(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050218
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】有機電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20220323BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220323BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220323BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20220323BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/02
H05B33/04
H05B33/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156692
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】赤對 真人
(72)【発明者】
【氏名】落合 鋼志郎
(72)【発明者】
【氏名】琴 同基
(72)【発明者】
【氏名】朴 濬河
(72)【発明者】
【氏名】金 炳仁
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD12
3K107DD17
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD38
3K107EE21
3K107EE42
3K107EE45
3K107EE46
3K107EE49
3K107EE55
3K107GG28
3K107GG42
(57)【要約】
【課題】生産性を向上可能な有機電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一形態に係る有機電子デバイスの製造方法は、第1基板と、第1基板に設けられた剥離層と、剥離層上に設けられており前記剥離層を保護する第1保護層とを有する下地基板上に、第1電極層、有機電子素子層及び第2電極層を有する素子本体を形成することによって、下地基板及び素子本体を有する中間基板を形成する工程と、素子本体を形成した後、中間基板の素子本体側に可撓性部材を貼合する工程と、可撓性部材を貼合した後、剥離層から第1基板を剥離する工程と、第1基板が剥離された剥離層に第2基板を貼合する工程と、を備え、下地基板の厚さ方向からみて、剥離層の大きさは第1基板より小さく、第1保護層は、剥離層を被覆している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板上に設けられた剥離層と、剥離層上に設けられており前記剥離層を保護する第1保護層とを有する下地基板上に、第1電極層、有機電子素子層及び第2電極層を有する素子本体を形成することによって、前記下地基板及び前記素子本体を有する中間基板を形成する工程と、
前記素子本体を形成した後、前記中間基板の前記素子本体側に可撓性部材を貼合する工程と、
前記可撓性部材を貼合した後、前記剥離層から前記第1基板を剥離する工程と、
前記第1基板が剥離された前記剥離層に第2基板を貼合する工程と、
を備え、
前記下地基板の厚さ方向からみて、前記剥離層の大きさは前記第1基板より小さく、
前記第1保護層は、前記剥離層を被覆しており、
前記第2基板は、前記第1基板より可撓性を有する、
有機電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記中間基板を形成する工程より後で且つ前記可撓性部材を貼合する工程の前に、前記素子本体側から前記剥離層まで前記下地基板に切込みを形成する工程を更に有し、
前記切込みを形成する工程では、前記厚さ方向からみて、前記素子本体より外側であって、前記剥離層の外周面より内側の位置で前記下地基板に前記切込みを形成する、
請求項1に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第2基板を貼合する工程の後に、前記可撓性部材を前記中間基板から剥離する工程と、
前記素子本体に、前記有機電子素子層を封止する封止部材を貼合する工程と、
を更に有し、
前記可撓性部材は、前記中間基板から剥離可能なフィルムである、
請求項1又は2に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記素子本体上に前記素子本体を保護する第2保護層を形成する工程を更に有し、
前記可撓性部材を貼合する工程では、前記第2保護層上に前記可撓性部材を貼合する、
請求項3に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記可撓性部材は、前記有機電子素子層を封止する封止部材である、
請求項1又は2に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記中間基板を形成する工程の後であり且つ可撓性部材を貼合する工程の前に、前記第1電極層及び前記第2電極層に電気的に接続されるように、前記中間基板に少なくとも2つの導電フィルムを貼合する工程を更に有する、
請求項5に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記封止部材には、前記素子本体が有する前記第1電極層及び前記第2電極層へ電力を供給するための複数のスルーホールが形成されている、
請求項5に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記複数のスルーホール内に、前記第1電極層及び前記第2電極層と電気的に接続される端子を形成する、
請求項7に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記中間基板を形成する工程では、前記下地基板上に、水蒸気をバリアする第1バリア層を介して前記素子本体を形成する、
請求項1~8の何れか一項に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第1基板は、リジッド基板であり、
前記第2基板は、可撓性フィルムを有する、
請求項1~9の何れか一項に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記有機電子素子層は、光を発する発光層を有し、
前記第2基板は、前記可撓性フィルム上に、光取出し層を有する、
請求項10に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記可撓性フィルムは樹脂フィルムであり、
前記第2基板は、前記樹脂フィルム上に、水蒸気をバリアする第2バリア層を有する、
請求項10または11に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記封止部材は、接着剤層と、封止層と、樹脂層とを有し、
前記接着剤層、前記封止層及び前記樹脂層は、前記接着剤層、前記封止層及び前記樹脂層の順に積層されている、
請求項3又は5に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記第1基板は、ガラス基板である、
請求項1~13の何れか一項に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記第1基板は、シート状の基板であり、
前記可撓性部材は、帯状の部材であり、
前記第2基板は、帯状の基板であり、
前記中間基板を形成する工程を、シートツーシート方式によって実施し、
前記可撓性部材を貼合する工程及び前記第1基板を剥離する工程を、シートツーロール方式によって実施し、
前記第2基板を貼合する工程を、ロールツーロール方式で実施する、
請求項1~14の何れか一項に記載の有機電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスとして可撓性を有する有機電子デバイスが知られている。このような有機電子デバイスの製造方法として特許文献1の技術が知られている。特許文献1に記載の技術では、石英ガラスといった転写元基板上に剥離層を形成した後、剥離層上に有機EL素子(電気素子)などを形成する。その有機EL素子上にバリア層を形成した後、バリア層上に、基板(例えばプラスチック基板)を接合する。その後、剥離層から転写元基板を剥離する。これによって、上記有機EL素子などが基板に転写される。その結果、基板上に有機EL素子が設けられた有機ELデバイス(有機電子デバイス)が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、剥離層は、転写元基板の全面に形成されている。この場合、剥離層の外周面が露出する。そのため、石英ガラスといったリジッドな転写元基板上に剥離層を形成した後の工程を行っている際に、露出している剥離層の外周面の位置から意図しない剥離が生じる場合がある。このように、意図しない剥離が生じると、有機電子デバイスの生産性が低下する。
【0005】
したがって、本発明は、生産性を向上可能な有機電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法は、第1基板と、上記第1基板上に設けられた剥離層と、剥離層上に設けられており上記剥離層を保護する第1保護層とを有する下地基板上に、第1電極層、有機電子素子層及び第2電極層を有する素子本体を形成することによって、上記下地基板及び上記素子本体を有する中間基板を形成する工程と、上記素子本体を形成した後、上記中間基板の上記素子本体側に可撓性部材を貼合する工程と、 上記可撓性部材を貼合した後、上記剥離層から上記第1基板を剥離する工程と、上記第1基板が剥離された上記剥離層に第2基板を貼合する工程と、を備え、上記下地基板の厚さ方向からみて、上記剥離層の大きさは上記第1基板より小さく、上記第1保護層は、上記剥離層を被覆しており、上記第2基板は、上記第1基板より可撓性を有する。
【0007】
