(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048571
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】コンクリート補修材
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20220318BHJP
C08G 59/17 20060101ALI20220318BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220318BHJP
C08F 283/01 20060101ALI20220318BHJP
C08G 63/91 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G59/17
C08G18/67 010
C08F283/01
C08G63/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154456
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】入江 博美
【テーマコード(参考)】
4J029
4J034
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
4J029AA03
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4J127FA49
(57)【要約】
【課題】チキソ性に優れ、低臭気であり、硬化性に優れ、湿潤接着性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られるコンクリート保護材料を提供することである。
【解決手段】両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A)、不飽和ポリエステル(B)、引火点が70℃以上の単官能(メタ)アクリル単量体(C)、多官能(メタ)アクリル単量体(D)、シクロデキストリン誘導体(E)、及びシリカ微粒子(F)を含有することを特徴とするコンクリート補修材を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A)、不飽和ポリエステル(B)、引火点が70℃以上の単官能(メタ)アクリル単量体(C)、多官能(メタ)アクリル単量体(D)、シクロデキストリン誘導体(E)、及びシリカ微粒子(F)を含有することを特徴とするコンクリート補修材。
【請求項2】
前記樹脂(A)が、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1以上の樹脂である請求項1記載のコンクリート補修材。
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリル単量体(D)の含有量が、3~50質量%である請求項1又は2記載のコンクリート補修材。
【請求項4】
前記シリカ微粒子(F)の含有量が、0.5~30質量%である請求項1~3いずれか1項記載のコンクリート補修材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化要因は雨水の浸入等により起こる内部の鉄筋の腐食が挙げられる。この対策として、コンクリート表面を被覆材で保護する工法や、繊維等の貼り付けによる剥落防止が採用されている。使用する材料には、短時間施工を完了できる速硬化性、及び雨天により湿潤したコンクリートへの密着性、環境に配慮した低臭気性等が求められる。このような材料としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ラジカル重合性単量体、シクロデキストリン及び/又はその誘導体、並びに、不飽和ポリエステルを含有するコンクリート保護材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、この材料は、耐アルカリ性が不十分であることや、コンクリート構造物の壁面等へ施工した場合、チキソ性が不十分であり垂れの問題があった。そこで、チキソ性に優れ、低臭気であり、硬化性に優れ、湿潤接着性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られる材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、チキソ性に優れ、低臭気であり、硬化性に優れ、湿潤接着性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られるコンクリート保護材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂、不飽和ポリエステル、引火点が70℃以上の単官能(メタ)アクリル単量体、多官能(メタ)アクリル単量体、シクロデキストリン誘導体、及びシリカ微粒子を含有するコンクリート補修材が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A)、不飽和ポリエステル(B)、引火点が70℃以上の単官能(メタ)アクリル単量体(C)、多官能(メタ)アクリル単量体(D)、シクロデキストリン誘導体(E)、及びシリカ微粒子(F)を含有することを特徴とするコンクリート補修材を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコンクリート補修材は、チキソ性に優れ、低臭気であり、硬化性に優れ、湿潤接着性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることから、各種コンクリートの補修材として、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のコンクリート保護材料は、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A)、不飽和ポリエステル(B)、引火点が70℃以上の単官能(メタ)アクリル単量体(C)、多官能(メタ)アクリル単量体(D)、シクロデキストリン誘導体(E)、及びシリカ微粒子(F)を含有するものである。
【0010】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル単量体」とは、アクリル単量体とメタクリル単量体の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリルロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの一方又は両方をいう。
【0011】
前記両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A)としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物又はビスフェノール型エポキシ化合物とノボラック型エポキシ化合物とを混合したエポキシ化合物と、不飽和一塩基酸とを従来公知の方法で反応して得られるものを用いることができる。
【0013】
