(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048423
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】Cu-W-Oスパッタリングターゲット及び酸化物薄膜
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220318BHJP
C04B 35/495 20060101ALI20220318BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220318BHJP
H01B 1/02 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C04B35/495
H01B5/14 Z
H01B1/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154239
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】宗安 慧
(72)【発明者】
【氏名】長田 幸三
(72)【発明者】
【氏名】奈良 淳史
【テーマコード(参考)】
4K029
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029BA50
4K029BC09
4K029BD02
4K029CA06
4K029DC05
4K029DC09
4K029DC34
5G301AA08
5G301AA22
5G301AB20
5G301AD10
5G307GA06
5G307GB02
5G307GC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】仕事関数の高い膜を成膜することが可能な、体積抵抗率の低いスパッタリングターゲットの提供。
【解決手段】スパッタリングターゲットは、タングステン(W)、銅(Cu)、酸素(O)及び不可避的不純物からなり、体積抵抗率が1.0×103Ω・cm以下、好ましくは、1.0×102Ωcm以下である。さらに、相対密度が95%以上であり、WとCuの含有比率が原子比で0.5≦W/(Cu+W)<1を満たす、前記スパッタリングターゲット。スパッタリングターゲットの体積抵抗率が1.0×103Ω・cm以下であれば、DCスパッタリングが可能となり、それによる高速成膜が可能となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン(W)、銅(Cu)、酸素(O)及び不可避的不純物からなるスパッタリングターゲットであって、体積抵抗率が1.0×103Ω・cm以下であるCu-W-Oスパッタリングターゲット。
【請求項2】
相対密度が95%以上である請求項1に記載のCu-W-Oスパッタリングターゲット。
【請求項3】
WとCuの含有比率が原子比で0.5≦W/(Cu+W)<1を満たす請求項1又は2記載のCu-W-Oスパッタリングターゲット。
【請求項4】
仕事関数が4.3eV以上を満たす請求項1~3のいずれか一項に記載のCu-W-Oスパッタリングターゲット。
【請求項5】
タングステン(W)、銅(Cu)、酸素(O)及び不可避的不純物からなる薄膜であって、WとCuの含有比率が原子比で0.5≦W/(Cu+W)<1を満たす酸化物薄膜。
【請求項6】
仕事関数が4.5eV以上を満たす請求項5に記載の酸化物薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕事関数の高い酸化物薄膜を成膜するのに適したCu-W-Oスパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子などの発光素子における透明電極(陽極)としてITO(インジウム・スズ酸化物)が用いられている。陽極に電圧を印加することで注入された正孔は、正孔輸送層を経由して、発光層で電子と結合する。近年、正孔輸送層への電荷注入効率を向上させる目的で、ITOよりも仕事関数が高い酸化物を用いることが研究されている。たとえば、非特許文献1には、有機半導体デバイスにおける酸化物薄膜として、TiO2、MoO2、CuO、NiO、WO3、V2O5、CrO3、Ta2O5、Co3O4などの高い仕事関数のものが報告されている。
【0003】
非特許文献1に示されるように、WO3は比較的高い仕事関数を有する。このWO3膜は酸化タングステン焼結体からなるスパッタリングターゲットを用いて成膜することができるが(特許文献1、2)、WO3単相では焼結体の高密度化が困難であり、また、体積抵抗率が高いために、DCスパッタリングが困難であった。そのため、特許文献2には、WO3にWO2を添加することで、焼結体の高密度化を達成し、導電性を高めてDCスパッタリングを可能とすることが開示されている。また、特許文献1には、酸素供給雰囲気中、WO3粉末をホットプレスすることで、焼結体の密度を高めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-150357号公報
