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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053148
(43)【公開日】2022-04-05
(54)【発明の名称】核酸モノマー
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20220329BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220329BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220329BHJP
【FI】
C07H19/10
A61K31/713
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K48/00
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159793
(22)【出願日】2020-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 奈保子
(72)【発明者】
【氏名】木村 康明
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩平
(72)【発明者】
【氏名】程 久美子
(72)【発明者】
【氏名】小林 芳明
(72)【発明者】
【氏名】安 成鎮
【テーマコード(参考)】
4C057
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA17
4C057AA18
4C057AA20
4C057BB02
4C057CC01
4C057CC04
4C057DD03
4C057LL09
4C057LL10
4C057LL18
4C057LL21
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZC411
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】ポリヌクレオチド二本鎖形成時の安定性を低下させる技術を提供すること。
【解決手段】糖の2’位炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位1、シトシン中のアミノ基が炭化水素基で置換されてなるヌクレオシド単位2、及び糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位3からなる群より選択される少なくとも1種のヌクレオシド単位を、ポリヌクレオチドに導入すること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖の2’位炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなる、核酸モノマー。
【請求項2】
一般式(1A):
【化1】
[式中:Baseは核酸塩基から1つの水素原子を除いてなる1価の基を示す。R1は水素原子又はアルキル基を示す。]
で表される部分構造を含む、請求項1に記載の核酸モノマー。
【請求項3】
ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はそれらの誘導体である、請求項1又は2に記載の核酸モノマー。
【請求項4】
ホスホロアミダイトモノマーである、請求項1~3のいずれかに記載の核酸モノマー。
【請求項5】
前記R1が水素原子である、請求項1~4のいずれかに記載の核酸モノマー。
【請求項6】
糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなる、核酸モノマー。
【請求項7】
前記R4がアルキル基である、請求項6に記載の核酸モノマー。
【請求項8】
糖の2’位に炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位1、及び糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位3からなる群より選択される少なくとも1種のヌクレオシド単位を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
siRNAである、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記ヌクレオシド単位1及び前記ヌクレオシド単位3からなる群より選択される少なくとも1種のヌクレオシド単位がsiRNAガイド鎖の5’末端から2~5番目のヌクレオシド配列中に含まれる、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
核酸塩基が一般式(2)
【化2】
[式中:R2は炭化水素基を示す。]
で表される基である核酸モノマーを含有する、ポリヌクレオチド製造用試薬。
【請求項12】
二本鎖形成時の安定性が低減されたポリヌクレオチドの製造に用いるため、或いはsiRNAの製造に用いるための、請求項11に記載の試薬。
【請求項13】
核酸塩基が一般式(2)
【化3】
[式中:R2は炭化水素基を示す。]
で表される基であるヌクレオシド単位2を含む、siRNA。
【請求項14】
前記ヌクレオシド単位2がsiRNAガイド鎖の5’末端から2~5番目のヌクレオシド配列中に含まれる、請求項13に記載のsiRNA。
【請求項15】
請求項9又は10に記載のポリヌクレオチド、及び請求項13又は14に記載のsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、試薬又は医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸モノマー等に関する。
【背景技術】
【0002】
RNAiは、ある遺伝子の特定領域と相同な2本鎖RNAであるsiRNA (small interfering RNA) がArgonaute (AGO)タンパク質にとりこまれ、AGOの上で1本鎖となり、相補的な配列をもつmRNAに対合して、AGOがmRNAを切断するという現象である。RNAiでは、目的とした遺伝子と完全に相補的な配列のsiRNAを用いているにも関わらず、目的とした遺伝子以外の遺伝子が抑制される場合があることが分かっている。本発明者は、siRNAガイド鎖の5'末端から2-8塩基目の7塩基(シード領域と呼ばれる)のRNAのみが相補的な配列をもつ遺伝子はoff-target効果によって抑制されることを明らかにしている(非特許文献1)。つまり、siRNAの場合、全長にわたって完全に相補的な配列をもつ遺伝子(標的遺伝子)はRNAi効果によって抑制されるが、それだけではなく、シード領域だけが相補的な配列をもつ遺伝子(非標的遺伝子)も、off-target効果と呼ばれる、本来は意図しない作用によって抑制される場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ui-Tei K, Naito Y, Nishi K, Juni A, Saigo K. (2008) Thermodynamic stability and Watson-Crick base pairing in the seed duplex are major determinants of the efficiency of the siRNA-based off-target effect. Nucleic Acids Res.36, 7100-7109.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記背景の下で研究を進める中で、siRNAのシード領域における二本鎖の安定性を低下させることによってoff-target効果を抑制することに着目した。
【0005】
そこで、本発明は、ポリヌクレオチド二本鎖形成時の安定性を低下させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、糖の2’位炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位1、シトシン中のアミノ基が炭化水素基で置換されてなるヌクレオシド単位2、及び糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位3からなる群より選択される少なくとも1種のヌクレオシド単位を、ポリヌクレオチドに導入することによって、ポリヌクレオチド二本鎖形成時の安定性を低下させることができることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0007】
項1. 糖の2’位炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなる、核酸モノマー。
【0008】
項2. 一般式(1A):
【0009】
【化1】
[式中:Baseは核酸塩基から1つの水素原子を除いてなる1価の基を示す。R1は水素原子又はアルキル基を示す。]
で表される部分構造を含む、項1に記載の核酸モノマー。
【0010】
項3. ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はそれらの誘導体である、項1又は2に記載の核酸モノマー。
【0011】
項4. ホスホロアミダイトモノマーである、項1~3のいずれかに記載の核酸モノマー。
【0012】
項5. 前記R1が水素原子である、項1~4のいずれかに記載の核酸モノマー。
【0013】
項6. 糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなる、核酸モノマー。
【0014】
項7. 前記R4がアルキル基である、項6に記載の核酸モノマー。
【0015】
項8. 糖の2’位に炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位1、及び糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位3からなる群より選択される少なくとも1種のヌクレオシド単位を含む、ポリヌクレオチド。
【0016】
項9. siRNAである、項8に記載のポリヌクレオチド。
【0017】
項10. 前記ヌクレオシド単位1及び前記ヌクレオシド単位3からなる群より選択される少なくとも1種のヌクレオシド単位がsiRNAガイド鎖の5’末端から2~5番目のヌクレオシド配列中に含まれる、項9に記載のポリヌクレオチド。
【0018】
項11. 核酸塩基が一般式(2)
【0019】
【化2】
[式中:R2は炭化水素基を示す。]
で表される基である核酸モノマーを含有する、ポリヌクレオチド製造用試薬。
【0020】
項12. 二本鎖形成時の安定性が低減されたポリヌクレオチドの製造に用いるため、或いはsiRNAの製造に用いるための、項11に記載の試薬。
【0021】
項13. 核酸塩基が一般式(2)
【0022】
【化3】
[式中:R2は炭化水素基を示す。]
で表される基であるヌクレオシド単位2を含む、siRNA。
【0023】
項14. 前記ヌクレオシド単位2がsiRNAガイド鎖の5’末端から2~5番目のヌクレオシド配列中に含まれる、項13に記載のsiRNA。
【0024】