前記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA又はビスフェノールFとの反応により得られる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA又はビスフェノールFとを反応させて得られるジメチルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ化合物等を用いることができる。これらのエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記ノボラックタイプ型エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ化合物等を用いることができる。これらのエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記不飽和一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブテンマレート、ソルビン酸、モノ(2-エチルヘキシル)マレート等を用いることができる。これらの不飽和一塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステルを用いることができる。前記飽和ポリエステルは、飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、また、前記不飽和ポリエステルとは、α,β-不飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、いずれも末端に(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0017】
前記飽和二塩基酸、α,β-不飽和二塩基酸及び多価アルコールは、後述する不飽和ポリエステル(B)の合成に用いるものと同様のものを用いることができる。
【0018】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートの製造方法としては、飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステルとグリシジル(メタ)アクリレートとを公知の方法により反応する方法が挙げられる。
【0019】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、及び、水酸基又はイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物を従来公知の方法で反応させて得られるものを用いることができる。
【0020】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カプロラクトンポリオール、ブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、メチレンジフェニルジシソシアネートのホルマリン縮合体、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体等の芳香族系ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記樹脂(A)の数平均分子量としては、作業性と硬化性をより向上できることから500~4,000が好ましい。
【0025】
コンクリート補修材中の前記樹脂(A)の含有量としては、硬化性をより向上できることから、10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0026】
前記不飽和ポリエステル(B)としては、例えば、α,β-不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と多価アルコールとを従来公知の方法で反応させて得られるものを用いることができる。
【0027】
前記α,β-不飽和二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を用いることができる。これらの二塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記α,β-不飽和二塩基酸以外に用いることができる二塩基酸としては、飽和二塩基酸を用いることができ、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン2酸,2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を用いることができる。これらの二塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコ-ル、ジエチレングリコ-ル、トリエチレングリコ-ル、ポリエチレングリコ-ル、プロピレングリコ-ル、ジプロピレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、2-メチル-1,3-プロパンジオ-ル、1,3-ブタンジオ-ル、ネオペンチルグリコ-ル、水素化ビスフェノ-ルA、1,4-ブタンジオ-ル、ビスフェノ-ルAのアルキレンオキサイド付加物、1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、1,3-プロパンジオ-ル、1,2-シクロヘキサングリコ-ル、1,3-シクロヘキサングリコ-ル、1,4-シクロヘキサングリコ-ル、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、パラキシレングリコ-ル、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオ-ル、2,6-デカリングリコ-ル、2,7-デカリングリコ-ル等を用いることができる。これらの多価アルコールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
コンクリート補修材中の前記不飽和ポリエステル(B)の含有量としては、硬化性をより向上できることから、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0031】
引火点が70℃以上の単官能(メタ)アクリル単量体(C)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル単量体;2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル単量体;3-メトキシブチル(メタ)アクリレート)、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、オキシエチレンの付加モル数が1~15の範囲のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オキシプロピレンの付加モル数が1~15の範囲のメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを有する(メタ)アクリル単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル単量体;ベンジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリル単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の窒素原子を有する(メタ)アクリル単量体などを用いることができるが、これらの中でも、より臭気を抑制できることから、窒素原子を有する(メタ)アクリル単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを有する(メタ)アクリル単量体が好ましい。これらの(メタ)アクリル単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明における引火点は、セタ密閉式引火点測定により測定した値とする。
