(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051457
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】車両用複層ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20220324BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20220324BHJP
E06B 3/66 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
C03C27/12 L
C03C27/12 R
E06B3/66 Z
E06B3/66 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157951
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川本 泰
(72)【発明者】
【氏名】平社 英之
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA07
2E016BA01
2E016BA08
2E016CA00
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016CC04
2E016EA01
2E016FA01
4G061AA21
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB18
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA26
4G061DA30
4G061DA32
4G061DA43
4G061DA54
(57)【要約】
【課題】高い断熱性能を有しつつ軽量にできる車両用複層ガラスを提供する。
【解決手段】本発明にかかる車両用複層ガラスは、対向して配置された、一対のガラス板と、前記一対のガラス板の周縁部を封止するシール材と、前記一対のガラス板の間に配置されたスペーサと、を備え、前記一対のガラス板は、主面が一方向に凸状に湾曲した曲面を有し、前記一対のガラス板のうち、少なくとも一つの前記ガラス板の厚さが、2.1mm以上3.0mm未満である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された、一対のガラス板と、
前記一対のガラス板の周縁部を封止するシール材と、
前記一対のガラス板の間に配置されたスペーサと、
を備え、
前記一対のガラス板は、主面が一方向に凸状に湾曲した曲面を有し、
前記一対のガラス板のうち、少なくとも一つの前記ガラス板の厚さが、2.1mm以上3.0mm未満である車両用複層ガラス。
【請求項2】
前記一対のガラス板は、主面が二方向に凸状に湾曲した曲面を有する請求項1に記載の車両用複層ガラス。
【請求項3】
前記一対のガラス板の両方の厚さは、2.1mm以上3.0mm未満である請求項1又は2に記載の車両用複層ガラス。
【請求項4】
前記一対のガラス板の厚さが同じである請求項1~3の何れか一項に記載の車両用複層ガラス。
【請求項5】
前記ガラス板の曲率半径の最小値が、500mm~100000mmである請求項1~4の何れか一項に記載の車両用複層ガラス。
【請求項6】
前記一対のガラス板のうち、少なくとも一つの前記ガラス板は、強化ガラスである請求項1~5の何れか一項に記載の車両用複層ガラス。
【請求項7】
前記一対のガラス板の両方が、強化ガラスである請求項6に記載の車両用複層ガラス。
【請求項8】
前記一対のガラス板の対向する面側の主面の少なくとも一方に熱反射膜を有する請求項1~7の何れか一項に記載の車両用複層ガラス。
【請求項9】
前記一対のガラス板は、前記一対のガラス板が対向する面とは反対側の2つの主面のうち少なくとも一方の周縁部に前記シール材を隠蔽する遮蔽部を有する請求項1~8の何れか一項に記載の車両用複層ガラス。
【請求項10】
前記遮蔽部は、非セラミックス層を含む、請求項9に記載の車両用複層ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野や産業分野等に使用される断熱ガラスあるいは防音ガラスには、複数のガラス板同士の間に真空層(減圧層)を保ったまま、ガラス板の周辺端部を封着してなる複層ガラスが知られている。このような複層ガラスは、複数のガラス板同士の間に真空層を有しているため、ガラス板同士の間に空気や不活性ガスを封入されている場合よりも高い断熱性能を有する。
【0003】
このような複層ガラスとして、例えば、真空層によって隔置されたガラス板の周辺端部を封着用ガラスバルクによって封着し、真空層内に複数個のスペーサを配置した排気複層ガラスが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の排気複層ガラスには、ガラス板の厚さについては記載されていない。そして通常、複層ガラスを車両用に適用する場合、ガラス板は主面を湾曲させて使用されることが多い。そのため、特許文献1のような排気複層ガラスは、湾曲した2枚のガラス板を対向させた状態で封着する際、高い断熱性能を発揮するため、ガラス板同士のズレを抑え、高い密閉性を確保できる必要がある。また、複層ガラスを車両用に適用するためには、車両の燃費を軽減するため、より軽量であることが必要である。
【0006】
本発明の一態様は、高い断熱性能を有しつつ軽量化できる車両用複層ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる車両用複層ガラスの一態様は、対向して配置された、一対のガラス板と、前記一対のガラス板の周縁部を封止するシール材と、前記一対のガラス板の間に配置されたスペーサと、を備え、前記一対のガラス板は、主面が一方向に凸状に湾曲した曲面を有し、前記一対のガラス板のうち、少なくとも一つの前記ガラス板の厚さが、2.1mm以上3.0mm未満である。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる車両用複層ガラスは、高い断熱性能を有しつつ軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態にかかる車両用複層ガラスの平面図である。
【
図4】車両用複層ガラスの製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図5】車両用複層ガラスの製造方法の工程の他の一部を示す説明図である。
【
図6】車両用複層ガラスの製造方法の工程の他の一部を示す説明図である。
【
図7】車両用複層ガラスの製造方法の工程の他の一部を示す説明図である。
【
図8】車両用複層ガラスの製造方法の工程の他の一部を示す説明図である。
【
図9】車両用複層ガラスの製造方法の工程の他の一部を示す説明図である。
【
図10】車両用複層ガラスの製造方法の工程の他の一部を示す説明図である。
【
図11】車両用複層ガラスの製造方法の工程の他の一部を示す説明図である。
【
図12】車両用複層ガラスの構成の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<車両用複層ガラス>
