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特開2022-49335位置推定システム、位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049335
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】位置推定システム、位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220322BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155486
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】望月 章志
(72)【発明者】
【氏名】津田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】水上 雅人
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301FF13
5H301KK10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な方法で高精度に移動体の位置を推定することが可能な位置推定システム、位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラムを提供する。
【解決手段】二次元平面に設定された移動可能領域R1の近傍の4か所に設置された固定マーカ4a~4dと、移動可能領域R1内を移動する移動台車D1に設置された移動マーカ3と、移動可能領域R1の外部に設置され、移動可能領域R1を斜め上方から見た鳥瞰画像を撮像するカメラ2を有する。更に、鳥瞰画像における各固定マーカ4a~4d、移動マーカ3の位置、及び、移動可能領域R1内における各固定マーカ4a~4dの位置に基づいて、移動可能領域R1内における移動台車D1の位置を推定する位置推定部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元平面に設定された移動可能領域内または前記移動可能領域近傍の少なくとも4か所に設置された固定マーカと、
前記移動可能領域内を移動する移動体に設置された移動マーカと、
前記移動可能領域の外部に設置され、前記移動可能領域を斜め上方から見た鳥瞰画像を撮像する撮像部と、
前記鳥瞰画像における前記各固定マーカ及び移動マーカの位置、及び、前記移動可能領域内における前記各固定マーカの位置に基づいて、前記移動可能領域内における前記移動体の位置を推定する位置推定部と、
を備えたことを特徴とする位置推定システム。
【請求項2】
前記移動可能領域は多角形状をなしており、前記固定マーカは、前記移動可能領域における各頂点に接して設置されること
を特徴とする請求項1に記載の位置推定システム。
【請求項3】
二次元平面に設定された移動可能領域の外部に設置され、前記移動可能領域を斜め上方から見た鳥瞰画像を撮像する撮像部を有し、
前記鳥瞰画像は、前記移動可能領域内または移動可能領域近傍の少なくとも4箇所に設置された固定マーカ、及び、前記移動可能領域内を移動する移動体に設置された移動マーカを含み、
前記鳥瞰画像に含まれる各固定マーカ、及び移動マーカの位置に基づいて、前記移動可能領域内における前記移動体の位置を推定する位置推定部、
を備えたことを特徴とする位置推定装置。
【請求項4】
二次元平面に設定された移動可能領域の外部に設置され、前記移動可能領域を斜め上方から見た鳥瞰画像を取得する鳥瞰画像取得工程を備え、
前記鳥瞰画像は、前記移動可能領域内または移動可能領域近傍の少なくとも4箇所に設置された固定マーカ、及び、前記移動可能領域内を移動する移動体に設置された移動マーカを含み、
前記鳥瞰画像に含まれる各固定マーカ、及び移動マーカの位置に基づいて、前記移動可能領域内における前記移動体の位置を推定する位置推定工程、
を備えたことを特徴とする位置推定方法。
【請求項5】
前記鳥瞰画像を、前記移動可能領域の上方から見た平面画像に変換する画像変換工程と、
前記平面画像における前記固定マーカの位置と、前記移動可能領域内における前記固定マーカの設置位置に基づいて、前記平面画像の単位ピクセル当たりの前記移動可能領域内での実距離を算出する換算距離算出工程と、を更に備え、
前記位置推定工程は、
前記移動可能領域内に初期位置を設定し、前記撮像部で撮像された動画の各フレームにおける鳥瞰画像を前記平面画像に変換し、該平面画像上での前記移動体の位置を検出し、前記平面画像上での前記初期位置と前記検出した移動体の位置との間のピクセル数、及び前記単位ピクセル当たりの実距離に基づいて、前記移動可能領域内の前記初期位置を基準とした前記移動マーカの移動距離を算出することにより、前記移動マーカの前記移動可能領域内における現在位置を推定すること
を特徴とする請求項4に記載の位置推定方法。
【請求項6】
4つの固定マーカで規定される四角形の領域を、前記移動可能領域として設定すること
を特徴とする請求項4または5に記載の位置推定方法。
【請求項7】
請求項3に記載した位置推定装置としてコンピュータを機能させるための位置推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定システム、位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ構造物を点検するために、自走式の台車に計測機器を搭載し、遠隔操作で台車を移動させて各種の点検を実施することが行われている。自走式の台車を移動させて点検を行う際において、点検箇所が狭隘な空間である場合にはその場で大きく旋回することができないといった制約がある。そこで、任意の方向に移動可能な全方向移動台車が開発されている。
【0003】
全方位移動台車に搭載された計測機器による測定データは、測定地点の位置情報に対応させて分析し管理する。このため、全方位移動台車の位置情報を高精度に求める必要がある。このような移動体の位置を推定する方法として、非特許文献1、2に開示されたものが知られている。
【0004】
非特許文献1には、屋内を移動する移動ロボットの位置を推定する方法について開示されており、天井部に設置したカメラを用いて移動ロボットが移動する領域を撮像し、撮像した画像を解析して移動ロボットの位置を推定している。
【0005】
非特許文献2には、送信機より送信されるWi-Fi電波を利用して、送信機から移動体までの距離を算出することにより、移動ロボットの位置を推定することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jae Hong Shim and Young Im Cho, ”A Mobile Robot Localization via Indoor Fixed Remote Surveillance Cameras” Sensors. 16. 195. 2016.
