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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051283
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20220324BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H05K3/34 502E
H05K3/34 501E
H05K3/46 B
H05K3/46 X
H05K3/46 Z
H01L23/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157679
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本藤 哲史
【テーマコード(参考)】
5E316
5E319
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA17
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB16
5E316CC02
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316CC54
5E316DD02
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH33
5E319AA03
5E319AC02
5E319AC11
5E319AC15
5E319AC20
5E319BB04
5E319BB05
5E319GG11
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】NSMD構造を有する配線基板における絶縁信頼性の確保。
【解決手段】本配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の一方の面に形成されたパッドと、前記第1絶縁層の一方の面に形成され、前記パッドを露出する開口部を備えた第2絶縁層と、前記第1絶縁層と接して形成され、平面視において、前記パッドと離隔して前記パッドの周囲を囲む補強配線と、を有し、前記パッドは、前記第2絶縁層と接することなく前記開口部内に配置され、前記第2絶縁層の前記開口部の内側面の前記第1絶縁層側の端部は、前記補強配線と接している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の一方の面に形成されたパッドと、
前記第1絶縁層の一方の面に形成され、前記パッドを露出する開口部を備えた第2絶縁層と、
前記第1絶縁層と接して形成され、平面視において、前記パッドと離隔して前記パッドの周囲を囲む補強配線と、を有し、
前記パッドは、前記第2絶縁層と接することなく前記開口部内に配置され、
前記第2絶縁層の前記開口部の内側面の前記第1絶縁層側の端部は、前記補強配線と接している、配線基板。
【請求項2】
前記補強配線は、前記第1絶縁層の一方の面側に開口する溝の内部に形成されている、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1絶縁層の一方の面を基準として、前記補強配線の高さは、前記パッドの高さよりも低い、請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記補強配線は、前記第1絶縁層の一方の面から突出している、請求項1乃至3の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記補強配線は、電気的な接続のないダミー配線である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記補強配線の厚さは、前記パッドの厚さと同一である、請求項1乃至5の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第2絶縁層の熱膨張係数は、前記第1絶縁層の熱膨張係数よりも大きい、請求項1乃至6の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第2絶縁層の熱膨張係数と、前記第1絶縁層の熱膨張係数との差が10ppm/℃以上である、請求項7に記載の配線基板。
【請求項9】
第1絶縁層の一方の面と接するように、パッド及び補強配線を形成する工程と、
前記第1絶縁層の一方の面に、前記パッド及び前記補強配線を被覆する第2絶縁層を形成し、前記第2絶縁層に開口部を形成する工程と、を有し、
前記パッド及び補強配線を形成する工程では、前記補強配線は、平面視において、前記パッドと離隔して前記パッドの周囲を囲むように形成され、
前記開口部を形成する工程では、前記パッドは前記第2絶縁層と接することなく前記開口部内に配置され、前記開口部の内側面の前記第1絶縁層側の端部が前記補強配線と接する、配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1絶縁層に、前記第1絶縁層の一方の面側に開口する溝を形成する工程を有し、