項15. 項9又は10に記載のポリヌクレオチド、及び項13又は14に記載のsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、試薬又は医薬。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ポリヌクレオチド二本鎖形成時の安定性を低下させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】試験例4の結果を示す。左側から、使用したsiRNA、RNAi活性(図中のRNAi activity)、オフターゲット活性(図中のOff-target activity)を示す。濃度は、siRNAの使用濃度を示す。RNAi活性は、値が低ければ、対象遺伝子を抑制できている(RNAi活性が高い)ことを示す。同様に、オフターゲット活性は、値が低ければオフターゲット効果が現れており、対象以外の遺伝子も抑制してしまっていることを示す。
図2】試験例7の結果を示す。左側から、使用したsiRNA、RNAi活性、オフターゲット活性を示す。濃度は、siRNAの使用濃度を示す。RNAi活性及びオフターゲット活性については、図1の説明と同様である。
図3】試験例8の結果を示す。左側から、使用したsiRNA、RNAi活性、オフターゲット活性を示す。濃度は、siRNAの使用濃度を示す。RNAi活性及びオフターゲット活性については、図1の説明と同様である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0028】
1.核酸モノマー
本発明は、その一態様において、糖の2’位炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなる、核酸モノマー(本明細書において、「本発明の核酸モノマー1」と示すこともある。)に関する。また、本発明は、その一態様において、核酸塩基が一般式(2)
【0029】
【化4】
[式中:R2は炭化水素基を示す。]
で表される基である核酸モノマー(本明細書において、「本発明の核酸モノマー2」と示すこともある。)に関する。さらに、本発明は、その一態様において、糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなる、核酸モノマー(本明細書において、「本発明の核酸モノマー3」と示すこともある。)に関する。本明細書において、本発明の核酸モノマー1~3をまとめて、「本発明の核酸モノマー」と示すこともある。以下、これらについて説明する。
【0030】
<1-1.核酸モノマー>
本明細書において、核酸モノマーとは、一部の原子及び/又は基が除かれた状態でポリヌクレオチドの構成単位となり得る化合物であり、核酸塩基と糖とが連結してなる部分構造を含むものである限り、特に制限されない。本項では核酸モノマーについて説明する。
【0031】
核酸塩基としては、核酸を構成する塩基を特に制限無く採用することができる。核酸を構成する塩基には、RNA、DNA等の天然核酸中の典型的な塩基(アデニン(A)、チミン(T)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)等)のみならず、これ以外の塩基、例えばヒポキサンチン(I)、修飾塩基等も包含される。修飾塩基としては、例えば、シュードウラシル、3-メチルウラシル、ジヒドロウラシル、5-アルキルシトシン(例えば、5-メチルシトシン)、5-アルキルウラシル(例えば、5-エチルウラシル)、5-ハロウラシル(5-ブロモウラシル)、6-アザピリミジン、6-アルキルピリミジン(6-メチルウラシル)、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5’-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、1-メチルアデニン、1-メチルヒポキサンチン、2,2-ジメチルグアニン、3-メチルシトシン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メチルカルボニルメチルウラシル、5-メチルオキシウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸、2-チオシトシン、プリン、2-アミノプリン、イソグアニン、インドール、イミダゾール、キサンチン等が挙げられる。
【0032】
糖としては、ポリヌクレオチドを構成し得るものである限り特に制限されないが、代表的にはリボース、デオキシリボース等の5炭糖が挙げられる。また、これらが修飾されたものも糖に包含される。このような糖としては、例えば、リボースの2’位の水酸基が、-OR(Rは、水酸基の保護基(例えばTBDMS基(tert-ブチルジメチルシリル基)、TOM基(トリイソプロピルシロキシメチル基)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、アルコキシアルキル基(例えばメトキシエチル基等)、-CH2CH2NHC(NH)NH2、-CH2CONHCH3、-CH2CH2CN等)を示す)に置換されてなる糖、糖の2´炭素と4´炭素とが他の原子(例えば酸素原子、炭素原子)を介して或いは直接架橋されることにより、糖部のコンフォーメーションがN型に固定された糖、糖の2´炭素にハロゲン原子(例えばフッ素原子)が連結してなる糖等が挙げられる。
【0033】
核酸モノマーは、典型的には、一般式(X):
【0034】
【化5】
[式中:Baseは核酸塩基から1つの水素原子を除いてなる1価の基を示す。Raは水素原子、ハロゲン原子、又は-OR(Rは、水酸基の保護基(例えば、TBDMS基(tert-ブチルジメチルシリル基)、TOM基(トリイソプロピルシロキシメチル基)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、アルコキシアルキル基(例えばメトキシエチル基等)、-CH2CH2NHC(NH)NH2、-CH2CONHCH3、-CH2CH2CN等)を示す。)
を示す。]
で表される部分構造を含む。
【0035】
核酸モノマーとしては、ヌクレオシド、ヌクレオチド、それらの誘導体等が挙げられる。誘導体としては、特に制限されないが、例えばポリヌクレオチドの製造に用いるための誘導体(例えばホスホロアミダイトモノマー等)が挙げられる。
【0036】
ヌクレオシドは、核酸塩基と糖とが連結してなる化合物である。ヌクレオシドとして、典型的には、上記した一般式(X)で表される部分構造中の糖の3´及び5´炭素に連結した酸素原子に水素原子が連結してなる化合物が挙げられる。
【0037】
ヌクレオチドは、代表的には、ヌクレオシドにリン酸基が結合してなる化合物である。ヌクレオチドとしては、リン酸基の結合数に応じて、モノフォスフェート、ジフォスフェート、トリフォスフェート等が挙げられる。また、リン酸基が修飾された化合物もヌクレオチドに包含される。
【0038】
ホスホロアミダイトモノマーは、ポリヌクレオチドの固相合成法において使用されるモノマーであり、この限りにおいて特に制限されない。ホスホロアミダイトモノマーとして、例えば一般式(X1):
【0039】
【化6】
[式中:Base及びRaは前記に同じである。Rb及びRcは同一又は異なって水酸基の保護基を示す。Rd及びReは同一又は異なってアルキル基を示す。]
で表される化合物が挙げられる。
【0040】
Rbとしては、水酸基の保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイトモノマーで使用される公知の保護基を広く使用することができる。Rbとしては、好ましくは一般式(X2):
【0041】
【化7】
[式中:R31、R32及びR33は同一又は異なって水素原子又はアルコキシ基を示す。]
で表される基が挙げられる。
【0042】
R31、R32及びR33は1つが水素であり、残りの2つがアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基が特に好ましい。
【0043】
Rcとしては、水酸基の保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイトモノマーで使用される公知の保護基を広く使用することができる。Rcとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクリルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリルアルケニル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、シリル基、シリルオキシアルキル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリルオキシアルキル基などが挙げられ、これらは電子求引基で置換されていてもよい。
【0044】
Rcとして、好ましくは、電子求引基で置換されたアルキル基である。当該電子求引基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン、アリールスルホニル基、トリハロメチル基、トリアルキルアミノ基などが挙げられ、好ましくはシアノ基である。Rcは、特に好ましくは-(CH22-CNである。
【0045】
Rd及びReで示されるアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロビル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられる。ここでのアルキル基には、アルコキシ基などのアルキル部分も含まれる。R5及びR6は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0046】
Rd及びReは、特に好ましくは共にイソプロピル基である。
【0047】
核酸モノマーには、塩も包含される。塩としては、特に制限されず、例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。また、核酸モノマーには、水和物、溶媒和物、結晶多形なども含まれる。
【0048】
<1-2.本発明の核酸モノマー>
本発明の核酸モノマー1は、糖の2’位炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなる。
【0049】
R1で示されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~4、よりさらに好ましくは炭素数1~2のアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロビル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0050】
R1は水素原子であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の核酸モノマー1は、好ましくは一般式(1A):
【0052】
【化8】
[式中:Base及びR1は前記に同じである。]
で表される部分構造を含む。
【0053】
本発明の核酸モノマー1は、様々な方法で製造することができる。
【0054】
本発明の核酸モノマー1は、例えば、糖の2’位炭素にアミノ基が連結してなる核酸モノマー(化合物1)と、一般式(1B):HO-C(=O)-R1(式中:R1は前記に同じである。)で表される化合物(化合物2)とを反応させることを含む方法により、製造することができる。
【0055】
化合物1及び化合物2としては、市販の化合物をそのまま使用することもできるし、必要に応じて公知の方法に従って又は準じて且つ/或いは実施例に記載の方法に従って又は準じて合成したものを使用することもできる。
【0056】
化合物2の使用量は、収率、合成の容易さ等の観点から、通常、化合物1 1モルに対して0.5~3モルが好ましく、1~2モルがより好ましい。
【0057】
