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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050952
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20220324BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20220324BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20220324BHJP
   G01B 21/22 20060101ALI20220324BHJP
   G01B 21/02 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/04 A
G01N35/02 G
G01B21/22
G01B21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157159
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】忽滑谷 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】薮谷 恒
【テーマコード(参考)】
2F069
2G058
【Fターム(参考)】
2F069AA42
2F069AA71
2F069CC07
2F069DD13
2F069GG41
2F069GG62
2F069JJ17
2F069QQ03
2G058AA05
2G058CB03
2G058CD03
2G058CF02
2G058CF17
2G058GB08
2G058GB10
2G058GD05
2G058GE08
2G058GE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反応ディスクあるいは試薬ディスクが正しく取り付けられなかった場合に生じる不具合を未然に防止することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応容器5が保持され、回転軸301を中心に回転動作を行う反応ディスク4と、反応ディスク4を制御するコンピュータとを有する自動分析装置において、反応ディスク4には検知器201が設置されており、検知器201は、設置された反応ディスク4の回転動作時に加わる加速度または角速度を検出し、コンピュータは、検知器201の検出する加速度または角速度に基づき、検知器201が設置された反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向を算出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器が保持され、回転軸を中心に回転動作を行う反応ディスクと、
試薬ボトルが保持され、回転軸を中心に回転動作を行う試薬ディスクと、
前記反応ディスク及び前記試薬ディスクを制御するコンピュータとを有し、
前記反応ディスク及び/または前記試薬ディスクに検知器が設置されており、
前記検知器は、設置された前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクの回転動作時に加わる加速度または角速度を検出し、
前記コンピュータは、前記検知器の検出する加速度または角速度に基づき、前記検知器が設置された前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクの傾斜量及び傾斜方向を算出する自動分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記検知器が設置された前記反応ディスクに保持された反応容器または前記試薬ディスクに保持された試薬ボトルに対してプローブを降下させるプローブ駆動機構を有し、
前記コンピュータは、前記検知器が設置された前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクを取り外してメンテナンスを行う場合において、前記メンテナンスの前後において算出した前記検知器が設置された前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクの傾斜量及び傾斜方向に基づき、前記メンテナンスの前後における前記プローブが降下される前記反応容器または前記試薬ボトルの底面位置の高さ差分を算出する自動分析装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記コンピュータは、前記高さ差分と第1基準値とを比較することにより、前記高さ差分に有意な差があるかどうかを判定し、
前記第1基準値は、前記プローブ駆動機構が前記プローブを降下させる動作分解能または前記検知器の検知分解能に基づき定められる自動分析装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記コンピュータは、前記高さ差分に有意な差がある場合に、前記高さ差分と第2基準値とを比較し、前記第2基準値を超えている場合には警報を発生し、前記第2基準値以下の場合には前記プローブ駆動機構が前記プローブを降下させる高さを前記高さ差分に応じて補正する自動分析装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記検知器は加速度センサであり、