上記有機電子デバイスの製造方法では、第1基板上に素子本体を形成した後、第1基板を、第1基板より可撓性を有する第2基板に置き換える。そのため、第1基板の場合より、可撓性を有する有機電子デバイスを製造できる。上記有機電子デバイスの製造方法で使用する下地基板において、下地基板の厚さ方向からみて、上記剥離層の大きさは上記第1基板より小さく、上記第1保護層は、上記剥離層を被覆している。そのため、剥離層の外周面は第1保護層で覆われ、第1保護層と第1基板とが剥離層の周縁において接している。従って、例えば、中間基板を形成する際に、第1基板と剥離層との剥離が生じにくい。このように、意図しない第1基板と剥離層との剥離が抑制されているので、有機電子デバイスの生産性を向上できる。
【0008】
一実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法は、上記中間基板を形成する工程より後で且つ上記可撓性部材を貼合する工程の前に、上記素子本体側から上記剥離層まで上記下地基板に切込みを形成する工程を更に有し、上記切込みを形成する工程では、上記厚さ方向からみて、上記素子本体より外側であって、上記剥離層の外周面より内側の位置で上記下地基板に上記切込みを形成してもよい。
【0009】
上記のように、切込みを形成することによって、第1保護層と第1基板とが剥離層の周縁において接する部分が、上記剥離層のうち前記素子本体が配置される部分から上記剥離する工程において切り離された状態となり、第1基板を剥離層から剥離する際に、剥離し易い。
【0010】
一実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法は、上記第2基板を貼合する工程の後に、上記可撓性部材を上記中間基板から剥離する工程と、上記素子本体に、上記有機電子素子層を封止する封止部材を貼合する工程と、を更に有し、上記可撓性部材は、上記中間基板から剥離可能なフィルムであってもよい。
【0011】
一実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法は、上記素子本体上に上記素子本体を保護する第2保護層を形成する工程を更に有し、上記可撓性部材を貼合する工程では、上記第2保護層上に上記可撓性部材を貼合してもよい。この場合、第2保護層によって素子本体が保護されるので、上記可撓性部材を剥離する際、素子本体の損傷を防止できる。
【0012】
上記可撓性部材は、上記有機電子素子層を封止する封止部材であってもよい。
【0013】
一実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法は、上記中間基板を形成する工程の後であり且つ可撓性部材を貼合する工程の前に、上記第1電極層及び上記第2電極層に電気的に接続されるように、上記中間基板に少なくとも2つの導電フィルムを貼合する工程を更に有してもよい。
【0014】
この場合、導電フィルムを、第1電極層及び上記第2電極層に電力を供給する端子として使用可能である。
【0015】
上記封止部材には、上記素子本体が有する上記第1電極層及び上記第2電極層へ電力を供給するための複数のスルーホールが形成されていてもよい。
【0016】
この場合、上記複数のスルーホールを介して第1電極層及び上記第2電極層に電力を供給できる。
【0017】
上記複数のスルーホール内に、上記第1電極層及び上記第2電極層と電気的に接続される端子を形成してもよい。この端子を介して、第1電極層及び上記第2電極層に電力を供給できる。
【0018】
上記中間基板を形成する工程では、上記下地基板上に、水蒸気をバリアする第1バリア層を介して上記素子本体を形成してもよい。この場合、製造された有機電子デバイスでは、第2基板と素子本体の間に上記第1バリア層が存在する。そのため、例えば、第2基板からの水蒸気が素子本体に達することを防止できる。
【0019】
上記第1基板は、リジッド基板であり、上記第2基板は、可撓性フィルムを有してもよい。
【0020】
上記可撓性フィルムは樹脂フィルムであり、上記第2基板は、上記樹脂フィルム上に、水蒸気をバリアする第2バリア層を有してもよい。この場合、第2基板からの水蒸気が素子本体に達することを一層防止できる。
【0021】
上記有機電子素子層は、光を発する発光層を有し、上記第2基板は、上記可撓性フィルム上に、光取出し層を有してもよい。これにより、発光層からの光を所望の状態で取り出し得る。
【0022】
上記封止部材は、接着剤層と、封止層と、樹脂層とを有し、上記接着剤層、上記封止層及び上記樹脂層は、上記接着剤層、上記封止層及び上記樹脂層の順に積層されていてもよい。
【0023】
上記第1基板は、ガラス基板でもよい。
【0024】
上記第1基板は、シート状の基板であり、上記可撓性部材は、帯状の部材であり、上記第2基板は、帯状の基板であり、上記中間基板を形成する工程を、シートツーシート方式によって実施し、上記可撓性部材を貼合する工程及び上記第1基板を剥離する工程を、シートツーロール方式によって実施し、上記第2基板を貼合する工程を、ロールツーロール方式で実施してもよい。これにより、有機電子デバイスを効率的に生産できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、生産性を向上可能な有機電子デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法で製造された有機ELデバイス(有機電子デバイス)の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した有機ELデバイスの製造方法の一例のフローチャートである。
【
図3】
図3は、中間基板形成工程を説明する図面である。
【
図4】
図4は、中間基板形成工程において、
図3に示した工程の後の工程を説明するための図面である。
【
図6】
図6は、第2保護層形成工程を説明するための図面である。
【
図7】
図7は、切込み形成工程、転写フィルム貼合工程及び仮基板剥離工程を説明するための図面である。
【
図8】
図8は、可撓性フィルム貼合工程を説明するための図面である。
【
図9】
図9は、転写フィルム剥離工程を説明するための図面である。
【
図10】
図10は、封止部材貼合工程S08を説明するための図面である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法で製造された有機ELデバイス(有機電子デバイス)の模式図である。
【
図12】
図12は、
図11に示した有機ELデバイスの製造方法の一例のフローチャートである。
【
図13】
図13は、導電フィルム貼合工程を説明するための図面である。
【
図14】
図14は、導電フィルムが貼合された中間基板の平面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態における封止部材貼合工程を説明するための図面である。
【
図16】
図16は、封止部材が貼合された中間基板の平面図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態における仮基板剥離工程を説明するための図面である。
【
図18】
図18は、第2実施形態における可撓性フィルム貼合工程を説明するための図面である。
【
図19】第3実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法で製造された有機ELデバイスの模式図である。
【
図20】
図20は、
図19に示した有機ELデバイスの製造方法の一例のフローチャートである。
【
図21】
図21は、第3実施形態における封止部材貼合工程を説明するための図面である。
【
図22】
図22は、第3実施形態における仮基板剥離工程を説明するための図面である。
【
図23】
図23は、第3実施形態における可撓性フィルム貼合工程を説明するための図面である。
【
図24】
図24は、端子形成工程を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法の一例によって製造される有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイスの模式図である。有機ELデバイス1Aは、例えば照明に使用される有機EL照明パネルである。有機ELデバイス1Aは、ボトムエミッション型のデバイスでもよいし、トップエミッション型のデバイスでもよい。以下では、断らない限り、ボトムエミッション型の有機ELデバイス1Aを説明する。
【0029】
図1に示した有機ELデバイス(有機電子デバイス)1Aは、支持基板10と、有機EL素子20Aとを備える。
【0030】
[支持基板]
支持基板10は、有機EL素子20Aを支持する部材である。支持基板10の平面視形状(厚さ方向からみた形状)は、例えば、矩形又は正方形である。支持基板10は、可撓性を有する。
【0031】
本実施形態において、部材(基板、フィルム等)が可撓性を有するとは、その部材(以下、「着目部材」と称す)に所定の力を加えても着目部材が剪断したり破断したりすることがなく、着目部材を撓めることが可能なことを意味する。
【0032】
支持基板10は、可撓性フィルム(第2基板)11と、接着剤層12と、剥離層13と、第1保護層14と、バリア層(第1バリア層)15とを有する。
【0033】
[可撓性フィルム]
可撓性フィルム11は、有機EL素子20Aが出力する光(波長400nm~800nmの可視光を含む)に対して透光性を有する。可撓性フィルム11の厚さの例は、30μm~700μmである。
【0034】
可撓性フィルム11は、樹脂フィルムであり、例えばプラスチックフィルム又は高分子フィルムである。可撓性フィルム11の材料としては、例えばポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂が挙げられる。または可撓性フィルム11は可撓性を有する薄膜ガラスであってもよい。
【0035】
可撓性フィルム11が樹脂フィルムの場合には、例えば、水蒸気をバリアするバリア機能があってもよい。また、可撓性フィルム11には有機EL素子20Aからの光を取り出す光取出し機能が付与されていてもよい。光取出し機能の例は、光拡散機能、光集光機能、光平行化機能などを含む。
【0036】
[接着剤層]
接着剤層12は、可撓性フィルム11を剥離層13に貼合するための層である。接着剤層12の厚さの例は、好ましくは1μm~100μm、より好ましくは5μm~60μm、さらに好ましくは10μm~30μmである。接着剤層12は、可撓性フィルム11の場合と同様に、有機ELデバイス1Aが出力する光に対して透光性を有するとともに、可撓性フィルム11と剥離層13とを接合できれば、限定されない。
【0037】
