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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049439
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】光ラインセンサ部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/028 20060101AFI20220322BHJP
   H04N 1/12 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H04N1/028 Z
H04N1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155653
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃司
(72)【発明者】
【氏名】土井 邦彦
【テーマコード(参考)】
5C051
5C072
【Fターム(参考)】
5C051AA01
5C051BA04
5C051DA03
5C051DB01
5C051DB04
5C051DB05
5C051DB22
5C051DB28
5C051DB31
5C051DC04
5C051DC07
5C051DD02
5C051EA08
5C051FA01
5C072BA13
5C072BA20
5C072CA07
5C072DA03
5C072DA09
5C072DA15
5C072DA25
5C072EA07
5C072NA01
5C072NA04
5C072RA01
(57)【要約】
【課題】それぞれテーパ面を設けたカバー部材と透明部材を用いると同時に、簡単な設備によって、細かな制御が必要無く作製でき、透明部材とカバー部材の接合部の段差を抑えることが可能な、光ラインセンサ部材を提供する。
【解決手段】紙葉類を読み取る光ラインセンサユニット1の一部を構成している光ラインセンサ部材9は、光を透過する透明部材11及びカバー部材12より構成され、透明部材11は主走査方向と直交する方向に沿って切った断面が略台形をしており、主走査方向に平行な辺にテーパ面を有している。略台形の断面について、紙葉類が搬送される搬送路側が短辺となる断面となっている。また、カバー部材12にも透明部材11と略平行に形成されたテーパ面を有しおり、透明部材のテーパ面とカバー部材のテーパ面が接着されて、透明部材とカバー部材が接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に向けて光を照射する光源部と前記搬送路からの光量に応じた信号を出力する受光部を有する光学ラインセンサユニットの部材であって、
前記受光部に入射される光を透過する透明部材と、
前記透明部材の外周を囲むように配置され、光を透過しないカバー部材とを備え、
前記透明部材は、主走査方向と直交する方向に沿って切った断面において前記搬送路側の辺が短辺となる略台形をしていて、主走査方向に平行な辺に傾斜が設けられたテーパ面を有し、
前記カバー部材は、前記透明部材の主走査方向に平行な辺に設けられたテーパ面と略平行に形成されたテーパ面を有し、
前記透明部材のテーパ面と前記カバー部材のテーパ面とが接着剤で接合されていることを特徴とする光ラインセンサ部材。
【請求項2】
前記接着剤が紫外光硬化接着剤、熱硬化接着剤、熱可塑性接着剤、湿気硬化接着剤、または2液硬化性接着剤のいずれかであることを特徴とする、請求項1記載の光ラインセンサ部材。
【請求項3】
前記透明部材がガラスであることを特徴とする、請求項1又は2記載の光ラインセンサ部材。
【請求項4】
前記透明部材は、副走査方向と直交する方向に沿って切った断面において前記搬送路側の辺が短辺となる略台形をしていて、副走査方向に平行な辺に傾斜が設けられたテーパ面を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか記載の光ラインセンサ部材。
【請求項5】
前記カバー部材の主走査方向に平行な辺において、前記透明部材が接する面とは反対側の面の端部が櫛歯形状になっていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の光ラインセンサ部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の光ラインセンサ部材の製造方法であって、
