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特開2022-52984ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤及び粘着層の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052984
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤及び粘着層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20220329BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20220329BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J153/02
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159544
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA172
4J040DM011
4J040KA26
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA02
4J040NA12
4J040NA16
4J040NA19
4J040PB03
(57)【要約】
【課題】発明は、粘着層の細線化、初期粘着強度、オープンタイム、及びリワーク性の向上を課題とする。
【解決手段】本発明のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤は、ブロック共重合体を含むディスペンサー用ホットメルト型粘着剤であって、前記ブロック共重合体が、ハードセグメントブロックとソフトセグメントブロックとを有するものであり、前記ハードセグメントブロックのガラス転移温度が40℃以上であり、前記ソフトセグメントブロックのガラス転移温度が0℃以下であり、前記ブロック共重合体の重量平均分子量が50,000以上であり、前記ブロック共重合体の含有率が、10質量%以上90質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体を含むディスペンサー用ホットメルト型粘着剤であって、
前記ブロック共重合体が、ハードセグメントブロックとソフトセグメントブロックとを有するものであり、
前記ハードセグメントブロックのガラス転移温度が40℃以上であり、
前記ソフトセグメントブロックのガラス転移温度が0℃以下であり、
前記ブロック共重合体の重量平均分子量が50,000以上であり、
前記ブロック共重合体の含有率が、10質量%以上90質量%以下であるディスペンサー用ホットメルト型粘着剤。
【請求項2】
180℃における粘度が、500mPa・s以上50,000mPa・s以下である請求項1記載のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤。
【請求項3】
前記ブロック共重合体が、ポリスチレン系重合体ブロックを含むものである請求項1又は2記載のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤。
【請求項4】
前記ブロック共重合体におけるハードセグメントブロックの含有率が、50質量%以下である請求項1~3のいずれか1項記載のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤。
【請求項5】
前記ブロック共重合体におけるジブロック共重合体の含有率が、5質量%以上80質量%以下である請求項1~4のいずれか1項記載のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤。
【請求項6】
さらに、テルペン系粘着付与樹脂を含む請求項1~5のいずれか1項記載のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤。
【請求項7】
前記ディスペンサーがスクリューディスペンサーである請求項1~6のいずれか1項記載のディスペンサ用ホットメルト型粘着剤。
【請求項8】
電子機器の部材固定に用いられる請求項1~7のいずれか1項記載のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の粘着剤を、100℃以上に加熱して溶融物を得る工程、
前記溶融物を、ディスペンサーを用いて基材に塗布して塗布層を形成する工程、及び、
前記塗布層を50℃以下に冷却して、粘着層を得る工程を含む粘着層の製造方法。
【請求項10】
前記ディスペンサーがスクリューディスペンサーである請求項9記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト型粘着剤及びそれを用いた粘着層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト型粘着剤は、加熱により溶融し、冷却後粘着性を発揮することが可能な粘着剤であり、各種電気部材、自動車用部材、建築用部材、医療用部材など、幅広い分野で用いられている。