接着剤層12は、接着剤によって形成されている。本明細書において、接着剤は、粘着剤の概念を含む。接着剤の例は、例えば、光硬化性若しくは熱硬化性のアクリレート樹脂、光硬化性若しくは熱硬化性のエポキシ樹脂、又は、光硬化性若しくは熱硬化性のポリイミド樹脂から形成される。その他一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリブタジエン(PB)フィルム等の熱融着性フィルムも、接着剤層12として使用できる。酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、アクリル系、ポリエチレン系、エポキシ系、セルロース系、シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂、スチレン-イソブチレン変性樹脂等の熱可塑性樹脂も、接着剤層12の接着剤の材料に使用できる。
【0038】
[剥離層]
剥離層13は、接着剤層12上に設けられている。剥離層13の厚さは、例えば10nm~1000nm、好ましくは50nm~500nmである。剥離層13の厚さが10nm以上である場合、剥離層13が均一に形成され厚さが均一な有機ELデバイス1Aを製造し易く、また、剥離層13の剥離強度が局所的に高くなりくいことから剥離層13の破断を防止できたり、剥離層13を後述する仮基板31から剥離した後のカール制御が容易である。また、剥離層13の厚さが1000nm以下であることによって、剥離強度がたとば1N/25mm以下である剥離層13を実現し易く、また、剥離層13の柔軟性を確保し易い。剥離層13の材料としては有機ポリマーが挙げられ、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリアミド酸、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリノルボルネン、フェニルマレイミド共重合体、ポリアゾベンゼン、ポリフェニレンフタルアミド、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、桂皮酸塩ポリマー、クマリンポリマー、フタルイミジンポリマー、カルコンポリマー、芳香族アセチレンポリマー等が挙げられる。
【0039】
剥離層13は、仮基板31から剥離する際の剥離強度が1N/25mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1N/25mm以下である。すなわち、剥離層13は仮基板31から剥離する際に加えられる物理的な力を1N/25mm以内、特に0.1N/25mm以内に維持できる材料で形成されていることが好ましい。剥離層13の剥離強度が1N/25mm以下である場合、剥離層13を仮基板31からきれいに剥離し易い。また、剥離層13の剥離強度が0.1N/25mm以下であると仮基板31から剥離した後にカールが発生することを抑制することができる。カールは有機ELデバイス1Aの機能そのものには影響しないが、剥離した後の接着や切断の作業効率を悪化させてしまうためカールの発生は最小限に抑えることが好ましい。
【0040】
剥離層13は、好ましくは仮基板31との表面張力差が10mN/m以上の層である。剥離層13は、後述する構造体3Aの破損(その結果として、不良品の有機ELデバイスが製造されること)がなかったり、カールの発生がないように容易に剥離できることが好ましい。剥離層13が仮基板31との表面張力差が10mN/m以上を満足する場合には、剥離層13を仮基板31から容易に剥離することができ、上記構造体3Aの破損やクラックの発生を防止することができる。
【0041】
[第1保護層]
第1保護層14は、剥離層13上に設けられている。第1保護層14の厚さは、例えば0.1μm~10μmであり、好ましくは0.5μm~5μmである。第1保護層14としては、有機絶縁膜や無機絶縁膜が挙げられる。第1保護層14の材料としては、有機絶縁膜の場合は、例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、およびポリイミド樹脂などが挙げられる。また、無機絶縁膜の場合は例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
【0042】
[第1バリア層]
バリア層15は、第1保護層14上に設けられている。バリア層15は、水蒸気をバリアする機能を有する層である。バリア層15は、水蒸気以外のガス(例えば酸素)を更にバリアする機能を有してもよい。バリア層15の厚さの例は、10nm~10μmである。バリア層15は、例えばケイ素、酸素及び炭素から形成された膜、ケイ素、酸素、炭素及び窒素から形成された膜、又は、金属酸化物から形成された膜で有り得る。具体的には、バリア層15の材料の例は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム等である。
【0043】
[有機EL素子]
有機EL素子20Aは、陽極(第1電極層)21aと、引出し電極(補助電極)21bと、バンク22と、有機EL層(有機電子素子層)23と、陰極(第2電極層)24と、第2保護層25と、封止部材26とを有する。有機EL素子20において、陽極21a、引出し電極21b、バンク22、有機EL層23及び陰極24が、素子本体27を形成している。
【0044】
[陽極]
陽極21aは、支持基板10上に設けられている。陽極21aには、光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等を含む薄膜を用いることができる。陽極21aには、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。陽極21aは、導電体(例えば金属)から形成されたネットワーク構造を有してもよい。陽極21aの厚さは、光透過性、電気伝導度等を考慮して決定され得る。陽極21aの厚さは、通常、10nm~10μmであり、好ましくは20nm~1μmであり、さらに好ましくは50nm~500nmである。
【0045】
陽極21aの材料としては、例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、銅等が挙げられる。陽極21aの材料としては、ITO、IZO、又は酸化スズが好ましい。陽極21aは、例示した材料を含む薄膜として形成され得る。陽極21aの材料には、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物を用いてもよい。この場合、陽極21aは、透明導電膜として形成され得る。
【0046】
[引出し電極]
引出し電極21bは、支持基板10上に設けられている。引出し電極21bは、陽極21aと離間して配置されている。引出し電極21bは、陰極24と電気的に接続されている。引出し電極21bは陰極24に電力を供給するための電極である。本実施形態において、引出し電極21bの材料及び厚さは、陽極21aと同じである。
【0047】
[バンク]
バンク22は、陽極21a上に設けられている絶縁性を有する部材(絶縁部材)である。バンク22は、有機EL層23の形成領域を規定するための部材である。バンク22は有機物または無機物によって構成される。バンク22が有機物によって構成される場合、バンク22の材料として、たとえば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、およびポリイミド樹脂などの樹脂を挙げることができる。また、バンク22が無機物によって構成される場合、バンク22の材料として、たとえば、酸化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。バンク22は、陽極21aと引出し電極21bとの間にも配置されており、陽極21aと引出し電極21bの短絡を防止する機能も有する。
【0048】
[有機EL層]
有機EL層23は、陽極21a上に設けられている。有機EL層23は、バンク22によって規定されている領域に設けられている。有機EL層23は、発光層を含み、陽極21a及び陰極24に印加された電力に応じて、電荷の移動及び電荷の再結合などの有機EL素子20の発光に寄与する機能層である。
【0049】
発光層は、光(可視光を含む)を発する機能層である。発光層の厚さは、例えば1nm~1μmであり、好ましくは2nm~500nmであり、さらに好ましくは10nm~200nmである。
【0050】
発光層は、通常、主として蛍光及びりん光の少なくとも一方を発光する有機物、又は、その有機物とその有機物を補助するドーパント材料とから形成される。ドーパント材料は、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。発光層に含まれる有機物は、低分子化合物でもよいし、高分子化合物でもよい。
【0051】
主として蛍光及びりん光の少なくとも一方を発光する有機物としては、以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等が挙げられる。
【0052】
色素系材料としては、例えばシクロペンダミン若しくはその誘導体、テトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体、トリフェニルアミン若しくはその誘導体、オキサジアゾール若しくはその誘導体、ピラゾロキノリン若しくはその誘導体、ジスチリルベンゼン若しくはその誘導体、ジスチリルアリーレン若しくはその誘導体、ピロール若しくはその誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、オリゴチオフェン若しくはその誘導体、オキサジアゾールダイマー若しくはその誘導体、ピラゾリンダイマー若しくはその誘導体、キナクリドン若しくはその誘導体、クマリン若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0053】
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、又はAl、Zn、Be、Pt、Ir等を中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を配位子に有する金属錯体が挙げられる。金属錯体としては、例えばイリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体等が挙げられる。
【0054】