本反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、例えばジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン等が挙げられ、好ましくはジクロロメタン等が挙げられる。溶媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0058】
本反応は、通常、塩基の存在下で行われる。塩基としては、特に制限されるものではなく、例えば公知の塩基を広く使用することができる。塩基としては、具体的にはジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等が挙げられる。また、本反応は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)等の縮合剤の存在下で行われることが好ましい。
【0059】
本反応においては、上記成分以外にも、反応の進行を著しく損なわない範囲で、適宜添加剤を使用することもできる。
【0060】
反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、10~80℃で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、30分間~30時間とすることができる。
【0061】
反応の進行は、クロマトグラフィーのような通常の方法で追跡することができる。反応終了後、溶媒を留去し、生成物はクロマトグラフィー法、再結晶法等の通常の方法で単離精製することができる。また、生成物の構造は、元素分析、MS(ESI-MS)分析、IR分析、1H-NMR、13C-NMR等により同定することができる。
【0062】
本発明の核酸モノマー2は、核酸塩基が一般式(2)
【0063】
【化9】
[式中:R2は炭化水素基を示す。]
で表される基である。
【0064】
R2で示される炭化水素基としては、特に制限されず、例えばアルキル基、アリール基等、さらにはこれらが任意に組み合わされてなる基(例えば、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアラルキル基)等が挙げられる。
【0065】
R2で示されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~4、よりさらに好ましくは炭素数1~2のアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロビル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0066】
R2で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0067】
R2で示されるアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~3)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が上記アリール基に置換されてなるアラルキル基等が挙げられる。該アラルキル基としては、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0068】
R2で示されるアルキルアリール基は、特に制限されないが、例えば上記アリール基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~2)のアルキル基に置換されてなるアルキルアリール基等が挙げられる。該アルキルアリール基としては、具体的には、例えばトリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0069】
R2で示されるアルキルアラルキル基は、特に制限されないが、例えば上記アラルキル基の芳香環上の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~2)のアルキル基に置換されてなるアルキルアラルキル基等が挙げられる。
【0070】
R2はアルキル基であることが特に好ましい。
【0071】
本発明の核酸モノマー2は、好ましくは一般式(2A):
【0072】
【化10】
[式中:R2及びRaは前記に同じである。]
で表される部分構造を含む。
【0073】
本発明の核酸モノマー2は、公知の方法に従って又は準じて製造することができる。例えば、公知文献(NUCLEOSIDES & NUCLEOTIDES, 14(3-5), 1129-1 132 (1995) Jane A. Grasby , Mohinder Singh , Jonathan Karn & Michael J. Gait)に記載の方法に従って製造することができる。
【0074】
本発明の核酸モノマー3は、糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなる。
【0075】
R3で示される炭化水素基としては、特に制限されず、例えばアルキル基、アリール基等、さらにはこれらが任意に組み合わされてなる基(例えば、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアラルキル基)等が挙げられる。
【0076】
R2で示されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロビル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0077】
R3で示されるアリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキルアラルキル基については、R2と同様である。
【0078】
R3はアルキル基であることが特に好ましい。
【0079】
nは好ましくは2~3又は1~2、特に好ましくは2である。
【0080】
mは好ましくは1~2である。
【0081】
本発明の核酸モノマー3は、好ましくは一般式(3A):
【0082】
【化11】
[式中:Base、R4、n、及びmは前記に同じである。]
本発明の核酸モノマー3は、様々な方法で製造することができる。本願核酸モノマー3は、例えば後述の実施例に記載の方法に従って、又は準じて、製造することができる。
【0083】
本発明の核酸モノマーは、好ましくはヌクレオシド、ヌクレオチド、又はそれらの誘導体である。中でも、本発明の核酸モノマーは、ホスホロアミダイトモノマーであることが特に好ましい。
【0084】
本発明の核酸モノマーについて、上記に説明の無い事項については、上記「1-1.核酸モノマー」に記載の通りである。
【0085】
<2.ポリヌクレオチド>
本発明は、その一態様において、糖の2’位に炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位1、核酸塩基が一般式(2)
【0086】
【化12】
[式中:R2は前記に同じである。]
で表される基であるヌクレオシド単位2、及び糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなるヌクレオシド単位3からなる群より選択される少なくとも1種のヌクレオシド単位を含む、ポリヌクレオチド(本明細書において、「本発明のポリヌクレオチド」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0087】
本明細書において、ヌクレオシド単位とは、ポリヌクレオチドを構成する繰り返し単位であり、核酸塩基と糖とが連結してなる部分構造を含むものである限り、特に制限されない。ヌクレオシド単位は、典型的には、一般式(X):
【0088】
【化13】
[式中:Base及びRaは前記に同じである。]
で表される部分構造を含む。
【0089】
ヌクレオシド単位1は、糖の2’位に炭素に一般式(1):-NH-C(=O)-R1(式中:R1は前記に同じである。)で表される基が連結してなる。
【0090】
ヌクレオシド単位1は、好ましくは、好ましくは一般式(1A):
【0091】
【化14】
[式中:Base及びR1は前記に同じである。]
で表される部分構造を含む。
【0092】
ヌクレオシド単位2は、核酸塩基が一般式(2)
【0093】
【化15】
[式中:R2は前記に同じである。]
で表される基である。
【0094】
ヌクレオシド単位2は、好ましくは一般式(2A):
【0095】
【化16】
[式中:R2及びRaは前記に同じである。]
で表される部分構造を含む。
【0096】
ヌクレオシド単位3は、糖の2’位炭素に一般式(3):-(O-CH2-)n-(S-)m-R4(式中:R4は炭化水素基を示す。n及びmはそれぞれ1~3の整数を示す。)で表される基が連結してなる。
【0097】
ヌクレオシド単位3は、好ましくは、好ましくは一般式(3A):
【0098】
【化17】
[式中:Base、R4、n、及びmは前記に同じである。]
で表される部分構造を含む。
【0099】
本発明のポリヌクレオチドに含まれるヌクレオシド単位1の数、ヌクレオシド単位2の数、ヌクレオシド単位3の数、又はそれらの合計数は、特に制限されないが、例えば1~20、1~10、1~5、1~3、1~2、又は1である。
【0100】
本発明のポリヌクレオチドに含まれるヌクレオシド単位1の数、ヌクレオシド単位2の数、ヌクレオシド単位3の数、又はそれらの合計数の、本発明のポリヌクレオチドを構成する総ヌクレオシド単位数に対する割合は、特に制限されないが、例えば80%以下、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下である。
【0101】
本発明のポリヌクレオチドにおいて、ヌクレオシド単位1、ヌクレオシド単位2及びヌクレオシド単位3以外の構成単位は、特に制限されず、天然核酸、aTNA及びSNAを含む各種人工核酸の構成単位を採用することができる。採用し得る核酸として、具体的には、DNA、RNA等の他にも、次に例示するように、公知の化学修飾が施されたものであってもよい。各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヌクレオチドの糖部の2´酸素と4´炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したものであるBNA(LNA)等もまた、好ましく用いられ得る。
【0102】
本発明のポリヌクレオチドにおいて、ヌクレオシド単位間の結合様式は、特に制限されず、例えばホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、ヒドロキシメチルホスホネート結合、ホスホロジチオネート結合等が挙げられる。
【0103】
本発明のポリヌクレオチドの塩基長は、特に制限されず、例えば6~10000である。該塩基長は、合成容易性等の観点から、好ましくは6~1000、より好ましくは6~500、さらに好ましくは6~200、よりさらに好ましくは6~100、とりわけ好ましくは6~50である。
【0104】
本発明のポリヌクレオチドは、他の分子が連結されたものも包含する。他の分子としては、特に制限されず、例えば蛍光標識物、ビオチン、アジド、エチニル基等が挙げられる。蛍光標識物としては、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、フィコエリスリン、6-FAM(商標)、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)5、Alexa Fluor(登録商標)のシリーズ等が挙げられる。
【0105】
本発明のポリヌクレオチドは、1本鎖であることもできるし、2本鎖であることもできる。また、本発明のポリヌクレオチドは、鎖状であることもできるし、環状であることもできる。
【0106】