本発明の実施形態にかかる車両用複層ガラスについて説明する。本実施形態にかかる車両用複層ガラスは、対向して配置された、一対のガラス板と、一対のガラス板の周縁部を封止する封着材であるシール材と、一対のガラス板の間に配置されたスペーサとを備える複層ガラスである。本実施形態にかかる車両用複層ガラスは、フロントガラス、リアガラス、サイドガラス、ルーフガラス、クォーターガラス等の自動車用窓ガラス、電車、機関車等の交通用の車両用窓ガラス、ブルドーザ等の建設用の車両用窓ガラス、飛行機等の飛行体用窓ガラス、その他の特殊車両用窓ガラス等に用いられる。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる車両用複層ガラスの平面図であり、
図2は、
図1のI-I断面図である。なお、
図1及び
図2において、車両用複層ガラス1の主面の一方を車外側とし、他方を車内側とする。
図1では、手前側を車外側、奥側を車内側とする。
図1において、車両用複層ガラス1の長手方向は、例えば車両の前後方向に対応するが、車両の車幅方向に対応してもよい。
図2では、上側を車外側、下側を車内側とする。
【0013】
図1に示すように、車両用複層ガラス1は、平面視において略矩形状に形成され、角に丸みを有している。また、
図2に示すように、車両用複層ガラス1は、主面が車外側に向かって凸状に湾曲した曲面を有している。
【0014】
図2に示すように、車両用複層ガラス1は、一対のガラス板10A及び10B、シール材20、スペーサ30、ガス吸着剤40、熱反射膜50、並びに遮蔽部60A及び60Bを備えている。一対のガラス板10A及び10Bの間には、シール材20、スペーサ30、ガス吸着剤40及び熱反射膜50が配置されている。車両用複層ガラス1では、一対のガラス板10A及び10Bの間に配置されているスペーサ30は、ガラス板10A及び10Bを介して外部から視認できる。ガス吸着剤40は、車両用複層ガラス1の平面視において、遮蔽部60A及び60Bの少なくとも一方と重なることにより遮蔽され、ガラス板10A及び10Bの少なくとも一方を介して外部から視認できないことが好ましく、両方により遮蔽されることがより好ましい。熱反射膜50は、外部から視認できない程度に可視光線透過率が小さいことが好ましい。
【0015】
車両用複層ガラス1は、一対のガラス板10A及び10Bとシール材20との間に真空空間Sを有する。真空空間Sの真空度は、所定値以下が好ましく、例えば、0.01Pa以下が好ましい。真空空間Sは、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間の空気を排気し、ガラス板10A及び10Bと、シール材20とを密封して形成できる。真空空間Sの間隔(すき間)は、適宜設定可能であり、例えば、10μm~1000μmである。
【0016】
以下、車両用複層ガラス1を構成する各部材について説明する。
【0017】
図1に示すように、ガラス板10A及び10Bは、平面視において略矩形状に形成され、角に丸みを有している。
図2に示すように、一対のガラス板10A及び10Bは、シール材20、スペーサ30、ガス吸着剤40及び熱反射膜50を介して対向して配置されている。なお、ガラス板10A及び10Bの平面視における形状は、車両の設置箇所に応じて適宜任意の形状にできる。例えば、ガラス板10A及び10Bの平面視における形状は、略台形状、略平行四辺形状又は略三角形状でもよい。
【0018】
図2に示すように、ガラス板10Aは、スペーサ30と接する第1主面101Aと、第1主面101Aとは反対の外側に位置する第2主面102Aとを有する。ガラス板10Aの車内側に位置する内面が第1主面101Aであり、車外側に位置する外面が第2主面102Aとなる。
【0019】
ガラス板10Bは、スペーサ30と接する第1主面101Bと、第1主面101Bとは反対の外側に位置する第2主面102Bとを有する。ガラス板10Bの車内側に位置する内面が第1主面101Bであり、車外側に位置する外面が第2主面102Bとなる。ガラス板10Aの第1主面101Aと、ガラス板10Bの第1主面101Bとが、対向している。
【0020】
ガラス板10Aは、第1主面101A及び第2主面102Aが一方向に湾曲した曲面を有する。ガラス板10Bも、ガラス板10Aに対応するように、第1主面101B及び第2主面102Bが二方向に湾曲した曲面を有する。なお、ガラス板10A及びガラス板10Bは、一方向に湾曲した曲面を有してもよい。すなわち、ガラス板10A及びガラス板10Bは、任意の一方向に湾曲してよく、湾曲方向は、例えばガラス板10A及びガラス板10Bの長手方向又は短手方向でもよい。本実施形態では、
図2に示すように、ガラス板10Aは、第1主面101A及び第2主面102Aが車外側に凸状に湾曲した曲面を有する。ガラス板10Bも、ガラス板10Aに対応するように、第1主面101B及び第2主面102Bが車外側に凸状に湾曲した曲面を有する。第1主面101A及び第2主面102Aの曲率と、第1主面101B及び第2主面102Bの曲率とは、略同じとしているが、異なってもよい。
【0021】
ガラス板10A及び10Bの厚さは、2.1mm以上3.0mm未満であればよい。ガラス板10A及び10Bの厚さは、2.1mm以上であれば、強化層(圧縮応力層)を形成しやすい。ガラス板10A及び10Bの厚さは、2.3mm以上が好ましく、2.4mm以上がさらに好ましい。なお、ガラス板10A及び10Bの厚さが2.1mm未満では、ガラス板10A及び10Bに強化処理を施しても、ガラス板10A及び10Bが薄すぎるため、ガラス板10A及び10Bに強化層(圧縮応力層)を形成することが困難である。
【0022】
ガラス板10A及び10Bの厚さは、3.0mm未満であれば、車両用複層ガラス1は、ガラス板10A及びガラス板10Bの湾曲度合いは合わせ易く、薄いため、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間をシール材20で封止することで、高い断熱性能を有すると共に、軽量化を実現できる。ガラス板10A及び10Bの厚さは、2.8mm以下が好ましく、2.6mm以下がさらに好ましい。なお、ガラス板10A及び10Bの厚さが3.0mmを超えると、軽量化が図れない上、ガラス板10Aとガラス板10Bとの湾曲度合いが異なる場合に、これらの湾曲度合いの調整が困難になる。そのため、車両用複層ガラス1を製造する際、ガラス板10Aとガラス板10Bとの湾曲度合いを略同じ大きさに合わせられず、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間をシール材20で封止しても、封止が不十分となり、真空空間Sの真空度の低下を招くおそれがある。
【0023】
なお、ガラス板10A及び10Bの厚さは、例えば、ガラス板10A及び10Bの断面において、任意の場所を測定した時の厚さである。ガラス板10A及び10Bの断面において、場所により厚さが異なる場合は、ガラス板10A及び10Bの厚さは、それぞれのガラス板において、最も薄い部分の厚さとしてもよい。
【0024】
ガラス板10Aの厚さは、ガラス板10Bの厚さと同じでも、異なってもよい。ガラス板10Aとガラス板10Bとの厚さが同じであれば、同じサイズのガラス板を使用できる。
【0025】
ガラス板10A及び10Bの曲率半径の最小値は、500mm~100000mmが好ましく、1000mm~80000mmがより好ましく、3000mm~50000mmがさらに好ましい。曲率半径は、