前記透明部材のテーパ面または前記カバー部材のテーパ面に前記接着剤を塗布する工程と、
前記透明部材のテーパ面と前記カバー部材のテーパ面を対向させる工程と、
前記搬送路側に平板を置き、前記搬送路側とは反対方向から押圧部材により前記透明部材を前記平板に向かって押し当てる工程と、
前記接着剤を硬化させる工程とを含む、光ラインセンサ部材の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤が紫外光硬化接着剤であり、
前記接着剤を硬化させる工程では、紫外光源から前記透明部材のテーパ面及び前記カバー部材のテーパ面に紫外光を照射することを特徴とする、請求項6記載の光ラインセンサ部材の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤を硬化させる工程では、前記押圧部材によって前記紫外光源からの紫外光の一部が遮られることを特徴とする、請求項7記載の光ラインセンサ部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣及び有価証券等の紙葉類を読み取るための光ラインセンサユニットの内部に備えられるコンポーネントを紙粉及びほこり等から保護するための光ラインセンサ部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣及び有価証券等の紙葉類を読み取るための光ラインセンサユニットの内部に備えられるコンポーネントを紙粉及びほこり等から保護するための光ラインセンサ部材は、一般的に、光を透過する透明部及び光の透過しない不透明部で構成される。具体的には、透明部の周囲が不透明部で囲われた状態で構成される。透明部及び不透明部の境目において段差が生じている場合、搬送中の紙葉類がその段差に引っかかり、紙詰まりが起こる可能性がある。たとえば、紙葉類が高速で搬送される場合、数10μm(50~60μm)の僅かな段差でも紙詰まりが生じる。したがって、紙葉類の搬送を安定して行うためには、透明部及び不透明部における段差を極力なくすことが望まれる。
【0003】
このような背景から、従来、透明部及び不透明部の境目における段差を小さくするための方法を用いて、光ラインセンサ部材が作製されている。(特許文献1、2及び3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/098300号
【特許文献2】特開2012-075008号公報
【特許文献3】特開2010-268131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ラインセンサ部材の作製方法としては、透明部を構成する部材(以下「透明部材」と記す)及び不透明部を構成する部材(以下、「カバー部材」と記す)が一体になるように形成する方法が用いられる。具体的には、透明部材を金型内に配置した後に、カバー部材を形成するための材料(一般的に樹脂材)を流し込み、透明部材及びカバー部材が一体になるように形成する。この作製方法の場合、カバー部材が透明部材の光が透過する部分を覆うのを抑制するために、繊細な制御が要求される。
【0006】
一方で、光ラインセンサ部材の他の作製方法としては、透明部材とカバー部材を接着する方法が用いられることもある。この場合、透明部材及びカバー部材のそれぞれが持つ反りに起因して、透明部材及びカバー部材の境目、すなわち、接合部において段差が生じる。したがって、透明部材とカバー部材を接着する方法では、透明部材及びカバー部材の接合部での段差の発生を抑制するために、これらを平板に押し当てて接着する。しかしながら、透明部材及びカバー部材を平板に押し当てる場合、適切に透明部材及びカバー部材の反りを矯正する必要がある。すなわち、透明部材とカバー部材を平板に押し当てる場合にも繊細な制御が要求される。
【0007】
更に、矯正が仮に正確に達成されたとしても、従来の矩形形状の断面を有する透明部材とカバー部材の場合は、透明部材及びカバー部材の接合部において上述したような僅かな段差が生じる可能性が高い。加えて、透明部材とカバー部材を接着する方法においては、製造過程での誤差の観点から200mmを超える主走査方向の寸法において、両者の厚みの差である段差を数10μm以下に抑えることは現実的ではない。
【0008】