【0033】
コンクリート補修材中の前記(メタ)アクリル単量体(C)の含有量は、低粘度でより優れた硬化性を発現できることから、10~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましい。
【0034】
前記多官能(メタ)アクリル単量体(D)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、優れた湿潤面接着性が得られることから、ジ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0035】
コンクリート補修材中の前記多官能(メタ)アクリル単量体(D)の含有量は、低粘度でより優れた硬化性を発現できることから、3~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
【0036】
前記(メタ)アクリル単量体(C)と前記多官能(メタ)アクリル単量体(D)の質量比(C/D)は、硬化性と湿潤面接着性とのバランスがより向上することから、100/0~30/70が好ましく、90/10~50/50がより好ましい。
【0037】
前記シクロデキストリン誘導体(E)としては、例えば、シクロデキストリン;アルキル化シクロデキストリン、アセチル化シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン等のシクロデキストリンのグルコース単位の水酸基の水素原子を他の官能基で置換したものなどを用いることができる。また、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体におけるシクロデキストリン骨格としては、6個のグルコース単位からなるα-シクロデキストリン、7個のグルコース単位からなるβ-シクロデキストリン、8個のグルコース単位からなるγ-シクロデキストリンのいずれも用いることができる。これらのシクロデキストリン誘導体(E)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、樹脂への溶解性に優れることから、メチル化βシクロデキストリンが好ましい。
【0038】
コンクリート補修材中の前記シクロデキストリン誘導体(E)の含有量は、湿潤面接着性が向上することから、0.1~5質量%が好ましく、0.2~3質量%がより好ましい。
【0039】
前記シリカ微粒子(F)としては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ等が挙げられるが、チキソ性がより向上することから、乾式シリカが好ましい。
【0040】
また、前記シリカ微粒子(F)の平均一次粒子径は、チキソ性がより向上することから、5~50nmであることが好ましい。
【0041】
前記シリカ微粒子(F)は、チキソ性がより向上することから、表面を疎水化したものが好ましい。
【0042】
コンクリート補修材中の前記シリカ粒子(F)の含有量は、作業性にすぐれることから、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%が好ましい。
【0043】
本発明のコンクリート補修材は、前記樹脂(A)、前記不飽和ポリエステル(B)、前記単官能(メタ)アクリル単量体(C)、前記多官能(メタ)アクリル単量体(D)、前記シクロデキストリン誘導体(E)、及び前記シリカ微粒子(F)を必須成分として含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤等を含有していてもよい。
【0044】
前記その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、溶媒、防錆剤、増感剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、粘着付与剤、帯電防止剤、難燃剤硬化剤、硬化促進剤、顔料、充填剤、補強材、骨材、石油ワックス等が挙げられる。
【0045】
本発明のコンクリート補修材を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源または硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、自然光等を光源とする紫外線、または走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0046】
本発明のコンクリート補修材は、例えば、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、モルタルコンクリート、レジンコンクリート、透水コンクリート、ALC(Autoclaved Lightweight Aerated Concrete)板等のコンクリートの保護材として用いることができる。
【0047】
本発明のコンクリート保護材は、チキソ性に優れ、低臭気であり、硬化性に優れ、湿潤接着性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることから、各種コンクリートの補修材として、好適に用いることができる。
【実施例0048】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、酸価はJIS-K-6901に準拠して測定したものであり、平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0049】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0050】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0051】
(合成例1:両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-1)の合成)
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコにビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量であるエピクロン850(DIC株式会社製)1850質量部、アクリル酸860質量部、ハイドロキノン1.36質量部およびトリエチルアミン10.8質量部を仕込み、120℃まで昇温させ、同時間で10時間反応させ、分子量512、酸価3.5のエポキシアクリレートとして、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-1)を得た。
