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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049904
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20220323BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156193
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】園田 和広
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅通
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104BB04
4M104BB17
4M104DD33
4M104DD43
4M104DD45
4M104DD52
4M104DD53
4M104FF17
4M104FF22
4M104HH16
(57)【要約】
【課題】埋め込み特性の向上を図る。
【解決手段】コバルトを含有する第1ガスに被成膜面を暴露する第1工程と、コバルトを含有する第2ガスに前記被成膜面を暴露する第2工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトを含有する第1ガスに被成膜面を暴露する第1工程と、
コバルトを含有する第2ガスに前記被成膜面を暴露する第2工程と、
を有する
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記第1工程が、前記第1ガスに被成膜面を暴露する第1成膜工程と、プラズマを発生させる第1改質工程と、
を含む
ことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記第1改質工程では、雰囲気ガスとして第3ガスを供給する
ことを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記第3ガスが、水素を含有する
ことを特徴とする請求項3記載の成膜方法。
【請求項5】
前記第1工程において、前記第1成膜工程の雰囲気圧力よりも、前記改質工程の雰囲気圧力が低く設定される
ことを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項6】
前記第1工程が減圧パージ工程を有する
ことを特徴とする請求項5記載の成膜方法。
【請求項7】
前記第1工程が昇圧パージ工程を有する
ことを特徴とする請求項5記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第1工程で成膜されたコバルトを含む膜の膜厚が、第1所定値範囲内に設定される
ことを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項9】
前記第1工程が複数回繰り返される
ことを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
前記第1成膜工程がALDとされる
ことを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項11】
前記第2工程において、前記第2ガスに被成膜面を暴露する第2成膜工程と、プラズマを発生させる第2改質工程と、
を含む
ことを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項12】
前記第2工程において、前記第2改質工程では、雰囲気ガスとして第3ガスを供給する
ことを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項13】
前記第3ガスが、水素を含有する
ことを特徴とする請求項12記載の成膜方法。
【請求項14】
前記第2ガスが、水素を含有する
ことを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項15】
前記第2工程において、前記第2成膜工程の雰囲気圧力よりも、前記改質工程の雰囲気圧力が低く設定される
ことを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項16】
前記第2工程が減圧パージ工程を有する
ことを特徴とする請求項15記載の成膜方法。
【請求項17】
前記第2工程が昇圧パージ工程を有する
ことを特徴とする請求項15記載の成膜方法。
【請求項18】
前記第1工程で成膜されたコバルトを含む膜と前記第2工程で成膜されたコバルトを含む膜との合計膜厚が、第2所定値以下に設定される
ことを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項19】
前記第2成膜工程がCVDとされる
ことを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項20】
前記第1工程の前にバリア膜を形成するバリア膜形成工程を有する
ことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項21】
前記第2工程の後に熱処理工程を有する
ことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項22】
請求項2から請求項19のいずれか記載の成膜方法により成膜をおこなう成膜装置であって、
ALD法、CVD法による基板の被成膜面への成膜およびプラズマ処理が可能なものとされ、
プラズマ処理部と成膜とが可能なチャンバと、
原料供給部と、
ガス供給部と、
プラズマ形成部と、
前記原料供給部から前記チャンバへと接続される供給管部と、
前記供給管部に設けられたバルブによって切り替えされて外部に接続されるベント部と、
を有し、
前記第1成膜工程および前記第2成膜工程において、
前記原料供給部から供給された原料を、前記ベント部によって供給先を前記チャンバに切り替えて成膜するとともに、
成膜しない工程では、前記原料供給部から供給された原料を、前記ベント部によって外部に送る
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜方法及び成膜装置に関し、特にCo等の埋め込み成膜に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における配線形成など、従来から、特許文献1に記載されるように、Co膜を成膜する技術が知られている。
特許文献1には、トレンチやビア、ホール等への成膜として、ALDによるCo膜の成膜、あるいは、CVDによるCo膜の成膜が記載されており、また、Co膜が好適なカバレッジ性を有することが記載されている。
【0003】
特許文献1の技術では、Co原料を用いたALD、あるいは、CVDによる成膜により、Coの核生成時間の抑制や、Co膜の成長速度の制御、表面モフォロジーの改善、不純物濃度の抑制、低抵抗化を目指すことが記載されている。
【0004】
またこのようなCo膜は、トレンチやビア、ホール等への電極としての埋め込みにおける下地(ライナー膜)として用いられることがある。このような埋め込みにおいては、Co等のライナー膜を成膜した後に、成膜後のIn-situの熱処理で、最表面のPVDで着けたCu等の電極をトレンチ内に流し込んで埋め込むというプロセスが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/027835号
【特許文献2】特開2016-162761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなCuの埋め込み率は、Coのライナー膜などの膜厚によって変わることが知られている。つまり、Coのライナー膜が薄くなるほど埋め込みづらくなる。
特に、Co膜の膜厚が2.0nm程度以下ではCVD成膜でCuの埋め込みができなくなることが知られている。
【0007】
また、ライナー膜は、できるだけ薄くしたいという要求がある。これは、Coのライナー膜やTaのバリア膜を厚くすると抵抗値が増大してしまうといった不具合を避けるためという、デバイス特性からの要求である。
【0008】
つまり、ライナー膜を薄くしたいという要求と、ライナー膜を薄くすると埋め込みできない不具合を解決したいという要求とは、トレードオフの関係にあり、このような問題を同時に解決する手法は知られていなかった。
【0009】
さらに、表面凹凸の形成といった表面モフォロジーの悪化、抵抗値の面内不均一、あるいは、Cu配線プロセスにおける上層膜であるCu膜との密着不良による配線信頼性の低下や配線抵抗の上昇または断線、またCo膜によって直接配線を形成する際、膜密度の低下や空孔(ボイド)による配線抵抗の上昇、という不具合が発生する可能性は、完全に解消されてはいない。
【0010】
また、半導体製造における細線化に対応して、開口幅の異なるトレンチ等に埋め込みをおこなう際に、埋め込み率を改善したいという要求があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.Coライナー膜が膜厚2.0nm以下である薄膜として、
2.Cuの埋め込み率を上げることができるプロセスを提供可能とすること。
3.埋め込み特性の向上を図ること。
4.デバイス特性の低下を抑制すること。
5.アスプクト比の大きな形状に対する埋め込み特性を向上すること。
6.薄膜で低抵抗なCo膜を利用し、配線膜出可能とすること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の成膜方法は、コバルトを含有する第1ガスに被成膜面を暴露する第1工程と、
コバルトを含有する第2ガスに前記被成膜面を暴露する第2工程と、
を有することにより上記課題を解決した。
本発明の成膜方法は、前記第1工程が、前記第1ガスに被成膜面を暴露する第1成膜工程と、プラズマを発生させる第1改質工程と、
を含むことができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程において、前記第1改質工程では、雰囲気ガスとして第3ガスを供給することができる。
本発明の成膜方法は、前記第3ガスが、水素を含有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程において、前記第1成膜工程の雰囲気圧力よりも、前記第1改質工程の雰囲気圧力が低く設定されることができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程が減圧パージ工程を有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程が昇圧パージ工程を有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程で成膜されたコバルトを含む膜の膜厚が、第1所定値範囲内に設定されることができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程が複数回繰り返されることができる。
本発明の成膜方法は、前記第1成膜工程がALDとされることができる。
本発明の成膜方法は、前記第2工程において、前記第2ガスに被成膜面を暴露する第2成膜工程と、プラズマを発生させる第2改質工程と、
を含むことができる。
本発明の成膜方法は、前記第2工程において、前記第2改質工程では、雰囲気ガスとして第3ガスを供給することができる。
本発明の成膜方法は、前記第3ガスが、水素を含有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第2ガスが、水素を含有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第2工程において、前記第2成膜工程の雰囲気圧力よりも、前記第2改質工程の雰囲気圧力が低く設定されることができる。