こうしたホットメルト型粘着剤としては、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックを2個以上と、共役ジエンモノマーを有し、かつ該共役ジエンモノマーに基づく炭素-炭素二重結合の70%以上が水素添加された重合体ブロックを1個以上有し、重合体ブロックAの含有量が3質量%以上70質量%以下であり、数平均分子量が50,000以上150,000以下の範囲内にある水素添加ブロック共重合体と、粘着付与樹脂とを含む粘着剤組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-096422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、発明者らが検討したところ、近年、電子機器の小型化や、作業性のさらなる向上が求められており、従来から知られるホットメルト粘着剤では、細線状の塗布や、細線状に塗布した場合にも十分な初期粘着強度、オープンタイム、リワーク性等が十分に満足できるものではない場合があった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、粘着層の細線化、初期粘着強度、オープンタイム、及びリワーク性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体では、高温における粘度が、ディスペンサー塗布に適した範囲にあること、そのため、ディスペンサーでの塗布が可能なホットメルト型粘着剤を得ることができること、そして、ディスペンサーで塗布した場合に、粘着層の細線化、初期粘着強度、オープンタイム、及びリワーク性の向上が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤は、ブロック共重合体を含むものであり、前記ブロック共重合体が、ハードセグメントブロックとソフトセグメントブロックとを有するものであり、前記ハードセグメントブロックのガラス転移温度が40℃以上であり、前記ソフトセグメントブロックのガラス転移温度が0℃以下であり、前記ブロック共重合体の重量平均分子量が50,000以上であり、前記ブロック共重合体の含有率が、10質量%以上90質量%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホットメルト型粘着剤によれば、粘着層の細線化、初期粘着強度、オープンタイム、及びリワーク性の向上が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のディスペンサー用ホットメルト型粘着剤は、ブロック共重合体を含む。
【0010】
前記ブロック共重合体は、ハードセグメントブロック(A)と、ソフトセグメントブロック(B)とを有するものであり、該ブロック共重合体は、ABA型ブロック共重合体、或いはAB型ブロック共重合体であってもよく、ABA型ブロック共重合体及びAB型ブロック共重合体の混合物であってもよい。
【0011】
前記ハードセグメントブロック(A)は、冷却時、高い凝集力を発揮し、物理的な架橋点として作用しうるものであり、ソフトセグメント(B)中に、ハードセグメント(A)から形成される架橋構造が存在することで、適度な弾性を有し、かつ高い粘着力を発揮しうる粘着層を得ることが容易となる。
【0012】
なかでも、前記ブロック共重合体は、AB型ジブロック共重合体を含むものであることが好ましい。該AB型ジブロック共重合体の含有率は、前記ブロック共重合体中、10質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、90質量%以下であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0013】
前記ハードセグメントブロック(A)は、40℃以上にガラス転移温度を有する重合体ブロックであればよい。前記ハードセグメントブロックのガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは65℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。
【0014】
ガラス転移温度は、前記共重合樹脂を示差走査熱量計(DSC)により分析して得られる曲線において、ソフトセグメントの重合体ブロック及びハードセグメントの重合体ブロックの転移領域の外挿開始温度である。
【0015】
ブロック共重合体の各重合体ブロックのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ社製「DSC-7020」)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で-100℃~200℃まで測定して得られた曲線において、補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0016】
前記40℃以上にガラス転移温度を有する重合体としては、芳香族系重合体、環状構造を有する重合体、(メタ)アクリル重合体などが挙げられる。なかでも、芳香族系重合体、
(メタ)アクリル重合体が好ましく、芳香族系重合体がより好ましい。
【0017】
前記芳香族系重合体を形成しうるモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、パラメトキシスチレン、クロロスチレン、2,4-ジメチルスチレン(o,p-ジメチルスチレン)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のスチレン単量体等が挙げられる。
【0018】
前記環状構造を有する重合体を形成しうるモノマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
前記(メタ)アクリル重合体を形成しうるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等の、一級アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物;(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の、二級アルコールとアクリル酸とのエステル化物;(メタ)アクリル酸tert-ブチル等の三級アルコールとアクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。
【0020】
なかでも、前記ハードセグメント(A)に用いられる(メタ)アクリル重合体を形成しうるモノマーとしては、置換基の炭素原子数が4未満であるモノマーを含むことが好ましい。該置換基の炭素原子数が4未満であるモノマーに由来する単位の含有率は、該ハードセグメント(A)に用いられる(メタ)アクリル重合体中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0021】
