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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048003
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】電子部品用めっき材料及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/12 20060101AFI20220317BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20220317BHJP
   C25D 5/50 20060101ALI20220317BHJP
   C25D 3/54 20060101ALI20220317BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C25D5/12
C25D7/00 H
C25D5/50
C25D3/54
H01R13/03 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154101
(22)【出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】片山 晃一
(72)【発明者】
【氏名】成井 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】大江 淳雄
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA12
4K023AA17
4K023AA22
4K023BA06
4K023BA15
4K023BA29
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA01
4K024AA03
4K024AA07
4K024AB03
4K024BA09
4K024BB10
4K024CA01
4K024CA04
4K024CA06
4K024DB02
4K024GA03
4K024GA04
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】低挿入力(低摩擦)及び高温耐久性を有するめっき材料及び電子部品を提供する。
【解決手段】基材の表面に設けられた、NiまたはNi合金からなる下地めっき層と、下地めっき層の上に設けられた、In-Ni-Sn合金からなる中間層と、中間層の上に設けられた、In-Sn合金からなる表層とを備えためっき材料。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に設けられた、NiまたはNi合金からなる下地めっき層と、
前記下地めっき層の上に設けられた、In-Ni-Sn合金からなる中間層と、
前記中間層の上に設けられた、In-Sn合金からなる表層と、
を備えためっき材料。
【請求項2】
前記In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している請求項1に記載のめっき材料。
【請求項3】
前記めっき材料の表面における、前記In-Ni-Sn合金の露出面積率が35%以下である請求項2に記載のめっき材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のめっき材料を備えた電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき材料及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用及び車載用電子機器用接続部品であるコネクタには、黄銅やリン青銅の表面にNiやCuの下地めっきを施し、さらにその上にSn又はSn合金めっきを施した材料が使用されている。近年、Sn又はSn合金めっきは、めっき材をプレス加工で成形したオス端子及びメス端子勘合時の挿入力の低減化が求められている。
【0003】
また、製造工程でめっき表面に、短絡等の問題を引き起こす針状結晶であるウィスカが発生することがあり、このウィスカを良好に抑制する必要もある。さらに高温環境下で使用しても、めっきの接触抵抗などの特性が劣化しないことも要求されている。
【0004】
特許文献1には、基材に下地めっきを施し、次に第1層のSnめっきを施し、更にその上に第1層の1/2以下の平均厚さのInめっきを施し、続いてリフローして外観良好なSn-In合金めっきを得ることができると記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、基材表面にSnめっき層を施し、このめっき上にAg、Bi、Cu、In、Znめっきを施し、リフロー処理することが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、導電性基材の外側にスズもしくはスズ合金からなる第1めっき層と、該第1めっき層の表面にインジウムからなる第2めっき層とを有する多層めっき材料をリフロー処理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-279791号公報
