(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050296
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】熱伝導性シート及びシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20220323BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20220323BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220323BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220323BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20220323BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220323BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220323BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B32B27/30 D
C08L27/18
C08K3/013
C08L83/04
B32B7/027
B32B27/20 Z
B05D7/24 302L
B05D7/24 303A
H01L23/36 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028218
(22)【出願日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2020156037
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達也
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
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5F136GA26
(57)【要約】
【課題】耐薬品性、撥水撥油性、耐熱性、電気特性等に優れ、特に、接着性、熱伝導性(放熱性)、電気特性及び耐擦傷性に優れた熱伝導性シートの提供。
【解決手段】熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー及び熱伝導性フィラーを含むポリマー組成物からなるベースシート層と、前記ベースシート層の少なくとも一方の表面に直接配設けられた粘着樹脂層とを有する熱伝導性シート。前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが酸素含有極性基を有するか、又は、前記ポリマー組成物が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記熱伝導性フィラーとの複合粒子を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー及び熱伝導性フィラーを含むポリマー組成物からなるベースシート層と、前記ベースシート層の少なくとも一方の表面に直接設けられた粘着樹脂層とを有し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが酸素含有極性基を有するか、又は、前記ポリマー組成物が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記熱伝導性フィラーとの複合粒子を含む、熱伝導性シート。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含み、全単位に対してペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を1~5モル%含む、溶融温度が260~320℃であるテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記複合粒子が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーをコアとし、前記コアの表面に、前記熱伝導性フィラーを有する複合粒子である、請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジウム、酸化セリウム、酸化ニオブ、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む熱伝導性フィラーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーが、酸化アルミニウム又は窒化ホウ素を含む熱伝導性フィラーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
前記熱伝導性フィラーの形状が、鱗片状又は球状である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート
【請求項7】
前記粘着樹脂層が、シリコーン組成物からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝送性シート。
【請求項8】
前記ベースシート層における、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記熱伝導性フィラーとの合計の含有量に対する、前記熱伝導性フィラーの含有量の比が、0.05以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項9】
前記熱伝導性シートの厚さが、1~1000μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項10】
前記ベースシート層に対する前記粘着樹脂層の厚さの比が、0.01~5である、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項11】
前記ベースシート層の両面に、前記粘着樹脂層を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項12】
熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子及び熱伝導性フィラーと液状分散媒とを含む液状ポリマー組成物を基材に塗布し、加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー及び前記熱伝導性フィラーを含むシート層を形成し、前記シート層の表面に粘着樹脂組成物を直接付与して粘着樹脂層を形成し、前記基材を除去して、前記シート層と、前記シート層の表面に直接設けられた前記粘着樹脂層とを有するシートを得る、シートの製造方法。
【請求項13】