【特許文献2】特開2013-76163号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mark T Greiner and Zheng-Hong Lu, "Thin-Film metal oxides in organic semiconductor devices: their electronic structures, work functions and interfaces", NPG Asia Materials (2013) 5,e55, 19 July 2013
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、有機ELなどの有機半導体デバイスを構成する膜として、仕事関数の高い酸化物膜が求められている。高い仕事関数を示す材料としてWO3などが挙げられるが、WO3などの膜を形成する場合、成膜に使用するスパッタリングターゲットの体積抵抗率が高いため、高速成膜が可能なDCスパッタリングができないという問題があった。このようなことから、本発明は、上述の課題を解決するために提案されたものであって、仕事関数の高い膜を成膜することが可能な、体積抵抗率の低いスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、その課題を解決できる本発明の態様は、タングステン(W)、銅(Cu)、酸素(O)及び不可避的不純物からなるスパッタリングターゲットであり、体積抵抗率が1.0×103Ω・cm以下であるCu-W-Oスパッタリングターゲットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、仕事関数の高い膜を成膜することができるスパッタリングターゲットであって、体積抵抗率が低いため、DCスパッタリングが可能となり、それにより、高速成膜が可能という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の通り、WO3は高い仕事関数を有するが、WO3単相では、DCスパッタリングが可能な体積抵抗率の低いスパッタリングターゲットを作製することは困難であった。また、他の仕事関数が高い酸化物の材料(例えば、CuO単相)を用いた場合も同様に、体積抵抗率が高く、DCスパッタリングが困難であった。このような問題に対して、本発明者らは鋭意研究したところ、CuOとWO3の混合系を作製することにより、高い仕事関数を維持しつつ、DCスパッタリングが可能な体積抵抗率の低いスパッタリングターゲットを得ることができるとの知見が得られ、本発明に至った。
【0010】
本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲット(Cu-W-Oスパッタリングターゲットという。)は、タングステン(W)、銅(Cu)、酸素(O)及び不可避的不純物からなり、体積抵抗率が1.0×103Ω・cm以下である。スパッタリングターゲットの体積抵抗率が1.0×103Ω・cm以下であれば、DCスパッタリングが可能となり、それによる高速成膜が可能となる。好ましくは体積抵抗率が1.0×102Ωcm以下である。これにより、さらに安定したDCスパッタリングによる高速成膜が可能となる。
【0011】
本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、W、Cu、O及び不可避的不純物からなり、WとCuの含有比率は、原子比でW/(Cu+W)≧0.5であることが好ましい。
W/(Cu+W)<0.5の場合、体積抵抗率が高くなり、また所望する高い仕事関数が得られないということがある。好ましくは、W/(Cu+W)≧0.7、より好ましくは、W/(Cu+W)≧0.8、さらに好ましくはW/(Cu+W)≧0.9である。また、WO3単相であると、上述の通り、スパッタリングターゲットの体積抵抗率が高いため、W/(Cu+W)<1とする。なお、前記不可避的不純物は、原料や製造過程などで混入する不純物であって、仕事関数などの特性に特に影響を及ぼさない量を含んでいてもよく、0.1wt%以下であれば、特に問題はないといえる。
【0012】
本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、相対密度が95%以上であることが好ましい。好ましくは相対密度98%以上である。このような高密度のスパッタリングターゲットは、スパッタリングの際にクラックや割れを防ぐことができ、成膜時のパーティクルを低減することができる。また、スパッタリングターゲットの相対密度は、体積抵抗率とも関連し、相対密度の値が低くなると、体積抵抗率が高くなる傾向にある。そのため、体積抵抗率を下げるためには、スパッタリングターゲットのWとCuの含有比率のほか、スパッタリングターゲットの製造方法や製造条件を厳格に調整して、相対密度を高める必要がある。
【0013】
本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットは、仕事関数が4.5eV以上である。このような高い仕事関数を有するスパッタリングターゲットを用いることにより、高い仕事関数を有する膜を作製することができる。そして、このような仕事関数が高い膜は、例えば、有機EL、有機太陽電池などの有機半導体デバイスにおいて正孔輸送層への電荷注入効率を向上させることができ、発光効率あるいは変換効率などの向上が期待できる。