本発明のポリヌクレオチドは、対象ポリヌクレオチドに対して結合することにより、種々の機能を発揮するものであることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドとして、具体的にはsiRNA、miRNA、アンチセンス核酸等が挙げられる。中でも、siRNAが特に好ましい。本発明のsiRNAは、既存siRNAでは狙いにくい遺伝子(例えば シード領域にCGが多く含まれる遺伝子)もターゲットとすることができる。また、本発明のsiRNAは、off-target効果を抑制しながらも、対象遺伝子を抑制することができる。
【0107】
本発明のポリヌクレオチドにおけるヌクレオシド単位1、ヌクレオシド単位2、ヌクレオシド単位3の位置は、特に制限されないが、これらのヌクレオシド単位は、5’末端から2~8番目(好ましくは2~5番目)のヌクレオシド配列中に含まれることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドがsiRNAである場合、ガイド鎖において上記位置にヌクレオシド単位1、ヌクレオシド単位2、ヌクレオシド単位3が含まれることにより、オフターゲット活性をより効率的に抑制することが可能である。また、この位置であることは、siRNAの標的遺伝子に対するRNAi活性に対する影響をより低く抑えるという観点からも、好ましい。
【0108】
siRNAは、標的遺伝子の発現を特異的に抑制する二本鎖RNA分子である限り特に制限されない。一実施形態において、siRNAは、例えば、18塩基以上、19塩基以上、20塩基以上、又は21塩基以上の長さであることが好ましい。また、siRNAは、例えば、25塩基以下、24塩基以下、23塩基以下、又は22塩基以下の長さであることが好ましい。ここに記載するsiRNAの長さの上限値及び下限値は任意に組み合わせることが想定される。例えば、下限が18塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ;下限が19塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ;下限が20塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ;下限が21塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さの組み合わせが想定される。
【0109】
siRNAは、shRNA(small hairpin RNA)であっても良い。shRNAは、その一部がステムループ構造を形成するように設計することができる。例えば、shRNAは、ある領域の配列を配列aとし、配列aに対する相補鎖を配列bとすると、配列a、スペーサー、配列bの順になるようにこれらの配列が一本のRNA鎖に存在するようにし、全体で45~60塩基の長さとなるように設計することができる。配列aは、標的となるFchsd1をコードする塩基配列の一部の領域の配列であり、標的領域は特に限定されず、任意の領域を候補にすることが可能である。そして配列aの長さは19~25塩基、好ましくは19~21塩基である。
【0110】
Fchsd1特異的siRNAは、5’又は3’末端に、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、通常2~4塩基程度である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いると核酸の安定性を向上させることができる場合がある。このような付加的塩基の配列としては、例えばug-3’、uu-3’、tg-3’、tt-3’、ggg-3’、guuu-3’、gttt-3’、ttttt-3’、uuuuu-3’などの配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
siRNAは、3'末端に突出部配列(オーバーハング)を有していてもよく、具体的には、dTdT(dTはデオキシチミジンを表わす)を付加したものが挙げられる。また、末端付加がない平滑末端(ブラントエンド)であってもよい。siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖が異なる塩基数であってもよく、例えば、アンチセンス鎖が3'末端及び5'末端に突出部配列(オーバーハング)を有している「asymmetrical interfering RNA(aiRNA)」を挙げることができる。典型的なaiRNAは、アンチセンス鎖が21塩基からなり、センス鎖が15塩基からなり、アンチセンス鎖の両端で各々3塩基のオーバーハング構造をとる。
【0112】
siRNAの標的配列の位置は特に制限されるわけではないが、一実施形態において、5’-UTR及び開始コドンから約50塩基まで、並びに3’-UTR以外の領域から標的配列を選択することが望ましい。選択された標的配列の候補群について、標的以外のmRNAにおいて16-17塩基の連続した配列に相同性がないかどうかを、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)などのホモロジー検索ソフトを用いて調べ、選択した標的配列の特異性を確認することが好ましい。特異性が確認された標的配列について、AA(もしくはNA)以降の19-21塩基にTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するセンス鎖と、該19-21塩基に相補的な配列及びTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するアンチセンス鎖とからなる2本鎖RNAをsiRNAとして設計してもよい。また、siRNAの前駆体であるshRNAは、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5-25塩基程度)を適宜選択し、上記センス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより設計することができる。
【0113】
siRNA及び/又はshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、以下を挙げることができる。
Ambionが提供するsiRNA Target Finder(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/siRNA_finder.html)pSilencer(登録商標)Expression Vector用インサートデザインツール(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/psilencer_converter.html)RNAi Codexが提供するGeneSeer(http://codex.cshl.edu/scripts/newsearchhairpin.cgi)。
【0114】
本発明のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法、人工核酸の製造手法等に従って容易に作製することができる。例えば、PCR、制限酵素切断、核酸連結技術等を利用して作製することができる。また、好適には、後述の本発明の製造方法に従って作製することができる。
【0115】
本発明のポリヌクレオチドは、医薬、試薬等(以下、これらを総称して「本発明の剤」と示すこともある。)に利用することができる。
【0116】
本発明の剤は、本発明のポリヌクレオチドを含有する限りにおいて特に制限されず、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、薬学的に許容される成分であれば特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
【0117】
本発明の剤の使用態様は、特に制限されず、その種類に応じて適切な使用態様を採ることができる。本発明の剤は、例えばin vitroで使用する(例えば、培養細胞の培地に添加する)こともできるし、in vivoで使用する(例えば、動物に投与する)こともできる。
【0118】
本発明の剤の適用対象は特に限定されず、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ等の種々の哺乳類動物; 動物細胞等が挙げられる。細胞の種類も特に制限されず、例えば血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等が挙げられる。
【0119】
本発明の剤を抗がん剤として用いる場合、そのがん細胞の種類は特に限定されず、例えば腎臓がん細胞、白血病細胞、食道がん細胞、胃がん細胞、大腸がん細胞、肝臓がん細胞、すい臓がん細胞、肺がん細胞、前立腺がん細胞、皮膚がん細胞、乳がん細胞、子宮頚がん細胞等が挙げられる。
【0120】
本発明の剤は、任意の剤形、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口製剤形態、注射用製剤(例えば、点滴注射剤(例えば点滴静注用製剤等)、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等の非経口製剤形態を採ることができる。
【0121】
本発明の剤の投与経路としては、所望の効果が得られる限り特に制限されず、経口投与、経管栄養、注腸投与等の経腸投与; 経静脈投与、経動脈投与、筋肉内投与、心臓内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与等の非経口投与等が挙げられる。 本発明の剤中の本発明のポリヌクレオチドの含有量は、使用態様、適用対象、適用対象の状態等に左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.0001~100重量%、好ましくは0.001~50重量%とすることができる。
【0122】
本発明の剤を動物に投与する場合の投与量は、薬効を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分である本発明のポリヌクレオチドの重量として、一般に経口投与の場合には一日あたり0.1~1000 mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5~50 mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01~100 mg/kg体重、好ましくは0.1~10 mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2~3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
【0123】
本発明のポリヌクレオチドについて、上記に説明の無い事項については、上記「1.核酸モノマー」に記載の通りである。
【0124】
<3.試薬>
本発明は、その一態様において、本発明の核酸モノマー1、本発明の核酸モノマー2、及び本発明の核酸モノマー3からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、試薬(本明細書において、「本発明の試薬」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0125】
本発明の試薬は、本発明の核酸モノマーを含有する限りにおいて特に制限されず、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、薬学的に許容される成分であれば特に限定されるものではない。他の成分としては、薬理作用を有する成分のほか、添加剤も含まれる。添加剤としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