前記液状分散媒が、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる1種の液状分散媒である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が、0.1~10μmである、請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー及び前記熱伝導性フィラーを含むシート層と、前記シート層の片面に直接設けられた粘着樹脂層とを有するシートを2つ用意し、前記2つのシートを、前記シート層同士が接触するように対向配置し、熱圧着して、2つの前記シート層を一体化して圧着シート層を形成し、前記圧着シート層と、前記圧着シート層の両面に直接設けられた前記粘着樹脂層とを有するシートを得る、シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シート及びシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化や性能向上のため、モーターの高出力化等が求められている。高性能の電子機器や高出力のモーターは、電気抵抗や摩擦による発熱量が増大する傾向にあり、これらの熱を除去するための方法が検討されている。
熱を除去する方法として、粘着性の熱伝導性シートを用いる方法が知られている。特許文献1及び2には、かかる熱伝導性シートとして、耐熱性と電気特性とに優れたテトラフルオロエチレン系ポリマー及び熱伝導性フィラーを含むベースシート層と、シリコーン組成物を含む粘着層とを有するシートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-86433号公報
【特許文献1】国際公開2014/103327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テトラフルオロエチレン系ポリマーは、非粘着性であり、ベースシート層と粘着層とは充分に密着しにくい。特許文献1及び2に記載のシートにおいても、両層の剥離強度は、未だ充分でなく、一層の向上が必要であった。
また、本発明者らは、テトラフルオロエチレン系ポリマー及び熱伝導性フィラーを含むベースシート層において、熱伝導性フィラーが凝集しやすく、均一性が低下しやすい点、それにより放熱性が低下するだけでなく、折り曲げ性等の機械的物性も低下する点を知見した。
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ベースシート層として、所定のテトラフルオロエチレン系ポリマー又は所定の複合粒子を用いれば、剥離強度と、熱伝導性及び機械的物性とに優れたシートを得られる点を知見した。
本発明の目的は、かかる物性を具備した熱伝導性シートと、シートの製造方法との提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
<1> 熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー及び熱伝導性フィラーを含むポリマー組成物からなるベースシート層と、前記ベースシート層の少なくとも一方の表面に直接設けられた粘着樹脂層とを有し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが酸素含有極性基を有するか、又は、前記ポリマー組成物が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記熱伝導性フィラーとの複合粒子を含む、熱伝導性シート。
<2> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含み、全単位に対してペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を1~5モル%含む、溶融温度が260~320℃であるテトラフルオロエチレン系ポリマーである、上記<1>の熱伝導性シート。
<3>前記複合粒子が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーをコアとし、前記コアの表面に、前記熱伝導性フィラーを有する複合粒子である、上記<1>又は<2>の熱伝導性シート。
<4> 前記熱伝導性フィラーが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジウム、酸化セリウム、酸化ニオブ、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む熱伝導性フィラーである、上記<1>~<3>のいずれかの熱伝導性シート。
<5> 前記熱伝導性フィラーが、酸化アルミニウム又は窒化ホウ素を含む熱伝導性フィラーである、上記<1>~<4>のいずれかの熱伝導性シート。
<6> 前記熱伝導性フィラーの形状が、鱗片状又は球状である、上記<1>~<5>のいずれかの熱伝導性シート。
<7> 前記粘着樹脂層が、シリコーン組成物からなる、上記<1>~<6>のいずれかの熱伝送性シート。
<8> 前記ベースシート層における、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記熱伝導性フィラーとの合計の含有量に対する、前記熱伝導性フィラーの含有量の比が、0.05以上である、上記<1>~<7>のいずれかの熱伝導性シート。
<9> 前記熱伝導性シートの厚さが、1~1000μmである、上記<1>~<8>のいずれかの熱伝導性シート。
<10> 前記ベースシート層に対する前記粘着樹脂層の厚さの比が、0.01~5である、上記<1>~<9>のいずれかの熱伝導性シート。
<11> 前記ベースシート層の両面に、前記粘着樹脂層を有する、上記<1>~<10>のいずれかの熱伝導性シート。
<12> 熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子及び熱伝導性フィラーと液状分散媒とを含む液状ポリマー組成物を基材に塗布し、加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマー及び前記熱伝導性フィラーを含むシート層を形成し、前記シート層の表面に粘着樹脂組成物を直接付与して粘着樹脂層を形成し、前記基材を除去して、前記シート層と、前記シート層の表面に直接設けられた前記粘着樹脂層とを有するシートを得る、シートの製造方法。
<13> 前記液状分散媒が、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる1種の液状分散媒である、上記<12>の製造方法。
<14> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が、0.1~10μmである、上記<12>又は<13>の製造方法。
<15> 熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー及び前記熱伝導性フィラーを含むシート層と、前記シート層の片面に直接設けられた粘着樹脂層とを有するシートを2つ用意し、前記2つのシートを、前記シート層同士が接触するように対向配置し、熱圧着して、2つの前記シート層を一体化して圧着シート層を形成し、前記圧着シート層と、前記圧着シート層の両面に直接設けられた前記粘着樹脂層とを有するシートを得る、シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剥離強度と熱伝導性とに優れた、熱伝導性シート及びシートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「テトラフルオロエチレン系ポリマー」とは、テトラフルオロエチレンに基づく単位を含有するポリマーであり、単に「Fポリマー」とも記す。
「ポリマーのガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「ポリマーの溶融温度(融点)」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「D50」は、粒子又はフィラーの平均粒子径であり、レーザー回折・散乱法によって求められる粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒子の粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「D90」は、粒子又はフィラーの累積体積粒径であり、「D50」と同様にして求められる粒子の体積基準累積90%径である。
「液状ポリマー組成物の粘度」は、B型粘度計を用いて、室温下(25℃)で回転数が60rpmの条件下で液状ポリマー組成物について測定される値である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「液状ポリマー組成物のチキソ比」とは、回転数が30rpmの条件で測定される粘度η1を回転数が60rpmの条件で測定される粘度η2で除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「モノマーに基づく単位」とは、モノマーの重合により形成された上記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって上記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0009】
本発明の熱伝導性シート(以下、「本シート」とも記す。)は、熱溶融性のFポリマー及び熱伝導性フィラーを含むポリマー組成物からなるベースシート層と、ベースシート層の少なくとも一方の表面に直接設けられた粘着樹脂層とを有し、Fポリマーが酸素含有極性基を有するか、又は、ポリマー組成物が、Fポリマーと熱伝導性フィラーとの複合粒子を含む。ベースシート層は、ポリマー組成物から形成された層である。
【0010】
本シートの熱伝導率は、1~100W/m・Kが好ましく、1~50W/m・Kがより好ましく、3~25W/m・Kがさらに好ましい。本シートにおける、厚さ方向の熱伝導率に対する面方向の熱伝導率の比が、1超であるのが好ましく、3以上であるのがより好ましい。上記比は、10以下であるのがより好ましい。
本シートの剥離強度は、5N/cm以上が好ましく、10N/cm以上がより好ましい。本シートの剥離強度の上限は、100N/cmである。なお、本シートの剥離強度とは、ベースシート層と粘着樹脂層との層間の剥離強度である。
本シートの厚さは、1~1000μmが好ましく、50~500μmがより好ましい。また、ベースシート層の厚さに対する粘着樹脂層の厚さの比は、0.01~5が好ましく、0.05~1がより好ましい。
【0011】
本シートが、層間の剥離強度と、熱伝導性及び折曲性等の機械的物性とに優れている理由は、必ずしも明確ではないが、以下の通りと考えられる。
酸素含有極性基を有するFポリマーは、酸素含有極性基を有さないFポリマーに比較して、表面張力が高く、粘着樹脂及び熱伝導性フィラーのいずれとも相互作用しやすい。かかるFポリマーを含むポリマー組成物からなるベースシート層を有する本シートは、熱伝導性フィラーがFポリマーに担持されつつ、ベースシート層と粘着樹脂層との密着性が高まりやすい。その結果、本シートの機械的物性が向上したと考えられる。また、ベースシート層中における熱伝導性フィラーの凝集が抑制されるため、本シートの熱伝導性が向上したと考えられる。
【0012】
一方、Fポリマーと熱伝導性フィラーとの複合粒子において、熱伝導性フィラーは、Fポリマーに付着しており、この付着により凝集が解消された状態にある。したがって、かかる複合粒子を含むポリマー組成物からなるベースシート層を有する本シートは、熱伝導性フィラーとFポリマーとが緻密に混合した状態から形成されるとも考えられる。その結果、ベースシート層中で熱伝導性フィラーが均一に分散して、本シートの熱伝導性が向上したと考えられる。また、本シートが応力分散しやすくなり、本シートの機械的物性が向上したと考えられる。
【0013】
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(TFE単位)を含む熱溶融性のポリマーである。
Fポリマーのフッ素含有量は、70~76質量%であるのが好ましい。かかるフッ素含有量が高いFポリマーは、電気物性等の物性に優れる。
Fポリマーの溶融温度は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。Fポリマーの溶融温度は、260~320℃が特に好ましい。
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
【0014】
Fポリマーとしては、TFE単位のみからなる低分子量のポリマー(低分子量PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)、TFE単位とフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とクロロトリフルオロエチレンに基づく単位とを含むポリマーが挙げられ、PFA又はFEPが好ましく、PFAがより好ましい。上記ポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3又はCF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0015】
低分子量PTFEの数平均分子量は、1万~20万であるのが好ましい。この場合、PTFEは熱溶融性を有する。なお、低分子量PTFEの数平均分子量は、下式(1)に基づいて算出される値である。
Mn = 2.1×1010×ΔHc-5.16 ・・・ (1)
式(1)中、Mnは、低分子量PTFEの数平均分子量を、ΔHcは、示差走査熱量分析法により測定される低分子量PTFEの結晶化熱量(cal/g)を、それぞれ示す。低分子量PTFEは、TFE単位以外の単位を微量含んでいてもよい。
【0016】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましい。酸素含有極性基に基づくFポリマーは、接着性等の物性に優れ、熱伝導性フィラー及び粘着樹脂層と相互作用しやすい。
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマー単位に含まれていてもよく、ポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマーが挙げられる。