本発明の成膜方法は、前記第2工程が減圧パージ工程を有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第2工程が昇圧パージ工程を有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程で成膜されたコバルトを含む膜と前記第2工程で成膜されたコバルトを含む膜との合計膜厚が、第2所定値以下に設定されることができる。
本発明の成膜方法は、前記第2成膜工程がCVDとされることができる。
本発明の成膜方法は、前記第1工程の前にバリア膜を形成するバリア膜形成工程を有することができる。
本発明の成膜方法は、前記第2工程の後に熱処理工程を有することができる。
本発明の成膜装置は、上記のいずれか記載の成膜方法により成膜をおこなう成膜装置であって、
ALD法、CVD法による基板の被成膜面への成膜およびプラズマ処理が可能なものとされ、
プラズマ処理部と成膜とが可能なチャンバと、
原料供給部と、
ガス供給部と、
プラズマ形成部と、
前記原料供給部から前記チャンバへと接続される供給管部と、
前記供給管部に設けられたバルブによって切り替えされて外部に接続されるベント部と、
を有し、
前記第1成膜工程および前記第2成膜工程において、
前記原料供給部から供給された原料を、前記ベント部によって供給先を前記チャンバに切り替えて成膜するとともに、
成膜しない工程では、前記原料供給部から供給された原料を、前記ベント部によって外部に送ることができる。
【0013】
本発明の成膜方法は、コバルトを含有する第1ガスに被成膜面を暴露する第1工程と、
コバルトを含有する第2ガスに前記被成膜面を暴露する第2工程と、
を有する。
これにより、第1工程による成膜と第2工程による成膜とを連続しておこなって、トレンチ、ホール、ビア等に埋め込み率を向上することができる。
ここで、第1工程において極めて小さい膜厚でも連続した膜面として膜形成をおこない、さらに、第2工程においてボイドのない埋め込み膜を形成することが可能となる。これにより、アスペクト比の大きな狭い隙間に対しても、コバルト膜の埋め込み率を向上させることができる。
しかも、コバルト膜の膜厚を所定値以下にすることができるため、デバイス等の要請である、コバルト膜の抵抗を増大させないで、埋め込みを確実におこなうことができる。
【0014】
本発明の成膜方法は、前記第1工程が、前記第1ガスに被成膜面を暴露する第1成膜工程と、プラズマを発生させる第1改質工程と、
を含む。
これにより、第1成膜工程において形成された膜の表面を、第1改質工程におけるプラズマによって改質することで、第2工程における膜形成による埋め込みを好適におこなうことが可能となる。
【0015】
本発明の成膜方法は、前記第1工程において、前記第1改質工程では、雰囲気ガスとして第3ガスを供給する。
これにより、第2工程でのCo膜の埋め込みに好適な状態の凹凸などの表面状態が生じるように、第1成膜工程で形成されたCo連続膜の表面を改質することができるとともに、第2工程での高い充填率でその膜厚を増加させることができる。また、プラズマへの暴露工程において、第3ガスを供給することによって、第1成膜工程によって形成したCo膜において、膜表面状態を改善して、低抵抗化することが可能となる。
【0016】
本発明の成膜方法は、前記第3ガスが、水素を含有する。
これにより、第2工程でのCo膜の埋め込みに好適な状態の凹凸などの表面状態が生じるように、第1成膜工程で形成されたCo連続膜の表面を改質することができるとともに、第2工程での高い充填率でその膜厚を増加させることができる。また、プラズマへの暴露工程において、水素ガスを供給することによって、第1成膜工程によって形成したCo膜において、膜表面状態を改善して、低抵抗化することが可能となる。
【0017】
本発明の成膜方法は、前記第1工程において、前記第1成膜工程の雰囲気圧力よりも、前記第1改質工程の雰囲気圧力が低く設定される。
これにより、第1成膜工程で形成されたCo連続膜の表面を改質することができる。
さらに、Co膜中の炭素や酸素などの不純物を除去することができる。
【0018】
本発明の成膜方法は、前記第1工程が減圧パージ工程を有する。
これにより、第1工程において、雰囲気圧力の高い第1成膜工程から第1成膜工程よりも雰囲気圧力の低い第1改質工程へと圧力を低下するとともに、第1成膜工程から第1改質工程へと移行する際に必要なパージをおこなうことが可能となる。
【0019】
本発明の成膜方法は、前記第1工程が昇圧パージ工程を有する。
これにより、第1工程を複数回繰り返す際に、雰囲気圧力の低い第1改質工程から、第1改質工程よりも雰囲気圧力の高い第1成膜工程へと圧力を上昇させるとともに、第1改質工程から第1成膜工程へと移行する際に必要なパージをおこなうことが可能となる。
【0020】
本発明の成膜方法は、前記第1工程で成膜されたコバルトを含む膜の膜厚が、第1所定値範囲内に設定される。
これにより、第2工程における充分な埋め込みが可能となる所定値以上で、かつ、ボイドが発生しない埋め込みが可能となる所定値以下である第一所定値範囲に設定されたコバルト膜を第1工程によって成膜した後に、第2工程へと続けることで、ボイドのない状態でかつ埋め込み率を向上したコバルト膜を形成することが可能となる。
【0021】
本発明の成膜方法は、前記第1工程が複数回繰り返される。
これにより、第1工程での成膜を、第1所定値範囲内として、第2工程で必要な膜厚範囲とすることが容易にできる。
【0022】
本発明の成膜方法は、前記第1成膜工程がALDとされる。
これにより、第1所定値範囲内に設定された膜厚で、所定の表面上体を有し、第2工程でボイドのない状態でかつ埋め込み率を向上したコバルト膜を形成することが可能なコバルト膜を、第2工程前に形成することができる。
【0023】
本発明の成膜方法は、前記第2工程において、前記第2ガスに被成膜面を暴露する第2成膜工程と、プラズマを発生させる第2改質工程と、
を含む。
第1工程で形成されるとともに、表面を改質されたコバルト膜に、埋め込み膜としてのコバルト膜をボイドのない状態で、かつ、埋め込み率を向上した状態で、形成することができる。
【0024】
本発明の成膜方法は、前記第2工程において、前記第2改質工程では、雰囲気ガスとして第3ガスを供給する。
これにより、後工程におけるリフローとしての熱処理工程によるコバルト膜の埋め込みに好適な凹凸状態などの表面状態が生じるように、第2成膜工程で形成されたCo連続膜の表面を改質することができるとともに、第2工程後での高い充填率でその膜厚を増加させることができる。また、プラズマへの暴露工程において、第3ガスを供給することによって、第2成膜工程によって形成したCo膜において、膜表面状態を改善して、低抵抗化することが可能となる。
【0025】
本発明の成膜方法は、前記第3ガスが、水素を含有する。
これにより、第2成膜工程で形成されたCo連続膜の表面を改質することができるとともに、第2工程および後工程において高い充填率でその膜厚を増加させることができる。また、プラズマへの暴露工程において、水素ガスを供給することによって、第2成膜工程によって形成したCo膜において、膜表面状態を改善して、低抵抗化することが可能となる。
【0026】
本発明の成膜方法は、前記第2ガスが、水素を含有する。
これにより、第2成膜工程におけるコバルト膜に凹凸などが生じないようにCo連続膜を形成することができるとともに、高い成膜レートでその膜厚を増加させることができる。また、Hは、プラズマへの暴露工程において、供給することによって、第2ガスによって膜厚を増加したCo膜において、膜質を改善して、低抵抗化することが可能となる。
【0027】
本発明の成膜方法は、前記第2工程において、前記第2成膜工程の雰囲気圧力よりも、前記第2改質工程の雰囲気圧力が低く設定される。
これにより、第2成膜工程で形成されたCo連続膜の表面を改質することができる。
さらに、Co膜中の炭素や酸素などの不純物を除去することができる。
【0028】
本発明の成膜方法は、前記第2工程が減圧パージ工程を有する。
これにより、第2工程において、雰囲気圧力の高い第2成膜工程から第2成膜工程よりも雰囲気圧力の低い第2改質工程へと圧力を低下するとともに、第2成膜工程から第2改質工程へと移行する際に必要なパージをおこなうことが可能となる。
【0029】
本発明の成膜方法は、前記第2工程が昇圧パージ工程を有する。
これにより、第2工程に続く後工程へと続く際に、雰囲気圧力の低い第2改質工程から、第2改質工程よりも雰囲気圧力の高い後工程へと圧力を上昇させるとともに、第2改質工程から後工程へと移行する際に必要なパージをおこなうことが可能となる。
【0030】
本発明の成膜方法は、前記第1工程で成膜されたコバルトを含む膜と前記第2工程で成膜されたコバルトを含む膜との合計膜厚が、第2所定値以下に設定される。
これにより、ボイドを発生せずに埋め込み可能なように膜質を改善しつつ、同時に、低抵抗化することが可能となる。このため、低抵抗のCo膜を形成することが容易となる。
【0031】
本発明の成膜方法は、前記第2成膜工程がCVDとされる。
これにより、第1工程による成膜を所定時間で終わらせて、成膜レートの高い第2成膜工程によって膜厚を効率的に増加することができるため、成膜時間を短縮することが可能となる。さらに、カバレッジ性のよいCo膜を成膜して、他の導電膜等がある場合に、膜特性のよい下地膜等とすることができ、また、トレンチ、ホール等を効率よく充填することが可能となる。
【0032】
本発明の成膜方法は、前記第1工程の前にバリア膜を形成するバリア膜形成工程を有する。
これにより、例えば、タンタル等を含むバリア膜にコバルト膜を形成することで、ボイドを発生せずに埋め込み可能なようにコバルト膜を形成することができる。
【0033】
本発明の成膜方法は、前記第2工程の後に熱処理工程を有する。
これにより、形成したコバルト膜を充分にリフロー、つまり埋め込み形成することができる。あるいは、コバルト膜にさらにCu等の電極膜を形成した場合に、この熱処理によって、ボイドを発生せずに埋め込んで、トレンチ、ホール等を効率よく充填することが可能となる。
【0034】
本発明の成膜装置は、上記のいずれか記載の成膜方法により成膜をおこなう成膜装置であって、
ALD法、CVD法による基板の被成膜面への成膜およびプラズマ処理が可能なものとされ、
プラズマ処理部と成膜とが可能なチャンバと、
原料供給部と、
ガス供給部と、
プラズマ形成部と、
前記原料供給部から前記チャンバへと接続される供給管部と、
前記供給管部に設けられたバルブによって切り替えされて外部に接続されるベント部と、
を有し、
前記第1成膜工程および前記第2成膜工程において、
前記原料供給部から供給された原料を、前記ベント部によって供給先を前記チャンバに切り替えて成膜するとともに、
成膜しない工程では、前記原料供給部から供給された原料を、前記ベント部によって外部に送る。
これにより、貯留された原料液にキャリアガスとされるアルゴンなどを吹き込むバブリングによって原料ガスをチャンバに供給する場合に、バブリングを停止することなく安定して原料を供給した状態で、ベント部によって、チャンバに挿入するか、外部へと排出するかを切り替えることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、抵抗値が増大することのない膜厚であるコバルト膜を形成可能として、コバルト膜、あるいは、Cu等の電極膜の埋め込み率を上げることが可能な成膜方法を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る成膜方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る成膜方法の第1実施形態における成膜例を示す断面図である。
図3】本発明に係る成膜装置の第1実施形態を示す模式図である。
図4】本発明に係る成膜方法の第1実施形態における第1工程を示すタイムチャートである。
図5】本発明に係る成膜方法の第1実施形態における第2工程を示すタイムチャートである。
図6】本発明に係る成膜方法の第1実施形態における第1工程を説明するためのALDサイクル数と膜厚との関係を示すグラフである。