前記ハードセグメントブロック(A)の割合は、前記ブロック共重合体中、例えば5質量%以上、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、いっそう好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0022】
前記ソフトセグメントブロック(B)は、0℃以下にガラス転移温度を有する重合体ブロックであればよい。前記ソフトセグメントブロックのガラス転移温度は、好ましくは-5℃以下、より好ましくは-15℃以下、さらに好ましくは-20℃以下であり、例えば-120℃以上、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-90℃以上である。
【0023】
前記0℃以下にガラス転移温度を有する重合体としては、例えば、共役ジエン系重合体(水添共役ジエン系重合体も含む)、(メタ)アクリル重合体等が挙げられる。
【0024】
前記共役ジエン系重合体を形成しうるモノマーとしては、例えば、1,3-ブタジエン(ブタジエン)、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。
【0025】
前記(メタ)アクリル重合体を形成しうるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等の、一級アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物;(メタ)アクリル酸イソプロピル等の、二級アルコールとアクリル酸とのエステル化物;(メタ)アクリル酸tert-ブチル等の三級アルコールとアクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。なかでも、置換基の炭素原子数が4以上であるモノマーが好ましい。
【0026】
なかでも、ソフトセグメント(B)に用いられる(メタ)アクリル重合体を形成しうるモノマーとしては、炭素原子数が4以上(好ましくは6以上、より好ましくは8以上)であるモノマーを含むことが好ましい。前記炭素原子数が4以上であるモノマーに由来する単位の含有率は、前記ソフトセグメントに用いられる(メタ)アクリル重合体中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、いっそう好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0027】
前記ソフトセグメントブロック(B)の割合は、前記ブロック共重合体中、例えば95質量%以下、好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、いっそう好ましくは85質量%以下であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0028】
前記ブロック共重合体としては、例えばポリスチレン-ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(イソプロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体等を使用することができる。なかでも、前記スチレン系のブロック共重合体としては、芳香族系重合体単位と共役ジエン系重合体単位とを有するブロック共重合体を使用することが好ましく、ポリスチレン-ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン)ブロック-ポリスチレン共重合体、を使用することが好ましい。
【0029】
前記ブロック共重合体の融点は、例えば、50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上であり、例えば200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0030】
前記ブロック共重合体の融点は、前記ブロック共重合体について、示差走査熱量計(DSC)を用い、熱分析を行った場合に、吸熱ピークを示す温度として測定することができる。
【0031】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量は、50,000以上であり、好ましくは60,000以上、より好ましくは70,000以上、さらに好ましくは80,000以上であり、好ましくは800,000以下、より好ましくは700,000以下、さらに好ましくは600,000以下である。前記ブロック共重合体の重量平均分子量が前記範囲にあることで、溶融時、適度な粘度を有し、ディスペンサー塗布が容易となる。
【0032】
本発明において、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準試料とし、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法により測定することができる。
【0033】
前記ブロック共重合体の180℃における粘度は、好ましくは500mPas以上、より好ましくは1,000mPa・s以上、さらに好ましくは2,000mPa・s以上であり、好ましくは50,000mPa・s以下、より好ましくは30,000mPa・s以下である。前記ブロック共重合体の180℃における粘度が前記範囲にあることで、液だれしにくく、かつ、ディスペンサーでの塗布も容易となる。
【0034】
前記ブロック共重合体の含有率は、前記ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤中、10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、90質量%以下であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0035】