前記検知器は、前記検知器が取り付けられる前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクの面に垂直な第1の方向、前記第1の方向に垂直な面内に含まれ、前記検知器から前記検知器が設置された前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクの回転軸に向かう第2の方向、及び前記面内に含まれ前記第2の方向と垂直な第3の方向のうち、少なくとも2つの方向に対して感度を有する自動分析装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記コンピュータは、前記検知器が検出した前記第1の方向に加わる加速度の大きさに基づき、前記前記検知器が設置された前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクの傾斜量の絶対値を算出し、前記検知器が検出した前記第2の方向または前記第3の方向に加わる加速度の周期性に基づき、前記前記検知器が設置された前記反応ディスクまたは前記試薬ディスクの傾斜方向及び傾斜量の符号を算出する自動分析装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記反応ディスク及び前記試薬ディスクのそれぞれに前記検知器が設置されており、
工場出荷時あるいは据付時において、前記コンピュータは、前記検知器の検出する加速度または角速度に基づき、前記反応ディスク及び前記試薬ディスクのそれぞれの傾斜量及び傾斜方向を算出し、前記反応ディスクの傾斜量及び傾斜方向と前記試薬ディスクの傾斜量及び傾斜方向との間に有意な差がある場合には警報を発生する自動分析装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記コンピュータは、前記反応ディスクの傾斜量及び傾斜方向と前記試薬ディスクの傾斜量及び傾斜方向との間に有意な差がない場合には、前記反応ディスク及び前記試薬ディスクの傾斜量及び傾斜方向を装置本体の傾きとみなし、前記装置本体の傾きが所定の判定値よりも大きな場合には警報を発生する自動分析装置。
【請求項9】
請求項7において、
機構位置を初期化するタイミングにおいて、前記コンピュータは、前記検知器の検出する加速度または角速度に基づき、前記反応ディスク及び前記試薬ディスクのそれぞれの傾斜量及び傾斜方向を算出し、前記反応ディスクの傾斜量及び前記試薬ディスクの傾斜量の大きい値が所定の判定値よりも大きい場合には警報を発生する自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿などの分析を行う自動分析装置のうち、サンプル中の測定対象成分の量が比較的多い分析には、反応する試薬を、反応容器中でサンプルと混合、反応させ、反応液の色の変化を測定する比色分析が用いられる。比色分析では、上方が開口した反応容器にサンプルと試薬とを添加し、反応液の色の変化を複数波長の吸光度変化として測定する。血液サンプルの場合は、サンプル量が多く取れないため、なるべく少量のサンプルで多くの項目の分析が可能となることが望ましい。また、近年、分析のコストダウンが求められており、試薬の使用量をより少なくすることが求められている。そのため、サンプルあるいは試薬がプローブに付着し、分析結果に影響を及ぼさないよう、プローブを反応容器内の最適な位置に降下する必要がある。
【0003】
特許文献1には、反応容器にサンプルプローブが接触したときに生じるサンプルプローブの振動変化を検出する振動検知機構をサンプリング機構に設け、検出した振動変化に基づき、プローブが反応容器に接触した時点を判定し、各反応容器底面への底面までの距離を測定する自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-64673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反応ディスクは、メンテナンスのためユーザにより取り外される機会があるため、取り外した際にディスク取り付け面にゴミなどが付着することにより、傾いて取り付けられるリスクがある。傾いて取り付けられた場合、反応ディスクに保持された反応容器底の高さが変動してしまう。サンプルプローブは通常、試薬吐出量から反応容器の外形を元に吐出後の液面高さを計算し、液中に降下しないよう降下高さが調整される。しかしながら、反応ディスクが傾いていると、反応ディスクが水平の場合よりも、例えば反応容器底の高さが高くなり、実液面高さが水平の状態で計算された液面高さよりも高くなることがある。プローブは水平の状態で計算された高さを元に降下するため、この場合、液中にプローブが下降し、サンプルあるいは試薬がプローブに付着してしまうことが起こりうる。あるいは、液中に降下しないまでも、近接した液面に対してサンプルを吐出することにより、サンプルあるいは試薬が跳ねてプローブに付着することが起こりうる。プローブにサンプルや試薬が付着するということは、反応容器中のサンプル量、試薬量が予定量よりも減少することを意味するため、分析結果に影響が出るリスクがある。
【0006】
反応ディスクのみならず、試薬ボトルを保持する試薬ディスクの場合も同様である。試薬ボトルから試薬プローブにて試薬を吸引する動作では、試薬プローブと試薬ボトル底面間の距離に対して、残試薬量から使用試薬量を減算した試薬量、及び試薬ボトルの外形から、吸引動作終了後の想定残試薬液面と試薬ボトル底面間の距離を算出し、液面より深い位置に試薬プローブを降下させたのち吸引動作を行う。しかしながら、試薬ボトル底面が低くなる方向に試薬ディスクが傾いた場合、試薬量と試薬ボトルの外形とから計算された液面よりも実液面が低くなってしまうため、試薬プローブの降下位置が液面に対して高い位置に降下してしまう場合が考えられる。これにより、試薬が吸引できなくなる場合や、吸引途中で試薬プローブ先端が液面より高くなり、既定の試薬量を下回ったり、既定量の吸引ができなかったり、泡が混入してしまったりするリスクがある。
