を向く面には窪み部20cが形成されている。言い換えれば、基体20aの弁座10を向く面の外周には環状の突条部20dが設けられており、この突条部20dの内側が窪み部20cとして形成されている。
【0040】
樹脂層20bは、例えば架橋改質フッ素系樹脂であって、具体的には改質PFAである。この樹脂層20bは、上述した窪み部20cに設けられており、その形成方法の一例としては、上述した基体20aにシート状のフッ素系樹脂を貼り付けて、特定の条件下で電子線を照射するなどして、フッ素系樹脂を架橋させる方法を挙げることができる。なお、ここでの架橋とは、樹脂同士の架橋であって、金属と樹脂との架橋という意味ではない。なお、ここでは、
図4に示すように、複数個の弁体20に対して一挙に樹脂層20bからなる着座面21を形成し、そのうちの1つの弁体20を本実施形態の流体制御弁Vに用いている。
【0041】
次に、本実施形態に係る流体制御弁Vの動作について説明する。
【0042】
前記流体制御弁Vは、アクチュエータ30に電圧が印加されていない状態において、弁開度(弁座10の弁座面11と弁体20の着座面21との間の距離)が所定値になるように設定されている。なお、この弁開度が所定値になった状態が流体制御弁Vの全開状態となる。
【0043】
次に、アクチュエータ30に電圧が印加された状態になると、アクチュエータ30が伸びる。そして、このアクチュエータ30の伸びに伴う動力がプランジャ40を介して弁体20へと伝達され、弁体20が板バネ24の押圧に抗するように弁座10に接触する方向(近づく方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が所定値よりも小さい値となる。なお、アクチュエータ30は、印加される電圧値が大きくなるほどその伸びが大きくなるため、電圧値の大きさを調節することにより、弁開度を制御できるようになっている。
【0044】
アクチュエータ30に印加される電圧が所定値以上になると、弁座10の弁座面11と弁体20の着座面21とが接触する。この時、弁座10及び弁体20の公差によって弁体20が傾斜することがあるが、弁体20及びプランジャ40は、傾斜抑制突起22を介して接触するため、その傾斜によるプランジャ40の傾斜が抑制される。
【0045】
続いて、アクチュエータ30に印加される電圧が小さくなると、アクチュエータ30が縮む。そして、このアクチュエータ30の縮みに伴って弁体20が板バネ24の押圧によって弁座10と離間する方向(遠ざかる方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が大きい値になる。
【0046】
このように構成された流体制御弁Vによれば、弁体20をダイアフラム50が設けられているプランジャ40と別体にしているので、ダイアフラム50の面積を狭くすることなく、すなわちダイアフラム50による弁体20の駆動域を犠牲にすることなく、着座面21の拡大を図れる。これにより、着座面21を樹脂層20bにより形成しつつ、シール性を担保することができる。
【0047】
さらに、弁体20をプランジャ40と別体にしているので、例えば複数個の弁体20に1枚のシート状のフッ素系樹脂を貼り付ける等、複数個の弁体20に対して一挙に樹脂層20bによる着座面21を形成することができ、量産性の向上をも図れる。
【0048】
また、本実施形態の流体制御弁Vはノーマルオープンタイプのものであり、ノーマルクローズタイプのものに比べて、閉状態におけるシートリークの問題がより顕著であるため、上述した樹脂層20bにより形成した着座面21によるシール性の向上効果がより顕著に発揮される。
【0049】
加えて、樹脂層20bが架橋改質フッ素系樹脂であり、この架橋改質フッ素系樹脂は、架橋時に金属製の基体20aと共有結合するので、基体20aに直接接着することがで、コンタミの要因ともなるプライマー等の接着層を不要にすることができる。
しかも、共有結合は、配位結合やイオン結合、分子間力等と比べて強い結合であるので、架橋改質フッ素系樹脂と金属製の基体20aとを強い結合力で安定して接着することができる。
そのうえ、架橋改質フッ素系樹脂は、改質前と比べ弾性が向上するので、着座面21が弁座面11に粘りつくことなく離接でき、流体制御弁Vの応答性が向上するという効果をも期待できる。
【0050】
また、基体20aの弁座10を向く面に窪み部20cを形成し、この窪み部20cに樹脂層20bを設けるので、樹脂層20bを削ったり研磨したりする工程における加工性の向上を図れる。
【0051】