前記パッド及び補強配線を形成する工程では、前記補強配線は、前記溝の内部に形成される、請求項9に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板は、例えば、最外層に配置された絶縁層に設けられた開口部内に露出するパッドを有する。このパッドは、半導体チップや他の基板等と電気的に接続するための外部接続端子となる。配線基板にパッドを形成する構造としては、開口部がパッドよりも大きいNSMD(ノン・ソルダーマスク・デファイン)構造と、開口部がパッドよりも小さいSMD(ソルダーマスク・デファイン)構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-272681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、NSMD構造を有する配線基板では、パッドを露出する開口部を有する絶縁層と、その下層に位置する絶縁層との熱膨張係数の相違等により、リフローなどの高温処理を行うと、両者の界面に応力が生じてクラックが発生する場合があった。クラックが発生すると、配線基板における絶縁信頼性が低下する。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、NSMD構造を有する配線基板における絶縁信頼性の確保を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の一方の面に形成されたパッドと、前記第1絶縁層の一方の面に形成され、前記パッドを露出する開口部を備えた第2絶縁層と、前記第1絶縁層と接して形成され、平面視において、前記パッドと離隔して前記パッドの周囲を囲む補強配線と、を有し、前記パッドは、前記第2絶縁層と接することなく前記開口部内に配置され、前記第2絶縁層の前記開口部の内側面の前記第1絶縁層側の端部は、前記補強配線と接している。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、NSMD構造を有する配線基板における絶縁信頼性の確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る配線基板を例示する図である。
図2】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その2)である。
図4】比較例に係る配線基板を例示する断面図である。
図5】第1実施形態の変形例1に係る配線基板を例示する図である。
図6】パッドとピンとの接続について説明する図である。
図7】応用例1に係る多層配線基板を例示する断面図である。
図8】応用例1に係る多層配線基板を例示する底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[配線基板の構造]
図1は、第1実施形態に係る配線基板を例示する図であり、図1(a)は部分平面図、図1(b)は図1(a)のA-A線に沿う部分断面図である。
【0011】
図1を参照するに、配線基板1は、絶縁層10と、配線層20と、ソルダーレジスト層30とを有している。
【0012】
なお、本実施形態では、便宜上、配線基板1のソルダーレジスト層30側を上側又は一方の側、絶縁層10側を下側又は他方の側とする。また、各部位のソルダーレジスト層30側の面を上面又は一方の面、絶縁層10側の面を下面又は他方の面とする。但し、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物を絶縁層10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を絶縁層10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
絶縁層10は、例えば、多層配線の層間絶縁層として、ビルドアップ工法を用いて形成することができる絶縁層である。したがって、絶縁層10の下層として他の配線層や他の絶縁層が積層されていてもよい。この場合、絶縁層10や他の絶縁層に適宜ビアホールを設け、ビアホールを介して配線層同士を接続することができる。
【0014】
絶縁層10の材料としては、例えば、非感光性(熱硬化性樹脂)のエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂等を用いることができる。また、絶縁層10は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有してもかまわない。絶縁層10の厚さは、例えば、10~50μm程度とすることができる。絶縁層10の熱膨張係数は、例えば、15ppm/℃~20ppm/℃程度である。
【0015】
配線層20は、絶縁層10に接して形成されている。配線層20は、少なくともパッド21と、補強配線22とを有している。配線層20は、パッド21や補強配線22とは別に配線パターン等を有してもよい。
【0016】