【0052】
(合成例2:両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-2)の合成)
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコにネオペンチルグリコール250質量部、プロピレングリコール100質量部、アジピン酸390質量部、無水マレイン酸100質量部を仕込み、エステル化触媒としてモノブチル錫オキサイド0.5質量部を添加し、205℃で11時間反応させた。その後、140℃まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレート25質量部を投入し、10時間反応させ、数平均分子量4,150のポリエステル(メタ)アクリレートとして、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-2)を得た。
【0053】
(合成例3:両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-3)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた反応容器に数平均分子量1000のポリプロピレングリコール500質量部とトリレンジイソシアネート172質量部を仕込み、窒素気流下80℃で2時間反応させた。NCO当量が600とほぼ理論当量値となったので、50℃まで冷却した。空気気流下、ハイドロキノン0.07質量部を加え、2-ヒドロキシエチルメタクリレート135質量部を加え、90℃で4時間反応させた。NCO%が0.1%以下となった時点で、ターシャリーブチルカテコール0.07質量部添加し、数平均分子量1,580のウレタンメタクリレートとして、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-3)を得た。
【0054】
(合成例4:不飽和ポリエステル(B-1)の合成)
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた反応容器に、トリエチレングリコール231質量部、ジエチレングリコールを80質量部、無水フタル酸を102質量部、3-メチルテトラヒドロフタル酸を210質量部、ジブチル鎮オキサイドを0.3質量部、メチルハイドロキノンを0.1質量部仕込み、205℃で4時間反応させた。150℃まで冷却し、無水マレイン酸を34質量部仕込み、190℃条件下で4時間反応させ、酸価が12.0の不飽和ポリエステル(B-1)を得た。
【0055】
(実施例1:コンクリート補修材(1)の調製及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた遮光容器に、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-1)30質量部、不飽和ポリエステル(B-1)10質量部、メチル化βシクロデキストリン0.5質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート30質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10質量部、ジエチレングリコールジメタクリレート20質量部、シリカ微粒子(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS-102」、乾式シリカ;以下、シリカ微粒子(F-1)と略記する。)3質量部、レオロジーコントロール剤(BYK社製「BYK R-605」)1.5質量部を撹拌混合し、コンクリート補修材(1)を得た。
【0056】
[チキソ性の評価]
上記で得たコンクリート補修材(1)をJISK6901:2008の「5.5.1ブルックフィールド形粘度計法を用いる場合」に準拠して、表7のタイプi、BM粘度計により粘度を測定し、TI値(6rpmでの粘度の値/60rmpでの粘度の値)を算出し、下記の基準によりチキソ性を評価した。
○:TI値が4以上
×:TI値が4未満
【0057】
[評価用試料の調製]
上記で得たコンクリート補修材(1)50質量部に、8質量%オクチル酸コバルトを0.25質量部、トルイジン化合物イソプロパノール溶液(ディーエイチ・マテリアル株式会社製「RP-191」)を0.5質量部、40質量%ベンゾイルパーオキサイド溶液を1質量部添加・混合し、評価用試料(1)を得た。
【0058】
[臭気性の評価]
23℃の環境下、上記で得た評価用試料(1)0.2kg/m2をスレート板上に刷毛にて塗装した際の臭気を官能判定し、下記の基準により臭気性を評価した。
〇:臭気なし又はわずかに臭気あり
×:臭気あり
【0059】
[硬化性の評価]
上記で得た評価用試料(1)をスレート板上に0.2kg/m2の量で刷毛にて塗り広げ、23℃の条件下、指触にてタックフリーとなる時間を測定し、下記の基準により硬化性を評価した。
〇:90分未満
×:90分以上
【0060】
[湿潤面接着性の評価]
上記で得た評価用試料(1)を、1日水浸し、その後取出して水滴を拭き取った舗装板の上に、0.2kg/m2の量で刷毛にて塗り広げた。その塗膜を1日養生した後、建研式引張試験機(サンコーテクノ株式会社製「テクノスターRT-3000LD」)を使用して、垂直に引張り、剥離強度を測定し、以下の基準により湿潤面接着性を評価した。
〇1.5N/mm2以上
×1.5N/mm2未満
【0061】
[耐アルカリの評価]
上記で得た評価用試料(1)を70×70×20mmのモルタルに対し、刷毛で0.2kg/m2塗布することにより得られた供試体を飽和水酸化カルシウム水溶液に半浸漬し、40℃環境下で30日間養生した。30日後に供試体の外観を目視観察し、下記の基準により耐アルカリ性を評価した。
〇:変化なし
×:膨れ又は割れあり
【0062】
(実施例2及び3:コンクリート補修材(2)及び(3)の調製及び評価)
実施例1で用いた両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-1)を、両末端に重合性不飽和基を有する樹脂(A-2)又は(A-3)に変更した以外は、実施例1と同様に、コンクリート補修材(2)及び(3)を調製後、各物性を評価した。
【0063】
(比較例1及び2:コンクリート補修材(R1)及び(R2)の調製及び評価)
実施例1の配合を、表1に記載のものとした以外は、実施例1と同様に、コンクリート補修材(R1)及び(R2)を調製後、各物性を評価した。
【0064】
上記で得られたコンクリート補修材(1)~(3)、及び(R1)~(R2)の組成及び評価結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
実施例1~3の本発明のコンクリート補修材は、チキソ性に優れ、低臭気であり、硬化性に優れ、湿潤接着性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることが確認された。
【0067】
比較例1は、不飽和ポリエステル(B)及び(メタ)アクリル単量体を含有しない例であるが、粘度が高く、チキソ性が不足しており、作業性が劣った。
【0068】
比較例2は、多官能(メタ)アクリル単量体(D)を含有しない例であるが、得られる塗膜の耐アルカリ性が不十分であった。