さらに、弁体20及びプランジャ40が傾斜抑制突起22を介して接触しているため、弁体20及び弁座10の接触に伴って生じる当該弁体20の傾斜の影響がプランジャ40に伝わり難くなる。これにより、プランジャ40の弁座10に対する傾斜が一定に保持され易くなる。さらに、弁体20及びプランジャ40の間の隙間に流体が滞留し難くなり、弁体20及びプランジャ40が接触された状態が維持されたとしても、弁体20及びプランジャ40が劣化し難くなる。
【0052】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記実施形態では、プランジャ40の弁体20を向く面に凹部42を設けて、その凹部42に弁体20を収容していたが、
図4に示すように、ブロック体Bの収容部B1を前記実施形態よりも深く形成することにより、この収容部B1に弁体20を収容しても良い。これならば、プランジャ40に凹部42を形成する必要がないので、例えば従来の構成のプランジャ40を用いることができる。
【0054】
また、前記実施形態では、流体制御装置MFCを差圧式のものとして説明したが、
図5に示すように、熱式のものであっても良い。具体的にこのものは、流路Lを流れる流体のうちの所定割合の流体が導かれるように当該流路Lと並列接続した細管Tと、この細管Tに設けたヒータH及びその前後に設けた一対の温度センサTS1,TS2とを具備したものである。そして、前記細管Tに流体が流れると、二つの温度センサTS1,TS2の間にその質量流量に対応した温度差が生じることから、この温度差に基づいて流量を測定するように構成してある。
【0055】
さらに、流体制御装置MFCとしては、
図6に示すように、流体制御弁V1,V2を複数備えたものであっても良い。具体的にこのものは、流体が通過する抵抗体Rと、ブロック体Bの外面に設置された一次側圧力センサP0、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2、上流側流体制御弁V1、及び、下流側流体制御弁V2と、上流側流体制御弁V1及び下流側流体制御弁V2を制御する制御部Cと、を具備している。なお、この
図6においては、上流側流体制御弁V1を本発明に係る構成としてあるが、下流側流体制御弁V2を本発明に係る構成としても良いし、上流側流体制御弁V1及び下流側流体制御弁V2の双方を本発明に係る構成としても良い。
【0056】
また、樹脂層20bは、架橋改質フッ素系樹脂のみならず、種々の樹脂、例えばポリアミド、ポリカーボネート、PBTなどのポリエステル樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリステル樹脂などでもよい。これらの場合、接着剤を不要とするため、例えば、金属製の基体20aの表面に特定の薬剤を使用するなどして反応性官能基を形成しておき、この反応性官能基と樹脂とを加熱するなどして化学結合させる。
【0057】
フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン‐パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン‐エチレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン系共重合体から選ばれる1種又は2種以上を混合して得られたものを用いて構わない。
【0058】
さらに、樹脂層20bの形成方法としては、基体20aに樹脂層20bを形成する前に、基体20aの表面をブラスト加工により粗面化して表面積を増やし、樹脂層20bと基体20aとの間の化学結合をより形成しやすくしても良い。なお、ここでの化学結合とは、上述した共有結合に限らず、配位結合、イオン結合、又は分子間力による結合などを含むものである。
【0059】
前記実施形態においては、ノーマルオープンタイプの流体制御弁Vを例示して本発明を説明しているが、本発明は、ノーマルクローズタイプの流体制御弁にも適用することができる。
【0060】
前記実施形態においては、流体制御弁Vのアクチュエータ30としてピエゾ素子(ピエゾスタック)を使用しているが、ソレノイド等を使用してもよい。
【0061】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
MFC・・・流体制御装置
V ・・・流体制御弁
10 ・・・弁座
11 ・・・弁座面
20 ・・・弁体
21 ・・・着座面
22 ・・・傾斜抑制突起
20b・・・樹脂層
30 ・・・アクチュエータ
40 ・・・プランジャ
50 ・・・ダイアフラム