(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049564
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20220322BHJP
A61B 5/22 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
G16H20/00
A61B5/22 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155823
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】507122526
【氏名又は名称】foo.log株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】脇 嘉代
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅則
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】利用者の活動の自己管理を支援できる情報処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】利用者の活動量の目標となる活動目標情報を受け入れ、当該活動目標情報を、所定期間に行うべき活動量を前記共通単位で表した活動量情報に変換する。そして、活動の種類ごとに定めた実施条件を満足する活動の種類を抽出し、当該抽出した活動の種類に関連する所定の単位量ごとの活動量と、当該利用者に係る活動目標情報の変換結果である活動量情報とに基づいて、利用者に対する所定の推奨活動情報を生成する情報処理装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の、活動量の目標となる活動目標情報を受け入れる手段と、
活動の種類ごとに、所定の単位量ごとの活動量を、所定の共通単位の値として保持するとともに、当該活動の種類ごとの実施条件を保持する情報保持手段と、
前記受け入れた活動目標情報を、所定期間に行うべき活動量を前記共通単位で表した活動量情報に変換する手段と、
前記活動の種類のうち、前記実施条件を満足する活動の種類を抽出し、当該抽出した活動の種類に関連する所定の単位量ごとの活動量と、当該利用者に係る前記活動目標情報の変換結果である活動量情報とに基づいて、利用者に対する所定の推奨活動情報を生成する情報生成手段と、
前記生成した推奨活動情報を出力する手段と、を含む情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、さらに、
利用者が前記所定期間内に既に実施した活動の活動量に係る情報を収集する手段と、
前記収集した活動量に係る情報を、所定の共通単位の情報に変換する手段と、
前記変換された情報を表示する手段と、
を含む情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
前記変換は、活動目標情報について設定された共通単位への変換方法により行われる情報処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の装置において、
前記情報生成手段は、利用者の前記活動目標情報が表す活動量から、前記収集した活動量の情報を差し引き、当該差し引いた後の活動量に基づいて、利用者に対する推奨活動情報を生成する情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置において、
前記所定の単位の活動量への変換方法は、血糖コントロール,脂質代謝改善,骨密度の改善のいずれかに応じて予め定められる情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
利用者の、活動量の目標となる活動目標情報を受け入れる手段と、
活動の種類ごとに、所定の単位量ごとの活動量を、所定の共通単位の値として保持するとともに、当該活動の種類ごとの実施条件を保持する情報保持手段と、
前記受け入れた活動目標情報を、所定期間に行うべき活動量を前記共通単位で表した活動量情報に変換する手段と、
前記活動の種類のうち、前記実施条件を満足する活動の種類を抽出し、当該抽出した活動の種類に関連する所定の単位量ごとの活動量と、当該利用者に係る前記活動目標情報の変換結果である活動量情報とに基づいて、利用者に対する所定の推奨活動情報を生成する情報生成手段と、
前記生成した推奨活動情報を出力する手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の現場では、筋力の改善や肺活量の維持、糖代謝や脂質代謝を改善するなどの目的で、運動療法が取り入れられることがある。運動療法では医師の指導に基づき、患者等がウォーキングを行ったり、ジムに通ったりして運動を行うこととなる。