図3に示すように、ガラス板10A及び10Bに接している仮想上の円の半径をいう。曲率半径の逆数が曲率であり、ガラス板10A及び10Bの曲がり具合を表わす。すなわち、曲率半径が小さいほど、ガラス板10A及び10Bの曲率は大きくなり、ガラス板10A及び10Bの主面がより湾曲していることを意味する。曲率半径が大きいほど、ガラス板10A及び10Bの曲率は小さくなり、ガラス板10A及び10Bの主面がより平坦であることを意味する。ガラス板10A及び10Bの曲率半径の最小値が、上記の好ましい範囲内であれば、ガラス板10A及び10Bは、車両の窓ガラスの形状に沿って湾曲した形状を有する。
【0026】
ガラス板10A及び10Bは、無機ガラス及び有機ガラスのいずれでもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、無アルカリガラス等が特に制限なく用いられる。これらの中でも、成形性の観点から、ソーダライムガラスが好ましい。ガラス板10A及び10Bは、着色されていてもよいが、透明であることが好ましい。透明とは、可視光線透過率が実質的に0ではないことを意味する。
【0027】
ガラス板10A及び10Bは、例えば、ケイ素、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウムを含む。
【0028】
ガラス板10A及び10Bがソーダライムガラスである場合、ガラス板10A及び10Bは、酸化物基準の質量百分率で、SiO2を65%~80%、Na2Oを5%~18%、CaOを5%~12%、MgOを0%を超えて10%、Al2O3を0%~6%、K2Oを0%~5%、Fe2O3を0%~3%含有することが好ましい。
【0029】
また、一対のガラス板10A及び10Bは、ガラス板10A及び10Bの効果を損なわない範囲で、例えばSrO、BaO、ZrO2、B2O3、SnO2、SO3、Cl、F、ZnO、Y2O3、La2O3、TiO2、V2O5、P2O5、CeO2、WO3、Nb2O5、Bi2O3、CoO、Cr2O3、Se、Sc2O3、MnO、CuO及びMoO3からなる群から選択される一種以上を含有できる。
【0030】
ガラス板10A及び10Bは、未強化ガラス及び強化ガラスの何れでもよいが、機械的強度を高められる点で強化ガラスが好ましい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形後、徐冷して得られるガラスである。強化ガラスは、未強化ガラスに強化処理を施し、未強化ガラスの表面から所定の深さの領域に圧縮応力層を形成したガラスであり、ガラス板10A及び10Bの安全性を高められる。強化処理としては、ガラス板10A及び10Bを高温化に晒した後に風冷する物理強化(風冷強化)、ガラス板10A及び10B、アルカリ金属を含む溶融塩中に浸漬させ、ガラス板10A及び10Bの最表面に存在する原子径の小さなアルカリ金属イオンを、溶融塩中に存在する原子系の大きなアルカリ金属イオンと置換する化学強化が挙げられる。ガラス板10A及び10Bが強化ガラスの場合、破損時に破片の大きさを小さくしやすいことから、物理強化ガラス(風冷強化ガラス)が好ましい。
【0031】
シール材20は、
図2に示すように、ガラス板10Aの第1主面101Aと、ガラス板10Bの第1主面101Bとの周縁部に形成されている。そして、シール材20は、ガラス板10Aの第1主面101Aと、ガラス板10Bの第1主面101Bとの周縁部に沿って、
図1に示すように、枠状に形成される。シール材20は、
図2に示すように、ガラス板10Aとガラス板10Bとの両周縁部を接着する。シール材20は、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間にスペースを形成できる。ガラス板10Aの周縁部とガラス板10Bの周縁部とにシール材20を接着することで、真空空間Sが形成される。シール材20の高さは、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間の距離、即ち、真空空間Sのすき間を規定する。
【0032】
シール材20は、少なくとも2種類のシール材を含み、シール材20A及び20Bを含むことができる。
図1に示すように、シール材20Aは、ガラス板10Aの第1主面101Aの一対の長辺の周縁部と、一方の短辺(ガス吸着剤40が配置されている側の短辺)の周縁部とに形成され、シール材20Bは、ガラス板10Aの他方の短辺の周縁部に形成される。
【0033】
ガラス板10A及び10Bの周縁部を封止するシール材20A及び20Bは、ガラス接着剤を用いて形成できる。即ち、シール材20A及び20Bは、ガラス接着剤の硬化物で構成できる。
【0034】
ガラス接着剤は、熱溶融性ガラスを含む。熱溶融性ガラスは、低融点ガラスとも呼ばれる。ガラス接着剤は、例えば、熱溶融性ガラスを含むガラスフリットである。ガラスフリットとしては、例えば、ビスマス系ガラスフリット(ビスマスを含むガラスフリット)、鉛系ガラスフリット(鉛を含むガラスフリット)、バナジウム系ガラスフリット(バナジウムを含むガラスフリット)等を使用できる。ビスマス系ガラス、鉛系ガラス、バナジウム系ガラス等は、低融点ガラスであり、これらをガラス接着剤として用いることで、車両用複層ガラス1の製造時にスペーサ30に与える熱的なダメージを少なくできる。
【0035】
スペーサ30は、車両用複層ガラス1の機械的強度を高める。
図2に示すように、スペーサ30は、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間の真空空間S内に複数配置される。スペーサ30は、
図1に示すように、平面視でシール材20A及び20Bの内側に設けられる。複数のスペーサ30により、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間の距離を確実に確保でき、真空空間Sが容易に形成される。
【0036】
スペーサ30は、その一端がガラス板10Aの第1主面101Aに接し、他端がガラス板10Bの第1主面101Bに設けた熱反射膜50に接する。即ち、スペーサ30は、平面視において、熱反射膜50が形成される範囲内に設けられ、ガラス板10Aの第1主面101A及びガラス板10Bの第1主面101Bに設けられた熱反射膜50と接するように設けられる。
【0037】
スペーサ30は、例えば円柱状に形成される。スペーサ30の直径は、一対のガラス板10A及び10Bの主面の面積に応じて適宜選択可能であり、例えば、0.1mm~10mmである。スペーサ30の直径が小さいほど目立ちにくくなる。一方、スペーサ30の直径が大きいほど強固になる。また、スペーサ30は、筒状に形成されてもよい。
【0038】
スペーサ30の高さは、車両用複層ガラス1の大きさ、ガラス板10A及び10Bの主面の厚さ及び面積に応じて適宜選択可能であり、例えば、10μm~1000μmである。
【0039】
複数のスペーサ30は、平面視において略格子状に配置されている(
図1参照)。スペーサ30は、10mmの~100mmの間隔で配置されることが好ましく、具体的には、20mmの間隔で配置できる。スペーサ30の形状、大きさ、数、間隔、配置パターンは、特に限定されず、適宜選択できる。また、スペーサ30は、角柱状や球状でもよい。
【0040】