図7】本発明に係る実施例を示すものである。
図8】本発明に係る実施例を示すものである。
図9】本発明に係る実施例を示すものである。
図10】本発明に係る実施例を示すものである。
図11】本発明に係る実施例を示すものである。
図12】本発明に係る実施例を示すものである。
図13】本発明に係る実施例を示すものである。
図14】本発明に係る実施例を示すものである。
図15】本発明に係る実施例を示すものである。
図16】本発明に係る実施例を示すものである。
図17】本発明に係る実施例を示すものである。
図18】本発明に係る実施例を示すものである。
図19】本発明に係る実施例を示すものである。
図20】本発明に係る実施例を示すものである。
図21】本発明に係る実施例を示すものである。
図22】本発明に係る実施例を示すものである。
図23】本発明に係る実施例を示すものである。
図24】本発明に係る実施例を示すものである。
図25】本発明に係る実施例を示すものである。
図26】本発明に係る実施例を示すものである。
図27】本発明に係る実施例を示すものである。
図28】本発明に係る実施例を示すものである。
図29】本発明に係る実施例を示すものである。
図30】本発明に係る実施例を示すものである。
図31】本発明に係る実施例を示すものである。
図32】本発明に係る実施例を示すものである。
図33】本発明に係る実施例を示すものである。
図34】本発明に係る実施例を示すものである。
図35】本発明に係る実施例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る成膜方法、成膜装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における成膜方法を示すフローチャートである。図2は、本実施形態における成膜方法の成膜例を示す断面図であり、図において、符号Sは、基板である。
【0038】
本実施形態に係る成膜方法は、例えば、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、下地層との密着層として使用されるCo膜を形成する場合や、この方法により得られたCo膜を密着層として有するCu配線膜を形成する場合に用いられる。
【0039】
Cu配線膜形成プロセスでは、PVD-バリア膜(例えば、PVD-Ti膜やTa膜)とPVD-シード膜(PVD-Cu膜)とを真空一貫(in-situ)で形成し、その後、加熱リフロー工程等を行っている。しかし、近年の配線の微細化によって、デバイスノード10nm世代以降では、PVD膜のウェハーエッジの非対称性やオーバーハングが顕著になってきており、リフロー工程でボイドが発生する、あるいは、埋め込み率がよくないという問題がある。
【0040】
ここで、PVD-バリア膜とは、PVD法により形成されたバリア膜を意味し、PVD-シード膜とは、PVD法により形成されたシード膜を意味する。以下に記載するPVD(CVD)-Cu膜、ALD-バリア膜、CVD(ALD)-Co膜は、それぞれ、PVD、CVD、ALDにより形成された各膜を意味するものとする。
【0041】
例えば、ホールやトレンチが設けられている基板S上に形成されているバリア膜上にPVD-シード膜(PVD-Cu膜)を形成すると、ホールやトレンチの上部がオーバーハング(A部分)してホール等の開口部が狭まり、次いでメッキ工程等によりホール等の内部をCu膜で埋め込む際に、Cu膜が内部に入り難くなると共に、Cu膜とバリア膜との密着性が良くないために、Cu膜が埋め込まれるにつれてCu膜が吸いあげられて、Cu膜中にボイドが発生するという問題がある。また、ホール等の側面にPVD-シード膜が均一に対称的に形成できず、このバリア膜の非対称性のために、次のメッキ工程等において埋め込まれるCu膜中にボイドが発生するという問題もある。
【0042】
上記Cu膜とその下地膜のALD-バリア膜との密着性が悪いために発生するCu膜中のボイドをなくし、バリア性/密着性を改善するために、カバレッジ性がよく、薄膜で低抵抗なCo膜を利用することが知られている。さらに、CVD法やALD法によるCoライナー膜の成膜技術の実用化が急務となっている。Co膜については、Cu配線膜の分野のみならず、シリサイド層やキャップ層の分野においても、同様にカバレッジ性の高いCo膜への要求が高まっている。
【0043】
これに対し、CVDやALDによりCoを含む有機金属材料を用いて、Co核の成長速度を改善して低抵抗化を目指すものである。
同時に、Coライナー膜およびTaバリア膜を低抵抗化するために、これらの膜はなるべく薄くして、その膜厚は小さくしたいという要求がデバイス側からの要求としてある。
また、Cu配線膜の埋め込み率は、Co膜の膜厚によって変わることが知られている。すなわち、Coライナー膜が薄くなるほどCu配線膜が埋め込みづらくなる。
【0044】
つまり、Coライナー膜を薄くして低抵抗化したいが、薄すぎると埋め込み率が悪化するというトレードオフがあった。
特に、Coライナー膜の膜厚が2.0nm以下では、CVD成膜でCu配線膜の埋め込みができない。
【0045】
このため、本実施形態に係る成膜方法は、図1に示すように、準備工程S01と、第1工程S10と、第2工程S20と、後処理工程S02とを有する。
これにより、ALD成膜とCVD成膜とを組み合わせた2ステップ成膜として、図2に示すように、Taバリア膜(Ta膜)S1の形成された基板Sに、膜厚が2.0nm程度以下となる薄膜であるCoライナー膜(コバルト膜)S2を形成し、Cu配線膜の埋め込み率を上げることを可能とするものである。
【0046】
図1に示す準備工程S01においては、Co膜製造の準備工程として、まず、被成膜面として、必要な構成、例えば、トレンチSt、ビアやホール等を基板Sに設けることを含むことができる。
また、準備工程S01としては、この被成膜面に形成する下側配線層や、下地としてのSiO膜またはバリア膜等の形成、あるいは、被成膜面の表面処理等の処理をおこなうものとされる。
【0047】
具体的には、下側配線層、あるいは、バリア膜等となる下地あるいは、基板Sの被成膜面が、Si、Cu、Ti、TiN、Ta、TaN、W、WN、または、これらの酸化膜や窒化膜、あるいは、CoSi、TiSi、NiSi、およびWSiから選ばれたシリサイドからなる膜であることができる。
【0048】
さらに、Cu配線工程におけるTaNやTiNなどのCuのバリア膜S1の成膜といった工程を準備工程S01に含むこともできる。
【0049】
図1に示す第1工程S10は、第1ガスに被成膜基板(基板)Sを暴露するものとされる。第1工程S10は、予熱工程S11、第1ガス供給工程S12、減圧パージ工程S13、Hプラズマ改質工程S14、昇圧パージ工程S15、を有することができる。
【0050】
本実施形態に係る成膜方法をおこなう成膜装置について説明する。
図3は、本実施形態における成膜方法を実施する成膜装置を示す模式断面図であり、図において、符号100は、成膜装置である。
【0051】
本実施形態に係る成膜装置100は、ALD法、CVD法、プラズマCVD法による基板Sの被成膜面への成膜が可能なものとされ、図3に示すように、反応室である成膜空間101aを有する処理室101を有する。処理室101は、真空チャンバ(チャンバ)102と、電極フランジ104と、真空チャンバ102および電極フランジ104に挟持された絶縁フランジ103とから構成されている。
【0052】
真空チャンバ102の底部102a(内底面)には、開口部が形成されている。この開口部には支柱145が挿通され、支柱145は真空チャンバ102の下部に配置されている。支柱145の先端(真空チャンバ102内)には、板状の支持部141が接続されている。支持部141には、温度設定手段141mが設けられている。
【0053】
また、真空チャンバ102には、排気管を介して真空ポンプ(排気手段)148が設けられている。真空ポンプ148は、真空チャンバ102内が真空状態となるように減圧可能とされている。真空チャンバ102には、温度設定手段102mが設けられている。
また、支柱145は、真空チャンバ102の外部に設けられた昇降機構(不図示)に接続されており、基板Sの鉛直方向において上下に移動可能である。
【0054】
電極フランジ104は、上壁104aと周壁104bとを有する。電極フランジ104は、電極フランジ104の開口部が鉛直方向の下側に配置されている。電極フランジ104の開口部は、基板Sと対向する位置にある。また、電極フランジ104の開口部には、シャワープレート105が取り付けられている。これにより、電極フランジ104とシャワープレート105との間に空間(ガス導入空間)101bが形成されている。また、電極フランジ104の上壁104aは、シャワープレート105に対向している。上壁104aには、ガス導入口104cを介してガス供給手段120が接続されている。空間101bは、プロセスガスが導入されるガス導入空間として機能している。
【0055】
電極フランジ104とシャワープレート105は、真空チャンバ102から電気的に絶縁されており、それぞれ導電材で構成されている。
電極フランジ104の周囲には、電極フランジ104を覆うようにシールドカバーが設けられている。シールドカバーは、電極フランジ104と非接触であり、かつ、真空チャンバ102の周縁部に連設するように配置されている。
【0056】
また、電極フランジ104には、真空チャンバ102の外部に設けられたRFなどの高周波電源147がマッチングボックスMBを介して接続されている。マッチングボックスMBは、シールドカバーに取り付けられており、真空チャンバ102にシールドカバーを介して接地されている。
【0057】
電極フランジ104およびシャワープレート105はカソード電極として構成可能とされている。シャワープレート105には、複数のガス噴出口となるガス流路105aが形成されている。空間101b内に導入されたプロセスガスは、ガス噴出口となるガス流路105aから真空チャンバ102内の成膜空間101aに噴出される。
【0058】
ガス流路105aは、互いの離間距離がほぼ均一に設定され、つまり、ガス流路105aはシャワープレート105にほぼ均一な密度となるようにシャワープレート105の厚さ方向全長を貫通している。
【0059】
成膜装置100では、プラズマを発生させない場合には、RF電源147からの電力供給をおこなわない。
また、プラズマを発生させる場合には、RF電源147から電力供給された電極フランジ104およびシャワープレート105がカソード電極となり、成膜空間101aにプラズマを発生させる。
【0060】
ガス供給手段120は、第1工程S10において、第1ガスを供給する第1ガス供給手段121と、第2工程S20において、第2ガスを供給する第1ガス供給手段(第2ガス供給手段)121と、パージガスなど第1ガスおよび第2ガス以外のガスを供給するパージガス等供給手段123と、からなることができる。
【0061】
なお、パージガス等供給手段123は、第1工程S10および第2工程S20において、第1ガス供給手段121からの第1ガス供給時と第2ガス供給時とにおいて、原料ガス以外のガスを供給する手段として共通する構成を有することができる。
【0062】
第1ガス供給手段121は、第1ガスを貯留する第1ガス貯留部121aと、この第1ガス貯留部121aにキャリアガスとしてのアルゴンガス等を供給して第1ガスとともに供給可能とするアルゴンガス供給部121bと、バルブ121cと、マスフローコントローラ121dと、第1ガス貯留部121aおよびガス導入口104cの間を接続する接続配管121eと、これらに配置されたバルブ121f,121g,121h,121j,121kとを有する。
【0063】
第1ガス供給手段121には、第1ガス貯留部121a、および、接続配管121eなど、第1ガスの供給される部分を温度設定するための温度設定手段121mが設けられている。
【0064】
具体的には、第1ガスが、コバルトカルボニル化合物または錯体を含有する蒸気を含むガス状混合物とされ、この原料が第1ガス貯留部121aに貯留される。
【0065】