【0126】
本発明の試薬中の本発明の核酸モノマーの含有量は、例えば0.001~100質量%である。
【0127】
本発明の試薬の使用態様は、特に制限されず、その種類に応じて適切な使用態様を採ることができる。本発明の試薬は、例えばポリヌクレオチド製造用試薬(好ましくは、二本鎖形成時の安定性が低減されたポリヌクレオチドの製造に用いるため、或いはsiRNA(オフターゲット活性が抑制されたsiRNA)の製造に用いるための試薬)とすることができる。その他、例えばin vitroで使用する(例えば、培養細胞の培地に添加する。)こともできるし、in vivoで使用することもできる。
【0128】
本発明の試薬は、キットの形態であることもできる。キットには、必要に応じて、他の試薬や器具(例えば、ポリヌクレオチドの製造に使用される試薬や器具)が含まれていてもよい。
【0129】
本発明の試薬について、上記に説明の無い事項については、上記「1.核酸モノマー」及び「2.ポリヌクレオチド」に記載の通りである。
【実施例0130】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0131】
合成例1.2´-ホルムアミドウリジンのホスホロアミダイト体の合成
以下に示す、2´-ホルムアミドウリジンのホスホロアミダイト体を合成した。
【0132】
【化18】
合成スキームは以下の通りである。
【0133】
【化19】
【0134】
<スペクトル測定>
NMRスペクトルは、JEOL ECS-400 (400 MHz) を用いて測定した。1H-NMRスペクトルの化学シフト値は、溶媒の残留プロトン (CHCl3: 7.26 ppm, CD3SOCD2H: 2.50 ppm) を内部標準として用いた。13C-NMRスペクトルの化学シフト値は、測定溶媒由来のシグナル (CDCl3: 77.16 ppm, CD3SOCD3: 33.52 ppm) を内部標準として用いた。31P-NMRスペクトルの化学シフト値は、85%リン酸 (0 ppm) を内部標準として用いた。シグナルの多重度はs: singlet, d: doublet, t: triplet, q: quartet, m: multipletの略語を用いてそれぞれ表示した。
【0135】
MSスペクトルは、Bruker Daltonics micrOTOF-Q II (ESI-MS) を用いて測定した。
【0136】
<化合物2の合成>
2,2´-O-シクロウリジン(化合物1) (5.00 g, 22.1 mmol, 1 eq.) をピリジン (50 mL) に溶かし、撹拌しながらDMTrCl (8.24 g, 24.3 mmol, 1.1 eq.)、DMAP (0.0540 g, 0.442 mmol, 0.02 eq.)を加え、室温で16 時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、重曹水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、綿栓ろ過をし、溶媒を留去した。粗生成物を中性フラッシュカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル/メタノール=10/1) で精製し、化合物2(10.4 g, 19.8 mmol, 90%) を得た。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 7.906 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.239-7.085 (m, 9H), 6.822-6.777 (m, 4H), 6.287 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.938 (br, s, 1H), 5.842 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.169 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 4.262 (s, 1H), 4.177 (m, 1H), 3.692 (s, 6H), 2.901 (dd, J = 10.4, 4.4 Hz, 1H), 2.773 (dd, J = 10.4, 7.4 Hz, 1H); 13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 171.493, 159.800, 158.564, 145.181, 137.287, 135.715, 130.063, 128.386, 127.965, 127.210, 113.757, 109.417, 90.295, 88.963, 87.383, 85.907, 75.254, 63.346, 55.499; HRMS (ESI+) calc. m/z529.1969 (M + H+), 551.1789 (M + Na+), 567.1528 (M + K+), found m/z 529.1970 (M + H+), 551.1792 (M + Na+), 567.1529 (M + K+).。
【0137】
<化合物3の合成>
化合物2 (10.0 g, 18.9 mmol, 1eq.) をDMF (62.5 mL) に溶かし、アジ化ナトリウム (6.5 g, 100 mmol, 5 eq.)、15-クラウン-5 (37.5 mL, 189.5 mmol, 10 eq.)を加え、120 ℃で42 時間撹拌した。反応溶液をヘキサン/酢酸エチル=2/1の混合液で希釈し、重曹水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、綿栓ろ過をし、溶媒を留去した。粗生成物を中性フラッシュカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル=1/2) で精製し、化合物3(7.01 g, 12.3 mmol, 65%) を得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.934 (br, s, 1H), 7.894 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.364-7.233 (m, 9H), 6.835 (d, J = 4.4 Hz, 4H), 5.964 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 5.365 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.475 (q, J = 6.4 Hz, 1H), 4.159 (q, J = 2.8 Hz, 1H), 4.023 (m, 1H), 3.782 (s, 6H), 3.589 (dd, J = 11.4, 2.2 Hz, 1H), 3.474 (dd, J = 11.4, 2.6 Hz, 1H), 2.524 (d, J=6.8 Hz, 1H); 13C-NMR (100 MHz,CDCl3): δ 163.062, 158.865, 150.129, 144.254, 139.609, 135.203, 135.060, 130.167, 128.164, 127.363, 113.448, 102.527, 87.811, 87.382, 83.290,69.823, 67.267, 61.421, 55.365; HRMS (ESI+) calc. m/z 594.1959 (M + Na+), 610.1699 (M + K+), found m/z 594.1940 (M + Na+), 610.1708 (M + K+).。
【0138】
<化合物4の合成>
化合物3 (6.50 g, 11.4 mmol) をメタノール (115 mL) に溶かし、パラジウム/炭素 (パラジウム 10%、約55%水湿潤品) (0.95 g)を加え、室温、水素雰囲気下で2.5 時間撹拌した。反応溶液をセライトろ過してパラジウム触媒を取り除き、溶媒を留去し、化合物4 (5.66 g, 10.4 mmol, 91%) を得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.778 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.199-7.363 (m, 9H), 6.842-6.812 (m, 4H), 5.879 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 5.401 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.212-4.180 (m, 2H), 3.775 (s, 6H), 3.580 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 3.472-3.380 (m, 2H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 163.157, 158.789, 151.188, 144.311, 140.010, 135.346, 135.193, 130.129, 128.126, 127.249, 113.400, 102.508, 89.928, 87.172, 85.474, 71.683, 63.462, 59.628, 55.346; HRMS (ESI+) calc. m/z 546.2235 (M + H+), 568.2054 (M + Na+), found m/z 546.2276 (M + H+), 568.2074 (M + Na+).。
【0139】
<化合物5の合成>
化合物4 (5.50 g, 10.1 mmol, 1 eq.) をジクロロメタン (75 mL) に溶かし、DIPEA (26.4 mL, 152 mmol, 15 eq.)、EDC・HCl (2.90 g, 15.1 mmol, 1.5 eq.)、 DMAP (0.0620 g, 0.507 mmol, 0.05 eq.)、ギ酸 (0.571 mL, 15.1 mmol, 1.5 eq.) を加え、室温で19 時間撹拌した。反応溶液を重曹水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、綿栓ろ過をし、溶媒を留去した。粗生成物を中性シリカゲルカラムクロマトグラフィー (ジクロロメタン/メタノール=10/1) で精製し、化合物5(3.30 g, 5.75 mmol, 57%) を得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.185 (s, 1H), 7.608 (d, J= 8.4 Hz, 1H), 7.543 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.367-7.165 (m, 9H), 6.818-6.796 (m, 4H), 6.103 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.393 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.760 (dd, J = 8.4 Hz, J = 14 Hz, 1H), 4.375 (d, J= 5.6 Hz, 1H), 4.162 (m, 1H), 3.717 (s, 6H), 3.364 (m, 2H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 163.594, 163.153, 158.727, 151.935, 144.146, 140.007, 135.342, 130.197, 128.262, 128.157, 127.237, 113.432, 103.478, 87.201, 85.591, 85.524, 71.786, 63.815, 55.327, 54.992; HRMS (ESI+) calc. m/z596.2003 (M + Na+), 612.1743 (M + K+), found m/z596.2026 (M + Na+), 612.1764 (M + K+).。