スペーサ30は、アルミニウム又はステンレス等の金属又は合金、樹脂等を用いて形成でき、樹脂としては、ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
スペーサ30は、ポリイミド樹脂を含むことにより、耐熱性を高く、強固にできるため、真空空間Sをより安定して形成できる。即ち、ポリイミド樹脂は、耐熱性が高いため、車両用複層ガラス1の製造時に高温になった場合でも、スペーサ30は、形状を維持できる。また、ポリイミド樹脂は、強固なポリマーであるため、スペーサ30は、一対のガラス板10A及び10Bから押圧力が加えられても、押圧力を受け止めて、これらの間のスペースを確保できる。
【0042】
また、スペーサ30は、ポリイミド樹脂を含むことにより、目立ち難くできる。樹脂製のスペーサ30は、車両用複層ガラス1の状態でガラス板10A及び10Bから押圧力が加えられるため、車両用複層ガラス1を得る前の大きさと比べて半径方向に少し大きくなる傾向にある。しかし、ポリイミド樹脂は強固なポリマーであるため、他の樹脂を用いてスペーサ30を形成する場合よりも、半径方向に大きくなる割合が小さく、潰れを生じ難くできるため、スペーサ30を目立ち難くできる。また、ポリイミド樹脂は光吸収性が小さいため、スペーサ30の透明性を向上させることができる。そのため、スペーサ30が押されて半径方向に大きくなっても、スペーサ30を目立ち難くできる。
【0043】
さらに、スペーサ30は、ポリイミド樹脂を含むことにより、耐衝撃性を向上できる。ポリイミド樹脂は、金属よりも高い弾力性を有するため、ガラス板10A及び10Bにかかる押圧力を吸収することができ、車両用複層ガラス1の耐衝撃性を高められる。
【0044】
またさらに、スペーサ30は、ポリイミド樹脂を含むことにより、金属製のスペーサよりも熱伝導性が低いため、車両用複層ガラス1の断熱性を高められる。
【0045】
また、スペーサ30は、ポリイミド樹脂を含むことにより、光透過性が高く、車両用複層ガラス1の外観を良好にする。即ち、ポリイミド樹脂は、紫外線から可視光線までの光吸収スペクトルにおいて、吸収率が低下する吸収端を有している。ポリイミド樹脂の吸収端は400nm以下である。光吸収スペクトルは、波長が横軸となり、吸収率が縦軸となったグラフにおいて、波長の変化に対する吸収率の変化の推移によって表される。ここで、吸収端とは、光吸収スペクトルにおいて、波長が大きくなる時に(即ち、短波長から長波長に推移する時に)、吸収率が急激に低下する波長のことを意味する。吸収端とは、いわば、光吸収スペクトルにおいて吸収性を有する部分の端部である。ここで、紫外線から可視光線までとは、波長250nm~800nmの範囲であってよい。ポリイミド樹脂の光吸収スペクトルの吸収端が400nm以下であると、可視光領域の光(例えば、波長400nm~800nm)を透過できるため、スペーサ30の色が透明になって、外部から視認し難くなり、スペーサ30が目立つのを抑制できる。ポリイミド樹脂は、比較的色が付きやすいポリマー(例えば、茶色に着色し得る)であるが、可視光領域の光吸収が少なくなると、色が目立ち難くなる。スペーサ30が目立ち難くなることで、車両用複層ガラス1は、それ自身の見栄えが良くなるだけでなく、ガラス板10A及び10Bを通して一方側から他方側の物体を見るときに、物体を見易くできる。そのため、車両用複層ガラス1を車両の窓ガラスに適用すれば、車内から車外を見易くできる。
【0046】
スペーサ30は、公知の製造方法を用いて製造でき、例えば、少なくとも一つの樹脂フィルムを用いて形成できる。樹脂フィルムは、樹脂シートでもよい。スペーサ30は、樹脂フィルムを車両用複層ガラス1に適した形状に切り取ることで得られる。例えば、スペーサ30は、樹脂フィルムをパンチング等によって所定のサイズに打ち抜いて得られる。このようにして切り取られた樹脂フィルムは、スペーサ30として用いられる。スペーサ30が積層体である場合、スペーサ30は、2以上の樹脂フィルムの積層体で構成できる。
【0047】
スペーサ30は、ポリイミドフィルムを少なくとも1つ含むことが好ましい。また、スペーサ30は、複数のポリイミドフィルムを含む積層体を有してもよい。スペーサ30が少なくとも1つのポリイミドフィルムを含む場合、スペーサ30の形成が容易になる。スペーサ30が積層体である場合、スペーサ30は、ポリイミドフィルムと他の樹脂フィルムとの積層体で構成できる。
【0048】
ガス吸着剤40は、ガラス板10Aの第1主面101A、ガラス板10Bの第1主面101B、シール材20A及び20Bの内周面及びスペーサ30の内部の何れか一つ以上に設けてもよい。本実施形態では、ガス吸着剤40は、
図2に示すように、ガラス板10Aの第1主面101Aのシール材20Aの近傍に設けられる。
【0049】
ガス吸着剤40は、通常使用されるガス吸着剤を使用できる。通常使用されるガス吸着剤としては、水分を吸着する材料を含むものが好ましく、酸化カルシウム、ゼオライト等を含むものが好ましい。ガス吸着剤40をガラス板10Aの第1主面101Aに設置することにより、真空空間Sのガスを吸着できるため、真空空間Sの真空度が維持され、断熱性を向上できる。
【0050】
熱反射膜50は、真空空間Sを挟んで対向する一対のガラス板10A及び10Bのうち、ガラス板10Bの第1主面101Bに形成される。ガラス板10Aの第1主面101Aのシール材20A及び20Bとその近傍以外の全体に設けられる。熱反射膜50は、車両用複層ガラス1の厚み方向に熱を伝わり難くし、遮熱性及び断熱性を向上させる機能を有する。
【0051】
また、熱反射膜50は、ガラス板10Bの第1主面101Bに形成され、真空空間S内にあるため、大気と隔離されている。そのため、熱反射膜50が、大気中の水分と接触することを抑制できるため、劣化を低減できる。
【0052】
熱反射膜50としては、Low-E(Low Emissivity)膜等を使用できる。Low-E膜は、放射伝熱を抑制することで、熱の通過を制限し、遮熱性及び断熱性を向上させる。また、Low-E膜は、一般的なものであってよく、例えば、赤外線反射膜を一対の透明誘電体膜の間に含み、透明誘電体膜、赤外線反射膜及び透明誘電体膜の順に積層した積層膜を使用できる。なお、赤外線反射膜は、透明誘電体膜同士の間に1層以上形成されていればよい。また、透明誘電体膜は複数層から形成されてもよい。Low-E膜の厚さは、要求される性能、膜の構成等に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
遮熱性を有する透明誘電体膜は、金属酸化物、金属窒化物等の材料を使用できる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素等を使用できる。なお、透明誘電体膜は、光を透過させるために厚みを薄くして、車両用複層ガラス1の透明性に殆ど影響を及ぼさないように形成されるとよい。
【0054】
赤外線反射膜は、真空空間S側へ入射する赤外線を遮断できるため、車両用複層ガラス1の断熱性を向上させる。赤外線反射膜としては、金属膜又は半導体膜を使用できる。金属膜を形成する材料としては、Ag等が挙げられる。半導体膜としては、フッ素がドープされた酸化スズを使用できる。
【0055】