本願発明は、このような実情より、それぞれテーパ面を設けたカバー部材と透明部材を用いると同時に、簡単な設備によって、細かな制御が必要無く作製でき、透明部材とカバー部材の接合部の段差を抑えることが可能な、光ラインセンサ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る光ラインセンサ部材は、紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの一部を構成している。光ラインセンサ部材は光を透過する透明部材と、透明部材を囲う光を透過しないカバー部材より構成されている。透明部材は主走査方向と直交する方向に沿って切った断面が略台形をしており、主走査方向に平行な辺にテーパ面を有している。略台形の断面について、紙葉類が搬送される搬送路側が上底(短辺)となる断面となっている。またカバー部材にも透明部材と略平行に形成されたテーパ面を有しおり、透明部材のテーパ面とカバー部材のテーパ面が接着されて、透明部材とカバー部材が接合されている。
【0010】
透明部材の主走査方向と直交する方向に沿って切った断面については、主走査方向の全部または一部が略台形形状となっていれば良い。
【0011】
透明部材はガラスや透明樹脂など、光ラインセンサの性能に影響のない材料が望ましい。
【0012】
光ラインセンサ部材は、透明部材とカバー部材を同時に平板に押し当てて接着して作製する。接着手順としては、まずカバー部材の搬送路側を平板に押し当ててセットする。その後、搬送路と反対側から透明部材を平板に押し当てて、透明部材とカバー部材のそれぞれのテーパ面を合わせるようにして接着する。
【0013】
接着の際、透明部材のみを平板側に加力して押し当てる。カバー部材については透明部材のテーパ面よりカバー部材のテーパ面に加力されることで平板に押し当てられる。これにより、透明部材とカバー部材の接合部全辺において、均等な力で平板に押し当てることが可能となり、接合部全体において均一に段差を抑制することができる。
【0014】
透明部材及びカバー部材の接着には接着剤を用いる。接着剤の種類としては、紫外光硬化接着剤、熱硬化接着剤、熱可塑接着剤、湿気硬化接着剤、または2液性硬化接着剤などが適用できる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、透明部材とカバー部材を、透明部材の紙葉類搬送路の反対側から透明部材のテーパ面をカバー部材のテーパ面に押し当て接着する簡便な手法により、透明部材とカバー部材の搬送路側の面を面一にすることが可能になり、紙葉類の搬送中の引っ掛かりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る光ラインセンサユニットの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光ラインセンサユニットの構成の一例の一部を概略的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る光ラインセンサ部材の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る透明部材の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るカバー部材の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図6】平板上にカバー部材を配置している様子の一例を概略的に示す断面図である。
図7】透明部材を押圧している様子の一例を概略的に示す断面図である。
図8】透明部材を押圧している様子の他の例を概略的に示す断面図である。
図9】接着剤を硬化させている様子の一例を概略的に示す断面図である。
図10】本発明の変形例に係るカバー部材の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図11】本発明の変形例に係るカバー部材の構成の他の例を概略的に示す平面図である。
図12】本発明の変形例に係るカバー部材の構成のその他の例を概略的に示す平面図である。
図13】本発明の変形例に係るカバー部材の構成のさらにその他の例を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.光ラインセンサユニットの全体構成