パッド21は、絶縁層10の上面10aに形成されており、配線基板1を半導体チップや他の配線基板等と電気的に接続する際に使用される。パッド21の下面は絶縁層10の上面10aに接しており、パッド21の上面及び側面は絶縁層10から露出している。すなわち、パッド21は、絶縁層10の上面10aから上側に突出している。
【0017】
パッド21の平面形状は、例えば、円形である。ただし、パッド21の平面形状は円形には限定されず、楕円形や矩形等であってもよい。なお、ここでいう矩形には、厳密な矩形の他に、矩形の四隅を丸めた形状等も含むものとする。パッド21の厚さは、例えば、8~25μm程度とすることができる。パッド21の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。
【0018】
補強配線22は、平面視において、パッド21と離隔してパッド21の周囲を囲む環状の配線である。本実施形態では、平面視において、パッド21は円形であり、補強配線22はリング状である。すなわち、補強配線22の内縁及び外縁は径の異なる円形である。平面視において、パッド21の外縁と補強配線22の内縁との間隔はおおよそ一定であり、例えば、10μm~50μm程度である。なお、補強配線22はパッド21の形状に合わせて形成されるため、例えば、パッド21の平面形状が矩形であれば、補強配線の内縁及び外縁も矩形となる。
【0019】
補強配線22は、絶縁層10の上面10a側に開口する環状の溝10xの内部に形成されている。補強配線22の上面は、例えば、絶縁層10の上面10aと面一である。ただし、補強配線22の上面は、例えば、絶縁層10の上面10aから突出してもよいし、絶縁層10の上面10aより窪んでもよい。
【0020】
補強配線22の厚さは、例えば、パッド21の厚さと同一である。したがって、絶縁層10の上面10aを基準として、補強配線22の高さは、パッド21の高さよりも低い。つまり、補強配線22の上面は、パッド21の上面よりも低い位置にある。なお、ここでいう同一は、製造ばらつき程度の誤差を許容する趣旨である。
【0021】
補強配線22の幅W1は、例えば、15μm~60μm程度とすることができる。補強配線22の厚さは、例えば、8~25μm程度とすることができる。補強配線22の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。なお、補強配線22は、電気的な接続のないダミー配線であってもよい。
【0022】
ソルダーレジスト層30は、絶縁層10の上面10aに設けられた絶縁層である。ソルダーレジスト層30は開口部30xを有し、開口部30x内にはパッド21が完全に露出している。パッド21は、ソルダーレジスト層30と接することなく開口部30x内に配置されている。すなわち、配線基板1では、パッドを形成する構造としてNSMD構造を採用している。ただし、配線基板1において、NSMD構造とSMD構造とが混在してもよい。
【0023】
ソルダーレジスト層30において、開口部30xの内側面の下端(絶縁層10側の端部)は、補強配線22の上面と接している。すなわち、環状の補強配線22の外周側はソルダーレジスト層30に被覆され、内周側はソルダーレジスト層30の開口部30x内に露出している。
【0024】
ソルダーレジスト層30の材料としては、例えば、感光性のエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等を用いることができる。ソルダーレジスト層30の厚さは、例えば、5~40μm程度とすることができる。ソルダーレジスト層30は、露光及び現像により開口部30xが形成されるため、フィラーを含有しないか、フィラーの含有量が少ないことが好ましい。ソルダーレジスト層30におけるフィラーの含有量は、例えば、絶縁層10におけるフィラーの含有量よりも少なく、ソルダーレジスト層30の熱膨張係数は、例えば、絶縁層10の熱膨張係数よりも大きい。ソルダーレジスト層30の熱膨張係数は、例えば、25ppm/℃~30ppm/℃程度である。
【0025】
開口部30x内に露出するパッド21や補強配線22の上面に、表面処理層を設けてもよい。表面処理層の例としては、Au層や、Ni/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)、Ni/Pd/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)等の金属層が挙げられる。また、開口部30x内に露出するパッド21や補強配線22の上面に、OSP(Organic Solderability Preservative)処理等の酸化防止処理を施してもよい。なお、OSP処理により、表面処理層として、アゾール化合物やイミダゾール化合物等からなる有機被膜が形成される。
【0026】
[配線基板の製造方法]
次に、第1実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。図2及び図3は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。なお、本実施形態では、単品の配線基板を形成する工程を示すが、配線基板となる複数の部分を作製後、個片化して各配線基板とする工程としてもよい。