【非特許文献2】Joydeep Biswas and Manuela Veloso ”WiFi localization and navigation for autonomous indoor mobile robots”, Proc. of 2010 IEEE International Conference on Robotics and Automation.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載された方法では、屋内の天井部にカメラを設置して移動ロボット、及び該移動ロボットの移動領域を撮像するので、屋外で採用することは難しい。例えば、移動領域を上空から撮像するためにクレーン車などを用いる必要があり、装置構成が大がかりとなり実用性に乏しい。
【0008】
一方、非特許文献2に記載されているように、送信機より送信されるWi-Fi電波を利用する方法では、屋外に電磁遮蔽物が存在する場合には、移動ロボットの位置の検出精度が低下し、高精度な位置推定ができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な方法で高精度に移動体の位置を推定することが可能な位置推定システム、位置推定装置、位置推定方法、及び位置推定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の位置推定システムは、二次元平面に設定された移動可能領域内または前記移動可能領域近傍の少なくとも4か所に設置された固定マーカと、前記移動可能領域内を移動する移動体に設置された移動マーカと、前記移動可能領域の外部に設置され、前記移動可能領域を斜め上方から見た鳥瞰画像を撮像する撮像部と、前記鳥瞰画像における前記各固定マーカ及び移動マーカの位置、及び、前記移動可能領域内における前記各固定マーカの位置に基づいて、前記移動可能領域内における前記移動体の位置を推定する位置推定部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様の位置推定装置は、二次元平面に設定された移動可能領域の外部に設置され、前記移動可能領域を斜め上方から見た鳥瞰画像を撮像する撮像部を有し、前記鳥瞰画像は、前記移動可能領域内または移動可能領域近傍の少なくとも4箇所に設置された固定マーカ、及び、前記移動可能領域内を移動する移動体に設置された移動マーカを含み、前記鳥瞰画像に含まれる各固定マーカ、及び移動マーカの位置に基づいて、前記移動可能領域内における前記移動体の位置を推定する位置推定部、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様の位置推定方法は、二次元平面に設定された移動可能領域の外部に設置され、前記移動可能領域を斜め上方から見た鳥瞰画像を取得する鳥瞰画像取得工程を備え、前記鳥瞰画像は、前記移動可能領域内または移動可能領域近傍の少なくとも4箇所に設置された固定マーカ、及び、前記移動可能領域内を移動する移動体に設置された移動マーカを含み、前記鳥瞰画像に含まれる各固定マーカ、及び移動マーカの位置に基づいて、前記移動可能領域内における前記移動体の位置を推定する位置推定工程、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、上記位置推定装置としてコンピュータを機能させるための位置推定プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な方法で高精度に移動体の位置を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る位置推定システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る位置推定システムの全体構成を模式的に示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る位置推定システムの全体構成を模式的に示す側面図である。
図4図4は、全方位移動台車の概略構成を示す斜視図である。
図5図5は、全方位移動台車に搭載されるオムニホイールの構成を示す斜視図である。
図6図6は、カメラで撮像される移動可能領域、及び4つの固定マーカの鳥瞰画像を示す説明図である。