【0003】
ここで、種々の理由でジムなどに通うことができない等、いわゆる運動・スポーツ等を増やすことはできない状況であっても、家事、庭仕事、通勤のための歩行などの日常生活活動、余暇に行なう趣味・レジャー活動等を含めた身体活動を増やすことによって必要な身体活動量は確保できる。しかし対面での限られた時間内に、患者の日常生活を正確に把握し、適切な生活習慣指導や運動療法を実施するには限界がある。具体的には医師は、消費エネルギーやMETs等の目標値の提示など、一般的情報の提供を行うことはできても、実際に患者等が実行可能な運動プログラムの提示までは行うことができないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
つまり、このような一般的情報の提供を受けた患者等は、医師等から例えば消費エネルギーやMETs等の一般的な目標値の提示を受けることはできるものの、活動自体は自己管理する必要がある。しかしながら、患者等にとっては、具体的にどのような活動をどの程度行うことで当該目標値を達成できるのかを知ることは困難である。
【0006】
そこで、医師の指導等を受けた患者等、実際に活動を行う利用者が、目標となる活動量を達成するためにどのような活動をどの程度行えばよいかを自己管理する際に、当該自己管理を支援するための技術が求められている。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、利用者の活動の自己管理を支援できる情報処理装置及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【0008】
なお、特許文献1には、加速度センサにより歩行を検出するとともに、消費カロリの入力を受けて、ユーザの歩行速度や体重、歩幅のデータに基づいて消費カロリを歩数に変換して表示するデバイスが開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明の一態様は、情報処理装置であり、利用者の、活動量の目標となる活動目標情報を受け入れる手段と、活動の種類ごとに、所定の単位量ごとの活動量を、所定の共通単位の値として保持するとともに、当該活動の種類ごとの実施条件を保持する情報保持手段と、前記受け入れた活動目標情報を、所定期間に行うべき活動量を前記共通単位で表した活動量情報に変換する手段と、前記活動の種類のうち、前記実施条件を満足する活動の種類を抽出し、当該抽出した活動の種類に関連する所定の単位量ごとの活動量と、当該利用者に係る前記活動目標情報の変換結果である活動量情報とに基づいて、利用者に対する所定の推奨活動情報を生成する情報生成手段と、前記生成した推奨活動情報を出力する手段と、を含むこととしたものである。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の一態様によると、利用者の活動の自己管理を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の構成例を表すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る情報処理装置が用いる活動データベースの内容例を表す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の例を表す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る情報処理装置1は、例えば携帯端末等であり、
図1に例示するように、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信部15とを含んで構成される。また、この情報処理装置1は、ネットワークを介してサーバ2に接続されている。
【0013】
制御部11は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態の例では、この制御部11は、利用者の、活動量の目標となる活動目標情報を受け入れる。また制御部11は、活動の種類ごとに、所定の単位量ごとの活動量を、所定の共通単位の値として保持するデータベース(以下活動データベースと呼ぶ)にアクセスする。そしてこの制御部11は、受け入れた活動目標情報を、所定の期間に行うべき活動量の情報に変換する。制御部11は、この変換後の情報を、所定の共通単位で表すものとする。
【0014】