先ず、図1図2図3図4及び図5を参照して光ラインセンサユニット1について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光ラインセンサユニット1の構成の一例を概略的に示す断面図であって、図2は、本発明の一実施形態に係る光ラインセンサユニット1の構成の一例の一部を概略的に示す斜視図であって、図3は、本発明の一実施形態に係る光ラインセンサ部材9の構成の一例を概略的に示す斜視図であって、図4は、本発明の一実施形態に係る透明部材11の構成の一例を概略的に示す斜視図であって、図5は、本発明の一実施形態に係るカバー部材12の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
【0018】
紙葉類2を搬送するための搬送路3に少なくとも1つ以上設けられる光ラインセンサユニット1は、筐体4、光源部5、レンズアレイ6、基板7、その基板7に実装される受光部8、及び、光ラインセンサ部材9によって構成される。なお、本実施形態における紙葉類2には、たとえば、汎用の用紙、紙幣等及び有価証券等が該当する。
【0019】
さらに、図2に示すように、筐体4及び基板7はY方向に延び、筐体4内において、光源部5、レンズアレイ6、受光部8は、Y方向に延びる。また、図3に示すように、光ライセンサ部材9も筐体4と同様にY方向に延びる。Y方向は、主走査方向である。
【0020】
光源部5は、搬送路3でX方向に搬送される紙葉類2に向けて光を照射するためのライン光源である。X方向は、副走査方向であり、Y方向に直交している。また、図2に示すように、光源部5は、第1光源5a及び第2光源5bを含み、第1光源5aは、Y方向における光源部5の端部に設けられ、第2光源5bは、もう一方の端部に設けられる。
【0021】
第1光源5aは、紫外光源及び紫外光源を実装するための基板を含み、第2光源5bは、紫外光以外の光に対応する光源及びその光源を実装するための基板を含む。なお、ここでの紫外光以外の光とは、可視光及び赤外光の少なくとも一方を含む。ただし、光源の種類は、これらに限られるものではなく、第1光源5a又は第2光源5bの一方を省略することも可能である。
【0022】
また、光源部5は、第1光源5a又は第2光源5bに電力を供給するための基板5cを含み、基板5cは、光源部5を駆動させるための電源(図示しない)に接続される。
【0023】
さらに、光源部5は、導光体5d及び導光体5dを保持するためのカバー部材5eを含み、第1光源5a及び第2光源5bから導光体5dに入射される光は、導光体1内で拡散及び屈折した後に、その導光体1から出射される。導光体1はY方向に延びており、導光体1のY方向の両端部に第1光源5a及び第2光源5bが設けられている。導光体1のY方向に沿った側面(出射面)から出射される光は、Y方向に沿って均一な光量で出射される。
【0024】
このような光源部5からは、可視光、紫外光及び赤外光等が紙葉類2に照射される。また、紫外光については、300nm~400nm間におけるいずれかの値がピーク波長とされ、赤外光については、1500nmまでのいずれかの値がピーク波長とされる。
【0025】
さらに、紙葉類2に照射される光のうち、少なくとも紫外光は、他の光と時間的に重ならないようにして(すなわち時間的にスイッチングされながら)発光されてもよい。さらにまた、赤外光は、可視光と時間的に重なって発光されてもよいし、時間的に重ならないようにして発光されもよい。
【0026】
レンズアレイ6は、紙葉類2からの光(反射光及び蛍光)を受光部8に結像(収束)するための光学素子であり、レンズアレイ6としては、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイが用いられる。本発明の実施形態では、レンズアレイ6の倍率は、1(正立)に設定されている。また、レンズアレイ6には、受光部8への紫外光の照射を防止するために、紫外光を遮断する光学フィルタが設けられてもよい。
【0027】
受光部8は、少なくとも汎用の受光素子を含むように構成される。受光部8では、紙葉類2からの光が検出され、その光量に対応する信号が基板7に出力される。また、受光部8としては、フォトダイオードやフォトトランジスタ、駆動回路及び増幅回路を一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサが用いられてれもよい。
【0028】