【特許文献2】特開2002-317295号公報
【特許文献3】特開2010-280955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や2に記載の技術については、近年求められている挿入力の低減化方法、また高温環境下での特性劣化防止方法が明らかになっていない。
【0009】
また、特許文献3に記載の技術は、所定のリフロー条件によって、導電性基材の表面にスズ、スズ-銀合金、スズ-ビスマス合金、スズ-銅合金、及びスズ-銀-銅合金等の第1めっき層と、該第1めっき層の表面にインジウムからなる第2めっき層とを形成しているが、リフロー条件及びめっき構成について、さらなる改良の余地がある。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、低挿入力(低摩擦)及び高温耐久性を有するめっき材料及び電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、基材上に下地めっき層と中間層と表層とを形成し、これら各層を所定の金属で構成することで、上記課題を解決することができることを見出した。
【0012】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施形態は一側面において、基材の表面に設けられた、NiまたはNi合金からなる下地めっき層と、
前記下地めっき層の上に設けられた、In-Ni-Sn合金からなる中間層と、
前記中間層の上に設けられた、In-Sn合金からなる表層と、
を備えためっき材料である。
【0013】
本発明のめっき材料は一実施形態において、前記In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している。
【0014】
本発明のめっき材料は別の一実施形態において、前記めっき材料の表面における、前記In-Ni-Sn合金の露出面積率が35%以下である。
【0015】
本発明の実施形態は別の一側面において、本発明の実施形態に係るめっき材料を備えた電子部品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態によれば、低挿入力(低摩擦)及び高温耐久性を有するめっき材料及び電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例2に係るめっき材料の面分析結果である。
図2図1におけるIn-Ni-Sn合金露出領域である。
図3】実施例2に係るめっき材料の断面観察写真である。
図4】実施例3に係るめっき材料の断面観察写真である。
図5】実施例4に係るめっき材料の断面観察写真である。
図6】実施例5に係るめっき材料の断面観察写真である。
図7】二値化したEPMA画像の例である。
図8】実施例2に係るライン分析による深さ方向の各元素濃度のグラフである。
図9】実施例3に係るライン分析による深さ方向の各元素濃度のグラフである。
図10】実施例4に係るライン分析による深さ方向の各元素濃度のグラフである。
図11】実施例5に係るライン分析による深さ方向の各元素濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のめっき材料及び電子部品の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
<めっき材料の構成>
本発明の実施形態に係るめっき材料は、基材上に下地めっき層が設けられ、下地めっき層上に中間層が設けられ、中間層上に表層が設けられている。
【0020】
(基材)
基材としては、特に限定されないが、例えば、銅及び銅合金、Fe系材、ステンレス、チタン及びチタン合金、アルミニウム及びアルミニウム合金などの金属基材を用いることができる。また、金属基材に樹脂層を複合させたものであっても良い。金属基材に樹脂層を複合させたものとは、例としてFPCまたはFFC基材上の電極部分などがある。
【0021】
(下地めっき層)
下地めっき層は、基材上に設けられており、NiまたはNi合金からなる。NiまたはNi合金によって下地めっき層を形成することで、硬い下地めっき層により真実接触面積が減り、凝着しにくくなり、摩擦(挿入力)が低下する。また、下地めっき層が、基材の構成金属の表層への拡散を防止して耐熱性やはんだ濡れ性などを向上させる。下地めっき層のNi合金は、Niと、Cr、Mn、P、Fe及びCoからなる群であるA構成化合物群から選択された1種又は2種以上とで構成することができる。下地めっき層の構成金属として、半光沢Ni、光沢Niを使用した場合はS等の添加剤による有機物を含有しても良い。
【0022】