また制御部11は、活動の種類のうち、実施条件を満足する活動の種類を、上記活動データベースから抽出する。制御部11は、当該抽出した活動の種類に関連する所定の単位量ごとの活動量と、当該利用者に係る活動目標情報の変換結果とに基づいて、当該利用者に対する所定の推奨活動情報を生成し、当該生成した推奨活動情報を出力する。この制御部11の詳しい動作については後に述べる。
【0015】
記憶部12は、メモリデバイス等であり、制御部11によって実行されるプログラムを保持する。このプログラムは、コンピュータ可読かつ非一時的な記録媒体に格納されて提供され、この記憶部12に格納されたものであってもよい。またこの記憶部12は制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0016】
本実施の形態の一例では、この記憶部12には、活動の種類ごとの実施条件を記録した活動データベースが保持される。この活動データベースは、利用者ごとに設定されてよく、その内容は
図2に例示するように、活動の種類を特定する情報(活動種類名:A)に対して、活動の実施条件(B)と、所定の単位量ごとの活動量の情報(活動量:C)とを関連付けて記録したものである。さらに本実施の形態のある例では、この活動データベースに記録された活動の種類ごとの活動の特性の情報(活動特性情報:D)を関連付けて記録してもよい。ここで活動特性情報は例えば、活動量が決まっているか否かなどの情報としておく。具体的に、通勤などの活動は活動量が決まっているが、活動によっては、活動時間等により活動量の調整が可能なものがある。活動特性情報は、このような活動量が固定的であるか可変なものであるかを表す情報を含んでもよい。
【0017】
本実施の形態において特徴的なことの一つは、この活動量の情報が、予め定められた共通単位に変換されていることである。ここで共通単位は、いずれかの活動ないし運動量の単位であってよい。具体的に共通単位は歩行の単位である歩数としてよい。
【0018】
またここで活動の実施条件は、曜日や平日・休日などの別、適切な時間帯、適切な気象条件、屋内・屋外の別、活動の実施に要する時間(一連の活動を開始してから完了するまでの時間)、必要な器具(エアロバイク(登録商標)など)、禁忌(所定の疾患の有無など)、外出を妨げる要因による影響(感染症の感染拡大に伴う外出制限により活動の実施が制限されるか否かなど)、その他の条件であり、任意に定め得る。
【0019】
さらにこの記憶部12には、情報処理装置1の利用者ごとに、利用者を特定する情報(利用者名など)と、性別、生年月日(あるいは年齢)、身長、体重、禁忌(持病等により行うことが制限される活動の種類)など、利用者の身体情報のほか、利用者の勤務先の所在地や、普段使用する交通機関の情報、自宅の所在地の情報、通勤時間、家族構成(配偶者の有無、子供の人数や年齢など)、家庭内で担当している家事の種類、利用者の平日・休日の概ねのスケジュールなど、利用者の環境の情報(環境情報)を関連付けて記録した利用者データベースが格納されているものとする。この利用者データベースに格納される情報は、予め利用者等から入力されたものであってもよいし、本実施の形態の情報処理装置1の利用中に利用者が登録した情報や利用者から収集した情報に基づいて推定されたものであってもよい。例えば、情報処理装置1は、利用者が情報処理装置1を利用した時間の集計結果に基づいて利用者の活動時間等を推定し、利用者データベースに格納してもよい。
【0020】
操作部13は、タッチパネルや、キーボード等であり、利用者から入力される指示や情報を受け入れて、制御部11に当該指示や情報を出力する。表示部14は、ディスプレイ等であり、制御部11から入力される指示に従って情報を表示出力する。
【0021】
通信部15は、ネットワークインタフェース等であり、制御部11から入力される指示に従い、ネットワークを介して接続されるサーバ2等との間で情報を送受する。また、この通信部15は、サーバ2等から受信した情報を制御部11に出力する。
【0022】
本実施の形態の一例では、サーバ2は、一般的なサーバ装置(ウェブサーバ等)であり、情報処理装置1から入力される要求に従って活動データベースに設定するべき情報を生成して、当該生成した情報を情報処理装置1へ送出する。
【0023】
一例として、サーバ2は、情報処理装置1から利用者の年齢や性別、身長、体重などの情報とともに、活動データベースに格納する情報の生成の要求を受け入れる。そしてサーバ2は、少なくとも一つの種類の活動について、当該活動の実施条件と、所定単位量ごとの活動量の情報とを生成して、情報処理装置1に対して送出する。
【0024】
具体的に、サーバ2は、活動の種類として、
・ウォーキング
・ランニング
・スクワット
などの運動のほか、
・基礎代謝
・通勤(徒歩)
・通勤(電車乗車)
・勤務
・買い物
・外出