【0140】
<化合物6の合成>
化合物5 (3.00 g, 5.23 mmol, 1 eq.) をトルエンと共沸させ、氷浴中でジクロロメタン (55 mL) に溶かし、DIPEA (5.50 mL, 31.6 mmol, 6 eq.)、2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト (2.90 mL, 13.0 mmol, 2.5 eq.) を加え、氷浴中で3 時間撹拌し、メタノールでクエンチした。酢酸エチルで希釈し、重曹水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、綿栓ろ過をし、溶媒を留去した。粗生成物を中性シリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン=9/90/1→0/99/1) で精製し、化合物6(1.16 g, 1.50 mmol, 29%) を得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.268 (s, 1H), 7.635 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.404-7.209 (m, 9H), 6.857-6.818 (m, 4H), 6.603 (d, 8.8 Hz, 1H), 6.104 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.449, (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.911-4.853 (m, 1H), 4.575 (q, J = 5.6 Hz, 1H), 4.215 (m, 1H), 3.895-3.847 (m, 1H), 3.784 (s, 1H), 3.766-3.707 (m, 1H), 3.631-3.569 (m, 2H), 3.392 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 2.638 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 1.184-1.109 (m, 12H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 162.661, 161.936, 158.837, 150.892, 144.015, 140.000, 135.212, 135.041, 130.177, 128.202, 127.296, 117.740, 113.467, 103.090, 87.439, 86.161, 84.940, 75.060, 63.519, 58.207, 55.374, 53.772, 43.405, 24.597, 20.582; 31P-NMR (162 MHz, CDCl3): δ 151.932; HRMS (ESI+) calc. m/z796.3082 (M + Na+), 812.2821 (M + K+), found m/z796.3089 (M + Na+), 812.2828 (M + K+).。
【0141】
試験例1.融解温度測定1
2´-ホルムアミドウリジンのホスホロアミダイト体(合成例1)を使用して、核酸自動合成機により、ポリヌクレオチド(DNA/RNA、2´-ホルムアミドウリジン有)(表1:配列番号1及び2)を合成した。また、2´-ホルムアミドウリジンを含まない対応するポリヌクレオチドも合成した。表1に示されるポリヌクレオチド二本鎖の50%融解温度 (Tm値) を測定した。測定方法は次の通りである。吸光度測定には、JASCO V-650 Spectrophotometerを用いた。1 M NaCl、10 mMリン酸バッファー(pH 7.0) 中に一本鎖オリゴ核酸の終濃度が3 μMとなるようサンプルを調整し、調製したサンプルを90 ℃で5 分間加熱し、静置して室温まで戻すことでアニーリングさせた。サンプルをセルに移し、15 ℃から90 ℃まで0.5 ℃/分で温度を変化させて260 nmにおける吸光度を測定した。得られたシグモイド曲線の、二本鎖状態のときの直線と一本鎖状態のときの直線の中線を引き、その中線がシグモイド曲線と交わる温度をTmとした。
【0142】
結果を表1に示す。2´-ホルムアミドウリジンを導入することで二本鎖の安定性が低下することが明らかとなった。
【0143】
【表1】
【0144】
試験例2.熱力学的パラメーター測定
表2(配列番号1及び2)に示されるポリヌクレオチド二本鎖形成の熱力学的パラメーターを測定した。測定方法は次の通りである。吸光度測定には、JASCO V-650 Spectrophotometerを用いた。1 M NaCl、10 mMリン酸バッファー(pH 7.0) 中に一本鎖オリゴ核酸の終濃度が3, 6, 9, 12 μMとなるようサンプルをそれぞれ調整し、調製したサンプルを90 ℃で5 分間加熱し、静置して室温まで戻すことでアニーリングさせた。サンプルをセルに移し、15 ℃から90 ℃まで0.5 ℃/分で温度を変化させて260 nmにおける吸光度を測定した。得られたシグモイド曲線の、二本鎖状態のときの直線と一本鎖状態のときの直線の中線を引き、その中線がシグモイド曲線と交わる温度をTmとした。得られたTm値とその時の濃度を以下の2式に当てはめて各熱力学的パラメーターを算出した。
【0145】
【数1】
【0146】
【数2】
【0147】
結果を表2に示す。2´-ホルムアミドウリジンを導入することで、二本鎖形成時にエントロピー的には有利になるが、エンタルピー支配的に二本鎖形成が不安定化していることが明らかとなった。
【0148】
【表2】
【0149】
試験例3.塩基識別能評価1
2´-ホルムアミドウリジンのホスホロアミダイト体(合成例1)を使用して、核酸自動合成機により、ポリヌクレオチド(DNA/RNA、2´-ホルムアミドウリジン有)(表3:配列番号3~5)を合成した。また、2´-ホルムアミドウリジンを含まない対応するポリヌクレオチドも合成した。表3(配列番号1~5)に示されるポリヌクレオチドを使用して、50%融解温度 (Tm値) を試験例1と同様にして測定し、2´-ホルムアミドウリジンを組み込んだオリゴ核酸の塩基識別能を評価した。
【0150】
結果を表3に示す。2´-ホルムアミドウリジンを導入しても塩基識別能には大きな変化はないことが明らかとなった。
【0151】
【表3】
【0152】
試験例4.オフターゲット効果の評価1
2´-ホルムアミドウリジンのホスホロアミダイト体(合成例1)を使用して、核酸自動合成機により、ポリヌクレオチド(siRNAパセンジャー鎖/ガイド鎖、2´-ホルムアミドウリジン有)(表4:配列番号6~11)を合成した。また、2´-ホルムアミドウリジンを含まない対応するポリヌクレオチドも合成した。表4中、2(或いは3、4、6、又は7)U>U*なる表記は、ガイド鎖(各siRNAの下段側に表示される鎖)の5´末端から2番目(或いは3、4、6、又は7番目)のヌクレオシドに2´-ホルムアミドウリジンが導入されてなるsiRNAであることを示す。当該表記がないものは、2´-ホルムアミドウリジンが導入されていないsiRNAである。
【0153】
【表4】
【0154】
各siRNAについて、標的遺伝子(CLTC、VIM、又はMC4R)に対するRNAi活性、及びオフターゲット活性を測定した。測定方法は次の通りである。トランスフェクションを行う24時間前に、HeLa 細胞を 24-well cell culture plateの1wellあたり、1.0X105 cellsで播種した。siRNA, firefly luciferase遺伝子発現ベクターである pGL3-Control (100ng/μL)、Renilla luciferase遺伝子の 3‘UTRに siRNAの標的配列を挿入したターゲットベクター (psiCheck1_gCMまたは、psiCheck1_gSM)を 10ng/μLの濃度でHeLa細胞へ Lipofectamine2000を利用して同時にトランスフェクションした。24時間後、細胞を溶解して回収し、Dual Luciferase Reporter Assay Systemにより、Renilla luciferase及び firefly luciferaseの活性をそれぞれ測定した。(Renilla luciferase活性/ Fireflu luciferase活性)の相対値を算出し、コントロールであるsiRNAを用いた場合の相対値を100%として、各 siRNAの相対値の%を算出した。psiCheck1_gCMはsiRNAと完全に相補的な配列をもったターゲットベクターであり、これを用いてRNAi効果を測定した。psiCheck1_gSMはsiRNAのシード部分のみと相補的な配列を3つもったターゲットベクターであり、これを用いたオフターゲット効果を測定した。
【0155】
結果を図1に示す。5´末端から2、3、4番目に2´-ホルムアミドウリジンを導入したものでは、オフターゲット効果を抑制できているが、6、7番目に導入したものではオフターゲット効果の抑制度合いが小さくなっている。
【0156】
合成例2.4-メチルシチジンのホスホロアミダイト体の合成
以下に示す、4-メチルシチジンのホスホロアミダイト体を合成した。
【0157】
【化20】
【0158】
合成はNUCLEOSIDES & NUCLEOTIDES, 14(3-5), 1129-1 132 (1995) Jane A. Grasby , Mohinder Singh , Jonathan Karn & Michael J. Gaitに従って行った。
【0159】
試験例5.融解温度測定2
4-メチルシチジンのホスホロアミダイト体(合成例2)を使用して、核酸自動合成機により、ポリヌクレオチド(RNA、4-メチルシチジン有)(表5:配列番号12及び13)を合成した。また、4-メチルシチジンを含まない対応するポリヌクレオチドも合成した。表5に示されるポリヌクレオチド二本鎖の50%融解温度 (Tm値) を、試験例1と同様にして測定した。
【0160】
結果を表5に示す。4-メチルシチジンを導入することで二本鎖の安定性が低下することが明らかとなった。
【0161】
【表5】
【0162】
試験例6.塩基識別能評価2
4-メチルシチジンのホスホロアミダイト体(合成例2)を使用して、核酸自動合成機により、ポリヌクレオチド(DNA/RNA、4-メチルシチジン有)(表6:配列番号14~16)を合成した。また、4-メチルシチジンを含まない対応するポリヌクレオチドも合成した。表6(配列番号12~16)に示されるポリヌクレオチドを使用して、50%融解温度 (Tm値) を試験例1と同様にして測定し、4-メチルシチジンを組み込んだオリゴ核酸の塩基識別能を評価した。
【0163】
結果を表6及び7に示す。表7中、4-メチルシチジンを導入しても塩基識別能には大きな変化はないことが明らかとなった。
【0164】
【表6】
【0165】
【表7】
【0166】
試験例7.オフターゲット効果の評価2