また、必要に応じて基板7上に駆動回路、増幅回路などの電気回路、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどが実装されてもよい。さらに基板7上にA/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを実装し、デジタル信号が外部に取り出されてもよい。
【0029】
光ラインセンサ部材9は、光源部5及びレンズアレイ6等をごみ(たとえば、紙粉)から保護するために設けられる。図1に示すように、光ラインセンサ部材9は、搬送路3及び筐体4の間において、光源部5及びレンズアレイ6等が設けられた筐体4の内部空間を覆うように設けられる。
【0030】
光ラインセンサ部材9は、図3に示すように、透明部材11及びその透明部材11の周囲に設けられるカバー部材12によって構成され、透明部材11としては、光を透過する透明な板が用いられる。
【0031】
透明部材11としては、たとえば、耐摩耗性の観点から、ガラス製の板、具体的には、白板ガラス及びホウケイ酸ガラス等が用いられる。ガラスは、紫外線の透過率が良好であり、更に、紫外線だけでなく、近赤外域までの透過率が良好である。また、透明部材11としては、樹脂製の板、具体的には、アクリル樹脂製及びシクロオレフィン系樹脂製等の板が用いられてもよい。
【0032】
さらに、透明部材11における搬送面11cは、搬送路3と平行する面のうち、搬送路3側に位置する面であり、入射面11dは、搬送路3と平行する面のうち、搬送路3側とは反対側に位置し、光源部5からの光が入射される面である。
【0033】
カバー部材12としては、たとえば、光を透過しない不透明な板が用いられる。カバー部材12の材料及び材質は特に限定されないため、カバー部材12として、たとえば、上述したような樹脂製等の板が用いられる。また、受光部8のレンズアレイ6を介する視野角(図1参照)外からの光によって生じる迷光を抑制するという観点では、カバー部材12としては、黒色の板が用いられてもよい。
【0034】
また、カバー部材12における搬送面12cは、搬送路3と平行する面のうち、搬送路3側に位置する面である。
【0035】
なお、搬送面11cの内周縁によって規定される領域の中心、入射面11dの中心、搬送面12cの中心及びXY平面での筐体4の外周によって規定される領域の中心は、Z方向において重なる。
【0036】
また、本実施形態では、搬送面11cのX方向の幅は、筐体4のX方向の幅よりも小さい。このことは、搬送面11cのY方向の幅についても同様のことが言える。
【0037】
さらに、入射面11dのX方向の幅は、筐体4のX方向の幅及び搬送面11cのX方向の幅との間の大きさとされる。このことは、入射面11dのY方向の幅についても同様のことが言える。すなわち、Z方向において、搬送面11cの全体は、入射面11dの一部と重なる。
【0038】
さらにまた、本実施形態における透明部材11は、互いに対向する一対の当接面11a、及び、互いに対向する一対の当接面11bのそれぞれにおいてカバー部材12と当接する。具体的には、一対の当接面11aは、カバー部材12の互いに対向する一対の当接面12aと当接し、一対の当接面11bは、カバー部材12の互いに対向する一対の当接面12bと当接する。
【0039】
図1及び図4に示すように、各当接面11aの一部または全体は、搬送路3に近づくにつれて先細りするテーパ面で形成され、各当接面11aにおけるテーパ面の搬送面12cに対する傾斜角は、一致する。すなわち、透明部材11は、断面の全部または一部に台形を含む略台形をしており、台形形状によって断面にはテーパ面が形成されている。透明部材11の断面の台形形状について、短辺にあたる部分(搬送面11c)は紙葉類2が搬送される側となっている。
【0040】
なお、詳細な説明は後述するが、本実施形態において各当接面11a及び各当接面12aは、接着剤を介して互いに当接する。このことは、各当接面11b及び各当接面12bについても同様である。すなわち、図1及び図3に示す透明部材11及びカバー部材12は、接着剤で互いに接着されている。具体的には、搬送面11c及び搬送面12cが面一になるように透明部材11及びカバー部材12が互いに接着されている。
【0041】