高分子系材料としては、例えばポリパラフェニレンビニレン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリパラフェニレン若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、ポリアセチレン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、上記色素材料及び金属錯体材料の少なくとも一方を高分子化した材料等が挙げられる。
【0055】
主として蛍光及びりん光の少なくとも一方を発光する有機物を補助するドーパント材料としては、例えばペリレン若しくはその誘導体、クマリン若しくはその誘導体、ルブレン若しくはその誘導体、キナクリドン若しくはその誘導体、スクアリウム若しくはその誘導体、ポルフィリン若しくはその誘導体、スチリル色素、テトラセン若しくはその誘導体、ピラゾロン若しくはその誘導体、デカシクレン若しくはその誘導体、フェノキサゾン若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0056】
有機EL層23は、発光層の他、種々の機能層を含んでもよい。陽極21aと発光層との間に配置される機能層の例は、正孔注入層及び正孔輸送層を含む。発光層と陰極24との間に配置される機能層の例は、電子輸送層及び電子注入層を含む。
【0057】
有機EL層23が有し得る層構成の例を以下に示す。陽極21a及び陰極24と各種機能層の配置関係を示すために、陽極及び陰極も括弧書きで記載している。
(a)(陽極)/正孔注入層/発光層/(陰極)
(b)(陽極)/正孔注入層/発光層/電子注入層/(陰極)
(c)(陽極)/正孔注入層(又は正孔輸送層)/発光層/電子輸送層/電子注入/(陰極)
(d)(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(陰極)
(e)(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/(陰極)
(f)(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)(g)(陽極)/発光層/電子輸送層(又は電子注入層)/(陰極)
(i)(陽極)/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
記号「/」は、記号「/」の両側の層同士が接合していることを意味している。
【0058】
正孔注入層は、陽極21aから発光層への正孔注入効率を向上させる機能を有する機能層である。正孔注入層は、無機層でもよいし、有機層でもよい。正孔注入層の材料は公知の材料が用いられる。
【0059】
正孔輸送層は、正孔注入層(又は正孔注入層がない場合には陽極21a)から正孔を受け取り、発光層まで正孔を輸送する機能を有する機能層である。正孔輸送層は有機層である。正孔輸送層の材料には公知の材料が用いられる。
【0060】
電子輸送層は、電子注入層(又は電子注入層がない場合には陰極24)から電子を受け取り、発光層まで電子を輸送する機能を有する機能層である。電子輸送層は有機層である。電子輸送層の材料には公知の材料が用いられ得る。
【0061】
電子注入層は、陰極24から発光層への電子注入効率を向上させる機能を有する機能層である。電子注入層は無機層でもよいし、有機層でもよい。電子注入層の材料は、公知の材料でよい。電子注入層は、陰極24の一部であってもよい。
【0062】
正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層の厚さは、例えば1nm~1μmであり、好ましくは2nm~500nmであり、さらに好ましくは5nm~200nmである。
【0063】
有機EL層23が有する発光層の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。上記層構成(a)~(i)のうちのいずれか1つにおいて、陽極21aと陰極24との間に配置された積層構造を[構造単位I]と称する。この場合、2つの発光層を有する有機EL層23の構成として、以下の(j)に示す層構成が挙げられる。2つの構造単位Iの層構成は互いに同じであっても、異なっていてもよい。
(j)(陽極層)/[構造単位I]/電荷発生層/[構造単位I]/(陰極層)
【0064】
電荷発生層は、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデンなどを含む薄膜が挙げられる。
【0065】
「[構造単位I]/電荷発生層」を[構造単位II]と称すると、3つ以上の発光層を有する有機EL層23の構成として、以下の(k)に示す層構成が挙げられる。
(k)(陽極層)/[構造単位II]x/[構造単位I]/(陰極層)
記号「x」は、2以上の整数を表し、「[構造単位II]x」は、[構造単位II]がx段積層された積層構造を表す。複数の構造単位IIの層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0066】
電荷発生層を設けずに、複数の発光層を直接的に積層させて有機EL層23を構成してもよい。
【0067】
[陰極]
陰極24は、有機EL層23上に設けられている。陰極24の一部は、引出し電極21b上に設けられている。これによって、陰極24と引出し電極21bが電気的に接続されている。陰極24の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、電気伝導度、耐久性等を考慮して設定される。陰極24の厚さは、通常、10nm~10μmであり、好ましくは20nm~1μmであり、さらに好ましくは50nm~500nmである。
【0068】
有機EL層23からの光(具体的には、発光層からの光)が陰極24で反射して陽極21a側に進むように、陰極24の材料は、有機EL層23が有する発光層からの光(特に可視光)に対して反射率の高い材料が好ましい。陰極24の材料としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表の第13族元素を有する金属等が挙げられる。陰極24として、導電性金属酸化物及び導電性有機物等を含む透明導電性電極を用いてもよい。陰極24は、複数の層を有してもよい。
【0069】
[第2保護層]
第2保護層25は、素子本体27上に設けられている。第2保護層25は、バンク22、有機EL層23及び陰極24を被覆している。第2保護層25は、例えば、パッシベーション膜である。第2保護層25は、有機EL層23を封止する機能を有し得る。第2保護層25は少なくとも無機膜を含む一層または有機膜/無機膜/有機膜、無機膜/有機膜/無機膜などと積層された多層膜からなる。無機膜の材料の例は、酸化ケイ素、窒化酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、酸化マグネシウム等を主原料とする無機材料である。有機膜は素子本体27と無機膜の応力を緩和し、あるいは、有機膜により素子本体27の上面の凹凸、パーティクルなどを埋め平滑化する効果がある。さらに、有機膜に保水機能があっても良い。有機膜の材料の例は、熱硬化性や光硬化性のエポキシ樹脂やアクリレート樹脂などである。
【0070】
[封止部材]
封止部材26は、第2保護層25上に設けられている。封止部材26は、有機EL層23を封止するための部材である。封止部材26は、素子本体27(特に、有機EL層23及び陰極24)を保護する機能も有する。封止部材26は、可撓性部材である。陽極21a及び引出し電極21bに電力を供給するために、陽極21a及び引出し電極21bの一部が、封止部材26から露出されている。
【0071】
本実施形態における封止部材26は、封止層26aと、接着剤層26bと、樹脂層26cとを有する。
【0072】
封止層26aは、水蒸気をバリアする機能を有する。封止層26aは水蒸気以外のガス(例えば酸素)をバリアする機能も有してもよい。封止層26aの厚さの例は、10μm~300μmである。封止層26aの例は、金属箔である。金属箔としては、バリア性の観点から、銅箔、アルミニウム箔又はステンレス箔が好ましい。封止層26aが金属箔である場合、金属箔の厚さの例は、10μm~50μmが好ましい。封止層26aは、バリア層15と同様のバリア層であってもよい。
【0073】
接着剤層26bは、封止層26aを第2保護層25に貼合するための層である。接着剤層26bの材料(接着剤)の例は、接着剤層12の場合と同様である。
【0074】
樹脂層26cは、封止層26a上に設けられている。樹脂層26cは、封止層26aからみて、接着剤層26bと反対側に設けられている。樹脂層26cは、封止層26aを保護する層である。樹脂層26cは、封止層26aを支持する層としても機能し得る。樹脂層26cの厚さの例は、10μm~100μmである。樹脂層26cの材料の例として、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリルニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0075】
次に、有機ELデバイス1Aの製造方法(第1実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法)の一例を説明する。
図2に示したように、有機ELデバイス1Aの製造方法は、中間基板形成工程S01、第2保護層形成工程S02、切込み形成工程S03、転写フィルム貼合工程S04、仮基板剥離工程S05、可撓性フィルム貼合工程S06、転写フィルム剥離工程S07、封止部材貼合工程S08及び個片化工程S09を有する。各工程を説明する。
【0076】
[中間基板形成工程]
図3~
図5を利用して中間基板形成工程S01を説明する。
図3~
図5は、中間基板形成工程S01を説明するための図面である。中間基板形成工程S01では、
図4の(b)及び
図5に示した中間基板2を形成する。
【0077】
まず、
図3の(a)に示した下地基板30を準備する。下地基板30は、仮基板(第1基板)31と、剥離層13と、第1保護層14とを有する。以下、説明の便宜のため、
図3の(a)における横方向をX方向とも称す。更に、仮基板31の厚さ方向(中間基板2の厚さ方向に相当)からみて、X方向と直交する方向をY方向(
図5参照)とも称す。
【0078】
仮基板31は、リジッド基板である。仮基板31は、可撓性フィルム11(