【0007】
特許文献1では、反応容器底の高さを算出し、降下位置を最適化しているが、反応ディスクの傾きは検出していないため、反応ディスクが傾斜して取り付けられている場合には期待通りの降下位置の最適化を行うことができない。
【0008】
本発明では、反応ディスクあるいは試薬ディスクの傾斜量及び傾斜方向を検知し、警報を発生、あるいはプローブの降下位置補正をすることができる自動分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態である自動分析装置は、反応容器が保持され、回転軸を中心に回転動作を行う反応ディスクと、試薬ボトルが保持され、回転軸を中心に回転動作を行う試薬ディスクと、反応ディスク及び試薬ディスクを制御するコンピュータとを有し、反応ディスク及び/または前記試薬ディスクに検知器が設置されており、検知器は、設置された反応ディスクまたは試薬ディスクの回転動作時に加わる加速度または角速度を検出し、コンピュータは、検知器の検出する加速度または角速度に基づき、検知器が設置された反応ディスクまたは試薬ディスクの傾斜量及び傾斜方向を算出する。
【発明の効果】
【0010】
反応ディスクあるいは試薬ディスクが正しく取り付けられなかった場合に生じる不具合を未然に防止することができる自動分析装置を提供する。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自動分析装置の概略図である。
図2】反応ディスクの上面図である。
図3】正常に取り付けられた反応ディスクの垂直方向の断面図である。
図4】傾いて取り付けられた反応ディスクの垂直方向の断面図である。
図5】検知器に加わるx方向及びz方向の加速度の時間変化を示す図である。
図6A】反応ディスクの傾斜有無による反応容器の底面位置の違いを示す図である。
図6B】反応ディスクの傾斜による反応容器の底面位置の違いを示す表である。
図7】メンテナンス時のディスク傾斜監視フローを示すフローチャートである。
図8】試薬ディスクの垂直方向の断面図である。
図9】装置傾斜監視フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【0014】
図1は、本発明が実施される一般的な自動分析装置の概略を示す。サンプリング機構1のサンプリングアーム2は上下すると共に回転し、サンプリングアーム2に取り付けられたサンプルプローブ3を用いて、左右に回転するサンプルディスク102に配置された試料容器101内の試料を吸引し、反応容器5へ分注するように構成されている。試料容器101のサンプルディスク102上への配置はサンプルディスク102上へ直接配置する、あるいは試験管(図示は無い)上に試料容器101を載せることも可能なユニバーサルな配置に対応可能な構造のものが一般的である。
【0015】
回転自在な試薬ディスク125上には分析対象となる複数の分析項目に対応する試薬ボトル112が配置されている。可動アームに取り付けられた試薬プローブ110は、試薬ボトル112から反応容器5へ所定量の試薬を分注する。
【0016】
サンプルプローブ3は、サンプル用ポンプ107の動作に伴ってサンプルの吸引動作、及び分注動作を実行する。試薬プローブ110は、試薬用ポンプ111の動作に伴って試薬の吸引動作、及び分注動作を実行する。各試料のために分析すべき分析項目は、キーボード121、またはCRT(表示装置)118の画面のような入力装置から入力される。この自動分析装置における各ユニットの動作はコンピュータ103により制御される。
【0017】
サンプルディスク102の間欠回転に伴って試料容器101はサンプル吸引位置へ移送され、停止中の試料容器内にサンプルプローブ3が降下される。その下降動作に伴ってサンプルプローブ3の先端が試料の液面に接触すると液面検出回路151から検出信号が出力され、それに基づいてコンピュータ103がサンプリングアーム2の駆動部の下降動作を停止するよう制御する。次にサンプルプローブ3内に所定量の試料を吸引した後、サンプルプローブ3は上死点まで上昇する。サンプルプローブ3が試料を所定量吸引している間は、サンプルプローブ3とサンプル用ポンプ107流路間の吸引動作中の流路内圧力変動を圧力センサ152からの信号を用いて圧力検出回路153で監視し、吸引中の圧力変動に異常を発見した場合は所定量吸引されていない可能性が高いため、当該分析データに対しアラームを付加する。
【0018】
次にサンプリングアーム2が水平方向に旋回し、反応ディスク4上の反応容器5の位置でサンプルプローブ3が下降し、反応容器5内で保持していた試料を分注する。試料が入った反応容器5が試薬添加位置まで移動された時に、該当する分析項目に対応した試薬が試薬プローブ110から添加される。サンプル、及び試薬の分注に伴って試料容器101内の試料、及び試薬ボトル112内の試薬の液面が検出される。試料、及び試薬が加えられた反応容器内の混合物は、攪拌器113により攪拌される。混合物が収容された反応容器が光度計115に移送され、各混合物の発光値、あるいは吸光度が測定手段としての光電子増倍管、または光度計により測定される。発光信号または受光信号は、A/D変換器116を経由し、インターフェイス104を介してコンピュータ103に入り、分析項目の濃度が計算される。
