(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048569
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】繊維加工用樹脂組成物、及び、立毛布帛
(51)【国際特許分類】
D06M 15/59 20060101AFI20220318BHJP
D06M 15/507 20060101ALI20220318BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20220318BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
D06M15/59
D06M15/507
D06M15/263
D06M15/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154451
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】河中 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸介
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB04
4L033AC11
4L033AC15
4L033CA18
4L033CA45
4L033CA50
4L033CA55
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、成形保持性に優れる繊維布帛を得ることができる繊維加工用樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、融点が90~130℃のホットメルト剤(A)、前記ホットメルト剤(A)以外の樹脂(B)、及び、水性媒体(C)を含有することを特徴とする繊維加工用樹脂組成物を提供するものである。また、本発明は、繊維加工用樹脂組成物により形成された光沢部を有する立毛布帛を提供するものである。前記ホットメルト剤(A)としては、ポリアミド樹脂、及び/又は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、前記樹脂(B)としては、アクリル樹脂エマルジョン、及び/又は、ウレタン樹脂ディスパージョンであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が90~130℃のホットメルト剤(A)、前記ホットメルト剤(A)以外の樹脂(B)、及び、水性媒体(C)を含有することを特徴とする繊維加工用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ホットメルト剤(A)が、ポリアミド樹脂、及び/又は、ポリエステル樹脂である請求項1記載の繊維加工用樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂(B)が、アクリル樹脂水分散体、及び/又は、ウレタン樹脂水分散体である請求項1又は2記載の繊維加工用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の繊維加工用樹脂組成物により形成された光沢部を有する立毛布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維加工用樹脂組成物、及び、立毛布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維布帛へ意匠性を付与する加工する方法としては、プリント加工やエンボス加工等が知られている。また、繊維布帛の表面に光沢を付与する方法としては、プリントした柄模様上にホットメルト型樹脂を付着させ、熱処理をする方法(例えば、特許文献1を参照。)や立毛布帛に樹脂を付与し、加熱プレスすること凹部を形成する方法(例えば、特許文献2を参照。)等が知られている。しかしながら、高い光沢感のある柄表現の求めに対しては、光沢の不足や加熱プレス後の凹部の成形保持性、すなわち一度形成した凹部が、立毛布帛の復元作用により光沢が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-101987号公報
【特許文献2】特開2005-105459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、成形保持性に優れる繊維布帛を得ることができる繊維加工用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、融点が90~130℃のホットメルト剤(A)、前記ホットメルト剤(A)以外の樹脂(B)、及び、水性媒体(C)を含有することを特徴とする繊維加工用樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、前記繊維加工用樹脂組成物により形成された光沢部を有する立毛布帛を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維加工用樹脂組成物によれば、成形保持性に優れる繊維布帛を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、融点が90~130℃のホットメルト剤(A)、前記ホットメルト剤(A)以外の樹脂(B)、及び、水性媒体(C)を必須成分として含有するものである。
【0009】
前記ホットメルト剤(A)としては、融点が90~130℃の範囲のホットメルト剤を用いることが必須である。これにより、加熱プレス時にホットメルト剤の溶融によるレベリング効果で、プレスによる凹部の平滑性が高くなり、光沢(グロス感)に優れた加工布を得ることが出来る。また、立毛布帛内部に溶解したホットメルト剤が隙間なく浸透し、接着剤の役割を果たすことで立毛布帛の復元を抑制し、高温環境下でも加熱プレスで形成した凹部の成形保持性に優れ、優れた光沢を長時間保持することが可能となる。前記ホットメルト剤の融点としては、100~125℃の範囲が好ましい。なお、前記ホットメルト剤(A)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定して得られた値を示し、具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を使用して、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度5℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。
【0010】
前記ホットメルト剤(A)としては、パウダー状のものを用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂系のホットメルト剤等を用いることができる。これらのホットメルト剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ホットメルト剤(A)としては、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、ポリアミド樹脂、及び/又は、ポリエステル樹が好ましく、本発明の立毛布帛が車輛用に用いられる場合には、より一層優れた耐熱性、及び、耐黄変性が得られる点から、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0011】