第1ガスとして、コバルト含有材料(たとえば、金属コバルトまたはコバルト合金)を形成するのに適したコバルト前駆体には、コバルトカルボニル錯体、コバルトセン化合物、コバルトジエニル錯体、コバルトニトロシル錯体、これらの誘導体、これらの錯体、これらのプラズマ、またはこれらの組合せが含まれ、さらに、これらに、コバルトアミジナート化合物を含むこともできる。
【0066】
コバルト前駆体としては、それだけに限定されるものではないが、コバルトカルボニル錯体、コバルトアミジナート化合物、コバルトセン化合物、コバルトジエニル錯体、コバルトニトロシル錯体、コバルトジアザジエニル(diazadienyl)錯体、水素化コバルト錯体、これらの誘導体、これらの錯体、これらのプラズマ、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0067】
このコバルト前駆体の例としては、ジコバルトヘキサカルボニルブチルアセチレン(CCTBA、(CO)Co(HC≡CBu))、ジコバルトヘキサカルボニルメチルブチルアセチレン((CO)Co(MeC≡CBu))、ジコバルトヘキサカルボニルフェニルアセチレン((CO)Co(HC≡CPh))、ヘキサカルボニルメチルフェニルアセチレン((CO)Co(MeC≡CPh))、ジコバルトヘキサカルボニルメチルアセチレン((CO)Co(HC≡CMe))、ジコバルトヘキサカルボニルジメチルアセチレン((CO)Co(MeC≡CMe))、コバルトアミニデート(aminidate)(C2042CoN)、コバルトヘキサフルオロアセチルアセトン(Co(CHF・xHO)、コバルトアセチルアセトネート((CHCOC=COCHCo)、コバルト(II)アセチルアセトン((CHCOC=COCHCo)、酢酸コバルト((CHCOO)Co)、CCFP(構造式1)、
【0068】
【化1】
【0069】
これらの誘導体、これらの錯体、これらのプラズマ、またはこれらの組合せが含まれる。
【0070】
他の例としてのコバルトカルボニル錯体としては、シクロペンタジエニルコバルトビス(カルボニル)(CpCo(CO))、トリカルボニルアリルコバルト((CO)Co(CHCH=CH))、コバルトトリカルボニルニトロシル(Co(CO)NO)、これらの誘導体、これらの錯体、これらのプラズマ、またはこれらの組合せが含まれる。
【0071】
第2ガスとして使用されるコバルト前駆体の好ましい例は、構造式2
【0072】
【化2】
【0073】
で示されるジコバルトヘキサカルボニルブチルアセチレン(CCTBA、(CO)Co(HC≡CBu))、または、CCFP(上記構造式1)、とすることができる。
【0074】
本実施形態に係る成膜装置100においては、第1ガス供給手段121から原料ガス、および、パージガス等供給手段123から例えば水素ガスとされる所定のガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給して、第1ガスによる基板S表面の暴露処理や成膜処理、さらに、プラズマを用いた処理、改質処理をおこなうことができる。
【0075】
本実施形態に係る成膜装置100においては、第2ガス供給手段121から原料ガス、および、パージガス等供給手段123から例えば水素ガスとされる所定のガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給して、第2ガスによる基板S表面の暴露処理や成膜処理、さらに、プラズマを用いた処理、改質処理をおこなうことができる。
【0076】
なお、上記の成膜装置100においては、第1ガス供給手段121の接続配管121eには、ベント部122の接続配管122kとバルブ122rとバルブ122vとが設けられる。接続配管122kは、接続配管121eから分離して、排気管を介して真空ポンプ(排気手段)148に接続する構成とされる。
接続配管121e,122kは、バルブ122rとバルブ122vとを切り替えることで、真空チャンバ102に対する第1ガス供給および第2ガス供給と、外部排気とを切り替え可能とされる。
【0077】
図4は、本実施形態における成膜方法における第1工程S10を示すタイムチャートである。
図1に示す第1工程S10における予熱工程S11においては、図4に示す時刻t00から、温度設定手段141m、温度設定手段102mによって、基板Sの被成膜面および真空チャンバ102の内部が所定の温度となるように温度設定、例えば、所定温度まで加熱をおこなう。
【0078】
具体的には、予熱工程S11における基板Sの加熱は、基板Sが、160~240℃の範囲となるように設定することができる。
また、予熱工程S11においては、図4に示す時刻t00から、第1ガス供給手段121における第1ガスの供給はOFFとされる。具体的には、第1ガス供給手段121におけるアルゴンガス供給部121bからのアルゴンガス供給はOFFとされ、バルブ121c、バルブ121fが閉状態とされる。
【0079】
また、第1ガス供給手段121において、バルブ121kが閉状態とされる。
このとき、ベント部122はON、つまり、第1ガス供給手段121からのガスは、外部へと排気されていてもよい。なお、図4において、ベント部122はVentとして示している。
【0080】
また、予熱工程S11においては、図4に示す時刻t00から、パージガス等供給手段123におけるアルゴンガス供給部123bから、接続配管123mを介してパージガスとなるアルゴンガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。これにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力となっている。
また、パージガス等供給手段123における水素ガス供給部123eはOFF、つまり、パージガス等供給手段123からの水素ガスは、供給されていない。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0081】
このとき、パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123p,123nを開状態とするとともに、バルブ123q,123r,123sを閉状態とすることができる。また、ベント部122のバルブ122rを閉状態、バルブ122vを開状態としておく。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
【0082】
図1に示す第1工程S10における第1ガス供給工程S12においては、まず、図4に示すように、予熱工程S11の終了した時刻t01から、第1ガス供給手段121から第1ガス等の供給を開始する。これにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力となっている。
また、第1ガス供給手段121における第1ガスの供給はONとされる。具体的には、第1ガス供給手段121におけるアルゴンガス供給部121bからのアルゴンガス供給はONとされ、バルブ121c、バルブ121f、バルブ121g、バルブ121hが開状態とされる。
このとき、パージガス等供給手段123からパージガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する状態を予熱工程S11から連続して維持する。
【0083】
また、第1ガス供給手段121において、バルブ121kが開状態とされる。
このとき、ベント部122はON、つまり、第1ガス供給手段121からのガスは、外部へと排気されている。ベント部122のバルブ122rを閉状態、バルブ122vを開状態としておく。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0084】
次に、図1に示す第1工程S10における第1ガス供給工程S12においては、図4に示す時刻t02から第1成膜工程として、第1ガス供給手段121から第1ガス等を処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給して、第1ガスによる基板S表面の暴露処理や成膜処理をおこなう。図においては、第1ガス供給工程S12としてALD成膜と示している。
このとき、パージガス等供給手段123からパージガスであるアルゴンガスの流量を調節しつつ、アルゴンガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する状態を予熱工程S11から連続して維持する。これにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力となっている。
【0085】
また、第1ガス供給手段121において、バルブ121kが開状態を維持する。
このとき、ベント部122はON、つまり、第1ガス供給手段121からのガスは、外部へと排気されている。ベント部122のバルブ122rを開状態、バルブ122vを閉状態としておく。
【0086】
具体的には、図4に示す時刻t02から、第1ガス貯留部121aに貯留されるCCTBAの蒸気を含むガス状混合物とされた第1ガスを、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。
【0087】
この際、第1ガス供給手段121においては、マスフローコントローラ121dによってその供給量を制御しながら第1ガス貯留部121aにアルゴンガス等を供給することにより、第1ガス貯留部121aの内圧を制御して第1ガスを供給する。これにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力となっている。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0088】
同時に、パージガス等供給手段123のバルブ123q,123rを閉状態としておく。
このとき、温度設定手段121mによって第1ガス貯留部121aおよび接続配管121e、接続配管121kの温度を所定範囲に設定した状態で、バルブ121j、バルブ122vを閉状態とし、バルブ121h,バルブ121k、バルブ122r、バルブ123sを開状態として、第1ガスを供給する。
【0089】
第1ガス供給工程S12においては、図4に示す時刻t02から、真空チャンバ102内を、2000Pa程度の圧力とすることができる。
また、第1ガス供給工程S12における基板Sの温度は、図4に示す時刻t02から、基板Sが、160~240℃の範囲となるように設定することができる。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
【0090】
このように、第1ガス供給工程S12においては、図4に示す時刻t02から時刻t03において、所定時間第1ガスに基板Sを暴露することで、ALD成膜ステップによりコバルトの1原子層が形成される処理をおこなう。
なお、時刻t02から時刻t03においては、基板S全面に均一なコバルト膜が形成されていなくてもよく、後述するようにALDサイクルとして繰り返すことで必要な膜状態まで成長することになる。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0091】
次いで、図1に示す第1工程S10においては、図4に示す時刻t03から、第1ガス供給手段121からの第1ガス供給を停止し、第1ガス供給工程S12を終了して、ALDサイクルとしての1回目のコバルト膜の形成を終了する。
【0092】
続けて、図4に示す時刻t03から減圧パージ工程S13とする。
図1に示す第1工程S10における減圧パージ工程S13においては、図4に示すように、第1ガス供給工程S12の終了した時刻t03から、パージガス等供給手段123からパージガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。これにより、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102における第1ガスのパージ処理をおこなう。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0093】