【0019】
分析結果は、インターフェイス104を介してプリンタ117に印字出力するか、またはCRT118に画面出力すると共に、メモリ122に格納される。測光が終了した反応容器5は、反応容器洗浄機構119の位置にて洗浄される。洗浄用ポンプ120は、反応容器へ洗浄水を供給すると共に、反応容器から廃液を排出する。図1の例では、サンプルディスク102に同心円状に3列の試料容器101がセットできるように3列の容器保持部が形成されており、サンプルプローブ3による試料吸引位置が各々の列に1個ずつ設定されている。以上が自動分析装置の各機構における一般的な動作である。
【実施例0020】
図2は、反応ディスク4の上面図である。反応ディスク4は円周上に複数の反応容器5を備え、反応ディスク4の裏面に反応ディスク4が回転しているときに加わる加速度または角速度を測定する検知器201を備えている。基準方向210は後述する反応ディスク4の傾斜方向を表す基準(0°)とする方向である。基準方向210は、反応ディスク4の中心(回転軸)を原点とし、その上面に平行な平面上の任意の方向として定義することができる。
【0021】
図3は正常に取り付けられた反応ディスク4の垂直方向の断面図である。検知器201から反応ディスク4の上面に沿って回転軸301に向かう方向をx方向、x方向に対して下方向に90度回転させた方向(反応ディスク4の上面に対して下向きに垂直な方向)をz方向とする。すなわち、x方向、z方向は検知器201を原点とする座標系を構成する。水平に設置された自動分析装置に反応ディスク4が正しく取り付けられ、反応ディスク4の回転軸301を中心に回転させた場合、検知器201のx方向に遠心加速度302が発生する。また、検知器201のz方向には反応ディスク4の回転の有無に関わらず、重力加速度303が加わる。検知器201として、例えば2軸の加速度センサを用いることにより、x方向、z方向それぞれの加速度を検出することができる。
【0022】
図4は、傾いて取り付けられた反応ディスク4の垂直方向の断面図である。以下、反応ディスク4の傾きを傾斜量と傾斜方向によって表すものとする。まず、傾いた反応ディスク4について、最も上方にある反応ディスクの外周上の点と最も下方にある反応ディスクの外周上の点とを結ぶ線を傾斜軸、傾斜軸と回転軸301との交点を含む水平面を基準面と定義する。傾斜量は傾斜軸と基準面とのなす角として定義され、検知器201が傾斜軸と基準面よりも上にある場合に正の傾斜量、基準面よりも下にある場合に負の傾斜量とする。また、傾斜方向は、上面視において、基準面より下にある傾斜軸の部分と基準方向210(図2参照)とのなす角として定義される。説明の簡単化のため、図4は、図2に示した状態の反応ディスク4を、基準方向210を傾斜軸とし、かつ検知器201が基準面よりも下方に位置するよう傾けた場合の断面図であるとする。反応ディスク4が水平面に対して傾きθを有していた場合、回転軸301を中心に反応ディスク4を回転させると、検知器201のx方向に対して遠心加速度302が加わる。また、反応ディスク4の回転の有無に関わらず、鉛直方向に重力加速度412が加わる。図4の例では傾斜方向がx方向に一致しているため、検知器201は、x方向に、遠心加速度302と重力加速度の傾斜軸方向成分413とを受け、z方向に重力加速度412のz方向成分414を受けることになる。
【0023】
図5に、検知器201のz方向に加わる加速度の時間変化(上段)、x方向に加わる加速度の時間変化(下段)を示す。それぞれ、水平状態の反応ディスク4(実線)および傾いた反応ディスク4(破線)を、回転軸301を中心に1回転させたときの加速度の時間変化を示している。この例では、時間t=0において、傾いた反応ディスクは、図4で説明した状態の傾きを有するものとする。
【0024】
図5上段に示すz方向に加わる加速度について説明する。反応ディスク4が水平の場合、検知器201は重力加速度を受け、その大きさは波形501に示されるように反応ディスク4の回転の影響を受けない。一方、反応ディスク4が傾いている場合、図4に示した通り、重力加速度はz方向と傾斜軸方向との2方向に分解され、反応ディスク4が水平である場合と比較すると、波形502に示される通り、z方向に加わる加速度は傾きθの大きさに応じて減少した大きさとなる。
【0025】
図5下段に示すx方向に加わる加速度について説明する。反応ディスク4が水平の場合、検知器201は回転軸301に向かう遠心加速度を受け、反応ディスク4が一定速度で回転していれば、その大きさは波形503に示されるように一定となる。一方、反応ディスク4が傾いている場合、図4に示した通り、遠心加速度に2方向に分解された重力加速度のうちx方向の成分が加わる。このとき、検知器201の座標系はx方向が常に回転軸301を向くのに対し、傾斜軸方向は変化しないため、重力加速度のx方向成分は反応ディスク4の回転に応じて周期的に変動する。具体的には、x方向が傾斜軸と同じ向きである場合に、重力加速度のx方向成分の大きさ(絶対値)は最大となり、x方向が傾斜軸と直交する場合に、重力加速度のx方向成分は0となる。
【0026】