などといった、家事などを含む種々の活動に関する情報について、それぞれある時間(例えば1時間)あたりの活動量の情報を、情報処理装置1から受け入れた利用者の年齢や性別、身長、体重などの情報に基づいて求める。また、サーバ2は、この活動量の情報を、所定の共通単位として、例えば歩行運動の単位である歩数に換算した値として求めることとする。
【0025】
一例として、1時間あたり、かつ、体重1kgあたりの基礎代謝は、性別ごとに異なる係数を有するハリス・ベネディクト方程式等によって演算されるが、その単位はカロリー(kcal)で表されるものとなる。本実施の形態の例ではサーバ2が、共通単位として、例えば歩行運動の単位である歩数(例えば「300歩」などといった歩数の値)に換算して情報処理装置1へ送信するものとする。
【0026】
次に制御部11の動作について説明する。本実施の形態の一例では、この制御部11は、
図3に例示するように、活動目標設定部21と、活動量保持部22と、情報生成部23と、出力制御部24とを機能的に含んで構成される。
【0027】
活動目標設定部21は、利用者自身、または医師などから、利用者の活動量の目標となる活動目標情報(一日の目標歩数など)を受け入れる。ここで活動量目標情報は、より長期的な目標情報としての改善項目、例えば病態に応じた所定の指標についての所定の期間での変化として設定してもよい。ここで指標は、例えば消費カロリーを直接的に表すであってもよいし、血糖値やHbA1c値などの血糖コントロール、HDLコレステロール値やLDLコレステロール値、non-HDLコレステロール、中性脂肪などの脂質代謝を表す値、あるいは骨密度などの病態を表す値に基づいて定められてもよく、具体的に、活動量目標情報は、1日の消費カロリーや、3ヶ月ごとのHbA1c値の変化量(血糖コントロール改善)、1ヶ月ごとの脂質代謝を表す値(HDLコレステロール値やLDLコレステロール値等)の変化量(脂質代謝改善)、3ヶ月ごとの骨密度の変化量(骨密度の改善)などとしてもよい。
【0028】
活動量保持部22は、活動の種類ごとに、所定の単位量ごとの活動量を、所定の共通単位の値として記憶部12に保持するとともに、当該活動の種類ごとの実施条件を保持する。
【0029】
本実施の形態の一例では、活動量保持部22は、利用者が設定した、利用者の年齢や性別、身長、体重などの情報とともに、活動データベースに格納する情報の生成の要求をサーバ2へ送出する。またこの活動量保持部22は、サーバ2から活動の種類ごとに、所定の単位量ごとの活動量の値を受け入れる。ここでは活動量保持部22は、サーバ2が利用者ごとの身体情報や環境情報に基づいて演算した活動量の値をサーバ2から受け入れることとなる。
【0030】
活動量保持部22は当該サーバ2から受け入れた活動の種類ごとの活動量の情報を、対応する活動の実施条件に関連付けて、記憶部12の活動データベースに記録する。なお、活動の実施条件は、活動の種類ごとに予め定めておけばよく、サーバ2から活動量の情報を送出する際に、対応する実施条件の情報を併せて送出することとしてもよい。
【0031】
情報生成部23は、活動目標設定部21が受け入れた活動目標情報を、所定期間内(例えば一日の間)に行うべき活動量を表す、上記共通単位の活動量の情報に変換する。この共通単位の活動量の情報への変換方法は、例えば活動目標情報が対象とする改善項目(糖尿病コントロール、脂質代謝、骨密度等の別)、または、指標ごとに予め定めた方法に基づいて行われてもよい。
【0032】
例えば活動目標情報として1日の運動による消費カロリー(基礎代謝を除く消費カロリー)が300kcalと設定されているとき、情報生成部23は、この設定された値を所定期間(例えば1日の間)に達成するべき共通単位の活動量の情報である歩数へ変換する。一例として共通単位が歩数である場合、カロリーと歩数との関係は、利用者の年齢や体重、歩幅等の情報を用いた公知の方法で概算でき、情報生成部23は、当該方法で例えば上記共通単位での1日の必要活動量を「10000歩」と演算する。
【0033】
また、糖尿病改善のためのHbA1c値の変化量が活動目標情報として設定されている場合、過去に多数の被験者により行われた、ある期間での活動の種類と活動量(上記共通単位での値とする)の情報を用い、当該活動を行っていたときの所定期間での被験者のHbA1c値の変化量とを入力として、上記共通単位での所定期間(例えば1日あたり)の必要活動量の値を出力するよう機械学習された機械学習モデルを用いて、活動目標情報として設定されたHbA1c値の変化量に基づいて上記共通単位での1日の必要活動量を求めてもよい。
【0034】