前記ホットメルト型粘着剤は、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。
【0036】
前記粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、脂肪族(石油樹脂)系粘着付与樹脂、C5系石油系粘着付与樹脂等が挙げられる。
【0037】
なかでも、前記粘着付与樹脂としては、被着面への濡れ性を向上し、前記ブロック共重合体との相溶性を有する点から、C5系石油系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂を使用することが好ましい。特に、粘着層に適度な柔軟性を付与し、20℃~60℃の温度領域において、非常に高い接着力を付与しうる観点から、テルペンフェノール系粘着付与樹脂が好ましい。
【0038】
前記テルペンフェノール系粘着付与樹脂としては、テルペンモノマーとフェノールを共重合した樹脂を使用することができる。上記テルペンフェノール系粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上であり、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下である。前記テルペンフェノール系粘着付与樹脂の軟化点が前記範囲にあることで、前記ブロック共重合体との相溶性を維持しつつ、60℃以下の温度領域下で、非常に高い接着力を付与することが容易となり、さらに、被着体との密着性をよりいっそう向上することが容易となる。
【0039】
前記粘着付与樹脂の重量平均分子量は、例えば500以上、好ましくは700以上、より好ましくは900以上であり、例えば10,000以下、好ましくは8,000以下、より好ましくは5,000以下である。
【0040】
前記テルペンフェノール系粘着付与樹脂の含有率は、前記粘着付与樹脂中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0041】
前記粘着付与樹脂の含有量は、前記ブロック共重合体100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0042】
前記粘着付与樹脂は、上記した粘着付与樹脂以外に、プロセスオイル、ポリエステル系粘着付与樹脂、ポリブテン等の液状ゴム等を室温で液状の粘着付与樹脂として含んでいてもよい。
【0043】
前記ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤は、その他、必要に応じて、赤外線吸収剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル補足剤、充填剤(各種繊維(ガラス繊維、プラスチック繊維等)、熱膨張性バルーン、ビーズ、無機粉末(金属粉末、金属酸化物粉末)、着色剤(顔料、染料)、増粘剤、熱老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等のその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
前記その他の添加剤の含有率は、例えば、前記ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤中、例えば30質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0045】
前記ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤から形成される粘着層も本発明の範囲に包含される。
【0046】
前記粘着層のプッシュ強度は、例えば、20N/cm2以上、好ましくは25N/cm2以上、さらに好ましくは30N/cm2以上であり、例えば500N/cm2以下、好ましくは400N/cm2以下、より好ましくは300N/cm2以下である。
【0047】
前記粘着層のプッシュ強度は、オートグラフを使用し、クロスヘッドスピード10mm/分の条件で測定することができる。
【0048】
前記粘着層は、デュポン耐衝撃試験において、荷重500gf、衝撃を3回与えた場合に、剥がれが生じる高さの最小値が、好ましくは10cm以上、より好ましくは30cm以上、さらに好ましくは40cm以上であり、例えば200cm以下、150cm以下、120cm以下であってもよい。
【0049】
前記粘着層は、前記ディスペンサー用ホットメルト粘着剤を加熱して溶融物を得る工程、前記溶融物を、ディスペンサーを用いて基材に塗布して塗布層を形成する工程、及び、前記塗布層を冷却して、粘着層を得る工程を含む製造方法により得ることができる。
【0050】
前記ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤を加熱する際の温度としては、特に限定されないが、粘着剤の塗布適性を向上し、適度な粘度範囲とする観点から、100℃以上であり、好ましくは130℃、より好ましくは150℃であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
【0051】
前記ディスペンサー用ホットメルト型粘着剤を加熱する方法としては、適宜加熱装置を用いることができる。
【0052】
前記溶融物を基材に塗布する際は、ディスペンサーを用いる。前記ディスペンサーで塗布する際の速度は、例えば、5mm/分以上、好ましくは10mm/分以上、より好ましくは20mm/分以上であり、例えば、100mm/分以下、好ましくは80mm/分以下、さらに好ましくは70mm/分以下である。塗布速度が前記範囲にあることで、塗布作業性が良好であり、かつ工程に要する時間が短く、生産性とのバランスが良好である。
【0053】