4-メチルシチジンのホスホロアミダイト体(合成例2)を使用して、核酸自動合成機により、ポリヌクレオチド(siRNAパセンジャー鎖/ガイド鎖、4-メチルシチジン有)(表8:配列番号6~9)を合成した。また、4-メチルシチジンを含まない対応するポリヌクレオチドも合成した。表8中、5(或いは6又は8)C>C*なる表記は、ガイド鎖(各siRNAの下段側に表示される鎖)の5´末端から5番目(或いは6又は8番目)のヌクレオシドに4-メチルシチジンが導入されてなるsiRNAであることを示す。当該表記がないものは、4-メチルシチジンが導入されていないsiRNAである。
【0167】
【表8】
【0168】
各siRNAについて、標的遺伝子(CLTC又はVIM)に対するRNAi活性、及びオフターゲット活性を、試験例4と同様にして測定した。
【0169】
結果を図2に示す。5´末端から5番目に4-メチルシチジンを導入したものでは、オフターゲット効果を抑制できているが、6、8番目に導入したものではオフターゲット効果の抑制がほとんど見られなかった。
【0170】
合成例3.S修飾型ホスホロアミダイト体の合成
以下に示す、2種のS修飾型ホスホロアミダイト体を合成した。
【0171】
【化21】
【0172】
<合成例3-1.S修飾型ホスホロアミダイト体Aの合成>
S修飾型ホスホロアミダイト体Aの合成スキームは以下の通りである。
【0173】
【化22】
【0174】
ステップ1:3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)ウリジン(3)
出発物質ウリジン(15.00 g, 61.4 mmol, 1 eq.)を過脱水ピリジン(約250 mL)に懸濁した。次に、保護試薬1,3-ジクロロ-1,1,3,3,3-テトライソプロピルジシロキサン(21.1 mL, 66 mmol, 1.1 eq.)を滴下添加した。滴下終了後、反応混合物を、TLC[ヘキサン/酢酸エチル、1:1(v/v)]でモニターして反応が完全になるまで、室温で約6時間撹拌し続けた。反応混合物をまず蒸発させて溶媒ピリジンを可能な限り除去し、次いで適量の酢酸エチルに再溶解した。その後、反応混合液を飽和NaHCO3水溶液で2回、食塩水で1回洗浄した。その後、漏斗を用いて有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥させて含有水分を除去した。綿ろ過し、蒸発によりシロップ状に濃縮した後、粗混合物を中性シリカゲルカラム上でヘキサン/酢酸エチル[3:1(v/v)から1:1(v/v)]の溶離液勾配を用いたクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物を得た。最後に、目的物を含む画分を回収し、蒸発させ、真空下で脱水した。目的生成物3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)ウリジンを収率73%、21.8gで得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.65 (1H, m); 5.72 (1H, s); 5.70-5.67 (1H, m); 4.40-4.38 (1H, m); 4.16-4.02 (4H, m); 1.09-1.03 (28H, m). ESI-MS: calc for C21H38N2O7Si2, m/z: 486.22 found [M+Na]+ 509.20.。
【0175】
ステップ2:3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(4)
3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)ウリジン(4) (2.44 g, 5.02 mmol, 1.0 eq.)と先の合成で得られたビス(メチルチオメチル)エーテル(2.08 g, 15.05 mmol, 3.0 eq.)を過脱水THF(10.0 mL)に溶解し、-45 ℃まで冷却した。反応液にトリフルオロメタンスルホン酸(1.50 g/0.90 mL, 9.99 mmol, 2.0 eq.)を丁寧に加え、約 15 分間撹拌した後、さらに 30 分間撹拌した。その後、N-ヨードスクシンイミド(2.26 g, 10.04 mmol, 2.0 eq.)を含む脱水THF溶液を反応混合物に慎重に注入した。反応は、出発物質の大部分が生成物に移行し、TLC [ヘキサン/酢酸エチル、1:1 (v/v)]でモニターされるまで、Arの下で24時間以上撹拌し続けた。反応は最終的にトリエチルアミン(2.54 g, 25.10 mmol, 5.0 eq.)を添加し、15 分間撹拌した後、停止した。これらの手順の後、反応混合物を室温に戻し、可能な限りシロップ状態まで蒸発させた。残された物質を酢酸エチルで再希釈し、超音波処理して完全に溶解させた後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で3回洗浄し、食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を漏斗で分離した。洗浄後のチオ硫酸ナトリウム水溶液を再び酢酸エチルで抽出した。有機相を一緒に集め、Na2SO4上で乾燥させ、含有水を除去した。再び残渣まで蒸発させた後、残った物質を、ヘキサン/酢酸エチルの溶離液勾配[5:1(v/v)から1:1(v/v)まで]を用いて、中性シリカゲルカラム上でクロマトグラフィーを行い、精製した。目的化合物を含むフラクションを一緒に集め、蒸発させて発泡させた。残渣を真空中で完全に乾燥させ、目的物を得た。化合物3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(4)を2.89gの量で収率80%で得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.88 (1H, d); 5.73 (1H, s); 5.68-5.66 (1H, d); 5.14-4.71 (5H, m); 4.27-4.11 (4H, m); 3.97-3.94 (1H, d); 2.18-2.14 (3H, m); 1.10-0.91 (28H, m). ESI-MS calc for C24H44N2O8SSi2, m/z=576.24, found [M+Na]+ 599.23, [M+K]+ 615.20. ([2M+Na]+, [3M+Na]+ also found)。
【0176】
ステップ3~5:3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン(6)
出発物質 3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-2'-O [(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(4) (7.24 g, 12.56 mmol, 1 eq.)を、DIPEA (1.62 g/2.07 mL, 12.53 mmol, 1 eq.)を含む超脱水ジクロロメタン(125 mL)に溶解した。反応混合物をアルゴンの保護下で室温で約30分間撹拌した後、アイスバスで0℃まで冷却した。脱水ジクロロメタン(5 mL)に溶解した塩化スルフリル(1.70 g/1.02 mL,12.59 mmol,1 eq.)の溶液を反応混合物に滴下して慎重に加えた。その後、室温でさらに 1 時間半撹拌した。その後、脱水DMF(5 mL)中のチオトシル酸カリウム(5.69 g, 25.13 mmol, 2 eq.)の溶液を加え、反応混合物を室温で約16時間撹拌した。
【0177】
全ての出発物質をTLC [ヘキサン/酢酸エチル、1:1 (v/v)]でモニターした生成物に移した後、次のステップでは、tert-ブチルメルカプタン(2.26 g/2.83 mL、25.06 mmol、2 eq.)を直接添加し、室温で8時間以上撹拌しながら反応させた。TLC [ヘキサン/酢酸エチル、1:1 (v/v)]でモニターした反応終了後、撹拌を停止し、反応混合液をセライト層に通して不溶物を除去した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し、食塩水で1回洗浄し、有機層を漏斗で分離した。有機層を漏斗で分離した後、Na2SO4上で乾燥させ、含まれる水分を除去した。この溶液を綿ろ過後、最終的に蒸発濃縮し、固体の粗生成物である3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン(6)を得た。得られた粗物を発泡体として得、さらに精製することなく次の工程で直接使用した。
【0178】
ステップ6:2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン(7)
最後のステップで得られた出発物質粗化合物3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン(6)を脱水メタノール(125 mL)に懸濁させた。反応液にフッ化水素アンモニウム(3.58 g, 67.76 mmol, 5 eq.)を加え、ジシロキシル保護基が完全に開裂するまで室温で一晩(約 20 時間)Ar の下で撹拌し、TLC [ジクロロメタン/メタノール, 10:1 (v/v)]と[ヘキサン/酢酸エチル, 1:1 (v/v)]で同時にモニターした。反応終了後、混合物をまず可能な限りシロップ状に蒸発させ、次いで酢酸エチルで再希釈し、超音波処理して完全に溶解させた。その後、溶液を2回分の飽和NaHCO3溶液で洗浄し、1回分のブラインを加えた。漏斗を用いて有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥させて含まれる水分を除去し、綿で濾過した。これらの工程の後、蒸発によって濃縮し、粗生成物を得た。この粗化合物は、上記の4つのステップを合わせて、1.07gの量と21%の収率で発泡体として得られた。次いで、この粗生成物を、さらに精製することなく、次のステップで直接使用した。
【0179】
この物質の一部を、ジクロロメタン/メタノール(90:1(v/v)から10:1(v/v))の溶離液勾配を用いて、中性シリカゲルカラム上でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的画分を得た後、真空下で蒸発・乾燥した。得られた淡紅色の泡をMSで分析した。ESI-MS:C15H24N2O7S2, m/z: 408.10, found [M+H]+ 409.10, [M+Na]+ 431.09。
【0180】
ステップ7:5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン(8)
最後のステップで得られた出発物質粗 2'-O-(tert-ブチルジチオメチル)ウリジン(7) (0.77 g, 1.88 mmol, 1 eq.)を過脱水ピリジン(20 mL)に溶解し、4,4'-ジメトキシトリチルクロリド(0.77 g, 2.26 mmol, 1.2 eq.)を直接溶液に添加した。反応混合物を、出発物質の完全な変換が達成されるまで、Arの下で8時間以上室温で撹拌し、これをTLC [ヘキサン/酢酸エチル、1:1 (v/v)]でモニターした。その後、反応混合物を蒸発させ、ピリジン溶媒を可能な限り除去して残渣とした。残渣を酢酸エチルに再溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し、食塩水で1回洗浄した。有機層を漏斗で分離した後、Na2SO4上で乾燥させた。綿を用いて濾過した後、溶液を最終的に蒸発によって濃縮し、粗生成物を与えた。得られた粗混合物を、ヘキサン/酢酸エチル(5:1(v/v)から1:1(v/v)まで)の溶離液勾配を用いた中性シリカゲルカラム上のクロマトグラフィーで精製し、目的の画分を得た後、蒸発させ、真空下で乾燥させた。標的化合物5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン(8) (880 mg, 1.24 mmol)を収率66%の薄赤色泡として単離した。1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.54 (d, 1H); 7.41-7.13 (m, 9H); 6.87-6.82 (m, 4H); 5.76 (d, 1H); 5.50 (s, 2H); 5.01-4.67 (m, 6H) ; 4.36 (dd, 1H); 3.79 (s, 6H); 3.51-3.39 (d, 2H); 1.33 (s, 9H). ESI-MS: calc for C36H42N2O9S2, m/z: 710.23, found [M+Na]+ 733.21.。