以上より、検知器201で検知されるz方向の加速度の大きさを、反応ディスク4が水平の状態でのz方向の加速度の大きさと比較することによって、反応ディスク4の傾斜量の絶対値を検出することができる。また、検知器201で検知されるx方向の加速度の周期性から反応ディスク4の傾斜方向を検出することができる。検知器201が基準面よりも下に位置する場合、遠心加速度の向きと重力加速度のx成分の向きとは反対になる一方、検知器201が基準面よりも上に位置する場合、遠心加速度の向きと重力加速度のx成分の向きとは同じになる。したがって、波形503が極小点510,512となる時間tにおいて、検知器201は反応ディスク4の傾斜軸上、かつ基準面の下側に位置し、波形503が極大点511となる時間tにおいて、検知器201は反応ディスク4の傾斜軸上、かつ基準面の上側に位置することになる。したがって、波形503の極小点あるいは極大点をとる時間から傾斜方向と傾斜量の符号を検出することができる。
【0027】
反応ディスク4の回転制御はコンピュータ103が行っているため、反応ディスク4が回転している時間と、回転軸301周りの角速度、すなわちモータの回転数は、コンピュータ103より制御する際にメモリ122に保存してある情報であるため、既知である。また、反応ディスク4を回転させるときの初期状態(t=0)における、検知器201の位置(初期位置という)は、コンピュータ103による反応ディスク4の回転制御情報履歴をメモリ122に累積保存することによって算出できる。あるいは、反応ディスク4の回転を反応ディスク4のホームポジションから開始する場合には、反応ディスク4がホームポジションにある場合の検知器201の位置を記憶しておけばよい。なお、検知器201の位置は、上面視で検知器201と回転軸301とを結ぶ線(これを検知線と呼ぶ)と基準方向210とのなす角として定義する。このため、初期位置のことを初期角度ともいう。
【0028】
時間tにおける検知器201が受けるz方向の加速度をa、x方向の加速度aは、重力加速度をg、検知器201と回転軸301との検知線に沿った距離をr、反応ディスク4の回転角速度をω、初期状態(t=0)における検知線と基準方向210とのなす角である初期角度をφ、反応ディスク4の傾斜方向をφとすると、それぞれ(数1)、(数2)により表せる。なお、反応ディスク4は回転軸301を中心に反時計周りに回転するものとし、いずれの角度も基準方向210から反時計周りに計測した角度として定義される。
=gcosθ・・・(数1)
=rω-gsinθcos(ωt-φ+φ)・・・(数2)
検知器201のz方向およびz方向のセンサ出力にこれらの数式を適用することにより、反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向を算出することができる。
【0029】
例えば、検知器201にかかるz方向の加速度が9.80515m/s2のとき、重力加速度gは9.80665m/s2であるから、(数1)より反応ディスク4の傾斜量(絶対値)は1度となる。また、反応ディスク4の回転速度が反時計回りに0.3475 rad/s、x方向の重力加速度が時間t=0において-0.1497 m/s2であり、時間t=0における初期角度が180度において図5のようなグラフ特性を得た場合、(数2)より傾斜方向は180度となるため、反応ディスク4は基準方向210が基準面よりも上になるように1度の傾斜量をもって傾いていることがわかる。
【0030】
なお、検知器201をx方向とz方向に感度をもつ2軸の加速度センサを用いる例を説明したが、x方向をz方向の軸を中心に90度回転させたy方向とz方向とに感度をもつ2軸の加速度センサを用いても、同様に反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向を算出できる。検知器201のy方向には遠心加速度はかからないが、重力加速度のy方向の成分を受け、x方向の成分同様、周期的に変化する。また、x方向の成分とy方向の成分が分かれば、z方向の成分は算出できるので、結局、検知器201としては、x方向、y方向、z方向のうち少なくともいずれか2方向に感度を持つ検知器を用いることができる。さらに、検知器201として、x方向、y方向及びz方向の3軸の加速度センサを用いることで、反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向をより高精度に検出することができる。あるいは加速度センサに代えて、各方向周りの角速度を検出できる2軸または3軸の角速度センサを用いてもよい。
【0031】
検知器201は、検知器201で検知した加速度(例えば、加速度a,a)を、電圧に変換し、インターフェイス104を通じてコンピュータ103に送信する。コンピュータ103の傾斜算出部は、インターフェイス104を通じてメモリ122に保存されている反応ディスク4の回転制御情報を呼び出し、反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向を検出する。なお、検知器201は反応ディスク4により回転するため、検知器201とインターフェイス104との接続は無線接続とすることが望ましい。例えば、検知器201及びインターフェイス104に無線送受信可能なモジュールを実装し、検知器201において電圧に変化された加速度情報を無線により送受信する。
【0032】
図6Aに示すように、反応ディスク4が装置本体に対して傾きαだけ傾いている場合、反応ディスク4が傾斜していない場合と比較すると、反応容器5の底面高さは差分ΔHだけ変化する。例えば、試薬を吐出する場合、試薬吐出後の液面に対して余裕を見た高さにプローブ601を降下するが、反応ディスク4が傾斜している場合、想定されているプローブ601から反応容器の底面までの降下距離Hに対して、実際は差分ΔHだけ高い位置となるため、プローブ601は試薬とサンプルとの混合液体中に降下される可能性がある。
【0033】