同時に、減圧パージ工程S13においては、Hプラズマ改質工程(第1改質工程)S14に向けて、真空チャンバ(チャンバ)102の減圧をおこなう。具体的には、第1ガス供給手段121においては、少なくともバルブ123sを閉状態とする。同時に、パージガス等供給手段123においては、供給するアルゴンガスの流量を減少させる。
パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123p,123nの開状態と、バルブ123q,123rの閉状態とを維持する。
【0094】
また、ベント部122はON、つまり、ベント部122においては、バルブ122rを閉状態とし、バルブ122vを開状態とする。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
【0095】
減圧パージ工程S13は、パージが完了するとともに、真空チャンバ(チャンバ)102が減圧されて、Hプラズマ改質工程S14に対応する低圧状態に到達した時刻t04に終了可能である。
【0096】
次いで、図1に示す第1工程S10におけるHプラズマ改質工程(改質工程)S14においては、図4に示すように、減圧パージ工程S13の終了した時刻t04から、パージガス等供給手段123からHガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。同時に、パージガス等供給手段123においては、アルゴンガスの供給を維持するとともに、真空チャンバ(チャンバ)102に供給するアルゴンガスの流量を減少させて、低圧状態である改質圧力を維持する。
この際、パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123p,123nの開状態と、バルブ123sの閉状態とを維持する。
【0097】
また、Hプラズマ改質工程S14においては、パージガス等供給手段123のバルブ123f,123qを開状態とする。これによって、アルゴンガス、Hガスの供給量を制御しながら、これらを接続配管123mおよびガス導入口104cを介して真空チャンバ(チャンバ)102へと供給する。
プラズマ改質工程S14においては、ベント部122がON、つまり、ベント部122においては、バルブ122rの閉状態と、バルブ122vの開状態とを維持する。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
また、RFなどの高周波電源147は、ON、つまり、プラズマを形成する。
【0098】
時刻t04からのHプラズマ改質工程S14においては、図4に示すように、減圧パージ工程S13の終了した時刻t04から、カソード電極として構成可能な電極フランジ104およびシャワープレート105に、マッチングボックスMBを介して接続されたRF電源(高周波電源)147からプラズマ電力を印加して、プラズマを発生させて、基板Sに成膜されたCo膜をプラズマ処理する。
【0099】
これにより、時刻t04から処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102において、Hガスから形成されたプラズマと基板Sとの反応によって、時刻t02からの第1ガス供給工程S12で、1回目のALDサイクルとして形成されたコバルト膜の改質がおこなわれる。
ここで、時刻t04からのHプラズマ改質工程S14においては、プラズマによりCo膜中の炭素や酸素などの不純物を除去するという処理がおこなわれていると考えられる。
なお、時刻t04からのHプラズマ改質工程S14は、ALDによる所定のコバルト膜形成に必要な処理条件として、プラズマ形成電力、処理雰囲気、処理時間、Hガス流量、アルゴンガス流量が設定される。
所定のコバルト膜形成が終了した時刻t05になったらHプラズマ改質工程S14を終了する。
【0100】
次いで、図1に示す第1工程S10における昇圧パージ工程S15においては、図4に示すように、Hプラズマ改質工程S14の終了した時刻t05から、カソード電極として構成可能な電極フランジ104およびシャワープレート105へのプラズマ電力印加を停止して、プラズマ発生を停止させる。
また、時刻t05からの昇圧パージ工程S15においては、パージガス等供給手段123からのHガス供給を停止するとともに、パージガス(アルゴンガス)の処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102への供給を維持する。これにより、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102におけるHガスのパージ処理をおこなう。
【0101】
同時に、昇圧パージ工程S15においては、次のサイクルのALDサイクルにおける第1ガス供給工程S12に向けて、時刻t03から、真空チャンバ(チャンバ)102の昇圧をおこなう。具体的には、第1ガス供給手段121においては、少なくともバルブ123sを閉状態とする。同時に、パージガス等供給手段123においては、供給するアルゴンガスの流量を増大させる。
【0102】
この際、パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123p,123nの開状態と、バルブ123q,123rの閉状態とを維持する。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。これらにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力まで昇圧される。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0103】
図1に示す第1工程S10においては、第1ガス供給工程S12、減圧パージ工程S13、Hプラズマ改質工程S14、昇圧パージ工程S15、をワンセットとして、これらの工程をALDによる成膜サイクル(ALDサイクル)として、これを複数回繰り返すことができる。
これにより、比較的成膜レートの遅い、第1ガスによるCoの膜厚を所定の厚さまで増大することが可能となる。
なお、ALDサイクルを一回とすることもできる。
【0104】
以下、2回目のALDサイクルについて説明する。
【0105】
2回目のALDサイクルにおいても、1回目と同様に、第1ガス供給工程S12においては、まず、図4に示すように、1サイクル目の昇圧パージ工程S15の終了した時刻t06から、第1ガス供給手段121から第1ガス等の供給を開始する。このとき、チャンバ102内が、高圧力である成膜圧力となるように調整する。
【0106】
また、第1ガス供給手段121における第1ガスの供給はONとされる。具体的には、第1ガス供給手段121におけるアルゴンガス供給部121bからのアルゴンガス供給はONとされ、バルブ121c、バルブ121f、バルブ121g、バルブ121hが開状態とされる。
このとき、パージガス等供給手段123からパージガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する状態を1サイクル目の昇圧パージ工程S15から連続して維持する。
【0107】
また、第1ガス供給手段121において、バルブ121kが開状態とされる。
このとき、ベント部122はON、つまり、第1ガス供給手段121からのガスは、外部へと排気されている。ベント部122のバルブ122rを閉状態、バルブ122vを開状態としておく。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0108】
次に、2回目のALDサイクルにおける第1ガス供給工程S12においては、図4に示す時刻t07から、第1ガス供給手段121から第1ガス等を処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給して、第1ガスによる基板S表面の暴露処理や成膜処理をおこなう。図においては、第1ガス供給工程S12としてALD成膜と示している。
このとき、パージガス等供給手段123からパージガスであるアルゴンガスの流量を調節しつつ、アルゴンガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する状態を予熱工程S11から連続して維持する。これにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力となっている。
【0109】
また、第1ガス供給手段121において、バルブ121kが開状態を維持する。
このとき、ベント部122はON、つまり、第1ガス供給手段121からのガスは、外部へと排気されている。ベント部122のバルブ122rを開状態、バルブ122vを閉状態としておく。
【0110】
具体的には、図4に示す時刻t02から、第1ガス貯留部121aに貯留されるCCTBAの蒸気を含むガス状混合物とされた第1ガスを、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。
【0111】
この際、第1ガス供給手段121においては、マスフローコントローラ121dによってその供給量を制御しながら第1ガス貯留部121aにアルゴンガス等を供給することにより、第1ガス貯留部121aの内圧を制御して第1ガスを供給する。これにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力となっている。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0112】
同時に、パージガス等供給手段123のバルブ123q,123rを閉状態としておく。
このとき、温度設定手段121mによって第1ガス貯留部121aおよび接続配管121e、接続配管121kの温度を所定範囲に設定した状態で、バルブ121j、バルブ122vを閉状態とし、バルブ121h,バルブ121k、バルブ122r、バルブ123sを開状態として、第1ガスを供給する。
【0113】
時刻t07からの2回目のALDサイクルにおける成膜工程においては、時刻t02からの1回目のALDサイクルにおける成膜工程と同一の処理条件でおこなうことが可能である。さらに、時刻t07からの成膜条件を、時刻t02からの成膜条件と異なるように設定することができる。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
【0114】
このように、第1ガス供給工程S12においては、図4に示す時刻t07から時刻t08において、所定時間第1ガスに基板Sを暴露することで、ALD成膜ステップによりコバルトの1原子層がさらに形成される処理をおこなう。
なお、時刻t07から時刻t08においては、基板S全面に均一なコバルト膜が形成されていなくてもよく、この場合には、さらにALDサイクルとして繰り返すことで必要な膜状態まで成長することになる。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0115】
次いで、2回目のALDサイクルにおける第1ガス供給工程S12においては、図4に示す時刻t08から、第1ガス供給手段121からの第1ガス供給を停止して、コバルト膜の形成を終了する。
【0116】
続けて、図4に示す時刻t08から2回目のALDサイクルにおける減圧パージ工程S13とする。
2回目のALDサイクルにおける減圧パージ工程S13においては、一回目と同様に、第1ガス供給工程S12の終了した時刻t08から、パージガス等供給手段123からパージガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。これにより、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102における第1ガスのパージ処理をおこなう。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0117】