前記ディスペンサーで塗布する際、塗布する直前に、せん断応力を印加してもよい。せん断応力をかけることで、粘着剤の粘度が低下し、塗布適性がいっそう向上する。せん断応力をかける方法としては、スクリューディスペンサーを用いる方法などが挙げられる。前記せん断応力をかける際のスクリューの回転速度は、好ましくは50rpm以上、より好ましくは100rpm以上、さらに好ましくは200rpm以上であり、好ましくは1,000rpm以下、より好ましくは900rpm以下、さらに好ましくは800rpm以下である。
【0054】
前記塗布層の冷却温度は、50℃以下であり、好ましくは30℃以下である。前記範囲に塗布層を冷却することで、粘着剤の流動を抑制し、所望の形状で接着させることが容易となる。
【0055】
前記塗布層を冷却する方法としては、工程時間を低減する観点から、必要に応じて、スポットクーラー等の冷却装置を用いてもよい。
【0056】
本発明のホットメルト型粘着剤は、粘着層の細線化、初期粘着強度、オープンタイム、及びリワーク性の向上が可能であり、電子機器、自動車用品、建築用品、医療用品等に広く適用可能であり、特に、筐体、レンズ部材等の携帯電子機器を構成する部材の固定に好適に使用することができる。
【実施例0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
(実施例1)
トリブロック共重合体の重量平均分子量が30万、ジブロック共重合体の重量平均分子量が15万のスチレン-ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂U(軟化点115℃、重量平均分子量1,000)65質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)2質量部を混合したものを、180℃に40分間加熱溶融した後、混合し、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0059】
(実施例2)
トリブロック共重合体の重量平均分子量が30万、ジブロック共重合体の重量平均分子量が15万のスチレン-ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂U(軟化点115℃、重量平均分子量1,000)50質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)2質量部を混合したものを、180℃に40分間加熱溶融した後、混合し、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0060】
(実施例3)
トリブロック共重合体の重量平均分子量が30万、ジブロック共重合体の重量平均分子量が15万のスチレン-イソプレンブロック共重合体T(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は26質量%。前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は14質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は86質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂U(軟化点115℃、重量平均分子量1,000)60質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)2質量部を混合したものを、180℃に40分間加熱溶融した後、混合し、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0061】
(実施例4)
トリブロック共重合体の重量平均分子量が30万、ジブロック共重合体の重量平均分子量が15万のスチレン-イソプレンブロック共重合体T(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は26質量%。前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は14質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は86質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂U(軟化点115℃、重量平均分子量1,000)100質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)2質量部を混合したものを、180℃に40分間加熱溶融した後、混合し、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0062】
(実施例4)
トリブロック共重合体の重量平均分子量が30万、ジブロック共重合体の重量平均分子量が15万のスチレン-イソプレンブロック共重合体T(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は26質量%。前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は14質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は86質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂U(軟化点115℃、重量平均分子量1,000)60質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)2質量部を混合したものを、180℃に40分間加熱溶融した後、混合し、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0063】
(比較例1)