そこで、プローブ601の降下距離Hから差分ΔHだけ、高い位置に降下するようにプローブ601の駆動機構を制御することにより、反応ディスク4が傾斜していた場合でも、試薬とサンプルとの混合液体中にプローブ601が降下することを防ぐことができる。差分ΔHは、反応ディスク4に傾斜がない場合のプローブ601下端から反応容器の底面位置までの距離Hから、反応ディスク4に傾斜がある場合のプローブ601下端から反応容器の底面位置までの距離Hを減算することで求められる。距離Hは規定値であり、距離H、差分ΔHは、コンピュータ103の位置算出部により、反応ディスク4の回転軸301から反応容器5底面中心までの直線距離L、反応容器の深さD(図3参照)及び傾斜算出部が算出した反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向を用いて算出できる。
【0034】
なお、差分ΔHを距離Hと規定値である距離Hとの差分として算出する例を示したが、メンテナンスの前後のそれぞれで反応ディスク4の傾きに基づき求めた距離Hとの差分として算出してもよい。その理由は後述する。この場合は、メモリ122に反応ディスク4の傾きの状態を検出するごとにその履歴を蓄積しておくようにする。
【0035】
差分ΔHが大きいと、プローブ駆動機構がプローブ601を反応容器5の側面や上面などに降下させてしまい、プローブ先端の曲がりや破損につながる可能性がある。そのため、差分ΔHに基づき、プローブ601の降下位置を補正可能であるかを判断する。差分ΔHが基準値を下回っていれば、前述の通り算出した差分ΔHに基づき、プローブ601の降下距離Hに補正を行う。これに対して、差分ΔHが基準値を上回る場合は、CRT118上で警報を発生する。警報発生後は装置を停止し、反応ディスク4の取り付けあるいはサービスエンジニアを呼ぶことを促す画面をCRT118上に表示する。
【0036】
例えば、直線距離L=200 mm、深さD=60 mm、また、プローブ先端から反応ディスク4の上面までの距離を20 mm、プローブ601を降下する反応容器5の位置が基準方向210から時計周りに10°回転させた位置であったとする。この場合において、取り外し前の反応ディスク4の傾きが状態1、再取り付け後の反応ディスクの傾きが状態2であった場合に、プローブ先端から反応容器底までの距離Hをそれぞれ算出した結果を図6Bに示す。状態1では、傾斜算出部によって求められたディスクの水平からの傾斜量が0.25°、傾斜方向が45°であり、プローブ601の先端から反応容器5の底までの距離は位置算出部により80.5 mmと計算され、状態2の場合、ディスクの水平からの傾斜量が-0.5°、傾斜方向が30°であり、プローブ601の先端から反応容器5の底までの距離は79.0 mmと計算されたとする。このように、反応ディスク4のプローブ601先端から反応容器5の底面までの距離の差分が1.5 mmと算出されたため、プローブ601の降下動作に対して、本来降下すべき位置に対して、1.5 mm上に降下するように補正を行う。
【0037】
例えば、反応容器5からの試料吸引時には、反応容器5に入っている試料の液面高さをメモリ122に保存されている試料の吐出量及び反応容器5の外形情報を参照し、コンピュータ103にて液面高さを計算してから、空吸い防止のためサンプルプローブ3を試料液面よりも低い位置に降下させ、吸引動作に合わせてサンプルプローブ3を降下させる。しかしながら、反応ディスク4の傾斜に伴い反応容器5が傾斜している場合、コンピュータ103にて反応ディスク4の傾斜のないことを前提に計算した液面よりも実液面が低いあるいは高い位置に来てしまうことが想定される。そこで、サンプルプローブ3を上下動させるモータ(プローブ駆動機構)の駆動量に補正を掛ける。例えば、パルスモータを使用している場合、補正高さを分解能で分割したパルス数だけ、予定していたパルス数に対して加算あるいは減算の計算をコンピュータ103にて行い、サンプルプローブ3を降下させる高さを変更することができる。
【0038】
同様に反応容器5に試薬を吐出する際も、メモリ122に保存されている試薬の予定吐出量及び反応容器5の外形情報を参照し、吐出前の液面高さ及び吐出後の液面高さをコンピュータ103にて計算してから、試料及び試薬の飛散防止のために試料液面付近に試薬プローブ110を降下してから試薬吐出動作を行う。しかしながら、反応ディスク4の傾斜に伴い反応容器5が傾斜している場合、コンピュータ103にて計算した液面よりも実液面が低い位置に来てしまう場合がある。その場合、試薬吐出時に試薬プローブ110が試料液面に対して高い位置にて試薬を吐出することになり、試薬が飛散するおそれがある。そこで、試薬プローブ110を上下動させるモータの駆動量に補正を掛ける。例えば、パルスモータ(プローブ駆動機構)を使用している場合、前述したサンプルプローブ3の補正と同様の補正を行い、試薬プローブ110の降下高さを変更する。
【0039】
図7に光源ランプ114の交換時など、ユーザが反応ディスク4を自動分析装置から取り外す必要があるメンテナンス時のディスク傾斜監視フローを示す。なお、自動分析装置本体の傾斜量に対する反応ディスク4の傾斜量を計算することが難しいため、メンテナンス前後の反応ディスク4の傾斜量の変化を観測することで補正を行う。これは以下の理由による。本実施例の反応ディスク4の傾き検出はその測定原理上、水平面に対する傾きとして検出される。一方、図6Aで説明したプローブの降下補正量を算出するための傾きは、反応ディスク4の装置本体に対する傾きであるため、傾斜算出部が算出する傾きとは異なる。しかしながら、メンテナンスのたびに装置本体の傾きを測定するのは現実的ではない。そこで、メンテナンス前後での傾きの変化を観測し、変化分の補正を行うことによって、メンテナンス前の状態を維持するよう補正するものである。