Low-E膜の成膜方法としては、ドライコーティング法が挙げられる。ドライコーティング法としては、PVD法、CVD法が挙げられる。PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられ、密着性及び平坦性に優れた膜を成膜できる点から、スパッタリング法が好ましい。
【0056】
なお、熱反射膜50は、ガラス板10Aの第1主面101Aに形成してもよいし、ガラス板10Aの第1主面101A及びガラス板10Bの第1主面101Bの両方に形成してもよい。
【0057】
遮蔽部60A及び60Bは、ガラス板10A及び10Bの外側に位置する主面に設けられる。具体的には、ガラス板10Aの第1主面101Aとは反対側の、第2主面102Aの周縁部に、遮蔽部60Aが設けられる。また、ガラス板10Bの第1主面101Bとは反対側の、第2主面102Bの周縁部に、遮蔽部60Bが設けられる。遮蔽部60Bを、ガラス板10Bの第2主面102Bの周縁部に形成することで、シール材20に太陽光が当たることを防止できるため、シール材20が紫外線による劣化を抑制できる。また、遮蔽部60Aを、ガラス板10Bの第2主面102Bの周縁部に形成することで、車内側からシール材20を視認しにくくできる。なお、遮蔽部60A及び60Bは、遮蔽部60A及び60Bの一方だけ設けられてもよく、両方とも設けなくてもよい。
【0058】
遮蔽部60A及び60Bとしては、例えば「黒色セラミックス」と称される暗色不透明層を使用できる。遮蔽部60A及び60Bは、公知の工法で形成でき、例えば、黒色セラミックス印刷用インクを、ガラス板10Aの第2主面102A及びガラス板10Bの第2主面102Bの少なくとも一方に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を焼き付けて形成できる。
【0059】
遮蔽部60A及び60Bは、焼き付けを必要としない公知の非セラミックス層も使用できる。この場合は、ガラス板10Aの第1主面101A及びガラス板10Bの第1主面101Bにも遮蔽部を設けてもよい。非セラミックス層は、例えば、車両のボディに利用される塗布膜であれば、耐候性や審美性に優れた複層ガラスにできる。遮蔽部60A及び60Bに非セラミックス層を用いる場合、遮蔽部60A及び60Bのどちらを非セラミックス層としても良いが、耐候性や審美性の観点から、少なくとも、遮蔽部60Bは非セラミックス層が好ましい。また、遮蔽部60A及び60Bが非セラミックス層であれば、ガラス板10A及び10Bを同様の形状に曲げ成形しやすく好ましい。
【0060】
(車両用複層ガラスの製造方法)
次に、本実施形態にかかる車両用複層ガラス1の製造方法について説明する。車両用複層ガラス1の製造方法は、ガラス板の準備工程と、遮蔽部の形成工程と、接着剤の塗布工程と、スペーサの配置工程と、ガス吸着剤の設置工程と、ガラス板の対向配置工程と、接着工程と、加工工程とを含む。
【0061】
以下、各工程について、
図4~
図11に基づいて説明する。
図4~
図11は、本実施形態にかかる車両用複層ガラス1の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【0062】
(ガラス板の準備工程)
まず、所望の形状及び大きさに成形したガラス板10A及びガラス板10Bを準備する。ガラス板10Aとガラス板10Bは、矩形状に形成され、平面視において同一の形状及び大きさとする。なお、同一とは、略同一を含む。
【0063】
(遮蔽部の形成工程)
次に、ガラス板10A及び10Bの第2主面102A及び102Bの少なくとも一方の周縁部の全周に、黒色セラミックス印刷用インクを塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を焼き付けることにより、遮蔽部60A及び60B(
図2参照)を形成する。なお、ガラス板10Aの第2主面102Aに遮蔽部60Aを形成する際、黒色セラミックス印刷用インクはガラス板10Aの貫通孔11Aとその周辺を避けて塗布し、貫通孔11Aとその周辺以外の領域に遮蔽部60Aを形成してよい。
【0064】
なお、塗布膜はこの段階で完全に焼き付ける必要はなく、ガラス板を凸状に湾曲される過程で完全に焼き付けられてもよい。
【0065】
また、ガラス板10Aの第2主面102Aの周縁部の全周に黒色セラミックス印刷用インクを塗布し、遮蔽部60Bを形成してもよい。この場合、遮蔽部60Aは、後述する(加工工程)の後に、非セラミックス層により形成されてもよい。
【0066】
その後、ガラス板10Aとガラス板10Bを第1主面101A及び101B側に凸状に湾曲させ、曲面を形成する。そして、ガラス板10Aとガラス板10Bに強化処理を施す。遮蔽部60A及び60Bとして黒色セラミックスを用いる場合、焼き付け処理は、ガラス板を湾曲させる前に行っても、湾曲させると同時に行ってもよい。
【0067】
その後、ガラス板10Aの第1主面101Aには、例えばラミネート法等により熱反射膜50を形成する。なお、ガラス板10Bには、ガラス板10Aと同様に熱反射膜をさらに備えてもよい。
【0068】
ガラス板10Aは、その厚さ方向に貫通する貫通孔11Aを有する。ガラス板10Aの第2主面102Aには、排気管12Aが設けられる。この場合、貫通孔11Aを排気管12Aの流路と接続させて排気孔13を形成する。
【0069】
なお、ガラス板10A及び10Bに強化処理を施す前に、熱反射膜50をガラス板10Aに形成してもよい。
【0070】
(接着剤の塗布工程)
次に、
図4に示すように、ガラス板10Bの第1主面101Bの上にガラス接着剤200を塗布する。ガラス接着剤200は、少なくとも2種類のガラス接着剤を含み、第1ガラス接着剤200A及び第2ガラス接着剤200Bを含む。
【0071】
第1ガラス接着剤200Aは、
図5に示すように、ガラス板10Bの第1主面101Bの縁に沿った周縁部に沿って枠状に塗布する。第1ガラス接着剤200Aは、ガラス板10Bの第1主面101Bの縁に沿って連続的に1周して塗布される。
【0072】
第2ガラス接着剤200Bは、
図5に示すように、平面視における、第1ガラス接着剤200Aで囲まれた内側であって、ガラス板10Bの第1主面101Bの短辺寄りに短辺と平行に、直線状に塗布する。第2ガラス接着剤200Bは、第1主面101Bの長辺側に塗布される第1ガラス接着剤200Aに接続されるように塗布される。
【0073】
第1ガラス接着剤200A及び第2ガラス接着剤200Bは、熱溶融性ガラスを含む接着剤である。第2ガラス接着剤200Bは、第1ガラス接着剤200Aと異なるガラス接着剤である。この場合、第2ガラス接着剤200Bは、後述のガラス複合物2を加熱する際に第1ガラス接着剤200Aと一体化する性質を有することができる。
【0074】
接着剤の塗布工程では、ガラス接着剤200の塗布後、仮焼成を行ってもよい。仮焼成を行うことで、ガラス接着剤200をガラス板10Bの第1主面101Bの上に固着してもよい。これにより、ガラス接着剤200の接着力が高められ、ガラス接着剤200が第1主面101Bに付着した状態を維持できるため、後述する排気工程の際の排気によって、ガラス接着剤200の飛散を抑制できる。仮焼成は、ガラス接着剤200の溶融温度よりも低い温度で加熱することが好ましい。
【0075】
(スペーサの配置工程)
次に、
図6に示すように、複数のスペーサ30をガラス板10Bの第1主面101Bに設けた熱反射膜50の上に配置する。複数のスペーサ30は、ガラス板10Aの第1主面101A上に配置してもよい。また、スペーサ30は、等間隔に配置されてよく、不規則に配置されてもよく、本実施形態では、