下地めっき層のビッカース硬さは、Hv150~500程度であるのが好ましい。下地めっき層のビッカース硬さが、Hv150未満では摩擦力低減への影響が小さく、Hv500を超えると曲げ加工性が悪くなるおそれがある。下地めっき層のビッカース硬さは、Hv170~350であるのがより好ましい。
【0023】
(中間層)
中間層は、下地めっき層の上に設けられており、In-Ni-Sn合金からなる。このような構成を有する中間層は、柔らかい表層の厚みを減らし、見かけ上の硬度が高くなり、摩擦力を低減する。中間層の組成は、Ni70at.%以下、及び、残部がIn及びSnであるのが好ましい。
【0024】
(表層)
表層は、中間層の上に設けられており、In-Sn合金からなる。このような構成によれば、低摩擦(低挿入力)、及び、低ウィスカ性のめっき材を得ることができる。
【0025】
表層の組成は、Sn12~63at.%、及び、残部Inであるのが好ましい。このような構成によれば、めっき材料の摩擦(挿入力)がより低くなり、またウィスカがより発生しにくくなる。Sn組成が12at.%未満では、めっき材料の耐食性が低下するおそれがあり、63at.%を超えると、挿入力が高くなるおそれがある。
【0026】
本発明の実施形態に係るめっき材料において、表層は中間層の表面を完全に覆っていてもよい。また、所望の低挿入力(低摩擦)及び高温耐久性が得られる範囲において、中間層を構成するIn-Ni-Sn合金の一部が表面に露出していてもよい。これは、リフロー処理により、表面に形成されたIn-Sn合金との合金化反応が進み、中間層を構成するIn-Ni-Sn合金が、一部表層まで到達した状態である。例として、図4に、めっき材料の断面TEM像を示す。図4ではライン分析方向を矢印で示しており、また、丸枠で示した箇所では、薄い表層に対して、中間層の一部が(図4では3箇所)露出している。
【0027】
本発明の実施形態に係るめっき材料において、めっき材料の表面における、中間層を構成するIn-Ni-Sn合金の露出面積率が35%以下であるのが好ましい。めっき材料の表面における、中間層を構成するIn-Ni-Sn合金の露出面積率は35%超であってもよいが、特に35%以下であると、めっき材料の挿入力の低下をより良好に抑制することができる。めっき材料の表面における、中間層を構成するIn-Ni-Sn合金の露出面積率は、後述の実施例で実施した「中間層合金露出率」の評価に基づいて測定することができる。
【0028】
表層のビッカースの硬さは、Hv5~150であるのが好ましく、Hv10~100であるのがより好ましい。
【0029】
<めっき材料の製造方法>
本発明の実施形態に係るめっき材料の製造方法としては、まず、基材上に、NiまたはNi合金層を設け、さらに、InとSnとを積層させてめっきする。当該めっきとしては、湿式(電気、無電解)めっきを用いることができる。また、乾式(スパッタ、イオンプレーティング等)めっき等を用いてもよい。めっき後は、リフロー処理(加熱処理)をすることで、本発明の実施形態に係るめっき材料を形成することができる。
【0030】
リフローの条件、すなわち加熱温度と加熱時間を調整することにより、中間層及び表層の厚さや組成が決定される。リフロー条件は、最高到達点160~300℃であり、加熱時間8~20秒を、室温から到達温度までの加熱時間で実施する。
【0031】
(後処理)
上述のように、リフロー処理を施した後に、表層上に、更に摩擦を低下させ、また低ウィスカ性及び耐久性も向上させる目的で後処理を施しても良い。後処理によって潤滑性や耐食性が向上し、酸化が抑制されて、耐熱性やはんだ濡れ性等の耐久性を向上させることができる。具体的には、一般的な電子材料用のコンタクトオイルや酸化防止剤などが該当する。
【0032】
<めっき材料の用途>
本発明の実施形態に係るめっき材料の用途は特に限定しないが、例えば電子部品用金属材料として使用することができ、当該電子部品用金属材料を接点部分に備えたコネクタ端子、電子部品用金属材料を接点部分に備えたFFC端子またはFPC端子、電子部品用金属材料を外部接続用電極に備えた電子部品などが挙げられる。なお、端子については、圧着端子、はんだ付け端子、プレスフィット端子等、配線側との接合方法によらない。外部接続用電極には、タブに表面処理を施した接続用部品や半導体のアンダーバンプメタル用に表面処理を施した材料などがある。
【0033】
また、このように形成されたコネクタ端子を用いてコネクタを作製しても良く、FFC端子またはFPC端子を用いてFFCまたはFPCを作製しても良い。
【0034】
また、本発明の実施形態に係るめっき材料は、ハウジングに取り付ける装着部の一方側にメス端子接続部が、他方側に基板接続部がそれぞれ設けられ、該基板接続部を基板に形成されたスルーホールに圧入して該基板に取り付ける圧入型端子に用いても良い。
【0035】
コネクタはオス端子とメス端子の両方が本発明の実施形態に係るめっき材料であっても良いし、オス端子またはメス端子の片方だけであっても良い。なおオス端子とメス端子の両方を本発明の実施形態に係るめっき材料にすることで、更に凝着摩擦力が小さくなり、挿入力が向上する。
【実施例0036】