このような光ラインセンサユニット1では、たとえば、搬送路3で搬送される紙葉類2に光が照射され、紙葉類2からの光(反射光及び蛍光)に基づく信号、すなわち、紙葉類2の表面に対応する信号が外部に出力され、たとえば、紙葉類2の表面に対応する画像が生成される。ただし、紙葉類2に紫外光を照射して蛍光させるような構成に限らず、紙葉類2からの反射光のみが受光部8で受光されるような構成であってもよい。また、反射型の光ラインセンサユニットではなく、透過型の光ラインセンサユニットに本発明を適用する場合には、搬送路3を挟んで受光部8とは反対側に光源が配置されてもよい。この場合、光源から照射された光が紙葉類2を透過し、その透過光が受光部8で受光されるような構成であってもよい。
【0042】
2.光ラインセンサ部材の製造方法
続いて、図6図7図8、及び、図9を参照して、光ラインセンサ部材9の製造方法の一例について説明する。図6は、平板13上にカバー部材12を配置している様子の一例を概略的に示す断面図であって、図7は、透明部材11を押圧している様子の一例を概略的に示す断面図であって、図8は、透明部材11を押圧している様子の他の例を概略的に示す断面図であって、図9は、接着剤を硬化させている様子の一例を概略的に示す断面図である。
【0043】
先ず、透明部材11、カバー部材12、平板13及び押圧部材14を用意する。なお、図7に示すように、線膨張係数の観点から透明部材11及びカバー部材12は、反りを有しているものとし、以下、透明部材11及びカバー部材12の両方がU字に反っている場合を例に挙げて説明する。透明部材11とカバー部材12の搬送路3側における接合部に段差を生じないようにするためには、各々の部材の寸法公差が有る中で、接合部全体において反り矯正を均等に行い接合する必要がある。少しでも反り矯正が不均一な場所が有ると、その部分が段差となり紙葉類2の搬送を妨げることになる。なお、ここでの平板13は、板状の剛体により構成される基準台であり、平板13は、剛体であれば、材料及び材質は特に限定されない。押圧部材14についても同様である。
【0044】
次に、図6に示すように、カバー部材12を平板13上に配置する。具体的には、搬送面12cが平板13と当接し、かつ、搬送面12c及び平板13が略平行となるようにカバー部材12を平板13上に配置する。
【0045】
続いて、透明部材11の一部または全体が、カバー部材12内の空間(配置空間)に配置される。配置空間は、X方向の幅、Y方向の幅及びZ方向の幅が各当接面12a及び各当接面12bによって規定される。具体的には、図7に示すように、搬送面11cが搬送面12c及び平板13と略平行となるように、透明部材11が配置空間内に配置される。なお、この場合、各当接面12a及び各当接面11aは、互いに対向する。また、各当接面12b及び各当接面11bも同様に、互いに対向する。さらに、透明部材11が配置空間内に配置される場合、搬送面11cの内周縁によって規定される領域の中心、入射面11dの中心、搬送面12cの中心がZ方向において重なる。
【0046】
また、透明部材11を配置空間内に配置するときは、接着剤が予め各当接面12a及び各当接面12bに塗布されている。さらに、接着剤は、各当接面12a及び各当接面12bの代わりに、各当接面11a及び各当接面11bに予め塗布されてもよいし、各当接面11a、各当接面11b、各当接面12a及び各当接面12bに予め塗布されてもよい。
【0047】
次に、図7に示すように押圧部材14を透明部材11の入射面11d上に配置する。具体的には、押圧部材14、搬送面11c、搬送面12c及び平板13が略平行となるように、押圧部材14を入射面11d上に配置する。また、この場合、Z方向において、押圧部材14の中心が搬送面12c等の中心と重なる。
【0048】
次に、図7に示すように、押圧部材14を用いて、透明部材11を平板13側に向かう方向(押圧方向)P1に押圧する。本実施形態では、押圧部材14を用いて透明部材11を押圧する場合、外部から押圧方向P1の力を押圧部材14に付与する。また、押圧部材14の自重を用いて透明部材11を押圧してもよい。ただし、この場合、重力の方向及び押圧方向P1が一致する場合に限る。
【0049】
また、本実施形態において、押圧方向P1の力は、透明部材11及びカバー部材12における応力、具体的には、引張応力及び圧縮応力よりも強い力である。
【0050】