なお、この機械学習モデルは、活動目標情報が対象とする改善項目だけでなく、指標ごとに異なるものとしておく。例えば糖尿病改善を目的とする場合であっても、指標を血糖値とする場合は、HbA1c値を指標とする場合とは異なる機械学習モデル(インスリン抵抗性を考慮したインスリン抵抗性影響モデルなど)を用いる。そしてこの例では、過去に多数の被験者により行われた、ある期間での活動の種類と活動量(上記共通単位での値とする)の情報を用い、当該活動を行っていたときの所定期間での被験者の血糖値の変化量を入力として、この機械学習モデルを、上記共通単位での所定期間(例えば1日あたり)の必要活動量の値を出力するよう機械学習しておく。
【0035】
また、機械学習モデルは、指標ごとだけでなく、同じ指標であっても、利用者の身体情報や環境情報が異なる分類に属するごとに異ならせてもよい。例えば活動量とHbA1c値との相関が利用者の年齢層によって異なることが知られている場合は、過去に活動を行い、HbA1c値の変化を測定した被験者を、当該年齢層ごとに分け、分けられた年齢層の被験者ごとのある期間での活動の種類と活動量(上記共通単位での値とする)の情報を用い、当該活動を行っていたときの所定期間での被験者のHbA1c値の変化量とを入力として、上記共通単位での所定期間(例えば1日あたり)の必要活動量の値を出力するよう機械学習した複数の機械学習モデルを生成してもよい。この例では、活動目標情報が設定された利用者の年齢層に対応する機械学習モデル(機械学習後のもの)を選択して、当該選択した機械学習モデルを用い、当該利用者について指定されたHbA1c値の変化量に基づいて上記共通単位での1日の必要活動量を求めてもよい。
【0036】
情報生成部23は、さらに活動データベース内の情報を参照し、当該活動データベースに保持された情報が表す活動の種類のうち、実施条件を満足する活動の種類を抽出し、当該抽出した活動の種類に関連する所定の単位量ごとの活動量と、当該利用者に係る活動目標情報の変換結果とに基づいて、当該利用者に対する推奨活動情報を生成する。
【0037】
情報生成部23は、例えば利用者の指示により処理を開始し、利用者の身体情報や環境情報を参照しつつ、一日の各時点で実施条件を満足する種類の活動を特定する情報を、活動データベースから抽出する。
【0038】
例えばある利用者Aについて年齢が40歳、体重70kgの男性であり(身体情報)、起床後、朝、電車と徒歩で通勤し、午前から夕刻にかけて主にデスクワークを行い、夜間に電車と徒歩で帰宅し、軽度の運動を行って就寝する(平日)という環境情報が設定されているものとする。
【0039】
まず情報生成部23は、例えば平日と休日とを区分するとともに、少なくとも基礎代謝以外の一日あたりの身体活動量目標を活動データベースから取得する。既に述べたように、この活動量は利用者の年齢や体重等の情報からサーバ2により演算されたもので、ここでは例えば「10000歩(約300kcal)」と設定されているものとする。
【0040】
また情報生成部23は、活動する時間帯を、
・朝(起床後)
・午前(9時から12時)
・午後(12時から15時)
・夕刻(15時から18時)
・夜間(18時から21時頃(就寝前))
のように区分して設定する。そして情報生成部23は、例えば午前、午後、夕刻、夜間の各時間帯(上記の例では3時間ごと)での各時間帯において実施条件を満足する種類の活動を特定する情報を、利用者の身体情報及び環境情報を参照しつつ、活動データベースから抽出して、上記各時間帯の活動について順次決定する。
【0041】
例えば情報生成部23は、平日の朝の時間帯が適切な時間帯であると定められている活動を、活動データベースから抽出する。具体的に朝の時間帯を適切な時間帯とする活動の例としては、ランニングといった運動のほか、家事や通勤など日常生活の活動が含まれる。
【0042】
また以下の例では「ランニング」について実施条件が「気温25度以下、屋外、実施時間30分以上、朝の時間帯に通勤が含まれないこと、禁忌:心臓疾患…」などと定められているものとする。また「通勤」についての実施条件として「利用者の環境情報に朝の通勤が含まれること」といった条件が設定されているものとする。
【0043】
この例の下では上記利用者Aに関しては、情報生成部23は、利用者Aの環境情報に、平日の朝の時間帯に通勤をする旨の情報が含まれるため、「通勤」の活動は抽出するが、「ランニング」の活動は抽出しない。そこで情報生成部23は、このような利用者Aについて平日の朝行う活動として「通勤」を定める。
【0044】
以下、同様にして情報生成部23は、平日・休日の各時間帯で利用者が行うべき活動(推奨活動)を特定する情報を取得する。
【0045】
また情報生成部23は、各時間帯ごとに取得した推奨活動の各々について、推奨される活動量の情報を生成する。
【0046】
次に情報生成部23は、各時間帯ごとに取得した推奨活動のうち、活動データベースにおいて活動量が固定的であるとして設定されている通勤などの活動について、その活動量を求める。
【0047】