酸素含有極性基は、水酸基含有基又はカルボニル基含有基が好ましく、カルボニル基含有基が特に好ましい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CF2CH2OH又は-C(CF3)2OHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH2)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)又はカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
【0017】
Fポリマーとしては、PAVE単位を含み、全単位に対してPAVE単位を1~5モル%含む、溶融温度が260~320℃であるポリマーが好ましく、PAVE単位と、酸素含有極性基を有するモノマーに基づく単位とを含むポリマー(1)、又はPAVE単位を含み、全モノマー単位に対してPAVE単位を2~5モル%含む、酸素含有極性基を有さないポリマー(2)がより好ましい。これらのポリマーは、ベースシート層において微小球晶を形成するため、Fポリマーと熱伝導性フィラー及び粘着樹脂層との接着性が向上しやすい。
【0018】
ポリマー(1)は、TFE単位と、PAVE単位と、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するモノマーとを含むポリマーが好ましい。ポリマー(1)は、全単位に対して、TFE単位を90~98モル%、PAVE単位を1.5~9.97モル%、及び上記モノマーに基づく単位を0.01から3モル%、それぞれ含むのが好ましい。
上記モノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸;以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。
ポリマー(1)の具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
【0019】
ポリマー(2)は、TFE単位及びPAVE単位のみからなり、全モノマー単位に対して、TFE単位を95~98モル%、PAVE単位を2~5モル%含有するのが好ましい。
ポリマー(2)におけるPAVE単位の含有量は、全モノマー単位に対して、2.1モル%以上が好ましく、2.2モル%以上がより好ましい。
なお、ポリマー(2)が酸素含有極性基を有さないとは、ポリマー主鎖を構成する炭素原子数の1×106個あたり、ポリマーが有する酸素含有極性基の数が、500個未満であることを意味する。酸素含有極性基の数は、100個以下が好ましく、50個未満がより好ましい。酸素含有極性基の数の下限は、通常、0個である。
【0020】
ポリマー(2)は、ポリマー鎖の末端基として酸素含有極性基を生じない重合開始剤や連鎖移動剤等を使用して製造されてもよく、酸素含有極性基を有するFポリマーをフッ素化処理して製造されてもよい。
フッ素化処理の方法としては、フッ素ガスを使用する方法(特開2019-194314号公報等を参照)が挙げられる。
【0021】
本発明における熱伝導性フィラーの熱伝導率は、1W/mK以上が好ましく、100W/mK以上がより好ましい。熱伝導率は、300W/mK以下が好ましい。
熱伝導性フィラーは、無機物を含むフィラーであるのが好ましい。無機物としては、金属、金属酸化物、セラミックが好ましく、具体的には、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、酸化アルミニウム、酸化鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジウム、酸化セリウム、酸化ニオブ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、グラファイト、カーボンブラック、フラーレン、水酸化アルミニウム、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化ケイ素が挙げられ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジウム、酸化セリウム、酸化ニオブ、窒化ホウ素又は窒化アルミニウムが好ましく、酸化アルミニウム又は窒化ホウ素がより好ましい。
熱伝導性フィラーは、1種を用いてよく、2種以上を用いてもよい。
【0022】
熱伝導性フィラーの表面は、シランカップリング剤で表面処理されているのが好ましく、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランで表面処理されているのがより好ましい。
【0023】
熱伝導性フィラーのD50は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。熱伝導性フィラーのD50は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。この場合、熱伝導性フィラーが分散しやすく、ベースシート層から脱落しにくい。
熱伝導性フィラーは、熱伝導異方性を有していてもよい。
熱伝導性フィラーの形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機フィラーの具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、平板状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられる。無機フィラーは中空状であってもよく、中空状のフィラーと、非中空状のフィラーとを含んでもよい。
【0024】
熱伝導性フィラーは、鱗片状又は球状であるのが好ましい。かかるフィラーは、分散性に優れやすい。
熱伝導性フィラーの形状が、鱗片状である場合、熱伝導性フィラーがベースシート層中で配向しやすい。この場合、熱伝導性フィラーのパスが形成され、本シートが熱伝導性に一層優れやすい。熱伝導性フィラーが鱗片状の異方性フィラーである場合、ベースシート層に熱伝導異方性を付与でき、本シートの厚さ方向の熱伝導率を向上できるため好ましい。
鱗片状である熱伝導性フィラーのアスペクト比は5以上が好ましく、10以上がより好ましい。アスペクト比は、1000以下がより好ましい。
熱伝導性フィラーは、鱗片状の熱伝導性フィラーと、球状の熱伝導性フィラーの混合物であってもよい。この場合、鱗片状の熱伝導性フィラーが配向しやすく、本シートが熱伝導性に優れやすい。かかる熱伝導性フィラーの具体例としては、窒化ホウ素を含む鱗片状のフィラーと、酸化アルミニウムを含む球状のフィラーの混合物が挙げられる。
【0025】
熱伝導性フィラーの好適な具体例としては、シリカフィラー(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された酸化チタン(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカフィラー(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルクフィラー(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイトフィラー(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