同時に、2回目のALDサイクルにおける減圧パージ工程S13においては、Hプラズマ改質工程S14に向けて、真空チャンバ(チャンバ)102の減圧をおこなう。具体的には、第1ガス供給手段121においては、少なくともバルブ123sを閉状態とする。同時に、パージガス等供給手段123においては、供給するアルゴンガスの流量を減少させる。
パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123p,123nの開状態と、バルブ123q,123rの閉状態とを維持する。
【0118】
また、ベント部122はON、つまり、ベント部122においては、バルブ122rを閉状態とし、バルブ122vを開状態とする。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
【0119】
減圧パージ工程S13は、パージが完了するとともに、真空チャンバ(チャンバ)102が減圧されて、Hプラズマ改質工程S14に対応する低圧状態に到達した時刻t09に終了可能である。
【0120】
次いで、2回目のALDサイクルにおけるHプラズマ改質工程S14においては、図4に示すように、減圧パージ工程S13の終了した時刻t09から、パージガス等供給手段123からHガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。同時に、パージガス等供給手段123においては、アルゴンガスの供給を維持するとともに、真空チャンバ(チャンバ)102に供給するアルゴンガスの流量を減少させて、低圧状態である改質圧力を維持する。
この際、パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123p,123nの開状態と、バルブ123sの閉状態とを維持する。
【0121】
また、2回目のALDサイクルにおけるHプラズマ改質工程S14においては、パージガス等供給手段123のバルブ123f,123qを開状態とする。これによって、アルゴンガス、Hガスの供給量を制御しながら、これらを接続配管123mおよびガス導入口104cを介して真空チャンバ(チャンバ)102へと供給する。
プラズマ改質工程S14においては、ベント部122がON、つまり、ベント部122においては、バルブ122rの閉状態と、バルブ122vの開状態とを維持する。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
また、RFなどの高周波電源147は、ON、つまり、プラズマを形成する。
【0122】
時刻t09からのHプラズマ改質工程S14においては、図4に示すように、減圧パージ工程S13の終了した時刻t09から、カソード電極として構成可能な電極フランジ104およびシャワープレート105に、マッチングボックスMBを介して接続されたRF電源(高周波電源)147からプラズマ電力を印加して、プラズマを発生させて、基板Sに成膜されたCo膜をプラズマ処理する。
【0123】
これにより、時刻t09から処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102において、Hガスから形成されたプラズマと基板Sとの反応によって、時刻t07からの第1ガス供給工程S12で、2回目のALDサイクルとして形成されたコバルト膜の改質がおこなわれる。
【0124】
ここで、時刻t09からのHプラズマ改質工程S14は、ALDによる所定のコバルト膜形成に必要な処理条件として、プラズマ形成電力、処理雰囲気、処理時間、Hガス流量、アルゴンガス流量が設定される。なお、時刻t09からの2回目のALDサイクルにおけるHプラズマ改質工程S14においては、時刻t04からの1回目のALDサイクルにおけるHプラズマ改質工程S14と同一の処理条件でおこなうことが可能である。さらに、時刻t09からのHプラズマ改質条件を、時刻t04からの1回目のALDサイクルにおけるHプラズマ改質条件と同一の処理条件でおこなうことが可能である。
所定のコバルト膜形成が終了した時刻t10になったらHプラズマ改質工程S14を終了する。
【0125】
次いで、2回目のALDサイクルにおける昇圧パージ工程S15においては、図4に示すように、Hプラズマ改質工程S14の終了した時刻t10から、カソード電極として構成可能な電極フランジ104およびシャワープレート105へのプラズマ電力印加を停止して、プラズマ発生を停止させる。
また、時刻t10からの昇圧パージ工程S15においては、パージガス等供給手段123からのHガス供給を停止するとともに、パージガス(アルゴンガス)の処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102への供給を維持する。これにより、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102におけるHガスのパージ処理をおこなう。
【0126】
同時に、2回目のALDサイクルにおける昇圧パージ工程S15においては、次のサイクルのALDサイクルにおける第1ガス供給工程S12に向けて、時刻t10から、真空チャンバ(チャンバ)102の昇圧をおこなう。具体的には、第1ガス供給手段121においては、少なくともバルブ123sを閉状態とする。同時に、パージガス等供給手段123においては、供給するアルゴンガスの流量を増大させる。
【0127】
この際、パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123p,123nの開状態と、バルブ123q,123rの閉状態とを維持する。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。これらにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力まで昇圧される。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0128】
2回目のALDサイクルにおける昇圧パージ工程S15は、成膜圧力まで昇圧された時刻t11において終了される。
ALDサイクルを2回として終了する場合には、図1に示す第2工程S20に進み、ALDサイクルを3回以上繰り返す場合には、図4に示す時刻t11から、3回目のALDサイクルとして第1ガス供給工程S12へと進む。
図4においては、3回目のALDサイクルに進む場合を示している。
なお、比較的成膜レートの遅い、第1ガスによるCoの膜厚を所定の厚さまで増大した時点で、ALDサイクルを終了することが可能である。
ここで、ALDサイクルを終了する場合には、所定の膜厚とされたコバルト膜が島状ではなく、全面的に形成されていることが必要である。
【0129】
図1に示す第2工程S20は、第2ガスに被成膜基板を暴露するものとされ、第2ガス供給工程S21、減圧パージ工程S22、H2プラズマ改質工程S23、昇圧パージ工程S24、を有することができる。
【0130】
図5は、本実施形態における成膜方法における第2工程S20を示すタイムチャートである。
図1に示す第2工程S20における第2ガス供給工程S21においては、図5に示す時刻t20から、第2ガス供給手段(第1ガス供給手段)121およびパージガス等供給手段123から第2ガス等の供給を開始する。これにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力とする。
【0131】
ここで、第2ガスは、第1ガスと同等の原料ガスに水素ガスを付加したものとされる。
ここで、第1ガス貯留部121aに貯留されるCCTBAを含むガス状混合物とされた原料ガスを供給する。
同時に、水素ガスは、パージガス等供給手段123から処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。
【0132】
第2ガス供給工程S21おいて、第1ガスの原料ガスとして使用されるコバルト前駆体の好ましい例は、上述したジコバルトヘキサカルボニルブチルアセチレン(CCTBA、(CO)Co(HC≡CBu))(構造式2)とすることができる。
【0133】
図5に示す時刻t20からの第2ガス供給工程S21においては、第2ガス供給手段(第1ガス供給手段)における原料ガスの供給はONとされる。具体的には、第2ガス供給手段121におけるアルゴンガス供給部121bからのアルゴンガス供給はONとされる。
また、第1ガス供給手段121において、バルブ121g、バルブ121h、バルブ121kが開状態とされる。
このとき、ベント部122はON、つまり、第1ガス供給手段121からのガスは、外部へと排気されている。ベント部122のバルブ122rを閉状態、バルブ122vを開状態としておく。
【0134】
図5に示す時刻t20からの第2ガス供給工程S21においては、水素ガス供給部123eはONとされる。つまり、バルブ123c、バルブ123p、バルブ123f、バルブ123q、バルブ123nが開状態とされる。
このとき、パージガス等供給手段123からパージガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する状態を維持する。
【0135】
また、パージガスであるアルゴンガスを、パージガス等供給手段123から処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。
なお、パージガスとしては、水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、これらの組合せなどを含むことができる。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0136】
図1に示す第2工程S20における第2ガス供給工程S21においては、図5に示す時刻t21から第2成膜工程として、第2ガス供給手段121から原料ガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。同時に、パージガス等供給手段123から水素ガスを真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。図においては、第2ガス供給工程S21としてCVD成膜と示している。
時刻t21からの第2ガス供給工程S21においては、原料ガスおよび水素ガスからなる第2ガスによって基板S表面の暴露処理や成膜処理をおこない、CVDステップとしてコバルト膜を成膜する。同時に、パージガス等供給手段123からパージガスであるアルゴンガスを処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。
なお、パージガスとしては、水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、これらの組合せなどを含むことができる。
【0137】
時刻t21からの第2ガス供給工程S21においては、第2ガス供給手段(第1ガス供給手段)121においては、バルブ121c,121f,121g,121h,121kを開状態として、マスフローコントローラ121dによってその供給量を制御しながら第1ガス貯留部121aにアルゴンガス等を供給することにより、第1ガス貯留部121aの内圧を制御して、第1ガスと同等の原料ガスを真空チャンバ(チャンバ)102に供給する。
【0138】
さらに、バルブ122jを閉状態とし、バルブ121h,121k、バルブ123sを開状態として、接続配管121eおよびガス導入口104cを介して真空チャンバ(チャンバ)102へと第2ガスを供給する。
この際、ベント部122はOFF、つまり、第1ガス供給手段121からのガスは、真空チャンバ(チャンバ)102に供給されている。ベント部122のバルブ122rを開状態、バルブ122vを閉状態とする。また、パージガス等供給手段123においては、バルブ123sを開状態とする。
【0139】
同時に、パージガス等供給手段123のバルブ123rを閉状態とし、バルブ123f,123q,123nを開状態として、マスフローコントローラ123gによってHガスの供給量を制御しながら、これらを接続配管123mおよびガス導入口104cを介して真空チャンバ(チャンバ)102へと供給する。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0140】