【0040】
まず、開始動作として、ユーザがキーボード121などのユーザーインターフェースを通じて、コンピュータ103にメンテナンス開始の指令を行う(S701)。その操作を受けて、自動分析装置が反応ディスク4の回転動作を開始する(S702)。この時に、傾斜算出部により、反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向が算出される(S703)。この算出された傾斜量及び傾斜方向を、コンピュータ103が反応ディスク4を取り外す前の情報としてメモリ122に保存する(S704)。その後、反応ディスク4の回転動作が終了し、反応ディスク4が取り外し可能であることをCRT118上に表示し、それを受け、ユーザが反応ディスク4を取り外す(S705)。反応ディスク4を取り外した後、ユーザが光源ランプ114の交換などのメンテナンスを行う(S706)。
【0041】
メンテナンス終了後、ユーザ自身が反応ディスク4を自動分析装置に取り付け、キーボード121などのユーザーインターフェースを通じて、コンピュータ103にメンテナンス終了の指令を行う(S707)。その指令を受け、コンピュータ103が反応ディスク4を回転させる(S708)。このとき、傾斜算出部により反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向が算出される(S709)。ステップS709の動作により取得された反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向及び、ステップS704の動作でメモリ122に保存されている反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向を用いて、プローブ601が降下される反応容器5について、メンテナンス前後での反応容器の底面高さの高さ差分を、位置算出部によって求める(S710)。その高さ差分が、プローブ601を反応容器5に降下させる際の最低動作分解能、例えば、パルスモータを使用してプローブ601を上下動させている場合にはその最低分解能、あるいは検知器201の出力ドリフトやノイズフロアから算出された、検知器201の性能上判別不可能となる値の最大値と最小値の差分(検知分解能という)のいずれか大きい値を第1基準値とし、高さ差分が当該第1基準値を下回っているかをコンピュータ103において判定する(S711)。なお、検知器201の性能上判別不可能となる検知分解能は、検知器201の性能により異なる。判定の結果、高さ差分が第1基準値以下である場合は、高さ差分に優位な差はないとして、メンテナンスの処理を終了する(S716)。
【0042】
第1基準値以上である場合は、その高さ差分によりプローブ601の降下動作の補正を掛けた場合、プローブ601を駆動する機構の動作範囲を超えてしまうような値、あるいは、反応ディスク4の傾斜に伴う反応容器5の傾斜により、サンプルや試薬が反応容器5よりこぼれてしまうような値、あるいはプローブ601を下降した場合、反応ディスク4あるいは反応容器5のいずれかに衝突するおそれがある値のいずれか小さい値を第2基準値として、高さ差分が第2基準値を超えていないことの判定をコンピュータ103が行う(S712)。第2基準値、すなわち補正可能な上限値を超えている場合、CRT118上に警報を発生し、ユーザに反応ディスク4の再取り付け、あるいはサービスエンジニアに連絡するように促す(S715)。例えば、反応ディスク4の中心から反応容器5の中心が200 mm離れており、反応ディスク4の水平面から反応容器5の深さを60 mm、奥行き5 mm、幅3.4 mmの場合、傾き±3度以内が補正可能な範囲となる。反応ディスク4がこれ以上の傾斜を持つ場合、プローブ601を反応容器5に垂直に下降した際、反応容器5の側壁に衝突して分析動作が不可能となるため、補正は行わず警報を発生する。
【0043】
第2基準値の範囲内である場合は、反応ディスク4を取り外す前のプローブ601の反応容器5に対する降下量から、プローブ601を降下する反応容器5の底面高さの差分を減算することで、プローブ601の反応容器5に対する降下量の補正値を算出する(S713)。その後、当該降下量は、コンピュータ103を通じてメモリ122に保存される(S714)。以上の動作終了後、ユーザが反応ディスク4を自動分析装置から取り外す必要があるメンテナンスの処理を終了する(S716)。
【0044】
以上、反応ディスク4について説明してきたが、自動分析装置の試薬ディスク125に対しても同様の課題があり、同様の処理により解決することが可能である。図8は試薬ディスク125の垂直方向の断面図である。試薬ボトル112が搭載される試薬ディスク125は、試薬ディスク125の加速度あるいは角速度を測定する検知器801を備えている。試薬ディスク125が回転軸810を中心として回転させられると、検知器801も回転軸810を中心に回転することにより、試薬ディスク125回転時において検知器801に加わる加速度あるいは角速度を検知することができる。
【0045】
検知器801には、検知器801から回転軸810に向かう方向に生じる遠心加速度と重力加速度が加わる。したがって、反応ディスク4の場合と同様に、傾斜算出部により試薬ディスク125の傾斜量及び傾斜方向を算出することができる。さらに試薬ディスクの傾きに基づき、同様に、反応ディスク4の場合と同様に、位置算出部により試薬プローブ110の降下量の補正量を算出することができる。補正動作等は反応ディスク4の場合と同様であるので、重複する説明は省略する。