図7に示すように、押圧方向P1の力が透明部材11に作用すると、各当接面11a及び各当接面12aが当接していることから、P2方向及びP3方向の力がカバー部材12に作用する。P2方向の力は平板13に垂直方向の力で、この力によってカバー部材12の各当接面12aは平板13側に押圧される。P3方向の力は、カバー部材12を外側に広げようとする力で、透明部材11とカバー部材12の搬送路3側における接合部において透明部材11が平板13に接するまで、カバー部材12はこの力を受けて外側に広がる。
【0051】
この場合、P3方向の力によってカバー部材12のX方向における両端部が拡がるとともに、押圧方向P1の力によって、透明部材11の搬送面11cの一部が平板13に当接する。そして、さらに押圧方向P1の力が加わることによって、透明部材11の反りが改善されていく。さらに、透明部材12の反りが改善されるに従って、カバー部材12の反りが改善されてく。具体的には、P2方向の力に起因して、カバー部材12の反りが改善されてく。透明部材11及びカバー部材12の反りが改善されると、図9に示すように、搬送面11c及び搬送面12cが面一の状態で、透明部材11及びカバー部材12が互いに接着される。
【0052】
また、たとえば、図9に示すように、カバー部材12が押圧方向P1と逆方向に向かって突出するように反る場合も同様に、押圧方向P1の力に起因して、透明部材11の反りが改善される。また、透明部材11の反りが改善されるに従って、カバー部材12の反りが改善される。
【0053】
上述したように、平板13及び押圧部材14を用いて、テーパ面を有する透明部材11及びカバー部材12を互いに接着させる場合、透明部材11とカバー部材12の接合部において、透明部材11のテーパ面(各当接面11a)にならって、カバー部材12のテーパ面(各当接面12a)が矯正されるため、両部材の反り矯正の差を最小限にして接合することが出来る。これにより容易に紙葉類2の搬送の妨げとなる段差を無くすことが出来る。透明部材11及びカバー部材12の厚みの公差が原理的に存在するが、本発明は、透明部材11とカバー部材12の接合部にテーパ面を設けることにより、透明部材11とカバー部材12の両者の厚み公差が存在したとしても原理的に段差を無くすることが可能である。
【0054】
また、本実施形態における接着剤としては、紫外光硬化接着剤が用いられるが、液状又はゲル状の状態で塗布できる接着剤であれば特に限定されない。たとえば、熱硬化接着剤、熱可塑性接着剤、湿気硬化接着剤または2液硬化性接着剤等が用いられてもよい。
【0055】
紫外光硬化接着剤は、紫外光が照射されることで硬化する接着剤である。熱硬化接着剤は、加熱されることで硬化する接着剤である。熱可塑性接着剤は、加熱により溶融された後に冷えると硬化する接着剤である。湿気硬化接着剤は、空気中の水分と反応して硬化する接着剤である。2液硬化性接着剤は、主剤に硬化剤を混合することによって硬化する接着剤である。
【0056】
次に、透明部材11及びカバー部材12を接合する接着剤の硬化方法について説明する。紫外光硬化接着剤を用いる場合、外部の紫外光源(外部紫外光源)を用いて、紫外光を透明部材11及びカバー部材12に照射する。ただし、この硬化方法では、搬送面11c及び搬送面12c側に染み出した接着剤を硬化させてしまう虞がある。また、各搬送面側に染み出した接着剤を硬化させた場合、様々な手間が生じる。
【0057】
したがって、本実施形態のように、紫外光硬化接着剤が用いられる場合においては、押圧部材14及びカバー部材12を紫外光の遮蔽物として用いる。ただし、この場合、押圧部材14の入射面11dと当接する面の大きさは、搬送面11cと一致する大きさとする。すなわち、Z方向において、押圧部材14の入射面11dと当接する面の全体及び搬送面11cの全体は重なる。
【0058】
紫外光硬化接着剤で透明部材11とカバー部材12を接合する際には、平板13上にカバー部材12をセットしてカバー部材12の各当接面12a、12bに紫外光硬化接着剤を塗布する。紫外光硬化接着剤を塗布後、透明部材11の各当接面11a、11bとカバー部材12の各当接面12a、12bを合わせるように、押圧部材14で透明部材11を平板13に対して垂直方向に押圧する。このような押圧状態を維持したまま、図9に示すように、紫外光を照射して紫外光硬化接着剤を硬化させる。この時、透明部材11およびカバー部材12の各搬送面11c、12c側に染み出した紫外光硬化接着剤については、硬化させないことが望ましい。
【0059】