以下、本発明の実施例と比較例を共に示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0037】
<めっき材料の作製>
実施例及び比較例として、下記の素材に対し、電解脱脂、酸洗をこの順で行った。次に、表1に示す条件で、第1めっき、第2めっき、第3めっき、リフロー処理、後処理の順に実施し、めっき材料のサンプルを製造した。第1~第3めっきの厚さは、それぞれ、挿入力の低減効果、中間層が露出し過ぎない程度に、リフロー条件と合わせて適宜決定することができる。
【0038】
(素材)
(1)板材:厚み0.20mm、幅25mm、成分Cu-30Zn
(2)オス端子:厚み0.64mm、幅0.64mm、成分Cu-30Zn
【0039】
(第1めっき条件)
・無光沢Niめっき
めっき方法:電気めっき
めっき液:スルファミン酸Niめっき液
めっき温度:55℃
電流密度:0.5~4A/dm2
【0040】
(第2めっき条件)
・Snめっき
めっき方法:電気めっき
めっき液:メタンスルホン酸Snめっき液
めっき温度:40℃
電流密度:0.5~4A/dm2
【0041】
(第3めっき条件)
・Inめっき
めっき方法:電気めっき
めっき液:硫酸Inめっき液
めっき温度:30℃
電流密度:0.5~8A/dm2
【0042】
(リフロー処理)
リフロー処理は、電気管状炉を650℃に設定し、電気管状炉内におかれたサンプルが160℃~300℃に達したことを熱電対で確認して、表1に示す処理時間及び温度で実施した。
【0043】
(後処理)
実施例6、7については、下記の条件によって後処理を行った。
・後処理剤:株式会社テトラ製1988k2
・後処理剤の組成:飽和炭化水素系ワックス
・処理方法:めっき材の表層表面にスプレー噴射し、温風乾燥
【0044】
(中間層、表層の構造[組成]の決定及び厚さ測定)
得られた試料の中間層、表層の構造の決定及び厚さ測定は、STEM(走査型電子顕微鏡)分析による線分析で行った。分析した元素は、中間層、表層の組成と、Oである。これら元素を指定元素とする。また、指定元素の合計を100%として、各元素の濃度(at.%)を分析した。
【0045】
<評価>
・中間層合金露出率
以下の評価方法によって、実施例2~5に係る試料の表面における、中間層を構成するIn-Ni-Sn合金の露出面積率を評価した。
まず、EPMA:電子プローブマイクロアナライザー(JXA-8500F、日本電子株式会社製)を用いて、面分析により試料の表面を測定した。
走査:ステージスキャン
加圧電流:8.0kv、15.0kv
照射電流:5.034×10-8A、2.481×10-8A、2.477×10-8A、2.480×10-8
測定倍率:1000倍
時間:25ms、35ms
測定点数:370×280、230×170
測定間隔:(X軸、Y軸)=(0.30μm、0.30μm)、(0.50μm、0.50μm)
【0046】
面積率を求める際には、以下の手順により行う。
1.InとSnとNiの面分析の結果を表示する。例として、実施例2の当該面分析結果を図1に示す。
2.当該面分析結果で表示されるNiは、中間層のIn-Ni-Sn合金に由来するNiである。そのため、Niが表示されている領域は、In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している領域と判定し、当該領域を線分で囲った。例として、実施例2の当該線分で囲ったIn-Ni-Sn合金露出領域を図2に示す。また、上記In-Ni-Sn合金露出領域の試料表面における面積率を算出した。この算出結果を、表2の「中間層合金露出率(%):EPMA」に示す。
3.また、上記In-Ni-Sn合金露出領域の試料表面における面積率を以下の手順で二値化した。
(1)図2に示した面分析画像をtextデータで保存し、表計算ソフトのエクセル(マイクロソフト社製)に貼り付け、全セル数の最大値、最小値を算出し、対応した黒(黒から白にグラデーションがかかる)を付ける。
(2)上記数値が20以上のセルの数を数え、全セル数で割る。なお、数値が20以上のものを算出したのは、二値化前の画像と変わらないと判断したためである。
当該二値化したEPMA画像の例を図7に示す。また、当該二値化の結果を表2の「中間層合金露出率(%):二値化」に示す。当該二値化の評価において、実施例2~5の試料は、いずれも中間層合金露出率が35%以下となった。
【0047】
・断面分析
透過電子顕微鏡:TEM(日本電子株式会社製JEM-2100F)を用いて、加速電圧:200kVとして、実施例2~5に係る試料の断面分析を行った。
【0048】
図3に実施例2に係る断面TEM像を示す。図4に実施例3に係る断面TEM像を示す。図5に実施例4に係る断面TEM像を示す。図6に実施例5に係る断面TEM像を示す。図3~6ではライン分析方向を矢印で示している。また、図4の実施例3において丸枠で示した箇所では、薄い表層に対して、中間層の一部が(図4では3箇所)露出している。さらに、上記ライン分析による深さ方向の各元素濃度のグラフについて、図8(実施例2)、図9(実施例3)、図10(実施例4)及び図11(実施例5)に示す。