前記ポリアミド樹脂としては、例えば、分子内の主鎖にアミド結合を持つポリマーを含有する熱可塑性の接着剤を示し、ポリアミドの合成方法としては、重縮重合反応と共縮重合反応によって合成され、一般的に脂肪族骨格を含むポリアミドをナイロンと総称し、芳香族骨格のみえ構成されるポリアミドをポリアラミドと総称され、本発明では両者をポリアミドとする。
【0012】
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸とポリアルコールとの重縮合体;環状エステルを開環させて製造する開環重合体がある。前記重縮合体に用いられる多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用いることができる。前記ポリアルコールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等を用いることができる。また、前記開環重合体に用いられるモノマーとしては、例えば、アセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレルラクトン等を用いることができる。
【0013】
前記ホットメルト剤(A)の使用量としては、より一層優れた成形保持性が得られる点から前記繊維加工用樹脂組成物中5~40質量%の範囲が好ましく、10~20質量%の範囲がより好ましい。
【0014】
前記樹脂(B)としては、前記ホットメルト剤(A)以外のものである。また、前記樹脂(B)は、繊維とのバインダーとして機能するものであり、前記水性媒体(C)と混合する水分散体を用いることが好ましい。前記樹脂(B)としては、例えば、アクリル樹脂水分散体、ウレタン樹脂水分散体、ブタジエン系重合体水分散体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体水分散体、天然ゴムラテックス等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた立毛布帛の風合いと耐久性が得られる点から、アクリル樹脂水分散体、及び/又は、ウレタン樹脂水分散体が好ましく、本発明の立毛布帛が車輛用に用いられる場合には、より一層優れた耐黄変性が得られる点から、アクリル樹脂水分散体がより好ましい。
【0015】
前記アクリル樹脂水分散体としては、例えば、アクリル単量体を必須成分とした重合性単量体を重合したものである。また、後述する水性媒体(C)への溶解ないし分散を良好とするため、カルボキシル基を有する重合性単量体を用いたものが好ましい。
【0016】
前記アクリル樹脂水分散体の原料として用いるアクリル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート等のシラン系(メタ)アクリレート;3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン化合物;パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素系(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート化合物(c)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。。
【0017】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルとアクリロイルの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0018】
また、前記アクリル樹脂水分散体にカルボキシル基を導入する場合、その原料として、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体を用いることができる。これらの重合性単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、これらのカルボキシル基を有する重合性単量体を用いて、前記アクリル樹脂水分散体にカルボキシル基を導入した後、当該カルボキシル基の一部又は全部を水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;アンモニア、トリエチルアミン等の有機物などの塩基で中和してもよい。
【0019】
前記アクリル樹脂水分散体の製造方法としては、例えば、公知の乳化重合法を用いることができる。
【0020】
前記ウレタン樹脂水分散体は、ウレタン樹脂が後述する水性媒体(C)中に分散等し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有する水性ウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水性媒体(B)中に分散した水性ウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂水分散体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記アニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0022】
前記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4-ジアミノブタンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2,6-ジアミノベンゼンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、水性ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0025】
前記カチオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0026】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン等のN-アルキルジアルカノールアミン、N-メチルジアミノエチルアミン、N-エチルジアミノエチルアミン等のN-アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ノニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0028】
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記強制的に水性媒体(C)中に分散する水性ウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記ウレタン樹脂水分散体としては、具体的には、ポリイソシアネート、ポリオール、前記した親水性基を有する水性ウレタン樹脂を製造するために用いる原料により得られるものを用いることができる。これらの反応は公知のウレタン化反応を用いることができる。