【0026】
本シートにおけるポリマー組成物は、酸素含有極性基を有するFポリマーと熱伝導性フィラーとを含むか、Fポリマーと熱伝導性フィラーとの複合粒子を含む。
ポリマー組成物は、酸素含有極性基を有するFポリマー又は複合粒子のいずれか一方のみを含んでいてもよく、酸素含有極性基を有するFポリマー及び複合粒子の両方を含んでいてもよい。また、複合粒子におけるFポリマーは、酸素含有極性基を有するFポリマーであってもよい。
【0027】
ポリマー組成物に含まれる酸素含有極性基を有するFポリマーは、酸素含有極性基を有するFポリマーの粒子(以下、「F粒子」とも記す。)として含まれるのが好ましい。
F粒子は、酸素含有極性基を有するFポリマーを含有する粒子であり、F粒子中の酸素含有極性基を有するFポリマーの量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であるのがさらに好ましい。
F粒子のD50は、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、6μm以下がさらに好ましく、3μm以下が特に好ましい。F粒子のD50は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、F粒子のD90は、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。この場合、緻密なベースシート層を形成しやすい。
【0028】
F粒子は、酸素含有極性基を有するFポリマーと異なる他の樹脂を含有してもよい。
他の樹脂の例としては、酸素含有極性基を有さないFポリマー、芳香族ポリマーが挙げられる。芳香族ポリマーは、芳香族ポリイミド、芳香族マレイミド、スチレンエラストマーのような芳香族エラストマー、芳香族ポリアミック酸が挙げられる。
【0029】
ポリマー組成物に含まれる複合粒子は、Fポリマーをコアとし、Fポリマーのコアの表面に熱伝導性フィラーが付着している態様(以下、「態様I」とも記す。)、及び、熱伝導性フィラーをコアとし、熱伝導性フィラーの表面にFポリマーが付着している態様が好ましく、態様Iがより好ましい。態様Iの場合、ベースシート層で熱伝導性フィラーがパスを形成しやすく、本シートが熱伝導性に優れやすい。ここで、「コア」とは、複合粒子の粒子形状を形成するのに必要な核(中心部)を意味し、複合粒子の組成における主成分を意味するのではない。
【0030】
コアの表面に付着する付着物(熱伝導性フィラー又はFポリマー)は、コアの表面の一部にのみ付着していてもよく、その大部分乃至全面に亘って付着していてもよい。前者の場合、付着物は埃状にコアの表面にまとわり付くような状態、換言すれば、コアの表面の多くの部分を露出させた状態となっているとも言える。後者の場合、付着物はコアの表面に満遍なくまぶされた態様であるか、又はコアの表面を被覆した状態となっているとも言え、かかる複合粒子は、コアとコアを被覆するシェルとからなるコア・シェル構造を有するとも言える。
【0031】
態様Iの場合、Fポリマーのコアは、Fポリマーの単一粒子で構成されているか、Fポリマーの粒子の集合物で構成されているのが好ましい。態様Iの複合粒子は、FポリマーのコアのD50を熱伝導性フィラーのD50よりも大きく設定し、Fポリマーの量を熱伝導性フィラーの量よりも多く設定するのが好ましい。
態様Iの場合、FポリマーのコアのD50は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。FポリマーのコアのD50は、50μm以下がより好ましい。
態様Iの場合、熱伝導性フィラーのD50は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。熱伝導性フィラーのD50は、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0032】
態様Iの複合粒子において、熱伝導性フィラーのD50は、FポリマーのコアのD50を基準として、0.001~0.5が好ましく、0.01~0.3がより好ましい。
態様Iの複合粒子のD50は、70μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。態様Iの複合粒子のD50は、1μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
態様Iの複合粒子における、熱伝導性フィラーの量は、Fポリマー100質量部に対して1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。その上限は、70質量部が好ましく、50質量部がより好ましい。
態様Iの複合粒子における熱伝導性フィラーの形状は球状又は鱗片状が好ましく、鱗片状であるのが好ましい。かかる場合、熱伝導性フィラーがベースシート層中でパスを形成しやすく、本シートが熱伝導性に優れやすい。
熱伝導性フィラーはFポリマーのコアに埋入していてもよい。
【0033】
複合粒子は、さらに表面処理されていてもよい。かかる表面処理の具体例としては、態様Iの複合粒子をシロキサン類(ポリジメチルシロキサン等)又はシランカップリング剤により表面処理する方法が挙げられる。
複合粒子は、Fポリマーの粒子と熱伝導性フィラーとを、Fポリマーの溶融温度以上の温度かつ浮遊状態にて衝突させる方法、Fポリマーの粒子と熱伝導性フィラーとを、押圧又は剪断状態にて衝突させる方法、Fポリマーの粒子と熱伝導性フィラーとを含有する液状組成物を剪断処理して、Fポリマーの粒子を凝固させる方法により製造するのが好ましい。
【0034】
ポリマー組成物は、F粒子と複合粒子とを含むのが好ましい。この場合、複合粒子により熱伝導性フィラーのパスが形成されやすく、また、別個に含まれるF粒子によりベースシート層が緻密になりやすいため、本シートが熱伝導性と機械強度とに優れやすい。
複合粒子のD50に対する、F粒子のD50の比は、0.01~5が好ましく、0.03~1がより好ましい。
ポリマー組成物における、複合粒子の含有量に対する、F粒子の含有量の比は、0.1~5が好ましく、0.1~1がより好ましい。
【0035】
ポリマー組成物におけるFポリマーの含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。Fポリマーの含有量は、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
ポリマー組成物における熱伝導性フィラーの含有量は、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。熱伝導性フィラーの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
ポリマー組成物におけるFポリマーの含有量に対する熱伝導性フィラーの含有量の比は、0.2~15が好ましく、1~10がより好ましい。この場合、ベースシート層が折り曲げ性等の機械強度と熱伝導性とに優れやすい。