【0027】
まず、図2(a)に示す工程では、絶縁層10を準備し、絶縁層10に、上面10a側に開口する環状の溝10xを形成する。溝10xは、例えば、レーザ加工法により形成できる。溝10xは、例えば、平面視において、内縁及び外縁が径の異なる円形となるようにリング状に形成される。溝10xの幅は、例えば、15μm~60μm程度とすることができる。溝10xの深さは、例えば、8~25μm程度とすることができる。溝10xをレーザ加工法により形成した場合には、デスミア処理を行い、溝10xの底面や内側面に付着した絶縁層10の樹脂残渣を除去することが好ましい。なお、デスミア処理により、樹脂残渣の除去とともに、絶縁層10の上面10a並びに溝10xの底面及び内側面に粗化処理を施すことができる。
【0028】
次に、図2(b)~図3(b)に示す工程では、絶縁層10の上面10aと接するように、パッド21及び補強配線22を含む配線層20を形成する。具体的には、まず、図2(b)に示すように、無電解めっき法又はスパッタ法により、銅(Cu)等からなるシード層201を形成する。シード層201は、溝10xの底面及び内側面、並びに絶縁層10の上面10aを連続的に被覆するように形成する。
【0029】
次に、図2(c)に示すように、シード層201上に配線層20に対応する開口部300xを備えたレジスト層300を形成する。レジスト層300は、例えば、シード層201上に感光性のドライフィルムレジストをラミネートして形成できる。開口部300xは、例えば、ドライフィルムレジストを露光及び現像することで形成できる。
【0030】
次に、図3(a)に示すように、例えば、シード層201を給電層に利用した電解めっき法により、レジスト層300の開口部300x内に露出するシード層201の表面に銅(Cu)等を析出させ、電解めっき層202を形成する。これにより、シード層201上に電解めっき層202が形成される。
【0031】
次に、図3(b)に示すように、レジスト層300を除去した後、電解めっき層202をマスクにして、電解めっき層202に覆われていない部分のシード層201をエッチングにより除去する。これにより、シード層201上に電解めっき層202が積層された配線層20が形成される。配線層20は、絶縁層10の上面10aに形成されたパッド21と、溝10xの内部に形成された補強配線22とを含む。補強配線22は、平面視において、パッド21と離隔してパッド21の周囲を囲むように形成さる。なお、図3(b)では、シード層201と電解めっき層202とを区別せずに一体の配線層20として図示している(以降の図や図1等も同様である)。
【0032】
次に、図3(c)に示す工程では、絶縁層10の上面10aに、パッド21及び補強配線22を含む配線層20を被覆するソルダーレジスト層30を形成し、続いて、ソルダーレジスト層30に開口部30xを形成する。ソルダーレジスト層30は、例えば、液状又はペースト状の絶縁性樹脂を、スクリーン印刷法、ロールコート法、又は、スピンコート法等により、配線層20を被覆するように絶縁層10の上面10aに塗布することで形成できる。あるいは、フィルム状の絶縁性樹脂を、配線層20を被覆するように絶縁層10の上面10aにラミネートしてもよい。絶縁性樹脂としては、例えば、感光性のエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等を用いることができる。
【0033】
そして、塗布又はラミネートした絶縁性樹脂を露光及び現像することでソルダーレジスト層30に開口部30xを形成する。開口部30xは、内側面の下端(絶縁層10側の端部)が補強配線22の上面と環状に接するように形成する。これにより、環状の補強配線22の外周側はソルダーレジスト層30に被覆され、内周側はソルダーレジスト層30の開口部30x内に露出する。また、開口部30x内にはパッド21が完全に露出する。すなわち、パッド21は、ソルダーレジスト層30と接することなく開口部30x内に配置される。必要に応じ、開口部30x内に露出するパッド21や補強配線22の上面に、前述の表面処理層を設けてもよい。以上の工程により、配線基板1が完成する。
【0034】
ここで、比較例を示しながら、配線基板1の奏する効果について説明する。図4は、比較例に係る配線基板を例示する断面図である。図4(a)に示す配線基板1Xは、絶縁層10に溝10xが形成されていない点、補強配線22を有していない点が、配線基板1(図1等参照)と相違する。
【0035】
配線基板1Xでは、ソルダーレジスト層30において、開口部30xの内側面の下端(絶縁層10側の端部)は、絶縁層10の上面10aと接している。前述のように、絶縁層10とソルダーレジスト層30の熱膨張係数を比較すると、ソルダーレジスト層30の熱膨張係数の方が大きい。すなわち、絶縁層10は、ソルダーレジスト層30よりも柔軟性が低く割れやすい。
【0036】
そのため、リフローなどの高温処理を行うと、絶縁層10とソルダーレジスト層30との熱膨張係数の差(ミスマッチ)により、両者の界面に応力が生じる。絶縁層10とソルダーレジスト層30との密着力が高い場合には、図4(b)に示すように、応力が最も大きくなる界面の始点(矢印Cの部分)を起点とするクラック400が、ソルダーレジスト層30よりも柔軟性が低く割れやすい絶縁層10において発生する。