図7に示すように、格子状に略等間隔で配置されてもよい。スペーサ30は、公知の薄膜形成方法により形成でき、スペーサ30がフィルムで構成される場合、予めフィルムが所定のサイズに打ち抜いて、スペーサ30を形成できる。スペーサ30の配置は、例えばチップマウンタ等の公知の手段を用いて実施できる。
【0076】
なお、スペーサの配置工程は、接着剤の塗布工程と同時に行ってもよいが、スペーサの配置工程は、接着剤の塗布工程の後に行うとよい。ガラス接着剤200をガラス板10Bの第1主面101Bに先に塗布しておいた方が、スペーサ30を第1主面101Bに容易に配置できるからである。
【0077】
スペーサ30は、少なくとも1つの樹脂フィルムを用いて形成でき、少なくとも1つのポリイミドフィルムを含むことが好ましい。スペーサ30が複数の樹脂フィルムを含む積層体で形成される場合、予め複数の樹脂フィルムを積層して接着されていることが好ましい。積層体に含まれる樹脂フィルムは、接着剤で接着されてもよく、樹脂フィルム自体の粘着性で接着されてもよく、樹脂フィルムを静電気的な力で接着させてもよい。
【0078】
(ガス吸着剤の設置工程)
次に、
図8に示すように、ガス吸着剤40を第1主面101Aの上に配置する。ガス吸着剤40は、ガラス板10Aの第1主面101Aのシール材20A及び20Bと接する位置の近傍に設ける。ガス吸着剤40の設置方法は、特に限定されず、ガス吸着剤40をガラス板10Aの第1主面101Aに固着させてもよく、流動性のあるガス吸着体材料をガラス板10Aの第1主面101Aに設置して乾燥させてガラス板10Aの第1主面101Aに設置してもよい。
【0079】
(ガラス板の対向配置工程)
次に、
図9に示すように、ガラス板10Aの第1主面101Aを、ガラス板10Bの第1主面101Bに対向させて、ガラス板10Aをガラス板10Bの第1主面101Bの上に塗布したガラス接着剤200の上に配置する。これにより、ガラス板10Bは、スペーサ30により支持され、かつガラス板10Aの上方で配置され、ガラス板10A、ガラス板10B、ガラス接着剤200、スペーサ30及びガス吸着剤40を含むガラス複合物2が形成される。ガラス複合物2は、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間に、内部空間S1を有する。なお、ガラス複合物2では、ガラス接着剤200は硬化されていない。
【0080】
(接着工程)
その後、
図10に示すように、第1ガラス接着剤200A及び第2ガラス接着剤200Bを硬化させて、第1ガラス接着剤200Aの硬化物からなるシール材20Aと第2ガラス接着剤200Bからなるシール材20Bを形成し、ガラス板10Aとガラス板10Bとをシール材20A及び20Bで接着する(接着工程)。
【0081】
シール材20Aは、ガラス板10Aの周縁部とガラス板10Bの周縁部とを接着し、シール材20Bは、ガラス板10A及び10Bの一方の短辺寄りに位置する主面同士を短辺に沿って平行に接着し、ガラス板10Aと、ガラス板10Bと、シール材20A及び20Bとにより密閉された真空空間Sが形成される。これにより、複合基板3が形成される。
【0082】
接着工程は、加熱工程と、排気工程とを含む。接着工程は、加熱工程と排気工程とを同時に行ってもよく、排気工程の後に加熱工程を行ってもよい。本実施形態では、接着工程は、加熱工程と排気工程とを同時に行う。
【0083】
((加熱工程))
加熱工程では、ガラス複合物2を加熱炉内等に入れて加熱する。ガラス複合物2の加熱により、ガラス接着剤200を加熱できる。これにより、ガラス接着剤200中のガラスが溶融して、ガラス接着剤200に接着性を発現できる。ガラス接着剤200に含まれるガラスの溶融温度は、例えば、300℃を超える。このようなガラスの溶融温度は、400℃を超えてもよい。但し、ガラス接着剤200に含まれるガラスの溶融温度が低い方が加熱工程においてガラス接着剤200中のガラスを溶融させ易い。そのため、ガラスの溶融温度は、400℃以下が好ましく、360℃以下がより好ましく、330℃以下がさらに好ましく、300℃以下が特に好ましい。
【0084】
加熱工程は、2つ以上の段階を含むことが好ましい。例えば、加熱工程は、炉内を加熱して第1ガラス接着剤200Aに含まれるガラスを溶融させる第1加熱工程と、炉内を更に加熱して第2ガラス接着剤200Bに含まれるガラスを溶融させる第2加熱工程とを含むことができる。
【0085】
第1加熱工程では、第1ガラス接着剤200A中のガラスは、第2ガラス接着剤200B中のガラスよりも低い温度で溶融する。即ち、第1ガラス接着剤200A中のガラスは、第2ガラス接着剤200B中のガラスよりも先に溶融する。第1加熱工程では、第1ガラス接着剤200A中のガラスが溶融し、第2ガラス接着剤200B中のガラスは溶融しない。第1ガラス接着剤200A中のガラスが溶融すると、第1ガラス接着剤200Aがガラス板10Aとガラス板10Bとに接着する。
【0086】
なお、第1ガラス接着剤200A中のガラスが溶融し、第2ガラス接着剤200B中のガラスが溶融しない温度を、第1溶融温度とする。第1溶融温度では、第2ガラス接着剤200B中のガラスは溶融しないため、第2ガラス接着剤200Bの形状は維持される。
【0087】
第2加熱工程では、ガラス複合物2を更に加熱して第2ガラス接着剤200B中のガラスを溶融させる。第2加熱工程の温度は、第1溶融温度よりも高い第2溶融温度にされる。第2溶融温度は、例えば、第1溶融温度よりも10℃~100℃高い温度である。
【0088】
第2溶融温度では、第2ガラス接着剤200B中のガラスが溶融する。これにより、第2溶融温度で加熱された第2ガラス接着剤200Bは、変形して、第2ガラス接着剤200Bとガラス板10Aとの間に設けられた隙間(通気路)を塞ぐことができ、ガラス板10Aとガラス板10Bとを接着できる。
【0089】
((排気工程))
次に、
図11に示すように、ガラス板10Aとガラス板10Bとの間の気体を排気して、スペーサ30が内部に設けられている真空空間Sを形成する。
【0090】
排気工程では、内部空間S1の空気が通気路を通って排気される。排気工程は、排気孔13に接続された真空ポンプ等で実施できる。この場合、真空ポンプは排気管12Aから延びる管に接続される。排気工程により、内部空間S1は、減圧され、真空空間Sが形成される。なお、排気方法は、真空ポンプを用いる方法以外の方法でもよく、例えば、ガラス複合物2をチャンバに設置して、チャンバ内を減圧して排気してもよい。
【0091】
図11では、内部空間S1内の気体が排気孔13を通って外側へ下向きに排気される。なお、
図11中の矢印は、内部空間S1内の気体の流れを示す。第2ガラス接着剤200Bは、ガラス板10Aの第1主面101Aと接触しないように設けられ、第2ガラス接着剤200Bと第1主面101Aとの隙間が通気路を形成するため、内部空間S1内の気体は通気路を通って排気孔13から排出される。これにより、内部空間S1が真空空間S(
図10参照)となる。
【0092】
なお、ガラス接着剤200中のガラスが溶融すること、即ち、熱により熱溶融性ガラスが軟化することにより、変形や接着が可能になるような性質をガラス接着剤200は有してもよい。この場合、ガラス接着剤200(特に第1ガラス接着剤200A)は、加熱工程の際にガラス複合物2から流れ出るような流動性を有しないことが好ましい。