図7図7は、図6に示した鳥瞰画像を平面画像に変換した図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る位置推定システムにより実行される位置推定処理の、処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、動画より時系列的に得られる鳥瞰画像を示す説明図である。
図10図10は、図9に示した各鳥瞰画像を平面画像に変換した図である。
図11図11は、ハードウェア構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る位置推定システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る位置推定システム100は、制御部1及びカメラ2(撮像部)からなる位置推定装置51と、移動マーカ3と、4つの固定マーカ4a、4b、4c、4dと、を備えている。
【0017】
図2は本発明の実施形態に係る位置推定システムの全体構成を模式的に示す平面図、図3は同側面図である。図2図3に示すように、二次元平面上に、全方位移動台車D1(移動体)が移動する領域として長方形の移動可能領域R1が設定されている。
【0018】
例えば、計測機器を搭載した全方位移動台車D1(以下、「移動台車D1」と略す)が移動して点検する領域を、移動可能領域R1として設定する。移動台車D1は3個以上のオムニホイールを備えた移動体である。図4は、移動台車D1の構成を示す斜視図である。図4では、一例として3個のオムニホイール22を備えた移動台車D1を示している。図4に示すように移動台車D1は、六角柱形状をなしており、上面には矩形状の移動マーカ3が設置されている。また、側面には3個のオムニホイール22が搭載されている。
【0019】
オムニホイール22は図5に示すように、主車輪22Aの周囲に複数の副車輪22Bが設けられている。オムニホイール22は、副車輪22Bが回転することにより、主車輪22Aの車軸方向(主車輪22Aに直交する方向)に移動可能である。
【0020】
移動マーカ3は、画像処理により認識可能な図形を記載した平面パネルである。移動マーカ3は、その法線がほぼ鉛直方向を向くように設置されている。移動マーカ3は、移動台車D1の移動に伴って移動可能領域R1内を移動する。移動マーカ3は、後述する各固定マーカ4a~4dと識別するために、各固定マーカ4a~4dと異なる図形とするのが良い。
【0021】
図2図3に示すように、移動可能領域R1の4つの隅部にそれぞれ固定マーカ4a~4dが設置されている。各固定マーカ4a~4dは、前述した移動マーカ3と同様に、画像処理により認識可能な図形を記載した平面パネルである。各固定マーカ4に記載される図形は同一の図形であっても、異なる図形であってもよい。各固定マーカ4a~4dは、その法線がほぼ鉛直方向を向くように設置されている。また、各固定マーカ4a~4d、及び移動マーカ3は同一平面上(高さが同一となる平面上)に設置すると良い。固定マーカ4a~4d及び移動マーカ3として、QRコード(登録商標)やARマーカを用いることも可能である。
【0022】
また、本実施形態では4個の固定マーカ4a~4dを設置する例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、5個以上の固定マーカを設置する構成とすることも可能である。更に、本実施形態では4個の固定マーカ4a~4dを移動可能領域R1の外側の隅部に設置する例について示すが、移動可能領域R1内に設置してもよい。移動可能領域R1内、或いは移動可能領域R1の近傍の少なくとも4箇所に固定マーカが設置されていればよい。
【0023】
例えば、移動可能領域は長方形であるとは限らず、五角形以上の多角形、凸型形状、凹型形状などの多様な形状が想定される。本発明は多角形状をなす移動可能領域の各頂点に固定マーカを設置することにより、各頂点間の相対的な位置を把握する。このため、固定マーカを各頂点の近傍となる位置に設置する。より好ましくは、各頂点に接する位置に設置する。或いは、移動可能領域内において各頂点に接する位置に設置する。
【0024】
図2図3に示すように、カメラ2は、移動可能領域R1の外部に立設された取付台21の上部に、移動可能領域R1の斜め上方から該移動可能領域R1の全体を撮像可能な位置に設置されている。従って、カメラ2により、移動可能領域R1を斜め上方から見た画像(以下、「鳥瞰画像」という)を撮像することができる。カメラ2は、鳥瞰画像の水平線が、2つの固定マーカ4a、4bを結ぶ直線に対して平行となるように設置すると良い。