図1参照)より耐熱特性が優れ、有機ELデバイス製造のプロセス温度に耐え、高温で変形することなく平坦性を維持できる基板である。仮基板31の例はガラス基板である。仮基板31の形状は、シート状(又は枚葉状)である。仮基板31の平面視形状は、例えば矩形又は正方形である。仮基板31の厚さは、例えば0.2mm~1.0mmである。
【0079】
剥離層13は、仮基板31上に設けられている。剥離層13は、後工程で仮基板31上の構成を、仮基板31から分離するための層である。剥離層13の平面視形状は、仮基板31の厚さ方向からみて、仮基板31より小さい。よって、仮基板31の厚さ方向からみた場合、仮基板31は、剥離層13が形成されている第1領域と、その周囲を囲む第2領域とを有する。剥離層13は、仮基板31上に例えば、スピンコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スリットコーティング、ディップコーティングなどによって形成される。その後、熱またはUV(紫外線)、またはその両方を組み合わせて硬化される。
【0080】
第1保護層14は、剥離層13上に設けられている。本実施形態において、仮基板31の厚さ方向からみた場合、第1保護層14の大きさは、剥離層13より大きく仮基板31の大きさとほぼ同じである。第1保護層14は、剥離層13を被覆している。
図3の(a)に示したように、剥離層13において仮基板31と反対側の面13a及び外周面(外縁)13bも第1保護層14によって覆われている。上記構成では、仮基板31において、剥離層13が形成されていない領域は、第1保護層14で覆われている。第1保護層14が有機絶縁膜である場合、第1保護層14は、例えば、スピンコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スリットコーティング、ディップコーティングなどによって形成される。また、第1保護層14が無機絶縁膜である場合、第1保護層14は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって形成される。
【0081】
下地基板30は、仮基板31上に、剥離層13及び第1保護層14を、剥離層13及び第1保護層14の順に形成することによって準備される。剥離層13及び第1保護層14の形成方法の例は、前述したとおりである。
【0082】
中間基板形成工程S01では、上記下地基板30を準備した後に、下地基板30上に、
図3の(a)に示したように、バリア層15及び電極層21を順に形成する。
【0083】
バリア層15は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ALD(原子層堆積)法、プラズマ化学気相成長法、あるいはプレカーサ―を、下地基板面に形成しプラズマ処理を行う薄膜形成法によって、第1保護層14上に形成され得る。
【0084】
電極層21は、例えば、乾式成膜法によって形成される。乾式成膜法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。電極層21は、陽極21a及び引出し電極21bとなるべき層である。よって、電極層21の材料及び厚さは、陽極21aに関して説明したとおりである。
【0085】
その後、
図3の(b)に示したように、例えばフォトリソグラフィ法などの微細加工技術によって電極層21をパターニングすることによって、陽極21a及び引出し電極21bを形成する。
図3の(b)は、
図3の(a)の後の工程を説明するための図面である。 本実施形態では、下地基板30において仮想的に設定される複数のデバイス形成領域にそれぞれ陽極21a及び引出し電極21bの組を形成する。
【0086】
続いて、本実施形態では、
図3の(c)に示したように、バンク22を形成する。
図3の(c)は、
図3の(b)の後の工程を説明するための図面である。デバイス形成領域に設けられた陽極21a及び引出し電極21bの組において、陽極21aにおける有機EL層23の形成領域を規定するようにバンク22を形成する。この際、陽極21a及び引出し電極21bの組において、陽極21a及び引出し電極21b間にもバンク22を形成する。
【0087】
バンク22を有機物で形成する場合、たとえば、次のようにバンク22を形成できる。
ポジ型またはネガ型の感光性樹脂を一面に塗布し、所定の部位を露光し、現像する。さらに、上記現像処理が施された感光性樹脂を硬化することによって、有機EL層23の形成領域を規定するように開口が形成されたバンク22を形成できる。なお感光性樹脂としてはフォトレジストを用いることができる。その他にもインクジェット印刷法といった塗布法によってバンク22を形成できる。この場合、バンク22の材料である絶縁材料を含む塗布液を、バンク22の形成箇所に塗布し、乾燥・焼成させることによって、バンク22が形成される。塗布液を乾燥させる場合、例えば減圧乾燥を用いることができる。
【0088】
バンク22を無機物で形成する場合、たとえば、次のようにバンク22を形成できる。
無機物からなる薄膜を、プラズマCVD法やスパッタ法などによって一面に形成する。次に所定の部位に開口を形成することによりバンク22を形成できる。開口は例えばフォトリソグラフィ法によって形成される。この開口を形成することにより陽極21aの表面が露出する。
【0089】
陽極21a及び引出し電極21bを形成した後であり且つバンク22を形成する前に、表面処理工程、陽極21a及び引出し電極21bを洗浄する工程、陽極21a及び引出し電極21bのパターン良否及び異物等の有無を検査する工程などを実施してもよい。
【0090】
バンク22を形成した後、
図4の(a)に示したように、陽極21a上に、有機EL層23を形成する。
図4の(a)は
図3の(c)の後の工程を説明するための図面である。有機EL層23は、バンク22の場合と同様に、例えば、インクジェット印刷法といった塗布法によって形成される。塗布液を乾燥させる場合、例えば減圧乾燥を用いることができる。
【0091】
有機EL層23が、発光層を含む複数の機能層を有する場合、陽極21a側から順に機能層を形成すればよい。複数の機能層の形成方法は、同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、機能層によっては、前述した乾式成膜法によって機能層を形成してもよい。
【0092】
有機EL層23を形成した後、
図4の(b)に示したように、有機EL層23上に陰極24を形成する。
図4の(b)は、
図4の(a)の後の工程を説明するための図面である。陰極24は、その一部が引出し電極21b上に位置するように、形成される。陰極24は、電極層21の場合と同様に、例えば乾式成膜法によって形成される。例えば、陰極24は、真空蒸着法によって形成され得る。
【0093】
図4の(b)に示したように、陰極24を形成することによって、下地基板30と、下地基板30上に形成されたバリア層15及び素子本体27とを有する中間基板2が得られる。
【0094】
図5は、中間基板2の平面図である。本実施形態では、中間基板2において、複数の素子本体27が2次元的に配列されている。すなわち、X方向及びY方向それぞれに複数の素子本体27が形成されている。各素子本体27の形成位置がデバイス形成領域に相当する。
【0095】
例えば、上記バリア層15及び電極層21は下地基板30に含まれてもよい。例えば、仮基板31を準備した後、仮基板31上に、剥離層13、第1保護層14、バリア層15及び電極層21を順に形成してもよい。例えば、電極層21を形成せずに、直接、陽極21a及び引出し電極21bをバリア層15上に形成してもよい。
【0096】
[第2保護層形成工程]
中間基板2を形成した後、第2保護層形成工程S02を実施する。第2保護層形成工程S02では、
図6に示したように、素子本体27上に、第2保護層25を形成する。第2保護層25は、電極層21に関して説明した乾式成膜法で形成される。例えば、第2保護層25は、CVD法またはスパッタ法で好適に形成され得る。第2保護層25が有機膜を有する場合、有機膜は湿式成膜法で形成されてもよい。湿式成膜法であればスリットコート法やインクジェット法などで第2保護層25が形成され得る。
【0097】
上記第2保護層形成工程S02までは、例えば下地基板30(又は仮基板31)を搬送しながらシートツーシート法によって実施され得る。
【0098】
[切込み形成工程]
第2保護層25を形成した後、まず、切込み形成工程S03を実施する。具体的には、
図7の(a)において、中間基板2において、仮基板31より素子本体27側をカットする。換言すれば、剥離層13までハーフカットする。これにより、
図7の(a)で示したように、中間基板2に切込み2aが形成される。
図7の(a)では、切込み2aを破線で示している。
【0099】
切込み形成位置は、中間基板2の厚さ方向からみて、素子本体27より外側であって且つ剥離層13の内側である。剥離層13の内側を切断するため、切込み形成位置より外側に剥離層13が残存する。切込み形成工程S03では、例えば、中間基板2を搬送しながら、搬送方向に沿って中間基板2をハーフカットした後、搬送方向に直交する方向に沿ってハーフカットすればよい。切込み2aは、例えば、ロータリーカッターによって形成され得る。
【0100】
[転写フィルム貼合工程]
切込み形成工程S03の後、転写フィルム貼合工程S04を実施する。この工程では、
図7の(a)に示したように、転写フィルムTFを、切込み形成工程S03を経た中間基板2に、第2保護層25側から貼合する。転写フィルムTFは、中間基板2から剥離可能な可撓性フィルムである。転写フィルムTFは可撓性基材と可撓性基材の一面側に設けられた粘着剤層とを備える。可撓性基材は例えば樹脂フィルムで、樹脂フィルムの材料の例は、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリルニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。また、粘着剤層の材料の例は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等である。
【0101】
本実施形態では、転写フィルムTFは、帯状のフィルムである。転写フィルム貼合工程S04は、帯状の転写フィルムTFを、その長手方向に搬送するとともに、中間基板2(又は仮基板31)を搬送しながら、転写フィルムTFを中間基板2に貼合する。換言すれば、シートツーロール方式によって転写フィルムTFを中間基板2に貼合する。