【0093】
真空空間Sの形成後、複合基板3を冷却し、排気工程を停止する。真空空間Sは、ガラス接着剤200の硬化物により密閉されているため、排気工程がなくなっても、真空空間Sが維持される。ただし、安全のために、複合基板3の冷却の後に、排気工程を停止することが好ましい。
【0094】
接着工程は、加熱工程と排気工程とを同時に行う場合、加熱工程の途中から排気工程を行ってもよい。例えば、第1段階における温度が第1溶融温度に達した後、排気工程を開始し、内部空間S1(
図11参照)の気体を排出する。そして、排気工程を行いながら第2加熱工程を行う。第2加熱工程で第2ガラス接着剤200Bが変形してシール材20Bとなりながら、第2ガラス接着剤200Bと第1主面101Aとの隙間を塞ぎ、内部空間S1は、シール材20Bを介して2つの空間に完全に分断される。2つの空間のうち、貫通孔11Aがない空間が、ガラス板10Aと、ガラス板10Bと、シール材20A及び20Bとにより密閉された真空空間Sとなる。これにより、
図9に示すように、真空空間Sを有する複合基板3とすることができる。
【0095】
なお、加熱工程の途中から排気工程を行う場合、排気工程は、第1溶融温度よりも低い温度(排気開始温度)に温度を低下させた後に行われてもよい。また、ガラス複合物2(特に第1ガラス接着剤200A)の形状が乱れないのであれば、第1溶融温度に達する前から排気を開始してもよい。
【0096】
加熱工程の途中から排気工程を行う場合、第2加熱工程は、内部空間500の真空度が所定値になり、真空空間Sが維持された後に行うことが好ましい。
【0097】
加熱工程の途中から排気工程を行う場合、排気工程は、第2加熱工程に適した温度までガラス複合物2の温度を上昇させる際、継続して行われてもよい。
【0098】
複合基板3の形成後、排気工程は停止して、複合基板3を冷却する。真空空間Sは、シール材20A及びシール材20Bにより密閉されているため、真空空間Sの真空度は維持される。なお、複合基板3の冷却の後に、排気工程を停止してもよい。
【0099】
(加工工程)
最後に、必要に応じて、複合基板3を所定の形状に加工し、複合基板3の切断線CL(
図10参照)に沿って切断等することで、上記構成を有する車両用複層ガラス1(
図2参照)が得られる。なお、複合基板3は加工、切断等せず、車両用複層ガラス1として用いてもよい。
【0100】
なお、本実施形態にかかる車両用複層ガラス1の製造方法では、ガラス接着剤200は、ガラス板10Bの上に直接塗布しているが、ガラス板10Aの上に直接塗布してもよい。また、ガラス板10Aとガラス板10Bとを対向配置させた後に、ガラス板10Aとガラス板10Bとの隙間にガラス接着剤200を注入してもよい。この場合、ガラス接着剤200は、注入と同時にガラス板10Aとガラス板10Bとの両方に接触した状態で配置できる。
【0101】
本実施形態では、接着工程は、加熱工程の途中から排気工程を行ってもよい。例えば、温度が溶融温度に達した後、排気工程を開始し、内部空間S1内の気体を排出する。この場合、排気工程は、溶融温度よりも低い温度(排気開始温度)に温度を低下させた後に行ってもよい。なお、ガラス複合物2(特にガラス接着剤200)の形状が崩れない場合等には、溶融温度に達する前から排気を開始してもよい。
【0102】
本実施形態では、接着剤の塗布工程は、スペーサの配置工程又はガス吸着剤の設置工程の後に行ってもよい。
【0103】
このように、本実施形態にかかる車両用複層ガラス1は、一対のガラス板10A及び10Bと、シール材20と、スペーサ30とを備え、ガラス板10A及び10Bは、主面が一方向に凸状に湾曲した曲面を有し、ガラス板10A及び10Bの厚さを、2.1mm以上3.0mm未満としている。ガラス板10A及び10Bは、適度な剛性を有するため、ガラス板10Aとガラス板10Bとをシール材20を介して貼り合わせる際、ガラス板10Aとガラス板10Bとの主面の湾曲度合いが異なる場合でも、ガラス板10A及び10Bは曲げて同じ湾曲度合いに調整できる。そのため、ガラス板10Aとガラス板10Bとをシール材20で確実に封止できる。よって、車両用複層ガラス1は、高い断熱性能を有しつつ軽量化できる。
【0104】
なお、1対のガラス板を封着材を介して積層することで積層ガラスを作製する際に、一方のガラス板と他方のガラス板との湾曲度合いに差がある場合、ガラス板の厚さが3.0mm以上であると、ガラス板の剛性が高く、殆ど曲がらないため、封着材で一対のガラス板のズレを調整して隙間が生じないように封止することが困難である。特に、車両用に適用する際、ガラス板が厚いと、2枚のガラス板を湾曲させて対向させた状態で封着させようとしても、ガラス板が厚いと、2枚のガラス板の湾曲度合いは合わせ難く、ガラス板同士の間に高い密閉性を得にくい。また、積層ガラスは2枚のガラス板を有するため、厚さが3.0mm以上のガラス板を2枚使用すると、積層ガラスはより重くなるため、車両の燃費の悪化を招く。一方、車両用複層ガラス1は、ガラス板10Aの主面(第1主面101A及び第2主面102A)とガラス板10Bの主面(第1主面101B及び第2主面102B)との湾曲度合いが異なっていても湾曲度合いを調整しながらシール材20で容易に封止できると共に、軽量化できる。
【0105】
車両用複層ガラス1は、ガラス板10A及び10Bの厚さを、2.1mm以上3.0mm未満にできる。これにより、ガラス板10A及び10Bを曲げて同じ湾曲度合いにより調整し易くなるため、ガラス板10Aとガラス板10Bとをシール材20でより確実に封止できる。
【0106】
車両用複層ガラス1は、ガラス板10A及び10Bの厚さを同じにできる。これにより、ガラス板10A及び10Bを曲げて同じ湾曲度合いにできるため、ガラス板10Aとガラス板10Bとをシール材20でさらに確実に封止できる。
【0107】
車両用複層ガラス1は、ガラス板10A及び10Bの曲率半径の最小値を、500mm~100000mmにできる。これにより、ガラス板10A及び10Bは、車両の窓ガラス等の形状に沿って湾曲した形状に容易に調整できる。よって、車両用複層ガラス1は、ガラス板10A及び10Bが上記の曲率半径で湾曲していても、高い断熱性能を確実に有する。
【0108】
車両用複層ガラス1は、ガラス板10A及び10Bのうち、少なくとも一つを強化ガラスにできる。ガラス板10A及び10Bは強化処理されることで、表面から所定の深さまでの領域に圧縮応力層を有する。これにより、ガラス板10A及び10Bは、表面の機械的強度を高められ、割れても、細かく粉砕され、車両内に飛散することを低減できるため、安全性を高められる。よって、車両用複層ガラス1は、安全性が高い車両用ガラスにできる。
【0109】
車両用複層ガラス1は、ガラス板10A及び10Bを強化ガラスにできる。これにより、車両用複層ガラス1は、さらに安全性が高い車両用ガラスにできる。
【0110】
車両用複層ガラス1は、ガラス板10Bの第1主面101Bに熱反射膜50を有することができる。これにより、車両用複層ガラス1は、遮熱性及び断熱性を向上できるため、ガラス板10A及び10Bの間に設けられる、シール材20、スペーサ30、ガス吸着剤40及び熱反射膜50の熱による劣化を抑制できる。
【0111】
車両用複層ガラス1は、第2主面102A及び102Bの周縁部に遮蔽部60A及び60Bを有することができる。これにより、車両用複層ガラス1は、紫外線による劣化を抑制できると共に、良好な外観を有することができる。