【0036】
ポリマー組成物は、さらに他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂は、熱硬化性であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。他の樹脂は、芳香族性ポリマー及びFポリマー以外のフッ素樹脂が好ましい。
芳香族性ポリマーとしては、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリエステル、Fポリマー以外のフッ素樹脂が挙げられる。
Fポリマーとは異なるフッ素樹脂としては、非熱溶融性のPTFEが挙げられる。
他の樹脂は、ポリマー組成物中で、Fポリマー及び熱伝導性フィラーと、それぞれ別個に含まれていてもよく、Fポリマーとの複合体又は熱伝導性フィラーとの複合体として含まれていてもよい。複合体としては、複合粒子が挙げられ、具体的には、非熱溶融性のPTFEをコアとし、かかるコアの表面に熱伝導性フィラーが付着している複合粒子が挙げられる。
【0037】
ポリマー組成物は、さらに、分散媒、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、シランカップリング剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、成形助剤等の他の成分を含んでいてもよい。
ポリマー組成物は、液状であっても、粉状であってもよい。
【0038】
本シートにおける粘着樹脂層は、粘着樹脂組成物からなる層であり、粘着樹脂組成物から形成された層である。粘着樹脂層に含まれる粘着樹脂は、樹脂であってもよく、これを形成する前駆体であってもよい。
粘着樹脂としては、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。粘着樹脂は、熱硬化性であってもよく、熱可塑性であってもよい。粘着樹脂は、熱伝導性の観点から、アクリル樹脂又はシリコーンが好ましく、さらに耐熱性の観点から、シリコーンがより好ましい。本シートにおける粘着樹脂層は、シリコーンを含むシリコーン組成物からなる層、換言すれば、シリコーン組成物から形成される層であるのが好ましい。
粘着樹脂は、1種を用いてよく、2種以上を用いてもよい。
【0039】
アクリル樹脂は、ガラス転移温度が-20℃以下、かつ溶融粘度が50~700Pa・sであるアクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びイソプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリレートの重合体であるのが好ましい。
【0040】
シリコーンは、粘着樹脂層の粘着性を発現するシリコーンであれば、特に限定されず、硬化反応性シリコーン、シリコーンゴム、又はシリコーンレジンであるのが好ましい。シリコーンは、70℃における粘度が400Pa・s以下であるのが好ましい。
硬化反応性シリコーンとしては、架橋反応型シリコーン、付加反応型シリコーンが挙げられる。また、硬化反応性シリコーンは、部分硬化物として含まれていてもよい。
シリコーンゴムとしては、フェニル基を有しているオルガノポリシロキサン(特に、メチルフェニルシロキサンを主な構成単位としているオルガノポリシロキサン)を含むシリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムにおけるオルガノポリシロキサンには、必要に応じて、ビニル基などの各種官能基が導入されていてもよい。
シリコーンレジンとしては、構成単位「R3SiO1/2」からなる単位、構成単位「SiO2」からなる単位、構成単位「RSiO3/2」からなる単位、及び、構成単位「R2SiO」からなる単位からなる群より選択される少なくともいずれか1種の単位を有する(共)重合体からなるオルガノポリシロキサンを含むシリコーンレジンが挙げられる。なお、上記構成単位におけるRは、炭化水素基又はヒドロキシル基を示す。
【0041】
粘着樹脂層は、熱伝導性フィラーを含んでもよい。粘着樹脂層における熱伝導性フィラーの定義及び範囲は、好適な態様も含めて、ポリマー組成物における熱伝導性フィラーのそれらと同様である。
粘着樹脂層における熱伝導性フィラーは、ポリマー組成物における熱伝導性フィラーと同じであってもよく、異なっていてもよい。
粘着樹脂層は、さらに、分散媒、硬化触媒、架橋剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃性付与剤、界面活性剤、及び着色剤(顔料、染料等)等の添加剤を含んでもよい。
シリコーンを含む粘着樹脂層を形成する粘着樹脂組成物の具体例としては、信越化学工業株式会社製の「PCS-TC-10」、「PCS-TC-11」、「PCS-TC-20」、東レ・ダウコーニング株式会社製の「SD4585PSA」が挙げられる。これらの組成物には、さらに硬化触媒を配合してもよい。
【0042】
本シートのベースシート層の厚さは、10~3000μmが好ましく、30~1000μmがより好ましく、100~1000μmがさらに好ましい。この場合、本シートが低線膨張性に優れやすく、反りが発生しにくい。
ベースシート層におけるFポリマーの含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。Fポリマーの含有量は、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
ベースシート層における熱伝導性フィラーの含有量は、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。熱伝導性フィラーの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
ベースシート層におけるFポリマーと熱伝導性フィラーとの合計の含有量に対する、熱伝導性フィラーの含有量の比は、0.05~15が好ましく、1~10がより好ましい。この場合、ベースシート層が折り曲げ性等の機械強度と熱伝導性とに優れやすい。
【0043】
本シートの粘着樹脂層の厚さは、0.1~300μmが好ましく、1~200μmがより好ましい。この場合、本シートが熱伝導性と剥離強度とに優れやすい。
粘着樹脂層は、シリコーンを60質量%以上含むのが好ましく、80質量%以上含むのがより好ましい。
本シートは、ベースシート層の少なくとも一方の表面に、粘着樹脂層が直接設けられていればよく、ベースシート層の両面に、粘着樹脂層が直接設けられていてもよい。粘着樹脂層は、ベースシート層の両面に、直接設けられているのが好ましい。この場合、本シートは、接着性に優れやすい。
【0044】
本シートは、Fポリマーと熱伝導性フィラーとを含むベースシート層と粘着樹脂層とを有するため、耐熱性、電気特性、熱伝導性(放熱性)、耐擦傷性、他の材料との接着性、剥離強度等の物性に優れる。よって、本シートは、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板、特に自動車向けの放熱基板として有用である。