【0014】
以下に、本実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法を示す。但し、以下の製造条件等は開示した範囲に限定するものではなく、いくらかの省略や変更を行ってもよいことは明らかである。
【0015】
原料粉末として、酸化タングステン(WO3)粉末、酸化銅(CuO)粉末を準備し、これらの原料粉末を所望の組成比となるように秤量する。酸化銅としては、CuOの他、Cu2Oなどを用いることもできる。次に、ボール径が0.5~3.0mmのジルコニアビーズを用いて、湿式粉砕を行う。そして、粒径の中央値が0.1~5.0μmとなるまで粉砕を行い、その後、造粒を行う。次に得られた造粒粉をプレス成型する。プレス圧は300~400kgf/cm2で行うのが好ましい。その後、冷間静水圧加圧(CIP)を行う。CIP圧力は1000~2000kgf/cm2で行うのが好ましい。次に、得られた成型体を、酸素フロー中、10~20時間、常圧焼結を行う。このとき、焼結温度は900℃以上950℃未満とするのが好ましい。900℃未満であると、高密度の焼結体が得られず、一方、950℃以上であると、WO3とCuOと複合酸化物であるCuWO4が、アルミナの焼結部材と反応し、また熔解するため好ましくない。その後は、得られた焼結体をターゲット形状に切削、研磨などして、スパッタリングターゲットを作製することができる。なお、ホットプレス焼結を用いた場合、カーボンの焼結部材によって、CuOがCuに還元されて、部材の消耗が激しいということがある。
【0016】
本願明細書において、スパッタリングターゲット等の各種物性は、以下の測定方法を用いて解析した。
(スパッタリングターゲット及び膜の成分組成)
装置:SII社製SPS3500DD
方法:ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)
(膜の成分組成)
装置:JEOL製JXA-8500F
方法:EPMA(電子線マイクロアナライザー)
加速電圧:5~10keV
照射電流:2.0×10-7~2.0~10-8A
プローブ径:10μm
ゴミ等の付着がなく、基板面がみえていない平滑な成膜部分を5点選択し、点分析を行って、それらの平均組成を算出した。
【0017】
(スパッタリングターゲットの体積抵抗率)
スパッタリングターゲットの体積抵抗率は、スパッタリングターゲットの表面を5点(中心1点、外周付近4点)測定し、それらの平均値とした。測定には、以下の装置を使用した。
装置:NPS社製 抵抗率測定器 Σ-5+
方式:定電流印加方式
方法:直流4探針法
【0018】
(スパッタリングターゲットの相対密度について)
相対密度(%)=アルキメデス密度/真密度×100
アルキメデス密度:スパッタリングターゲットターゲットから小片を切り出して、その小片からアルキメデス法を用いて密度を算出する。
真密度:元素分析からCu、Wの原子比を計算し、原子比からCuのCuO換算重量をa(wt%)、WのWO3換算重量をb(wt%)とし、CuO、WO3の理論密度をそれぞれdCuO、dWO3として、真密度(g/cm3)=100/(a/dCuO+b/dWO3)を計算する。なお、CuOの理論密度dCuO=6.31g/cm3、WO3の理論密度をdWO3=7.16g/cm3、とする。
【0019】
(仕事関数について)
バルク体(スパッタリングターゲット)については、縦:20mm、横:10mm、厚み:5~10mmのサンプルを作製した。測定面は番手2000番の研磨紙を用いて研磨を行った。また、スパッタ膜についてはSi基板上に成膜した20×20mmのサンプルを作製し、以下の条件で測定を実施した。なお、仕事関数の測定結果はサンプルのサイズに依存しないものである。また、測定面を研磨しない或いは番手の低い研磨紙で研磨し、表面の研磨が不十分な場合には、仕事関数を正確に測定することができず、その値が高く測定されることがある。
方式:大気中光電子分光法
装置:理研計器製 AC-5装置
条件:測定可能な仕事関数の範囲:3.4eV~6.2eV
光源パワー:2000W
【実施例0020】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0021】
(実施例1)
CuO粉とWO3粉を準備し、これらの粉末をCuO:WO3=50:50(mol%)で秤量した。次に、3.0mmのジルコニアビーズを用いて24時間湿式ボールミル混合粉砕を実施し、メジアン径0.8μm以下の混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400kgf/cm2の条件で加圧した後に圧力1800kgf/cm2の条件でCIPを行い、成型体を作製した。
次に、酸素フロー中、焼結温度940℃で10時間、常圧焼結して焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
実施例1で得られたスパッタリングターゲットについて評価した結果、相対密度は103.3%であり、体積抵抗率は1.0×103Ω・cmであった。また、スパッタリングターゲットについて仕事関数を測定した結果、4.5eVと高仕事関数のものが得られた。以上の結果を表1に示す。なお、スパッタリングターゲットについて成分分析した結果、原料の仕込み時の比率とほとんど変化がないことを確認した。