図7の(a)では、X方向に直交するY方向(
図5参照)が中間基板2の搬送方向である。
【0102】
転写フィルムTFの長手方向に直交する幅方向(
図7の(a)のX方向)の長さは、X方向における全ての素子本体27を覆うことが可能な長さであって且つ切込み形成工程S03で形成されたX方向における一対の切込み2aの間の長さ以下である。
【0103】
[仮基板剥離工程]
転写フィルム貼合工程S04の後、仮基板剥離工程S05を実施する。この工程では、
図7の(b)に示したように、剥離層13から仮基板31を剥離する。切込み形成工程S03で、中間基板2の一部に切込み2aが形成されている。そのため、剥離層13から仮基板31を剥離することによって、切込み2aの内側が、仮基板31から取り出される。剥離時には、1N/25mm以下、好ましくは0.1N/25mm以下の力を剥離層13に加えてもよく、剥離層13の剥離強度に応じてその力を変化させてもよい。剥離の力が1N/25mm以下であることによって、仮基板31からの剥離時に、剥離層13、第1保護層14、バリア層15、素子本体27及び第2保護層25を含む構造体3Aの破損を一層防止できたり、構造体3Aに過大な力が加わり変形してデバイスとして機能しなくなったりすることをより抑制できる。
【0104】
本実施形態では、仮基板剥離工程S05は、転写フィルム貼合工程S04に引き続いて、シートツーロール方式で実施される。すなわち、転写フィルム貼合工程S04において、中間基板2に貼合された後の転写フィルムTF及び仮基板31の搬送経路は、転写フィルムTF及び仮基板31が互いに離れる方向に構成されている。これにより、転写フィルムTF及び仮基板31の搬送により、転写フィルムTFと仮基板31が離れるので、剥離層13から仮基板31が剥離され得る。
【0105】
上記切込み形成工程S03、転写フィルム貼合工程S04及び仮基板剥離工程S05によって、上記構造体3Aが、転写フィルムTFに転写される。従って、切込み形成工程S03、転写フィルム貼合工程S04及び仮基板剥離工程S05は、構造体3Aを転写フィルムTFに転写する工程である。
【0106】
[可撓性フィルム貼合工程]
仮基板剥離工程S05を実施した後、可撓性フィルム貼合工程S06を実施する。可撓性フィルム貼合工程S06では、
図8に示したように、接着剤層12を介して可撓性フィルム11を剥離層13に貼合する。
【0107】
本実施形態では、可撓性フィルム11は、帯状のフィルムである。可撓性フィルム貼合工程S06は、仮基板剥離工程S05に引き続いて搬送されている帯状の転写フィルムTFに対して実施される。具体的には、帯状の可撓性フィルム11を、その長手方向に搬送しながら、搬送されている転写フィルムTF上の構造体3Aに、接着剤層12を介して貼合する。換言すれば、ロールツーロール方式によって転写フィルムTFを中間基板2に貼合する。
【0108】
可撓性フィルム貼合工程S06では、接着剤層12が予め表面に形成された可撓性フィルム11を用いてもよい。或いは、例えば、接着剤層12が光硬化型接着剤の硬化物である場合、帯状の可撓性フィルム11の搬送中に可撓性フィルム11に光硬化型接着剤(例えば紫外線硬化樹脂)を塗布し、可撓性フィルム11を剥離層13に貼合した後、光硬化型接着剤に硬化用の光を照射することによって接着剤層12を形成してもよい。光硬化型接着剤が遅延硬化タイプの場合は、可撓性フィルム11に光硬化型接着剤の塗布し、光硬化型接着剤に硬化用の光を照射した後、可撓性フィルム11を剥離層13に貼合してもよい。接着剤層12が熱硬化型接着剤の硬化物であれば、上記硬化用の光の代わりに、熱硬化型接着剤を加熱すればよい。
【0109】
[転写フィルム剥離工程]
可撓性フィルム貼合工程S06を実施した後、転写フィルム剥離工程S07を実施する。この工程では、
図9に示したように、転写フィルムTFに転写された構造体3Aから転写フィルムTFを剥離する。
【0110】
本実施形態では、転写フィルム剥離工程S07は、可撓性フィルム貼合工程S06に引き続いて、ロールツーロール方式で実施される。すなわち、可撓性フィルム貼合工程S06に引き続いて可撓性フィルム11及び転写フィルムTFを搬送する場合の搬送経路が、可撓性フィルム11及び転写フィルムTFが互いに離れる方向に構成されている。これにより、可撓性フィルム11及び転写フィルムTFの搬送により、可撓性フィルム11及び転写フィルムTFが離れるので、構造体3Aから転写フィルムTFが剥離され得る。このような剥離を実現するために、通常、接着剤層12を介した可撓性フィルム11と剥離層13との接合強度は、転写フィルムTFと、第2保護層25等への接合力より十分大きい。
【0111】
上記可撓性フィルム貼合工程S06及び転写フィルム剥離工程S07を経ることによって構造体3Aが可撓性フィルム11に転写される。従って、可撓性フィルム貼合工程S06及び転写フィルム剥離工程S07は、構造体3Aを、転写フィルムTFから可撓性フィルム11に転写する工程である。
【0112】
[封止部材貼合工程]
転写フィルム剥離工程S07を実施した後、封止部材貼合工程S08を実施する。この工程では、
図10に示したように、封止部材26を、接着剤層26bによって素子本体27(具体的には、素子本体27上の第2保護層25)に貼合する。複数の素子本体27それぞれに対して封止部材26が貼合される。これによって、
図10に示したように、可撓性フィルム11上の陽極21a及び引出し電極21bの組に対して、有機ELデバイス1Aが得られる。
【0113】
本実施形態では、封止部材26は、帯状の可撓性部材である。封止部材貼合工程S0を、転写フィルム剥離工程S07に引き続いて、ロールツーロール方式で実施する。具体的には、可撓性フィルム11上の複数の素子本体27に対応する複数の封止部材26を、その長手方向に搬送しながら、転写フィルム剥離工程S07に引き続いて搬送されている可撓性フィルム11上に配置された各素子本体27に封止部材26を貼合する。
【0114】
[個片化工程]
上記のように、封止部材貼合工程S08を実施することによって、有機ELデバイス1Aが得られる。この段階では、
図10に示したように、複数の有機ELデバイス1Aは連結されている。従って、封止部材貼合工程S08の後に、個片化工程を実施する。個片化工程では、封止部材貼合工程S08を経た可撓性フィルム11を、各有機ELデバイス1Aの形成領域(デバイス形成領域)毎に分割する。分割(個片化)は、例えば、カッターやレーザーなどを用いて実施され得る。
【0115】
第1実施形態で説明した有機ELデバイス(有機電子デバイス)の製造方法では、剥離層13が、第1保護層14で被覆されている。
図3に示したように、剥離層13の外周面13bは第1保護層14で覆われている。従って、仮基板31から容易に剥離する性質を持ち合わせている剥離層13が仮基板31上に形成されていても、中間基板2を形成する際に、外周面13bの箇所からの剥離が生じにくい。このように、意図しない剥離層13と仮基板31との剥離が抑制されているので、生産性を向上できる。
【0116】
仮基板31としてリジッド基板を用いているため、仮基板31を使用している工程(例えば、中間基板形成工程、切込み形成工程など)において、仮基板31をハンドリングし易い。
【0117】
有機ELデバイス1Aの製造方法では、仮基板31と剥離層13を分離した後、剥離層13に可撓性フィルム11を貼合する。従って、
図1に示したように、有機ELデバイス1Aは、リジッド基板である仮基板31ではなく、可撓性フィルム11を有する。従って、有機ELデバイス1Aは、可撓性を有する。すなわち、有機ELデバイス1Aの製造方法では、可撓性を有する有機ELデバイス1Aを製造可能である。
【0118】
素子本体27、バリア層15等を形成する場合に使用する乾式成膜法、塗布法などでは、製造中の構造体を加熱する必要がある。例えば、有機ELデバイス1Aを製造する際に、可撓性フィルム11上にバリア層15、素子本体27等を形成すると、上記加熱により可撓性フィルム11が変形し易い。製造過程で可撓性フィルム11が変形すると、可撓性フィルム11上に形成する層の厚さ等が不均一になり、結果として、製造された有機ELデバイスが不良品と判定される。
【0119】
これに対して、有機ELデバイス1Aの製造方法では、前述したように、バリア層15、素子本体27等を仮基板31上に形成した後、仮基板31を可撓性フィルム11に置き換える。仮基板31は、リジッド基板であるため、熱の影響が可撓性フィルム11より小さい。その結果、有機ELデバイス1Aの製造方法は、製造歩留まりの向上が図れている。熱の影響を低減する観点から、仮基板31は、耐熱性の高い基板が好ましい。
【0120】
有機ELデバイス1Aの製造方法では、有機EL層23を形成する前に、バンク22を形成する。バンク22によって、有機EL層23の形成領域が規定されている。したがって、有機EL層23の少なくとも一つの層を塗布法で形成する場合、塗布液が濡れ広がることを防止できている。
【0121】
有機ELデバイス1Aの製造方法では、中間基板2に第2保護層25を形成した後に、転写フィルムTFを中間基板2に貼合している。従って、転写フィルムTFは、陰極24ではなく、第2保護層25に貼合される。そのため、転写フィルム剥離工程S17において転写フィルムTFを剥離する際に、陰極24が損傷を受けない。
【0122】
第2保護層25が、封止機能を有する場合、第2保護層25及び封止部材26で素子本体27(より具体的には有機EL層23)が封止されている。従って、高い封止性能が実現されている。
【0123】
有機ELデバイス1Aの製造方法では、仮基板剥離工程S05の前に、切込み形成工程S03を実施している。切込み形成工程S03では、中間基板2(或いは、下地基板30)に切込み2aが形成される。そのため、第1保護層14によって剥離層13が被覆されていたとしても、仮基板剥離工程S05で仮基板31が剥離層13から容易に分離し易い。その結果、仮基板31が剥離された剥離層13の面が平坦性を維持し易い。
【0124】
有機ELデバイス1Aの製造方法では、上述したように、シートツーシート方式、シートツーロール方式及びロールツーロール方式を適宜採用できる。この場合、仮基板31、転写フィルムTF、封止部材26及び可撓性フィルム11などを搬送しながら有機ELデバイス1Aを製造できるので、有機ELデバイス1Aの生産性を一層向上できる。
【0125】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法で製造された有機ELデバイスの模式図である。