【0049】
・挿入力
得られた試料の挿入力は、市販のSnリフローめっきメス端子(025型住友TS/矢崎090IIシリーズメス端子非防水)を用いてめっきを施したオス端子と挿抜試験することによって評価した。また、挿入力低減率は、以下の式で算出した。
挿入力低減率=(測定した挿入力/比較例1の挿入力)×100(%)
【0050】
試験に用いた測定装置は、アイコーエンジニアリング製1311NRであり、オスピンの摺動距離3mmで評価した。サンプル数は5個とした。挿入力は、各サンプルの最大値を平均した値を採用した。
【0051】
・接触抵抗
接触抵抗は山崎精機研究所製の精密摺動試験装置CRS-G2050型を用い、接点荷重3Nに設定し、四端子法にて測定した。コネクタを模倣するため、接点部の凸材はSnめっき板材(Cu-30ZnにSnを1μmめっき)をφ3mmの半球状に加工したものを使用した。当該接触抵抗を表2に「接触抵抗(初期)」として示す。
【0052】
・耐熱性
耐熱性は、大気加熱(180℃、120時間以上)試験後のサンプルの接触抵抗を測定し、評価した。目標とする特性は、接触抵抗10mΩ以下である。当該接触抵抗を表2に「接触抵抗(180℃加熱後)」として示す。
【0053】
また、下地めっき層を無光沢Niめっきで構成している。この場合、下地めっき層の押し込み硬さはHv150~500の範囲である。
【0054】
試験条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
(評価結果)
実施例1~7は、低挿入力を有するめっき材料であった。また、耐熱性試験において、120時間以上の加熱後も、接触抵抗が10mΩ以下と良好な値であり、低接触抵抗、高温耐久性が良好であった。実施例2、6については、耐熱性(接触抵抗)の評価は未実施であるが、実施例1、3~5、7の結果から同様に、良好な評価が得られるものと考えられる。
【0058】
また、実施例1~7の下地めっき層は全て無光沢Niめっきであるが、光沢Niめっき、または、Ni合金めっきでも、硬度が近いことから、同様に低挿入力、低接触抵抗、高温耐久性を有するめっき材料を製造することができると考えられる。
【0059】
また、実施例1~7は、表層のSnが低減されているため、ウィスカの発生が良好に抑制されているものと考えられる。
【0060】
比較例1は表層がSnめっきであり、メス端子がSnであるため、凝着しやすく挿入力が高めであった。
比較例2は表層がInめっきであり、挿入力低減率が20%に届かなかった。実施したリフロー条件では、中間層の成長が不十分であったためと思われる。またIn単独では製造コストが上がる問題がある。
比較例3は、表層の組成において、Snが多いため、凝着しやすく、挿入力が高めであった。
比較例4は比較例3より高温でリフローを実施し、中間層の成長を狙ったが、挿入力の改善はみられなかった。
比較例5はInの融点に届かないリフロー条件であるため、表面形態がInの電着粒を反映しており、柔らかくかつ流れていた。そのため、接触面積が大きく、挿入力があまり下がらなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に設けられた、NiまたはNi合金からなる下地めっき層と、
前記下地めっき層の上に設けられた、In-Ni-Sn合金からなる中間層と、
前記中間層の上に設けられた、In-Sn合金からなる表層と、
を備え、前記表層の組成は、Sn12~63at.%、及び、残部Inであり、前記In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している電子部品用めっき材料。
【請求項2】
前記電子部品用めっき材料の表面における、前記In-Ni-Sn合金の露出面積率が35%以下である請求項に記載の電子部品用めっき材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品用めっき材料を備えた電子部品。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施形態は一側面において、基材の表面に設けられた、NiまたはNi合金からなる下地めっき層と、
前記下地めっき層の上に設けられた、In-Ni-Sn合金からなる中間層と、
前記中間層の上に設けられた、In-Sn合金からなる表層と、
を備え、前記表層の組成は、Sn12~63at.%、及び、残部Inであり、前記In-Ni-Sn合金の一部が表面に露出している電子部品用めっき材料である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の電子部品用めっき材料は別の一実施形態において、前記電子部品用めっき材料の表面における、前記In-Ni-Sn合金の露出面積率が35%以下である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明の実施形態は別の一側面において、本発明の実施形態に係る電子部品用めっき材料を備えた電子部品である。