【0022】
【0023】
(実施例2~5)
CuO粉とWO3粉を準備し、これらの粉末を表1に記載するモル比となるように秤量した。次に、3.0mmのジルコニアビーズを用いて24時間湿式ボールミル混合粉砕を実施し、メジアン径0.8μm以下の混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400kgf/cm2の条件で加圧した後に、圧力1800kgf/cm2の条件でCIPを行い、成型体を作製した。
次に、酸素フロー中、焼結温度940℃で、10時間、常圧焼結して焼結体を作製した。その後、それぞれの焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
実施例2~5のスパッタリングターゲットは、いずれも相対密度が99%以上であり、体積抵抗率は1.0×103Ω・cm以下であった。また、スパッタリングターゲットについて仕事関数を測定した結果、いずれも4.5eVと高仕事関数であった。なお、スパッタリングターゲットについて成分分析した結果、いずれも原料の仕込み時の比率とほとんど変化がないことを確認した。
【0024】
(比較例1)
比較例1では、CuO粉のみとし、WO3粉は使用しなかった。Cu粉を3.0mmのジルコニアビーズを用いて24時間湿式ボールミル混合粉砕を実施し、メジアン径0.8μm以下の混合粉を得た。次に、この混合粉末を面圧400kgf/cm2の条件で加圧した後に、圧力1800kgf/cm2の条件でCIPを行い、成型体を作製した。
次に、酸素フロー中、焼結温度950℃で、10時間、常圧焼結して焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
比較例1で得られたスパッタリングターゲットについて評価した結果、相対密度は98.3%であり、体積抵抗率は3.3×105 Ω・cmであった。また、スパッタリングターゲットについて仕事関数を測定した結果、4.2eVであった。なお、スパッタリングターゲットについて成分分析した結果、いずれも原料の仕込み時の比率とほとんど変化がないことを確認した。
【0025】
(比較例2、3)
比較例2、3では、WO3粉のみとし、CuO粉は使用しなかった。WO3粉を3.0mmのジルコニアビーズを用いて24時間湿式ボールミル混合粉砕を実施し、メジアン径0.8μm以下の混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400kgf/cm2の条件で加圧した後に、圧力1800kgf/cm2の条件でCIPを行い、成型体を作製した。
次に、酸素フロー中、焼結温度を1100℃(比較例2)、940℃(比較例3)とし、10時間、常圧焼結して焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
比較例2、3で得られたスパッタリングターゲットについて評価した結果、いずれも相対密度は95%未満であり、体積抵抗率は1.0×103 Ω・cm超であった。また、スパッタリングターゲットについて仕事関数を測定した結果、4.4eVであった。なお、スパッタリングターゲットについて成分分析した結果、いずれも原料の仕込み時の比率とほとんど変化がないことを確認した。
【0026】
(比較例4)
CuO粉とWO3粉を準備し、これらの粉末をCuO:WO3=30:70(mol%)で秤量した。次に、3.0mmのジルコニアビーズを用いて24時間湿式ボールミル混合粉砕を実施し、メジアン径0.8μm以下の混合粉末を得た。この混合粉末を面圧400kgf/cm2の条件で加圧した後に、圧力1800kgf/cm2の条件でCIPを行い、成型体を作製した。
次に、酸素フロー中、焼結温度850℃で、10時間、常圧焼結して焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
比較例4で得られたスパッタリングターゲットについて評価した結果、体積抵抗率は3.1×104Ω・cmであった。
【0027】
次に、実施例3のスパッタリングターゲットを用いてスパッタ成膜を行った。なお、成膜条件は以下の通りとした。得られたスパッタ膜について、仕事関数を測定した結果、Arガス下では4.6eVであり、Arガス+6%O2下では4.8eV、と所望の高い仕事関数が得られた。なお、スパッタ膜について成分分析した結果、原料の仕込み時の比率とほとんど変化がないことを確認した。
(成膜条件)
装置:キャノンアネルバ製 SPL-500スパッタ装置
基板:シリコン基板
成膜パワー密度:1.0W/cm2
成膜雰囲気:Ar又はAr+6%O2
ガス圧:0.5Pa
膜厚:50nm
本発明の実施形態に係るCu-W-Oスパッタリングターゲットは、体積抵抗率が低く、DCスパッタリングが可能であり、さらに相対密度が高く、成膜時にターゲットに割れやクラックが発生することがなく、実用的、商業的レベルで使用することができる。本発明は、特に有機エレクトロルミネッセンス素子などの発光素子における透明電極を形成するために有用である。