例えば上記の利用者Aの例の場合において、朝と夜間との電車での通勤がそれぞれ1000歩分の活動量に相当し、デスクワークにおいて2000歩分の活動量が得られているとする。この場合、情報生成部23は、合計4000歩分を、目標活動量から差引きして、
10000-4000=6000歩
を得る。以下では、ここで得た値を便宜的に残差活動量と呼ぶ。
【0048】
次に、情報生成部23は、各時間帯ごとに取得した推奨活動のうち、活動量を求めていない活動(ここでは活動データベースにおいて活動量が可変的であるとして設定されている活動)について、その活動量を求める。
【0049】
ここでの情報生成部23が活動量を求める方法は例えば、残差活動量を、活動量を求めていない活動の数で除して各活動の活動量とするものであってもよい。情報生成部23は、以上に例示した処理により、利用者に対する一日分の推奨活動情報を生成する。
【0050】
出力制御部24は、情報生成部23が生成した推奨活動情報を、対応する利用者に提示する。これにより利用者は、一日のうち、各時間帯で行うとよいと考えられる活動の種類と活動の量の目標とを知ることが可能となる。
【0051】
[動作]
本実施の形態の情報処理装置1は、以上に例示する動作を行うものであり、次の例のように動作する。
【0052】
なお、以下の例では、医師から糖尿病治療を受けている70台女性の利用者Bが、医師からの指示により活動目標情報として3ヶ月ごとのHbA1c値の変化量αの設定を、情報処理装置1に対して行うこととする。情報処理装置1は、この設定を受け入れる。なお、この利用者Bは、午前中は家事を行い、午後は買い物に出て、夕刻家事を行い、夜間は早めに就寝するという環境情報を設定しているものとする。
【0053】
情報処理装置1は、受け入れた活動目標情報を、共通単位(歩数とする)の活動量の情報に変換する。ここでは情報処理装置1は、活動を行っていたときの所定期間での被験者のHbA1c値の変化量とを入力として、所定期間(例えば1日あたり)の必要活動量に相当する歩数の値を出力するよう機械学習された機械学習モデルを用いて、活動目標情報として設定されたHbA1c値の変化量に基づいて、共通単位である歩数での、この利用者Bの1日の必要活動量を求める。ここでは、歩数が3000歩として計算されたものとする。
【0054】
情報処理装置1は、基礎代謝以外の一日の身体活動量目標を表す情報(以下、実目標活動量と呼ぶ)を、活動データベースから取得する。既に述べたように、この身体活動量は利用者の年齢や体重等の情報からサーバ2により演算されたもので、ここでは例えば「3000歩」と設定されているものとする。
【0055】
情報処理装置1は、例えば利用者の起床時間より前(例えば午前4時など予め定めた時刻でよい)に動作し、当日の朝、午前、午後、夕刻、夜間の各時間帯において実施条件を満足する種類の活動を特定する情報を、この利用者Bの身体情報及び環境情報を参照しつつ、活動データベースから抽出して、上記各時間帯の活動について順次決定する。以下では、平日の朝に処理が実行される場合を例として説明する。
【0056】
この例では情報処理装置1は、平日の朝の時間帯が適切な時間帯であると定められている活動を、活動データベースから抽出する。先に述べた例のように、朝の時間帯を適切な時間帯とする活動の例としては、ウォーキングやランニングといった運動のほか、家事や通勤など日常生活の活動が含まれるものとする。またここでは「ウォーキング」や「ランニング」について実施条件が「気温25度以下、雨でない、屋外、実施時間30分以上、朝の時間帯に通勤が含まれないこと、禁忌:心臓疾患…」などと定められているものとする。また「通勤」についての実施条件として「利用者の環境情報に朝の通勤が含まれること」といった条件が設定されているものとする。
【0057】
利用者Bに関しては、環境情報に、平日の朝の時間帯に通勤をする旨の情報が含まれていないため、情報処理装置1は「通勤」の活動は抽出しない。そこで情報処理装置1は、このような利用者Bについて平日の朝行う活動として「ウォーキング」または「ランニング」を抽出する。
【0058】
情報処理装置1は、当初は例えばランダムにいずれかの活動を選択して、朝行うとよい活動として利用者Bに対して推奨活動として提示することとすればよい。また、過去に推薦したが利用者Bから行いたくない活動との入力があった場合は、活動データベースにその旨の情報を追記する。例えば利用者Bが「ランニング」を好ましくない活動として設定する場合、情報処理装置1は、活動データベースの「ランニング」の活動を特定する情報に関連付けて、例えば活動特性情報に「利用者忌避」との情報を付記しておく。
【0059】
そして情報処理装置1は、活動を抽出する際、「利用者忌避」との情報が付記されていない活動を抽出することとする。この例では、情報処理装置1は、このような利用者Bについて平日の朝行う活動として「ランニング」を避けて、「ウォーキング」を抽出する。