【0037】
絶縁層10に発生したクラック400は、ソルダーレジスト層30に伝搬し、ソルダーレジスト層30に図4(c)に示すチッピング450が発生する。チッピング450が発生すると、隣接するパッド21間の絶縁信頼性、及び配線基板1Xと接続される半導体チップや他の基板との接続信頼性が低下する。
【0038】
これに対して、配線基板1では、ソルダーレジスト層30において、開口部30xの内側面の下端(絶縁層10側の端部)が補強配線22の上面と環状に接している。すなわち、配線基板1では、開口部30xの部分において、絶縁層10とソルダーレジスト層30との界面が存在しないため、図4(b)の矢印Cに相当するクラックの起点となる部分がない。配線基板1では、開口部30xの部分において、ソルダーレジスト層30と接しているのが剛性の高い金属からなる補強配線22であるため、リフローなどの高温処理を行っても、補強配線22が割れることはない。そのため、絶縁層10やソルダーレジスト層30にクラックやチッピングが発生することを抑制できる。その結果、隣接するパッド21間の絶縁信頼性、及び配線基板1と接続される半導体チップや他の基板との接続信頼性を確保できる。
【0039】
比較例に係るパッド構造において、クラックやチッピングの発生は、ソルダーレジスト層30の熱膨張係数と、絶縁層10の熱膨張係数との差が10ppm/℃以上である場合に顕著である。そのため、配線基板1のパッド構造は、ソルダーレジスト層30の熱膨張係数と、絶縁層10の熱膨張係数との差が10ppm/℃以上である場合に特に有効である。
【0040】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、補強配線の構造が異なる配線基板の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0041】
図5は、第1実施形態の変形例1に係る配線基板を例示する図であり、図5(a)は部分平面図、図5(b)は図5(a)のB-B線に沿う部分断面図である。
【0042】
図5を参照するに、配線基板1Aは、補強配線22が補強配線22Aに置換された点が、配線基板1(図1等参照)と相違する。補強配線22Aは、絶縁層10の上面10aに形成されている。つまり、絶縁層10には溝10xが設けられていなく、補強配線22Aは絶縁層10の上面10aから突出している。絶縁層10の上面10aを基準として、補強配線22Aの高さは、例えば、パッド21の高さと同じである。補強配線22Aの平面形状、幅、及び材料は、補強配線22と同じであってよい。
【0043】
ソルダーレジスト層30において、開口部30xの内側面の下端(絶縁層10側の端部)は、補強配線22Aの上面と接している。すなわち、環状の補強配線22Aの上面の外周側はソルダーレジスト層30に被覆され、上面の内周側はソルダーレジスト層30の開口部30x内に露出している。また、補強配線22Aの外側面はソルダーレジスト層30に被覆され、内側面はソルダーレジスト層30の開口部30x内に露出している。
【0044】
配線基板1Aは、図2(a)の工程で絶縁層10に溝10xを設けない以外は、配線基板1と同様の製造方法により作製可能である。
【0045】
このように、絶縁層10に溝10xを設けずに、絶縁層10の上面10aに補強配線22Aを形成してもよい。配線基板1の構造と配線基板1Aの構造は、必要に応じ、適宜使い分けることができる。
【0046】
なお、パッド21と他の基板等との接続には、はんだが用いられることもあるし、図6に示すようなCPUソケットのピン500が用いられる場合もある。配線基板1Aを用いた場合、図6(a)のようにピン500がパッド21のみに接触する場合もあるが、位置がずれて図6(b)のようにパッド21及び補強配線22Aと接触する場合もある。図6(b)の場合には、補強配線22Aがパッド21と同電位になるため、隣接するパッド21との間隔が実質的に狭くなったことに等しく、パッド21間の絶縁信頼性を低下させるおそれがある。
【0047】
図6(c)のように、配線基板1を用いた場合には、ピン500の位置がずれてもピン500が補強配線22に接触しないため、補強配線22がパッド21と同電位になることはない。そのため、隣接するパッド21との間隔が実質的に狭くなることはなく、パッド21間の絶縁信頼性を確保できる。したがって、パッド21との接続にピンを用いる場合には、補強配線22の高さがパッド21の高さよりも低い配線基板1の構造を選択することが好ましい。
【0048】
〈応用例1〉
応用例1では、配線基板1のパッド構造を含む多層配線基板の例を示す。なお、応用例1において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0049】
図7は、応用例1に係る多層配線基板を例示する断面図である。図8は、応用例1に係る多層配線基板を例示する底面図である。
【0050】