【0045】
本シートは、無線通信デバイスの放熱部材としても好適に使用できる。例えば、樹脂等からなる基材と、基材に形成されたアンテナパターンと、アンテナパターンに接続された給電回路であるRFICパッケージとを有する無線通信デバイスにおいて、RFICパッケージの周囲に本シートを配置すれば、RFICパッケージの放熱を促し、その昇温を効果的に抑制できる。この場合、本シートは、アンテナの放射を妨げない観点から、RFICパッケージの、アンテナパターンが設けられた面とは反対側の表面に配置するのが好ましい。かかる無線通信デバイスとしては、国際公開第2020/008691号や国際公開第2020/031419号に記載の無線通信デバイスが挙げられる。
【0046】
本シートは、以下に記載するシートの製造方法により製造するのが好ましい。
なお、本シートのベースシート層を形成する方法としては、以下に記載するシート層の形成方法の他に、粉状の上述したポリマー組成物を溶融押出成形又は射出成形する方法も挙げられる。
【0047】
本発明のシートの製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、Fポリマーの粒子と熱伝導性フィラーと液状分散媒とを含む液状ポリマー組成物を基材に塗布し、加熱して、Fポリマー及び熱伝導性フィラーを含むシート層を形成し、シート層の表面に粘着樹脂組成物を直接付与して粘着樹脂層を形成し、基材を除去して、シート層と、シート層の表面に直接設けられた粘着樹脂組成物からなる粘着樹脂層とを有するシートを得る方法である。
本法におけるFポリマー、Fポリマーの粒子、熱伝導性フィラー、粘着樹脂組成物及び粘着樹脂層のそれぞれの範囲は、好適な態様も含めて、本シートにおける範囲と同様である。また、本法におけるベースシート層の範囲は、好適な態様も含めて、本シートにおけるベースシート層の範囲と同様である。
【0048】
本法における液状ポリマー組成物は、液状分散媒を含む、上述したポリマー組成物であるのが好ましい。
液状分散媒は、Fポリマーと反応しない分散媒である。液状分散媒の沸点は、75℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、本分散媒の沸点は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
液状分散媒は、水であってもよく、非水系分散媒であってもよく、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン又はシクロペンタノンがより好ましい。
【0049】
液状ポリマー組成物における液状分散媒の含有量は、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。液状分散媒の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
液状分散媒は、1種でも2種以上の混合物でもよい。液状分散媒は、液状ポリマー組成物から得られる成形物の成分分布の均一性の低下や空隙の抑制の観点から、脱気されているのが好ましい。
【0050】
液状ポリマー組成物は、分散性を向上する観点から、さらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
液状ポリマー組成物の25℃における粘度は、50~5000mPa・sが好ましく、100~1000mPa・sがより好ましい。ポリマー組成物のチキソ比は、1~2.5が好ましく、1.2~2がより好ましい。この場合、液状ポリマー組成物が分散性とハンドリング性とに優れやすい。
【0051】
本法における塗布は、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等の方法によって実施できる。
本法における加熱は、一定温度にて1段階で行ってもよく、異なる温度にて2段階以上で行ってもよい。液状ポリマー組成物からのシート層の形成は、液状分散媒を除去した後に、さらにFポリマーを焼成してFポリマーの溶融焼成物を形成するのが好ましい。この場合、シート層が緻密になりやすい。
【0052】
液状分散媒の除去の温度は、液状分散媒の沸点以下の温度が好ましく、沸点より50~150℃低い温度がより好ましい。液状分散媒を除去する工程では空気を吹き付けるのが好ましい。
Fポリマーの焼成の温度は、300~400℃が好ましい。
加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法が挙げられる。
加熱は、常圧下及び減圧下のいずれの状態で行ってもよい。
【0053】
シート層は、さらに加圧成形処理をしてもよい。加圧成形処理としては、Fポリマーの熱溶融点以上の温度、かつ、圧力0.05~50MPaにて、1~15分間プレスする処理が挙げられる。この場合、ベースシート層が緻密になり、本法のシートの柔軟性と熱伝導性が一層向上しやすい。
シート層の表面は、粘着樹脂層との接着性を向上する観点から、粗面化処理してもよい。粗面化処理の具体例としては、プラズマ処理、コロナ処理、スパッタエッチング処理、イオンエッチング処理、サンドブラスト処理、アルカリエッチング処理が挙げられる。
さらに、シート層は、複数の層を有する積層体として形成されていてもよい。
【0054】
本法における基材としては、樹脂フィルム又は金属箔が好ましく、離型樹脂フィルム(フッ素樹脂フィルム、離型層を有する樹脂フィルム等)、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金(42合金も含む。)、アルミニウム、アルミニウム合金が挙げられ、アルミニウムが好ましい。金属箔の表面には、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層、粗化処理層、シランカップリング剤処理層が設けられていてもよい。
基材の厚さは、1~3000μmが好ましく、5~100μmがより好ましい。
【0055】
本法における粘着樹脂層の形成方法としては、シート層の表面に粘着樹脂組成物からなるシートを直接圧着する方法、シート層の表面に粘着樹脂組成物を直接塗布する方法が挙げられる。粘着樹脂組成物は、圧着若しくは塗布前又は塗布後に加熱されてもよく、部分硬化されていてもよい。粘着樹脂組成物としては、上述した粘着樹脂を含む液状組成物が挙げられ、市販品を組み合せて調製できる。
また、粘着樹脂層の形成においては、別の基材表面に粘着樹脂層を形成し、その粘着樹脂層とシート層とを接触させて圧着してもよい。
本法における基材の除去は、粘着樹脂層を形成した後に、基材をエッチングして行うか、又は、基材を剥離して行うのが好ましい。なお、基材の除去は、本法のシートを形成した後に行ってもよい。
【0056】
エッチングは、ウエットエッチング及びドライエッチングのいずれも使用できる。基材層が金属箔である場合、金属箔は、エッチングにより除去するのが好ましく、ウエットエッチングにより除去するのがより好ましい。この場合、ウエットエッチングは、酸溶液を用いて行うのが好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有すれば、酸溶液により活性化するので、金属箔が除去された後のシート層の接着性がより高まりやすい。ここで、酸素含有極性基の活性化の一例としては、酸無水物基の1,2-ジカルボン酸基への変換が挙げられる。なお、酸溶液には、塩酸、希硝酸又はフッ酸等の無機酸水溶液を使用できる。