第2ガス供給工程S21においては、図5に示す時刻t21から、真空チャンバ102内を、2000Pa程度の圧力に維持する。
また、第2ガス供給工程S21における基板Sの温度は、図5に示す時刻t21から、基板Sが、160~240℃の範囲となるように設定することができる。
【0141】
時刻t21からの第2ガス供給工程S21においては、CVDステップとしてトータルのコバルト膜の膜厚が2.0nm以下となるように、成膜条件を設定する。
ここで、トータルのコバルト膜厚が2.0nm以下とは、第1工程S10および第2工程S20で成膜されたコバルト膜厚の合計が2.0nm以下であることを意味する。
コバルト膜が所定の膜厚となった時刻t22に第2ガス供給工程S21を終了する。
続けて、図5に示す時刻t22から減圧パージ工程S22とする。
【0142】
図1に示す第2工程S20における減圧パージ工程S22においては、図5に示すように、CVD成膜工程である第2ガス供給工程S21の終了した時刻t22から、第2ガス供給手段(第1ガス供給手段)121およびパージガス等供給手段123からの原料ガスの供給を停止するとともに、パージガス(アルゴンガス)および水素ガスの処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102への供給を維持する。これにより、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102における第2ガスのパージ処理をおこなう。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0143】
同時に、減圧パージ工程S22においては、Hプラズマ改質工程S23に向けて、真空チャンバ(チャンバ)102の減圧をおこなう。具体的には、第1ガス供給手段121においては、少なくともバルブ123sを閉状態とする。同時に、パージガス等供給手段123においては、供給するアルゴンガスの流量を減少させる。
パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123f,123p,123q,123nの開状態と、バルブ123rの閉状態とを維持する。
【0144】
また、ベント部122はON、つまり、ベント部122においては、バルブ122rを閉状態とし、バルブ122vを開状態とする。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
【0145】
減圧パージ工程S13は、パージが完了するとともに、真空チャンバ(チャンバ)102が減圧されて、Hプラズマ改質工程S23に対応する低圧状態に到達した時刻t23に終了可能である。
【0146】
次いで、図1に示す第2工程S20におけるHプラズマ改質工程(第2改質工程)S23においては、図5に示すように、減圧パージ工程S22の終了した時刻t23から、パージガス等供給手段123から、マスフローコントローラ123gによって流量制御しながら、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102へのHガスの供給を維持する。同時に、パージガス等供給手段123においては、マスフローコントローラ123dによって流量制御しながら、アルゴンガスの供給を維持するとともに、真空チャンバ(チャンバ)102に供給するアルゴンガスの流量を減少させて、低圧状態である改質圧力を維持する。
この際、パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123f,123p,123q,123nの開状態と、バルブ123sの閉状態とを維持する。
【0147】
また、Hプラズマ改質工程S23においては、パージガス等供給手段123のバルブ123f,123qを開状態とする。これによって、アルゴンガス、Hガスの供給量を制御しながら、これらを接続配管123mおよびガス導入口104cを介して真空チャンバ(チャンバ)102へと供給する。
プラズマ改質工程S23においては、ベント部122がON、つまり、ベント部122においては、バルブ122rの閉状態と、バルブ122vの開状態とを維持する。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。
また、RFなどの高周波電源147は、ON、つまり、プラズマを形成する。
【0148】
時刻t23からのHプラズマ改質工程S23においては、図5に示すように、減圧パージ工程S22の終了した時刻t23から、カソード電極として構成可能な電極フランジ104およびシャワープレート105に、マッチングボックスMBを介して接続されたRF電源(高周波電源)147からプラズマ電力を印加して、プラズマを発生させて、基板Sに成膜されたCo膜をプラズマ処理する。
【0149】
これにより、時刻t23から処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102において、Hガスから形成されたプラズマと基板Sとの反応によって、時刻t21からの第2ガス供給工程S21で、CVDステップとして形成されたコバルト膜の改質がおこなわれる。
ここで、時刻t23からのプラズマ改質工程S23においては、プラズマによりCo膜中の炭素や酸素などの不純物を除去するという処理がおこなわれていると考えられる。
【0150】
次いで、図1に示す第2工程S20における昇圧パージ工程S24においては、図5に示すように、Hプラズマ改質工程S23の終了した時刻t24から、カソード電極として構成可能な電極フランジ104およびシャワープレート105へのプラズマ電力印加を停止して、プラズマ発生を停止させる。
【0151】
図1に示す第2工程S20においては、次工程である後処理工程S02へと移る前に、時刻t24からの昇圧パージ工程S24において、マスフローコントローラ123dによって流量制御しながら、パージガス(アルゴンガス)の処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102への供給を維持する。同時に、時刻t24から、マスフローコントローラ123gによって流量制御しながら、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102への水素ガスの供給を維持する。
これにより、処理室101の真空チャンバ(チャンバ)102におけるパージ処理をおこなう。
【0152】
同時に、昇圧パージ工程S24においては、次の後処理工程S02に向けて、時刻t24から、真空チャンバ(チャンバ)102の昇圧をおこなう。具体的には、第1ガス供給手段121においては、少なくともバルブ123sを閉状態とする。同時に、パージガス等供給手段123においては、供給するアルゴンガス、水素ガスの流量を増大させる。
【0153】
この際、パージガス等供給手段123においては、バルブ123c,123f,123p,123q,123nの開状態と、123rの閉状態とを維持する。
同時に、排気管を介して接続された真空ポンプ(排気手段)148によって、真空チャンバ102内を排気する。これらにより、チャンバ102内は、高圧力である成膜圧力まで昇圧される。
また、RFなどの高周波電源147は、OFF、つまり、プラズマは形成されていない。
【0154】
図1に示す後処理工程S02においては、加熱処理、PVD-Cu成膜、CVD-Cu成膜、といった工程を含むこともできる。
特に、時刻t25より後に、リフロー工程として、埋め込み用の熱処理をおこなうことが好ましい。
この場合のリフロー工程は、基板Sに形成されたトレンチ等の形状と、コバルト膜の膜厚、あるいは、Cu膜の膜厚等によって、加熱温度、加熱時間、加熱雰囲気等の処理条件を設定することができる。
【0155】
本実施形態における第1工程S10においては、第1ガスに暴露されることによって、基板S表面において、面内均一にCoの核生成がおこなわれる。
このとき、Co膜の膜厚が1nm以下であるときには、Coが核成長し、基板S表面を移動して、部分的に連続膜を形成することになる。
【0156】
ここで、ALDによるCo核生成およびCo膜形成は、成膜レートが低いため、所定の膜厚を有するCo膜を形成するには、第1工程S10において、ALDサイクルを繰り返すことにより、第1ガスに暴露されることによって、基板S表面に形成されたCo核によって、連続したCo膜の形成がおこなわれる。
【0157】
図6は、本実施形態における成膜方法における第1工程を説明するためのALDサイクル数と膜厚との関係を示すグラフである。
本実施形態における第1工程S10においては、上述した成膜条件で、2サイクル以上、好ましくは、3サイクル以上のALDサイクルとすることが好ましい。これは、図6に示すように、Taバリア膜上において、ALDコバルト膜は、0.5nm程度形成されていることが好ましい。
【0158】
また、本実施形態における第1工程S10においては、ALDサイクルが少ないと、コバルト膜が島状になって、Taバリア膜にコバルト膜で覆われていない領域ができてしまう可能性があるため好ましくない。
なお、本実施形態における第1工程S10においては、上述した成膜条件でない場合、図6に示す関係性に基づいて、必要な膜厚となるサイクル数を設定することが好ましい。
つまり、上述した成膜条件においては、図6に示すように、
ALDコバルト膜厚=0.3268×ALDサイクル数-0.6969
の関係を有することがわかる。
【0159】
また、本実施形態における第1工程S10においては、Hプラズマ改質工程S14として、成膜圧力よりも低い改質圧力として、ALDによるコバルト膜を改質する。
ここで、時刻t04からのプラズマ改質工程S14においては、プラズマによりCo膜中の炭素や酸素などの不純物を除去するという処理がおこなわれていると考えられる。
このように、プラズマを発生させる際に、地圧状態とすることで、基板Sへのイオン等の到達度が低下してしまうことを防止できる。
これにより、ボイドが発生せずに、埋め込み率の高いコバルト膜の形成を可能とすることができる。
【0160】
ここで、第1工程S10においては、基板S上において、Co膜は、1nm以下、例えば0.80±0.1nm程度の膜厚で、容易に連続膜として形成することが可能となる。このとき、ほぼ単層成長(ALD膜成長)に近い成長モードになると考えられる。
【0161】
さらに、第1工程S10においては、ALDサイクルを繰り返すことにより、Co核生成は、面内均一、つまり、局所的なCo核生成を伴わずにおこなうことができるため、基板S上においてCo膜の膜厚が1nm以下で、完全に連続膜になっていなかったとしても、Co核の密度は十分に大きいために、第2工程S20における第2ガスによる処理によって、Co連続膜を形成しやすくなると考えられる。
【0162】
一般的には連続膜上に形成されるCo膜は単層成長するか、密度の高いCo核成長するので、第2ガスによる形成であっても連続膜になりやすいと考えられる。
したがって、第1ガスに基板S表面を暴露する程度の第1工程S10による処理をおこなって、そのままin-situとして、第2ガスによる第2工程S20をおこなうことで、きわめて高いレートでのCo膜を成膜することが可能となる。
【0163】
次いで、第2工程S20においては、第2ガスに暴露されることによって、第1工程S10において基板S表面に形成されたALDによるコバルト膜によって、トレンチ等の凹部を充填するに充分な連続したコバルト膜の形成がおこなわれる。
【0164】
このとき、第2工程S20においては、第2ガスによってコバルト膜が形成されるため、第1工程S10よりも高い成膜レートとしてコバルト膜の形成がおこなわれる。しかも、面内均一なCo核生成により、表面モフォロジーのよいCo膜の形成がおこなわれる。
本実施形態における成膜方法では、第1工程S10と第2工程S20との成膜で形成されたコバルト膜の合計膜厚が、2.0nmよりも小さくなるように設定される。
【0165】
また、本実施形態における第2工程S20においては、Hプラズマ改質工程S23として、成膜圧力よりも低い改質圧力として、ALDによるコバルト膜を改質する。