図7及び図8を参照すると、多層配線基板2は、コア層100の一方の面100aに順次積層された、配線層110、絶縁層111、配線層112、絶縁層113、配線層114、及びソルダーレジスト層115を有している。また、多層配線基板2は、コア層100の他方の面100bに順次積層された、配線層120、絶縁層121、配線層122、絶縁層123、配線層124、及びソルダーレジスト層125を有している。
【0051】
コア層100としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の絶縁性樹脂を含浸させた所謂ガラスエポキシ基板等を用いることができる。コア層100として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布にエポキシ系樹脂等を含浸させた基板等を用いてもよい。
【0052】
配線層110は、コア層100の一方の面100aに形成されている。配線層110は、コア層100を貫通する貫通配線105を介して、配線層120と電気的に接続されている。配線層110の材料は、例えば、銅等である。絶縁層111は、コア層100の一方の面100aに配線層110を覆うように形成されている。絶縁層111の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂等を用いることができる。絶縁層111の厚さは、例えば10~50μm程度とすることができる。絶縁層111は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0053】
配線層112は、絶縁層111の一方の側に形成されている。配線層112は、絶縁層111を貫通し配線層110の上面を露出するビアホール111x内に充填されたビア配線、及び絶縁層111の上面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層112の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層110と電気的に接続されている。ビアホール111xは、例えば、絶縁層113側に開口されている開口部の径が配線層110の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部である。配線層112の材料は、例えば、銅等である。
【0054】
絶縁層113は、絶縁層111の上面に配線層112を覆うように形成されている。絶縁層113の材料や厚さは、例えば、絶縁層111と同様である。絶縁層113は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0055】
配線層114は、絶縁層113の一方の側に形成されている。配線層114は、絶縁層113を貫通し配線層112の上面を露出するビアホール113x内に充填されたビア配線、及び絶縁層113の上面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層114の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層112と電気的に接続されている。ビアホール113xは、例えば、ソルダーレジスト層115側に開口されている開口部の径が配線層112の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部である。配線層114の材料は、例えば、銅等である。
【0056】
ソルダーレジスト層115は、多層配線基板2の一方の側の最外層であり、絶縁層113の上面に、配線層114を覆うように形成された絶縁層である。ソルダーレジスト層115は、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の感光性樹脂等から形成することができる。ソルダーレジスト層115の厚さは、例えば5~40μm程度とすることができる。
【0057】
ソルダーレジスト層115は、開口部115xを有し、開口部115xの底部には配線層114の上面の一部が露出している。開口部115xの平面形状は、例えば、円形である。必要に応じ、開口部115x内に露出する配線層114の上面に金属層を形成したり、OSP処理等の酸化防止処理を施したりしてもよい。
【0058】
開口部115xの底部に露出する配線層114の上面には、外部接続端子116が形成されている。外部接続端子116は、例えば、はんだバンプである。はんだバンプの材料としては、例えばPbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金等を用いることができる。外部接続端子116は、半導体チップと電気的に接続するための端子となる。
【0059】
配線層120は、コア層100の他方の面100bに形成されている。配線層120の材料は、例えば、銅等である。絶縁層121は、コア層100の他方の面100bに配線層120を覆うように形成されている。絶縁層121の材料や厚さは、例えば、絶縁層111と同様である。絶縁層121は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0060】