【0181】
ステップ8:5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン 3'-O-(2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト)(9)
前工程で得られた5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン(8) (192 mg, 0.27 mmol, 1 eq.)を、DIPEA(235 μL, 1.35 mmol, 5 eq.)を含む超脱水ジクロロメタン(3.0 mL)に溶解した。数分間攪拌した後、アミダイト試薬2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイト(150μL, 0.68 mmol, 2.5 eq.)を加えた。反応混合物を、出発物質から生成物への完全な変換(4時間以上)までアルゴン下で室温で撹拌し、TLC[ヘキサン/酢酸エチル、1:1(v/v)、5%トリエチルアミン添加]でモニターした。反応終了後、混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、食塩水で1回洗浄した。漏斗を用いて有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥させて水分を除去した。綿でろ過した後、溶液を蒸発させて残渣に濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗混合物を、移動相にトリエチルアミンを5%添加したヘキサン/酢酸エチル(10:1(v/v)から1:1(v/v))の溶離液勾配を用いて、中性シリカゲルカラム上でクロマトグラフィーを行い、精製した。標的化合物を含むフラクションを回収し、残渣(赤い泡のようなもの)まで濃縮した後、3.0 mL付近の超脱水ジクロロメタンに再溶解した。フラスコに脱水ヘキサン(15.0 mL)を充填し、約-78℃のコールドバスに入れた。脱水ジクロロメタン中の生成物溶液を撹拌しながら、冷たいヘキサン溶液に滴下して添加した。アミダイト生成物は直ちに溶液混合物に懸濁した白色固体として析出した。その後、混合物を減圧下でろ過し、得られた固体を冷ヘキサン(-78℃)で数回洗浄した。得られた残渣を過脱水ジクロロメタンに再溶解し、再度蒸発させ、真空乾燥して目的化合物0.20 g 5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(tert-ブチルジチオメトキシ)メチル]ウリジン3'-O-(2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト) (9)を白色発泡状態で収率81%で得た。31P-NMR (400 MHz, CD3CN) 150.79, 149.74 ppm. ESI-MS: calc for C45H59N4O10PS2, m/z: 910.34, found [M+Na]+ 933.22, [M+K]+ 949.20.。
【0182】
<合成例3-2.S修飾型ホスホロアミダイト体Bの合成>
S修飾型ホスホロアミダイト体Bの合成スキームは以下の通りである。
【0183】
【化23】
【0184】
ステップ3:2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(7b)
3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(4) (2.00 g, 3.47 mmol, 1 eq.)をメタノール(40 mL)に溶解させ、フッ化水素アンモニウム(1.00 g, 17.53 mmol, 5 eq.)を加え、反応混合物を室温で一晩(約16時間)撹拌した。反応液にフッ化水素アンモニウム(1.00 g, 17.53 mmol, 5 eq.)を加え、室温で一晩(約16時間)撹拌し、ジシロキシル保護基が完全に開裂するまで反応混合物を撹拌した。反応終了後、混合物をまず可能な限りシロップ状に蒸発させ、次に酢酸エチルで再希釈し、必要に応じて超音波処理して完全溶解させた。その後、溶解した溶液は、2回のための飽和NaHCO3溶液と1回のためのブラインで洗浄した。漏斗を用いて有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥させて含有水を除去し、綿で濾過した。これらのプロセスの後、それは蒸発によって濃縮され、収率84%の収率で976 mg量の赤い泡として単離された粗生成物を余裕があるようにした。この粗化合物をさらに精製することなく、次の工程に使用した。この物質のごく一部をESI-MSで分析した。ESI-MS: calc for C12H18N2O7S, m/z: 334.08, found [M+Na]+ 357.07, [M+K]+ 373.09.。
【0185】
ステップ4:5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(8b)
最後のステップで得られた出発物質2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(7b) (976 mg, 2.91 mmol, 1 eq.)を過脱水ピリジン(15.0 mL)に溶解し、4,4'-ジメトキシトリチルクロリド(1.18 g, 3.50 mmol, 1.2 eq.)を慎重に溶液に添加した。反応混合物を、出発物質の完全な変換が達成されるまで、Arの下、室温で6時間以上撹拌し、これはTLC [ヘキサン/酢酸エチル、1:1 (v/v)]によってモニターされた。
【0186】
次いで、反応混合物を蒸発させて残渣とし、可能な限りピリジン溶媒を除去した。残渣を酢酸エチルに再溶解し、超音波処理して完全溶解させた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し、食塩水で1回洗浄した。有機層を漏斗で分離した後、Na2SO4上で乾燥させた。綿を用いて濾過した後、溶液を最終的に蒸発によって濃縮し、粗生成物を与えた。得られた粗混合物を、ヘキサン/酢酸エチルの溶離液勾配を用いた中性シリカゲルカラム上のクロマトグラフィーで精製し、目的化合物を含む画分を得た。次いで、溶液を集め、蒸発させ、真空下で乾燥させた。標的化合物5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(8b) (1.42 g, 2.23 mmol)を収率77%の薄赤色泡として単離した。1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.65 (d, 1H); 7.28-7.15 (m, 9H); 6.85-6.81 (m, 4H); 5.76 (d, 1H); 5.51 (s, 2H); 5.02-4.70 (m, 6H) ; 4.37 (dd, 1H); 3.80 (s, 6H); 3.52-3.38 (d, 2H); 2.16 (s, 3H). ESI-MS: calc for C33H36N2O9S, m/z: 636.21, found [M+Na]+ 659.18.。
【0187】
ステップ5:5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン3'-O-(2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト)(9b)
前工程で得られた5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン(8b) (164 mg, 0.26 mmol, 1 eq.)を、DIPEA(225 μL, 1.30 mmol, 5 eq.)を含む超脱水ジクロロメタン(2.15 mL)に溶解した。数分間攪拌した後、アミダイト試薬2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイト(152 mg, 0.64 mmol, 2.5 eq.)を直接添加した。反応混合物を、出発物質から生成物への完全な変換(6時間以上)までアルゴン下で室温で撹拌し、TLC [ヘキサン/酢酸エチル、5%トリエチルアミンを添加した1:3 (v/v)、NH2シリカプレート上]でモニターした。反応終了後、混合物を適量のジクロロメタンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、食塩水で1回洗浄した。漏斗を用いて有機層を分離し、Na2SO4 上で乾燥させて水分を除去した。綿で濾過した後、溶液を蒸発により残渣に濃縮し、粗生成物を与えた。この粗混合物を、移動相にトリエチルアミンを5%添加したヘキサン/酢酸エチル[1:3 (v/v)]の溶離液勾配を用いて、NH2シリカゲルカラム上でクロマトグラフィーを行い、精製した。目的化合物を含むフラクションを回収し、濃縮して残渣とした。次いで、残渣を脱水ジクロロメタンに再溶解し、再度蒸発させ、真空乾燥して、目的化合物5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-O-[(メチルチオメトキシ)メチル]ウリジン3'-O-(2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルホスホラミダイト) (9b) 166 mg、収率77% (赤い泡状の固体)を得た。31P-NMR (400 MHz, CD3CN) 150.73, 149.56 ppm. ESI-MS: calc for C42H53N4O10PS, m/z: 836.32, found [M+Na]+ 859.28.。
【0188】
試験例8.オフターゲット効果の評価3
S修飾型ホスホロアミダイト体B(合成例3-2)を使用して、核酸自動合成機により、ポリヌクレオチド(siRNAパセンジャー鎖/ガイド鎖、S修飾型ヌクレオシド有)(表9:配列番号8~11及び17~18)を合成した。また、S修飾型ヌクレオシドを含まない対応するポリヌクレオチドも合成した。表9中、2(或いは3、4、5、6、又は7)U>2なる表記は、ガイド鎖(各siRNAの下段側に表示される鎖)の5´末端から2番目(或いは3、4、5、6、又は7番目)のヌクレオシドにS修飾型ヌクレオシドが導入されてなるsiRNAであることを示す。当該表記がないものは、S修飾型ヌクレオシドが導入されていないsiRNAである。
【0189】
【表9】
【0190】
各siRNAについて、標的遺伝子(VIM、MC4R、又はKIF23)に対するRNAi活性、及びオフターゲット活性を、試験例4と同様にして測定した。
【0191】
結果を図3に示す。試験例4及び7と同様の傾向の結果が得られた。
図1
図2
図3
【配列表】
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