図12に示した有機ELデバイス1Bは、支持基板10と、有機EL素子20Bとを備える。支持基板10は、第1実施形態の場合と同様であるため説明を省略する。
【0126】
有機EL素子20Bは、第2保護層25を有しない点、端子41a及び端子41bを有する点で、有機EL素子20Aと主に相違する。この相違点を中心して、有機EL素子20Bを説明する。
【0127】
有機EL素子20Bでは、第2保護層25を有しないため、封止部材26は、素子本体27に貼合されている。具体的には、バンク22、有機EL層23及び陰極24を覆うように、封止部材26は、素子本体27に貼合されている。第2保護層25による封止機能を補うため、封止部材26の接着剤層26bは、第1実施形態の場合より低透湿性であることが好ましい。接着剤層26bには、吸湿機能を有する物質が含まれていてもよい。吸湿機能を有する物質としては、例えば、水分と常温で化学反応を起こす金属酸化物、水分を物理吸着するゼオライトが挙げられる。接着剤層26bの含有水分量は、好ましくは、200ppm以下(重量基準)である。
【0128】
端子41aは、陽極21aに電気的に接続されている。端子41aは、陽極21aに電力を供給するための外部接続用の端子として機能する。端子41aは、陽極21aのうち封止部材26によって覆われていない部分に接続さている。本実施形態において、端子41aは、導電フィルムである。
【0129】
端子41bは、引出し電極21bに電気的に接続されている。端子41bは、引出し電極21bを介して陰極24に電力を供給するための外部接続用の端子として機能する。端子41bは、引出し電極21bのうち封止部材26によって覆われていない部分に接続されている。本実施形態において、端子41bは、導電フィルムである。
【0130】
次に、有機ELデバイス1Bの製造方法の一例を説明する。
図12に示したように、有機ELデバイス1Bの製造方法は、中間基板形成工程S11と、切込み形成工程S12と、導電フィルム貼合工程S13と、封止部材貼合工程S14と、仮基板剥離工程S15と、可撓性フィルム貼合工程S16と、個片化工程S17とを有する。
【0131】
[中間基板形成工程]
中間基板形成工程S11では、
図2に示した中間基板形成工程S01と同様にして、
図4の(b)及び
図5に示した中間基板2を形成する。
【0132】
[切込み形成工程]
中間基板形成工程S11の後、切込み形成工程S12を実施する。切込み形成工程S12は、
図2に示した切込み形成工程S03と同様であるため、説明を省略する。
【0133】
[導電フィルム貼合工程]
切込み形成工程S12の後、導電フィルム貼合工程S13を実施する。この工程では、
図13及び
図14に示したように、導電フィルム41を、切込み形成工程S12を経て切込み2aが形成された中間基板2上に、導電フィルム41を貼合する。
図13及び
図14は、導電フィルム貼合工程S13を説明するための図面である。
図13及び
図14では、4つの導電フィルム41が中間基板2に貼合された状態を例示している。
図13では、図示の都合上、導電フィルム41の厚さが幅より長い状態が図示されているが、実際には、導電フィルム41は厚さが幅と同様か幅より小さいシート状を呈する。
【0134】
導電フィルム41の材料としては、アルミ箔や銅箔などが挙げられる。導電フィルム41は、例えば図示しない導電性フィラーを混ぜた接着剤によって中間基板2に貼合される。導電フィルム41は、陽極21a及び引出し電極21bに接するように中間基板2に貼合される。陽極21a及び引出し電極21b上の構成(バンク22、有機EL層23及び陰極24)との間に隙間を有するように、導電フィルム41を中間基板2に貼合する。換言すれば、導電フィルム41の幅は、陽極21a及び引出し電極21b上の構成との間に隙間を有するような幅であればよい。導電フィルム41の厚さは、後述するように封止部材26を中間基板2に貼合した場合において、導電フィルム41の上面(仮基板31と反対側の面)が封止部材26の上面(樹脂層26cの表面)と実質的に揃う高さであり得る。
【0135】
本実施形態では、導電フィルム41は帯状のフィルムである。導電フィルム貼合工程S15では、中間基板2を、X方向に直交するY方向(
図14参照)に搬送する。更に、仮基板31上の複数の素子本体27に対応する複数の導電フィルム41を、長手方向に搬送する。このように、中間基板2及び導電フィルム41を搬送しながら、導電フィルム41を中間基板2に貼合する。換言すれば、導電フィルム貼合工程S15をシートツーロール方式で実施する。
【0136】
[封止部材貼合工程]
導電フィルム貼合工程S13の後、封止部材貼合工程S14を実施する。この工程では、
図15及び
図16に示したように、封止部材26を、接着剤層26bによって素子本体27に貼合する。
【0137】
封止部材貼合工程S14では、隣接する導電フィルム41間において、有機EL層23を封止するように、封止部材26を中間基板2に貼合すればよい。本実施形態では、封止部材26の幅(
図15におけるX方向の長さ)は、隣接する導電フィルム41の間の幅であり得る。
図15及び
図16に示したように、複数の素子本体27それぞれに封止部材26を貼合する。
【0138】
本実施形態では、封止部材26は、帯状の可撓性部材である。封止部材貼合工程S14では、導電フィルム貼合工程S15に引き続いて、シートツーロール方式で実施する。具体的には、仮基板31上の複数の素子本体27に対応する複数の封止部材26を、長手方向に搬送しながら、導電フィルム貼合工程S15の後に引き続き搬送されている導電フィルム41が貼合された中間基板2に貼合する。
【0139】
[仮基板剥離工程]
封止部材貼合工程S14の後、仮基板剥離工程S15を実施する。この工程では、
図17に示したように、剥離層13から仮基板31を剥離する。切込み形成工程S12で、中間基板2の一部に切込み2aが入っているため、剥離層13から仮基板31を剥離することによって、切込み2aの内側が、仮基板31から取り出される。換言すれば、剥離層13、第1保護層14、バリア層15及び素子本体27を含む構造体3Bが封止部材26に転写される。
【0140】
本実施形態では、仮基板剥離工程S15を、封止部材貼合工程S14に引き続いて、シートツーロール方式で実施する。すなわち、封止部材貼合工程S14において中間基板2に貼合した後の封止部材26及び導電フィルム41の搬送経路は、封止部材26及び導電フィルム41が、仮基板31から離れる方向に構成されている。これにより、封止部材26、導電フィルム41及び仮基板31の搬送により、封止部材26及び導電フィルム41が、仮基板31から離れるので、剥離層13から仮基板31が剥離され得る。
【0141】
[可撓性フィルム貼合工程]
仮基板剥離工程S15を実施した後、可撓性フィルム貼合工程S16を実施する。可撓性フィルム貼合工程S16では、
図18に示したように、接着剤層12を介して可撓性フィルム11を剥離層13に貼合する。
【0142】
本実施形態では、可撓性フィルム11は、帯状のフィルムである。可撓性フィルム貼合工程S16を、仮基板剥離工程S15に引き続いて搬送されている封止部材26に対して実施する。具体的には、帯状の可撓性フィルム11を、その長手方向に搬送しながら、搬送されている封止部材26上の構造体3Bに、接着剤層12を介して貼合する。換言すれば、ロールツーロール方式によって可撓性フィルム11を剥離層13に貼合する。可撓性フィルム貼合工程S16では、接着剤層12の形成方法は、第1実施形態の場合と同様である。
【0143】
[個片化工程]
上記のように、可撓性フィルム貼合工程S16を実施することによって、有機ELデバイス1Bが得られる。この段階では、
図18に示したように、複数の有機ELデバイス1Bは連結されている。従って、可撓性フィルム貼合工程S16の後に、個片化工程S17を実施する。個片化工程S17では、可撓性フィルム貼合工程S16を経た可撓性フィルム11を、各有機ELデバイス1Bの形成領域(デバイス形成領域)毎に分割する。分割(個片化)は、例えば、カッターやレーザーなどを用いて実施され得る。個片化工程S17は、可撓性フィルム11を搬送しながら実施し得る。このように、個片化することによって、陽極21a及び引出し電極21bの両方に接続されている導電フィルム41が分割され、陽極21aに接続された端子41aとなり、引出し電極21bに接続された端子41bとなる。
【0144】
第2実施形態に係る有機ELデバイス1Bの製造方法は、第1実施形態に係る有機ELデバイス1Aと実質的に同様の作用効果を有する。
【0145】
有機ELデバイス1Bの製造方法では、導電フィルム41を用いて端子41a,41bを形成している。端子41a,41bは、陽極21a及び引出し電極21bに電気的に接続されている一方、封止部材26で覆われていない。そのため、端子41a,41bを用いて、陽極21aと引出し電極21bに電力を容易に供給でき、結果として、陽極21aと陰極24に電力を容易に供給できる。
【0146】
上記説明した形態では、第1実施形態のように、転写フィルムTFを使用しないため、工程数を低減できている。従って、より効率的に有機ELデバイス1Bを生産できる。
【0147】
(第3実施形態)
図19は、第3実施形態に係る有機電子デバイスの製造方法で製造された有機ELデバイスの模式図である。
図19に示した有機ELデバイス1Cは、支持基板10と、有機EL素子20Cとを備える。支持基板10は、第1実施形態の場合と同様であるため説明を省略する。
【0148】
有機EL素子20Cは、第2保護層25を有しない点、及び、封止部材26の代わりに封止部材51を有する点で、有機EL素子20Aと主に相違する。この相違点を中心して、有機EL素子20Cを説明する。
【0149】
有機EL素子20Cでは、第2保護層25を有しないため、封止部材51は、素子本体27に貼合されている。具体的には、バンク22、有機EL層23及び陰極24を覆うように、封止部材51は、素子本体27に貼合されている。
【0150】
封止部材51は、封止部材26と同様に、封止層51a、接着剤層51b及び樹脂層51cを有する。封止層51a、接着剤層51b及び樹脂層51cの構成は、封止部材26が有する封止層26a、接着剤層26b及び樹脂層26cと同様であるため、説明を省略する。封止部材51では、陽極21a及び引出し電極21bに電気的な配線を行うため、陽極21a及び引出し電極21bに対応したスルーホール52が形成されている。スルーホール52は、封止部材51をその厚さ方向に貫通している。スルーホール52は、支持基板10側の開口52aが、陽極21a及び引出し電極21bに接するように形成されている。