配線層122は、絶縁層121の他方の側に形成されている。配線層122は、絶縁層121を貫通し配線層120の下面を露出するビアホール121x内に充填されたビア配線、及び絶縁層121の下面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層122の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層120と電気的に接続されている。ビアホール121xは、例えば、絶縁層123側に開口されている開口部の径が配線層120の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部である。配線層122の材料は、例えば、銅等である。
【0061】
絶縁層123は、絶縁層121の下面に配線層122を覆うように形成されている。絶縁層123の材料や厚さは、例えば、絶縁層111と同様である。絶縁層123は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有することができる。
【0062】
配線層124は、絶縁層123に接して形成されている。配線層124は、少なくともパッド127と、補強配線128とを有している。パッド127は絶縁層123の下面に形成され、補強配線128は絶縁層123の下面側に開口する環状の溝123zの内部に形成されている。パッド127と補強配線128の構造は、配線基板1のパッド21と補強配線22の構造(図1参照)と同一である。配線層124は、パッド127や補強配線128とは別に配線パターン等を有してもよい。
【0063】
少なくとも一部のパッド127は、絶縁層123を貫通し配線層122の下面を露出するビアホール123x内に充填されたビア配線を介して、配線層122と電気的に接続されている。ビアホール123xは、例えば、ソルダーレジスト層125側に開口されている開口部の径が配線層122の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部である。配線層124の材料は、例えば、銅等である。
【0064】
ソルダーレジスト層125は、多層配線基板2の他方の側の最外層であり、絶縁層123の下面に設けられた絶縁層である。ソルダーレジスト層125は開口部125xを有し、開口部125x内にはパッド127が完全に露出している。パッド127は、ソルダーレジスト層125と接することなく開口部125x内に配置されている。ソルダーレジスト層125において、開口部125xの内側面の上端(絶縁層123側の端部)は、補強配線128の下面と接している。すなわち、環状の補強配線128の外周側はソルダーレジスト層125に被覆され、内周側はソルダーレジスト層125の開口部125x内に露出している。
【0065】
ソルダーレジスト層125の材料や厚さは、例えば、ソルダーレジスト層115と同様である。開口部125x内に露出するパッド127は、マザーボード等の実装基板と電気的に接続するためのパッドとして用いることができる。必要に応じ、開口部125x内に露出するパッド127の下面に前述の金属層を形成したり、OSP処理等の酸化防止処理を施したりしてもよい。
【0066】
このように、多層配線基板2は、配線基板1と同様のパッド構造を有している。すなわち、パッド127及び補強配線128を含む配線層124と、開口部125xの内側面の上端が補強配線128の下面と接するソルダーレジスト層125とを有している。これにより、第1実施形態と同様に、絶縁層123やソルダーレジスト層125にクラックやチッピングが発生することを抑制できる。その結果、隣接するパッド127間の絶縁信頼性、及び多層配線基板2と接続されるマザーボード等の実装基板との接続信頼性を確保できる。
【0067】
なお、多層配線基板2では、配線基板1と同様のパッド構造をマザーボード等の実装基板との接続側に設ける例を示したが、これには限定されない。すなわち、多層配線基板2において、配線基板1と同様のパッド構造を半導体チップ搭載側(外部接続端子116側)に設けてもよい。
【0068】
また、配線基板1と同様のパッド構造は、マザーボード等の実装基板との接続側及び半導体チップ搭載側の何れに設けた場合にも、SMDタイプのパッド構造と混在してもよい。また、配線基板1と同様のパッド構造に代えて、配線基板1Aと同様のパッド構造を用いてもよい。
【0069】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1、1A 配線基板
2 多層配線基板
10、111、113、121、123 絶縁層
10a 上面
10x、123z 溝
20、110、112、114、120、122、124 配線層
21、127 パッド
22、22A、128 補強配線
30、115、125 ソルダーレジスト層
30x、115x、125x、300x 開口部
100 コア層
111x、113x、121x、123x ビアホール
116 外部接続端子
201 シード層
202 電解めっき層
300 レジスト層
500 ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8