【0060】
以下同様に、情報処理装置1は、午前、午後…の各時間帯に行うとよい活動(推奨活動)を、利用者Bの身体情報や環境情報を参照して、活動データベースから抽出する。ここでは、情報処理装置1が
朝:ウォーキング
午前:掃除、洗濯、…
午後:買い物
夕刻:料理,片付け、…
夜間:屋内での体操
といった推奨活動を決定するものとする。なお、上記活動のうち、
・掃除
・洗濯
・買い物
・料理
・片付け
については、活動量が予め固定的に定められているものとし、例えばそれぞれ:
・掃除:300歩分
・洗濯:100歩分
・買い物:500歩分
・料理:200歩分
・片付け:100歩分
などと定められているものとする。
【0061】
さらに情報処理装置1は、各時間帯ごとに決定した推奨活動の各々について、推奨される活動量の情報を生成する。情報処理装置1は、共通単位の活動量の情報に変換した活動目標情報から、基礎代謝分を差し引いて、基礎代謝以外の活動によって行われるべき活動量を求める。
【0062】
次に情報処理装置1は、各時間帯ごとに取得した推奨活動のうち、活動データベースにおいて活動量が固定的として設定されている通勤や家事などの活動について、その活動量の総和を求める。この利用者Bの例の場合においては、各種の家事が相当する。
【0063】
上述の例では、掃除(300歩分)、洗濯(100歩分)、買い物(500歩分)、料理(200歩分)、片付け(100歩分)の各活動について活動量が固定的となっているので、情報処理装置1は、
300+100+500+200+100=1200
を得る。そして情報処理装置1は、得られた活動量の総和を、実目標活動量から差引きして残差活動量:
3000-1200=1800
を得る。
【0064】
情報処理装置1は、ここで得た値(1800)を、活動量が可変的である推奨活動の数で除して各推奨活動の活動量を求める。従って、上記の例では、情報処理装置1は、推奨活動ごとの活動量を次のように定める。
朝:ウォーキング 1700歩分
午前:掃除、洗濯… 400歩分
午後:買い物 500歩分
夕刻:料理,片付け… 300歩分
夜間:体操(屋内) 100歩分
そして情報処理装置1は、この情報を、推奨活動情報とする。
【0065】
情報処理装置1は、こうして生成した推奨活動情報を表示して利用者Bに提示する。
【0066】
[天候などの考慮]
また情報処理装置1は、インターネット上の気象情報サービス等から、情報処理装置1の所在する地域(広く知られた種々の位置情報取得手段により検出できる)の気象に関する情報を取得し、推奨活動の決定に用いてもよい。
【0067】
例えば、情報処理装置1は各時間帯の推奨活動を決定する処理の開始時に、当該各時間帯でのその地域の気温や天気の情報を取得する。
【0068】
そして情報処理装置1は、推奨活動を活動データベースから抽出する際に、当該気温や天気の情報が実施条件に合致する活動を抽出する。一例として情報処理装置1が取得した午後の気温の情報が「35度」である場合に、「ランニング」について実施条件が「気温25度以下、雨でない、屋外、実施時間30分以上、朝の時間帯に通勤が含まれないこと、禁忌:心臓疾患…」などと定められているときには、情報処理装置1は、午後に行う活動として「ランニング」を抽出しない(「25度以下」の条件に合致しない)。
【0069】
また、例えば感染症の感染拡大防止のため、外出制限が求められている地域においては、情報処理装置1は、「屋外」を実施条件とする活動を推奨活動として抽出しないよう制御する。
【0070】
[実績の取得]
さらに情報処理装置1は、図示しない歩数センサや加速度センサ等を備えてもよく、これら歩数センサ等の情報から、利用者の行った活動量の情報を収集し、推奨活動を定めた各時間帯の開始直前(例えばその数分前)に、次の処理を行ってもよい。
【0071】
この処理では、情報処理装置1は、その日(推奨活動情報を設定する所定期間内)のうちに既に実施した推奨活動情報を実目標活動量(一日に行うべき活動の活動量のうち、基礎代謝に相当する活動量を除く活動量)から差し引いて、残目標活動量を求める。
【0072】
さらに情報処理装置1は、この処理を行っている時間帯より後の時間帯に行うべきとして設定されている推奨活動の活動量のうち、固定的とされている活動量を差引きして残差活動量を求め、残差活動量を、の処理を行っている時間帯より後の時間帯に行うべきとして設定されている推奨活動のうち可変的とされている活動の数で除して、可変的とされている活動について推奨するべき活動量を決定する。
【0073】
例えば上記の利用者Bの例において、利用者Bが朝の推奨活動情報に従ってウォーキングを行ったとき、例えばその歩数が1500歩であることを取得すると、情報処理装置1は、午前の時間帯以降の活動量を次のように定める。