【0031】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記樹脂(B)の使用量としては、より一層優れた成形保持性が得られる点から前記繊維加工用樹脂組成物中10~50質量%の範囲が好ましく、ホットメルト剤(A)の1~5倍量の範囲がより好ましい。
【0034】
前記水性媒体(C)としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム等を用いることができる。これらの水性媒体(C)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境負荷低減の点から、水を用いることが好ましい。
【0035】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、前記ホットメルト剤(A),前記樹脂(B)、及び、前記水性媒体(C)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。
【0036】
前記その他の添加剤としては、例えば、増粘剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
以上、本発明の繊維加工用樹脂組成物は、成形保持性に優れる繊維布帛を得ることができ、立毛布帛の光沢部として特に好適に用いることができる。
【0038】
前記立毛布帛としては、立毛されていればよく、例えば、織物、編物、不織布等を用いることができる。前記立毛布帛の立毛長さとしては、例えば、0.1~15mmの範囲が挙げられる。
【0039】
前記立毛布帛の素材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維;これらの複合繊維等を用いることができる。
【0040】
前記立毛布帛に光沢部を形成する方法としては、例えば、立毛布帛に本発明の繊維加工用樹脂組成物を所定の柄状に付与し、立毛を押さえる方法が挙げられる。前記繊維加工用樹脂組成物を付与する方法としては、例えば、ロータリースクリーン捺染やフラットスクリーン捺染、ローラー捺染等が挙げられる。これらの方法により、前記繊維加工用樹脂組成物を立毛布帛の表面に柄状に付与し、固化させることが好ましい。前記立毛布帛の上には、合成樹脂フィルムが積層されていてもよい。
【0041】
引き続き、これを加圧加熱することが好ましく、例えば、100~190℃の過熱温度、1~100kgf/cm2の圧力、10~180秒の加圧時間が挙げられる。加圧加熱する装置としては、例えば、熱ロール、ホフマンプレス機、転写捺染機等を用いることができる。
【実施例0042】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0043】
[実施例1]
(1)繊維加工用樹脂組成物の調製
水18.1質量部、水性アクリル樹脂エマルジョン(DIC株式会社製「DEXCEL HPS CLEAR CONC L-503」、以下「AcEm」と略記する。)64.5質量部、ホットメルト剤(アルケマル社製「プラタミドM1757」、融点;112℃、以下「HM(1)」と略記する。)11.2質量部、消泡剤(サンノプコ製「ノプコ8034」)0.2質量部、プロピレングリコール2質量部、ノニオン系界面活性剤(第一工業製薬株式会社製「ノイゲン EA-157」)0.5質量部、増粘剤(DIC株式会社製「ボンコートV-E」)5質量部、25質量%アンモニア水0.5質量部を分散撹拌機(特殊機化工業株式会社製「TKホモディスパー」)を使用して均一に混合して評価用の繊維加工用樹脂組成物を得た。
【0044】
(2)評価用プリント布の作製
表面を起毛したポリエステル生地上にオートスクリーン捺染機(辻井捺染株式会社製)を使用してプリントを実施し、熱風循環式乾燥機にて120℃、5分間乾燥させ、評価用プリント布を得た。
【0045】
[成形保持性の評価方法]
(1)評価用プリント布の加熱プレス
熱転写プレス機(奥野電機株式会社製)を使用して、180℃、50行間加熱し、塗布物の光沢の評価を行った。光沢の評価は、反射濃度計(グレタグマクベス社製「RD-918」)の黒色濃度(OD値)にて評価を行った。以後、この際のOD値を「初期OD値」と表記する。
【0046】
(2)耐熱性試験
加熱プレスを行った塗布物を熱風循環式乾燥機で110℃、400時間加温し、その後、塗布物の表面の光沢地を同様に測定した。以後、この際のOD値を「耐熱試験後OD値」と表記する。
【0047】
[実施例2]
実施例1で用いるホットメルト剤を、ホットメルト剤(アルケマル社製「プラタミドH-1276」、融点;110℃、以下「HM(2)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維加工用樹脂組成物、評価用プリント布を得、初期OD値、及び、耐熱試験後OD値を測定した。
【0048】
[実施例3]
実施例1で用いるホットメルト剤を、ホットメルト剤(エムスケミー社製「グリルテックス2A」、融点;125℃、以下「HM(3)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維加工用樹脂組成物、評価用プリント布を得、初期OD値、及び、耐熱試験後OD値を測定した。
【0049】
[実施例4]
実施例1で用いるホットメルト剤を、ホットメルト剤(エムスケミー社製「グリルテックスD1365E」、融点;102℃、以下「HM(4)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維加工用樹脂組成物、評価用プリント布を得、初期OD値、及び、耐熱試験後OD値を測定した。
【0050】
[実施例5]
実施例1で用いるホットメルト剤を、ホットメルト剤(エムスケミー社製「グリルテックス8E」、融点;102℃、以下「HM(5)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維加工用樹脂組成物、評価用プリント布を得、初期OD値、及び、耐熱試験後OD値を測定した。
【0051】
[実施例6]
実施例1で用いるホットメルト剤を、ホットメルト剤(エムスケミー社製「グリルテックス9E」、融点;120℃、以下「HM(6)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維加工用樹脂組成物、評価用プリント布を得、初期OD値、及び、耐熱試験後OD値を測定した。
【0052】
[比較例1]
実施例1で用いるホットメルト剤を、ホットメルト剤(エムスケミー社製「グリルテックスD1666A」、融点;80℃、以下「HM(R1)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維加工用樹脂組成物、評価用プリント布を得、初期OD値、及び、耐熱試験後OD値を測定した。
【0053】
【0054】
本発明の繊維加工用樹脂組成物は、成形保持性に優れる繊維布帛が得られることが分かった。具体的には、実施例1~6では、いずれも初期OD値、すなわち光沢値が高く、耐熱試験後もOD値の低下が少なく、光沢が持続していることが分かった。
【0055】
一方、比較例1は、ホットメルト剤(A)として、融点が本発明で規定する範囲を下回るものを用いた態様であるが、いずれも耐熱試験後に光沢が大幅に低下した。