【実施例0046】
実施例2では、反応ディスク4に検知器201、試薬ディスク125に検知器801を備えた自動分析装置において、これらの検知器を用いて、装置本体が水平に設置されていることを監視する。具体的には、反応ディスク4及び試薬ディスク125のそれぞれについて傾斜量及び傾斜方向を算出し、それらの間に有意な差がない場合には、算出された傾斜量及び傾斜方向に示される傾きが、自動分析装置本体の傾きであると推定する。上述の通り、測定原理上、反応ディスク4及び試薬ディスク125の傾斜量及び傾斜方向の基準は水平面であるから、両者の傾きが同一であるとみなせるのであれば、装置本体もまた、水平面に対してこれらのディスクと同じ傾きを有していると推定し、自動分析装置の設置状態を簡易に監視するものである。例えば、装置据え付け時の水平度の不備、あるいは装置据付後の外乱による衝撃によって、装置本体が傾斜していることがありうる。本実施例では装置の傾斜を簡易かつ早期に発見することにより、分析精度の低下などの不具合を回避することができる。
【0047】
図9に自動分析装置本体の装置傾斜監視フローを示す。本実施例の前提として、自動分析装置が水平に設置されているときに、反応ディスク4及び試薬ディスク125のそれぞれの傾斜量及び傾斜方向が等しくなるよう調整しておく必要がある。工場出荷時あるいは装置の据付時に反応ディスク4及び試薬ディスク125を調整し、調整した後の反応ディスク4及び試薬ディスク125の傾斜量及び傾斜方向をそれぞれ初期値としてメモリ122に保存しておくことで、実運用時における装置の水平度の不具合を発見することができる。
【0048】
反応ディスク4の傾斜量及び傾斜方向、試薬ディスク125の傾斜量及び傾斜方向の取得は、自動分析装置自身が自動で、あるいはユーザによる指示にて行われる、機構の位置を初期化する任意のタイミング、工場出荷時の調整作業、及び設置先での据付時の調整作業にて行われる。工場出荷時の調整作業、あるいは設置先での据付時の調整作業の場合は、キーボード121にて工場出荷時あるいは設置先での据付時の調整作業であることを入力することにより、反応ディスク4及び試薬ディスク125の適切に取り付けられているか、装置の水平度が適正かについて確認する動作に移行する(S901)。反応ディスク4及び試薬ディスク125が回転動作を行い(S902)、各ディスクの傾斜量及び傾斜方向を傾斜算出部により算出する(S903)。工場出荷時あるいは据付時調整作業であることは、ステップS901における入力により判断できる(S904でYES)。この場合、反応ディスク4及び試薬ディスク125の傾斜量及び傾斜方向の差分に、有意な差があるか判定を行う(S905)。有意な差の有無は、検知器201及び検知器801の出力ドリフトやノイズフロアから算出された、検知器201及び検知器801の性能上判別不可能となる検知分解能にしたがって判定され、搭載される検知器201及び検知器801の性能により異なる。前記判定にて、有意な差がある場合、反応ディスク4及び試薬ディスク125の取り付け不備であるため、CRT118上に警報を発生し(S906)、処理を終了する(S912)。ステップS905の判定にて、有意な差がない場合は反応ディスク4及び試薬ディスク125の傾斜量及び傾斜方向を自動分析装置の本体の傾きとして推定できるため、反応ディスク4及び試薬ディスク125の傾斜量及び傾斜方向を、自動分析装置本体の傾斜量及び傾斜方向としてCRT118上に表示する(S907)。そこで得られた自動分析装置本体の傾きが、自動分析装置本体にて、動作を保証する傾斜量を超えているかどうかを判定する(S908)。判定の結果、判定値以下である場合は、処理を終了する(S912)。判定値を超えている場合には、CRT118上に警報を表示し(S909)、処理を終了する(S912)。
【0049】
一方、ステップS904の判定において、工場出荷時あるいは据付時調整作業でない場合、装置の水平度が適正かについて確認する。ステップS904がNOの場合には、工場出荷時あるいは据付時の調整作業は終了し、反応ディスク4及び試薬ディスク125の傾斜量は、自動分析装置本体の傾斜量として推定可能な状態である。そこで、反応ディスク4及び試薬ディスク125の傾斜量のうち大きい方が、自動分析装置の動作を保証する傾斜量を超えているかどうかを判定する(S910)。判定の結果、判定値以下である場合には、処理を終了する(S912)。判定値を超えている場合には、CRT118上に警報を表示し(S911)、処理を終了する(S912)。
【符号の説明】
【0050】
1:サンプリング機構、2:サンプリングアーム、3:サンプルプローブ、4:反応ディスク、5:反応容器、101:試料容器、102:サンプルディスク、103:コンピュータ、104:インターフェイス、107:サンプル用ポンプ、110:試薬プローブ、111:試薬用ポンプ、112:試薬ボトル、113:攪拌器、114:光源ランプ、115:光度計、116:A/D変換器、117:プリンタ、118:CRT(表示装置)、119:反応容器洗浄機構、120:洗浄用ポンプ、121:キーボード、122:メモリ、125:試薬ディスク、151:液面検出回路、152:圧力センサ、153:圧力検出回路、201:検知器、210:基準方向、301,810:回転軸、302:遠心加速度、303,412:重力加速度、601:プローブ、801:検知器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9