ここで、時刻t23からのプラズマ改質工程S23においては、プラズマによりCo膜中の炭素や酸素などの不純物を除去するという処理がおこなわれていると考えられる。
これにより、ボイドが発生せずに、埋め込み率の高いコバルト膜の形成を可能とすることができる。
【0166】
本実施形態における成膜方法においては、第1ガスによる第1工程S10の後に、第2ガスによる第2工程S20をおこなうことにより、表面モフォロジーが好適で低抵抗であるCo膜を高い成膜レートで成膜可能とすることができ、同時に、カバレッジ性よくCo膜を形成することができる。
さらに、上層膜にCu膜を成膜した場合は、Cuとの密着性が向上する。また、微細なトレンチやホールへCo膜を充填して配線形成する場合は、隙間(ボイド)のないCo配線膜を高埋め込み率で形成できるという効果を奏することができる。
【0167】
さらに、本実施形態における成膜方法においては、次のようなCo膜の製造に適用することができる。
例えば、Co膜の用途として、トレンチやホールに直接配線としてのCo膜を形成する(埋め込み)、さらに、このCo膜による配線を多段に形成する、選択的に、配線等とされる金属膜上にCo膜をキャップ層として形成する(Selective Co Cap)、濡れ層(Wetting layer;Co liner)として薄い膜を形成することができる。
【0168】
本実施形態における成膜方法においては、一例として、SiCN等とされるキャップ層CAPを有する誘電体基板(基板)Sが複数積層され、これらの層間に形成されたホールHに充填された状態で形成されて、上下層を導通する貫通電極としてCo膜が形成されている構成に適用可能である。
【0169】
本実施形態における成膜方法においては、一例として、ホールHの内側面に、TaNからなるバリア層と、Co膜からなるウエット層が形成され、その内側がEP(Electro plating)-Cu膜によって充填されてCu配線とされている。さらに、Cu配線の上側には、Co膜からなるキャップ層が形成されている構成に適用可能である。
【0170】
本実施形態における成膜方法においては、一例として、アスペクト比(AR)が10程度のコンタクトを有する構成に適用可能である。
【実施例0171】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0172】
ここで、本発明におけるコバルト膜の成膜方法における埋め込み試験の具体例について検証した。
実施例として、図3に示す成膜装置を用いて、図2に示す連続トレンチの形成されたシリコン基板に、第1工程S10および第2工程S20によりCo膜の成膜をおこなった。なお、第1工程S10におけるALDサイクルは0回から5回まで変化させた。
【0173】
また、第1ガスにおける原料ガスとしてはCCTBA、第2ガスにおける原料ガスとしては、CCTBAおよびHガス、キャリアガスとしてアルゴンガス、改質ガスとしてアルゴンガスおよびHガスを用いた。
さらに、成膜圧力としては2000Pa、改質圧力としては700Paになるように設定した。
【0174】
基板Sの温度は、基板Sが、第1ガス供給工程S12とほぼ等しい160~240℃の範囲となるように設定する。
なお、コバルト膜の下地膜として、Ta膜を形成するとともに、コバルト膜にCu膜を積層し、成膜後のIn-situの熱処理でCuをトレンチ内に埋め込んだ。
【0175】
ここで、埋め込み試験における諸元を示す。
基板;Si
基板寸法;φ300mm
下地層;Ta(TaN);5~7nm
コバルト膜合計膜厚;2.0nm以下
Cu膜厚;20nm
【0176】
トレンチ形状における開口幅;20nm以下
トレンチ形状における開口幅と深さとのアスペクト比;4程度
【0177】
膜構成:Cu-PVD:20nm/Co-CVD:Xnm/Ta(N)-PVD:5nm/sub.(SiN or SiOなど絶縁膜)
なお、基板(sub)に形成されたトレンチの寸法は、図2に示している。
【0178】
ここで、コバルト膜形成におけるそれぞれの処理時間としては、図7に示す条件とした。
図7は、本実例における各stepの処理時間、処理条件等を示すものである。
なお、図7において、step3からstep7をALDサイクルとして繰り返す。
また、ArとHとの流量制御により、チャンバ圧力を700~2000Paに調整している。
【0179】
まず、熱処理によるコバルト膜と埋め込み状態との関係を調べた。
膜構成;Cu;20nm/Co;2nm/Ta;5nm
として、成膜後(As Depo)のSEM断面写真を図8に、および、窒素雰囲気での300℃、5minの熱処理後のSEM断面写真を図9に示す。
図8図9に示す結果から、埋め込みができていることがわかる。
【0180】
次に、コバルト膜の膜厚と埋め込み状態との関係を調べた。
膜構成;Cu;20nm/Co;1.0nm/Ta;5nm
として、同条件の熱処理後におけるSEM断面写真を図10に示す。
【0181】
また、
膜構成;Cu;20nm/Co;0nm/Ta;7nm
として、同条件の熱処理後におけるSEM断面写真を図11に示す。
図9図10図11に示す結果から、コバルト膜が2.0nm以上であると埋め込みができているのに対し、コバルト膜が2.0nmを下回ると埋め込みができていないことがわかる。
【0182】
次に、ALDコバルト膜の膜厚と埋め込み状態およびボイドの発生状態との関係を調べた。なお、ALDコバルト膜の膜厚は、図7に示す条件におけるALDサイクル数によってコバルト膜の膜厚を推定した。
【0183】
ここで、ALD+CVDによる2step成膜として、ALDサイクル数をCVD成膜時間とを変化させてほぼ一定の膜厚であるCo膜;2.0nm以下となるように、成膜をおこなった。
【0184】
ここで、埋め込み試験における諸元を示す。
Co膜厚;約1.5nm(XRF換算)
Ta膜の成膜パワー;7kW
Ta膜厚;4nm(トレンチ側面で1.2nm~1.6nm)
成膜条件;原料ガス;CCTBA/purge/PE:H
purge=30s/20s/20s/20+10s
【0185】
まず、CVDのみ、すなわち、
ALD;0cycle+CVD;60sec
としたときの、熱処理後におけるSEM断面写真を図12に示す。
【0186】
次に、
ALD;2cycle+CVD;60sec
としたときの、熱処理後におけるSEM断面写真を図13に示す。
【0187】
次に、
ALD;3cycle+CVD;50sec
としたときの、熱処理後におけるSEM断面写真を図14に示す。
【0188】
次に、
ALD;4cycle+CVD;35sec
としたときの、熱処理後におけるSEM断面写真を図15に示す。
【0189】
次に、
ALD;6cycle+CVD;10sec
としたときの、熱処理後におけるSEM断面写真を図16に示す。
【0190】
さらに、ALDのみ
ALD;10cycle+CVD;0sec
とした。
【0191】
図12図16に示す結果、および、写真はないが、ALDのみによる成膜の結果から、ALDのサイクル数が、3~4であるとボイド無しに埋め込みができているのに対し、ALDのサイクル数が、2以下、および、5以上であると、ボイドが発生するか埋め込みができていないことがわかる。
【0192】
次に、
ALD;3cycle+CVD;50sec
としたときの、トレンチ側面(側壁)におけるコバルト膜の膜厚を測定した。
ここで、基板の中央位置におけるTEM断面写真を図17に示す。
【0193】
また、このときの、対応するトレンチ側壁に形成された膜厚をEELS(electron energy-loss spectroscopy)のスペクトルから近似したTa,Co,Cuに対する結果を図18に示す。
なお、図18におけるEELSにおけるラインスキャン測定位置を図17に示す。
【0194】
同様に、
ここで、基板の縁部位置におけるTEM断面写真を図19に示す。
【0195】
また、このときの、対応するトレンチ側壁に形成された膜厚をEELS(electron energy-loss spectroscopy)のスペクトルから近似したTa,Co,Cuに対する結果を図20に示す。
なお、図20におけるEELSにおけるラインスキャン測定位置を図19に示す。
【0196】
図18に示す結果から、左から右に見て、Taのピークが出てきて、そのTaが下がって、次に、Coのピークが徐々に盛り上がってきて、Coのピークが下がって来ると、次に、Cuのピークが出てくることが読み取れる。
ここで、ピークの谷と谷とで示される膜厚を測ると、Co膜の膜厚が2nmになってることがわかる。
【0197】
図20に示す結果から、Ta膜がトレンチの右側で多く付いたとき、つまり、トレンチの右側でTa膜厚が大きくなったときは、反対側、つまりトレンチの左側にはTa膜が付き難くなる、という非対称性があることがわかる。これは、スパッタ特有の現象であるが、ピークの谷から谷という定義に当てはめると、少々厚くなってしまうことがわかる。
【0198】
図17図20に示す結果から、基板の中央でも縁部でも、Co膜が2nm以下の膜厚で、Void無くCu埋め込みが充分にできていることが確認された。
【0199】
さらに、上記のTEM断面において、埋め込みの検証を広範囲においておこなった。
図17に示すTEM写真の範囲を広くした結果を図21図26に示す。
図19に示すTEM写真の範囲を広くした結果を図27図32に示す。
【0200】
図21図32に示す結果から、基板の中央でも縁部でも、Void無くCu埋め込みが充分にできている部分では、Co膜が2nm以下の膜厚であることが確認された。
【0201】
ここで、ALDコバルト膜、および、CVDコバルト膜に対するラフネスの評価をおこなった。
ALDによるコバルト膜を下地として形成しない場合、CVDコバルト膜は、膜厚1.5nmとした際に、最大凹凸Sz;3.9nm、ラフネス平均0.28nmであった。
表面状態を図33に示す。
ALDコバルト膜は、サイクル数;6で、膜厚2.6nmとした場合、最大凹凸Sz;2.4nm、ラフネス平均0.21nmであった。
表面状態を図34に示す。
【0202】
図33図34に示す結果から、ALDによる膜は、その表面が適度なラフネスを有しており、これにより、ALDコバルト膜上にCVDコバルト膜を形成した際には、より埋め込み率が向上すると考えられる。
【0203】
さらに、Co膜が2nm以下の場合におけるシート抵抗値Rsの測定結果を図35に示す。
図35に示す結果から、コバルト膜の膜厚が2.0nm以下である時に、デバイスからの要請となる低抵抗膜として形成されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0204】
S…基板
S1…Taバリア膜(Ta膜)
S2…Coライナー膜(コバルト膜)
100…成膜装置
101…処理室
101a…成膜空間
101b…ガス導入空間(空間)
102…真空チャンバ(チャンバ)
102a…底部
102m…温度設定手段
103…絶縁フランジ
104…電極フランジ
104a…上壁
104b…周壁
104c…ガス導入口
105…シャワープレート
105a…ガス流路
104a…上壁
104b…周壁
141…支持部
141m…温度設定手段
145…支柱
147…RF電源(高周波電源)
MB…マッチングボックス
148…真空ポンプ(排気手段)
110…固定シャフト(支持シャフト)
120…ガス供給手段
121…第1ガス供給手段
121a…第1ガス貯留部
121b…アルゴンガス供給部
121c,121f,121g,121h,121j,121k…バルブ
121d…マスフローコントローラ
121e…接続配管
121m…温度設定手段
122r,122v…バルブ
122k…接続配管
123c,123f,123j,123n,123p,123q,123r,123s…バルブ
122d,123g,123k…マスフローコントローラ
123e…水素ガス供給部
123m…接続配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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