また、粗化処理された金属箔を使用する場合、シート層の表面(接触面)には、微小な凹凸が転写される。このため、シート層の表面に他の基材を接着する際には、他の基材との接着性がより良好となる。
【0057】
本法においては、さらに、得られた2つのシートを、シート層同士が接触するように対向配置し、熱圧着して、2つの前記シート層を一体化して圧着シート層を形成し、圧着シート層と、圧着シート層の両面に直接設けられた粘着樹脂層とを有するシートを得てもよい。かかるシートにおける圧着シート層は、Fポリマーの溶融焼成物が緻密に含まれるため、シートの柔軟性と熱伝導性とが一層向上しやすい。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[粒子]
粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、酸素含有極性基を有するポリマー1(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:2.1μm)
粒子2:TFE単位及びPPVE単位からなる、酸素含有極性基を有さないポリマー(溶融温度305℃)からなる粒子(D50:1.8μm)
粒子3:ポリマー1からなる粒子(D50:25μm)
【0059】
[熱伝導性フィラー]
フィラー1:酸化アルミニウムからなる、球状のフィラー(D50:3μm)
フィラー2:窒化ホウ素からなる、鱗片状のフィラー(D50:7μm)
[ノニオン性界面活性剤]
界面活性剤1:CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2(CF2)6FとCH2=C(CH3)C(O)(OCH2CH2)23OHとのコポリマー
[粘着樹脂組成物]
粘着樹脂組成物1:付加反応型シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング株式会社製、「SD4585PSA」)と白金系硬化触媒(東レ・ダウコーニング株式会社製、「SRX212」)との混合物
[液状分散媒]
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
【0060】
2.ポリマー組成物の調製
(例1)
まず、ポットに、粒子1と界面活性剤1とNMPとを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、組成物を調製した。別のポットに、フィラー1と界面活性剤1とNMPとを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、組成物を調製した。
さらに別のポットに、両者の組成物を投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、粒子1(20質量部)、フィラー1(20質量部)、界面活性剤1(4質量部)及びNMP(56質量部)を含む、液状のポリマー組成物1を得た。
【0061】
(例2~4)
粒子、熱伝導性フィラーの種類と量とを、下表1に示す通り変更した以外は、例1と同様にして、液状のポリマー組成物2~4を得た。
【0062】
(例5)
70質量部の粒子3と30質量部のフィラー2との混合物を調製した。
次に、円筒状の容器内で高速で回転する撹拌翼により、粒子を攪拌しつつ、容器の内壁と撹拌体との間で粒子を挟持して応力を加える粉体処理装置(ハイブリダイゼーションシステム)に、混合物を投入した。その後、粒子3とフィラー2とを高温乱流の雰囲気下で浮遊させつつ衝突させ、それらの間に応力を付与して複合化処理して、ポリマー1をコアとし、このコアの表面にフィラー2が付着してシェルが形成されたコア・シェル構造の球状の複合粒子1(平均粒子径:35μm)を得た。なお、処理中の装置内は窒素雰囲気下、温度を100℃以下に保持し、処理時間は15分とした。
フィラー1に変えて複合粒子1を用い、下表1に示す通りの量の粒子1と複合粒子1とを用いた以外は、例1と同様にして、液状のポリマー組成物5を得た。
【0063】
【0064】
3.熱伝導性シートの製造
アルミ箔(厚さ:100μm)の表面に、ポリマー組成物1をグラビアリバース法により塗工して、液状被膜を形成した。次いで、この液状被膜が形成されたアルミ箔を、120℃の乾燥炉に5分間で通し、加熱により乾燥させた。その後、窒素雰囲気下の遠赤外線オーブン中で、340℃にて3分間、加熱した。これにより、アルミ箔の表面にベースシート層(厚さ:100μm)が形成された金属張積層体1を製造した。
粘着樹脂組成物1を、シリコーン系離型剤で表面処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの処理面上に塗布した後、150℃で3分間加熱して、PETフィルム上に粘着樹脂層(厚さ:2μm)を形成した。
【0065】
粘着樹脂層と、金属張積層体1のベースシート層とを貼り合せ、25℃にて圧着させて、ベースシート層の表面に直接、粘着樹脂層を設けた。PETフィルムを剥離により、さらにアルミニウム箔をウエットエッチングにより、それぞれ除去して、ベースシート層と粘着樹脂層とを有するシートを得た。さらに2枚のシートを、ベースシート層同士が接触するように対向配置し、300℃にて熱圧着して、粘着樹脂層、ベースシート層、粘着樹脂層をこの順に有する、熱伝導性シート1を得た。
【0066】
ポリマー組成物1をポリマー組成物2~5に変更した以外は、熱伝導シート1と同様にして、熱伝導性シート2~5を得た。
【0067】
4.評価
4-1.熱伝導性の評価
それぞれの熱伝導シートの中心部から10mm角の試験片を切り出し、その面内方向における熱伝導率(W/m・K)を測定し、以下の基準に従って評価した。
[評価基準]
○:3W/m・K以上
△:1W/m・K以上3W/m・K未満
×:1W/m・K未満
【0068】
4-2.剥離強度の評価
それぞれの熱伝導シートの中心部から矩形状(長さ:100mm、幅:10mm)の試験片を切り出した。そして、試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を固定し、引張り速度50mm/分、長さ方向の片端から試験片に対して90°で、ベースシート層と粘着樹脂層とを剥離させた。この際の最大荷重を剥離強度(N/cm)として測定し、以下の基準に従って評価した。
[評価基準]
○:剥離強度が5N/cm以上
×:剥離強度が5N/cm未満
【0069】
4-3.折曲性の評価
それぞれの熱伝導シートの中心部から5mm角の試験片の四角い試験片を切り出した。そして、曲率半径(300μm)の条件で180°折り曲げ、上から荷重(50mN、1分間)をかけた後に折り曲げを戻し、試験片の外観を以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:折り目部分に外観異常は見られない
×:折り目部分に白化が見られた
それぞれの評価結果を、下表2にまとめて示す。
【0070】