【0074】
すなわち情報処理装置1は、午前以降の各時間帯ごとに取得した推奨活動のうち、活動データベースにおいて活動量が固定的に設定されている通勤や家事などの活動の総和を求める。既に述べたように、この総和は1200歩分となる。
【0075】
情報処理装置1は、得られた活動量の総和を、実目標活動量(利用者Bの例では3000歩)から差引きして残差活動量:
3000-12000=1800
を得る。
【0076】
情報処理装置1は、朝の時間帯が終了する直前となると、ここで得た残差活動量(1800)からさらに、朝の時間帯に既に実施した活動の活動量(1500)を差引きし、午前以降の各時間帯ごとに取得した推奨活動のうち、活動データベースにおいて活動量が可変的として設定されている活動の数で除して、午後以降の各活動の活動量を求める。つまり、情報処理装置1は、各時間帯の終了時に、それまでに行った活動の活動量の総和を実目標活動量から差引きして残差活動量を求め、その後の時間帯における推奨活動のうち活動量が固定されている活動の活動量を残差活動量から差引きし、当該差引き後の目標活動量を、その後の時間帯における推奨活動のうち活動量が可変的として設定されている活動の数で除して、当該可変的として設定されている活動ごとの活動量を決定する。
【0077】
具体的にこの例では、情報処理装置1は、午前以降の時間帯の推奨活動の活動量を次のように定める。
午前:掃除、洗濯… 400歩分
午後:買い物 500歩分
夕刻:料理,片付け… 300歩分
夜間:体操(屋内) 300歩分
そして情報処理装置1はこの情報を、推奨活動情報として利用者に提示する。
【0078】
なお、ここでは残差活動量のうち、後の時間帯における推奨活動のうち活動量が固定されている活動の活動量を差引きした後(この差引き後の目標の活動量を、便宜的に分配対象活動量と呼ぶ)、推奨活動のうち活動量が可変的として設定されている活動の数で除している(活動量が可変的としている活動については活動量が等しくなるように設定している)が、本実施の形態はこれに限られず、活動ごとに、重みを設定して、重みに応じた比率で、分配対象活動量を分割し、活動量が可変的としている各活動の活動量を設定してもよい。
【0079】
また、情報処理装置1は、利用者が行った活動量の情報が共通単位以外の単位で取得される場合は、当該情報を、活動目標情報について設定された共通単位への変換方法により共通単位の活動量の値に変換する。
【0080】
[代替案の推奨]
また情報処理装置1は、推奨活動を定めた各時間帯の開始直前(例えばその数分前)に次の処理を行ってもよい。
【0081】
情報処理装置1は、このタイミングで、インターネット上の気象情報サービス等から、情報処理装置1の所在する地域の気象に関する情報を取得し、この処理の時点より後の時間帯について決定された推奨活動について当該活動について活動データベースで関連付けられている実施条件を満足しているか否かを判断する。
【0082】
具体的に情報処理装置1が、夜間の時間帯における推奨活動として「ランニング」を決定していたとする。このとき、この処理において取得した夜間の気温の情報が「30度」である場合、情報処理装置1は、「ランニング」についての実施条件が「気温25度以下、雨でない、屋外、実施時間30分以上、朝の時間帯に通勤が含まれないこと、禁忌:心臓疾患…」などと定められているとすると、情報処理装置1は、夜間に行う活動として「ランニング」が不適切と判断して、「ランニング」に代替する活動(取得した気温の情報に合致する実施条件に対応する活動)を改めて抽出し、夜間に実施する活動とする。
【0083】
この例では例えば「屋内での体操」など、外の気温が実施条件に含まれていない活動等が抽出され、代替の活動として提案されることとなる。
【0084】
[遠隔診療などへの利用]
さらに本実施の形態のある例では、利用者に対して提示された活動量(実目標活動量でよい)と、利用者の活動の実績とを、例えばネットワークを介して医師に提示することを可能としてもよい。医師はこれらの情報を参照して、目標活動情報の再設定などを検討することが可能となる。本実施の形態において特徴的なことは、推奨活動を特定する情報までは送信しないことである。また、実目標活動量も共通単位で示されているため、医師は、利用者に対してどのような活動が提示されたか、また利用者が実際にどのような活動を行ったかを知ることがなく、利用者のプライバシーも保護される。
【符号の説明】
【0085】
1 情報処理装置、2 サーバ、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 通信部、21 活動目標設定部、22 活動量保持部、23 情報生成部、24 出力制御部。