【0112】
車両用複層ガラス1は、遮蔽部60A及び60Bに非セラミックス層を含むことができる。これにより、車両用複層ガラス1は、より優れた耐候性及び審美性を有することができる。
【0113】
車両用複層ガラス1は、上述の通り、振動しても、優れた断熱性能を発揮できるため、断熱性が高いガラスが要求される、電気自動車、燃料電池自動車等に好適に用いることができる。
【0114】
(変形例)
なお、本実施形態では、車両用複層ガラス1は、一対のガラス板10A及び10Bを、一対の合せガラス板で形成してもよい。
図12は、車両用複層ガラス1の構成の他の一例を示す断面図である。
図12に示すように、車両用複層ガラス1は、ガラス板10Aを、ガラス板10A-1及び10A-2と、接着層(中間膜)70とを含み、ガラス板10A-1とガラス板10A-2との間に中間膜70を配置した合わせガラスとする。ガラス板10Bを、ガラス板10B-1及び10B-2と、中間膜70とを含み、ガラス板10B-1とガラス板10B-2との間に中間膜70を配置した合わせガラスとする。これにより、車両用複層ガラス1は、より高い強度が得られる。
【0115】
ガラス板10Aは、ガラス板10A-1とガラス板10A-2との間に中間膜70を配置し、加圧及び/又は加熱して成形できる。ガラス板10Bは、ガラス板10B-1とガラス板10B-2との間に中間膜70を配置し、加圧及び/又は加熱して成形できる。
【0116】
中間膜70としては、ガラス板10A-1とガラス板10A-2との主面同士、ガラス板10B-1とガラス板10B-2との主面同士を接合できる材料であればよく、エチレンビニルアセタール、ポリビニルブチラール、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマー(COP)、及びエチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂等を使用できる。また、特許第6065221号に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物を使用してもよい。
【0117】
本実施形態では、車両用複層ガラス1は、一対のガラス板10A及び10Bを備えているが、3枚以上のガラス板を主面がスペーサ30等を介して対向するように備えてもよい。
【実施例0118】
以下、例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの例により限定されない。例1~例3は実施例であり、例4及び例5は比較例である。
【0119】
<例1>
[複層ガラスの作製]
厚さ2.8mmで同一サイズ(300mm×300mm)のガラス板(ソーダライムガラス)を2枚用意する。そのうち1枚のガラス板には、黒色セラミックス層を形成する。黒色セラミックス層が形成されたガラス板の周縁から、面方向に10mm以上内側に排気用の貫通孔を形成する。また、他の1枚のガラス板は、一方の主面の周辺部にガラス粒子ペーストを配置する。その後、2枚のガラス板に物理強化を施し、風冷強化ガラスとする。得られた2枚のガラス板の曲率半径は、水平方向(長手方向)で21000mm~24000mm、水平方向に対して垂直な方向(短手方向)で1400mm~1500mmである。ガラス板の組成と物理強化の条件は、以下の通りである。
(ガラス板)
・ガラス組成:SiO2は69.8wt%、Al2O3は1.8wt%、Na2Oは13.2wt%、CaOは8.5wt%、MgOは4.5wt%、K2Oは0.8wt%、CoOは247ppm、Seは30ppm、Cr2O3は61ppmである。
(物理強化の条件)
・ガラス板を、温度550℃~700℃で加熱成形した後、風を吹きつけ、数秒から数十秒の時間内に500℃以下の温度まで急冷する。
【0120】
そして、貫通孔を形成したガラス板を内板ガラスとし、ガラス粒子ペーストを配置したガラス板を外板ガラスとし、内板ガラス及び外板ガラスをイオン交換水とブラシを使用して洗浄する。
【0121】
その後、外板ガラスの上にスペーサを配置する。また、内板ガラスの主面の一部にガス吸着剤を塗布した後、内板ガラスのガス吸着剤を塗布した面の周縁部から10mm付近に封止材を塗布すると共に、内板ガラスのガス吸着剤を塗布した面の一方の短辺から50mm付近に封止材を塗布し、仮乾燥する。その後、内板ガラスの封止材の上に外板ガラスのスペーサが設置されている主面を設置して、内板ガラスの封止材が設置された主面と外板ガラスのスペーサが設置されている主面とが対向するように重ね合わせ、内板ガラスと外板ガラスとの間に、スペーサ、ガス吸着剤及び封止材とが挟み込まれた積層体を作製する。
【0122】
この積層体の排気用の貫通孔に真空ポンプを接続した排気管を接続して、排気管から減圧しながら積層体を200℃~250℃で加熱して封止材を硬化させ、シール材を形成すると共にガス吸着体を形成する。その後、更に、積層体を210℃~280℃で加熱しながら積層体内部の空気を排出する。その後、真空ポンプを停止して、積層体を冷却させた後、積層体の外周側の、排気用の貫通孔を含む部分を切断して、切り面を加工し、積層ガラスを得る。
【0123】
[評価]
得られる積層ガラスの熱貫流率と安全性とを評価する。
【0124】
(熱貫流率)
JIS-R3107に基づいて、積層ガラスの熱貫流率を測定する。
【0125】
(安全性)
JIS R3211法(自動車安全ガラス試験方法)(2015)及びJIS R3212法(自動車安全ガラス試験方法)に準じて、強化ガラスを破損させた時の破片の状態は、次の(1)~(3)を満たすことを確認する。(1)~(3)を満たす場合には、自動車安全ガラスとして安全性が高い良好な積層ガラスであると判断し、○と評価する。(1)~(3)の何れか1つ以上を満たさない場合には、自動車安全ガラスとして安全性が高くない積層ガラスであると判断し、×と評価する。
(1)(a)50mm×50mmの正方形の領域内の破片数は40個以上450個以下。(b)50mm×50mmの正方形の領域内の破片数が40個未満であった場合は、その部分を含む100mm×100mmの正方形の領域内の破片数は160個以上。
(2)大きさが3cm2を超える破片は3個以下、かつ直径100mmの円内に1個以下。
(3)長さが75mmを超え、150mm以下の細長い破片は5個以下。積層ガラスの周辺に達している細長い破片は、辺に対して45度以下で、かつ、その長さは75mm以下。
【0126】
なお、(1)は、(a)と(b)の何れか一方を満たしていればよいものとする。
【0127】
<例2~例5>
例1において、2枚のガラス板の厚さを変更すること以外は、例1と同様にして行う。
【0128】
【0129】
表1に示すように、例1~例3は、熱貫流率が2.1W/(m2K)~2.5W/(m2K)であり、安全性の評価も良好である。一方、例4では、熱貫流率が3.5W/(m2K)であり、高い。例5では、安全性の評価が不良である。よって、例1~例3は、例4及び例5と異なり、ガラス板の厚さを2.1mm~2.8mmとすることで、主面が湾曲していても、高い断熱性能及び安全性を有しつつ軽量にできるので、車両用ガラスとして有効に使用できるといえる。
【0130】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。