【0151】
陽極21a及び引出し電極21bに対応するスルーホール52内には、陽極21a及び引出し電極21bに接続される端子53及び端子54が配置されている。
【0152】
端子53は、陽極21aに電力を供給するための外部接続用の端子として機能する。端子53は、陽極21aのうち封止部材26によって覆われていない部分に接続されている。
【0153】
端子54は、引出し電極21bを介して陰極24に電力を供給するための外部接続用の端子として機能する。端子54は、引出し電極21bのうち封止部材51によって覆われていない部分に接続されている。
【0154】
次に、有機ELデバイス1Cの製造方法の一例を説明する。
図20に示したように、有機ELデバイス1Cの製造方法は、中間基板形成工程S21、切込み形成工程S22、封止部材貼合工程S23と、仮基板剥離工程S24と、可撓性フィルム貼合工程S25と、端子形成工程S26と、個片化工程S27を有する。
【0155】
[中間基板形成工程]
中間基板形成工程S21では、
図2に示した中間基板形成工程S01と同様にして、
図4の(b)及び
図5に示した中間基板2を形成する。
【0156】
[切込み形成工程]
中間基板形成工程S21の後、切込み形成工程S22を実施する。切込み形成工程S22は、
図2に示した切込み形成工程S03と同様であるため、説明を省略する。
【0157】
[封止部材貼合工程]
切込み形成工程S22の後、封止部材貼合工程S23を実施する。この工程では、
図21に示したように、スルーホール52が形成された封止部材51を、切込み形成工程S23を経た中間基板2の全面に貼合する。この場合、封止部材51に形成された複数のスルーホール52の位置が、対応する陽極21a及び引出し電極21bの位置に一致するように、封止部材51を中間基板2に貼合する。
【0158】
本実施形態では、封止部材51は、帯状の可撓性部材である。封止部材貼合工程S23では、切込み形成工程S12を経て切込み2aが形成された中間基板2を、X方向に直交するY方向(
図5、
図14及び
図16参照)に搬送する。更に、仮基板31上の複数の素子本体27に対応する複数の封止部材51を、その長手方向に搬送する。このように、中間基板2及び封止部材51を搬送しながら、封止部材51を中間基板2に貼合する。換言すれば、封止部材貼合工程S23をシートツーロール方式で実施する。
【0159】
[仮基板剥離工程]
封止部材貼合工程S23の後、仮基板剥離工程S24を実施する。この工程では、
図22に示したように、剥離層13から仮基板31を剥離する。切込み形成工程S22で、中間基板2の一部に切込み2aが形成されているため、剥離層13から仮基板31を剥離することによって、切込み2aの内側が、仮基板31から取り出される。換言すれば、第2実施形態の場合と同様に、剥離層13、第1保護層14、バリア層15及び素子本体27を含む構造体3Bが封止部材51に転写される。
【0160】
本実施形態では、仮基板剥離工程S24を、封止部材貼合工程S23に引き続いて、シートツーロール方式で実施する。すなわち、封止部材貼合工程S23において中間基板2に貼合した後の封止部材51及び仮基板31の搬送経路は、封止部材51及び仮基板31が互いに離れるように構成されている。これにより、封止部材51及び仮基板31の搬送により、封止部材51及び仮基板31が互いに離れるので、剥離層13から仮基板31が剥離され得る。
【0161】
[可撓性フィルム貼合工程]
仮基板剥離工程S24を実施した後、可撓性フィルム貼合工程S25を実施する。可撓性フィルム貼合工程S25では、
図23に示したように、接着剤層12を介して可撓性フィルム11を剥離層13に貼合する。
【0162】
本実施形態では、可撓性フィルム11は、帯状のフィルムである。本実施形態では、亜第2実施形態における可撓性フィルム貼合工程の場合と同様に、ロールツーロール方式で可撓性フィルム貼合工程S25を実施する。
【0163】
[端子形成工程]
可撓性フィルム貼合工程S25の後、端子形成工程S26を実施する。この工程では、
図24に示したように、封止部材51が有するスルーホール52に導電材料を充填することによって、端子53及び端子52bを形成する。導電材料の例は、銀粒子やカーボンブラックなどのフィラーをバインダー中に分散させた導電性樹脂である。端子53は、陽極21aに接続されたスルーホール52に充填された導電材料によって形成される。端子54は、引出し電極21bに接続されたスルーホール52に充填された導電材料によって形成される。
【0164】
端子53及び端子54の形成方法の一例を説明する。例えば、インクジェット印刷法によってスルーホール52に溶剤でインク化した導電材料を充填した後、導電材料を乾燥させ、その後必要に応じて熱硬化や光硬化処理をする。これによって、導電材料が固まり、端子53及び端子54が形成される。端子形成工程S26は、可撓性フィルム11を搬送しながら実施し得る。
【0165】
[個片化工程]
上記のように、端子形成工程S26を実施することによって、有機ELデバイス1Cが得られる。この段階では、
図24に示したように、複数の有機ELデバイス1Cは連結されている。従って、端子形成工程S26の後に、個片化工程S27を実施する。個片化工程S28では、端子形成工程S26を経た可撓性フィルム11を、各有機ELデバイス1Bの形成領域(デバイス形成領域)毎に分割する。分割(個片化)は、例えば、カッターやレーザーなどを用いて実施され得る。個片化工程S27は、可撓性フィルム11を搬送しながら実施し得る。
【0166】
第3実施形態に係る有機ELデバイス1Cの製造方法は、第1実施形態に係る有機ELデバイス1Aと同様の作用効果を有する。
【0167】
有機ELデバイス1Cの製造方法では、封止部材51に形成されたスルーホール52に端子53及び端子54を形成している。そのため、端子53,54を用いて、陽極21aと引出し電極21bに電力を容易に供給でき、結果として、陽極21aと陰極24に電力を容易に供給できる。
【0168】
有機ELデバイス1Cの製造方法では、上記のように、封止部材51に端子53,54を形成するため、
図21に示したように、中間基板2の全面に封止部材51を貼合できる。そのため、封止部材貼合工程S23を実施し易い。
【0169】
上記説明した形態では、第1実施形態のように、転写フィルムTFを使用しないため、工程数を低減できている。従って、より効率的に有機ELデバイス1Cを生産できる。
【0170】
以上、本発明の種々の実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、例示した種々の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0171】
例えば、第1実施形態において、第2保護層25が十分な封止性能を有する場合、封止部材26の代わりに可撓性を有する保護部材を使用してもよい。このような保護部材としては、樹脂層26cに直接接着剤層26bが形成された部材が例示される。
【0172】
第2基板として
図1、
図8等に示した可撓性フィルム11を例示した。第2基板は、第1基板より可撓性を有する基板であればよい。例えば、
図25に示したように可撓性フィルム11と、バリア層(第2バリア層)61と、光取出し層62とを有する基板60でもよい。
図25に示した例では、バリア層61及び光取出し層62は、可撓性フィルム11を挟むように、可撓性フィルム11に配置されている。バリア層61は、バリア層15と同様の層とし得る。バリア層61は、可撓性フィルム11と剥離層13との間に配置される。基板60がバリア層61を有することで、例えば、可撓性フィルム11からの水分が一層、有機EL層に達しにくい。光取出し層62は、光取り出し機能を有する層である。例えば、光取出し層62は、輝度向上フィルム、拡散フィルムなどである。
図25では、バリア層61及び光取出し層62が可撓性フィルム11の両面に貼合されている形態を示しているが、例えば、可撓性フィルム11上に、光取出し層62及びバリア層61がこの順に積層されていてもよい。
図25では、バリア層61及び光取出し層62の両方を有する例を説明したが、基板60は、バリア層61及び光取出し層62のうち一方を有する形態であってもよい。
【0173】
切込み形成工程は、仮基板剥離工程の前に実施されていればよい。
【0174】
これまでの説明では、有機ELデバイスは、有機EL層の形成領域を規定するためのバンクを有していた。しかしながら、有機ELデバイスは、バンクを有しなくてもよい。この場合において、有機ELデバイスが、
図3に示したように、陽極と、陽極と離れている引出し電極を有する場合、それらの間にも例えば有機EL層が形成され得る。これにより、陽極と引出し電極の短絡が防止され得る。
【0175】
引出し電極を有する有機ELデバイスの製造方法を説明したが、本発明は、引出し電極を有しない有機ELデバイスにも適用可能である。
【0176】
第1電極層が陽極であり、第2電極層が陰極である場合を説明した。しかしながら、第1電極層が陰極であり、第2電極層が陽極であってもよい。可撓性フィルム(第2基板)側に陰極が配置されていてもよい。
【0177】
これまでの説明では、有機ELデバイスを、シートツーシート方式、シートツーロール方式及びロールツーロール方式を採用して製造する場合を説明した。しかしながら、有機ELデバイスの製造方法は、これらの方式を採用する場合に限定されない。
【0178】
本発明は、有機ELデバイス以外の有機電子デバイス、例えば、有機太陽電池、有機フォトディテクタ、有機トランジスタなどにも適用可能である。
【符号の説明】
【0179】
1A,1B,1C…有機ELデバイス(有機電子デバイス)、2…中間基板、2a…切込み、11…可撓性フィルム(第2基板)、12…接着剤層、13…剥離層、13b…外周面、14…第1保護層、15…バリア層(第1バリア層)、20A,20B,20C…有機EL素子(有機電子素子) 21a…陽極(第1電極層)、23…有機EL層(有機電子素子層)、24…陰極(第2電極層)、25…第2保護層、26,51…封止部材、26a…封止層、26b…接着剤層、26c…樹脂層、27…素子本体、30…下地基板、31…仮基板(第1基板)、41…導電フィルム、41a,41b,52b,53,54…端子、52…スルーホール、60…基板(第2基板)、61…バリア層(第2バリア層)、62…光取出し層。