本実施形態では、外部紫外光源は、押圧部材14を介して透明部材11と対向する位置に配置され、外部紫外光源からの紫外光は、押圧方向P1と同じ方向に照射される。これにより、図9に示すように、カバー部材12及び押圧部材14によって紫外光の一部が遮られるため、各搬送面11c、12c側に染み出した接着剤に対しては、紫外光が照射されない。
【0060】
具体的には、押圧部材14のX方向の幅について、透明部材11の搬送面11cのX方向の幅と同じにしておく。こうすることで押圧部材14によって紫外光が遮光されることにより、接着時に透明部材11の搬送面11c側に染み出した紫外光硬化接着剤の硬化を防ぐことができる。また、カバー部材12の搬送面12c側に染み出した紫外光硬化接着剤については、カバー部材12の当接面12aが紫外光を遮光して紫外光硬化接着剤が硬化することを防ぐことができる。
【0061】
上記のように、各当接面11a及び各当接面12aとの間に介在する接着剤については、紫外光に起因して硬化する。各当接面11b及び各当接面12bとの間に介在する接着剤も同様に硬化する。なお、硬化しなかった接着剤については、透明部材11及び透明部材12が互いに接合された後に洗浄を実施して取り除かれる。
【0062】
3.変形例
図10は、本発明の変形例に係るカバー部材12の構成の一例を概略的に示す平面図である。この変形例では、各当接面12aのY方向において、一部だけがテーパ面を含むように形成される。たとえば、図10に示すように、各当接面12aのY方向において、テーパ面を含む部分と含まない部分が交互に位置されるように形成されてもよい。なお、このことは、各当接面11aについても同様である。
【0063】
図11は、本発明の変形例に係るカバー部材12の構成の他の例を概略的に示す平面図である。この変形例では、カバー部材12のX方向の両端部であって、Z方向において筐体4及びその筐体4に設けられるレンズアレイ6等と重ならない部分が櫛歯形状に形成される。
【0064】
そして、櫛歯形状に形成された本実施形態の光ラインセンサユニット1を搬送路に配置する。その際に、搬送路に形成された櫛歯に嵌合させる。こうすることによりスムーズな搬送が実現される。
【0065】
図12は、本発明の変形例に係るカバー部材12の構成のその他の例を概略的に示す平面図である。図12における搬送幅3aは、搬送路3に沿って搬送される紙葉類2の実際の幅を示し、搬送幅3aの大きさは、透明部材11のY方向の幅と一致する。
【0066】
この変形例では、カバー部材12における搬送面12cのY方向の両端部であって、Z方向において搬送幅3aと重ならない部分に搬送路3に向かって突出する突出部15が設けられる。すなわち、搬送面12cにおいて、紙葉類2の搬送に干渉しない位置に突出部15が設けられる。このように、カバー部材12に搬送路3側に飛び出た突出部15が有る場合は、平板13には突出部15が収まるような凹みが有っても良い。
【0067】
一般的に、光ラインセンサユニット1を用いて紙葉類2の表面を読み取る場合、紙葉類2の位置を検出するための検出センサ及び光ラインセンサユニット1が搬送路2を介して対向する位置に設けられる。たとえば、光ラインセンサユニット1及び検出センサをコンポーネントとする読取装置を組み立てる際に、突出部15を基準として検出センサを配置することができる。
【0068】
図13は、本発明の変形例に係るカバー部材12の構成のさらにその他の例を概略的に示す平面図である。この変形例では、各当接面12bが各当接面12aと同様に形成される。すなわち、各当接面12bの一部または全体が搬送路3に近づくにつれて先細りするテーパ面で形成される。また、このことは、各当接面11bについても同様である。
【0069】
また、各当接面11a及び各当接面12aの代わりに、各当接面11b及び各当接面12bがテーパ面を含むように形成されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 光ラインセンサユニット
2 紙葉類
3 搬送路
3a 搬送幅
4 筐体
5 光源部
5a 第1光源
5b 第2光源
5c 基板
5d 導光体
5e カバー部材
6 レンズアレイ
7 基板
8 受光部
9 光ラインセンサ部材
11 透明部材
11a 当接面
11b 当接面
11c 搬送面
11d 入射面
12 カバー部材
12a 当接面
12b 当接面
12c 搬送面
13 平板
14 押圧部材
15 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13