【0025】
図1に戻って、制御部1は、カメラ駆動部11と、画像変換部12と、換算距離算出部13と、位置推定部14と、を備えている。
【0026】
カメラ駆動部11は、カメラ2を駆動させ、該カメラ2で撮像された移動可能領域R1の鳥瞰画像を取得する。鳥瞰画像には、移動可能領域R1全体の画像、各固定マーカ4a~4dの画像、及び移動台車D1が存在する場合には該移動台車D1に搭載された移動マーカ3の画像が含まれる。カメラ駆動部11は、取得した鳥瞰画像を画像変換部12に出力する。
【0027】
画像変換部12は、カメラ2で撮像された鳥瞰画像を、移動可能領域R1を上方から見た画像である平面画像に変換する処理を実施する。以下、図6図7を参照して画像変換処理について詳細に説明する。図6は、移動可能領域R1内に物体が存在しないときの、カメラ2で撮像される鳥瞰画像を示す説明図である。図7は、図6に示した鳥瞰画像を平面画像に変換した図である。
【0028】
図6に示すように、カメラ2により移動可能領域R1を斜め上方から撮像しているので、カメラ2から遠い位置に設置されている固定マーカ4aと4bを結ぶ直線M1は、カメラ2に近い位置に設置されている固定マーカ4cと4dを結ぶ直線M2よりも短くなっている。即ち、平面視で長方形状をなす移動可能領域R1は、鳥瞰画像中において台形状を成している。なお、以下では図6に示す矢印のように、前後左右方向を決める。
【0029】
図6に示すように、カメラ2で撮像された鳥瞰画像において、左前方の固定マーカ4aの右後方の隅部の座標を(x1,y1)とする。右前方の固定マーカ4bの左後方の隅部の座標を(x2,y2)とする。左後方の固定マーカ4cの右前方の隅部の座標を(x3,y3)とする。右後方の固定マーカ4dの左前方の隅部の座標を(x4,y4)とする。
【0030】
画像変換部12は、上述した各座標と、各固定マーカ4a~4dの設置位置とに基づいて射影変換し、鳥瞰画像上の座標を平面画像上の座標に変換する。即ち、上記した各座標(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)を、図7に示す(x1´,y1´)、(x2´,y2´)、(x3´,y3´)、(x4´,y4´)に変換する。「射影変換」とは、任意の四角形の座標を、他の四角形の座標に変換する処理である。
【0031】
鳥瞰画像中の任意の点(x,y)を平面座標の点(x´、y´)に変換する際に、下記(1)、(2)式を用いる。
【0032】
x´=(ax+by+c)/(gx+hy+1) …(1)
y´=(dx+ey+f)/(gx+hy+1) …(2)
そして、上述した(1)、(2)式の「x」、「y」に上述した4つの固定マーカ4により規定された座標(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)を代入する。更に、(1)、(2)式の「x´」、「y´」に、図7に示した画像の各座標(x1´,y1´)、(x2´,y2´)、(x3´,y3´)、(x4´,y4´)に対応する実空間の座標を代入する。「実空間の座標」とは、図2に示す移動可能領域R1内に設定される二次元の座標を意味する。その結果、8次元連立方程式が得られ、この8次元連立方程式を解くことで、8個のパラメータ「a、b、c、d、e、f、g、h」を算出することができる。
【0033】
算出した8個のパラメータa~hを上記(1)、(2)式に代入し、代入後の(1)、(2)式に基づいて、鳥瞰画像上の座標を平面空間上の座標に変換することができる。画像変換部12は、(1)、(2)式を用いて座標変換処理を実施する。
【0034】
上述した射影変換を用いることにより、斜め上方から撮像した鳥瞰画像を、上方から見た平面画像に変換することができる。その結果、図6に示した鳥瞰画像を、図7に示した平面画像に変換することができる。
【0035】
図1に戻って、換算距離算出部13は、画像変換部12で射影変換された平面画像に含まれる各固定マーカ4a~4dの位置と、移動可能領域R1内における固定マーカ4a~4dの設置位置に基づいて、平面画像の1ピクセル当たりの、移動可能領域R1内における実距離(以下「分解能p」とする)を算出する。
【0036】
具体的に、図2に示すように長方形状をなす移動可能領域R1の長辺の長さがWであり、図7に示す平面画像上の長辺のピクセル数がPである場合には、分解能pは、「p=W/P」で算出することができる。なお、上記では平面画像を用いて分解能pを算出する例について説明したが、鳥瞰画像を用いて分解能pを算出してもよい。