トリブロック共重合体の重量平均分子量が30万、ジブロック共重合体の重量平均分子量が15万のスチレン-ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)5質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂U(軟化点115℃、重量平均分子量1,000)95質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)0.1質量部を混合したものを、180℃に40分間加熱溶融した後、混合し、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0064】
(比較例2)
トリブロック共重合体の重量平均分子量が30万、ジブロック共重合体の重量平均分子量が15万のスチレン-ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)5質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂U(軟化点115℃、重量平均分子量1,000)95質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)2質量部を混合したものを、180℃に40分間加熱溶融した後、混合し、ホットメルト型粘着剤を得た。
【0065】
《プッシュ強度》
実施例及び比較例で得られたホットメルト型粘着剤組成物をシリンジに充填し、予め180℃に加温した状態で、武蔵エンジニアリング株式会社製のスクリューディスペンサー(SCREWMASTER3 MSD-3-SET2、シリンジに充填されたホットメルト型粘着剤を羽根で撹拌しながら、空気圧で押し出す形式のディスペンサー)を用いて、中央に1cm径の穴の開いた厚さ2mmのポリカーボネート(PC)板(5cm×9cm)に塗布した。ディスペンサーの先端には内径0.4mmの精密ニードルが取り付けられており、ニードル先端とPC板との間の距離(クリアランス)は0.5mmとし、厚さが0.15mm、幅が1.0mmとなるように、シリンジ内の羽根の回転数と空気圧を調整し、直径1インチ(=25.4mm)の真円状に、PC板の穴を中心に塗布した。また塗布速度は50mm/秒とした。
【0066】
塗布してから30秒後、厚さ2mmのアクリル板(5cm×5cm)を載置し、次に0.8MPaの圧力条件にてプレス機を用いて10秒間加圧し、試験片を得た。
【0067】
上記で得た試験片を、23℃50%環境下に放置し、1時間経過後に取り出し、23℃下で試験片のプッシュ強度をオートグラフ(株式会社島津製作所AUTOGRAPH「AGS-X」を使用して、クロスヘッドスピード:10mm/分の条件で測定し、プッシュ強度(N/cm2)を測定した。
【0068】
《デュポン耐衝撃試験》
実施例及び比較例で得られたホットメルト型粘着剤組成物をシリンジに充填し、予め180℃に加温した状態で、武蔵エンジニアリング株式会社製のスクリューディスペンサー(SCREWMASTER3 MSD-3-SET2、シリンジに充填されたホットメルト型粘着剤を羽根で撹拌しながら、空気圧で押し出す形式のディスペンサー)を用いて、中央に1cm径の穴の開いた厚さ2mmのポリカーボネート(PC)板(5cm×9cm)に塗布した。ディスペンサーの先端には内径0.4mmの精密ニードルが取り付けられており、ニードル先端とPC板との間の距離(クリアランス)は0.5mmとし、厚さが0.15mm、幅が1.0mmとなるように、シリンジ内の羽根の回転数と空気圧を調整し、直径1インチ(=25.4mm)の真円状に、PC板の穴を中心に塗布した。また塗布速度は50mm/秒とした。
【0069】
塗布してから1分後、厚さ2mmのアクリル板(5cm×5cm)を載置し、次に0.8MPaの圧力条件にてプレス機を用いて10秒間加圧し、試験片を得た。
【0070】
上記で得た試験片を、23℃50%環境下に放置し、1時間経過後に取り出し、23℃下でデュポン式落下衝撃試験機にてアクリル板から撃芯を介して、荷重:500g、高さ:5cmで衝撃を3回与え、PC板の剥がれの発生がなければ更に5cm高さを高くする条件でそれぞれ耐落下衝撃性試験を続けた。それぞれ目視観察により剥がれの有無を確認し、剥がれが生じた高さ(cm)を評価した。なお、10cm以上であれば耐落下衝撃性に優れると判断した。
【0071】
《リワーク性》
実施例及び比較例で得られたホットメルト型粘着剤組成物をシリンジに充填し、予め180℃に加温した状態で、武蔵エンジニアリング株式会社製のスクリューディスペンサー(SCREWMASTER3 MSD-3-SET2、シリンジに充填されたホットメルト型粘着剤を羽根で撹拌しながら、空気圧で押し出す形式のディスペンサー)を用いて、中央に1cm径の穴の開いた厚さ2mmのポリカーボネート(PC)板(5cm×9cm)に塗布した。ディスペンサーの先端には内径0.4mmの精密ニードルが取り付けられており、ニードル先端とPC板との間の距離(クリアランス)は0.5mmとし、厚さが0.15mm、幅が1.0mmとなるように、シリンジ内の羽根の回転数と空気圧を調整し、直径1インチ(=25.4mm)の真円状に、PC板の穴を中心に塗布した。また塗布速度は50mm/秒とした。
【0072】
塗布してから5分後、PC板を手で水平に抑えながら、PC板上のホットメルト型粘着剤をもう一方の手の親指と人差し指で掴み、約0.52m/minの速度で引張り、下記基準よりリワーク性を評価した。
【0073】
〇・・・粘着剤がちぎれることなく、かつ、PC板上に粘着剤残りなくPC板から剥がせる
×・・・粘着剤がちぎれる、もしくは、PC板上に粘着剤残りがPC板上にあることが目視で確認される
【0074】
《溶融粘度》
実施例及び比較例で得られたホットメルト型粘着剤組成物をコーンプレート粘度計(東亜工業株式会社製 型式:CV-1)を用い、180℃の温度環境下において、50rpmの回転速度でコーンを回転させた時に測定した値を示す。
【0075】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のホットメルト型粘着剤によれば、粘着層の細線化、初期粘着強度、オープンタイム、及びリワーク性の向上が可能であり、電子機器、自動車用品、建築用品、医療用品等に広く適用可能であり、特に、筐体、レンズ部材等の携帯電子機器を構成する部材の固定に好適に使用することができる。