【0037】
位置推定部14は、換算距離算出部13で換算された分解能p(1ピクセル当たりの実距離)と、平面画像内における移動マーカ3の位置に基づいて、該移動マーカ3を搭載した移動台車D1の位置を検出する。
【0038】
具体的に、位置推定部14は、移動可能領域R1内にて移動台車D1が移動する際に、該移動台車D1の、平面画像内における初期位置(所定の初期位置)の座標を取得し、この座標を記憶する。その後、移動可能領域R1内を移動台車D1が移動する場合には、カメラ2で撮像された動画の各フレームにおける鳥瞰画像より取得される各平面画像に含まれる移動マーカ3の位置を検出する。更に、検出した移動マーカ3の位置、及び前述した分解能pに基づいて、初期位置を基準とした移動台車D1の位置、即ち、移動可能領域R1内における移動台車D1の実際の位置を検出する。位置推定部14は、検出した移動台車D1の位置の情報を外部機器に出力する。
【0039】
[本実施形態の動作]
次に、上述のように構成された本実施形態に係る位置推定システム100の動作を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。図8に示す処理は、図1に示した制御部1により実行される。
【0040】
初めに図8に示すステップS11において、カメラ駆動部11はカメラ2を作動させ、該カメラ2で撮像された移動可能領域R1内の鳥瞰画像を取得する。鳥瞰画像には、4つの固定マーカ4a~4dの画像が含まれている。
【0041】
ステップS12において、画像変換部12は鳥瞰画像を平面画像に変換する。図6に示したように、移動可能領域R1を斜め上方から見た画像である鳥瞰画像を、図7に示した平面画像に変換する。
【0042】
ステップS13において、換算距離算出部13は、平面画像中に含まれる4つの固定マーカ4a~4dの画像の位置、及び移動可能領域R1の近傍に設置された4つの固定マーカ4a~4dの設置位置に基づいて、分解能pを算出する。
【0043】
ステップS14において、カメラ駆動部11は、カメラ2を作動させて移動台車D1が移動する移動可能領域R1内の動画を撮像する。その結果、例えば図9(a)~(d)に示すように時系列的な鳥瞰画像が取得される。鳥瞰画像には、移動マーカ3、及び4つの固定マーカ4a~4dの画像が含まれている。
【0044】
ステップS15において、位置推定部14は、ステップS14の処理で取得した動画に含まれる時系列的な鳥瞰画像を、前述した射影変換を用いて平面画像に変換する。その結果、図10(a)~(d)に示すように、時系列的な平面画像が得られる。位置推定部14は、変換された平面画像に含まれる移動マーカ3の位置を検出する。
【0045】
ステップS16において、位置推定部14は、時系列的に得られる各平面画像における移動マーカ3が検出された位置に基づいて、平面画像中の移動マーカ3が移動したピクセル数を算出する。
【0046】
ステップS17において、位置推定部14は、移動したピクセル数と分解能pに基づいて、移動可能領域R1内における移動台車D1の2次元的な移動距離を算出し、且つ移動台車D1の現在位置を推定する。また、時系列的に得られる各平面画像上での移動マーカ3の現在位置を記録する。
【0047】
こうして、移動可能領域R1内における移動台車D1の初期位置に対する移動距離を算出し、移動台車D1の現在位置を推定することができ、更に、移動可能領域R1内での移動台車D1の移動軌跡を記録することが可能となる。
【0048】
[本実施形態の効果]
このようにして、本実施形態に係る位置推定システム100は、二次元平面に設定された移動可能領域R1内または移動可能領域R1の近傍の少なくとも4か所に設置された固定マーカ4a~4dと、移動可能領域R1内を移動する移動台車D1(移動体)に設置された移動マーカ3と、移動可能領域R1の外部に設置され、移動可能領域R1を斜め上方から見た鳥瞰画像を撮像するカメラ2(撮像部)と、鳥瞰画像における各固定マーカ4a~4d及び移動マーカ3の位置、及び、移動可能領域R1内における各固定マーカ4a~4dの位置に基づいて、移動可能領域R1内における移動台車D1の位置を推定する位置推定部14と、を備えている。
【0049】
上記のように構成された位置推定システム100では、各固定マーカ4a~4d、及び移動マーカ3をカメラ2で撮像して移動可能領域R1内を移動する移動台車D1の位置を推定することができる。その結果、移動台車D1を屋外に設定した移動可能領域R1内を移動させる場合であっても、大規模な構成を必要とせず且つ高精度に移動台車D1の位置を推定することが可能となる。
【0050】
また、従来における車輪エンコーダを用いて移動台車D1の位置を推定する方法と比較すると、路面の状態により車輪がスリップするなどの原因により位置の推定精度が低下するといった問題は発生しない。即ち、移動台車D1を屋外環境で使用する場合には、走行路面が平坦であることは稀であり、凹凸を有する走行路面を走行することで車輪にすべりが生じることが多々発生する。車軸エンコーダを用いて位置推定を行う場合には、車輪にすべりが生じることにより、推定誤差が生じてしまう。本実施形態では、車輪にすべりが発生した場合でも、この影響を受けることなく高精度な位置推定が可能となる。
【0051】
また、移動可能領域R1を斜め上方から撮像した鳥瞰画像を、真上から見た平面画像に変換し、該平面画像の単位ピクセル(例えば、1ピクセル)分の距離を、移動可能領域R1内での距離に換算した距離である分解能pを算出する。そして、平面画像中にて移動した移動マーカ3のピクセル数、及び分解能pに基づいて移動可能領域R1内における移動台車D1の位置を推定する。従って、移動可能領域R1の真上にカメラ2を設置することなく移動台車D1の位置を推定することができ、装置規模を縮小することが可能となる。また、移動可能領域R1内における移動台車D1の位置を高精度に推定することが可能となる。
【0052】
また、カメラ2で撮像される鳥瞰画像の水平線と、鳥瞰画像に含まれる固定マーカ4aと4bを結ぶ直線が平行になるように、カメラ2が設置されるので、分解能pを容易に算出することが可能になる。このため、演算負荷を著しく軽減することが可能となる。
【0053】
更に、4個の固定マーカ4a~4dを配置して矩形状の移動可能領域R1を設定し、該移動可能領域R1の鳥瞰画像を平面画像に変換するので、簡単な演算処理で画像変換することができ、演算負荷を軽減することが可能となる。
【0054】
上記説明した本実施形態の位置推定装置51には、図11に示すように例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、位置推定装置51の各機能が実現される。
【0055】
なお、位置推定装置51は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、位置推定装置は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0056】
なお、位置推定装置51用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0058】
例えば、本実施形態では移動体として、六角柱形状をなし3つのオムニホイール22を有する全方位移動台車D1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、移動可能領域R1内で移動可能な他の移動体であってもよい。
【0059】
また、カメラ2による動画の撮影時において各マーカに生じる反射を防止するために、マーカ表面に無反射コーティングを塗布した構造や、無反射フィルム、無反射ガラスをマーカ表面に設置しても良い。更に、マーカ自体を無反射素材の布地で形成してもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、移動可能領域R1が長方形であり、各隅部に固定マーカ4a~4dを設置する例について説明したが、移動可能領域R1が五角形以上の多角形の場合などには、各頂点、即ち、5箇所以上の位置に固定マーカを設置することにより移動体の位置を推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 制御部
2 カメラ(撮像部)
3 移動マーカ
4a~4d 固定マーカ
11 カメラ駆動部
12 画像変換部
13 換算距離算出部
14 位置推定部
21 取付台
22 オムニホイール
22A 主車輪
22B 副車輪
51 位置推定装置
100 位置推定システム
D1 移動台車(全方位移動台車)
R1 移動可能領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11